カートゥーン

カートゥーン（cartoon）は、ある語源ごげんから発展はってんした複数ふくすうの芸術げいじゅつ形式けいしきについての呼称こしょう。

現代げんだいにおける狭義きょうぎのカートゥーンは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくやヨーロッパの一いちコマ漫画まんがか、ユーモラスな傾向けいこうを備そなえた子供こども向むけのアニメーション作品さくひんを指さし示しめす言葉ことばである。この項こうではこれら2つについて記述きじゅつする。

歴史れきし的てき用法ようほう

歴史れきし的てきな語源ごげんにおけるカートゥーンとは、油絵あぶらえのような絵画かいが作品さくひんの制作せいさくに際さいし、紙かみの上うえに原寸げんすん大だいで描えがかれる下絵したえ（下書したがき）の意味いみである。厚紙あつがみを意味いみするイタリア語ご「カルトーネ」“cartone” あるいはオランダ語ごの「カルトン」“karton”に由来ゆらいする。日本語にほんごでは通常つうじょうこの意味いみでカートゥーンを用もちいず、フランス語ふらんすご読よみでカルトンと称しょうする。

カルトンは幾いく日にちにもわたる漆喰しっくいの上うえへの彩色さいしきに際さいして、構成こうせい部分ぶぶんを正確せいかくに連結れんけつさせるために、専もっぱらフレスコ画がの制作せいさくに使用しようされていた。ラファエロやレオナルド・ダ・ヴィンチのような画家がかによるカルトンは、それ自体じたいが高たかい価値かちを持もっている。

ラファエロのカルトン

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  『ペテロに天国てんごくの鍵かぎを授さづけるキリスト』のカルトン
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  カルトンをもとに作つくられた『ペテロに天国てんごくの鍵かぎを授さづけるキリスト』のタペストリー

ラファエロがタペストリー作成さくせい用ように作成さくせいした下絵したえ

印刷いんさつ媒体ばいたい

現代げんだいの出版しゅっぱん業界ぎょうかいにおけるカートゥーンは、一般いっぱんにユーモラスな傾向けいこうを備そなえたイラストレーション（戯画ぎが）のことを指さす。

前史ぜんし

「漫画まんが」および「カリカチュア」も参照さんしょう

15世紀せいき末まつの宗教しゅうきょう改革かいかく時ときに描えがかれたパンフレットの挿絵さしえや、イギリスのホガースやギルレイらのユーモラスな風刺ふうし画が、といったものをカートゥーンの祖そとする見方みかたがある が、あくまでも現代げんだい的てきな意味いみでのカートゥーンの源流げんりゅうを過去かこのメディアに求もとめての評価ひょうかの結果けっかであり、当時とうじこれらのものをカートゥーンと呼よんだわけではない。

風刺ふうしイラストとしてのカートゥーン

ジョン・リーチによる、新しんウェストミンスター宮殿きゅうでんのフレスコ画が下絵したえ展示てんじ会かいを風刺ふうしするカートゥーン（1843年ねん）

「風刺ふうし漫画まんが」も参照さんしょう

印刷いんさつ技術ぎじゅつの発達はったつとともに新聞しんぶんというニューメディアが勃興ぼっこうし、フランス、イギリス、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくで政権せいけん攻撃こうげきの手段しゅだんとして風刺ふうし画がが盛さかんに用もちいられるようになった。フランスではオノレ・ドーミエ、アメリカではトーマス・ナスト、『パック』の創刊そうかん者しゃジョセフ・ケプラーが大衆たいしゅうの支持しじを得えた。

現代げんだい的てきな意味いみで、この種たねの風刺ふうし画がを「カートゥーン」と呼よぶようになった最初さいしょは、1843年ねんにイギリスの風刺ふうし漫画まんが雑誌ざっし『パンチ』誌上しじょうにおける風刺ふうし画がコーナー、とりわけジョン・リーチによるスケッチ調しらべのペン画がである。元来がんらいこのコーナーは「ミスター・パンチの鉛筆えんぴつ画集がしゅう」 Mr Punch's pencillings と題だいされていたが、政治せいじ家か達たちの利己りこ的てきな姿勢しせいに対たいする皮肉ひにくとして、「下書したがき」を意味いみする「カートゥーン」という題だいが新あらたに導入どうにゅうされた。

