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鳥類ちょうるいからだ構造こうぞう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
鳥類ちょうるい典型てんけいてき外見がいけんてき特徴とくちょう。1:くちばし、2:頭頂とうちょう、3:虹彩こうさい、4:瞳孔どうこう、5:上背うわぜい (Mantle)、6:小雨こさめくつがえ (Lesser coverts)、7:かた (Scapular)、8:あめくつがえ (Coverts)、9:さんれつ風切かざきり (Tertials)、10:、11:はつれつ風切かざきり、12:下腹かふく、13:もも、14:かかと、15:跗蹠 (Tarsus)、16:、17:ずね、18:はら、19:わき、20:むね、21:のど、22:にくたれ (Wattle)、23:せん

鳥類ちょうるいからだ構造こうぞう(ちょうるいのからだのこうぞう、えい: Bird anatomy)では、鳥類ちょうるい解剖かいぼうがくてき生理学せいりがくてき構造こうぞうえい: physiological structure)についてべる。鳥類ちょうるいからだ構造こうぞうおおくのてん特有とくゆう適応てきおうしめし、そのほとんどは飛翔ひしょうかかわっている。鳥類ちょうるいかる骨格こっかくと、かるいが力強ちからづよ筋肉きんにく非常ひじょうたか代謝たいしゃ効率こうりつ酸素さんそ供給きょうきゅう能力のうりょく循環じゅんかんけい呼吸こきゅうけいち、それらが飛翔ひしょう可能かのうにしている。くちばし発達はったつによって、特殊とくしゅ適応てきおう消化しょうかけい進化しんかした。これらの解剖かいぼうがくてき特殊とくしゅが、鳥類ちょうるい脊椎動物せきついどうぶつのなかで独立どくりつしたつなとして分類ぶんるいする根拠こんきょとなっている。

骨格こっかくけい

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ハトの骨格こっかくしき
1. 頭骨とうこつ
2. 頸椎
3. またこつ
4. 烏口からすぐちこつ
5. 肋骨あばらぼねかぎじょう突起とっき (uncinate processes of ribs)
6. 竜骨りゅうこつ突起とっき
7. 膝蓋骨しつがいこつ
8. 跗蹠こつ (あしちゅうあしこつTarsometatarsus)
9. (digits)
10. 脛骨けいこつ
11. 腓骨ひこつ
12. 大腿だいたいこつ
13. 恥骨ちこつ
14. 坐骨ざこつ
15. ちょうこつ
16. 尾骨びこつ (caudal vertebrae)
17. 尾端びたんこつ (pygostyle)
18. ふくあい仙骨せんこつ (synsacrum)
19. かたかぶとこつ
20. 腰椎ようつい (lumbar vertebrae)
21. 上腕じょうわんこつ
22. しゃくこつ
23. 橈骨
24. 腕骨わんこつ (Carpus)
25. 中手なかてこつ
26. ゆび (digits)
27. しょうつばさ (alula)

鳥類ちょうるいほねおよび骨格こっかく飛翔ひしょうたいして高度こうど適応てきおうしている。さいまるさい、また飛翔ひしょうちゅう骨格こっかくにかかるおおきな応力おうりょくえる強度きょうどち、かつ非常ひじょう軽量けいりょうであり、ほねをすべてあわせてもぜん体重たいじゅうの5%程度ていどである。ひとつの特徴とくちょうとして、尾端びたんこつなどにおいて複数ふくすうほね融合ゆうごうほねしてひとつの組織そしきになっていることがあり、それにより脊椎動物せきついどうぶつくらべて鳥類ちょうるいほね総数そうすうすくない。さらにもなく、厳密げんみつにいうとあごもない。それらのわりに、より軽量けいりょうくちばしそなえる。おおくのたねでは孵化ふかしたばかりの雛鳥ひなどりのくちばしに、たまご (egg tooth) とばれる卵殻らんかくやぶるためのちいさな突起とっきられるが、これはほね組織そしきではない。

