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幻想文学 - Wikipedia

幻想げんそう文学ぶんがく

文学ぶんがくのジャンルのひとつ

幻想げんそう文学ぶんがく(げんそうぶんがく、ふつ: littérature fantastique リテラチュール・ファンタスティック、えい: fantasy literature)は、

象徴しょうちょう主義しゅぎ画家がかギュスターヴ・モロー「オイディプスとスフィンクス」

概説がいせつ

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ゴシック趣味しゅみにもとづく超自然ちょうしぜんてき現象げんしょう装飾そうしょく文体ぶんたいかたゴシック・ロマンス(ゴシック小説しょうせつ)では、マシュー・グレゴリー・ルイスアン・ラドクリフなどがげられる。また、近代きんだい小説しょうせつ分類ぶんるいされる作家さっかでは、ゴーゴリドストエフスキーディケンズ日本にっぽんでは夏目なつめ漱石そうせきもり鷗外芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ川端かわばた康成やすなり谷崎たにざき潤一郎じゅんいちろうなどが、ちょう自然しぜんざいった作品さくひんのこしている。この分野ぶんやでは、モダニズムの作家さっかであるカフカナボコフベケットプルーストジョイスらの作品さくひん幻想げんそう文学ぶんがく位置いちづけられることもある。また、事象じしょう現実げんじつ世界せかいへの無意識むいしき侵入しんにゅうをテーマするシュルレアリスムふくむことがある。

範囲はんい曖昧あいまい

ただし、定義ていぎ範囲はんいもっとひろげて、「神秘しんぴてき空想くうそう世界せかいえがいた文学ぶんがく全般ぜんぱん」とすると、その範疇はんちゅうはかなり曖昧あいまいになる。

神話しんわ民話みんわ寓話ぐうわ叙事詩じょじし一部いちぶにもその傾向けいこうはある、ともえる。[2] 近代きんだい以前いぜんでは、ローレンス・スターンの『トリストラム・シャンディ』も「幻想げんそう文学ぶんがく」とされることがあるので、近代きんだい小説しょうせつ成立せいりつ以前いぜんにもおおくの幻想げんそう文学ぶんがく作品さくひん存在そんざいしていた、ともえる。

現代げんだいはいると、ポストモダニズム先鞭せんべんとなる、古来こらいからある神話しんわてき民話みんわてきモチーフをれ、寓話ぐうわふう作品さくひん作家さっかあらわれた。代表だいひょうてきなものとして、カルヴィーノわれらの祖先そせんさんさく澁澤しぶさわ龍彦たつひこタブッキ、ウィンターソンのアンジェラ・カーターなどがげられる。これらと並行へいこうした時期じきに、南米なんべいマジックリアリズム作家さっかガルシア=マルケスホルヘ・ルイス・ボルヘスマヌエル・プイグホセ・ドノーソらがいる。幻覚げんかくあつかった作品さくひんでは、いくつか類別るいべつすることができる。ジェラール・ド・ネルヴァル「オーレリア」[3]夢野ゆめの久作きゅうさくドグラ・マグラ」、色川いろかわたけしだい狂人きょうじん日記にっき』は、狂気きょうき精神せいしん障害しょうがい錯乱さくらんによる幻覚げんかくあつかった作品さくひんである。ウィリアム・S・バロウズなどは、ドラッグによる幻覚げんかくあつかった。ほかには、事象じしょう幻覚げんかくであり、現実げんじつきていないことを認識にんしきしたうえでその幻覚げんかくえが作品さくひんを、内田うちだ百閒ひゃっけん日野ひの啓三けいぞうのこしている。

かみ啓示けいじ霊的れいてきなもの、天使てんし悪魔あくま魔女まじょ魔術まじゅつ錬金術れんきんじゅつなどにまつわる物語ものがたりについては、神秘しんぴ文学ぶんがくオカルト文学ぶんがくといったかたをすることもある。風刺ふうしのために架空かくう土地とち世界せかい舞台ぶたいにしたり、空想くうそうてき冒険ぼうけんえが作品さくひんとして、シラノ・ド・ベルジュラック太陽たいよう諸国しょこくしょ帝国ていこく』やジョナサン・スウィフトガリバー旅行りょこう』なども幻想げんそう文学ぶんがくとしてあつかわれる。サドマゾッホバタイユアンドレ・ピエール・ド・マンディアルグった性愛せいあい幻想げんそうえがいた作家さっかも、耽美たんび異端いたんといった表現ひょうげん幻想げんそう文学ぶんがくれられることもある。