新聞しんぶんの政治せいじ面めんに掲載けいさいされる風刺ふうし画がは、政治せいじ漫画まんが（ポリティカル・カートゥーン political cartoon）または論説ろんせつ漫画まんが・社説しゃせつ漫画まんが（エディトリアル・カートゥーン editorial cartoon）と呼よばれている。エディトリアル・カートゥーンは、アメリカで1940年代ねんだい頃ごろから通信つうしん社しゃを通つうじての新聞しんぶん記事きじ全国ぜんこく配信はいしんシステム（シンジケーション）によって広ひろく読よまれるようになり、多おおくの漫画まんが家かに影響えいきょうを与あたえた。

エディトリアル・カートゥーンはおおむね、一いちコマまたは複数ふくすうのコマ絵えと、すぐ下したに添そえられた説明せつめい文ぶん（キャプション）かフキダシによる短みじかい文字もじ情報じょうほうとで構成こうせいされている。人物じんぶつや建物たてもの・道具どうぐといったものが象徴しょうちょうとして用もちいられ、構図こうずやポーズによって行為こういが規定きていされて、現実げんじつの事象じしょうに対たいする何なんらかの比喩ひゆを成なしている。実在じつざい人物じんぶつの似顔絵にがおえが用もちいられる例れいが多おおく、過去かこの芸術げいじゅつ作品さくひんの引用いんようなどが用もちいられる例れいもみられる。

『ワシントン・ポスト』専属せんぞくだったハーブロックは、自身じしんのエディトリアル・カートゥーンでピューリッツァー賞しょうを3回かい受賞じゅしょうしている。

ギャグ・カートゥーン

「一いちコマ漫画まんが」も参照さんしょう

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、20世紀せいき前半ぜんはんから、世相せそう風刺ふうしによらないナンセンスなギャグを志向しこうする「ギャグ・カートゥーン」が現あらわれて、雑誌ざっしや新聞しんぶんで掲載けいさいされた。

ギャグ・カートゥーンは、エディトリアル・カートゥーン同様どうよう、おおむね一いち枚まいのイラストレーションと、すぐ下したに添そえられたキャプションまたはフキダシによる短みじかい文字もじ情報じょうほうとで構成こうせいされている。フキダシを用もちいずにキャプションでセリフを表現ひょうげんする場合ばあい、口くちを開あけた状態じょうたいで描えがかれた人物じんぶつの発言はつげんとする不文ふぶん律りつがある。

『ザ・ニューヨーカー』誌しの専属せんぞく漫画まんが家かピーター・アーノーは、アーノー自身じしんも自称じしょうしていたように「現代げんだいギャグ・カートゥーンの父ちち」とみなされている。特筆とくひつすべきギャグ・カートゥーン作家さっかとして、チャールズ・アダムス、チャールズ・バーソッティ、チョン・デイがいる。

コミックスとカートゥーン

「コミック・ストリップ」も参照さんしょう

コミック・ストリップは、一般いっぱんには「カートゥーン」ではなく、「コミックス（Comics）」あるいは「ファニーズ（Funnies）」と呼よばれる。それにも関かかわらず、コミック・ストリップの作者さくしゃは、アメリカン・コミックやグラフィック・ノベルの作者さくしゃも含ふくめ、上記じょうきの風刺ふうし漫画まんが家かと同様どうように、「カートゥニスト（Cartoonist、カートゥーン作家さっか）」と総称そうしょうされる。

