軟骨

軟骨なんこつ
軟骨なんこつ細胞さいぼうおよび細胞さいぼう小しょう器官きかん、小しょう腔および基質きしつを示しめす脱だつ灰はいされていない硝子がらす軟骨なんこつの光学こうがく顕微鏡けんびきょう写真しゃしん
表記ひょうき・識別しきべつ
MeSH	D002356
TA	A02.0.00.005
解剖かいぼう学がく用語ようご [ウィキデータを表示ひょうじ]

軟骨なんこつ（なんこつ、英えい: cartilage）は、軟骨なんこつ細胞さいぼうとそれを取とり囲かこむ基質きしつからなる結合けつごう組織そしきであるが、組織そしき中ちゅうには血管けっかん、神経しんけい、リンパ管りんぱかんが見みられない。弾力だんりょく性せいがあり、脊椎動物せきついどうぶつに比較的ひかくてき発達はったつしている。

系統けいとう進化しんか

系統けいとう進化しんか的てきには、かつては初期しょきの脊椎動物せきついどうぶつは軟骨なんこつ構造こうぞうの骨格こっかくを持もち（軟骨なんこつ魚類ぎょるい）、後のちに硬骨こうこつ構造こうぞうの骨格こっかくへと発展はってん（硬骨魚こうこつぎょ類るい）していったと考かんがえられた。事実じじつ、軟骨なんこつ魚類ぎょるいは、鰓えらの構造こうぞうや皮膚ひふの構造こうぞう、アンモニア代謝たいしゃの仕組しくみ、骨格こっかく（軟骨なんこつでできた骨格こっかく）など多おおくの点てんで、硬骨魚こうこつぎょ類るいよりも原始げんし的てきな特徴とくちょうを持もつ。

ただし、軟骨なんこつ魚類ぎょるいよりも古ふるい脊椎動物せきついどうぶつである板いた皮かわ類るいでは、すでに体からだ表ひょうに甲かぶと皮がわ（皮かわ骨こつ）を発達はったつさせており、骨ほねの起原きげんは軟骨なんこつ魚ぎょが現あらわれるよりも前まえにあることになる。このことは骨ほねの発生はっせい様式ようしきを二ふたつに分わけることで整理せいりでき、膜まく性せい骨こつ（直接ちょくせつ骨ほね化か）の起原きげんは軟骨なんこつよりも前まえまたは同どう時期じきであり、軟骨なんこつ性せい骨こつ（間あいだ接骨せっこつ化か）はその後ごと考かんがえることで解決かいけつする。すなわち、現在げんざいの軟骨なんこつ魚ぎょ綱つなとして繁栄はんえいしているサメやエイなどの前まえに、板いた皮かわ類るいなどがいて、その表面ひょうめんを覆おおっていた皮かわ骨こつを退化たいかさせ、内部ないぶの軟骨なんこつのみを進化しんかさせた生物せいぶつが軟骨なんこつ魚ぎょ綱つなであり、その分岐ぶんき付近ふきんの祖先そせん動物どうぶつから、体からだ幹みき骨こつの軟骨なんこつを骨ほね化か（軟骨なんこつ性せい骨ほね化か）することができる硬骨魚こうこつぎょ類るいが進化しんかしてきたという考かんがえが現在げんざいの主流しゅりゅうとなっている。

組織そしき学がく的てき構造こうぞう

軟骨なんこつは、結合けつごう組織そしきに分類ぶんるいされ、豊富ほうふな細胞さいぼう外がい基質きしつと、その中なかに点在てんざいする軟骨なんこつ細胞さいぼうが特徴とくちょう的てきである。

軟骨なんこつにおける細胞さいぼう外がい基質きしつを、軟骨なんこつ基質きしつという。軟骨なんこつ基質きしつの主成分しゅせいぶんは、コンドロイチン硫酸りゅうさんなどのプロテオグリカンである。コンドロイチン硫酸りゅうさんは大量たいりょうの陰かげ電荷でんかを持もっており、ナトリウムイオンを引ひきつける。この時とき、ナトリウムの水みず和水わすいが一緒いっしょに寄よってくる。このような仕組しくみで、軟骨なんこつは豊富ほうふな水分すいぶんを含ふくんでいる。

軟骨なんこつ細胞さいぼうは、軟骨なんこつ基質きしつの中なかの軟骨なんこつ小しょう腔と呼よばれる穴あなの中なかに入はいっている。軟骨なんこつ細胞さいぼうは、線維せんい芽め細胞さいぼう系けいの軟骨なんこつ芽め細胞さいぼうから分化ぶんかする。分裂ぶんれつ直後ちょくごの軟骨なんこつ細胞さいぼうは密集みっしゅうしているが、周囲しゅういに軟骨なんこつ基質きしつを分泌ぶんぴつするにつれて隙間すきまが開ひらいていく。そのため、完成かんせいした軟骨なんこつでは、一ひとつの軟骨なんこつ小しょう腔には多おおくとも 2、3個この細胞さいぼうしか入はいっていない。

軟骨なんこつ全体ぜんたいは、軟骨なんこつ膜まくによって包つつまれるのが普通ふつうである（例外れいがい：関節かんせつ軟骨なんこつ）。血管けっかんは軟骨なんこつの中なかには侵入しんにゅうせず、軟骨なんこつ細胞さいぼうは、組織そしき液えきを介かいした拡散かくさんによって酸素さんそや養分ようぶんを受うけ取とり不要ふよう物ぶつを排出はいしゅつする。

