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Fate/dragon’s dream

Fate/dragon’s dream

橋上はしがみ死闘しとう

「――最悪さいあくね。幸運こううんてんじてきょうとなる、ってうのかしら? こういう場合ばあい
「しかし、いずれにせよいつかはぶつからなければならないかべです」
おれのことなら大丈夫だいじょうぶだ。作戦さくせんどおこう」
「――それしかないか。OK、覚悟かくごめましょう。たよりにしてるわ、士郎しろう

ずっと前方ぜんぽうはし中腹ちゅうふくあたりにたたず二人ふたり間違まちがいない。
 一人ひとり金髪きんぱつ大男おおおとこ……ジークフリート。そして――もう一人ひとりたしかにつづりっていたとおり、金髪きんぱつおんなはたにいる。あれが――ジークフリートのマスター……?

「……ねえ、セイバー。あっちのむすめ、どうえる? わたしにはどうも人間にんげんじゃないようにえるんだけど」
 ……え?

「……この魔力まりょくは――しかし……」
「あはは、やっぱり? わらうしかないとこよここ。
 ――でもどういうこと? なんでドラグーンとりゅう一緒いっしょにいられるのよ……!
 かわいたみをこぼす遠坂とおさか。もちろん、そのはまったくわらっていない。

「な……! いまりゅうってったか遠坂とおさか!?」
ったわよ……! ――でもなにあれ……? なんていうか――ひどく単調たんちょう加工かこうされてるみたいな魔力まりょくだけど――」
「――あのむすめりゅう魔力まりょくまれているようです。サーヴァントなどとどうじ、実体じったいれいたい――?」

「ちょ……ちょっとった。じゃあ、マスターなわけないじゃないか! キャスターだって自分じぶんでマスターになれなかったから、れいのろいだけうばったんだろ!?」
「――どういうことなの……?」
 うろたえるおれたちかまわず、二人ふたりはどんどん距離きょりめてくる――!

「よう。一別以来いちべついらいだなさんにんとも。元気げんきそうでなによりだ」
 ジークフリートはおれたち前方ぜんぽう20mほどでまった。まるで気心きごころれた友人ゆうじんのように、心底しんそこうれしそうなかおけてくる。くそ、どうにも調子ちょうしくずれるな。

金髪きんぱつおんなはジークフリートのわきち、うでまわしてんで、おそなくこちらをつめている。そのあたまにぽんといて、ジークフリートはった。
「どうもおまえさんたちってたとおりのようだな。ひじりはい戦争せんそうはもうわったってか。こっちでも確認かくにんとれてな」

「――え」
「――もっとも、それとはべつにやることができた。そのうちひとつが、アルトリア、おまえさんをころすことでね」
「――!」
 ザッと身構みがまえるおれ遠坂とおさか。くそ、たたかわないでむかもとあま期待きたいをしたおれがバカだった――!

「そっちの魔術まじゅつじょうちゃんと小僧こぞうは、手出てだししなけりゃべつにどうもしねぇ……ってか、もうヤたたかえまんまんかよ」
「ジークフリート、どうしておまえ、セイバーを……」

おれうと、ヤツは心底しんそこ面白おもしろそうにおれつめ、
何故なぜ? おれをジークフリートとってそううかよ。オレはりゅうごろしでそいつはりゅうだ。理由りゆうとしちゃそれで十分じゅうぶんだろ」
 とった。

「ドラグーン、それならこちらからもおう。なぜ貴方あなたりゅうごろしでありながら、そのようなりゅう少女しょうじょれている?  御身おんみちからりゅう魔力まりょくぐ。りゅう魔力まりょくまれたそのような存在そんざいは、御身おんみちかづくだけで霧散むさんするはずだが」

「ん? ――あー、そういやこいつの紹介しょうかいがまだだったか。……ファフ」
 ジークフリートは少女しょうじょあたまにおいたでぽんぽんと彼女かのじょうながす。少女しょうじょは、
「ちょっと、やめてよ」
 と小声こごえってはらうようにあたまをぶんぶんると、こちらにかっていちし――そのげた。

「はじめまして……ってわけでもないんだけどね。ども、ファフニールってえば多分たぶんかるとおもうけど」
 その一言ひとこと沈黙ちんもくする。
 ――な、んだ、って?

