(Translated by https://www.hiragana.jp/)
こいのぼり - Wikipedia

こいのぼり

日本にっぽん風習ふうしゅう男児だんじ出世しゅっせ健康けんこうねがってこいかたちしてつくったのぼり

こいのぼり鯉幟こいのぼり)は、日本にっぽん風習ふうしゅうで、江戸えど時代じだい武家ぶけはじまった端午たんご節句せっく男児だんじすこやかな成長せいちょうねがって家庭かてい庭先にわさきかざこいかたちしてつくったのぼり[1]かみぬの不織布ふしょくふなどにこい絵柄えがらえがいたもので、かぜけてたなびくようになっている。さつきのぼり(さつきのぼり)、こいなが[2]ともう。日本にっぽんこいのぼり協会きょうかい統一とういつ見解けんかいでは屋外おくがいかざるものを「こいのぼり」、屋内おくないかざるものを「かざこい」という[1]

こいのぼり(うえから矢車やぐるまながし、真鯉まごい緋鯉ひごいこい

もとは旧暦きゅうれき5月5にちまでの行事ぎょうじであったが、現代げんだいではグレゴリオれき新暦しんれき5月5にちけてかざられるようになり、イメージは「晩春ばんしゅん晴天せいてん青空あおぞらにたなびくもの」となった。ただし、地方ちほうにより、端午たんご節句せっくいわ時期じきちがうので、旧暦きゅうれき端午たんごやひと月遅つきおくれのグレゴリオれき新暦しんれき6月5にちとする地方ちほうもある。

概要がいよう

編集へんしゅう
 
歌川うたがわ国芳くによし:『坂田さかた怪童かいどうまる天保てんぽう7ねん1836ねんごろ

初期しょきこいのぼりは真鯉まごいくろこい)だったが、やがて真鯉まごい(まごい)と緋鯉ひごい(ひごい)の二色にしきとなり、さらにあおこいくわわって家族かぞくあらわすようになった[1]後述こうじゅつ)。ただし、過渡かとてきくろあおだけというわせもられた。また、真鯉まごいあかはだかおとこがしがみついているのものがあるが、これは金太郎きんたろうとみられ金太郎きんたろう自分じぶんよりおおきいこいつかまえた伝説でんせつをもとにしているとみられる。

最近さいきんではりょくやオレンジ、むらさき、ピンクといった、よりはなやかないろこい普及ふきゅうしてきており、ところによってはおんなふく家族かぞく全員ぜんいんぶんこいげるいえもある。暖色だんしょくこい増加ぞうかはそういった需要じゅようこたえてのことのようである。カラフルなこいは1964ねん東京とうきょうオリンピックのころ、あるこいのぼり職人しょくにん五輪ごりんいろをヒントにかんがえたという。

さおのさき回転かいてんだまやかごだま、そのした矢車やぐるまけ、吹流ふきなが一番いちばんじょう以下いか真鯉まごい緋鯉ひごいあおこいおおきさのじゅんならべてげるのが一般いっぱんてき[1]吹流ふきながしはもともと五色ごしきの「五色ごしき吹流ふきながし」であったが、のちに彩雲さいうん瑞祥ずいしょうりゅうこいなどをえがいた「柄物がらもの吹流ふきながし」も登場とうじょうした[1]

明治めいじ以前いぜん和紙わしでできたものがほとんどだった[1]明治めいじ後半こうはん綿めんせい昭和しょうわ30年代ねんだい合成ごうせい繊維せんいせいへとわった[1]。しかし少子化しょうしか住宅じゅうたく事情じじょう変化へんか庭付にわつ一戸建いっこだ住宅じゅうたく減少げんしょうマンションなど集合しゅうごう住宅じゅうたく増加ぞうか)さらに節句せっくたいする価値かちかん変化へんかから、民家みんかにわにこいのぼりががる姿すがたることはすくなくなっていて、ベランダや玄関げんかんわき室内しつないかざ小型こがたのこいのぼりがえている[1]室内しつないくものはこいかざりとばれることがある。

