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近接きんせつ航空こうくう支援しえん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

近接きんせつ航空こうくう支援しえん英語えいご: Close Air Support, CAS)は、火力かりょく支援しえん目的もくてきおこなわれる航空こうくう作戦さくせん[1]

方法ほうほう[編集へんしゅう]

火力かりょく支援しえんという性格せいかくじょう最前線さいぜんせん活動かつどうする味方みかた地上ちじょう部隊ぶたいとの綿密めんみつ調整ちょうせいと、攻撃こうげきたいする厳格げんかく統制とうせい必要ひつようとされる。これは、ばくげき効果こうか最大さいだいするとともに、誤爆ごばくふせぐためのものである。

アメリカ空軍くうぐん場合ばあい戦術せんじゅつ航空こうくう統制とうせいセンター(TACC)が統制とうせい中枢ちゅうすうとされ、この隷下れいかに、かく地上ちじょう部隊ぶたい随伴ずいはんする戦術せんじゅつ航空こうくう統制とうせいはんTACP)および観測かんそく搭乗とうじょうした統合とうごうまつはし攻撃こうげき統制とうせいかん(JTAC)が前線ぜんせん航空こうくう管制かんせい業務ぎょうむ実施じっしする。TACPには、かなら1人ひとりのJTACがふくまれるほか、場合ばあいにより、空軍くうぐんとの連絡れんらく将校しょうこうである航空こうくう連絡れんらくかん(ALO)もくわわることになる。これらの手法しゅほうは、おおくが砲兵ほうへい間接かんせつ射撃しゃげきから導入どうにゅうされたものであり、FACは砲兵ほうへい観測かんそくはん(FO)に、TACCは射撃しゃげき指揮しきセンター(FDC)に相当そうとうする。

攻撃こうげきたいする管制かんせいは、具体ぐたいてき進入しんにゅう経路けいろ指示しじのほか、発煙はつえんだんレーザー目標もくひょう指示しじ装置そうちにより攻撃こうげき目標もくひょうをマーキングしたり、地理ちり座標ざひょうけいもとづく座標ざひょうデータを伝達でんたつすることによってもおこなわれる。

近接きんせつ航空こうくう支援しえんによる火力かりょく投射とうしゃは、砲兵ほうへいによる支援しえん射撃しゃげきおなじカテゴリーにぞくするが、投射とうしゃ可能かのう火力かりょくりょう持続じぞく可能かのう時間じかんにおいてことなっている。すなわち、近接きんせつ航空こうくう支援しえんは、任意にんい場所ばしょだい火力かりょく瞬間しゅんかんてき投射とうしゃできる一方いっぽう特定とくてい場所ばしょへの持続じぞくてき火力かりょく投射とうしゃには不向ふむきという特性とくせいゆうしている。

使用しようされる機体きたい状況じょうきょうによって様々さまざまである。攻撃こうげきヘリコプターは、もっとも手軽てがる近接きんせつ航空こうくう支援しえん火力かりょくであり、また、おおくのくにでは陸軍りくぐん管轄かんかつであることから、地上ちじょう部隊ぶたいとの連携れんけいにもすぐれるが、対空たいくう兵器へいきたいして脆弱ぜいじゃくであるという欠点けってんがある。

固定こていつばさ場合ばあい通常つうじょう小回こまわりがきく小型こがた戦闘せんとう攻撃こうげきであることがおおい。速度そくどかならずしも重視じゅうしされないどころか、むしろおそ速度そくど所定しょていの(とくにひく高度こうどの)空域くういき滞空たいくうつづけられる特性とくせい燃費ねんぴさが要求ようきゅうされることもすくなくない。さらに、低速ていそく低空ていくう巡航じゅんこうすることはてき対空たいくう砲火ほうかにさらされやすくなることを意味いみするため、A-10 サンダーボルトIISu-25 フロッグフットのように近接きんせつ航空こうくう支援しえんおも目的もくてきとする機体きたいでは、速度そくどよりもペイロード防御ぼうぎょ装甲そうこう重視じゅうしされている。現在げんざいでは誘導ゆうどう兵器へいき発達はったつにより、B-52 ストラトフォートレスなどの大型おおがた高空こうくうから支援しえんおこなうことも可能かのうになってきている。直接ちょくせつ火力かりょく投射とうしゃとしてはばくだんロケットだんそら対地たいちミサイル使用しようされるが、低空ていくう飛行ひこうする小型こがた場合ばあい機銃きじゅう掃射そうしゃおこなわれる。

歴史れきし[編集へんしゅう]