ファフニール。それは、伝説でんせつにおいてジークフリートをしてりゅうごろしのふためいばわしめることとなったりゅう名前なまえじゃないか――!?

かみ々が小人こどもアンドヴァリからうばったニーベルンゲンの財宝ざいほう――賠償ばいしょうとしてそれをおくられ、小人こどものろいにおそわれた巨人きょじんぞく一家いっか長男ちょうなんは、そのたから一人占ひとりじめするために父親ちちおやころし、りゅうにそのえ、財宝ざいほううえにとぐろをいてねむったという。

そのりゅうへんじた巨人きょじんがファフニール。ジークフリートはこのりゅうころし、ニーベルンゲンの財宝ざいほうのろいをれ――不死ふしとなったのだ。

遠坂とおさかもセイバーもおどろきをかくせないでいる。当然とうぜんだ。なにせ伝承でんしょうにおいてはまさに宿敵しゅくてき宿敵しゅくてきけっして相容あいいれることのないにんなのだ。それがまるで兄妹きょうだいのごとく一緒いっしょにいるというのはどういうことなのか――

一応いちおう、よろしくね」
 少女しょうじょ優雅ゆうがれいをした。よくれば、少女しょうじょ背中せなかではなにか普通ふつうではないモノがれている。まるで恐竜きょうりゅうのような、かたうろこおおわれた尻尾しっぽ

「――冗談じょうだんだろ」
小僧こぞうべつにおかしいことはねぇさ」
 おれつぶやきがこえたのか、ジークフリートはこっちをながらった。

おれがコイツの親父おやじをぶっころしたことはってるな? あのヤロウ、最初さいしょいちげき致命傷ちめいしょういやがってな、てないとるや、自分じぶんいのちえにオレにうざってぇのろいをかけたんだよ。
 派手はでらして、ふと自分じぶん身体しんたいまわせば全身ぜんしんベッタベタよ。りゅうどくちだとはいていたが、そのとき別段べつだんどうとうこともなかった。だが、いつのまにか人様ひとさま身体しんたいにおかしな方陣ほうじん勝手かってつくってやがってな、コイツはその一部いちぶだってわけだ」

「――なんでファフニールりゅう自分じぶんころしたものまもるようなのろいをのこすのよ。あんたを道連みちづれにするようなのろいをのこすってもんがスジなんじゃないの?」
 おこったように遠坂とおさかたしかにそのとおりだ。それではりゅうは、相手あいてころされかけながらもそのにく相手あいてまものろいをいのちえにのこしたってことじゃないか。

「――ま、りゅう都合つごうにもいろいろあるんですよ。親父おやじさまはちょっとメンドウな性格せいかくしてたし。
 それはともかく、どうするの? そっちのアルトリアさんをせば、ひとにはさないけど」

論外ろんがいだ。セイバーをわたはない」
 一蹴いっしゅうする。遠坂とおさか無言むごんおれよこち、二人ふたりにらみつけた。
「そっちのマスターのじょうちゃんもおな意見いけんか? ――あんまりあんたとはたたかいたくねぇんだがな」
 ジークフリートがすここまったような口調くちょうう。

当然とうぜんでしょ。なにかなしくてセイバーをさなきゃいけないわけ? えるのはあんたたちだけで十分じゅうぶんよ」
 いさましくはんしながら、遠坂とおさか挑発ちょうはつするようにう。それをいたジークフリートはうでんだまま、口元くちもとをさもたのしげにニッとゆがめた。

「――うわ、やっぱ」
 ぼそっとファフニールと名乗なのった少女しょうじょった。そんな彼女かのじょをたしなめるかのように、ジークフリートがそのあたまにぽんとく。
「ソレ、とすんじゃねぇぞ」

