正式名称は英語で Republic of Botswana(リパブリック・オブ・ボツワーナ)[3]。通称、Botswana。ツワナ語で Lefatshe la Botswana。日本語の表記はボツワナ共和国[3]。通称、ボツワナ。
国名は「ツワナ人の国」を意味している[4]。なおツワナ人はこの国のみにいる民族ではなく、隣国の南アフリカ共和国にはボツワナの総人口の数倍に及ぶツワナ人が存在している。
ボツワナの地図
オカヴァンゴ・デルタ
国土面積は世界44位。なお、国土の約17%が政府により指定保護区とされ、開発から手付かずで残されており、世界各国から観光客や研究者が訪れる。
ボツワナは南部アフリカの内陸に位置し、周縁を高地で囲まれ、海から数百キロメートル以上も隔たった内陸国であり、見渡す限りの平原が広がる盆地の中央部にある。また、位置は南緯18~27度であり、大部分が熱帯に属するが、海抜1000メートル前後と高いため、年平均気温は20~23度と温帯並みである。しかし、気温の変動幅は大きく、夏には酷暑日があるが、冬には氷点下まで下がる日がある。季節は、夏の雨季と冬の乾季とに二分される。雨季は11月に始まり、次の年の3月まで続く。乾季は5月から始まり9月まで厳しい乾燥の日が続く。このうちの6~8月が冬であり、晴天の日が続き、日中は暑く、夜は気温が急激に下がり、氷点下になることもある[17]。
北部にはサバンナ気候のためサバンナが覆うが、サバンナにもまばらに低木と草が茂って生えてるところがある。中西部の大半がカラハリ砂漠に覆われており、北には沼地地帯が広がる。多少の降雨があり、多くはステップ気候に分類される。南部はほぼ砂漠になっており、リンポポ川とモロポ川が南アフリカとの国境になっている。
なお、首都のハボローネをはじめとする都市部はオフィスビルも多く、各種交通やITなどのインフラストラクチャーが整っているものの、政府の自然保護政策を受けて多くの緑が残されている。
ボツワナ国防軍は陸軍と空軍によって構成されており、他に準軍事組織として警察(英語版)の機動隊が存在する。徴募制度は志願制。内陸国の為海軍は保有しておらず、河川、湖沼を哨戒する軍事的組織も保有していない。3つの組織を合わせた総兵力は10,500人。
ボツワナは、軍事に関する公式の予算書の入手が困難な国である。2018年11月、ストックホルム国際平和研究所はサハラ砂漠以南地域のアフリカ諸国における軍事費の透明性について報告したが、ボツワナは「フランスやスイスから武器を購入して軍事費が急増しているが、国家としての防衛政策や武器調達に関する政府の情報が欠落しており、透明性が悪化している」と報告している[20]。
ボツワナの通貨単位は「プラ」(pula)。国際通貨コード (ISO 4217) は「BWP」。補助通貨単位は「テベ」(thebe) で、1プラ=100テベ。プラとテベはそれぞれ、「P」と「t」に略される。
IMFの統計によると、2017年のGDPは約174億ドル。一人当たりのGDPは推定7,584ドルで世界水準と比較しておよそ70%、隣国南アフリカ(6,180ドル)を上回りアフリカ全体では、推定値ではあるが、4位という高さに位置する[27]。
ボツワナは1966年の独立以後、豊かな天然資源と手堅い経済政策、安定した政治状況や高い教育程度に基づき、世界最高水準の経済成長率を1980年代末まで維持し続けた。その結果、他の多くのアフリカ諸国とは異なり1994年に「世界最貧国グループ」から抜け出し(指定解除)、1人当たりGDPはモンテネグロとドミニカ共和国と同クラスの世界80位前後に位置し、「中所得国」に分類されるなど、アフリカの優等生といわれ、堅実な経済状況を保ち続けている。
なお、200万人に満たない人口しかないものの、総GDP(為替レート)は、ボツワナより人口が多いラオスやジンバブエ、ボスニア・ヘルツェゴビナなどと同程度の世界120位前後となっている。
