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Fate/dragon’s dream

Fate/dragon’s dream

みっつのちいさな幕間まくあいげき Ⅲ

Interlude 4-3

そして、ふたたゆめる。
 ――10ねんまえほのお記憶きおく。だけど、最近さいきんはそれだけじゃない。おなえんでも、そこはちが世界せかいだった。

ころし、ころされる戦場せんじょうとは、かくも無残むざんなものなのか。げた死体したいかれた死体したい。でも、そんなものはまだしもすくいがあったのかもしれない。
 どれだけひど姿すがたであろうとも、いきえていれば、もうそれ以上いじょうくるしまなくてむのだから――  

――いたいたいたい――
――にたくない、だれか、だれかたすけて――
――あつい、みずみず――

れない人々ひとびとうめき。やがれそれは、おれ自身じしんほのお記憶きおくともざりこみ、ただの地獄じごく風景ふうけいした。そのなかで、
『よかった――本当ほんとうによかった――』
(――)

地獄じごくからたすしてくれたおとこがいた。たすかるはずのない悪夢あくむなかで、たったひとつだけつけた奇跡きせき。その本当ほんとううれしそうな表情ひょうじょうに、おれは、

――おれは――
――おれは、あこがれ、そして――

のぞんでいたきり嗣の輪郭りんかくが、ぼやける。

――おれは、アコガレ――
――あこがれ、たのか――

そこは、けん荒野あらのだった。あかえるそら製鉄せいてつしょおもわせる歯車はぐるままわり、にはになのないけんがどこまでもつづく。

「――そう、おれは」
 カラッポになったしんで、あこがれたんだ――
なにに?」
 すべてのひとわらっていられるような、そんなユメをかなえられる正義せいぎ味方みかたに――
それが、たとえ――

 

――じいさんのゆめは、おれが――
――ああ、安心あんしんした――

ものゆめだったとしても。 あの笑顔えがおこうがわの、――
 辿たどけぬ、理想郷りそうきょうに――

『てめぇのまわりの人間にんげんは、しあわせそうなかおしてるか?』

亀裂きれつ

『――てめぇはそのままじゃ、瞬間しゅんかんにてめぇ自身じしん裏切うらぎられるだろうよ』

くるしい。眩暈げんうんがする。よこたわった身体しんたいに、しつぶされるような圧迫あっぱくかんれに映像えいぞう断片だんぺん脳裏のうりぎる。
(――遠坂とおさか
 そのひとみは、絶望ぜつぼうかなしみにいろどられ――

(セイバー……)
 おのれ無力むりょくおもり、くやしさにかおいがませ――
 おれまえったあか騎士きしは、おれをまっすぐに見据みすえてう。

だれかをたすけたいというねがいが綺麗きれいだったからあこがれた』
ゆえに、自身じしんからこぼれおちた感情かんじょうなどない。これを偽善ぎぜんわずなんという』
『このだれかのためにならなければならないと、強迫きょうはく観念かんねんうごかされてきてきた』
『それが苦痛くつうだとおもうことも、破綻はたんしているとづくあいだもなく、ただはしつづけた』

『だが、所詮しょせん偽物にせものだ。そんな偽善ぎぜんではなにすくえない。いや、もとより、なにすくうべきかもさだまらない――』

なぜ、偽善ぎぜんなのか。だれもがわらっていられる、そんなユメをることがゆるされないことなのか。
『おまえは、おまえまもろうとしたものをこそ、絶対ぜったいまもれない』

おのず。ヒトは世界せかいることはできるが、あるひとつのものだけはることができぬ。すなわちそれは、世界せかいうつすその――おのれ自身じしんだ。
 だが、おのれないで表出ひょうしゅつされた世界せかいなぞ存在そんざいせぬ。そのうつ世界せかいは、かならず『おのれ』をとおさねばえぬものなのだから」

あか外套がいとうは、何時いつしか宵闇よいやみいろわっていた。

意思いし意識いしきよりもふかい『おのれ』――それはときとして、意識いしきはるかにえた部分ぶぶん生存せいぞん必要ひつよう物事ものごと決定けっていする。その結果けっか、なんらかのゆがみをしょうじたとしても、な。
 おあるじ場合ばあいまさにそれだ。もしそれをさとることなく、とどいてはいけない理想りそう到達とうたつしたとき、おあるじはヤツのとおり、『おのれ自身じしん裏切うらぎられることになろう。――うことと辿たどりつくことはちがう。そのことをつとむわすれぬことだ」

――おれ、は
まよいをてるな。まよいをてることは、すなわしんてること。まよいのてにられたこたえが、間違まちがいのはずはないのだから」
 ――それに、ばす。

『』
――それが、偽物にせものだらけのおれの、『究極きゅうきょくいち』。
 の笑顔えがおこうがわひろがる、その世界せかいに――

ってしまった正義せいぎ味方みかた。――よどんでしまった。
 なぜ、おあるじはそれをもとめたのか。なやむがいいよ、少年しょうねん――おおもならもしかしたら、おれられなかったこたえを、られるやもしれぬ――」
 金色きんいろひかりあふし、枕元まくらもとあさがやってきた。

Interlude out

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