鳥類ちょうるいほねでは、中空なかぞらになっているところに多数たすう支柱しちゅう交差こうさしていて強度きょうど保持ほじする構造こうぞうけた構造こうぞう)がおおられる。そういった構造こうぞうほねすうしゅによってことなるが、大型おおがた滑空かっくうするものほどおお傾向けいこうにある。また中空ちゅうくうちか構造こうぞうほね気嚢きのうふくらむスペースを確保かくほしているれいもある[1]ペンギンダチョウなど飛翔ひしょうおこなわない鳥類ちょうるいにはこのような中空なかぞらほねはない。この事実じじつは、ほね中空なかぞら構造こうぞう飛翔ひしょうのための要件ようけんであることの傍証ぼうしょうかんがえられている。

気嚢きのう位置いち

鳥類ちょうるいでは、頸椎かず脊椎動物せきついどうぶつよりもおおく、おおくのたねで13-25ほねからっている。また脊椎動物せきついどうぶつなか鎖骨さこつ胸骨きょうこつ融合ゆうごうして、それぞれまたこつ竜骨りゅうこつ突起とっき胸骨きょうこつばん形成けいせいしているのは鳥類ちょうるいだけである。竜骨りゅうこつ突起とっき飛翔ひしょう必要ひつよう筋肉きんにく支点してんとなる。ペンギンは飛翔ひしょうしないが、およぐための筋肉きんにくがやはり竜骨りゅうこつ突起とっき支点してんとしている。飛翔ひしょうしない鳥類ちょうるいでは、だいむねすじおよびしょうむねすじ飛翔ひしょうするものにくらべて発達はったつしておらず、竜骨りゅうこつ突起とっき存在そんざいもはっきりしているとはいえない。むね骨盤こつばんおよ鳥類ちょうるいではひろく、地表ちひょうある鳥類ちょうるいではながい。一方いっぽう飛翔ひしょうする鳥類ちょうるいではむね骨盤こつばんはばながさはどう程度ていどである[2]

鳥類ちょうるい肋骨あばらぼねにはかぎじょう突起とっきがある。これにより、肋骨あばらぼね形成けいせいする「かご形状けいじょう強度きょうど維持いじされる。ムカシトカゲにも同様どうよう構造こうぞうられる。また鳥類ちょうるいでは脊椎せきつい融合ゆうごうにより、一部いちぶ爬虫類はちゅうるい同様どうよう骨盤こつばん一部いちぶながびている。ほね組織そしき融合ゆうごうかたたいにおいてもられる。頭骨とうこつぜん涙腺るいせん窩 (pre-lachrymal fossa) を爬虫類はちゅうるいのようなそうゆみるいかた頭蓋骨ずがいこつっており、こうあたま顆 (occipital condyle) は1個いっこである[3]

鳥類ちょうるい頭骨とうこつ

頭骨とうこつ前部ぜんぶ頭頂とうちょう)、いただき後頭部こうとうぶ)、前上まえかみ顎骨がっこつおよびはなうえのくちばしの部位ぶい)、しも顎骨がっこつしたのくちばし)の5つのほねからる。おおくのたねで、頭骨とうこつ重量じゅうりょう体重たいじゅうの1%程度ていどである。

脊柱せきちゅう脊椎せきついからり、頸椎(13-16ほねからる)、ふくあい仙骨せんこつSynsacrum脊椎せきつい融合ゆうごうして骨盤こつばんとも癒合ゆごうしたもの)、尾骨びこつの3つの部位ぶいけられる。

胸部きょうぶまたこつ烏口からすぐちこつからり、かたかぶとこつ融合ゆうごうしてかたたい形成けいせいしている。胸部きょうぶ側面そくめん形状けいじょう肋骨あばらぼね胸骨きょうこつばんとともに形成けいせいしている。