かってるわよ。っていうか」
 ファフニールがそうった瞬間しゅんかん――まえ彼女かのじょ姿すがた一瞬いっしゅんえた。
「な――!?」
「あたしはこっちいるからいーの。さっさとわらせよ」
 こえだけがひびく。いままえにいるのはジークフリートいちにんだけだ。

――さっきのはなしからすれば、あの少女しょうじょはジークフリートの身体しんたいつつほうよろい一部いちぶ。おそらく実体じったいいただけ――ん、まてよ?  もしあの少女しょうじょが『りゅうのろい』であるとするなら――

遠坂とおさか、セイバー――」
 小声こごえう。
「ん、かってるわ。――くのはわたしたちにまかせて」
「すまん、たのんだにんとも」

セイバーがぐっとかまえた。ここはせま橋上はしかみ歩道ほどう、セイバーがジークフリートのこうがわければ背中せなかれる可能かのうせいがる――!

「――んじゃ」
 ジークフリートのからだ閃光せんこうつつまれ、つぎ瞬間しゅんかんには一昨日おとといたとおりの、しろよろいつつんだサーヴァントがっていた。ゴォッというおとともに、ジークフリートのなかには巨大きょだいほのおけんあらわれ――

「おっぱじめるか!!」

うやいなや、金髪きんぱつ巨人きょじんはとてつもないいきおいでんできた――!
 それはもはや突風とっぷうというレベルではない。突如とつじょ出現しゅつげんした台風たいふうだ。あたりの空気くうき強引ごういんされた巨大きょだい運動うんどうエネルギーにらされ、くるう。空間くうかんそのものをきしませる戦士せんしいちげきを、しかしセイバーははっしとめた。が、

「!?」
 ろされたほのおけんはそのままガードのうえからセイバーの身体しんたいたたつぶす――!
 絶望ぜつぼうてきおとともに、足元あしもとのコンクリートにべっこりとクレーターができた。

「セイバー!?」
 最悪さいあく映像えいぞう脳裏のうりをよぎる。クレーターの中心ちゅうしんにはたたつぶされまみれになったセイバーの姿すがたが――

「ぬ!?」
 いない!?
「ハァ!」
 セイバーを見失みうしなったジークフリートに、正面しょうめんから遠坂とおさかだんはなつ――! しかし

「チ!」
 ガギン!
 遠坂とおさか魔術まじゅつにはまったくもくれず、ジークフリートは死角しかくからおそいかかったセイバーのけんいた。どうやらギリギリのところでほのおけんながし、爆風ばくふうまぎれて後退こうたいしていたらしい。

「ちょっとシグ、なにあそんでんの? いつもの強引ごういん戦法せんぽうでちゃっちゃっとやっちゃいなさいよ」
「バァカ、こんなたのしい相手あいてひさしぶりだろうが」

そうだ。ジークフリートはりゅうほうよろいをまとっている。本来ほんらい、アイツは遠坂とおさかだけでなくセイバーのけん防御ぼうぎょする必要ひつようすらないんだ。
 あそばれている――! その意識いしきがセイバーをかっとさせたのか。

せま足場あしばうえ、セイバーはすさまじいあしさばきでジークフリートに肉薄にくはくし――とせかけ、上体じょうたいながえんけん回避かいひざま背中せなかろうと――

「させねえ!」
 けんつづいて轟音ごうおんともんできたりが、まともにセイバーのはら直撃ちょくげきする!

「グ、ハッ……!」
 鉄製てつせいすりをいがませるほどのいきおいでセイバーがたたきつけられ――
「シグ!」
わり――!!?」

ファフニールのこえひびいたのと、セイバーにとどめをさそうとしていたジークフリートが咄嗟とっさにその退しさったのはまった同時どうじ
 炸裂さくれつおんともに、ジークフリートがいた空間くうかん背後はいご上空じょうくうからいくつものだんさる!