アニメーション

「アニメーション」も参照さんしょう

コマ漫画まんがと初期しょきのアニメーション映画えいがの表現ひょうげん手法しゅほう上じょうの類似るいじ性せいのために、「カートゥーン」という用語ようごはアニメーションをも指さすようになり、今日きょうではこの意味いみが用語ようごカートゥーンの最もっとも基本きほん的てきな用法ようほうとなっている。この用法ようほうにおいては、単語たんごカートゥーンは時ときにはトゥーン（Toon）と短縮たんしゅくされる（この用語ようごはアニメ『ルーニー・テューンズ』の転訛てんかかもしれない。また、この用語ようごは映画えいが『ロジャー・ラビット』により広ひろまった。有名ゆうめいなのが、アニメが登場とうじょう人物じんぶつを殺ころした時ときの新聞しんぶんの見出みだし「TOON KILLS MAN」の文字もじであろう）。

この用語ようごは多おおくの場合ばあい、子供こども向むけの、擬人ぎじん化かされた動物どうぶつ、スーパーヒーロー、子供こどもの主人公しゅじんこうなどによる冒険ぼうけんを特徴とくちょうとするジャンルや、その他たの類似るいじジャンルに対たいして最もっとも頻繁ひんぱんに使用しようされる。日本にっぽんのアニメのように、西洋せいようの伝統でんとう的てきなアニメーションの慣例かんれいに適合てきごうしないアニメーション作品さくひんは、概おおむね「カートゥーン」とは呼よばれないが、この状況じょうきょうは変化へんかしつつある。同様どうように、子供こどもに不適切ふてきせつな作品さくひんであることを明確めいかくにするために、多おおくの場合ばあいポルノや18禁きんアニメのような成人せいじん向むけ作品さくひんに対たいしてこの用語ようごは用もちいられない。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのアニメーション番組ばんぐみ専門せんもんチャンネルカートゥーンネットワークは1997年ねんに日本にっぽんへ進出しんしゅつし放送ほうそうを開始かいしした。開局かいきょく当初とうしょのカートゥーンネットワークジャパンでは自じ局きょくで放送ほうそうされる番組ばんぐみの登場とうじょうキャラクターすべてを「トゥーン」と呼よんでいたが、このトゥーンには『ルーニー・テューンズ』や『トムとジェリー』、『ポパイ』といった典型てんけい的てきなカートゥーンキャラクターだけでなく、当時とうじこの局きょくで放送ほうそうされた『平成へいせい天才てんさいバカボン』、『魔法まほうのプリンセス ミンキーモモ』、『らんま1/2』など日本にっぽんのアニメキャラクターも含ふくまれている。日本にっぽんにおいて馴染なじみの薄うすかったカートゥーンやトゥーンの呼称こしょうはカートゥーンネットワークジャパンの開局かいきょくによりある程度ていど定着ていちゃくし、特とくに海外かいがいアニメファンは日本にっぽんのアニメとの区別くべつを図はかるため、これらの呼称こしょうを好このんで利用りようするようになった。

カートゥーン・アニメの歴史れきし

詳細しょうさいは「アメリカン・アニメーションの黄金おうごん時代じだい」を参照さんしょう

最初さいしょの成功せいこうしたカートゥーン・アニメーションは、ウィンザー・マッケイによる『恐竜きょうりゅうガーティ』である。この作品さくひんは世界せかい初はつのキャラクター・アニメーションであると考かんがえられている。

1930年代ねんだいから1960年代ねんだいにかけて、専もっぱら映画えいが館かんで上映じょうえいされる長編ちょうへん映画えいがの前座ぜんざとして膨大ぼうだいな数かずのカートゥーン・アニメーションが制作せいさくされた。メトロ・ゴールドウィン・メイヤー、ディズニー、フライシャー・スタジオ、ワーナー・ブラザースは、これらの5分ふんから10分間ふんかんの短編たんぺんカートゥーン映画えいがの制作せいさくに関かかわる最大手さいおおて企業きぎょうであった。