かた胸部きょうぶ骨格こっかくかたたい上腕じょうわんこつ形成けいせいしている。上腕じょうわんこつ橈骨しゃくこつとでひじ形成けいせいしている。こつ (carpus) と中手なかてこつは、手首てくび相当そうとうする部位ぶい形成けいせいしており、ゆびほねたがいに融合ゆうごうしている。より効率こうりつてき飛翔ひしょう可能かのうとするため、つばさ形成けいせいするほねとく軽量けいりょうである。

臀部でんぶ形成けいせいする骨盤こつばんちょうこつ骨盤こつばん上部じょうぶ)、坐骨ざこつりょうわき)、恥骨ちこつ前部ぜんぶ)の3つの部位ぶいからるが、これらは融合ゆうごうしてひとつのほね組織そしきになっており、ひろしこつばれている。ひろしこつは、成鳥せいちょうたまごうえすわっても問題もんだいがないような形状けいじょうになっている。3つのほね融合ゆうごう部位ぶいひろしほねうす (acetabulum) とばれ、後肢あとあしさい上部じょうぶ大腿だいたいこつとの関節かんせつ形成けいせいしている。

大腿だいたいこつ脛骨けいこつおよび腓骨ひこつふたつのほねいちしょ関節かんせつ形成けいせいしており、そこがひざ部位ぶいである。跗蹠こつ (Tarsometatarsus) があし上部じょうぶを、ゆび)のほねがつまさき部位ぶい形成けいせいしている。ももずね部位ぶいがもっともおもほねであり、身体しんたい重心じゅうしんひくくする役割やくわりたし、飛翔ひしょうたすけとなっている。

鳥類ちょうるい形状けいじょう分類ぶんるい
あし構造こうぞううろこ
クイナ

鳥類ちょうるいにおけるゆび本数ほんすうき (dactyly) は、さんぜん趾型 (anisodactyl)、たい趾足がた (zygodactyl)、 へんたい趾足がた (heterodactyl)、 ごう趾型 (syndactyl)、みなぜん趾足 (pamprodactyl) などに分類ぶんるいされる[4]

筋肉きんにく

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むねすじ下向したむきにろし、がらす口上こうじょうすじつばさげるしくみ

鳥類ちょうるいおおくのたねでは、つばさ皮膚ひふあしなどにけい175の筋肉きんにくがある。もっとおおきいのはつばさろすむねすじだいむねすじおよびしょうむねすじ総称そうしょう)であり、飛翔ひしょうする鳥類ちょうるいでは体重たいじゅうの15-25%をめ、飛翔ひしょうにおいて主要しゅよう役割やくわりたす。むねすじはらがわ下面かめん)にはがらす口上こうじょうすじ (supracoracoideus muscle) があり、ろされたつばさふたたげる役割やくわりになっている。むねすじがらす口上こうじょうすじ体重たいじゅうの25-35%をめる。

皮下ひか筋肉きんにくは、飛翔ひしょうちゅう羽毛うもうきを制御せいぎょしている。

臀部でんぶにはかずすくないがつよ筋肉きんにくがあり、尾羽おは制御せいぎょしている。飛翔ひしょうちゅうには、尾羽おはひろがりによって空気くうき抵抗ていこう調整ちょうせいしている。

皮膚ひふ

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うろこ

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鳥類ちょうるいうろこは、くちばし、つめ、けづめ(距状突起とっきspur)とおなじでケラチン主成分しゅせいぶんである。趾部のつまさきおよびちゅうあしこつ部位ぶい相当そうとうするからだひょうられるが、たねによっては足首あしくびよりもうえ部位ぶいにもある。カワセミキツツキをのぞくと、うろこ同士どうしかさなりはちいさい。鳥類ちょうるいうろこおよ薄板うすいた(スクート、scute)は、哺乳類ほにゅうるい爬虫類はちゅうるいのものと進化しんかてきあいどうであるとかんがえられている[5]

鳥類ちょうるいとされたたまごなか胎児たいじは、発生はっせい初期しょきでは羽毛うもううろこたない。趾部では角質かくしつそう (corneum) または外皮がいひしつがケラチンで形成けいせいされ、次第しだいあつみをしてうろことなるが、うろこ形状けいじょうにより以下いかの4しゅけられる。

