表面ひょうめん流出りゅうしゅつ

表面ひょうめん流出りゅうしゅつ（ひょうめんりゅうしゅつ、英えい: surface runoff）とは、雨水あまみず、雪解ゆきどけ水すいなどから大地だいちを流ながれる水みずの流ながれを表現ひょうげんする用語ようごであり、水みず循環じゅんかんの主おもな構成こうせいを示しめす。流りゅう路ろに繋つながる表面ひょうめんを流ながれる流水りゅうすいは、面めん汚染おせん源げんとも呼よばれている。流出りゅうしゅつ水すいが大地だいちを流ながれるときには、流出りゅうしゅつ水すいが、石油せきゆや農薬のうやく（除草じょそう剤ざい・殺虫さっちゅう剤ざい）、肥料ひりょうなどの廃水はいすいまたは面めん汚染おせん源げんとなるような汚染おせんを拾ひろい上あげる。

表面ひょうめん流出りゅうしゅつ

世代せだい

表面ひょうめん流出りゅうしゅつは、降雨こううや雪解ゆきどけ、氷河ひょうがの崩落ほうらくなどから発生はっせいする。 雪解ゆきどけや氷河ひょうがの崩落ほうらくは寒さむい地域ちいきしか起おきないものである。典型てんけい的てきに、雪解ゆきどけは春はる期きにピークを迎むかえ、氷河ひょうがの崩壊ほうかいは夏なつ期きにピークを迎むかえる。雪解ゆきどけや氷河ひょうがの崩壊ほうかい率りつの決定的けっていてきな要因よういんは、気温きおんと日照ひでり時間じかんである。高山たかやま地帯ちたいでは日差ひざしのある日ひにしばしば増水ぞうすいし、曇くもりがちの日ひには水みずが引ひく。 降雪こうせつのない地域ちいきでは、流水りゅうすいは降雨こううから始はじまる。しかしながら、全すべての降水こうすいが流水りゅうすいを生うむわけではない。なぜならば、土壌どじょうの貯水ちょすい力りょくによってにわか雨あめくらいならば吸収きゅうしゅうできるからである。 オーストラリアおよび南みなみアフリカ共和きょうわ国こくの極きわめて古ふるい土壌どじょうにおいて、根毛こんもうの濃密のうみつなネットワークをともなったプロテオイド根ねが、大量たいりょうの降雨こううであっても降水こうすいを吸収きゅうしゅうできたことが分わかっている。こうした地域ちいきでは、不毛ふもうで砕くだけた粘土ねんど質しつの土壌どじょうであっても、高たかい雨量うりょうと蒸発じょうはつする見込みこみの少すくないことが表面ひょうめん流出りゅうしゅつの発生はっせいに必要ひつようなのであり、変化へんかしやすい、一時いちじ的てきな流ながれとなるのである。

地表ちひょう流りゅうの発生はっせいパターンと地表ちひょう流りゅう

地表ちひょう流りゅうが発生はっせいするパターンとしては、地中ちちゅうへの水みずの浸透しんとうが過剰かじょうになった状態じょうたいと地中ちちゅうの水みずが飽和ほうわ状態じょうたいであるために発生はっせいする状態じょうたいの2パターン存在そんざいする。前者ぜんしゃは、砂漠さばく気候きこうまたはステップ気候きこうの地域ちいきで起おこりやすく、そこでは降水こうすいが激はげしく、表面ひょうめんシールや舗装ほそう地域ちいきでは土壌どじょうの浸透しんとう能力のうりょくが低落ていらくする。降雨こううが続つづき土壌どじょうの水分すいぶんが飽和ほうわ状態じょうたいになり、凹地貯留ちょりゅうが溢あふれた場合ばあいに降水こうすいがすぐに表面ひょうめん流出りゅうしゅつを生うみ出だす。土壌どじょうが飽和ほうわするまでの時間じかんに与あたえる影響えいきょうの1つとして、もともとの土壌どじょう中ちゅうの水分すいぶん量りょうを挙あげることができる。こうして、浸透しんとうした水みずは、上流じょうりゅうから下流かりゅうへと流ながれるのだが、このとき、この水みずは、海うみの近ちかくで地表ちひょうに表出ひょうしゅつする。また地表ちひょうの水分すいぶんの一部いちぶは蒸発じょうはつし、微ほろ地形ちけいの沈下ちんかで貯水ちょすいされ、下流かりゅうに流ながれる途中とちゅうで土壌どじょうに浸透しんとうする。しかし、いかなる地表ちひょうの水分すいぶんも、最終さいしゅう的てきには流ながれ路ろを下くだって川かわ、湖みずうみ、海うみに到達とうたつするのである。

