グリーンサスティナブルケミストリー

グリーンサスティナブルケミストリー（英語えいご：green sustainable chemistry）とは生態せいたい系けいに与あたえる影響えいきょうを考慮こうりょし、持続じぞく成長せいちょう可能かのうな化学かがく工業こうぎょうのあり方かたを提言ていげんする環境かんきょう運動うんどうである。日本にっぽんにおいては化学かがく製品せいひんに対たいする環境かんきょう政策せいさくはグリーンケミストリーとサスティナブルケミストリーとを同時どうじに推進すいしんすることを目的もくてきとしているので、グリーンサスティナブルケミストリーという用語ようごが使用しようされる。

グリーンケミストリーの用語ようごはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの環境省かんきょうしょう（EPA）が化学かがく製品せいひんの生産せいさんから廃棄はいきまでの全ぜん製品せいひんライフサイクルにおいて生態せいたい系けいに与あたえる影響えいきょうを最小限さいしょうげんにし、且かつ経済けいざい的てき効率こうりつ性せいを向上こうじょうさせようとする次世代じせだいの化学かがく工業こうぎょうの改革かいかく運動うんどうに対たいしてこの語かたりを用もちい始はじめたことを起源きげんとする。

一方いっぽう、サスティナブルケミストリーはヨーロッパを中心ちゅうしんとしたOECDが提唱ていしょうした環境かんきょう政策せいさくで、化学かがく製品せいひんが生態せいたい系けいに与あたえる影響えいきょうの他ほかにもリサイクルによる省しょう資源しげん化かを通つうじて持続じぞく成長せいちょう可能かのうな産業さんぎょうのあり方かたを提案ていあんしたものである。したがってアメリカの『グリーンケミストリー』にはリサイクルの概念がいねんがない為ため、両者りょうしゃはこの点てんで大おおきく異ことなる。

グリーンケミストリーにおいてもサスティナブルケミストリーにおいても、化学かがく工業こうぎょうで使用しようされる化学かがく物質ぶっしつを製造せいぞうから廃棄はいき・再生さいせいまで網羅もうら的てきに量的りょうてき監視かんし下かに置おきそれらのコントロールするための法ほう規制きせいとそれを達成たっせいするための環境かんきょう負荷ふかが小ちいさく、従来じゅうらいよりも高こう効率こうりつな化学かがくプロセスの開発かいはつが必要ひつようとなってくる。前者ぜんしゃは日本にっぽんにおいては「特定とくてい化学かがく物質ぶっしつの環境かんきょうへの排出はいしゅつ量りょうの把握はあく等とう及および管理かんりの改善かいぜんの促進そくしんに関かんする法律ほうりつ」（化か管かん法ほう）を中心ちゅうしんに法ほう整備せいびが進すすめられている。後者こうしゃはゼオライトZSM-5を触媒しょくばいにしたεいぷしろん-カプロラクタムの新規しんき合成ごうせいプロセスが実用じつよう化かされ、光ひかり触媒しょくばいを用もちいて水みずから水素すいそ発生はっせいさせる太陽光たいようこうエネルギー-化学かがくエネルギーの直接ちょくせつ変換へんかんプロセスなどの開発かいはつが進すすめられている。

E-ファクター

E-ファクターとはグリーンサスティナブルケミストリーを評価ひょうかする指標しひょうの一ひとつで、省しょう資源しげん性せいを示しめす指標しひょうである。E-ファクターは副ふく生成せいせい物量ぶつりょう（すなわち産業さんぎょう廃棄はいき物量ぶつりょうと等ひとしい）を目的もくてき生成せいせい物量ぶつりょうで除じょした値ねである。一般いっぱん的てきに石油せきゆ化学かがく製品せいひんでは約やく0.1、一般いっぱん化成かせい品ひんで1～5以下いか、ファインケミカルで5～50以下いか、医薬いやく・農薬のうやくで25～>100の値ねを取とるといわれている。い換いかえると、石油せきゆ化学かがく製品せいひんでは無駄むだになる資源しげんは製品せいひんの1割わり程度ていどであるが、医薬品いやくひんなどでは製品せいひんの25倍ばいから100倍ばいの量りょうの化学かがく物質ぶっしつが廃棄はいきされることになる。石油せきゆ化学かがくと医薬いやくとでは目的もくてき製品せいひんの総そう生産せいさん量りょうが10⁷倍ばいも異ことなるので、異ことなる業態ぎょうたいの間あいだでE-ファクターを比較ひかくする場合ばあいは、生産せいさん量りょうも含ふくめて考かんがえる必要ひつようがある。

グリーンケミストリー12条じょう

環境かんきょうに配慮はいりょするなどの観点かんてんから提唱ていしょうされている地球ちきゅう環境かんきょう改善かいぜんのための対策たいさく。グリーンケミストリー12原則げんそく、グリーンケミストリー12箇条かじょうなどとも言いう。 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのポール・アナスタス大統領だいとうりょう科学かがく技術ぎじゅつ政策せいさく担当たんとう者しゃらによって製作せいさくされ、現在げんざい日本にっぽんにおいても参考さんこうとして挙あげられ、大学だいがくの授業じゅぎょうなどでも取とり上あげられている。 以下いかはその12条じょう。

1. 廃棄はいき物ぶつは「出だしてから処理しょりではなく」、出ださない
2. 原料げんりょうをなるべく無駄むだにしない形かたちの合成ごうせいをする
3. 人体じんたいと環境かんきょうに害がいの少すくない反応はんのう物ぶつ、生成せいせい物ぶつにする
4. 機能きのうが同おなじなら、毒性どくせいのなるべく小ちいさい物質ぶっしつをつくる
5. 補助ほじょ物質ぶっしつはなるべく減へらし、使つかうにしても無害むがいなものを
6. 環境かんきょうと経費けいひへの負担ふたんを考かんがえ、省しょうエネを心こころがける
7. 原料げんりょうは枯渇こかつ性せい資源しげんではなく再生さいせい可能かのうな資源しげんから得える
8. 途中とちゅうの修飾しゅうしょく反応はんのうはできるだけ避さける
9. できるかぎり触媒しょくばい反応はんのうを目指めざす
10. 使用しよう後ごに環境かんきょう中ちゅうで分解ぶんかいするような製品せいひんを目指めざす
11. プロセス計測けいそくを導入どうにゅうする
12. 化学かがく事故じこにつながりにくい物質ぶっしつを使つかう

関連かんれん文献ぶんけん

• 御ご園生えんせい誠まこと「グリーンケミストリー : その考かんがえ方かたと進すすめ方かた」『有機ゆうき合成ごうせい化学かがく協会きょうかい誌し』第だい61巻かん第だい5号ごう、有機ゆうき合成ごうせい化学かがく協会きょうかい、2003年ねん、406-412頁ぺーじ、doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.61.406。 

関連かんれん項目こうもく

• 特定とくてい化学かがく物質ぶっしつの環境かんきょうへの排出はいしゅつ量りょうの把握はあく等とう及および管理かんりの改善かいぜんの促進そくしんに関かんする法律ほうりつ（PRTR法ほう）
• 環境かんきょう問題もんだい