近接きんせつ航空こうくう支援しえんそのものは、空軍くうぐんちから任務にんむとしては古典こてんてきなものであるが、航空こうくう優勢ゆうせい獲得かくとく競争きょうそうという本格ほんかくてき航空こうくうせん開始かいしとともに、その重要じゅうようせい相対そうたいてき低下ていかしたものとみなされた。しかし、アメリカ海兵かいへいたい海兵かいへいたい航空こうくうだんは、海兵かいへいたい地上ちじょう部隊ぶたい支援しえんしゅ任務にんむの1つであったことから、近接きんせつ航空こうくう支援しえん任務にんむ依然いぜんとして重視じゅうししており、研究けんきゅうかさねていた。この結果けっかとして開発かいはつされた攻撃こうげきほうの1つが急降下きゅうこうか爆撃ばくげきであり、1927ねんニカラグアにおけるサンディーノ戦争せんそう実戦じっせん投入とうにゅうされた。

急降下きゅうこうか爆撃ばくげきほうおよび近接きんせつ航空こうくう支援しえん運用うんようほう世界せかい各国かっこく影響えいきょうあたえたが、とくドイツ空軍くうぐんにおいて影響えいきょうおおきかった。ドイツぐん当時とうじ陸軍りくぐん装甲そうこう部隊ぶたい推進すいしんしていたが、支援しえん火力かりょく提供ていきょうする砲兵ほうへい部隊ぶたい戦術せんじゅつ機動きどうりょく不足ふそくしていることが師団しだん機動きどう制約せいやくしていた。そこで、支援しえん火力かりょく近接きんせつ航空こうくう支援しえんおおきく依存いぞんすることにより、機甲きこう師団しだん機動きどうりょく大幅おおはば向上こうじょうさせうることから、電撃でんげきせんドクトリン採択さいたくされるにいたったのである。

だい祖国そこく戦争せんそうどくせん)にて、このドイツ空軍くうぐん対峙たいじしたソビエト連邦れんぽうぐんは、シュトゥルモヴィーク襲撃しゅうげきしゃ)とばれる、じゅう装甲そうこうだい口径こうけい機関きかんほう装備そうびした近接きんせつ航空こうくう支援しえんおも任務にんむとする攻撃こうげきでドイツの電撃でんげきせん戦術せんじゅつ対抗たいこうし、成形せいけい炸薬さくやく弾頭だんとうゆうするロケットだん主体しゅたいとする襲撃しゅうげき戦法せんぽうでドイツ機甲きこう部隊ぶたいやぶっている。だい世界せかい大戦たいせん西側にしがわ諸国しょこくでは近接きんせつ航空こうくう支援しえん任務にんむ対地たいち攻撃こうげき用兵ようへいそう攻撃こうげきけい攻撃こうげき担当たんとうし、近接きんせつ航空こうくう支援しえん専用せんようはほぼくなった[2]が、ロシア連邦れんぽうではそのもシュトゥルモヴィークとばれる機種きしゅ区分くぶん存在そんざいつづけている。

日本にっぽん陸軍りくぐんではシュトゥルモヴィークに相当そうとうする任務にんむおこな攻撃こうげきを「襲撃しゅうげき」と呼称こしょうしており、「軽快けいかい低空ていくう運動うんどうせいてい搭載とうさいりょうてい常用じょうよう高度こうど固定こてい機関きかんほう装備そうび装甲そうこう装備そうび」が航空こうくう撃滅げきめつせんおも任務にんむとするばくげきとのおもちがいであった[3]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ A Dictionary of Aviation, David W. Wragg. ISBN 0850451639 / ISBN 9780850451634, 1st Edition Published by Osprey, 1973 / Published by Frederick Fell, Inc., NY, 1974 (1st American Edition.), Page 29.
  2. ^ 青木あおきけん『ミリタリー選書せんしょ1現代げんだい軍用ぐんよう入門にゅうもん軍用ぐんよう知識ちしき基礎きそから応用おうようまで)』イカロス出版いかろすしゅっぱん13ぺーじ
  3. ^ 陸軍りくぐん航空こうくう本部ほんぶだいさん陸軍りくぐん航空こうくう兵器へいき研究けんきゅう方針ほうしんけんたち』 1940ねん4がつ、アジア歴史れきし資料しりょうセンター、Ref:C01005534700

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 宮本みやもと いさお近接きんせつ航空こうくう支援しえん今昔こんじゃく」『航空こうくうファンだい632しゅうぶん林堂はやしどう、2005ねん8がつ、65-68ぺーじ 
  • 「99しき艦上かんじょう爆撃ばくげき開発かいはつ運用うんよう,実績じっせき」『世界せかい傑作けっさくNo.33 99しき艦上かんじょう爆撃ばくげき』、ぶん林堂はやしどう、1992ねん3がつ、14-21ぺーじ 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]