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労働基本権 - Wikipedia

労働ろうどう基本きほんけん

労働ろうどうしゃがその労働ろうどうかんして権利けんり

労働ろうどう基本きほんけん(ろうどうきほんけん)とは、労働ろうどうしゃがその労働ろうどうかんして権利けんりのことであり、とく雇用こようものたい労働ろうどう条件じょうけん労働ろうどう環境かんきょう促進そくしんまたは維持いじもとめる行為こういかか基本きほんけんをいう。

概要がいよう

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権利けんり具体ぐたいてき内容ないようについては、自主じしゅてき労働ろうどうすることを妨害ぼうがいされない権利けんり労働ろうどう組合くみあいつく加入かにゅうする権利けんり労働ろうどう組合くみあい加入かにゅう強制きょうせいされない権利けんり雇用こようもの団体だんたい交渉こうしょうおこな権利けんり合法ごうほうてき争議そうぎおこな権利けんりなどであるが、実際じっさいにどのような権利けんり保障ほしょうされるかはくに地域ちいきによって様々さまざまである。また、労働ろうどう基本きほんけんみとめないくにいちじるしく制限せいげんしているくにもある。

労働ろうどう基本きほんけん保障ほしょう根拠こんきょくに地域ちいきによってことなり、成文せいぶん憲法けんぽう保障ほしょうするくに日本にっぽんなど)もあれば、立法りっぽう判例はんれいかさねでみとめるくにもある。また、保障ほしょう範囲はんいくに地域ちいきによってことなる。たとえば、国家こっか公務員こうむいん団体だんたい交渉こうしょうけんについて、ドイツひろ保障ほしょうし、日本にっぽん現業げんぎょう職員しょくいんかぎみとめるとしている。

国際こくさい法規ほうきとしては、経済けいざいてき社会しゃかいてきおよ文化ぶんかてき権利けんりかんする国際こくさい規約きやく国際こくさい人権じんけん規約きやくA規約きやく)のだい6じょうないしだい8じょう労働ろうどうかんする権利けんり規定きていされている。

日本にっぽんにおける労働ろうどう基本きほんけん

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日本にっぽんにおいて、労働ろうどう基本きほんけん賃金ちんぎん労働ろうどうしゃたいして憲法けんぽうじょうみとめられている基本きほんてき権利けんりである。

日本国にっぽんこく憲法けんぽうは、だい27じょうで「(1)すべて国民こくみんは、勤労きんろう権利けんりゆうし、義務ぎむふ。(2)賃金ちんぎん就業しゅうぎょう時間じかん休息きゅうそくその勤労きんろう条件じょうけんかんする基準きじゅんは、法律ほうりつでこれをさだめる。(3)児童じどうは、これを酷使こくししてはならない」と規定きていし、つづだい28じょうで「勤労きんろうしゃ団結だんけつする権利けんりおよ団体だんたい交渉こうしょうその団体だんたい行動こうどうをする権利けんりは、これを保障ほしょうする」と規定きていしており、ここに保障ほしょうされた権利けんりは、すべての国民こくみん保障ほしょうされた権利けんりとはことなり、賃金ちんぎん労働ろうどうしゃという社会しゃかいてき地位ちいにあるものたいして特別とくべつ保障ほしょうされた権利けんりであり、労働ろうどう基本きほんけんばれる。

とくにだい28じょうしめされた、団結だんけつけん団体だんたい交渉こうしょうけん団体だんたい行動こうどうけんは、あわせて労働ろうどう三権さんけんばれる。団結だんけつけんは、勤労きんろうしゃ使用しようしゃ対等たいとう立場たちばって、労働ろうどう条件じょうけんなどについて交渉こうしょうするために労働ろうどう組合くみあいをつくる権利けんり、また労働ろうどう組合くみあい加入かにゅうする権利けんりす。団体だんたい交渉こうしょうけんは、使用しようしゃ交渉こうしょうし、協約きょうやくをむすぶ権利けんりである。団体だんたい行動こうどうけんは、団体だんたい交渉こうしょうにおいて使用しようしゃ要求ようきゅうみとめさせるため、団結だんけつして就労しゅうろう放棄ほうきする、つまりストライキおこな権利けんりである。

まただい28じょうは、労働ろうどうしゃ権利けんり行使こうしたいする刑事けいじ免責めんせき民事みんじ免責めんせきふくむとほぐされている。すなわち、労働ろうどうしゃ団結だんけつ団体だんたい交渉こうしょう団体だんたい行動こうどうたいして、刑事けいじばつからの自由じゆうという自由じゆうけんてき側面そくめんと、不法ふほう行為こうい債務さいむ不履行ふりこうなど民事みんじじょう責任せきにんわれないという社会しゃかいけんてき側面そくめん保障ほしょうしたものである。民事みんじ免責めんせき司法しほう権力けんりょく介入かいにゅう)と刑事けいじ免責めんせき公権力こうけんりょくからの自由じゆうであるが、公権力こうけんりょく介入かいにゅうしない純粋じゅんすいわたし人間にんげんによる労働ろうどう基本きほんけん侵害しんがい解雇かいこ懲戒ちょうかいひとし)からの自由じゆう想定そうていされている。

これら労働ろうどう三権さんけん具体ぐたいてき保障ほしょうするため、労働ろうどう基準きじゅんほう労働ろうどう組合くみあいほう労働ろうどう関係かんけい調整ちょうせいほうのいわゆる労働三法ろうどうさんぽう制定せいていされている。労働ろうどう基本きほんけんは、憲法けんぽうでうたわれている権利けんりなかでも、社会しゃかいけんあるいは生存せいぞんけんてき基本きほんけんばれる権利けんりとして分類ぶんるいされる。

日本にっぽん公務員こうむいん労働ろうどう基本きほんけん

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日本にっぽんにおいて、すべての公務員こうむいん団体だんたい行動こうどうおこな権利けんりみとめられていない。しかし、日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい18じょう規定きていされる身体しんたいてき自由じゆうけん当然とうぜん保証ほしょうされるから、この自由じゆうけんについて伝播でんぱせいおおきい統括とうかつてき事項じこうについては、政策せいさくとう指揮しき命令めいれい関係かんけいとその合理ごうりせいのっとり、職務しょくむ実行じっこうおよびその具体ぐたいてき方法ほうほうかんしての申入もうしいれと合意ごうい権利けんり留保りゅうほされている。