「――くそ、はずした!」
 さきほどはなった遠坂とおさかだんのうち、正面しょうめんからはなったものはブラフだ。そんなものはヤツ相手あいてにはくらまし程度ていど効果こうかしかない。本命ほんめいはそれにまぎれておおきく空中くうちゅうばし、ブーメランのように軌道きどう変化へんかさせてセイバーとの戦闘せんとうられているジークフリートの背中せなかねらったのだ。

完璧かんぺきなタイミングだったが、ジークフリートは気付きづいた。もしかしたらアイツは、セイバーとおなじような直感ちょっかんはたらくのかもしれない。だが、それよりも、

「ファフ! めてしっかりてろ!」
「ゴメン!」
 ――どうやら背後はいご弱点じゃくてんはファフニールがカバーしているらしい。彼女かのじょ自身じしん手出てだしできないようだが、あれでは背中せなかがあるのとおなじか――!

「――く」
 がゆい。すぐにでもはた莫耶を投影とうえいしてセイバーのフォローにまわりたいところだが――それはできない。

ジークフリートにはおれ戦闘せんとう行為こういなにもできないとおもわせておいたほうがいい。いちでも投影とうえい魔術まじゅつせたら警戒けいかいされてしまう。そうなったらアウト、しくじればただでさえひく勝算しょうさんはさらにちる。

 ふたた剣戟けんげきうしろにまわもうとするセイバー、それをはばもうとするジークフリートだが、魔力まりょくけずられているのかセイバーのうごきがえてあらくなっていく。

「セイバー!」
「ク――!」
 そして、
「ハ、その程度ていど騎士きしおう!」
 あざけりさえめられた一言ひとこと頭上ずじょうからり、よこからはふたたうなりをげてりがぶ――!

「ぐっ!」
 咄嗟とっさ不可視ふかしけんりをめ、空間くうかん波紋はもんひろがった。
 本来ほんらいのサーヴァントせんなら肉体にくたい一部いちぶ使つかった格闘かくとうせんなど自殺じさつ行為こうい以外いがいのなにものでもない。そんなことをすればここぞとばかりにその部分ぶぶんとされるだけだ。

だが、ジークフリートにおいてはそれはてはまらない。ほうよろいおおわれた肉体にくたいきずつくこともなく、その強度きょうどからればたんなる凶器きょうきならない。
 そして、ジークフリートの追撃ついげきはしる。おおきくよろけたセイバーに

「**********」
 ひとみみにはききとれない、不思議ふしぎのろいがつむがれたその途端とたん。  空気くうき圧縮あっしゅくされたような感覚かんかく青白あおじろほのおり、ぎん刀身とうしんかがやく。
 グラム――!

「セイバー!」
 ろされる致命ちめい一打いちだ
 セイバーはった。グラムが本来ほんらいちから発揮はっきするなら、わたしふせぐこともけることもできず、防御ぼうぎょうえからせられるでしょう、と。

それは誇張こちょうではない。青白あおじろほのおわばさや。セイバーとおなじく有名ゆうめいぎるがため、『られない』ように、そしてけん発散はっさんするちからおさえるためにけられた余計よけい魔術まじゅついま、ついにジークフリートはその究極きゅうきょくけんき、そして――!

がしぶいた。咄嗟とっさをかわしたセイバーの左肩ひだりかたに、りゅうちからころけんむ――! が、

「ハァァッ!」
 なんとセイバーは、かえでなぎはらおうとするジークフリートのけんふうおう結界けっかいたてて、それを支点してんにふわりといち回転かいてん――! 轟音ごうおんともさかさまになったセイバーのあたました通過つうかしていく追撃ついげきをかわし、ついにセイバーはこうがわった。

ザザッ!
 痛烈つうれつ一撃いちげきえに、セイバーはジークフリートをかわして背後はいごのポジションをった。これでセイバーと遠坂とおさかでジークフリートの前後ぜんごり、遠坂とおさかうしろにおれがスタンバイしている状況じょうきょうができあがったことになる。