1950年代ねんだい後半こうはんに映画えいが館かんは競争きょうそう相手あいてであるテレビに観客かんきゃくを奪うばわれ、映画館えいがかん用ようのカートゥーン映画えいがは衰退すいたいし始はじめた。今日きょうのカートゥーン・アニメーションのほとんどは、テレビ放送ほうそう用ように制作せいさくされている。

カートゥーンアニメの主要しゅようなジャンル

ファニー・アニマルズ

初期しょきのカートゥーンアニメの多おおくは人間にんげんのような姿すがたをして言葉ことばを喋しゃべる動物どうぶつたちの活躍かつやくを描えがくファニー・アニマルズ（動物どうぶつアニメ）を題材だいざいとしていた。このジャンルは1900年代ねんだい初期しょきから1940年代ねんだいまでのカートゥーンの主流しゅりゅうであり、ディズニー・アニメや初期しょきのフライシャー・スタジオの屋台骨やたいぼねを支ささえていた。

ザニー・ユーモア

ワーナー・ブラザースのバッグス・バニーやダフィー・ダック作品さくひん、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーのテックス・エイヴリーの諸しょ作品さくひんにより、この有名ゆうめいなカートゥーンアニメの形式けいしきが導入どうにゅうされた。通常つうじょうこれらのジャンルでは、登場とうじょうキャラクターが大岩おおいわでぺちゃんこに潰つぶされたり、崖がけっぷちから足あしを踏ふみ外はずしたまま、数すう秒間びょうかん空中くうちゅうに浮うかんでいるアクションなどが登場とうじょうする。『ルーニー・テューンズ』や『トムとジェリー』などはこれらのアクションの好例こうれいである。ディズニーやフライシャーは真しんの意味いみでのこのジャンルを手掛てがけることはなかった。

洗練せんれんされたカートゥーン

カートゥーンメディアの成熟せいじゅくにより、そのユーモラスな性質せいしつを保たもったまま、より洗練せんれんされた作品さくひんが導入どうにゅうされた。クラシック音楽おんがくはしばしば戯画ぎが化かの素材そざいとされた。特筆とくひつすべき例れいが、チャック・ジョーンズによる『オペラ座ざの狩人かりゅうど（原題げんだい：What's Opera, Doc?）』である。

リミテッド・アニメーション

1950年代ねんだい、UPAを初はじめとする複数ふくすうのアニメーション制作せいさく会社かいしゃは、ディズニーに代表だいひょうされる従来じゅうらいのリアルで写実しゃじつ的てきなアニメーションに対たいし、作画さくがや動作どうさを簡略かんりゃく化かした抽象ちゅうしょう的てきなリミテッド・アニメーションの手法しゅほうを導入どうにゅうした。UPAが提示ていじしたこの楕円だえんと直線ちょくせんに基もとづくデザインは、「Iスタイル」とも呼よばれる。

主要しゅようなカートゥーン・アニメ制作せいさく者しゃと制作せいさく会社かいしゃ

• テックス・エイヴリー - バッグス・バニー、ダフィー・ダック、ドルーピーの生うみの親おや。
• ハンナ・バーベラ・プロダクション - 『トムとジェリー』『チキチキマシン猛もうレース』『パワーパフガールズ』で知しられるアニメーション制作せいさく会社かいしゃ。
• ウォルト・ディズニー - ミッキーマウスの生うみの親おや。ウォルト・ディズニー・カンパニーの創業そうぎょう者しゃ。
• フライシャー兄弟きょうだい - ベティ・ブープの生うみの親おや。短編たんぺんアニメーション『ポパイ』、『スーパーマン』等とうでも知しられる。
• チャック・ジョーンズ - 『ルーニー・テューンズ』『メリー・メロディーズ』の制作せいさく者しゃ。
• ウォルター・ランツ - ウッディー・ウッドペッカー、チリー・ウィリーの生うみの親おや。

関連かんれん項目こうもく

• カリカチュア
• 漫画まんが
  • 風刺ふうし漫画まんが
• アニメーション
  • アニメ
  • アニメーション映画えいが
• トゥーンレンダリング