高速こうそく道路どうろなどでは風速ふうそく風向ふうこうしめ吹流ふきながが、4がつ・5月にはこいのぼりにってえられる場合ばあいもある[3]

こいのぼりは節句せっくいわいにもちいるが、おも宣伝せんでん・イベントようサバマグロタイフグなどをしたことなるさかなしゅののぼりもある[1]

発生はっせい過程かてい

編集へんしゅう
 
J.M.W. Silverさく"Sketches of Japanese Manners and Customs" (1867ねん[4] より。のぼりには鍾馗しょうきさま姿すがたえる。
 
歌川うたがわ広重ひろしげ名所めいしょ江戸えどひゃくけい』より『水道橋すいどうばし駿河台するがだい[5]』。当時とうじはまだ錦鯉にしきごい普及ふきゅうしておらず、真鯉まごいのみがかざられている。

節句せっく行事ぎょうじ平安へいあん時代じだいからとされているが、もともと武家ぶけには端午たんご結句けっくけて玄関げんかんのぼり(のぼり)や旗指物はたさしものかざ風習ふうしゅうがあった[1]端午たんご節句せっくには厄払やくはらいに菖蒲しょうぶもちいることから、別名べつめい菖蒲しょうぶ節句せっく」とばれ、武家ぶけでは菖蒲しょうぶと「尚武しょうぶ」とむすびつけて男児だんじ立身出世りっしんしゅっせ武運ぶうん長久ちょうきゅういの年中ねんじゅう行事ぎょうじとなった。

江戸えど時代じだい中期ちゅうきになると商人しょうにんがこの風習ふうしゅうおこなうようになった[1]。ある町人ちょうにんのぼり竿頭かんとうの招代(おぎしろ)とばれるしょうはたのようなものを中国ちゅうごく登龍門とうりゅうもん故事こじからこいかたどったものにかえてかかげたところ、それがひろまり次第しだい大型おおがたしたものがこいのぼりとされている[1]

逸話いつわとして、武士ぶしいえ端午たんご節句せっくのぼりかざっていわっているのを町人ちょうにんおなじものをしいと父親ちちおやにねだるが、身分みぶん制度せいど手前てまえ町人ちょうにん真似まねするわけにはいかずこまっているところを赤荻あかおぎやなぎかずという武士ぶし染物そめものこいめて、それを吹流ふきながじょうにしたものをつくらせ、町人ちょうにんあたえたことが由来ゆらいともわれている。[6]

江戸えど皐月さつきこい吹流ふきながし」とわれるように、こいのぼりは「のぼり(のぼり)」とはづけられているものの、形状けいじょうさかなした吹流ふきなががたである。

これはおも江戸えどふく関東かんとう地方ちほう風習ふうしゅう当時とうじ関西かんさい上方かみがた)には風習ふうしゅうであった。天保てんぽう9ねん(1838ねん)の『東都とうと歳時記さいじき』には「出世しゅっせさかなといへることわざにより」こいのぼり(のぼり)にかざけるのは「東都とうと風俗ふうぞくなりといへり」とある。

こい故事こじ

編集へんしゅう

中国ちゅうごく正史せいしじゅうよんひとつであるこう漢書かんしょによる故事こじで、黄河こうが急流きゅうりゅうにあるりゅうもんばれるたきおおくのさかなのぼろうとこころみたがこいのみがのぼり、りゅうになることができたことにちなんでこいたきのぼ立身出世りっしんしゅっせ象徴しょうちょうとなった。栄達えいたつするための難関なんかんを「登竜門とうりゅうもん」とぶのも、この故事こじにもとづく。

こい構成こうせい

編集へんしゅう

初期しょきこいのぼりは真鯉まごいくろこい)の一色いっしょくのみだった[1]歌川うたがわ広重ひろしげの『名所めいしょ江戸えどひゃくけい』ではおおきな真鯉まごいいちひきえがかれている[1]

