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アンフィコティルス

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アンフィコティルス
アンフィコティルス・マイルシ(群馬ぐんま県立けんりつ自然しぜん博物館はくぶつかん所蔵しょぞう
地質ちしつ時代じだい
後期こうきジュラ紀じゅらきキンメリッジアン
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
うえつな : 四肢しし動物どうぶつじょうつな Tetrapoda
つな : 爬虫つな Reptilia
つな : そうゆみつな Diapsida
下綱しもつな : しゅりゅうがた下綱しもつな Archosauromorpha
階級かいきゅうなし : クルロタルシるい Crurotarsi
上目うわめ : ワニがた上目うわめ Crocodylomorpha
階級かいきゅうなし : しんわにるい Neosuchia
: ゴニオフォリス Goniopholididae
ぞく : アンフィコティルスぞく Amphicotylus
学名がくめい
Amphicotylus Cope1878
たね[2]
  • A. felix (Marsh, 1877)
  • A. gilmorei (Holland, 1905)
  • A. lucasii Cope, 1878
  • A. stovalli (Mook, 1964)
  • A. milesi (Yoshida et al., 2021)[1]

アンフィコティルス学名がくめいAmphicotylus)は、後期こうきジュラ紀じゅらきアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく生息せいそくしていたゴニオフォリスぞくするワニがた上目うわめぞくしたもとべん動作どうさ寄与きよするしたこつ形態けいたいうち鼻孔びこう位置いち現生げんなまワニ類似るいじしており、すで水中すいちゅうでの呼吸こきゅう能力のうりょく獲得かくとくしていたと推測すいそくされている[3][4][5][6]おも沼沢しょうたく生息せいそくして魚類ぎょるい獲物えものにしていたとられるが、生態せいたいけい共有きょうゆうしていた恐竜きょうりゅう死骸しがい摂食せっしょくした可能かのうせいもある[7]

発見はっけん命名めいめい

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アンフィコティルスは1878ねんどうしい腰椎ようつい肋骨あばらぼねかわこついたもとづいてエドワード・ドリンカー・コープにより記載きさいされた。カマラサウルス同一どういつ産地さんちから発見はっけんされたこれらの化石かせきもとづき、コープはこの動物どうぶつ現生げんなまアメリカアリゲーターよりも小型こがたであったとかんがえ、だいいち発見はっけんしゃであった管理かんりしゃルーカスにちなんでほんたねAmphicotylus lucasii命名めいめいした[8]。コープは同一どういつ産地さんちおよびそうじゅんから頭骨とうこつ要素ようそ収集しゅうしゅうしていたが、かれはこれをアンフィコティルスぞくてなかった。頭骨とうこつ要素ようそは1942ねんにチャールズ・C・ムックにより調査ちょうさされ、産地さんち同一どういつせいだけでなく、おおきさ、一般いっぱんてき形態けいたい特徴とくちょう、その時代じだいほかのワニるい化石かせき記録きろく欠如けつじょもとづき、標本ひょうほんをタイプしゅとして同定どうていした[9]。またこのとき、ムックは頭骨とうこつ標本ひょうほん暫定ざんていてきネオタイプ指定していした[9]

1930年代ねんだいにWorks Progress AdministrationはJ・W・ストヴァルが最初さいしょ調査ちょうさおこなったオクラホマしゅうでさらなる標本ひょうほん発見はっけんし、Amphicotylus gilmorei との類似るいじせい指摘してきした。この標本ひょうほんはムックにより1964ねんゴニオフォリスたね Goniopholis stovalli として正式せいしき記載きさいされた。2012ねんにエリック・ランドール・アレンはモリソンそう発見はっけんされたゴニオフォリス爬虫類はちゅうるい口蓋こうがいこつられる解剖かいぼうがくてき特徴とくちょうがヨーロッパのグループとおおきくことなること、具体ぐたいてきにはイギリスおよびヨーロッパ本土ほんど分類ぶんるいぐんことなり鼻孔びこうにより口蓋こうがいこつ完全かんぜんかれていることを主張しゅちょうした。のちにアレンは、"G. felix" といったこれまでゴニオフォリスぞく分類ぶんるいされていたモリソンそうのゴニオフォリス爬虫類はちゅうるいたいしてアンフィコティルスぞく一貫いっかんせいのある分類ぶんるいぐんであり、またゴニオフォリスぞくがヨーロッパのたね包括ほうかつする分類ぶんるいぐんである理由りゆう主張しゅちょうした。さらに、唯一ゆいいつられている A. gilmorei標本ひょうほんA. lucasii標本ひょうほん重大じゅうだい差異さいがないこと、唯一ゆいいつ特筆とくひつすべき形態けいたいがくてき特徴とくちょう破損はそん起因きいんするものであることが指摘してきされ、A. gilmoreiA. lucasii のジュニアシノニムとなった[10]