  1. キャンセラ (Cancella) - ほそみぞのある十字形じゅうじがた交差こうさ構造こうぞうのケラチンによる、普通ふつう皮膚ひふよりもあつくてかたいだけの微細びさいうろこ
  2. レティキュラ (Reticula、網状もうじょうしつ) - 微小びしょうだがひとひと独立どくりつした構造こうぞうをとったうろこちゅうあしこつ側面そくめんおよこうめんられ、αあるふぁケラチンからなる[6]
  3. スクテラ (Scutella、しょう鱗片りんぺん) - スクート(次項じこう)よりはちいさなうろこ。ニワトリのちゅうあしこつからだひょうられる。
  4. スクート (Scute、薄板うすいた) - ちゅうあしこつ前側まえがわやつまさきがわられる。スクートは爬虫類はちゅうるい同様どうようβべーたケラチンからなる[6]

たねによってはあし一部いちぶ羽毛うもううろこ混在こんざいしているものがある。その場合ばあい羽毛うもう毛根もうこん表皮ひょうひじょううろこあいだにあるか、またはうろこした真皮しんぴにある。後者こうしゃ場合ばあいうろこから直接ちょくせつ羽毛うもうえているような外観がいかんになり、羽毛うもう根本こんぽんうろこのケラチンがつつむようなかたちになる[5]

目先めさき

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鳥類ちょうるいとくちばしにはさまれた、頭部とうぶ側面そくめん領域りょういきは「目先めさき」 (lore) とばれ、たねによってはその部位ぶい羽毛うもういており、皮膚ひふ露出ろしゅつしている。その皮膚ひふいろいているものがあり、などにられる。

くちばし

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チドリには、くちばしにヘルプスト小体こてい (Herbst corpuscle) とばれる器官きかんつものがあり、水中すいちゅうでの微小びしょう圧力あつりょく変化へんか検知けんちしてどろなかえさることを可能かのうにしている[7]。また現在げんざい生息せいそくしている鳥類ちょうるいはすべて、頭骨とうこつたいして上顎じょうがく部分ぶぶんうごくようになっているが、とくオウムなどで顕著けんちょである[8]

鳥類ちょうるいでは一般いっぱんに、体重たいじゅうくらべてのう重量じゅうりょう比率ひりつおおきい。鳥類ちょうるい複雑ふくざつ行動こうどうは、それを可能かのうにする知能ちのう (Bird intelligence) を保持ほじするだけののうがあるためである。

呼吸こきゅうけい

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チョウゲンボウ呼吸こきゅう模型もけい呼気こき吸気きゅうきはともに、かつつねに、身体しんたいうしがわ (右側みぎがわ) からはいはいり、前部ぜんぶ (左側ひだりがわ) にかっておくられる。1:気嚢きのう (cervical air sac)、2:鎖骨さこつあいだ気嚢きのう (clavicular air sac)、3:ぜんむね気嚢きのう (cranial thoracic air sac)、4:こうむね気嚢きのう (caudal thoracic air sac)、5:はら気嚢きのう (abdominal air sac、5':腰帯こしおびおちいいれしているいこいしつ)、6:はい、7: 気管きかん、A:またこつ、B: 烏口からすぐちこつ、C:かたかぶとこつ、D:しんこつ (Notarium)、E:ふくあい仙骨せんこつ (synsacrum、F:骨盤こつばん、G:大腿だいたいこつ、H:胸骨きょうこつ
鳥類ちょうるい呼吸こきゅうけいしき。aas: はら気嚢きのう、atas: ぜんむね気嚢きのう、cas: 頸気嚢きのう、clas: 鎖骨さこつあいだ気嚢きのう、hd: 鎖骨さこつあいだ気嚢きのう上腕じょうわんこつびている部位ぶい、lu: はい、pns: 鼻腔びこう、ptas: こうむね気嚢きのう、pts: しつ、t: 気管きかん