沿革えんかく

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戦前せんぜん

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だい世界せかい大戦たいせん終戦しゅうせんまえ大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽうしたにおいては、ほうによりみとめられた労働ろうどうしゃ権利けんりというものは存在そんざいせず、労働ろうどう運動うんどうたいしては弾圧だんあつてき政策せいさくられていた。かん公吏こうりについては、たとえば官吏かんり国家こっかたいして忠実ちゅうじつ定量ていりょう勤務きんむふくするものと観念かんねんされるなど、それに労働ろうどう基本きほんけんなるものを付与ふよするという発想はっそうそのものが制度せいどじょう存在そんざいしなかった。

終戦しゅうせん - 労働ろうどう組合くみあいほうとう成立せいりつ

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終戦しゅうせんに、GHQによる占領せんりょう政策せいさくとして日本にっぽん軍国ぐんこく主義しゅぎ民主みんしゅはかられ、1945ねん昭和しょうわ20ねん)10がつ15にち治安ちあん維持いじほう廃止はいしされるとう従来じゅうらい労働ろうどう運動うんどう弾圧だんあつしていた法律ほうりつ廃止はいしされた。占領せんりょう開始かいし当初とうしょのこのような労働ろうどう運動うんどう奨励しょうれい政策せいさくにより、敗戦はいせん混乱こんらんなか労働ろうどう運動うんどう活発かっぱつし、これが体制たいせい崩壊ほうかいこすおそれもあったことから、この時期じき労働ろうどう関係かんけいほう制定せいていいそがれた。

1945ねん9がつ内閣ないかく提出ていしゅつされた厚生省こうせいしょう報告ほうこくしょもとづき、同年どうねん10がつ労務ろうむ法制ほうせい審議しんぎ委員いいんかい設置せっちされ、戦前せんぜんから検討けんとうすすめられていた労働ろうどう関係かんけいほう日本にっぽんがわ主導しゅどうにより成立せいりつることとなった。すなわち、同年どうねん12がつ21にちに(きゅう労働ろうどう組合くみあいほう制定せいていされ(施行しこうは1946ねん3がつ1にち労働ろうどうしゃ団結だんけつけん団体だんたい交渉こうしょうけんおよ争議そうぎけんみとめられるにいたり、かん公吏こうりについては、警察けいさつ消防しょうぼう監獄かんごく職員しょくいんのぞき、そのかん公吏こうりはすべてどうほう適用てきようけることとなったのである。

いで労働ろうどう関係かんけい調整ちょうせいほうが、今度こんどはGHQの主導しゅどうにより1946ねん9がつ27にち公布こうふ同年どうねん10がつ13にちから施行しこうされた。どうほう施行しこうにより非現業ひげんぎょう公務員こうむいんについては争議そうぎ行為こうい明文めいぶん規定きていで以って禁止きんしされることとなった。非現業ひげんぎょう公務員こうむいん争議そうぎけんは7ヶ月かげつあまりにわったものの、現業げんぎょう公務員こうむいんには争議そうぎけんみとめられた。

いちスト中止ちゅうし - フーバー勧告かんこく

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その労働ろうどう運動うんどう激化げきかきわめ、危機ききかんつよめたGHQは1947ねん2がつ1にち予定よていされていた国鉄こくてつふくゼネラル・ストライキいちゼネスト)を占領せんりょうぐん武力ぶりょく背景はいけいとした強権きょうけん発動はつどうにより中止ちゅうしさせるとう、その労働ろうどう政策せいさく転換てんかんするいたった。

1946ねん11月に日本にっぽん政府せいふ招聘しょうへいにより来日らいにちしたブレイン・フーバー(Blaine Hoover)を団長だんちょうとするたいにち合衆国がっしゅうこく人事じんじ行政ぎょうせい顧問こもんだん通称つうしょうフーバーミッション)が5ヶ月かげつにわたり調査ちょうさおこない、1947ねん6がつ11にち片山かたやまあきら内閣ないかく総理そうり大臣だいじん公務員こうむいん制度せいどについての勧告かんこく提出ていしゅつした。そのなかで、日本にっぽん公務員こうむいん制度せいど欠陥けっかんとしてつぎてん指摘してきされた。

  • 標準ひょうじゅんされた公平こうへい民主みんしゅてき任用にんよう制度せいどいていること。
  • 人事じんじ行政ぎょうせい一元化いちげんか統一とういつてき基準きじゅんいていること。
  • 職員しょくいん規律きりつ欠如けつじょ。いくつかのしょうではすうせん職員しょくいん勤務きんむ時間じかん組合くみあい活動かつどうて、公務こうむ必要ひつようなスペースを占拠せんきょし、業務ぎょうむ活動かつどう混乱こんらんさせていること。
  • 上司じょうし部下ぶか威圧いあつされていること。
  • 無秩序むちつじょ反抗はんこう政府せいふ財産ざいさん濫費らんぴ

これにくわえて、技術ぎじゅつてき欠陥けっかんとしてつぎてん指摘してきされた。

  • 職務しょくむ分類ぶんるい機能きのうよりも個人こじんてきなものにもとづいていること。
  • 公平こうへい苦情くじょう処理しょり機関きかんいていること。
  • 非常ひじょう複雑ふくざつ不公平ふこうへいでしかも高額こうがく手当てあて制度せいど
  • 責任せきにんないしは地位ちい高低こうていい・不適切ふてきせつ俸給ほうきゅう
  • 職員しょくいん過剰かじょう
  • 論理ろんりてき現実げんじつてき退職たいしょく制度せいど
  • まとはずれの研修けんしゅう講座こうざ
  • にかなった経済けいざいてき手法しゅほうよりも、恩情おんじょう主義しゅぎによる不十分ふじゅうぶん内容ないよう安全あんぜん保健ほけん福祉ふくし政策せいさく

またどう勧告かんこくにおいては、政府せいふから独立どくりつした強力きょうりょく権限けんげんゆうする中央ちゅうおう行政ぎょうせい人事じんじ機関きかんとしての「人事院じんじいん」の設置せっちや、公務員こうむいん争議そうぎ行為こうい禁止きんしなどがうたわれていた。