1933ねんワイオミングしゅうでクリフォード・マイルスらがおこなった発掘はっくつ遠征えんせいでは、2021ねん時点じてん最大さいだいかつもっと完全かんぜんなゴニオフォリス骨格こっかくがモリソンそう発見はっけんされた。当該とうがい骨格こっかくはカマラサウルスなど脊椎動物せきついどうぶつ化石かせきとも発見はっけんされ、日本にっぽん群馬ぐんま県立けんりつ自然しぜん博物館はくぶつかん発掘はっくつおこない、マイルスの協力きょうりょく同館どうかんでの収蔵しゅうぞう展示てんじ可能かのうとなった[1][6]。1996ねん所蔵しょぞうされたのち、2017ねんから学術がくじゅつ研究けんきゅう開始かいしされ[11]、マイルスにちなんで2021ねんAmphicotylus milesi命名めいめいされた[1][6]

記載きさい

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アンフィコティルスはおおむ三角形さんかっけいで吻部がいたじょう頭骨とうこつゆうしており、これは現在げんざいのワニの頭骨とうこつ形状けいじょう類似るいじする。ヨーロッパに生息せいそくしたほかのゴニオフォリスとの相違そういてん特筆とくひつすべきてん口蓋こうがいこつ形状けいじょうである。アンフィコティルスぞく口蓋こうがいこつこう鼻孔びこうにより完全かんぜんたがいにへだてられている一方いっぽう、ゴニオフォリスの口蓋こうがいこつこう鼻孔びこう前方ぜんぽうひろ接触せっしょくしている。この特徴とくちょうエウトレタウラノスクス共通きょうつうする[10]

Amphicotylus milesi最大さいだいたねであり、頭骨とうこつちょうは43センチメートルにたっする[1]全長ぜんちょうやく3メートルと推定すいていされる[4]発見はっけんされた標本ひょうほんみぎ脛骨けいこつ腓骨ひこつれており、ほねせい腫瘍しゅようわずらっていた、すなわち病変びょうへん証拠しょうこられている[7]

系統けいとう

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複数ふくすう系統けいとう解析かいせきにより、アンフィコティルスはゴニオフォリス位置付いちづけられること、そして典型てんけいてきには大半たいはんのヨーロッパのぞくしゅふく系統けいとうぐんからはずれた位置いちにあることが判明はんめいしている[1][12][13]。ゴニオフォリス後期こうきはく亜紀あきぞくである Denazinosaurus は2015ねんにはアンフィコティルスぞく姉妹しまいぐんとされていたが[13]、2021ねんにはヨーロッパの系統けいとうぐん一部いちぶとされた[1]。また、2021ねんには Sunosuchus thailandicusスノスクスとして解析かいせきふくめられている[1]。これは S. thailandicusチャラワン英語えいごばんぞくさい分類ぶんるいしたMartin et al. 2013にしたがわないものである[14]

