出典 しゅってん : フリー百科 ひゃっか 事典 じてん 『ウィキペディア(Wikipedia)』
生物 せいぶつ 有機 ゆうき 化学 かがく (せいぶつゆうきかがく、英語 えいご :bioorganic chemistry)は生体 せいたい 物質 ぶっしつ の化学 かがく 変化 へんか を生化学 せいかがく と有機 ゆうき 化学 かがく との二 ふた つの視点 してん で扱 あつか う学問 がくもん である。[ 1] [ 2] [ 3]
従来 じゅうらい の生化学 せいかがく は生体 せいたい 分子 ぶんし を分子 ぶんし 構造 こうぞう で捉 とら えるというよりも、他 た の生体 せいたい 分子 ぶんし との関連 かんれん 性 せい によって捉 とら えていたが、[ 4] 生物 せいぶつ 有機 ゆうき 化学 かがく においては分子 ぶんし そのものの分子 ぶんし 構造 こうぞう を有機 ゆうき 化学 かがく 的 てき に捉 とら えることにより、よりミクロな現象 げんしょう を明 あき らかにするところを主 おも な題目 だいもく とする。
核酸 かくさん 、タンパク質 たんぱくしつ 、脂肪 しぼう いずれにおいても、ある生体 せいたい 物質 ぶっしつ の変換 へんかん を生化学 せいかがく 的 てき アプローチと有機 ゆうき 化学 かがく 的 てき アプローチを比 くら べてみるとその特性 とくせい が全 まった く異 こと なることに気 き づかされる。
例 たと えば、脂肪 しぼう からグリセリン と脂肪酸 しぼうさん (特 とく に脂肪酸 しぼうさん ナトリウム塩 しお が石鹸 せっけん であることに注意 ちゅうい してもらいたい)とに加水 かすい 分解 ぶんかい する反応 はんのう を取 と り上 あ げてみても、石鹸 せっけん 工場 こうじょう 、すなわち有機 ゆうき 化学 かがく プロセスでは、水酸化 すいさんか ナトリウムなど強 つよ アルカリ存在 そんざい 下 か 煮沸 しゃふつ させて反応 はんのう を進行 しんこう させる。一方 いっぽう 、生体 せいたい 内 ない での生化学 せいかがく 的 てき プロセスでは30~40℃の環境 かんきょう 下 か で、しかも脂肪 しぼう 以外 いがい の生体 せいたい 物質 ぶっしつ が混在 こんざい する中 なか で、酵素 こうそ リパーゼは脂肪 しぼう だけを選択 せんたく 的 てき に加水 かすい 分解 ぶんかい する。
有機 ゆうき 化学 かがく プロセスにおける反応 はんのう 論 ろん 的 てき 過程 かてい は大抵 たいてい のものが明確 めいかく になっている。一方 いっぽう で酵素 こうそ の反応 はんのう 論 ろん 的 てき 過程 かてい については、近年 きんねん では計算 けいさん 化学 かがく によるシミュレーション [ 5] や放射光 ほうしゃこう X線 せん 解析 かいせき 、[ 6] タンパク質 たんぱくしつ NMR解析 かいせき [ 7] などの進歩 しんぽ により酵素 こうそ 反応 はんのう の遷移 せんい 状態 じょうたい も含 ふく めて解明 かいめい が進 すす んできたとはいえ、[ 8] [ 9] [ 10] [ 11] それらがいまだに不明 ふめい の酵素 こうそ も数多 かずおお く存在 そんざい する。
上述 じょうじゅつ したような生化学 せいかがく と一般 いっぱん 有機 ゆうき 化学 かがく の鬩 せめ ぎ合 あ いの中 なか で、新 あたら しい有機 ゆうき 化学 かがく の方法 ほうほう 論 ろん を見出 みいだ してゆくのが生物 せいぶつ 有機 ゆうき 化学 かがく の主要 しゅよう なテーマとなる。[ 1] [ 2] 近年 きんねん ではこの学問 がくもん 領域 りょういき のことを、ケミカルバイオロジー と呼 よ ばれることもある。[ 3] [ 12] [ 13]
^ a b Dugas, H., & Penney, C. (2013). Bioorganic chemistry: a chemical approach to enzyme action. Springer Science & Business Media.
^ a b Schmuck, C., & Wennemers, H. (2004). Highlights in bioorganic chemistry. Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.: Weinheim.
^ a b 宍戸 ししど 昌彦 まさひこ , & 大槻 おおつき 高史 たかし . (2008). 生物 せいぶつ 有機 ゆうき 化学 かがく ~ ケミカルバイオロジーへの展開 てんかい ~. 裳 も 華 はな 房 ぼう .
^ Champe, P. C., Harvey, R. A., & Ferrier, D. R. (2005). Biochemistry. Lippincott Williams & Wilkins.
^ Jensen, F. (2017). Introduction to computational chemistry. John wiley & sons.
^ Bertin, E. P. (2012). Principles and practice of X-ray spectrometric analysis. Springer Science & Business Media.
^ Hesse, M., Meier, H., & Zeeh, B. (2008). Spectroscopic methods in organic chemistry. Thieme Medical Pub.
^ 今堀 いまほり 和 かず 友 とも . (1974). 酵素 こうそ 研究 けんきゅう の回顧 かいこ と展望 てんぼう . 化学 かがく と生物 せいぶつ , 12(3), 177-180.
^ 小野 おの 宗 そう 三郎 さぶろう . (1967). 酵素 こうそ 反応 はんのう 速度 そくど 論 ろん I-総論 そうろん . 化学 かがく と生物 せいぶつ , 5(5), 285-291.
^ 多比良 たいら 和 かず 誠 まこと , 二村 にむら 泰弘 やすひろ , & 加藤 かとう 卓 たく . (2016). 反応 はんのう スキームを眺 なが めて簡単 かんたん に解 と ける酵素 こうそ 反応 はんのう 速度 そくど 論 ろん . 東京 とうきょう 福祉 ふくし 大学 だいがく ・大学院 だいがくいん 紀要 きよう = Bulletin of Tokyo University and Graduate School of Social Welfare, 7(1), 47-56.
^ 廣 こう 海 うみ 啓 けい 太郎 たろう . (1992). 酵素 こうそ 反応 はんのう の速度 そくど 論 ろん 的 てき 解析 かいせき の展開 てんかい . 日本 にっぽん 農芸 のうげい 化 か 学会 がっかい 誌 し , 66(9), 1319-1326.
^ Altmann, K. H., Buchner, J., Kessler, H., Diederich, F., Krautler, B., Lippard, S., ... & Walsh, C. T. (2009). The state of the art of chemical biology. ChemBioChem, 10(1), 16-29.
^ 長田 ながた 裕之 ひろゆき . (2007). 化学 かがく と生物 せいぶつ 学 がく の融合 ゆうごう を目指 めざ して: ケミカルバイオロジー. 学術 がくじゅつ の動向 どうこう , 12(12), 62-63.