国家こっか公務員こうむいんほう制定せいてい - 政令せいれい201ごう制定せいてい

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前述ぜんじゅつのフーバー勧告かんこくもとづき、1947ねん10がつ21にち国家こっか公務員こうむいんほう公布こうふされた。しかしながらどうほう内容ないようは、人事じんじ委員いいんかい原案げんあんの「人事院じんじいん」の名称めいしょう衆議院しゅうぎいん審議しんぎにおいて「人事じんじ委員いいんかい」に修正しゅうせい)を内閣ないかく総理そうり大臣だいじん所管しょかんしたくものとし、労働ろうどう基本きほんけんについては争議そうぎ行為こうい禁止きんしまれないなど、どう勧告かんこくだい部分ぶぶんれていないものであった。 その公務員こうむいんによる労働ろうどう運動うんどう依然いぜんとしておとろえることなく、1948ねん8がつ7にちには現業げんぎょう公務員こうむいんおよ非現業ひげんぎょう公務員こうむいん双方そうほう参加さんかするゼネストが予定よていされるなど、すで禁止きんしされている非現業ひげんぎょう公務員こうむいんによる争議そうぎ行為こういも、あたかも公然こうぜんみとめられるかのようにとらえられる状況じょうきょうであった。 このような状況じょうきょうおよ当時とうじ公務員こうむいん制度せいど不満ふまんいていたGHQの最高さいこう司令しれいかんマッカーサーは、1948ねん7がつ22にち内閣ないかく総理そうり大臣だいじん芦田あしだひとしたいして、

  • 公務員こうむいんによる争議そうぎ行為こういおよ団体だんたい交渉こうしょう禁止きんしすること、
  • 鉄道てつどう専売せんばい事業じぎょうとう現業げんぎょう部門ぶもん公共こうきょう企業きぎょうたいとして一般いっぱんしょくから分離ぶんりすること

内容ないようとする、国家こっか公務員こうむいんほう改正かいせい示唆しさするむね書簡しょかんおくった。

これをけて内閣ないかくは、国家こっか公務員こうむいんほう改正かいせいまでの暫定ざんてい措置そちとして同年どうねん7がつ31にちに、「昭和しょうわじゅうさんねんなながつじゅう二日附内閣総理大臣宛連合国最高司令官書簡にもとづ臨時りんじ措置そちかんする政令せいれい」(政令せいれい201ごう)を公布こうふ即日そくじつ施行しこうした(なお、どう政令せいれい昭和しょうわ20ねんみことのりれいだい542ごうもとづくいわゆる「ポツダム命令めいれい」であり、1952ねん10がつ25にちまで法的ほうてき効力こうりょくゆうしていた[1])。どう政令せいれい現業げんぎょうであると非現業ひげんぎょうであるとをわず、一切いっさい公務員こうむいんについて労働ろうどう協約きょうやく締結ていけつ目的もくてきとする団体だんたい交渉こうしょうけんゆうさずに、争議そうぎ行為こうい禁止きんしすることをさだめたものであり、これにより前述ぜんじゅつのゼネストをふく公務員こうむいんによる労働ろうどう協約きょうやく締結ていけつ目的もくてきとする団体だんたい交渉こうしょうけん争議そうぎ行為こういすべ非合法ひごうほうのものとされた

政令せいれい201ごうもとづく立法りっぽう

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政令せいれい201ごうもとづき、改正かいせい国家こっか公務員こうむいんほうが1948ねん12月3にち公布こうふ即日そくじつ施行しこうされ、国家こっか公務員こうむいん労働ろうどう基本きほんけんについては、争議そうぎけん禁止きんし団体だんたい交渉こうしょうけん制限せいげん政治せいじてき行為こうい制限せいげん強化きょうかとうがなされた。

また、国鉄こくてつおよ専売せんばい事業じぎょう公共こうきょう企業きぎょうたいとしてその職員しょくいん国家こっか公務員こうむいんほう適用てきようから除外じょがいするため、日本にっぽん国有こくゆう鉄道てつどうほうおよ日本にっぽん専売せんばい公社こうしゃほうが1948ねん12月に制定せいていされ、1949ねん6がつ1にちから施行しこうされた。公共こうきょう企業きぎょうたい職員しょくいん争議そうぎ行為こうい禁止きんしし、強制きょうせい仲裁ちゅうさい制度せいどもうけるための公共こうきょう企業きぎょうたい労働ろうどう関係かんけいほう現在げんざい特定とくてい独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん労働ろうどう関係かんけいかんする法律ほうりつ)もあわせて制定せいていされ、同日どうじつから施行しこうされた。

地方ちほう公務員こうむいんについては、1950ねん12月に地方ちほう公務員こうむいんほう制定せいていされ、翌年よくねん2がつから施行しこうされた。その内容ないようは、国家こっか公務員こうむいんほうにおおむねじゅんじたものとなっている。

さらに、地方ちほう公務員こうむいんである企業きぎょう職員しょくいん単純たんじゅん労務ろうむ職員しょくいんについては、地方ちほう公営こうえい企業きぎょう労働ろうどう関係かんけいほう現在げんざい地方ちほう公営こうえい企業きぎょうとう労働ろうどう関係かんけいかんする法律ほうりつ)が1952ねん7がつ制定せいていされた。

警察けいさつ職員しょくいんとう労働ろうどう基本きほんけん

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以下いか職種しょくしゅ公務員こうむいんは、団結だんけつけん団体だんたい交渉こうしょうけん団体だんたい行動こうどうけんすべてがみとめられていない。

きびしい規律きりつもとめられる組織そしきにおいて、指揮しき命令めいれい系統けいとう確保かくほ組織そしき秩序ちつじょ維持いじという観点かんてんから労働ろうどう基本きほんけん制限せいげん不可欠ふかけつであるというかんがえからている。ILO87ごう条約じょうやく結社けっしゃ自由じゆうおよ団結だんけつけん保護ほごかんする条約じょうやく日本にっぽんは1965ねん6がつ14にち批准ひじゅん、1966ねん6がつ14にち発効はっこう)においても、だい9じょうだい1こうで「この条約じょうやく規定きていする保障ほしょう軍隊ぐんたいおよ警察けいさつ適用てきようする範囲はんいは、国内こくない法令ほうれいさだめる。」とされ、団結だんけつけん保障ほしょうするかかは各国かっこく判断はんだんゆだねることとされている。