以下いか系統けいとうじゅは Yoshida et al. (2021) にもとづく。

ゴニオフォリス

Calsoyasuchus

Eutretauranosuchus

Sunosuchus junggarensis

Sunosuchus miaoi

Sunosuchus thailandicus

Siamosuchus phuphokensis

Siamosuchus

Amphicotylus lucasii

Amphicotylus stovalli

Amphicotylus milesi

Nannosuchus

Goniopholis baryglyphaeus

Goniopholis simus

Goniopholis kiplingi

Hulke goniopholidid

Dolloa goniopholidid

Anteophthalmosuchus hooleyi

Denazinosuchus

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g Yoshida, J.; Hori, A.; Kobayashi, Y.; Ryan, M.J.; Takakuwa, Y.; Hasegawa, Y. (8 December 2021). “A new goniopholidid from the Upper Jurassic Morrison Formation, USA: novel insight into aquatic adaptation toward modern crocodylians”. The Royal Society 8 (12). doi:10.1098/rsos.210320. 
  2. ^ Pritchard, A. C.; Turner, A. H.; Allen, E. R. & Norell, M. A. (2013). “Osteology of a North American Goniopholidid (Eutretauranosuchus delfsi) and Palate Evolution in Neosuchia”. American Museum Novitates (3783): 1–56. doi:10.1206/3783.2. hdl:2246/6449. https://zenodo.org/record/5364787. 
  3. ^ ワニ祖先そせん新種しんしゅ判明はんめい 水中すいちゅう適応てきおう解明かいめい期待きたい福島ふくしま県立けんりつ博物館はくぶつかんなど」『時事じじドットコムニュース』2021ねん12月8にちオリジナルの2021ねん12月8にち時点じてんにおけるアーカイブ。2021ねん12月8にち閲覧えつらん
  4. ^ a b 三浦みうらけんわれ「おまけ」の化石かせき新種しんしゅワニだった 展示てんじから四半世紀しはんせいきたって発見はっけん 群馬ぐんま」『毎日新聞まいにちしんぶん』2021ねん12月8にちオリジナルの2021ねん12月8にち時点じてんにおけるアーカイブ。2021ねん12月8にち閲覧えつらん
  5. ^ ワニ祖先そせんちか化石かせきから新種しんしゅ発見はっけん 水中すいちゅう活動かつどうできる仕組しく”. NHK NEWS WEB. NHK (2021ねん12月8にち). 2021ねん12月8にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2021ねん12月8にち閲覧えつらん
  6. ^ a b c 恐竜きょうりゅう時代じだい地層ちそうからみつかったワニの祖先そせんがた化石かせき新種しんしゅ「アンフィコティルス・マイルシ」と命名めいめい~ワニるいにおける水生すいせい適応てきおうへの進化しんかのはじまりを解明かいめい』(プレスリリース)福島ふくしま県立けんりつ博物館はくぶつかん北海道大学ほっかいどうだいがくカールトン大学だいがく群馬ぐんま県立けんりつ自然しぜん博物館はくぶつかん、2021ねん12月8にちhttps://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/211208_pr2.pdf2021ねん12月8にち閲覧えつらん 
  7. ^ a b 世界せかい巨大きょだい恐竜きょうりゅうはく2006 生命せいめい環境かんきょう進化しんかのふしぎ』日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃNHKNHKプロモーション日経にっけいナショナルジオグラフィックしゃ、2006ねん、65ぺーじ 
  8. ^ E. D. Cope. 1878. Descriptions of new extinct Vertebrata from the Upper Tertiary and Dakota Formations. 'Bulletin of the United States Geological and Geographical Survey of the Territories, 4(2):379-396
  9. ^ a b Mook, C.C. (2 April 1942). “Skull Characters of Amphicotylus lucasii Cope”. American Museum Novitates (1165). 
  10. ^ a b Allen, E.R. (2012). “Analysis of North American goniopholidid crocodyliforms in a phylogenetic context”. M.C. thesis, University of Iowa. 
  11. ^ 水中すいちゅう適応てきおうでは最古さいこ...ワニ祖先そせん新種しんしゅ 福島ふくしま県立けんりつ博物館はくぶつかんのグループ」『福島民友新聞ふくしまみんゆうしんぶん』2021ねん12月9にち2021ねん12月9にち閲覧えつらん
  12. ^ Marco Brandalise de Andrade; Richard Edmonds; Michael J. Benton & Remmert Schouten (2011). “A new Berriasian species of Goniopholis (Mesoeucrocodylia, Neosuchia) from England, and a review of the genus”. Zoological Journal of the Linnean Society 163 (s1): S66–S108. doi:10.1111/j.1096-3642.2011.00709.x. 
  13. ^ a b Puértolas-Pascual, E.; Canudo, J.I. & Sender, L.M. (2015). “New material from a huge specimen of Anteophthalmosuchus cf. escuchae (Goniopholididae) from the Albian of Andorra (Teruel, Spain): Phylogenetic implications”. Journal of Iberian Geology 41 (1): 41–56. doi:10.5209/rev_JIGE.2015.v41.n1.48654. 
  14. ^ Martin, J. E.; Lauprasert, K.; Buffetaut, E.; Liard, R.; Suteethorn, V. (2013). "A large pholidosaurid in the Phu Kradung Formation of north-eastern Thailand". In Angielczyk, Kenneth. Palaeontology: n/a. doi:10.1111/pala.12086. edit