飛翔ひしょうおこなうためには非常ひじょう効率こうりつのよい代謝たいしゃ必要ひつようであり、そのためには酸素さんそみも効率こうりつおこな必要ひつようがある。鳥類ちょうるい呼吸こきゅうけい気嚢きのうによってそれを可能かのうとしている。(哺乳類ほにゅうるいにもコウモリというしん飛行ひこう生物せいぶつがいるので、飛行ひこうのために気嚢きのう必須ひっすなわけではない。)

はいちがって気嚢きのうでは酸素さんそ二酸化炭素にさんかたんそのガス交換こうかんおこなわれないが、空気くうきめる機能きのうち、(ふいご)のような役割やくわりたす。そのためはい自体じたいはポンプの役割やくわり必要ひつようがなく、おおきさを一定いっていたもったままでよくなり、そのなか空気くうきながれを安定あんていさせることができる[1]

鳥類ちょうるい呼吸こきゅうけいは3つの臓器ぞうきぐんけられる。つまり前部ぜんぶ気嚢きのうぐん鎖骨さこつあいだ気嚢きのう clavicular air sac気嚢きのう cervical air sac および ぜんむね気嚢きのう cranial thoracic air sac)、後部こうぶ気嚢きのうぐんこうむね気嚢きのう caudal thoracic air sac およびはら気嚢きのう abdominal air sac)、はい、の3ぐんである。これらの連携れんけいによって呼吸こきゅうおこなわれる。気嚢きのうおおくのたねで9つあり(たとえばスズメでは鎖骨さこつあいだ気嚢きのうぜんむね気嚢きのう融合ゆうごうしており気嚢きのうは7つであるが)、吸入きゅうにゅう効率こうりつする機能きのうつ。まず気管きかんからはいった空気くうきは、半分はんぶん直接ちょくせつ後部こうぶ気嚢きのうはいり、のこりの半分はんぶんはいとおって前部ぜんぶ気嚢きのうはいる。前部ぜんぶ気嚢きのうはいった空気くうき直接ちょくせつ気管きかんされ、そのままとりくちあるいは鼻孔びこうから外部がいぶされる。同時どうじに、後部こうぶ気嚢きのうはいった空気くうきはいおくられ、そのまま気管きかんとおってそとされる。

鳥類ちょうるい呼吸こきゅう吸気きゅうき Inhalation と呼気こき Exhatation )。前部ぜんぶ後部こうぶ気嚢きのうがポンプの役割やくわりたすことで、はいなか一定いってい方向ほうこう安定あんていして空気くうきながれる様子ようす灰色はいいろ四角よつかど空気くうきながれをめている個所かしょしめす。

哺乳類ほにゅうるい呼吸こきゅうけいでははい自体じたいがガス交換こうかんくわえて気嚢きのう機能きのう空気くうき吸入きゅうにゅう送出そうしゅつというポンプの機能きのう)をねているため、はいなかでガス交換こうかん前後ぜんご空気くうき酸素さんそ濃度のうどおよび二酸化炭素にさんかたんそ濃度のうど高低こうていがある空気くうき)がじることになるが、鳥類ちょうるい呼吸こきゅうけいではそれらがじることがない。そのためはいない空気くうき酸素さんそぶんあつ大気たいきおなじであり、哺乳類ほにゅうるい場合ばあいよりもたかい。そのため哺乳類ほにゅうるいよりも効率こうりつくガス交換こうかんおこなえる。またいきさいにも後部こうぶ気嚢きのうから新鮮しんせん空気くうきはいおくられ、吸気きゅうき呼気こき両方りょうほうにおいて新鮮しんせん空気くうきはいとおることになる。