ファフニールのサポートがあるとはいえ、つね背中せなかからの攻撃こうげき警戒けいかいしなければならない位置いちのジークフリートはこれで不利ふりになったとえる――しかし
「ハァ……ハァ……ぐ……っっ!!」

「ハ、なるほど、本命ほんめいたせてそれとえに位置いちりってか。にくらせてほねつ……だが、おまえさん、まだグラムをあまてたようだな」
「はっきりって正気しょうきじゃないわね」

あきれたようなジークフリートとファフニールの言葉ことばは、おそらく挑発ちょうはつとかそんなものではなく、たんなる事実じじつだ。まるでかたきずかられているかのごとく、ごっそりセイバーの魔力まりょくうしなわれている。
 位置いちてきには有利ゆうりてたが、セイバーのあの状態じょうたいでは――

「――くそ」
 歯噛はがみする。できることならいますぐセイバーのフォローにみたい。だけど――

まもるみやくん、もうすこしの辛抱しんぼうよ。いまめばセイバーが決死けっし覚悟かくごつくったチャンスがフイになる。かってるでしょう?
「――ああ――だけど、あのままじゃセイバーが」
「……大丈夫だいじょうぶ。まだセイバーは余力よりょくのこしてる。きなさい士郎しろうまえはあなたのほういてたじゃない」

ジークフリートは遠坂とおさか警戒けいかいしているが、はあくまでセイバーからはなさない。この位置いちからではおれたちがいるためにせいけん使用しようできないが、ジークフリートは、自分じぶん注意ちゅういすべきは魔力まりょく放出ほうしゅつによるセイバーのみの速度そくどだとかんがえているのだろう。

サーヴァントであるセイバーにけることはいくらヤツでも危険きけんだ。なんとか一瞬いっしゅんでも、ヤツが完全かんぜんにこちらにければ――

「――こっちから仕掛しかけるわ。士郎しろう準備じゅんびはいい?」
「もちろんだ。いつでもこい」
 じりじりと対峙たいじするセイバーとジークフリートだが、ジークフリートは背後はいご遠坂とおさかになるのか攻撃こうげきをしかけようとしない。

「――こんッ!」
 静寂しじまやぶったのは遠坂とおさか一声いっせい左腕さわんをまくりあげ、魔術まじゅつ刻印こくいん魔力まりょくとおし、すうはつのガンドを生成せいせいする!

それにセイバーが呼応こおうした。だが、ジークフリートはあろうことか身体しんたい完全かんぜん真横まよこけ、右手みぎてけんをふるいセイバーとわたいながら左手ひだりてでガンドをすべてめている――!

「まだまだ―――!!!」
 もはや機関きかんじゅう乱射らんしゃちかいガンドの猛烈もうれつみだが、ジークフリートはまったく微動びどうだにしない。が、遠坂とおさかはガンドをそのままのいきおいでちながら、宝石ほうせき右手みぎてゆびはさみこみ突然とつぜんジークフリートにかって突進とっしんした!

左手ひだりて! あとうしろにたま3つ!」
 ファフニールのおどろいたこえがする。ジークフリートはそのままセイバーとわたいながら、――いったいどうやって遠坂とおさか位置いちはかったのか、正確せいかく彼女かのじょ正面しょうめん跳躍ちょうやくし、いすがるセイバーをけんであしらいながら痛烈つうれつ当身あてみした――!

「きゃっ!?」
遠坂とおさか!!」

体型たいけいがありぎるためにクリーンヒットとはいかなかったが、遠坂とおさかはガシャンとすりにたたきつけられ、そのままへたりむ。と、ジークフリートはセイバーをばし、一瞬いっしゅんにしてけん左手ひだりてちかえるととも身体しんたいを180旋廻、ガンドにまぎれて遠坂とおさかはなった背中せなかねらいの3はつ宝石ほうせき右手みぎてはらった!  ドン、ドンドン、というおととも閃光せんこう炸裂さくれつする。

――そのとき
 えた――! ジークフリートの背中せなか――!

