体からだ

体からだ（體からだ、躰からだ、躯むくろ、身体しんたい、からだ）、身体しんたい（しんたい）は、生物せいぶつ学がく的てきかつ文化ぶんか的てきに規定きていされた、有ゆう機体きたいとしての人間にんげんや動物どうぶつの構造こうぞうを指さす。人間にんげんは身体しんたいを通つうじて世界せかいを経験けいけんし、世界せかいを構成こうせいする。

概説がいせつ

「体からだ」という言葉ことばは文脈ぶんみゃくに応おうじて、「身体しんたい（しんたい）」が同義語どうぎごであったり、「胴どう」が同義語どうぎごであったり「肉体にくたい（にくたい）」が同義語どうぎごであったりする。頭あたま・胴どう・手足てあしなどをまとめて「体からだ」と呼よぶこともあり（この場合ばあい、五体ごたいとも身体しんたいとも言いう）、五体ごたいから頭あたまや手足てあしを除のぞいた部分ぶぶん（この場合ばあい、胴どうともいえる）を「体からだ」と呼よぶこともある。

「体からだと心しん」あるいは「体からだと魂たましい」というような対比たいひのもとに用もちいられていることもある。その場合ばあい、「からだ」は人間にんげんや動物どうぶつの、心的しんてきあるいは精神せいしん的てきな面めんではなく物質ぶっしつ的てきな面めんを指さす。また人間にんげんや動物どうぶつの生理せいり的てきな側面そくめんや、性せい的てきな側面そくめんを指さすこともある（肉体にくたいともいえる）。人間にんげんの生理せいり的てき側面そくめんや医学いがく・解剖かいぼう学がく的てき側面そくめんを指さして「からだ」と言いっている場合ばあいは、「人体じんたい」が同義語どうぎごである。

日常にちじょう語ごで「体からだの具合ぐあいはどうですか」と聞きく時ときには、健康けんこう状態じょうたいを尋たずねている。その場合ばあい、単たんに生理せいり的てきな面めんについて聞きいているだけではなく、気分きぶんがすぐれないとか、精神せいしん的てきにまいっているといった面めんも含ふくめ、心身しんしんの総体そうたいについて聞きいている。

自分じぶんのからだをどのように扱あつかいそれにどのような意味いみを見出みいだしているのか、他者たしゃの身体しんたいをどのように扱あつかいそれにどのような意味いみを与あたえるのか、またそうした意味いみづけによって、人間にんげん存在そんざいと身体しんたいとの関係かんけいをどのようにとらえるのか、ということは文化ぶんか的てきなことである。人類じんるいがそうしたことについてどのようなルールを発達はったつさせてきたのかについてはあらためて多方面たほうめんから問といただす必要ひつようがあると考かんがえられるようになっている、と波平なみひら恵美子えびすは述のべている。

人ひとのからだ

自みずからの体からだを使つかって知しることは「体験たいけん」と呼よばれ、言葉ことばだけによる知識ちしきとは区別くべつされ重視じゅうしされている。

からだについての教育きょういくは日本にっぽんでは「保健ほけん」や「保健ほけん体育たいいく」という科目かもくで行おこなわれている。

人間にんげんのからだは性別せいべつによって異ことなった傾向けいこうがある。それが喜よろこびの源みなもととなっている場合ばあいもあれば、葛藤かっとうの源みなもととなっている場合ばあいもある（「性せい」・「ジェンダー」の項こうも参照さんしょう）。

人間にんげんは衣類いるいをまとい身体しんたいを隠かくし装よそおう傾向けいこうがある。化粧けしょうによってからだを装よそおう人ひとも多おおい。からだに改変かいへんを加くわえようとする人ひともいる（身体しんたい改造かいぞう）。からだを芸術げいじゅつの媒体ばいたい（マチエール）として使つかう人ひともいる（ボディアート）。衣類いるいをまとわない体からだは「裸はだか」・「裸体らたい」と呼よばれているが、それは現代げんだい人じんにとっては何なんらかの意味いみを持もつようになっている（「ヌーディズム」の項こうも参照さんしょう）。