鳥類ちょうるいはいには、哺乳類ほにゅうるいちがってはいがない。そのわりはいはいかん (parabronchi) とばれる多数たすうほそかん形状けいじょうになっており、それらはりょうはしでまとまってそれぞれ気管支きかんし (dorsobronchi) およびはら気管支きかんし (ventrobronchi) となっている。はいかんかべハニカム構造こうぞうになっており、はいかん直径ちょっけい方向ほうこうてんびるアトリウム (atria) とばれる小房おうさなら構造こうぞうになっている。この小房おうさ毛細血管もうさいけっかんあつまっており、小房おうさはいった空気くうき血液けつえきあいだでガス交換こうかんおこなわれる[9]

鳥類ちょうるいには横隔膜おうかくまくがない。身体中からたじゅうそら腔は一体いったいとして、はい空気くうきとおすためのふいごとして機能きのうする。鳥類ちょうるい呼吸こきゅうでは、吸気きゅうきではなく呼気こきにおいて筋肉きんにく収縮しゅうしゅくおこなわれる。

鳥類ちょうるい気管きかん気管支きかんしちか部位ぶいにはかんばれる発声はっせい器官きかんがある。哺乳類ほにゅうるい喉頭こうとう同様どうように、気管きかん通過つうかする空気くうきながれの振動しんどうにより、おとはっする。たねによっては複雑ふくざつおとしょうじることができ、人語じんごをまねるたねもある。スズメにおいては複数ふくすうおと同時どうじ発生はっせいさせることができるものもある。また気管きかん一部いちぶおおきくふくらむことで外観がいかん装飾そうしょくするものもある(のどぶくろGular skin)。

循環じゅんかんけい

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鳥類ちょうるい心臓しんぞうはヒトなどの哺乳類ほにゅうるい一部いちぶ爬虫類はちゅうるいワニ)と同様どうよう、4しつ区切くぎられた構造こうぞうをしている。これにより効率こうりつ酸素さんそ栄養分えいようぶん身体しんたい各部かくぶおくることができ、それによって飛翔ひしょうふくめた各種かくしゅ活発かっぱつ生命せいめい活動かつどう可能かのうになっている。心拍しんぱくすうは、たとえば小型こがたノドアカハチドリでは1分間ふんかんに1,200かい毎秒まいびょう20かい)である[10]

消化しょうかけい

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鳥類ちょうるい消化しょうかけい
雄鳥おんどりくちなかられる乳頭にゅうとうよう突起とっき。この形状けいじょうによりえさ保持ほじしたまま歩行ほこうすることを可能かのうにしている。

鳥類ちょうるいおおくでは食道しょくどう (crop) とばれる筋肉質きんにくしつの嚢がある。もと嚢はべたものを咀嚼そしゃくし、また一時いちじてきたくわえることで消化しょうかけいおくられる速度そくど調節ちょうせつする機能きのうつが、そのおおきさや形状けいじょうしゅによっておおきくことなっている。ハトでは、嚢で嚢乳 (crop milk) がつくられ、それがもどによりヒナにあたえられる。また嚢にくわえて砂嚢さのう (ventriculus、ぞくgizzard) とばれる器官きかんもある。砂嚢さのうは4つの筋肉きんにくがつながってかん形状けいじょうした器官きかんで、べたものを4つの順次じゅんじおくしてきながら、それを転回てんかいし、咀嚼そしゃくする機能きのうがある。たねによっては、哺乳類ほにゅうるい爬虫類はちゅうるいわりに、すな小石こいしなどをんで砂嚢さのうめることで、咀嚼そしゃく機能きのう強化きょうかするものもある。これは鳥類ちょうるい以外いがい恐竜きょうりゅうにおいても同様どうようで、なまあと化石かせきせきのこされていることがそれをしめしている。

水分すいぶん摂取せっしゅ

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鳥類ちょうるい水分すいぶん摂取せっしゅする過程かていは、4段階だんかいけられる。

ほとんどの鳥類ちょうるい食道しょくどう蠕動ぜんどう運動うんどうができない。そのため、ヒトがおこなうような「み」をおこなうことができない。みずむためには、1: くちなかみずれ、2: 頭部とうぶげ、3: そのみず食道しょくどうかってとすという動作どうさを、4: かえす、ということが必要ひつようになる(この過程かていは sipping シッピングあるいは tipping up ティッピングとばれる)[11]。しかしコンラート・ローレンツの1939ねん報告ほうこくによると、

one recognizes the order by the single behavioral characteristic, namely that in drinking the water is pumped up by peristalsis of the esophagus which occurs without exception within the order. The only other group, however, which shows the same behavior, the Pteroclidae, is placed near the doves just by this doubtlessly very old characteristic.