明治めいじ時代じだい後半こうはんから大正たいしょう時代じだいにかけて真鯉まごいくろこい)と緋鯉ひごいあかこい)のひき一対いっついであげるようになった[1]緋鯉ひごい(ひごい)はもともと男児だんじあらわしており、昭和しょうわ6ねん童謡どうようこいのぼり』でも真鯉まごい父親ちちおや緋鯉ひごいどもとしている[1]。しかし、昭和しょうわ30年代ねんだい後半こうはんにはさらにちいさいあおこいくわえられ、家族かぞくかん変化へんかなどもあいまって緋鯉ひごいあかこい)は母親ははおやあおこいどもとさい定義ていぎされるようになった[1]。まもなく兄弟きょうだい姉妹しまいあらわこいとしてりょくやピンク、むらさきこいふくまれるようになった[1]

おも行事ぎょうじ

編集へんしゅう

日本にっぽんでは全国ぜんこく各地かくちでこいのぼりにちなんだ行事ぎょうじおこなわれる。

  • 戦前せんぜんからこいのぼりの生産せいさんりょうでは日本一にっぽんいち埼玉さいたまけん加須かぞでは1988ねん2がつながさ100メートル・350kgのこいのぼりをつくり、全長ぜんちょう世界一せかいいちおおきさで有名ゆうめいになった。生産せいさんりょうたかさとともに加須かぞのこいのぼりとして世界中せかいじゅうらしめた。同市どうしでは毎年まいとし5がつ開催かいさいする市民しみん平和へいわさい利根川とねがわ河川敷かせんしき勇姿ゆうしせる。
加須かぞでは明治めいじのはじめごろに、かさ提灯ちょうちん職人しょくにんが、あまった材料ざいりょう和紙わし使つか片手間かたてまつくはじめたのが起源きげんとされている。その明治めいじ中頃なかごろから量産りょうさんはじまるが、大正たいしょう12ねんきた関東大震災かんとうだいしんさいにより、東京とうきょう方面ほうめん職人しょくにんつぶれ、それにより加須かぞ注文ちゅうもん殺到さっとうした。やがて、日本一にっぽんいち生産せいさんりょうとなった[7]

唱歌しょうか童謡どうよう

編集へんしゅう

こいのぼりは、いくつかの唱歌しょうか童謡どうよううたわれている。

  1. 作詞さくしあずまくめ、作曲さっきょくたき廉太郎れんたろう 『こいのぼり』[8]
  2. 作詞さくししゃしょう作曲さっきょく弘田ひろた龍太郎りゅうたろう 『こいのぼり1914ねん大正たいしょう3ねん
  3. 作詞さくし近藤こんどう宮子みやこ作曲さっきょくしゃしょう 『こいのぼり1931ねん昭和しょうわ6ねん

とくに、口語こうご調ちょうの3番目ばんめのものと、文語ぶんご調ちょうの2番目ばんめのものが有名ゆうめいである。

こいのぼりにかんする逸話いつわ

編集へんしゅう

スポーツにおけるこいのぼり

編集へんしゅう
  • プロ野球やきゅう広島東洋ひろしまとうようカープ応援おうえんグッズとして、ぶしわずこいのぼりが使用しようされる。
  • おもダカール・ラリー参戦さんせんしているラリードライバー菅原すがわら義正よしまさはこいのぼりを自身じしんのトレードマークとして使用しようしており、セレモニアルフィニッシュくるまけて走行そうこうすること世界せかいてきられている。
  • 人間にんげんこいのぼり - 直立ちょくりつしたはしら両手りょうてつかみ、からだ全身ぜんしん地面じめん平行へいこうになるようげる運動うんどう