種類しゅるい

軟骨なんこつは、軟骨なんこつ基質きしつの成分せいぶんによっていくつかの種類しゅるいに分わけられ、それぞれ力学りきがく的てき特性とくせいが異ことなる。

硝子がらす軟骨なんこつ

最もっとも一般いっぱん的てきに見みられる軟骨なんこつで、関節かんせつ面めんを覆おおう関節かんせつ軟骨なんこつ、気管きかんを潰つぶれないように囲かこっている気管きかん軟骨なんこつと甲状こうじょう軟骨なんこつ、胸郭きょうかくの可動かどう部分ぶぶんとなる肋あばら軟骨なんこつなどがある。均質きんしつ無む構造こうぞうであり、半はん透明とうめいであり、生涯しょうがい見みられる軟骨なんこつであるため永久えいきゅう軟骨なんこつという。一方いっぽう、哺乳類ほにゅうるいの胎児たいじ期きにおいては、全身ぜんしんの骨格こっかくが硝子がらす軟骨なんこつとして現あらわれ、これが骨ほねに置換ちかんされていく事ことが知しられており、出生しゅっしょう後ごも成長せいちょう期きにおいては、全身ぜんしんの長ちょう骨ほねに骨ほね端はし軟骨なんこつ（成長せいちょう軟骨なんこつ）とよばれる一時いちじ軟骨なんこつの層そうがあり、これが成長せいちょうに合あわせて骨ほねに置換ちかんされ続つづける。このように軟骨なんこつが大おおまかな形かたちをつくり、それが硬骨こうこつに置換ちかんされる様式ようしきを軟骨なんこつ性せい骨ほね化かという。

線維せんい軟骨なんこつ

椎しい間あいだ円えん板ばん、恥骨ちこつ結合けつごう、関節かんせつ半月はんつきなどに見みられる。また、通常つうじょう関節かんせつでも、関節かんせつ包つつみと関節かんせつ軟骨なんこつの移行いこう部ぶに見みられる。いずれも永久えいきゅう軟骨なんこつである。軟骨なんこつ基質きしつにコラーゲンを多おおく含ふくむのが特徴とくちょうで、このため、軟骨なんこつとしては固かたく、強つよい圧力あつりょくに耐たえることができる。なお、顎あご関節かんせつに見みられる関節かんせつ円えん板ばんは線維せんい軟骨なんこつ組織そしきとされることがあるが、正まさしくは規則きそく性せい密みつ性せい結合けつごう組織そしきであって、靱帯じんたいや腱けんなどの構造こうぞうに近ちかく、その中なかに軟骨なんこつ成分せいぶんは見みられない。

弾性だんせい軟骨なんこつ

耳みみ介かい軟骨なんこつや、嚥下えんか時じに食物しょくもつが気管きかんに入はいらないように蓋ぶたをする喉頭蓋こうとうがいの軟骨なんこつなどが該当がいとうする。いずれも永久えいきゅう軟骨なんこつである。軟骨なんこつ基質きしつは、弾性だんせい線維せんいを多おおく含ふくむため、硝子がらす軟骨なんこつや線維せんい軟骨なんこつと比くらべ、柔軟じゅうなんでかつ弾力だんりょくがある。

食材しょくざいとしての軟骨なんこつ

ニワトリの胸むね（やげん）やひざの軟骨なんこつ、ブタの耳みみ（ミミガー）やあばらの軟骨なんこつ（パイカ）、ウシの喉のどの軟骨なんこつ（ウルテ、ウタゴエ）、イカの軟骨なんこつなどは食用しょくように供きょうされる。いずれもコリコリとした食しょく感かんが特徴とくちょうで、酒さけのつまみに好このまれる。

• 北海道ほっかいどう、青森あおもり県けんおよび岩手いわて県けんの沿岸えんがん部ぶ、新潟にいがた県けんの郷土きょうど料理りょうり「氷こおり頭あたまなます」 - サケの鼻先はなさきの軟骨なんこつ（氷こおり頭あたま）を使用しようしたなます。
• エイ（カスベ）の煮付につけ、エイヒレ。
• クジラの上うえあご（鼻筋はなすじ）にある軟骨なんこつ（蕪かぶら骨こつ）を粕漬かすづけにしたものは、長崎ながさき県けんや佐賀さが県けんで『松浦まつうら漬づけ』『玄海げんかい漬づけ』などの商品しょうひんとして販売はんばいされている。
• 梅うめ水晶すいしょう - サメの軟骨なんこつを用もちいた和あえ物もの。

参考さんこう文献ぶんけん

• 田畑たばた純じゅん; 杉浦すぎうら真琴まこと; 牛うし村むら英里えり「顎あごの進化しんかを考かんがえる－ヒトとサメの比較ひかくから－」『赤あかちゃん歯科しかネットワーク』第だい3巻かん、赤あかちゃん歯科しかネットワーク事務じむ局きょく、57-69頁ぺーじ、図ず巻頭かんとう1頁ぺーじ、2017年ねん。 NAID 40021053709。国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん書誌しょしID:027831572。 

関連かんれん項目こうもく

• 変形へんけい性せい膝ひざ関節かんせつ症しょう

外部がいぶリンク

• “骨格こっかく形成けいせい、軟骨なんこつ代謝たいしゃに必須ひっすの新規しんき遺伝子いでんしSLC35D1を発見はっけん”. 独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん 理化学研究所りかがくけんきゅうしょ (2007年ねん10月がつ22日にち). 2008年ねん2月がつ13日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2008年ねん1月がつ24日にち閲覧えつらん。