[12]

とあり、ハトにおいてはみずげることが確認かくにんされている。しかしハトはまったくシッピングをおこなわないというわけではなく、またのいくつかのたねについてもシッピングとげの両方りょうほうおこなうものが観察かんさつされている[11][13]

またタイヨウチョウハチドリには、みぞあるいはとい形状けいじょうをしたしたすことで液体えきたいむことができるものがあり、インコにはめることでみずむものもある[11]

海鳥うみどりには、海水かいすい摂取せっしゅし、余分よぶん塩分えんぶんちかくの鼻腔びこうにあるせんから排泄はいせつできるものがある。砂漠さばく地帯ちたい生息せいそくするものでは、必要ひつよう水分すいぶんをすべて食物しょくもつからるため、液体えきたい水分すいぶん摂取せっしゅおこなわないものもある[14]

生殖せいしょくけい

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幼鳥ようちょう巣立すだ

外見がいけんじょう鳥類ちょうるいのオスには生殖せいしょくがないが、精巣せいそう体内たいないに2あり、たねによっては、繁殖はんしょくになると精子せいし生成せいせいするために、繁殖はんしょくでないときのひゃくばい以上いじょうおおきさになる[15]。2精巣せいそうおおきさが非対称ひたいしょうで、おおくのたねでは左側ひだりがわほうおおきい[16]。メスの卵巣らんそう卵管らんかん繁殖はんしょくには肥大ひだいして、産卵さんらん退すさちぢみして飛翔ひしょう能力のうりょく低下ていかきないようにする[17]左側ひだりがわ卵巣らんそうだけがその機能きのうたすたねおおいが、左側ひだりがわ卵巣らんそう感染かんせんしょうなどで損傷そんしょうけた場合ばあいには右側みぎがわ卵巣らんそう機能きのうする。

ファルス後述こうじゅつ)をたない鳥類ちょうるいでは、交尾こうび先立さきだってそう排出はいしゅつこう隆起りゅうきにある精巣せいそういと球体きゅうたい精子せいし保持ほじされる。交尾こうびちゅうはメスは尾羽おはよこにずらし、オスはメスのうえからる(あるいはシロツノミツスイのようにまえからるものもある)ことにより双方そうほうそう排泄はいせつこう接触せっしょくし、精子せいしがメスの体内たいないおくまれ、輸卵管ゆらんかん到達とうたつできるようになる。交尾こうび過程かてい非常ひじょう素早すばやおこなわれ、たねによっては0.5びょう以下いかおこなわれるものもある。

メスの体内たいないはいった精子せいしせん上皮じょうひ (glandular epithelium) につながっている細管さいかん (tubule) に1週間しゅうかんから、たねによっては1年間ねんかん保持ほじされる。その卵巣らんそうから1つずつ卵子らんしおくされ、そのつど受精じゅせいし、体外たいがいとされる。とされたのち卵殻らんかくない胎児たいじ発生はっせいつづく。

ワライカモメわかとり

ダチョウシチメンチョウおよびおおくの水鳥みずとりなどには、ファルスばれる陰茎いんけい機能きのう器官きかんがある。交尾こうびしていないときにはファルスは肛門こうもんおちい (proctodeum) の部位ぶい、つまりそう排泄はいせつ腔内の開口かいこうのすぐ内側うちがわ格納かくのうされている。