2017年度のインフレ率は3.3%[28]
と比較的安定している上、同年度の経済成長率は2.4%[29]
と安定した経済成長率を保ち続けているものの、世界銀行の統計では、2010年の失業率が17.9%[29]で、2007年の民間の調査結果では40%近い失業率も報告されている。このためボツワナ政府は国内の雇用や所得を増やそうと、デビアスに働きかけてDiamond Trading Company Botswana(DTCB)を共同でハボローネに設立し、かつては原石のまま輸出されていたダイヤモンドの選別や販売の機能を誘致した[21](後述の「DTC」の項も参照)。
高い国民の教育レベルやインフラストラクチャーの整備をバックに、産業の多角化や外資の積極導入を行い、これを克服しようとしている。実際に、外資の積極導入を推進するために為替の自由化を導入したほか、外国企業に対する優遇税制の導入や、低い法人税率の導入を実現し、さらに汚職防止策の導入や政府による職業訓練の導入などを進めている。しかし、長年の課題である経済多角化については、まだ大きな成果はあがっていない。
農業では、牛肉を産する牧畜は盛んであるものの、野菜や主食となる穀物は南アフリカ共和国からの輸入が多い[21]。
ただし、2018年時点で、経済の多角化は失敗しているという評価がある。ボツワナ経済の中心であるダイヤモンド鉱山は、2016年時点で、残り20年ほどで枯渇すると考えられており、多角化の推進は急務とされる[30]。
これらの堅実な経済状況に伴い、ガスや電気、水道や通信、交通網などの基本インフラストラクチャーや、携帯電話網やITインフラストラクチャーも都市部を中心に整えられている。さらに国内都市部を中心とした高速道路の整備も進められている。
ジョワネンダイヤモンド鉱床。
モレミ野生動物保護区内で休むライオンの親子。
農業部門では、自給農業と牛や羊の畜産が中心で、牛肉の輸出の割合が大きい。食品加工などの軽工業は発展しているものの、現在のところ重工業やハイテク産業はほとんど未発達であり、諸外国からの誘致を進めている。
ダイヤモンド鉱床が1967年に発見されたのに続き、1970年代に多数の鉱床が相次いで発見されたため、ダイヤモンドの採鉱事業は、ボツワナ経済の中心となっている。ダイヤモンドだけで、GDPの3分の1を超え、輸出総額の75%から90%、国の歳入の約半分を占める。その他の鉱物資源としては、銅やニッケルなどがあり、これらの輸出によって外貨を得ている。
2017年、オークションに出品されたボツワナ産ダイアモンド、レセディ・ラ・ロナ(ツワナ語で私たちの光という意味)は、1,109カラットの大きさの原石であり、オークションに出品され、ダイアモンドとしては過去最大の大きさのものとして話題となった(入札は不調に終わっている)[31]。
なお、2016年時点で、ダイヤモンド鉱山は残り20年で枯渇するという調査があり、経済の多角化が必要とされている[30]。
2008年にロンドンにあったデビアスのダイヤモンド・トレーディング・カンパニー (DTC) をロンドンからボツワナの首都ハボローネへの誘致に成功した。その影響で多くの研磨工場が作られた。
オカバンゴ湿地帯やチョベ国立公園、カラハリ砂漠やモレミ野生動物保護区など観光資源が豊富な上に、近隣諸国に比べ治安が良く政情も安定していることや、政府が観光に力を入れている事から観光客が堅実に増加しており、政府主導で国内のホテルの整備を進めるなど更なる観光客の誘致を行っている。
CIA『ザ・ワールド・ファクトブック』による2000年の輸出入データは以下の通り。
- 輸出品目
- ダイヤモンド 90%、銅、ニッケル、ソーダ灰(工業用炭酸ナトリウム)、肉、織物
- 輸出先