死亡しぼうしたことをはっきりさせたり強調きょうちょうする場合ばあいは「死体したい」と呼よび区別くべつされる。「ご遺体いたい」や「なきがら」・「骸むくろ（むくろ）」とも。逆ぎゃくに生いきていることを明示めいじする場合ばあいは「生体せいたい（せいたい）」と呼よばれることもある。日本にっぽんには、欧米おうべい諸国しょこくなどと比較ひかくすると、家族かぞくなどの遺体いたいにこだわりをもっており、それを取とり戻もどそうとする文化ぶんかを持もっている。欧米おうべいでは一般いっぱん的てきには、日本人にっぽんじんほどには家族かぞくの遺体いたいにこだわりを持もたない。

体からだの位置いちや姿勢しせいのことを「体位たいい（たいい）」と呼よぶが、医療いりょう・看護かんご・介護かいご領域りょういきでは特とくに頻繁ひんぱんに使つかわれている。

からだに関かんすることば

• 上半身じょうはんしん（じょうはんしん） - 人間にんげんの腰こしより上うえの部位ぶいを指さす。下半身かはんしんの対立たいりつ概念がいねん。半身はんしん像ぞうとは上半身じょうはんしんを絵画かいが・塑像そぞう化か（そぞうか）したものである。
• 下半身かはんしん（かはんしん） - 人間にんげんの腰こしより下したの部位ぶいを指さす。上半身じょうはんしんの対立たいりつ概念がいねん。もっぱら人間にんげんの身体しんたいに対たいしてのみ使つかう。下半身かはんしんにつける衣類いるいをボトムスと言いう。人間にんげんは日常にちじょう生活せいかつにおいて、下半身かはんしんに比くらべ上半身じょうはんしんの方ほうをよく動うごかすため、下半身かはんしんの贅肉ぜいにくは取とれにくいと考かんがえられている。生殖せいしょく器官きかんの婉曲えんきょく表現ひょうげんとしても用もちいられる。

主おもな部位ぶい

• 頭部とうぶ

  • 脳のう / 頭あたま / 目め / 耳みみ / 鼻はな / 口くち / 顎あご / 歯は / 咽喉いんこう

  頚部けいぶ

  • 首くび / 食道しょくどう

  胸部きょうぶ

  • 胸むね / 乳房ちぶさ / 乳首ちくび / 心臓しんぞう / 肺はい / 横隔膜おうかくまく

  手て

  • 手て / 指ゆび / 手首てくび / 腕うで

生物せいぶつ一般いっぱんにおいて

生物せいぶつの種たねによって多種たしゅ多様たような体からだの特徴とくちょうがあり、どの種たねにも共通きょうつうする体からだの構造こうぞうというものは皆無かいむに等ひとしい。

例たとえば人体じんたいは頭あたま、手て、足あし、目め、鼻はな、口くち、耳みみや諸々もろもろの内臓ないぞうといったさまざまな器官きかんを持もつが、これらは全すべての生物せいぶつに共通きょうつうするわけではない。ただし生殖せいしょく細胞さいぼうは普通ふつうは体からだと言いわない。その意味いみでは、体からだという語かたりは栄養えいよう体たいに関かんする用語ようごである。

環境かんきょうにおける差異さい

同おなじ種しゅでも住すむ環境かんきょうによって、体からだに差異さいがみられる。

人間にんげんの環境かんきょうでの体からだの違ちがい

高緯度こういどの人間にんげんは、赤道あかみち近ちかくの人間にんげんより大おおきな目めと大おおきな脳のう（灰はい白しろ質しつ）を持もつ。これは知性ちせいに貢献こうけんするものでは無なく、暗くらい灰色はいいろの空そらの下したで高こう解像度かいぞうどで物ものを見みるための進化しんかとみられる。

恒温動物こうおんどうぶつの環境かんきょうでの体からだの違ちがい

参考さんこう文献ぶんけん

• 波平なみひら恵美子えびす『からだの文化ぶんか人類じんるい学がく: 変貌へんぼうする日本人にっぽんじんの身体しんたい観かん』（大修館書店たいしゅうかんしょてん、2005年ねん（平成へいせい17年ねん））

関連かんれん書しょ

• 多田ただ道太郎みちたろう『からだの日本にっぽん文化ぶんか』（2002年ねん（平成へいせい14年ねん））
• 鈴木すずき隆雄たかお『日本人にっぽんじんのからだ: 健康けんこう・身体しんたいデータ集しゅう』（朝倉書店あさくらしょてん、1996年ねん（平成へいせい8年ねん））

関連かんれん項目こうもく

• ボディ
• ボディペインティング
• 生命せいめい
• 心身しんしん問題もんだい