だきたまご (brooding) ののちヒナが孵化ふかすると、親鳥おやどり給餌きゅうじおよび保護ほごそだてひな)のための様々さまざま行動こうどうをとる。なり (precocial) のたねでは孵化ふか直後ちょくごから自活じかつはじめるが、晩成ばんせいせい (altricial) のたねでは孵化ふかしようとするヒナは自分じぶん卵殻らんかくやぶれず、孵化ふかしてもえず羽毛うもうもないため、親鳥おやどり保護ほごようする。シギチドリなど地表ちひょう営巣えいそうするたねのヒナは、孵化ふか直後ちょくごから走行そうこうできるものおおく、その性質せいしつはなれせい (nidifugous) とぶ。一方いっぽうふかあな営巣えいそうするものは親鳥おやどり給餌きゅうじおよび保護ほごがなければ成長せいちょうできないものがおおい。それらなかにいるヒナ(わかとり)が、まだなかにいるものの飛翔ひしょう十分じゅうぶん羽毛うもう筋力きんりょくそなえた状態じょうたいをフレッジング(fledging または fledgling、「巣立すだち」とやくされる)とぶ。

ハトやガン、タンチョウなどでは、つがいの相手あいて生涯しょうがいえず、そのあいだまった営巣えいそう産卵さんらんいくひなおこなう。

神経しんけいけい

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鳥類ちょうるい眼球がんきゅうしき。sclerotic ring: つよまく、iris: 虹彩こうさい、lens: 水晶すいしょうたい、cornea: 角膜かくまく、muscle: そとすじ、retina: 網膜もうまく、choroid: 脈絡みゃくらくまく、sclera: つよまく、fovea: 中心ちゅうしん、pecten: くしじょう突起とっき、optic nerve: 視神経ししんけい

鳥類ちょうるい非常ひじょう鋭敏えいびん視覚しかくっている。猛禽もうきんるい網膜もうまくうえひかり受容じゅようたい密度みつどたかく(ヒトの200,000/mm²にたいノスリでは1,000,000/mm2視神経ししんけい本数ほんすうおおいため、視力しりょくはヒトのやく8ばいであるとかんがえられている[18]。また眼球がんきゅう付随ふずいする筋肉きんにくをヒトのそとすじくらべると、すべて2つずつあり、焦点しょうてん調整ちょうせい非常ひじょうはやいが、眼球がんきゅうきをうごかすことはほとんどできない[19]。さらに眼球がんきゅうにある中心ちゅうしん視野しや中心ちゅうしんでの解像度かいぞうど向上こうじょうしている。ハチドリアホウドリなどおおくのたねでは中心ちゅうしん窩が1つの眼球がんきゅうに2かしょずつある。またへんこうえるたねおおい。頭骨とうこつにおける眼窩がんか非常ひじょうおおきく、爬虫類はちゅうるい同様どうようつよまくsclerotic ring、鞏膜とも)が眼球がんきゅうかこんでいる。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b Ritchison, Gary. “Ornithology (Bio 554/754):Bird Respiratory System”. 2007ねん6がつ27にち閲覧えつらん
  2. ^ Ayhan Duezler, Ozcan Ozgel, Nejdet Dursun (2006) Morphometric Analysis of the Sternum in Avian Species. Turk. J. Vet. Anim. Sci. 30:311-314
  3. ^ Wing, Leonard W. (1956) Natural History of Birds. The Ronald Press Company. [1]
  4. ^ Proctor, N.S. and P.J. Lynch (1993). Manual of ornithology: avian structure and function. Yale Univ. Press, New Haven 
  5. ^ a b Lucas, Alfred M. (1972). Avian Anatomy - integument. East Lansing, Michigan, USA: USDA Avian Anatomy Project, Michigan State University. pp. 67, 344, 394–601 
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参考さんこう文献ぶんけん

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  • まつ岡廣おかひろしげる安部あべきみ へんとりほねさがせ』NTS〈BONE DESIGN SERIES〉、2009ねんISBN 978-4-86043-276-8 
  • Peter Grant & Killian Mullarny The New Approach to Identification, in Birding World (en), Vols. 1&2 ISSN 0969-6024

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