雨水あまみず管かんに流ながれ込こむ表面ひょうめん流出りゅうしゅつ

表面ひょうめん流出りゅうしゅつの影響えいきょう

侵食しんしょく

表面ひょうめん流出りゅうしゅつは地球ちきゅう表面ひょうめんの侵食しんしょくの原因げんいんの1つである。農作物のうさくもつ生産せいさん性せいの減退げんたいは侵食しんしょくが生しょうじるが、土壌どじょう保全ほぜんの分野ぶんやで学まなばれている。4つの典型てんけい的てきな侵食しんしょくがあり、雨滴うてき侵食しんしょく・ガリー侵食しんしょく・表層ひょうそう侵食しんしょく（面めん状じょう侵食しんしょく）・河底かわぞこ浸食しんしょくである。雨滴うてき侵食しんしょくは、土壌どじょう表層ひょうそうに繋つながる雨滴うてきの力学りきがく的てき衝突しょうとつの結果けっかであり、土どの粒子りゅうしが表面ひょうめん流出りゅうしゅつの容体ようだいの中なかを漂ただよう。ガリー侵食しんしょくは、土壌どじょう中ちゅうを帯状おびじょうに削けずるほど強つよい流ながれのときに発生はっせいするが、1cmの溝みぞであることもあれば、数かずmの川かわであることもある。表層ひょうそう侵食しんしょくは、はっきりとした溝みぞを持もたない流りゅう路ろで、地表ちひょうで運搬うんぱんをする。2つのタイプの流りゅう路ろとも相当そうとう量りょうの堆積たいせき物ぶつとその他たの水質すいしつ汚染おせん物質ぶっしつを運はこぶ。ガリー侵食しんしょくの場合ばあい、かなりの量りょうの物質ぶっしつが、一時いちじ的てきな増水ぞうすいで運はこばれる。河底かわぞこ浸食しんしょくは、河かわやクリークの早はやい流ながれにおける、川岸かわぎしや河底かわぞこの磨耗まもうである。

流ながれ路ろで運はこばれる土どの粒子りゅうしはさまざまなサイズを持もち、直径ちょっけい0.01–1.0mmである。より大おおきな粒子りゅうしは少すくない輸送ゆそう距離きょりで沈殿ちんでん、堆積たいせきするが、微粒子びりゅうしは水中すいちゅうを漂ただよって長距離ちょうきょりを動うごくことができる。こういう理由りゆうで、濁にご度たびを生うみ出だし光ひかり透過とうか率りつを減げんじるのは微粒子びりゅうしのシルト質しつ土どであり、水みずの生態せいたい系けいを混乱こんらんさせる状況じょうきょうである。

世界せかい規模きぼの現代げんだいの侵食しんしょく土壌どじょう喪失そうしつの主要しゅようの原因げんいんは、熱帯ねったい雨林うりんの焼畑やきばた農業のうぎょうから生しょうじる。大地だいち表面ひょうめんの全体ぜんたいが植生しょくせいで剥はぎ取とられ、有ゆう機体きたいが全すべて焼やき払はらわれたならば、土どの表面ひょうめんは、風化ふうかと水みずの浸食しんしょくに傷きずつきやすい。地球ちきゅうの数すう多おおくの国くにで、全すべての地域ちいきで生産せいさん性せいがなくなっている。国くにの陸地りくちの10パーセント程度ていどを構成こうせいするマダガスカル高地こうちの中央ちゅうおう部ぶでは、実質じっしつ的てきには陸地りくち全体ぜんたいが植生しょくせいに対たいして不毛ふもうで、そこにはおおよそ奥行おくゆき50m、幅はば100kmを超こえるガリー侵食しんしょく溝みぞ帯たいがある。世界せかいのある地域ちいきには、移動いどう農耕のうこうが焼畑やきばた農業のうぎょうと組くみ合あわせて営農えいのう組織そしきとなっている。侵食しんしょくは、肥沃ひよくな表土ひょうどを損失そんしつし、沃土よくどを減退げんたいさせ、農業のうぎょう生産せいさん性せいの質しつをも後退こうたいさせる。