- 欧州自由貿易連合 (EFTA) 87%、南部アフリカ関税同盟 (SACU) 7%、ジンバブエ 4%。
- 輸入品目
- 食料品、機械類、電化製品、輸送設備、織物、石油燃料、石油製品、木製品、紙製品、金属、金属製品
- 輸入先
- 南部アフリカ関税同盟 (SACU) 74%、欧州自由貿易連合 (EFTA) 17%、ジンバブエ 4%。
エア・ボツワナのATR42型機。
国内には路線バスや航空機による路線網が整備されている。なお、路線バスや航空網の整備と比べて、国内の鉄道網は余り整備されていないものの、近隣諸国間との国際列車が運行されている。
自家用自動車の普及率が高い上、都市部の道路整備は進んでいるものの、高速道路網の整備は都市部以外に進んでいない。なお、旧宗主国のイギリスや日本同様左側通行である。
ハボローネやマウンなどの複数の都市に国際定期便が乗り入れており、ハボローネのセレツェカーマ国際空港と南アフリカ共和国のヨハネスブルグや、ケニアのナイロビの間には頻繁に定期便が運航されている。さらに、隣国の南アフリカ共和国やジンバブエとの間には国際列車や定期長距離バスが頻繁に運行されている。
また、現在日本との間には直行便は運航されていないが、ヨーロッパの各都市や南アフリカ共和国からフラッグ・キャリアのエア・ボツワナなどの定期便でハボローネへ入る事が一般的である。
南部アフリカ地域の平均寿命の推移(赤がボツワナ)。エイズの蔓延により、1990年代にかけて平均寿命が低下している。
ボツワナの人口は、独立前の1961年に33万2000人だった[32]ものが1986年には113万人[33]、2017年には229万人にまで増加した[34]。
もともとコイサン語族に属する言語を話す人々が住んでいたが、17世紀半ば南部の現在の南アフリカより移動してきたツワナ人が支配した。コイサン系の言語を用いる人々の人口は少ないが現在も国内各地に住んでいる。
彼らは従来、狩猟、採集などの移動生活をしていたが、現在では国による定住政策がかなり進み以前のような生活をしている人は少ない。この国の人口の約79%をツワナ人が占め、ショナ系のカランガ人が11%他にはツワナ人からバサルワと呼ばれるサン人(グイ、ガナ、3%)、ツワナ系だが少数派のカラハリ人と白人などが7%住んでいる[35]。
公用語は英語(話者2.1%)である。一般にツワナ語 (78.2%)、ショナ系のカランガ語 (7.9%)、ツワナ系のカラハリ語 (2.8%)、その他 (8.6%) が使われており、不明が0.4%[35]。
伝統信仰とキリスト教がそれぞれ半分程度である。
かつてはエイズ (HIV/AIDS) 感染率が世界最高(2000年の調査で成人の38.8%)となっていた。政府は、国の歳入の多くを失業対策とエイズ対策に注ぎこまざるを得ない状況である。かつてはアフリカで最も平均寿命が長い国の一つだったが、エイズが蔓延した影響で現在の平均寿命は50歳と非常に短い。政府のエイズ対策の結果、2001年をピークに感染率は減少しているが、2013年のデータで感染率21.9%(世界3位)と依然として高い[36]。
なお、衛生状態は近隣諸国に比べて良く、水道水を飲むことも可能である。
婚姻時に女性は、婚前姓をそのまま用いること(夫婦別姓)、夫の姓への改姓(夫婦同姓)、複合姓、夫の氏名に「Mrs.」を追加したものとする、のうちより選択することができる[37]。
ボツワナ政府が教育に力を入れている上に、安定した政治と経済を背景に、公立学校と国立学校、私立学校が全国規模で整備されている。2003年の推計によれば、15歳以上の国民の識字率は81.2%である[35]。これはアフリカ諸国だけでなく、世界でも高い方に分類される。主な高等教育機関としては、ボツワナ大学(1982年開校)が挙げられる。
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