遠坂とおさか健在けんざいかぎり、ジークフリートはこちらに背中せなかせない。ならばダメージ覚悟かくごでヤツにちかづき、やられたとせかけてセイバーとのたたかいに集中しゅうちゅうさせられれば――!
 遠坂とおさかつくってくれた千載一遇せんざいいちぐうのチャンス!

「――投影とうえい《トレース》、開始かいし《オン》」
 ならげきてつ次々つぎつぎろし、やっつの工程こうていすべてをクリア。
 いまここに、幻想げんそうむすびてけんとなす――!
 右手みぎてまれ質量しつりょう。それはまぎれもなくクー・フーリンのやり!!

投影とうえい《トレース》、完了かんりょう《オフ》」
 いける! 投擲とうてきかまえとともやりへとありったけの魔力まりょくめ、のろい発動はつどうさせ――
「シグ!!! 呪詛じゅそ!!!」

突然とつぜん
 おれのすぐわきにファフニールが実体じったいした!?
 く――! そうか、さっき遠坂とおさか位置いちはかったのも――!
 一瞬いっしゅんまようも、おれはそのままジークフリートの背中せなかねらう。
「―――とっ穿うがつ《ゲイ》」

「ンなんだとオ!?」
 ジークフリートがこえこうとする、だが――セイバーがそれをはばむ!
しょうやり《ボルク》!!」
 因果いんが逆転ぎゃくてんさせ、心臓しんぞう穿うがやりはなたれた――!

おれ魔力まりょくではランサーの威力いりょく再現さいげんするにはとおおよばない。だが、呪詛じゅそさえ発動はつどうさせてしまえばまんいち致命傷ちめいしょうにならずともだい打撃だげき確実かくじつ

ジークフリートには時間じかんがもはやない。いたところで、やり軌道きどうえるだけ――!
 ――だがまだ! 勝機しょうき完全かんぜんなものにするため、ただちにおれつぎ投影とうえいうつる!

「ウソ!? グングニル!?」
「なめんじゃ―――」
 うなりをげてジークフリートの背中せなか急所きゅうしょめがけてんでいくやり。ゲイボルクをめようとこちらにけばセイバーにられ、セイバーとけんまじえればやり確実かくじつ背中せなかつらぬく!

ころせ《と》った!
 そのとき、そのにいたほとんどのもの――ファフニールでさえ――がジークフリートの敗北はいぼく予感よかんした。
 ――そう。ジークフリート本人ほんにんのぞいて。

「ねええぇぇぇぇ!!」
 グラムがジークフリートの背後はいごから半円はんえんえがくようにセイバーのあたまろされ―― ガラン。
 ――ゲイボルクが、ちた。
 まったく唐突とうとつに、前方ぜんぽうへの推進すいしんりょくうしなったかというがごとくに。

「な!?」
 がっきとふうおう結界けっかいでグラムをめるセイバー……だが、そんな防御ぼうぎょ本気ほんきになったりゅうごろし《ドラグーン》のまえには通用つうようするはずもなく。

ビチャリと、ねる。
 間一髪かんいっぱつ、セイバーはうしろにび、ぷたつにされることだけはけた。
 が、むねをざっくりと袈裟懸けさがけにかれ――

「あ、う……!」
「セイバー!!」
 さけぶ。
 セイバーの足元あしもとには、なががもういけさくリはじめていた。

ドクン
 心臓しんぞうがはねる。
 もうセイバーはたたかえない。そして、つぎいちげきふせぐことは不可能ふかのう。グラムは確実かくじつりゅうる……!

「――もう、おっどろいた……」
 おれとなりでなお実体じったいかないファフニール。
 少女しょうじょ姿すがたのそれに、こんなことをするのはける。
 だが、

「ごめん」
「え?」
 背後はいごち、かえって見上みあげてきた少女しょうじょむねに、おれ投影とうえいしたルールブレイカーをした。

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