環境かんきょう影響えいきょう

流水りゅうすいと関連かんれんする主要しゅような環境かんきょう問題もんだいは、水みず循環じゅんかん系けいに対たいする水質すいしつ汚染おせんの運搬うんぱんを通つうじた地表ちひょう水すい、地下水ちかすい、土壌どじょうに対たいする影響えいきょうであろう。最終さいしゅう的てきには、こうした結果けっかは、人間にんげんの健康けんこうリスク、生態せいたい系けいの混乱こんらん、水みず資源しげんに対たいする美び環境かんきょうの影響えいきょうに変かわる。流水りゅうすいから生しょうじた地表ちひょうの水みずへ大おおきな影響えいきょうを与あたえる、幾いくばくかの汚染おせんは、石油せきゆ物質ぶっしつ・除草じょそう剤ざい・肥料ひりょうなどである。表面ひょうめん流出りゅうしゅつによる除草じょそう剤ざいの定量ていりょう的てきな取とり込こみと他たの汚染おせんは、1960年代ねんだいから研究けんきゅうされているが、水みずに関かんする除草じょそう剤ざいなどとの接点せってんは、薬害やくがいに関かんする知識ちしきを高たかめたとして評価ひょうかされている。表層ひょうそう水すいの場合ばあい、小川おがわや河川かせんがさまざまな化学かがく物質ぶっしつや堆積たいせき物ぶつを運搬うんぱんしながら流水りゅうすいを受うけ取とるので、その影響えいきょうは水質すいしつ汚染おせんとなる。飲料いんりょうに適てきし、水みず供給きょうきゅうとして表層ひょうそう水すいが用もちいられるとき、その表層ひょうそう水すいは、健康けんこうリスクと飲料いんりょう水すいとしての観点かんてん（自然しぜんの理法りほう・色いろ・濁にご度たび）から妥協だきょうを受うける。汚染おせんされた表層ひょうそう水すいのリスクは、彼かれらを接待せったいする水生すいせい種しゅの代謝たいしゃ過程かていを変質へんしつさせるし、こうした変化へんかが、魚さかなの大量たいりょう死しや生態せいたい系けいバランスの変化へんかをもたらすのである。他たの種たねの影響えいきょうは、動物どうぶつの交配こうはい、産卵さんらん、卵生らんせい・幼生ようせいの生存せいぞん能力のうりょく、活性かっせい、植生しょくせいの生産せいさん性せいなどである。地下水ちかすいの場合ばあい、主おもな問題もんだいは、帯おび水すい層そうなどから人間にんげんの使用しように取とり込こまれた場合ばあい、飲料いんりょう水すいの汚染おせんである。

洪水こうずい

水路すいろが、下流かりゅうに向むかう水みずの量りょうを運はこびきれなくなったときに、洪水こうずいが発生はっせいする。洪水こうずいの発生はっせい頻度ひんどにより再現さいげん期間きかんが表現ひょうげんされる。洪水こうずいは自然しぜんの過程かていであり、生態せいたい系けいの厚生こうせいと過程かていを持もち、しかし河川かせん工学こうがくといった土地とち使用しようにより変かえられる。洪水こうずいは、社会しゃかいと損害そんがいの発生はっせいの双方そうほうに恩恵おんけいがある。ナイル氾濫はんらん原ばらに沿そった農耕のうこうは、穀物こくもつに有益ゆうえきな栄養えいよう物ぶつを堆積たいせきする季き節ぶし特有とくゆうの洪水こうずいが利用りようされている。しかしながら、定住ていじゅうの数かずと影響えいきょうが増大ぞうだいするにつれて、洪水こうずいは徐々じょじょに自然しぜんの脅威きょういとなった。逆ぎゃくの影響えいきょうが、生命せいめいの喪失そうしつ・物的ぶってき被害ひがい・水みず供給きょうきゅうの汚染おせん・穀物こくもつの喪失そうしつ・社会しゃかいの転換てんかん・家屋かおくの喪失そうしつなどに及およぶ。洪水こうずいは、もっとも自然しぜん災害さいがいとして被害ひがいの大おおきいものの1つである。