 
いちはやく幻想げんそう文学ぶんがく理論りろんをまとめた[4]シャルル・ノディエ(Benjamin Roubaud

ツヴェタン・トドロフ(『幻想げんそう文学ぶんがくろん序説じょせつ』)は、M.R.ジェイムズ(Ghosts and Marvels)やオルガ・ライマン(Das Märchen bei E.T.A.Hoffmann)などをいて、幻想げんそうとは現実げんじつ想像そうぞう超自然ちょうしぜん)のあいだ読者どくしゃに「ためらい」をいだかせるもので、それは「恐怖きょうふ」と「驚異きょうい」の中間ちゅうかんにあるものとするが、H.P.ラヴクラフト(Supernatural Horror in Literature)は読者どくしゃ誘発ゆうはつする感情かんじょうつよさのために「恐怖きょうふ」を重要じゅうようし、ピーター・ペンゾルト(The Supernatural in Fiction)やカイヨワ(『幻想げんそうのさなかに』)も「恐怖きょうふ」や「奇異きい感情かんじょう」を幻想げんそう要素ようそとしている。マルセル・シュネデール『フランス幻想げんそう文学ぶんがく』は、「幻想げんそうとは内奥ないおう空間くうかん探求たんきゅうするもの」[5]とする。

文学ぶんがく用語ようご文学ぶんがく研究けんきゅうのための学問がくもんてき用語ようご)として 「(フランス語ふらんすご)fantastique」「(英語えいご)fantasy」を使つかはじめた経緯けいい

フランス語ふらんすごfantastique英語えいごfantasyドイツPhantasieなどは、それぞれの歴史れきしてき経緯けいいから意味いみはまったくおなじではないが、もとギリシアphantastikéから、ラテン語らてんごfantasticumまれたと推測すいそくされている。幻想げんそう文学ぶんがくてき作品さくひんFantastiqueかたりもちいるようになったのは19世紀せいきフランス・ロマン人々ひとびとで、この分野ぶんや研究けんきゅうはフランスですすみ、ツヴェタン・トドロフ幻想げんそう文学ぶんがくろん序説じょせつ』(Introduction à La Littèrature Fantastiaue, 1970ねん)が各国かっこく翻訳ほんやく紹介しょうかいされて、Fantasticかたり文芸ぶんげい用語ようごとして認知にんちされるようになった[6]

日本にっぽんでは『哲学てつがく字彙じい』(1881ねん)でHallucination訳語やくごとして「幻想げんそう」が使つかわれたが、その心理しんりがく哲学てつがく領域りょういきでは「幻覚げんかく」に定着ていちゃく。『ていぞう英華えいか字典じてん』(1883ねん)で、FancyFantasmひとし訳語やくごとして「幻想げんそう」が使つかわれた[7]

幻想げんそう文学ぶんがく系譜けいふ

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源流げんりゅう

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幻想げんそう文学ぶんがく源流げんりゅうである神話しんわ民話みんわにおいては、アニミズムもとづく精霊せいれい妖精ようせい物語ものがたりされた。ホメロスオデュッセイア』では地獄じごくかたられ、ギリシア悲劇ひげきには幽霊ゆうれい登場とうじょうし、宗教しゅうきょうしょではたま予言よげんしゃ魔女まじょ物語ものがたりがあり、またおおくのおおかみおとこ吸血鬼きゅうけつき変身へんしんなどをテーマとする物語ものがたりつくられてきた。またヨーロッパではアーサーおう伝説でんせつひろ題材だいざいにとられ、『アレクサンドロス大王だいおう東征とうせい』をもとにした「東方とうほう驚異きょうい」にかんする伝説でんせつ(「アレクサンドロス大王だいおうからアリストテレスへの手紙てがみ」)や、プレスター・ジョン伝説でんせつがアジアへの幻想げんそうをかきてた。18世紀せいき初頭しょとうにはフランスの東洋とうよう学者がくしゃアントワーヌ・ガランにより『せん一夜いちや物語ものがたり』が紹介しょうかいされ、カーリダーサによるサンスクリットげき『シャクンタラーひめ』は18世紀せいき後半こうはんからえいどくふつやくされて、ゲーテらに影響えいきょうあたえた。1819ねんにはフランツ・ボップにより『マハーバーラタ』から「ナラおう物語ものがたり」がラテン語らてんごやくされ、つづいて各国かっこくひろやくされる。

 
ラブレー風刺ふうし嘲笑ちょうしょう物語ものがたり「ガルガンチュワ」(ギュスターヴ・ドレ

ルネサンスには、人文じんぶん主義しゅぎしゃトマス・モア理想りそう風刺ふうし題材だいざいとしてのユートピアあらわし、フランソワ・ラブレーによる民間みんかん伝承でんしょうもとにしたちょう人的じんてき巨人きょじんおうによるグロテスクなわらいの物語ものがたりガルガンチュワとパンタグリュエル」が民衆みんしゅう人気にんきた。

伝説でんせつさい発見はっけん

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フランスでは16、17世紀せいきにはシャルル・ペローによる民話みんわ収集しゅうしゅうなどのほか民衆みんしゅうによる迷信めいしんてき物語ものがたり延長えんちょうじょうの「不可思議ふかしぎ物語ものがたり」がさかえ、18世紀せいきにはジャック・カゾットサドなど、想像そうぞうりょくゆたかな作品さくひんされていた。グリム兄弟きょうだいはドイツの民間みんかん伝承でんしょう収集しゅうしゅうして『子供こども家庭かていメルヒェンしゅう』(1812ねん)などとして刊行かんこうし、ハイネも『精霊せいれい物語ものがたり』(1835ねん)でゲルマン民族みんぞく古代こだいしんげ、つづいて『流刑りゅうけいかみ々』(1853ねん)ではギリシアのかみについてべ、また詩作しさく反映はんえいした。ルートヴィヒ・ティークらは、「民衆みんしゅうほん」の民話みんわなどを題材だいざいにして創作そうさくしたクンスト・メルヘン(芸術げいじゅつ童話どうわ)をみ、自然しぜん礼賛らいさん思想しそうはぐくんだ。ゴーゴリは、当時とうじロシアで流行りゅうこうしていた、故郷こきょうウクライナ伝説でんせつもとにした創作そうさくディカーニカ近郷きんごう夜話やわ』(1832ねん)で人気にんきた。

文学ぶんがく潮流ちょうりゅう

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近代きんだいにおけるその系譜けいふは、たとえばイギリスゴシック・ロマンスロマンなどといった潮流ちょうりゅうとなり、19世紀せいきには後期こうきロマンとくE.T.A.ホフマン作品さくひん各国かっこくおおきな影響えいきょうあたえた。

19世紀せいきには、幻想げんそう文学ぶんがくろん文学ぶんがくにおける幻想げんそうについて」(Rêveries littéraires, morales et fantastiques、1832)をいたシャルル・ノディエや、テオフィル・ゴーティエしょうロマンばれる作家さっかたち活動かつどうし、コント・ファンタスティック(Conte Fantastique)という分野ぶんや形成けいせいする。またスウェーデンボルグなどの神秘しんぴ思想しそう影響えいきょうされた作品さくひんバルザック「セラフィタ」など)や、悪魔あくま崇拝すうはい題材だいざいにした作品さくひんユイスマンス彼方かなた』など)もまれた。ドイツやフランスのロマン作品さくひん翻訳ほんやくされたイギリスでは、産業さんぎょう革命かくめいによってすす合理ごうり主義しゅぎ社会しゃかいで、人間にんげんせい回復かいふくのための文学ぶんがくとして、ジョン・ラスキンなどによる妖精ようせい物語ものがたり復権ふっけんする。さらにラファエルまえや、フェビアン協会きょうかいキリスト教きりすときょうてき社会しゃかい主義しゅぎ影響えいきょうけながら、昔話むかしばなしとはことなる別世界べっせかい舞台ぶたいにしたチャールズ・キングスレールイス・キャロルジョージ・マクドナルドなどの物語ものがたりされた。[8] 世紀せいき後半こうはんには象徴しょうちょうリラダンなどによる作品さくひんまれ、20世紀せいきにはハンス・ハインツ・エーヴェルスドイツばんフランツ・カフカなど表現ひょうげん主義しゅぎ作家さっか作品さくひんアンドレ・ブルトンらのシュルレアリスムや、レーモン・ルーセル実験じっけんてき作品さくひんかれた。ロシアでは、ロマン主義しゅぎ象徴しょうちょう主義しゅぎ影響えいきょうけた、プーシキンウクライナ伝説でんせつ小説しょうせつしたゴーゴリチェーホフアレクセイ・ニコラエヴィッチ・トルストイらの怪奇かいきてき幻想げんそうてき作品さくひんがある。20世紀せいきにもザミャーチンブルガーコフ風刺ふうしてき作品さくひんかれたが、社会しゃかい主義しゅぎリアリズムによりほぼ黙殺もくさつされる状態じょうたいつづき、ソビエト連邦れんぽう崩壊ほうかいによってそれらのさい評価ひょうかがなされている。

ひがしアジアの系譜けいふ

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中国ちゅうごくにおいては六朝りくちょう時代じだいの『さがせかみ』などのこころざしかい小説しょうせつとうだいの『ゆう仙窟せんくつ』など多数たすうかれた伝奇でんき小説しょうせつといった伝統でんとうがあり、もとあきらだいには『西遊せいゆう』が成立せいりつし、きよしだいには『聊斎こころざしこと』がかれた。日本にっぽんにおいては仏教ぶっきょう説話せつわしゅう日本にっぽん霊異れいい』、古代こだい説話せつわあつめた『今昔こんじゃく物語ものがたりしゅう』などから、江戸えど時代じだいには上田うえだ秋成あきなり雨月物語うげつものがたり』や曲亭馬琴きょくていばきん南総里見八犬伝なんそうさとみはっけんでん』など怪奇かいきてき伝奇でんきてき作品さくひんかれ、それらのイメージは歌舞伎かぶき浄瑠璃じょうるりつうじてひろまった。明治めいじ時代じだいにもいずみ鏡花きょうか岡本おかもと綺堂きどうなどの伝統でんとうもとづいた幻想げんそうてき作品さくひんかれ、三遊亭圓朝さんゆうていえんちょう話芸わげい文学ぶんがくてき評価ひょうかたかい。これらは科学かがくてき知見ちけん進歩しんぽとともにリアリズムからは徐々じょじょ乖離かいりしていくが、なおも幻想げんそうであることを認識にんしきしたうえでの文学ぶんがく作品さくひんとして現代げんだいまでがれている。朝鮮ちょうせんでは17世紀せいき以降いこう沈清でん』『ひろしよしわらわでん』など幻想げんそうてきなハングル小説しょうせつかれ、19世紀せいきまつごろからはちょう日本にっぽん独裁どくさい政権せいけんなどの抑圧よくあつこうした寓話ぐうわてき風刺ふうしてき作品さくひんが、安国やすくにぜんひさしぼくようひろしなどによってかれている。現代げんだい中国ちゅうごく文学ぶんがくでは、莫言受賞じゅしょう理由りゆうとなった、作品さくひんちゅう矛盾むじゅんはらみながら物語ものがたり進展しんてんする幻覚げんかくてきリアリズム[9]作家さっか残雪ざんせつ独自どくじのリアリズムも、幻想げんそう文学ぶんがくちか位置いちにあるとえる。

大衆たいしゅう

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ポーメエルシュトレエムにまれて」のうみだいうず幻想げんそうハリー・クラーク

19世紀せいきになると産業さんぎょう革命かくめいによってまれた都市とし労働ろうどうしゃ読書どくしょよくたすために、イギリスのペニー・ドレッドフルや、アメリカのストーリー・ペーパー英語えいごばんダイムノヴェルといった定期ていき刊行かんこうぶつとして、廉価れんか大量たいりょう生産せいさんてき大衆たいしゅう小説しょうせつ数多かずおおされ、おおくの怪奇かいき小説しょうせつ冒険ぼうけん小説しょうせつ爆発ばくはつてき人気にんきた。またエドガー・アラン・ポージュール・ヴェルヌなどによって科学かがくてき驚異きょういによる幻想げんそう物語ものがたりまれ、SFとして発展はってんげたが、SFとなされている作品さくひん国際こくさい幻想げんそう文学ぶんがくしょう受賞じゅしょうするなど、独自どくじてき幻想げんそうえが文学ぶんがくとしても認知にんちされている。推理すいり小説しょうせつにおいても、一見いっけん不可能ふかのうえる犯罪はんざい奇妙きみょう動機どうき様々さまざま幻想げんそう喚起かんきすることがある。

アフリカでは20世紀せいき以降いこうエイモス・チュツオーラソニー・ラブ=タンシなど、口承こうしょう文学ぶんがく伝統でんとうもとにしたマジックリアリズムてき文学ぶんがくまれている。

日本にっぽんにおける受容じゅよう

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曲亭馬琴きょくていばきん椿つばきせつ弓張月ゆみはりづき崇徳院すとくいん怨霊おんりょう歌川うたがわかおるつや

大正たいしょうまつから昭和しょうわ初期しょきにかけて、雑誌ざっししん青年せいねん』などでは江戸川えどがわ乱歩らんぽ夢野ゆめの久作きゅうさくなどの怪奇かいき幻想げんそう趣味しゅみ、あるいはエログロナンセンスとばれる作風さくふう一世いっせい風靡ふうびし、また日夏ひなつ耿之介こうのすけは「神秘しんぴ文学ぶんがく」「恠異文学ぶんがく」として東西とうざい古今ここん怪奇かいき幻想げんそう作品さくひん紹介しょうかいおこなった。国枝くにえだ史郎しろうなどによって伝奇でんき小説しょうせつというジャンルもまれる。

1950年代ねんだいから澁澤しぶさわ龍彦たつひこによるフランス文学ぶんがくにおける幻想げんそう小説しょうせつ怪奇かいき小説しょうせつ紹介しょうかい平井ひらい呈一ていいちによるえいべい怪奇かいき小説しょうせつ紹介しょうかいはじまり、1956ねんハヤカワ・ミステリで『幻想げんそう怪奇かいき えいべい怪談かいだんしゅう』2かん刊行かんこう並行へいこうして澁澤しぶさわ創作そうさくいぬおおかみ都市とし」や、中井なかい英夫ひでお「とらんぷたん連作れんさくなどが発表はっぴょうされ、1966ねんに『世界せかい異端いたん文学ぶんがく』(桃源とうげんしゃ)が刊行かんこうされて澁澤しぶさわ存在そんざい注目ちゅうもくされ、徐々じょじょ分野ぶんやとして認知にんちされるようになった。『ミステリマガジンでは1967ねんから定期ていきてきに「幻想げんそう怪奇かいき特集とくしゅうまれ、1968ねんには『薔薇ばら創刊そうかん、1970年代ねんだいには『ユリイカ誌上しじょうでの澁澤しぶさわ龍彦たつひこ種村たねむらひろし由良ゆらくんらが読者どくしゃ空想くうそうて、紀田きだ順一郎じゅんいちろう荒俣あらまたひろし編集へんしゅうによる『世界せかい幻想げんそう文学ぶんがく大系たいけい』が出版しゅっぱんされる。中間ちゅうかん小説しょうせつでも赤江あかえ皆川みなかわ博子ひろこがデビューし、1973ねんから1974ねんには雑誌ざっし幻想げんそう怪奇かいき』が発行はっこう、『S-Fマガジンでは山尾やまお悠子ゆうこなどがいだされた。1980ねんごろからは日本にっぽん明治めいじ以降いこう文学ぶんがく作品さくひんなかにおける幻想げんそうてき作品さくひん幻想げんそう文学ぶんがくとして位置付いちづけたアンソロジーも出版しゅっぱんされるようになり、1983ねんには季刊きかん幻想げんそう文学ぶんがく』が発刊はっかん(2003ねんおわりかん)、出版しゅっぱんかいにおけるジャンルのひとつとして確立かくりつされるにいたった。

詩歌しか世界せかいにおいては、中井なかい英夫ひでおいだされた塚本つかもと邦雄くにお寺山てらやま修司しゅうじらの前衛ぜんえい短歌たんか運動うんどうにより、幻想げんそうてき表現ひょうげん注目ちゅうもくされた。

1980年代ねんだい以降いこうでは村上むらかみ春樹はるき多和田たわだ葉子ようこ長野ながのまゆみ諏訪すわ哲史てつしなどの作品さくひんにとりわけ詩的してき幻想げんそうせいがみられる。

幻想げんそう文学ぶんがくしょう

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その作家さっか

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アンソロジー

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  • 世界せかい幻想げんそう名作めいさくしゅう澁澤しぶさわ龍彦たつひこへん 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 1996/10 ISBN 430940488X

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん
  2. ^ なお、日本にっぽんけると、日本にっぽんの『古事記こじき』にも、そういった要素ようそふくまれている。
  3. ^ ツヴェタン・トドロフ『幻想げんそう文学ぶんがくろん序説じょせつ』Ⅱ 幻想げんそう定義ていぎ
  4. ^ 篠田しのだ知和ちわもとへん『ノディエ幻想げんそう短篇たんぺんしゅう岩波書店いわなみしょてん 1990ねん
  5. ^ 渡辺わたなべ明正あきまさやく 国書刊行会こくしょかんこうかい 1987ねん
  6. ^ 篠田しのだともかずはじめ『フランス幻想げんそう文学ぶんがく総合そうごう研究けんきゅう国書刊行会こくしょかんこうかい、1989ねん
  7. ^ 千葉ちばせんいち澁澤しぶさわ龍彦たつひこ中井なかい英夫ひでお」(『国文學こくぶんがく』1984/8がつごう
  8. ^ 風間かざま賢二けんじへん『ヴィクトリアあさ妖精ようせい物語ものがたり筑摩書房ちくましょぼう、1990ねん編者へんしゃあとがき)
  9. ^ https://www.nobelprize.org/prizes/literature/2012/summary/

参考さんこう文献ぶんけん

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  • ルイ・ヴァックス『幻想げんそう美学びがく窪田くぼた般彌わけ白水しろみずしゃ文庫ぶんこクセジュ 1961ねん
  • ジャン=リュック・スタインメッツ『幻想げんそう文学ぶんがく』(La Littérature Fantastique) 中島なかじまさおりやく白水しろみずしゃ文庫ぶんこクセジュ 1993ねん
  • ツヴェタン・トドロフ幻想げんそう文学ぶんがくろん序説じょせつ』(Introduction à La Littérature Fantastique) 1970(三好みよし郁朗いくろうわけ東京とうきょうそうもとしゃそうもとライブラリ文庫ぶんこ〉 1999ねん
  • 西洋せいよう中世ちゅうせいたん集成しゅうせい 東方とうほう驚異きょうい池上いけがみ俊一しゅんいちわけ講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ 2009ねん
  • 渡辺わたなべ一夫かずお「ルネサンスのふたつの巨星きょせい」(『世界せかい名著めいちょ 17 エラスムス トマス・モア』中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ 1969ねん
  • あら俣宏『別世界べっせかい通信つうしん月刊げっかんペンしゃ 1977ねん改訂かいてい イースト・プレス 2002ねん
  • 須永すなが朝彦あさひこ日本にっぽん幻想げんそう文学ぶんがく平凡社へいぼんしゃライブラリー 2007ねん
  • 由良ゆらくん椿つばきせつ泰西たいせいなみ曼派文学ぶんがく談義だんぎ平凡社へいぼんしゃライブラリー 2012ねん
  • 『SFファンタジア 4 幻想げんそうへん小松こまつ左京さきょう石川いしかわ喬司たかし監修かんしゅう学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃ 1978ねん
  • 世界せかい幻想げんそう文学ぶんがく作家さっか事典じてんあら俣宏ほかへん国書刊行会こくしょかんこうかい 1979ねん
  • 世界せかいのオカルト文学ぶんがく 幻想げんそう文学ぶんがくそう解説かいせつ'84』由良ゆらくん監修かんしゅう自由じゆう国民こくみんしゃ 1983ねん、のち新版しんぱん
  • 幻想げんそう文学ぶんがく手帖てちょう』(『國文學こくぶんがく臨時りんじ増刊ぞうかんごうがくとうしゃ 1988ねん新版しんぱん2007ねん
  • 幻想げんそう文学ぶんがく劇場げきじょう』(『國文學こくぶんがく臨時りんじ増刊ぞうかんごうがくとうしゃ 1989ねん新版しんぱん2007ねん
  • 日本にっぽん幻想げんそう作家さっか名鑑めいかんあずま雅夫まさお石堂いしどうあい へん幻想げんそう文学ぶんがく出版しゅっぱんきょく 1991ねん
  • 出口いでぐち逸平いっぺい幻想げんそう怪奇かいき・ミステリーの図鑑ずかん」(『Et Puis』23ごう特集とくしゅう 幻想げんそう怪奇かいき・ミステリーのかん」)白地しろじしゃ 1991ねん

関連かんれん項目こうもく

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