裁判官さいばんかんについては、職務しょくむおよ身分みぶん特殊とくしゅせいから団結だんけつけんとうみとめられないという見解けんかい最高さいこう裁判所さいばんしょ事務じむ総局そうきょくからされている[2]

なお、監獄かんごくちか性格せいかく少年院しょうねんいん少年しょうねん鑑別かんべつしょ勤務きんむする法務ほうむ教官きょうかんには労働ろうどう基本きほんけんみとめられている。

消防しょうぼう職員しょくいん監獄かんごく職員しょくいん労働ろうどう基本きほんけんかんする日本にっぽん政府せいふ見解けんかいについては「#消防しょうぼう監獄かんごく職員しょくいんへの団結だんけつけん付与ふよ」を参照さんしょうのこと。

労働ろうどう基本きほんけん制限せいげんたいする代償だいしょう措置そち

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公務員こうむいん労働ろうどう基本きほんけん制限せいげんされていることの代償だいしょう措置そちとして、措置そち要求ようきゅう制度せいどがある。また政治せいじてき中立ちゅうりつかつ独立どくりつした行政ぎょうせい委員いいんかいとしてくに人事院じんじいん地方ちほう公共こうきょう団体だんたいには人事じんじ委員いいんかいまた公平こうへい委員いいんかいかれ、それぞれ人事じんじ行政ぎょうせい専門せんもん機関きかんとしての役割やくわりたしている。

日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい28じょうとの関係かんけい

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日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい28じょうが「勤労きんろうしゃ団結だんけつする権利けんりおよ団体だんたい交渉こうしょうその団体だんたい行動こうどうをする権利けんりは、これを保障ほしょうする。」として、勤労きんろうしゃ労働ろうどう基本きほんけんみとめていることとの関係かんけいから、団体だんたい行動こうどうけんをはじめとした労働ろうどう基本きほんけん制限せいげんしている公務員こうむいん関係かんけい諸法しょほう合憲ごうけんせいなが裁判さいばんあらそわれてきた。 公務員こうむいん労働ろうどう基本きほんけんかんする最高さいこう裁判所さいばんしょ判例はんれいはその時代じだい背景はいけいとともにらぎをせるが、昭和しょうわ48ねん4がつ25にち最高裁判所さいこうさいばんしょだい法廷ほうてい判決はんけつにおいて関係かんけい諸法しょほう一律いちりつ合憲ごうけんろんいたり、司法しほうじょう一応いちおう決着けっちゃくをみたかたちとなっている。

公共こうきょう福祉ふくし全体ぜんたい奉仕ほうししゃせいによる合憲ごうけんろん

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政令せいれい201ごう日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい28じょう関係かんけいとうあらそわれたいわゆる「政令せいれい201ごう事件じけん」について、最高裁判所さいこうさいばんしょつぎのように説示せつじし、公共こうきょう福祉ふくし観点かんてんおよ公務員こうむいん全体ぜんたい奉仕ほうししゃたるがゆえに、公務員こうむいん争議そうぎ禁止きんしした政令せいれい201ごう日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい28じょう違反いはんしないとした。

国民こくみん権利けんりはすべて公共こうきょう福祉ふくしはんしないかぎりにおいて立法りっぽうその国政こくせいうえ最大さいだい尊重そんちょうをすることを必要ひつようとするのであるから、憲法けんぽうはちじょう保障ほしょうする勤労きんろうしゃ団結だんけつする権利けんりおよ団体だんたい交渉こうしょうその団体だんたい行動こうどうをする権利けんり公共こうきょう福祉ふくしのために制限せいげんけるのはやめないところである。こと国家こっか公務員こうむいんは、国民こくみん全体ぜんたい奉仕ほうししゃとして憲法けんぽういちじょう公共こうきょう利益りえきのために勤務きんむし、職務しょくむ遂行すいこうとうつては全力ぜんりょくげてこれに専念せんねんしなければならない(国家こっか公務員こうむいんほうきゅうろくじょういちこう性質せいしつのものであるから、団結だんけつけん団体だんたい交渉こうしょうけんとうについても、一般いっぱん勤労きんろうしゃとはたがえつて特別とくべつ取扱とりあつかいけることがあるのは当然とうぜんである。」(昭和しょうわ28ねん4がつ8にち最高裁判所さいこうさいばんしょだい法廷ほうてい判決はんけつ

限定げんていてき合憲ごうけんろん合憲ごうけん限定げんてい解釈かいしゃく

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公共こうきょう企業きぎょうからだとう労働ろうどう関係かんけいほう公労法こうろうほう)17じょう1こう日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい28じょう関係かんけいとうあらそわれたいわゆる「全逓ぜんてい東京とうきょうちゅう事件じけん」について、最高裁判所さいこうさいばんしょつぎのように説示せつじし、従前じゅうぜん公共こうきょう福祉ふくしとう理由りゆうとした全面ぜんめんてき合憲ごうけんろんから、実質じっしつてき判例はんれい変更へんこうした。すなわち、憲法けんぽうだい28じょう労働ろうどう基本きほんけん保障ほしょうについては公務員こうむいんにも基本きほんてきにはおよぶものとし、労働ろうどう基本きほんけん制約せいやくするほう規定きていしょ事項じこうについて一定いってい考慮こうりょがなされてはじめて合憲ごうけんであるとする「限定げんていてき合憲ごうけんろん合憲ごうけん限定げんてい解釈かいしゃく)」をったのである。

労働ろうどう基本きほんけんは、たんに私企業しきぎょう労働ろうどうしゃだけについて保障ほしょうされるのではなく、公共こうきょう企業きぎょうたい職員しょくいんはもとよりのこと、国家こっか公務員こうむいん地方ちほう公務員こうむいんも、憲法けんぽうはちじょうにいう勤労きんろうしゃにほかならない以上いじょう原則げんそくてきには、その保障ほしょうけるべきものとほぐされる。「公務員こうむいんは、全体ぜんたい奉仕ほうししゃであつて、一部いちぶ奉仕ほうししゃではない」とする憲法けんぽういちじょう根拠こんきょとして、公務員こうむいんたいしてみぎ労働ろうどう基本きほんけんをすべて否定ひていするようなことはゆるされない。ただ、公務員こうむいんまたはこれにじゅんずるものについては、のちべるように、その担当たんとうする職務しょくむ内容ないようおうじて、私企業しきぎょうにおける労働ろうどうしゃことなる制約せいやく内包ないほうしているにとどまるとかいすべきである。」

勤労きんろうしゃ団結だんけつけん団体だんたい交渉こうしょうけん争議そうぎけんとう労働ろうどう基本きほんけんは、すべての勤労きんろうしゃつうじ、その生存せいぞんけん保障ほしょう理念りねんもとづいて憲法けんぽうはちじょう保障ほしょうするところであるが、これらの権利けんりであつて、もとより、なんらの制約せいやくゆるされない絶対ぜったいてきなものではないのであつて、国民こくみん生活せいかつ全体ぜんたい利益りえき保障ほしょうという見地けんちからの制約せいやく当然とうぜん内在ないざいてき制約せいやくとして内包ないほうしているものと解釈かいしゃくしなければならない。しかし、きゅうてきにどのような制約せいやく合憲ごうけんとされるかについては、諸般しょはん条件じょうけん、ことにひだり諸点しょてん考慮こうりょれ、慎重しんちょう決定けっていする必要ひつようがある。

(1)労働ろうどう基本きほんけん制限せいげんは、労働ろうどう基本きほんけん尊重そんちょう確保かくほする必要ひつよう国民こくみん生活せいかつ全体ぜんたい利益りえき維持いじ増進ぞうしんする必要ひつようとを比較ひかく衡量して、両者りょうしゃ適正てきせい均衡きんこうたもつことを目途もくととして決定けっていすべきてあるが、労働ろうどう基本きほんけん勤労きんろうしゃ生存せいぞんけん直結ちょっけつし、それを保障ほしょうするための重要じゅうよう手段しゅだんであるてん考慮こうりょすれば、その制限せいげんは、合理ごうりせいみとめられる必要ひつよう最小さいしょう限度げんどのものにとどめなければならない。
(2)労働ろうどう基本きほんけん制限せいげんは、勤労きんろうしゃ提供ていきょうする職務しょくむまたは業務ぎょうむ性質せいしつ公共こうきょうせいつよいものであり、したがつてその職務しょくむまたは業務ぎょうむとまはい国民こくみん生活せいかつ全体ぜんたい利益りえきがいし、国民こくみん生活せいかつ重大じゅうだい障害しょうがいをもたらすおそれのあるものについて、これをけるために必要ひつようやむをない場合ばあいについて考慮こうりょされるべきである。
(3)労働ろうどう基本きほんけん制限せいげん違反いはんともな法律ほうりつ効果こうか、すなわち、違反いはんしゃたいしてせられる不利益ふりえきについては、必要ひつよう限度げんどをこえないように、十分じゅうぶん配慮はいりょがなされなければならない。とくに、勤労きんろうしゃ争議そうぎ行為こういとうたいして刑事けいじ制裁せいさいすることは、必要ひつようやむをない場合ばあいかぎられるべきであり、同盟罷業どうめいひぎょう怠業たいぎょうのような単純たんじゅん不作為ふさくい刑罰けいばつ対象たいしょうとするについては、特別とくべつ慎重しんちょうでなければならない。(中略ちゅうりゃく
(4)職務しょくむまたは業務ぎょうむ性質せいしつじょうからして、労働ろうどう基本きほんけん制限せいげんすることがやむをない場合ばあいには、これに見合みあ代償だいしょう措置そちこうぜられなければならない。」(昭和しょうわ41ねん10がつ26にち最高裁判所さいこうさいばんしょだい法廷ほうてい判決はんけつ

一律いちりつ禁止きんし合憲ごうけんろん

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ぜん農林のうりん労働ろうどう組合くみあい役員やくいんたる被告人ひこくにんが、警察官けいさつかん職務しょくむ執行しっこうほう改正かいせい反対はんたいする目的もくてきで、やく2500めい農林省のうりんしょう職員しょくいんたい職場しょくば大会たいかいへの参加さんか慫慂しょうようした行為こういとうが、国家こっか公務員こうむいんほう昭和しょうわ40ねん法律ほうりつだい69ごうによる改正かいせいまえのもの)だい98じょうだい5こう争議そうぎ行為こうい禁止きんし)・だい110じょうだい1こう17ごう争議そうぎ行為こういのあおりとう禁止きんし)のつみにあたるとして起訴きそされ、どう条項じょうこう日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい28じょう関係かんけいとうあらそわれたいわゆる「ぜん農林のうりん警職ほう事件じけん」について、最高裁さいこうさいつぎのように説示せつじし、前述ぜんじゅつ合憲ごうけん限定げんてい解釈かいしゃく否定ひていした。すなわち、最高裁判所さいこうさいばんしょどう判決はんけつで、日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい28じょうによる労働ろうどう基本きほんけん保障ほしょう原則げんそくとして公務員こうむいんにもおよぶことをみとめるものの、

  • 公務員こうむいん争議そうぎ行為こうい使用しようしゃたる国民こくみん全体ぜんたい共同きょうどう利益りえき重大じゅうだい影響えいきょうおよぼす
  • 公務員こうむいん勤務きんむ条件じょうけん国会こっかい制定せいていする法律ほうりつ予算よさんにより民主みんしゅてき決定けっていされるものであり、公務員こうむいん争議そうぎ行為こうい議会ぎかいせい民主みんしゅ主義しゅぎ背馳はいちし、国会こっかい議決ぎけつけんおかおそれがある
  • 私企業しきぎょうにおける労使ろうし交渉こうしょうであるようなロックアウトや、市場いちば抑制よくせいりょくによる歯止はどめが、公務員こうむいん争議そうぎ行為こういにあってははたらかない
  • すで労働ろうどう基本きほんけん制約せいやくたいする代償だいしょう措置そちもうけられている

ことを理由りゆうとし、日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい13じょう公共こうきょう福祉ふくしによる制約せいやくにより、争議そうぎ行為こうい一律いちりつ禁止きんしする国家こっか公務員こうむいんほう規定きてい合憲ごうけんとしたのである。(昭和しょうわ48ねん4がつ25にち最高裁判所さいこうさいばんしょだい法廷ほうてい判決はんけつ

ILO勧告かんこく

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2001ねん12月25にち閣議かくぎ決定けっていされた「公務員こうむいん制度せいど改革かいかく大綱たいこう」において、「公務こうむ安定あんていてき継続けいぞくてき運営うんえい確保かくほ観点かんてん国民こくみん生活せいかつあたえる影響えいきょう観点かんてんなどを総合そうごうてき勘案かんあんし、公務員こうむいん労働ろうどう基本きほんけん制約せいやくについては、今後こんごもこれにわる相応そうおう措置そち確保かくほしつつ、現行げんこう制約せいやく維持いじする」とされたことについて[3]平成へいせい14ねん2がつ連合れんごうひとし同年どうねん3がつ全労連ぜんろうれんおよ自治じち労連ろうれんが「公務員こうむいん制度せいど改革かいかくは、労働ろうどうしゃ団体だんたいとの適切てきせつ協議きょうぎなしにすすめられているものであり、現行げんこう公務員こうむいん制度せいど法令ほうれいさら改悪かいあくし、十分じゅうぶん代償だいしょうなしに公務員こうむいん労働ろうどう基本きほんけん制約せいやく保持ほじするものである」として、ILO結社けっしゃ自由じゆう委員いいんかい申立もうしたてをおこなった。

これにたいして2002ねん11月21にちどう委員いいんかいにおいて、ILO結社けっしゃ自由じゆう委員いいんかいちゅうあいだ報告ほうこくだい2177ごうだい2183ごう案件あんけん)が採択さいたくされ、日本にっぽん政府せいふたいして勧告かんこくされた(結社けっしゃ自由じゆう委員いいんかいだい329報告ほうこく[4]

2009ねん9がつ成立せいりつ鳩山はとやま由紀夫ゆきお内閣ないかくはこの勧告かんこくけ、2010ねん1がつに「消防しょうぼう職員しょくいんへの団結だんけつけん付与ふよ」について総務そうむしょう検討けんとうすることをめた。なお民主党みんしゅとうマニフェストで「公務員こうむいん労働ろうどう基本きほんけん回復かいふく」を宣言せんげんしていた[5]。しかし2011ねん1がつかんだい1改造かいぞうないかく見送みおくりを決定けってい理由りゆうとして“実際じっさいにストがたれた場合ばあい国民こくみん生活せいかつへの影響えいきょう考慮こうりょした”としている[6]

2017ねん10月に結成けっせいされた立憲りっけん民主党みんしゅとう公務員こうむいん労働ろうどう基本きほんけん回復かいふくかかげている[7]

団体だんたい交渉こうしょうけんとストライキけん付与ふよ

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同中どうちゅうあいだ報告ほうこくILO98ごう条約じょうやく団結だんけつけんおよ団体だんたい交渉こうしょうけんについての原則げんそく適用てきようかんする条約じょうやく日本にっぽんは1953ねん10がつ20日はつか批准ひじゅん)との関係かんけいから、日本にっぽん政府せいふたいして「くに行政ぎょうせい直接ちょくせつ従事じゅうじしない公務員こうむいんへの、結社けっしゃ自由じゆう原則げんそく沿った団体だんたい交渉こうしょうけんおよびストライキけん付与ふよ」を勧告かんこくした。 どう勧告かんこくたいし、日本にっぽん政府せいふ以下いかのとおり見解けんかいしめし、ILOの見解けんかい認識にんしきしつつも、日本にっぽん歴史れきしてき背景はいけい公務員こうむいんにおける労使ろうし関係かんけい状況じょうきょうとうまえ、国民こくみん全体ぜんたい共同きょうどう利益りえき見地けんちから労働ろうどう基本きほんけん制約せいやくまぬかないとしている。

公務員こうむいん労働ろうどう基本きほんけんについては、その地位ちい特殊とくしゅせい職務しょくむ公共こうきょうせいかんがみ、国民こくみん全体ぜんたい共同きょうどう利益りえき保障ほしょうという見地けんちから、一定いってい制約せいやくのもとにかれているところである。一方いっぽう公務員こうむいん勤労きんろうしゃであり、その生存せいぞんけん保障ほしょう見地けんちから、人事院じんじいん勧告かんこく制度せいどとう代償だいしょう措置そちこうじられているところである。

最高さいこう裁判所さいばんしょにおいても、労働ろうどう基本きほんけん保障ほしょうする憲法けんぽう28じょう規定きてい公務員こうむいんにも適用てきようされるが、この権利けんり国民こくみん全体ぜんたい共同きょうどう利益りえき保障ほしょう見地けんちから制約せいやくまぬかないものであり、また、労働ろうどう基本きほんけん制約せいやくたいする適切てきせつ代償だいしょう措置そちこうじられていることから、公務員こうむいん争議そうぎ行為こうい禁止きんしした法律ほうりつかく規定きてい違憲いけんではないむね判示はんじするとともに団体だんたい交渉こうしょうけんについても同様どうよう判示はんじがなされているところである。

公務員こうむいん労働ろうどう基本きほんけん制約せいやくかんするILOの見解けんかい十分じゅうぶん認識にんしきしているが、公務員こうむいん争議そうぎ行為こうい制約せいやく範囲はんいとうについては、各国かっこく歴史れきしてき背景はいけい公務員こうむいん労使ろうし関係かんけい状況じょうきょうとう諸般しょはん事情じじょう考慮こうりょしてめるべきものであるとかんがえる。[1]

消防しょうぼう監獄かんごく職員しょくいんへの団結だんけつけん付与ふよ

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おなじく中間ちゅうかん報告ほうこくにおいて「消防しょうぼう職員しょくいんおよ監獄かんごくにおいて勤務きんむする職員しょくいんへの、みずか選択せんたくする団体だんたい設立せつりつする権利けんり付与ふよ」が勧告かんこくされているが、これにたいして日本にっぽん政府せいふ以下いかのとおり見解けんかいしめし、消防しょうぼう職員しょくいんおよ監獄かんごく職員しょくいん任務にんむはILOだい87ごう条約じょうやくだい9じょうの「警察けいさつ」にふくまれるとしている[8]

消防しょうぼう職員しょくいん
日本にっぽん消防しょうぼうは、火災かさい風水害ふうすいがい地震じしんとう災害さいがい多発たはつする国土こくど特殊とくしゅ条件下じょうけんかで、交通こうつう制限せいげんけん付近ふきんにいるもの協力きょうりょく要請ようせいけん住宅じゅうたく侵入しんにゅうけん消火しょうか活動かつどうちゅう緊急きんきゅう措置そちけんとして近隣きんりん建物たてもの破壊はかいする権限けんげん行使こうししつつ、火災かさい予防よぼうし、警戒けいかいおよ鎮圧ちんあつし、国民こくみん生命せいめい身体しんたいおよ財産ざいさん火災かさいから保護ほごするとともに、火災かさいまた地震じしんとう災害さいがいによる被害ひがい軽減けいげんし、もって安寧あんねい秩序ちつじょ保持ほじし、社会しゃかい公共こうきょう福祉ふくし増進ぞうしんすることを目的もくてきとする。こうした業務ぎょうむ内容ないよう歴史れきしてき沿革えんかく運営うんえいじょうきょうから、日本にっぽん消防しょうぼう保安ほあん警察けいさつ一部いちぶほぐされており、ILOだい87ごう条約じょうやくだい9じょうの「警察けいさつ」にふくまれるものである。
このことは、結社けっしゃ自由じゆう委員いいんかいだい12報告ほうこくおよびだい54報告ほうこくみとめるところであり、このようにILOがくに見解けんかいみとめたことから、当該とうがい条約じょうやく批准ひじゅんしたものである。このような経緯けいいからも、日本にっぽん消防しょうぼう職員しょくいん団結だんけつ禁止きんしはILO条約じょうやく違反いはんするものではない。
消防しょうぼう職員しょくいん団結だんけつけん問題もんだい国内こくない問題もんだいとして解決かいけつすべき問題もんだいであり、1995ねんきゅう自治省じちしょうおよ消防庁しょうぼうちょう地方ちほう公務員こうむいん代表だいひょうてき労働ろうどう組合くみあいである全日本ぜんにほん自治じち団体だんたい労働ろうどう組合くみあい自治労じちろう)の合意ごういした勤務きんむ条件じょうけん決定けっていとうへの消防しょうぼう職員しょくいん参加さんか保障ほしょうし、その権利けんり保護ほご趣旨しゅし沿い、かつ国民こくみんてきコンセンサスがられる解決かいけつさくとして消防しょうぼう職員しょくいん委員いいんかい制度せいど導入どうにゅうされた。なお、ILOにおいて、このような解決かいけつさく合意ごういしたことを満足まんぞくをもって歓迎かんげいするとされ、その合意ごうい内容ないよう反映はんえいしたほう改正かいせいとうおこなうことを要請ようせいされたところである(1995ねん)。
政府せいふとしては、当該とうがい制度せいど円滑えんかつ運用うんようされ、定着ていちゃくし、効果こうかげることがもっと重要じゅうようであると認識にんしきしている。」
刑事けいじ施設しせつにおいて勤務きんむする職員しょくいん
監獄かんごくげん刑事けいじ施設しせつ)において勤務きんむする職員しょくいんは、拘禁こうきんけいしょせられたもの刑事けいじ被告人ひこくにん被疑ひぎしゃおよ死刑しけいのいいわたしをけたもの監獄かんごく拘禁こうきんし、その拘禁こうきん確保かくほすることにより、社会しゃかい防衛ぼうえいはかるという任務にんむになっている。そのため、職員しょくいん強固きょうこ統制とうせい厳格げんかく規律きりつもとめられるとともに、職務しょくむじょう指揮しき命令めいれい系統けいとう厳格げんかく確保かくほされることが必要ひつよう不可欠ふかけつである。このような監獄かんごく職員しょくいん任務にんむは、ILOだい87ごう条約じょうやくだい9じょう趣旨しゅしにかんがみ、どうじょう警察けいさつふくまれているものとかんがえる。」

以上いじょう日本にっぽん政府せいふ反論はんろんたいしてILOは、日本にっぽん自治体じちたい労働ろうどう組合くみあいそう連合れんごう自治じち労連ろうれん)と消防しょうぼう職員しょくいんネットワーク(FFN)が2008ねん10がつ13にち提出ていしゅつした、「消防しょうぼう職員しょくいん委員いいんかい制度せいど実情じつじょう報告ほうこく検証けんしょうした結果けっか消防しょうぼう職員しょくいん団結だんけつけんかんして実質じっしつてき前進ぜんしんしていないことに、結果けっかとして「消防しょうぼう職員しょくいん委員いいんかい役割やくわりには、制約せいやくがあることがあきらかになった」とし、「消防しょうぼう職員しょくいんたいする団結だんけつけん確実かくじつ保障ほしょうするために、すでにおこなわれているか、検討けんとうされている法的ほうてき追加ついか措置そちについて次回じかい報告ほうこくしめすこと」と疑義ぎぎていしている[9]

なお、PFI結果けっかとして、全国ぜんこく4かしょの「民活みんかつ刑務所けいむしょ」においては、「団結だんけつけんすらゆうしない公務員こうむいんたる刑務所けいむしょ職員しょくいんと、争議そうぎけんまでゆうする民間みんかん委託いたく企業きぎょう労働ろうどうしゃおな刑務所けいむしょない就労しゅうろうするという事態じたい」になっているむね濱口はまぐち桂一郎けいいちろうにより指摘してきされている。[10]

団体だんたい行動こうどうけん

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団体だんたい行動こうどうけん関連かんれんして、政治せいじ目的もくてきでの団体だんたい行動こうどうや、争議そうぎ行為こうい一環いっかんとして使用しようしゃ生産せいさん設備せつび勤労きんろうしゃ奪取だっしゅする行為こうい生産せいさん管理かんりばれる)が憲法けんぽう28じょう保障ほしょうする団体だんたい行動こうどうふくまれるかについてはあらそいがある。判例はんれいはいずれも消極しょうきょくする。

政治せいじ目的もくてきでの団体だんたい行動こうどうれいとして、自衛隊じえいたい派遣はけん地域ちいきからの撤退てったいもとめておこなストライキや、使用しようしゃであるZしゃ武器ぶき禁輸きんゆ原則げんそく撤廃てっぱい政府せいふはたらきかけて、収益しゅうえき拡大かくだい目指めざ方針ほうしんかかげたことに反発はんぱつした組合くみあいおこなうストライキ、有事ゆうじさい協力きょうりょく義務ぎむせられる船員せんいん組合くみあい法律ほうりつ改廃かいはいもとめておこなうストライキなどがげられる。

政治せいじ目的もくてきでの争議そうぎ行為こうい憲法けんぽう28じょう保障ほしょうそとにあるとほぐされる理由りゆう団体だんたい行動こうどうけん趣旨しゅし沿革えんかくにある。団体だんたい行動こうどうけん趣旨しゅしは、使用しようしゃよりも劣位れついにある被用者ひようしゃ給与きゅうよ勤務きんむ時間じかん休暇きゅうかなどの雇用こよう条件じょうけんについて使用しようしゃ交渉こうしょうするにあたって、実質じっしつてき対等たいとう平等びょうどう立場たちばつための基盤きばん確保かくほし、もって労働ろうどうしゃ経済けいざいてき地位ちい向上こうじょう目指めざてんにある。しかし、政治せいじ目的もくてきでの団体だんたい行動こうどうは、使用しようしゃとの交渉こうしょうによる雇用こよう条件じょうけん改善かいぜん目指めざしておこなわれるものではない。それゆえ政治せいじ目的もくてきでの団体だんたい行動こうどう憲法けんぽう28じょうによって保障ほしょうされないとされている。

もっとも政治せいじ目的もくてきでの団体だんたい行動こうどうといえども、政治せいじ問題もんだい直接ちょくせつまた間接かんせつ雇用こよう条件じょうけん影響えいきょうおよぼすことは否定ひていできないことにかんがみると、それをまった保障ほしょうされないものとしてしまうことには問題もんだいがないわけではない。うえれいえば武器ぶき輸出ゆしゅつ拡大かくだいによって勤務きんむ時間じかん延長えんちょうされたり、武器ぶき国外こくがい輸出ゆしゅつされることによって勤労きんろうしゃ精神せいしん衛生えいせい悪影響あくえいきょうおよぼすということもありるであろうし、危険きけん戦闘せんとう地域ちいきでの輸送ゆそう業務ぎょうむへの従事じゅうじ勤務きんむ内容ないようそのものである。このため直接的ちょくせつてき影響えいきょうがある場合ばあいには政治せいじ目的もくてきでの団体だんたい行動こうどう憲法けんぽうによる保障ほしょうけるとしたり、あらゆる政治せいじ目的もくてきでの団体だんたい行動こうどう憲法けんぽう28じょうによって保障ほしょうされているとする見解けんかい主張しゅちょうされている。

生産せいさん管理かんり手法しゅほうは、おおきくけてふたつあり、工場こうじょうなどを占拠せんきょして生産せいさん活動かつどう不能ふのうにする行為こういと、工場こうじょう労働ろうどうしゃ占拠せんきょするのみならず、生産せいさん活動かつどう労働ろうどうしゃみずからがおこない、その収益しゅうえき労働ろうどうしゃ分配ぶんぱいする行為こういふたつの類型るいけいがある。いずれの行為こうい使用しようしゃ私有しゆう財産ざいさん侵害しんがいするものであって、ゆるされないとするのが一般いっぱんてきである。もっとも団体だんたい行動こうどう代表だいひょうれいであるストライキ同盟罷業どうめいひぎょう怠業たいぎょう)においても使用しようしゃ生産せいさん設備せつび活用かつようできないという私有しゆう財産ざいさん制約せいやくしょうじうるのであるから(ストは生産せいさん管理かんりことなり、設備せつび使用しようしゃ支配しはいにあるので、物理ぶつりてきにはべつ人間にんげんれてきて生産せいさん活動かつどう従事じゅうじさせることができるが、まず無理むりである。したがって私有しゆう財産ざいさん制約せいやくという意味いみではストと生産せいさん管理かんりはないというのである)生産せいさん管理かんりだけを特別とくべつして保障ほしょう対象たいしょうがいとすることへの反対はんたいろんもある。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 国会図書館こっかいとしょかん昭和しょうわ23ねん9がつ3にち閣議かくぎ決定けってい政令せいれい201ごう効力こうりょくについて」(法務ほうむ総裁そうさい説明せつめい)』
  2. ^ 平成へいせい22ねん11月16にち衆議院しゅうぎいん法務ほうむ委員いいんかい大谷おおや直人なおと最高裁判所さいこうさいばんしょ人事じんじ局長きょくちょう答弁とうべん
  3. ^ 首相しゅしょう官邸かんてい平成へいせい13ねん12月25にち閣議かくぎ決定けってい公務員こうむいん制度せいど改革かいかく大綱たいこう」』
  4. ^ 公務こうむ労協ろうきょう結社けっしゃ自由じゆう委員いいんかいだい329報告ほうこくだい285かいILO 理事りじかい(2002 ねん11 がつ)にて採択さいたく)」
  5. ^ 総務そうむしょう消防しょうぼう職員しょくいん団結だんけつけん検討けんとうへ 22にち有識者ゆうしきしゃ会議かいぎ共同通信きょうどうつうしん2010ねん1がつ19にち
  6. ^ 政府せいふ公務員こうむいんストけん付与ふよ見送みおくり 民主みんしゅ労組ろうそ反発はんぱつ 共同通信きょうどうつうしん2011ねん1がつ10日とおか
  7. ^ 国家こっか公務員こうむいん制度せいど抜本ばっぽんてき見直みなおしに公務員こうむいん制度せいど改革かいかく関連かんれんさん法案ほうあん提出ていしゅつ
  8. ^ 総務そうむしょう報道ほうどう資料しりょう平成へいせい14ねん11月20にちづけ「ILO結社けっしゃ自由じゆう委員いいんかいなかあいだ報告ほうこくについて」』
  9. ^ 2010-2011年度ねんど活動かつどう方針ほうしん - 全国ぜんこく消防しょうぼう職員しょくいん協議きょうぎかい 2009ねん12月1にち
  10. ^ 民営みんえい外部がいぶ委託いたく労働ろうどう基本きほんけん-hamachanブログ(EU労働ろうどうほう政策せいさく雑記ざっきちょう)

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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