農業のうぎょう問題もんだい

農地のうちが耕たがやされ、裸はだかの土壌どじょうが晒さらされると、降水こうすいが毎年まいとし、水路すいろへと10億おくトンにも及およぶ表土ひょうどが運はこばれ、肥沃ひよくな表土ひょうどが損失そんしつし、表ひょう水すいに濁にごりを生うみ出だすような堆積たいせき物ぶつが加くわわる。農業のうぎょう問題もんだいの他ほかの事情じじょうとしては、表面ひょうめん流出りゅうしゅつ経由けいゆで農薬のうやくを運はこぶことだ。（硝酸しょうさんエステル・リン酸さん塩しお・除草じょそう剤ざいなど）この事由じゆうは、化学かがく物質ぶっしつの使用しようが過剰かじょうであるか、まずいタイミングで大量たいりょうの降水こうすいがあった場合ばあいにおきる。結果けっか的てきに発生はっせいした汚染おせん流りゅう液えきは、農薬のうやくの廃棄はいき物ぶつだけでなく、下流かりゅうの生態せいたい系けいの環境かんきょう処遇しょぐうにも現あらわれている。伝統でんとう的てき農法のうほうの代替だいたい手段しゅだんとして、化学かがく物質ぶっしつの使用しようを除去じょきょあるいは大おおきく減へらす有機ゆうき農法のうほうがある。

測定そくてい法ほうと数学すうがく的てきモデリング

流ながれ液えきは、さまざまな水質すいしつに関かんするサンプリング法ほうと結むすびついた数学すうがく的てきモデルを用もちいて分析ぶんせきされる。測定そくてい法ほうは、特定とくていの有機ゆうき化合かごう物ぶつ・無機むき化合かごう物ぶつといった汚染おせんを測定そくていするpHや濁にご度たびなどの機器ききや溶存ようぞん酸素さんそといった2次じ指標しひょうを測定そくていする機器ききなど、水質すいしつ分析ぶんせきに用もちいられている。測定そくていは、同おなじく、1つの水質すいしつ標本ひょうほんから抽出ちゅうしゅつし、標本ひょうほんに対たいする科学かがく的てき物理ぶつり的てきテストを多数たすうすることで、1束たばのフォームで作つくられる。 1950年代ねんだいか初期しょきの水路すいろ運搬うんぱんモデルでは、幾いくつもの水路すいろを計算けいさんしているし、主おもに、洪水こうずいの早期そうき発見はっけんを狙ねらっている。1970年代ねんだい前半ぜんはんに始はじまったコンピューターモデルは、水質すいしつ汚染おせんを運はこぶ水路すいろの運搬うんぱんを分析ぶんせきしようと開発かいはつされたが、さまざまな化学かがく物質ぶっしつの溶出ようしゅつ速度そくどを考かんがえており、土壌どじょうへの浸透しんとうや結果けっか的てきには受容じゅようする側がわの水みずに届とどく汚染おせんをも考慮こうりょしている。 流りゅう液えきの科学かがく分解ぶんかいを計算けいさんし、運搬うんぱんを生しょうじる初期しょきのモデルはアメリカ環境かんきょう保護ほご庁ちょうの約定やくじょうの下もとで、1970年代ねんだい前半ぜんはんに開発かいはつされた。コンピューターモデルは、土地とち使用しようと科学かがく的てき操作そうさの法的ほうてき規制きせいに関かんする戦略せんりゃくを導みちびく、たくさんの汚染おせん緩和かんわの研究けんきゅうに関かんする基礎きそを形成けいせいした。DSSAMモデルも、そうした研究けんきゅうの中なかで開発かいはつされ、汚染おせん経路けいろの線形せんけい的てき解析かいせきに貢献こうけんした。

関連かんれん項目こうもく

• 除草じょそう剤ざい
• 水質すいしつ汚染おせん
• 殺虫さっちゅう剤ざい
• 農薬のうやく
• 土壌どじょう汚染おせん
• 集中しゅうちゅう豪雨ごうう
• 雨水あまみず管かん