類似るいじぶつ商品しょうひん

編集へんしゅう

Unicode6.0において、Carp Streamer名称めいしょうで、こいのぼりの絵文字えもじ採用さいようされている。

記号きごう Unicode JIS X 0213 文字もじ参照さんしょう 名称めいしょう
🎏 U+1F38F - 🎏
🎏
Carp Streamer

脚注きゃくちゅう

編集へんしゅう
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 工業こうぎょう繊維せんい製品せいひん 岡崎信用金庫おかざきしんようきんこ、2019ねん12月15にち閲覧えつらん
  2. ^ 斎藤さいとう良輔りょうすけ日本人にっぽんじんがた玩具おもちゃ辞典じてん』(東京とうきょうどう出版しゅっぱん、1997ねん)163ページ
  3. ^ 米子よなご自動車じどうしゃどうこいのぼりを設置せっちします”. 西日本にしにほん高速こうそく道路どうろ株式会社かぶしきがいしゃ中国ちゅうごく支社ししゃ (2008ねん4がつ21にち). April 23, 2012閲覧えつらん
  4. ^ 江戸えど時代じだい日本にっぽん礼儀れいぎ習慣しゅうかんをスケッチした貴重きちょうしょぜんページ無料むりょう公開こうかいちゅう - GIGAZINE”. gigazine.net (2007ねん12月6にち). 2023ねん9がつ19にち閲覧えつらん
  5. ^ 江戸えど浮世絵うきよえでたどる 端午たんご節句せっく浮世絵うきよえのアダチ版画はんがオンラインストア”. www.adachi-hanga.com. 2023ねん9がつ19にち閲覧えつらん
  6. ^ 東京とうきょう民話みんわ - コイのぼりのはじまり』偕成社かいせいしゃ、1987ねん、101-110ぺーじ 
  7. ^ 伊藤いとう大仁おおひと東武とうぶせん歴史れきし散歩さんぽたか書房しょぼう、1988ねん6がつ15にち、92-93ぺーじ 
  8. ^ 宮田みやたともうたぎたい日本にっぽんうたこいのぼり”どもの生育せいいくねがおやあい語句ごくひそめられた文化ぶんか重層じゅうそう」『帝塚山大学てづかやまだいがく現代げんだい生活せいかつ学部がくぶ子育こそだ支援しえんセンター紀要きようだい2かん帝塚山大学てづかやまだいがく現代げんだい生活せいかつ学部がくぶ子育こそだ支援しえんセンター、2017ねん3がつ、69-83ぺーじCRID 1050001338020856704ISSN 24241024NAID 120006313210 
  9. ^ こいのぼりと将門まさかど伝説でんせつ 矢納やのう”. 神川かみかわまち (2018ねん6がつ27にち). 2021ねん4がつ26にち閲覧えつらん
  10. ^ 『ナニコレちんひゃくけい』2012ねん5がつ2にち放送ほうそうぶん・【ちんひゃくけいNo.1270】「あがらないこいのぼり」埼玉さいたまけん神川かみかわまち
  11. ^ 大井おおいまちこい”. Do! たんばRadio. 京都学園大学きょうとがくえんだいがく (2010ねん). 2016ねん3がつ8にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2015ねん4がつ18にち閲覧えつらん
  12. ^ ふるさと昔語むかしがたり(119)大井おおい神社じんじゃのコイ伝承でんしょう亀岡かめおか”. 京都きょうと新聞しんぶん (2007ねん7がつ6にち). 2015ねん4がつ18にち閲覧えつらん
  13. ^ 中山なかやまよしあきら 1987, p. 100.
  14. ^ あらゆるサーチ「東海とうかい3けん地元じもとあるあるin瀬戸せと”. 名古屋テレビ放送なごやてれびほうそう株式会社かぶしきがいしゃ (2021ねん5がつ26にち). 2023ねん3がつ9にち閲覧えつらん
  15. ^ くじらのぼり(宮崎みやざき特産とくさんキュラカフェ)
  16. ^ 加須かぞ名物めいぶつ こいのぼりしょう うみ (加須かぞ/たいき・大判おおばんき)”. べログ. 2023ねん9がつ19にち閲覧えつらん
  17. ^ Amazon | 【徳永とくながこい】のぼり水族館すいぞくかん うなぎ うなぎのぼり 単品たんぴん店舗てんぽ・イベントようのぼり) | こいのぼり | おもちゃ”. www.amazon.co.jp. 2023ねん9がつ19にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

編集へんしゅう

関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう