ダイワスカーレット

ダイワスカーレット
2008年ねん11月2日にち、東京競馬場とうきょうけいばじょう
欧字おうじ表記ひょうき	Daiwa Scarlet
品種ひんしゅ	サラブレッド
性別せいべつ	牝めす
毛色けいろ	栗毛くりげ
生誕せいたん	2004年ねん5月13日にち（20歳さい）
抹消まっしょう日び	2009年ねん2月がつ18日にち
父ちち	アグネスタキオン
母はは	スカーレットブーケ
母ははの父ちち	ノーザンテースト
生国しょうごく	日本にっぽん（北海道ほっかいどう千歳ちとせ市し）
生産せいさん者しゃ	社台やしろだいファーム
生産せいさん牧場ぼくじょう	社台やしろだいファーム
育成いくせい	社台やしろだいファーム
馬主ばしゅ	大城おおしろ敬三けいぞう
調教ちょうきょう師し	松田まつだ国こく英えい（栗東りっとう）
調教ちょうきょう助手じょしゅ	松田まつだ巧たくみ
厩うまや務つとむ員いん	斉藤さいとう正敏まさとし
競走きょうそう成績せいせき
タイトル	JRA賞しょう最優秀さいゆうしゅう3歳さい牝馬ひんば（2007年ねん） JRA賞しょう最優秀さいゆうしゅう父ちち内ない国産こくさん馬ば（2007年ねん）
生涯しょうがい成績せいせき	12戦せん8勝しょう
獲得かくとく賞金しょうきん	7億おく8668万まん5000円えん
WTRR WTR	L115 / 2007年ねん L119 / 2008年ねん
勝かち鞍くら GI エリザベス女王じょおう杯はい 2007年ねん GI 有馬ありま記念きねん 2008年ねん JpnI 桜花おうか賞しょう 2007年ねん JpnI 秋あき華はな賞しょう 2007年ねん GII 産経さんけい大阪おおさか杯はい 2008年ねん JpnII ローズS 2007年ねん

ダイワスカーレット（欧字おうじ名めい:Daiwa Scarlet、2004年ねん5月13日にち - ）は、日本にっぽんの競走きょうそう馬ば、繁殖はんしょく牝馬ひんば。

通算つうさん成績せいせき12戦せん8勝しょう2着ちゃく4回かい、12戦せん12連れん対たい。19戦せん19連れん対たいのシンザンに次ついで中央ちゅうおう競馬けいば史上しじょう第だい2位いの生涯しょうがい連れん対たいを記録きろくした。2008年ねんには1971年ねんのトウメイ以来いらい37年ねんぶり4例れい目めとなる牝馬ひんばの有馬ありま記念きねん（GI）優勝ゆうしょうを達成たっせい。JRA賞しょう最優秀さいゆうしゅう父ちち内ない国産こくさん馬ば部門ぶもんの最後さいごの受賞じゅしょう馬ば（2007年ねん）である。

同期どうきの東京とうきょう優ゆう駿しゅん（日本にほんダービー）優勝ゆうしょう牝馬ひんば顕彰けんしょう馬ばのウオッカとはライバルの関係かんけいとされた。初はつ対決たいけつとなった2007年ねんのチューリップ賞しょう（JpnIII）は敗北はいぼくしたが桜花おうか賞しょう（JpnI）と秋あき華はな賞しょう（JpnI）では勝利しょうり。間あいだを空あけて約やく10か月げつぶりの再戦さいせんとなった2008年ねん天皇てんのう賞しょう（秋あき）（GI）では2センチメートル先着せんちゃくを許ゆるして敗北はいぼく。通算つうさん５戦せんで対決たいけつがあり、それぞれが２勝しょうした。

その他たの勝かち鞍くらに2007年ねんのエリザベス女王じょおう杯はい（GI）、ローズステークス（JpnII）、2008年ねんの産経さんけい大阪おおさか杯はい（GII）。2007年ねんのJRA賞しょう最優秀さいゆうしゅう3歳さい牝馬ひんばに選出せんしゅつされた。ミス・パーフェクトと呼よばれた。祖母そぼスカーレットインクに始はじまる「スカーレット一族いちぞく」に属ぞくしており、母ははは重じゅう賞しょう4勝しょうのスカーレットブーケ、半はん兄あににGI5勝しょうのダイワメジャーがいる。主戦しゅせん騎手きしゅは安藤あんどう勝己かつみで、全ぜん戦せんに騎乗きじょうした。

デビューまで

誕生たんじょうまでの経緯けいい

スカーレットインクとノーザンテースト

→詳細しょうさいは「スカーレットインク」および「ノーザンテースト」を参照さんしょう

スカーレットインクは、1971年ねんにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくで生産せいさんされた牝馬ひんばである。アメリカで競走きょうそう馬ばとしてデビューし1戦せん未み勝利しょうりで引退いんたい。近親きんしんに目立めだった活躍かつやく馬ばはおらず脚あしが曲まがっていたが、スカーレットインクの3代だい母ははユアホステスを高たかく見込みこんでいた日本にっぽんの社台やしろだいファーム創業そうぎょう者しゃの吉田よしだ善哉ぜんざいが繁殖はんしょく牝馬ひんばとして購入こうにゅうした。1973年ねんに日本にっぽんに導入どうにゅうされたが初年度しょねんどから3番ばん仔こまでの成績せいせきは今こん一ひとつで、さらに続つづく4年間ねんかんは不ふ受胎じゅたいに終おわった。その翌年よくねんにノーザンテーストの産さん駒こまを受胎じゅたいし、1982年ねんに待望たいぼうの4番ばん仔こを出産しゅっさんした。

ノーザンテーストは、1972年ねんに吉田よしだ善哉ぜんざいの長男ちょうなんでアメリカの社台やしろだいの拠点きょてんフォンテンブローファームの場ば長ちょう吉田よしだ照あきら哉が幼よう駒こまとして購入こうにゅうした。競走きょうそう馬ばとしてヨーロッパG1を勝利しょうりした後のち日本にっぽんの社台やしろだいファームで種たね牡馬ぼばとして供用きょうようされ、ダイナガリバーやアンバーシャダイなどをはじめとする活躍かつやく馬ばを輩出はいしゅつするなど長ながくリーディングサイアーに君臨くんりんし続つづけた。

スカーレットインクはそのノーザンテーストと何なん度ども交配こうはいを行おこない、特とくに牝馬ひんばを複数ふくすう出産しゅっさんする。繁殖はんしょく牝馬ひんばは年としを取とるにつれて産さん駒こまの成績せいせきが落おちる傾向けいこうにあったが、ノーザンテーストとの仔こは重じゅう賞しょう勝利しょうりを挙あげるなど今こん一ひとつだった3番ばん仔こまでを上回うわまわる活躍かつやくを見みせた。特とくに活躍かつやくしたのが6勝しょう（内うち重じゅう賞しょう4勝しょう）を挙あげた9番ばん仔この牝馬ひんばスカーレットブーケだった。

スカーレットブーケとサンデーサイレンス系けい

→詳細しょうさいは「スカーレットブーケ」、「サンデーサイレンス」、および「アグネスタキオン」を参照さんしょう

1988年ねんに生産せいさんされたスカーレットブーケは、1991年ねんの牝馬ひんば三さん冠かん競走きょうそう全すべてに出走しゅっそうした。桜花おうか賞しょうはシスタートウショウに敗やぶれ4着ちゃく、優ゆう駿しゅん牝馬ひんば（オークス）はイソノルーブルに敗やぶれ5着ちゃく、エリザベス女王じょおう杯はいはリンデンリリーに敗やぶれ3着ちゃくに終おわった。重じゅう賞しょうを4勝しょうしながらもGIタイトルには届とどかずに引退いんたいし、社台やしろだいファームで繁殖はんしょく牝馬ひんばとなった。初年度しょねんどと2年ねん目めの交配こうはい相手あいてにはトニービンが選えらばれたが、初はつ仔こはチューリップ賞しょう（GIII）2着ちゃく、通算つうさん1勝しょう。2番ばん仔こも中央ちゅうおう競馬けいば1勝しょう、岩手いわて競馬けいば3勝しょうに留とどまった。そして3年ねん目めの交配こうはい相手あいてにはサンデーサイレンスが選えらばれた。サンデーサイレンスは1990年ねんに吉田よしだ善哉ぜんざいが種たね牡馬ぼばとして日本にっぽんに導入どうにゅう。多数たすうのGI優勝ゆうしょう馬ばを送おくり出だすなど活躍かつやく馬ばを輩出はいしゅつし、長ながくリーディングサイアーに君臨くんりんしていた。スカーレットブーケはそのサンデーサイレンスと何なん度ども交配こうはいを行おこない、出産しゅっさんを続つづけた。最初さいしょのサンデーサイレンス産さん駒こまである3番ばん仔こスリリングサンデーは通算つうさん5勝しょう。4番ばん仔こグロリアスサンデーも通算つうさん5勝しょう。2頭とうは有限ゆうげん会社かいしゃ社台やしろだいレースホース所有しょゆうの競走きょうそう馬ばだったが、5番ばん仔こは冠かんむり名めい「ダイワ」を用もちいる馬主ばしゅ大城おおしろ敬三けいぞうが所有しょゆうしてダイワルージュとなった。ダイワルージュは2000年ねんの新潟にいがた3歳さいステークス（GIII）を優勝ゆうしょうし、スカーレットブーケ産さん駒こまの初はつ重じゅう賞しょう勝利しょうりを達成たっせい。阪神はんしん3歳さい牝馬ひんばステークスや桜花おうか賞しょうではいずれもテイエムオーシャンに敗やぶれるもそれぞれ2着ちゃくと3着ちゃくGIに入にゅう着ちゃくした。その後ごスカーレットブーケはナリタブライアンとの間あいだに6番ばん仔こを儲もうけ、種付たねつけを一いち年ねん休やすんだ後のちに2000年ねんからサンデーサイレンスとの交配こうはいを再開さいかいする。7番ばん仔こ、8番ばん仔こを得えたが2002年ねんにサンデーサイレンスは死亡しぼうし、直後ちょくごの2002年ねんはサンデーサイレンスの後継こうけい種しゅ牡馬ぼばスペシャルウィークと交配こうはいして9番ばん仔こを得えていた。

アグネスタキオン

2003年ねん5月がつ5日にちに前年ぜんねんに続つづいて再ふたたびスペシャルウィークと種付たねつけしたが、受胎じゅたいせずに相手あいてを変更へんこう。5月25日にちに同おなじくサンデーサイレンスの後継こうけいアグネスタキオンと種付たねつけを実施じっししている。この当時とうじはサンデーサイレンス亡なきあとの後継こうけい争あらそいが勃発ぼっぱつしており、アグネスタキオンは社台やしろだいが力ちからを入いれていた種たね牡馬ぼばだった。それから1年ねん後ご、2004年ねん5月がつ13日にちに北海道ほっかいどう千歳ちとせ市しの社台やしろだいファームにてアグネスタキオンの2世代せだい目めの産さん駒こまにして10番ばん仔ことなる栗毛くりげの牝馬ひんば（後ごのダイワスカーレット）が誕生たんじょうした。。

ダイワメジャーとスカーレット一族いちぞく

ダイワメジャー

10番ばん仔こが生うまれた2004年ねん春はるには、7番ばん仔この兄あにダイワメジャーが皐月さつき賞しょう（GI）を10番ばん人気にんきで優勝ゆうしょう。スカーレットブーケ産さん駒こまとして初はじめてGI勝利しょうりを挙あげた。スカーレットブーケはGI優勝ゆうしょう馬ばの母ははとなったが、スカーレットブーケの姉妹しまいであるスカーレットブルーやスカーレットリボン、スカーレットローズの子孫しそんにも重おも賞しょう優勝ゆうしょう馬ばやGI好こう走はし馬うま、その他た活躍かつやく馬ばが続出ぞくしゅつする。次第しだいにそのすべての　祖そスカーレットインクが名めい牝めすとして認識にんしきされ、併あわせて娘むすめたちがその牝めす系けいを広ひろめていることが知しられるようになった。こうしてこの牝めす系けいはスカーレットインク由来ゆらいで共通きょうつうする「スカーレット」の名なをとって「スカーレット一族いちぞく」と呼よばれるようになった。

スカーレット一族いちぞくは、先さきに述のべたダイワメジャーが皐月さつき賞しょうの他ほかに2006年ねん天皇てんのう賞しょう（秋あき）、2006年ねん、07年ねんマイルチャンピオンシップ連覇れんぱ、2007年ねん安田やすだ記念きねんのGI5勝しょうを含ふくむ重じゅう賞しょう8勝しょうの活躍かつやく。その他た、ローズの孫まごにGI級きゅう競走きょうそう9勝しょうを挙あげたヴァーミリアンやサカラートがいる。

幼よう駒こま時代じだい

大城おおしろ敬三けいぞう「ダイワ」の勝負しょうぶ服ふく

10番ばん仔こはダイワルージュやダイワメジャーと同おなじく大城おおしろが所有しょゆうすることになり、大だい　冠かんむり名めいにスカーレット一族いちぞくの「スカーレット」を組くみ合あわせた「ダイワスカーレット」という競走きょうそう馬ば名めいが与あたえられる。登録とうろくする際さいにはスカーレットインクと同おなじく「『風ふうと共ともに去さりぬ』の登場とうじょう人物じんぶつスカーレット・オハラ由来ゆらい」と説明せつめいされていた。父ちちアグネスタキオン、母ははスカーレットブーケという社台やしろだいファーム生産せいさん馬ばの両親りょうしんを持もち、かつダイワメジャーの妹いもうとであるダイワスカーレットは出産しゅっさん当初とうしょから牧場ぼくじょうで評判ひょうばんとなった。出産しゅっさんに立たち会あった社台やしろだいファーム獣じゅう医師いしの池田いけだ充たかしは、ダイワスカーレットを見みて「16歳さいを迎むかえた繁殖はんしょく牝馬ひんば（スカーレットブーケ）の仔ことは思おもえない雄大ゆうだいな馬うま体たい」と驚おどろきを隠かくせなかったという。馬うま体重たいじゅうは誕生たんじょう直後ちょくごの兄あにダイワメジャーよりも大おおきく、同おなじ牝馬ひんばの姉あねダイワルージュと比較ひかくしても筋肉きんにく量りょうに富とんでいた。その後ご育成いくせいに移うつっても期待きたい通どおりに成長せいちょうし、好成績こうせいせきを上あげた兄あに姉あねを超こえるパフォーマンスを見みせて「母ははスカーレットブーケの最高さいこう傑作けっさくになるのでは」（村本むらもと浩平こうへい）「無事ぶじに競馬けいば場じょうへ送おくり出だせば必かならず大おおきな仕事しごとをするのではないか」と期待きたいされた。ダイワスカーレットは、栗東りっとうトレーニングセンターに所属しょぞくする松田まつだ国こく英えい調教ちょうきょう師しの管理かんり馬ばとなった。2歳さいとなった2006年ねん、8月がつ11日にちに函館はこだて競馬けいば場じょうに入にゅう厩うまや。それから9月がつ1日にちに栗東りっとうに移動いどうしている。性格せいかく的てきに臆病おくびょうなところやきついところがあり、特とくにゲートが課題かだいだった。そこで松田まつだは、ダイワスカーレットのゲート練習れんしゅうに通常つうじょうの6倍ばいの時間じかんをかけていた（詳細しょうさいは、ダイワスカーレット#ゲート克服こくふくを参照さんしょう。）。

競走きょうそう馬ば時代じだい

2006年ねん（2歳さい）

11月19日にち、京都競馬場きょうとけいばじょうの新しん馬うま戦せん（芝しば2000メートル）でデビューを果はたした。武たけ豊ゆたかと安藤あんどう勝己かつみが調教ちょうきょうに騎乗きじょうしており、武たけとともにデビューする予定よていだった。しかし同どうレースに出走しゅっそうする池いけ江こう泰郎やすお厩舎きゅうしゃのウインスペンサー騎乗きじょうの約束やくそくと被こうむってしまい、武たけは先約せんやくだったウインスペンサーを選択せんたく。代かわりにダイワスカーレットに安藤あんどうが騎乗きじょうすることとなった。安藤あんどうは以後いご、引退いんたいまで騎乗きじょうすることとなる。デビュー2週間しゅうかん前まえに初はつコンタクトをとった安藤あんどうは「能力のうりょくの大おおきさはその時点じてんで感かんじました……ただ……少すこし前向まえむきすぎる……一流いちりゅうの能力のうりょくとスピードを秘ひめていることは乗のった感かんじですぐに分わかったけど、そのテンションの高たかさが少すこし気きになりました」と述のべている。

スピードと前向まえむきな気性きしょうを兼かねており、適性てきせいは短距離たんきょりにあると考かんがえられていた。しかし中距離ちゅうきょりの芝しば2000メートルでのデビュー。これは松田まつだが、短距離たんきょりでデビューさせて、短距離たんきょりだけを得意とくいとするスプリンターにすることを嫌きらったための選択せんたくだった。当日とうじつのメイン競走きょうそうは兄あにダイワメジャーが出走しゅっそうするマイルチャンピオンシップであり、兄妹きょうだいが同おなじ京都きょうとに参戦さんせんしている。ダイワスカーレットに手てごたえを感かんじていた松田まつだは、そのポテンシャルを周まわりに「早はやく知しらしめよう」と敢あえてこの日ひを選択せんたくしていた。単勝たんしょうオッズ1.8倍ばい、ウインスペンサーを3.2倍ばいの2番ばん人気にんきに押おしのけて1番ばん人気にんきとなる。スタートから2番手ばんての好こう位いを追つい走はし。第だい3コーナーから先頭せんとうに立たって最終さいしゅうコーナーで抜ぬけ出だし、後方こうほうに1馬身ばしん4分ぶんの3差さをつけて入線にゅうせん。初はつ勝利しょうりを挙あげた。この直後ちょくごメイン競走きょうそうマイルチャンピオンシップでも兄あにダイワメジャーが優勝ゆうしょう。兄妹きょうだい同日どうじつ勝利しょうりとなり、ダイワスカーレットの勝利しょうりは、通常つうじょうの新しん馬うま戦せん勝利しょうり以上いじょうに取とり上あげられた。

それから12月16日にち、中京ちゅうきょう2歳さいステークス（OP）に臨のぞむ。ビワハイジとアグネスタキオンの仔こ、松田まつだ博資ひろし厩舎きゅうしゃアドマイヤオーラとの対決たいけつとなり、ダイワスカーレットが2.2倍ばいの1番ばん人気にんき、アドマイヤオーラが2.5倍ばいの2番ばん人気にんきとなった。スタートから2番手ばんてを追つい走はし、直線ちょくせんで追おわれて抜ぬけ出だした。3、4番手ばんてから追おい上あげたアドマイヤオーラが迫せまって来きたが、半はん馬身ばしん差さをつけて入線にゅうせん。2連勝れんしょうを果はたす。

2007年ねん（3歳さい）

戦術せんじゅつの模索もさく、2連敗れんぱい

1月がつ8日にち、シンザン記念きねん（JpnIII）で始動しどう。ローレルゲレイロやアドマイヤオーラなど9頭とうの牡馬ぼばと対決たいけつ、紅一点こういってんながら単勝たんしょうオッズ1.9倍ばいの1番ばん人気にんきに推おされる。スタートから3番手ばんてを追つい走はし。直線ちょくせんで抜ぬけ出だしにかかったが、外そとからアドマイヤオーラに並ならびかけられた。抵抗ていこうしたがかわされて、1馬身ばしん半はん差さの2着ちゃく。初はじめての敗戦はいせんとなり、アドマイヤオーラに仕返しかえしされた。松田まつだは「ボクの油断ゆだん負まけです。1回かい負まかした馬うまでしたから、目算もくさんを誤あやまりました。」。また、安藤あんどうはこの時とき「後うしろからの競馬けいばを試ためしてみたいという気持きもちがあった」と回顧かいこしている。直線ちょくせんではアドマイヤオーラに並ならばれてからスパートを開始かいし。今後こんごのために、ダイワスカーレットの繰くり出だす末すえ脚あしの威力いりょくを測はかっていたが「ビュンッて一瞬いっしゅんで加速かそくする感かんじではなかった……キレないというよりは、気きがいい馬うまだからタメきれていない……自分じぶんではタメているつもりでも、馬うまが縮ちぢまっていない」様子ようすだったという。このレースでは、中団ちゅうだん待機たいきから追おい込こんだアドマイヤオーラの末すえ脚あしの「キレ味あじ」（安藤あんどう）が勝まさる形かたちとなった。

続つづいて3月がつ3日にち、桜花おうか賞しょうのトライアル競走きょうそうであるチューリップ賞しょう（JpnIII）に臨のぞむ。前年ぜんねんの阪神はんしんジュベナイルフィリーズを勝利しょうりしたウオッカとの初はつ対決たいけつとなった。ウオッカは、松田まつだの弟子でしである角すみ居きょ勝彦かつひこ調教ちょうきょう師しの管理かんり馬ばであり、松田まつだの管理かんりしたダービー馬ばタニノギムレットの仔こである。対決たいけつを前まえに松田まつだはウオッカを名指なざしでライバル視し。「これまでに強つよい牝馬ひんばをたくさん見みてきましたけど、今年ことしの牝馬ひんばクラシック戦線せんせんは、たぶん、（ダイワスカーレットが）かつてないほどしっかりとしたレースをすると思おもいますよ。でも、今回こんかいの場合ばあいは、ウオッカよりもじょうずに立たち居い振ふる舞まわないと〔ママ〕、あの馬うまは負まかせないと思おもいますね。（カッコ内ない補足ほそく加筆かひつ者しゃ）」と述のべていた。ウオッカが1.4倍ばい、ダイワスカーレットが2.8倍ばいに推おされ、3番ばん人気にんきのローブデコルテを14.6倍ばいまで突つき放はなしていた。

ウオッカ

4枠わく7番ばんからスタートして逃にげて折おり合あいを保たもち、先頭せんとうのまま最終さいしゅうコーナーを通過つうか。直線ちょくせんで突つき放はなしにかかったが、外そとからウオッカに並ならびかけられた。後続こうぞくとの差さを広ひろげながら一騎打いっきうち、抵抗ていこうしたがかわされてクビ差さの2着ちゃく。安藤あんどうはシンザン記念きねんと同おなじように、ウオッカが迫せまり来きてからスパートを開始かいしし、再ふたたび敗やぶれていた。安藤あんどうは「今日きょうは勝かち馬ばの強つよさを認みとめるしかない」。また桜花おうか賞しょうに臨のぞむにあたり「ウオッカがモノ凄すごく強つよいのは間違まちがいないけど、もしかしたら（ダイワ）スカーレットももっと力ちからを出だせる乗のり方かたがあるのかもしれない」と述のべている。

桜花おうか賞しょう優勝ゆうしょう - 優ゆう駿しゅん牝馬ひんば回避かいひ

4月がつ8日にち、桜花おうか賞しょう（JpnI）に臨のぞむ。ウオッカが1.4倍ばいの1番ばん人気にんき。重じゅう賞しょう3勝しょう、阪神はんしんジュベナイルフィリーズではウオッカにクビ差さの2着ちゃく、フィリーズレビュー優勝ゆうしょうから臨のぞむアストンマーチャンが5.2倍ばいの2番ばん人気にんき。ダイワスカーレットはそれに次つぐ5.9倍ばいの3番ばん人気にんき。上位じょうい人気にんき3頭とうは、4番ばん人気にんきショウナンタレントを34.7倍ばいまで突つき放はなす「三さん強きょう」となった。

映像えいぞう外部がいぶリンク
2007年ねん 桜花おうか賞しょう（JpnI） レース映像えいぞう JRA公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが
2007年ねん 桜花おうか賞しょう（JpnI） レース映像えいぞう 関西かんさいテレビ競馬けいば公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが

大だい外そと枠わく8枠わく18番ばんからスタートして3番手ばんての好こう位くらい、逃にげると目めされた馬うまが出遅でおくれたことでスローペースとなった。2番手ばんてアストンマーチャンが折おり合あいを欠かいたが、ダイワスカーレットは折おり合あいをつけて追つい走そうした。真後まうしろにウオッカを従したがえながら第だい3コーナーを通過つうか。三さん強きょうが接近せっきんしながら直線ちょくせんに向むき、内うちからアストンマーチャン、ダイワスカーレット、ウオッカの順じゅんに雁行がんこうしていた。真まん中なかダイワスカーレットは、前方ぜんぽうアストンマーチャンを捕とらえ次第しだい、後方こうほうウオッカに並ならばれる前まえにスパートを実行じっこう。残のこり200メートルでウオッカを突つき放はなした。以後いご独走どくそうし、安藤あんどうが右手みぎてを天てんに掲かかげる余裕よゆうを見みせながら入線にゅうせんする。ウオッカに雪辱せつじょく、母ははスカーレットブーケ、姉あねダイワルージュの届とどかなかった桜花おうか賞しょう優勝ゆうしょうを成なし遂とげた。また2004年ねん皐月さつき賞しょうを制せいした兄あにダイワメジャーに続つづいて兄妹きょうだいクラシック勝利しょうり、史上しじょう15組くみ目めとなる兄弟きょうだい姉妹しまいクラシック勝利しょうりとなった。加くわえて安藤あんどうは、前年ぜんねんのキストゥヘヴンに続つづいての桜花おうか賞しょう優勝ゆうしょうであり、福永ふくなが洋一よういち、武たけ豊ゆたか、田原たはら成しげる貴たかに続つづいて史上しじょう4人にん目めの連覇れんぱを果はたしている。

桜花おうか賞しょう優勝ゆうしょう時じ。桜花おうか賞しょうがJRA通算つうさん700勝しょう目めだった。

安藤あんどうは、先さきの連敗れんぱいで末すえ脚あしの特徴とくちょうを掴つかんでいた。ダイワスカーレットは、短みじかい時間じかんで鋭するどく伸のびる「瞬発しゅんぱつ力りょく」よりも、時間じかんをかけて緩ゆるやかに加速かそくする「持続じぞく力りょく」に秀ひいでている、そして負まかすべきウオッカは「瞬発しゅんぱつ力りょく」に秀ひいでていると分析ぶんせきしていた。迎むかえた本番ほんばん桜花おうか賞しょうの直線ちょくせん、安藤あんどうは「いままでよりもワンテンポ早はやく」「（連敗れんぱい時じのように）いっぺんに加速かそくするのではなく、早はやめにある程度ていどスピードを上あげておいてから（カッコ内ない補足ほそく引用いんよう者しゃ）」、ウオッカに並ならばれる前まえにスパートを実行じっこう。ダイワスカーレットが持もつすべての力ちからを発揮はっきできるように、同時どうじにウオッカを早はやめにスパートさせて、その瞬発しゅんぱつ力りょくが活いきないようにするためだった。瞬発しゅんぱつ力りょく勝負しょうぶではなく、持続じぞく力りょく勝負しょうぶに持もち込こんだ結果けっか、逆転ぎゃくてんに成功せいこう。安藤あんどうによれば「『前まえの2戦せんで同おなじ負まけ方かたをした』ことがポイントだった」と振ふり返かえっている。

松田まつだによれば、連敗れんぱい時じよりも良よい状態じょうたいで桜花おうか賞しょうに臨のぞめていたという。チューリップ賞しょう時じは基礎きそ体温たいおんが安定あんていせず、球たま節ぶしにむくみがあったが、桜花おうか賞しょう前まえにはそれが解消かいしょうされていた。また、チューリップ賞しょうでのウオッカが手綱たづなを左右さゆうに替かえながら伸のびていたことから「見みた目めよりも目め一いち杯はいの走はしり」だったと考かんがえていた。そこでダイワスカーレットに「前まえ走はしよりも時計とけいを0.5秒びょう縮ちぢめるための調教ちょうきょう」を施ほどこしている。チューリップ賞しょうと桜花おうか賞しょうの決着けっちゃくタイムは、いずれも1分ふん33秒びょう7である。チューリップ賞しょうでは2頭とうが同どうタイムだったが、桜花おうか賞しょうではダイワスカーレットが0.2秒びょう上回うわまわり、先着せんちゃくを果はたした。

桜花おうか賞しょう戴冠たいかん後ごは、5月がつ20日はつかの優ゆう駿しゅん牝馬ひんば（オークス）を目指めざした。東京競馬場とうきょうけいばじょう芝しば2400メートルで桜花おうか賞しょう2着ちゃくのウオッカとの再戦さいせんが期待きたいされたが、ウオッカは、同おなじ東京とうきょう2400メートルでも、主おもに牡馬ぼばが出走しゅっそうする東京とうきょう優ゆう駿しゅん（日本にほんダービー）に参戦さんせんを表明ひょうめいしていた。ライバルが不在ふざいの中なか、ダイワスカーレット一いち強きょうムードで二に冠かん目めに向むかうはずだったが、3日にち前まえに感冒かんぼう、熱発ねっぱつ。直前ちょくぜんで出走しゅっそうを断念だんねんした。6月5日にちに宮城みやぎ県けん山元やまもと町まちの山元やまもとトレーニングセンターへ放牧ほうぼくに出だされる。吉田よしだは、北海道ほっかいどうの社台やしろだいファームからダイワスカーレット専任せんにんのスタッフを山元やまもとに派遣はけん。そのスタッフのもと夏なつを過すごした。

秋あき華はな賞しょう優勝ゆうしょう、二に冠かん達成たっせい

8月がつ10日とおか、栗東りっとうに帰き厩うまやする。夏なつを越こしたダイワスカーレットは外面がいめんこそ大おおきく変化へんかしなかったが、精神せいしん面めん、体質たいしつ面めんで成長せいちょうしていた。まず精神せいしん面めんでは、これまでにない落おち着つきを得えていた。安藤あんどうは春はるの2400メートルについて持もたないのではないかと不安ふあんを抱かかえていたが、夏なつを経へてそれが解消かいしょう。「『これなら少々しょうしょう長ながめの距離きょりでも大丈夫だいじょうぶ』と確信かくしんできるぐらい」（安藤あんどう）までになっていた。加くわえて、春はるは自分じぶんの背後はいごをしきりに警戒けいかいして、蹴けったり蹴けられたりしていたが、それも解消かいしょうしたという。また体質たいしつ面めんでは、基礎きそ体温たいおんの安定あんてい化かにも改あらためて成功せいこうしていた。松田まつだは、そんなダイワスカーレットの秋あきのローテーションをローズステークス、秋あき華はな賞しょう、エリザベス女王じょおう杯はいに設定せっていする。マイルから2000メートル超ちょうの中距離ちゅうきょりへ転向てんこうするにあたりこれ以降いこうは、距離きょり延長えんちょうで引ひっ掛かからないようにメンコを着用ちゃくよう、口くちを割わらないように舌したを縛しばる馬具ばぐを使用しようしている。

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2007年ねん ローズステークス（JpnII） レース映像えいぞう JRA公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが

9月16日にち、秋あき華はな賞しょうのトライアル競走きょうそうであるローズステークス（JpnII）で始動しどうする。優ゆう駿しゅん牝馬ひんばハナ差さの2着ちゃく、秋山あきやま真一郎しんいちろうから武たけ豊ゆたかに乗のり替かわったベッラレイアと初はつ対決たいけつとなった。ダイワスカーレットは、単勝たんしょうオッズ1.6倍ばいの1番ばん人気にんき。ベッラレイアが3.4倍ばい、上あがり馬ばレインダンスが8.9倍ばい、NHKマイルカップ優勝ゆうしょうのピンクカメオが17.1倍ばいで続つづいていた。好こうスタートからハナを奪うばって逃にげ、持もったまま最終さいしゅうコーナーを通過つうか。直線ちょくせんでスパートして、先頭せんとうを守まもり切きった。最もっとも内側うちがわから伸のびたベッラレイアに半はん馬身ばしん差さをつけ優勝ゆうしょう。5か月げつぶりの出走しゅっそうで連勝れんしょうを果はたした。 それから10月がつ14日にち、秋あき華はな賞しょう（JpnI）に臨のぞむ。ウオッカとの再戦さいせんとなった。ウオッカはダービーを優勝ゆうしょうした後のち、宝塚たからづか記念きねん8着ちゃく、秋あきは凱旋がいせん門もん賞しょう挑戦ちょうせんを目指めざしたものの一頓挫いちとんざあって断念だんねんし、国内こくない専念せんねんに切きり替かえていた。急遽きゅうきょ目標もくひょうを変更へんこうしたウオッカに比くらべて、予定よてい通どおりのダイワスカーレットの方ほうが順調じゅんちょうに本番ほんばんを迎むかえていたが、当日とうじつの人気にんきは、ウオッカが2.7倍ばいに対たいし、ダイワスカーレットは2.8倍ばい。僅差きんさながらウオッカに1番ばん人気にんきを譲ゆずっている。3番ばん人気にんきは、3.8倍ばいのベッラレイア。4番ばん人気にんきのオッズは20倍ばい台だいに飛躍ひやくしており「三さん強きょう」となっていた。この世代せだいは、牡馬ぼばと牝馬ひんばが重じゅう賞しょうおよびオープン競走きょうそうを戦たたかった時とき、牝馬ひんばが優勝ゆうしょうする割合わりあいが例年れいねんよりも高たかかった。さらに夏なつから初秋しょしゅうにかけて、3歳さい牝馬ひんばのアストンマーチャンやクーヴェルチュールが、古こ馬うまを下くだして重じゅう賞しょうやGI勝利しょうりを達成たっせい。加くわえて下級かきゅう条件じょうけんでも古こ馬うまを下くだして勝利しょうりする3歳さい牝馬ひんばの割合わりあいが例年れいねんの1.5倍ばいだった。それゆえにこの年としの3歳さい牝馬ひんばは、大物おおものがいるうえに層そうが厚あつく、全体ぜんたいとしてのレベルが高たかいと考かんがえられていた。そんな中なかにあって牝馬ひんば三さん冠かん競走きょうそうの最終さいしゅう戦せんには、桜花おうか賞しょう優勝ゆうしょう馬ば、桜花おうか賞しょう2着ちゃく並ならびに阪神はんしんジュベナイルフィリーズおよびダービー優勝ゆうしょう馬ば、さらに優ゆう駿しゅん牝馬ひんば優勝ゆうしょう馬ば、その2着ちゃく馬ば、NHKマイルカップ優勝ゆうしょう馬ばが結集けっしゅうし、そのうえ重じゅう賞しょう優勝ゆうしょう馬ばも多数たすう出走しゅっそう。GI級きゅう優勝ゆうしょう馬ば4頭とうの競演きょうえんはレース史上しじょう最多さいただった。レベルの高たかい世代せだいのその覇者はしゃたち、実績じっせき馬ばたちが揃ぞろいも揃そろった秋あき華はな賞しょうは「この秋あき一番いちばんの注目ちゅうもくレース」「レース史上しじょう最高さいこうメンバー」とも評ひょうされていた。

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2007年ねん 秋あき華はな賞しょう（JpnI） レース映像えいぞう JRA公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが
2007年ねん 秋あき華はな賞しょう（JpnI） レース映像えいぞう 関西かんさいテレビ競馬けいば公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが

7枠わく13番ばんからスタート。1枠わく1番ばんに先頭せんとうは譲ゆずり2番手ばんてを追つい走そうした。ウオッカと、ベッラレイアは後方こうほうに位置いちしていた。平均へいきんペースで1000メートルを通過つうかしたものの、以後いご逃にげ馬ばがペースをダウンさせていた。しかしダイワスカーレットはそれに抗あらがい、第だい3コーナーすぎたあたりで先頭せんとうを奪取だっしゅ、ウオッカを待またずしてロングスパートを開始かいしした。外そとから追おい込こんだ7番ばん人気にんきレインダンス、ウオッカが迫せまってきたが寄よせ付つけなかった。それらに1馬身ばしん4分ぶんの1差さをつけて先頭せんとうで入線にゅうせんする。GI級きゅう競走きょうそう2勝しょう目め、牝馬ひんば二に冠かんと相成あいなった。

エリザベス女王じょおう杯はい優勝ゆうしょう

秋あき華はな賞しょう後ごは、マイルチャンピオンシップの選択肢せんたくしもあったが、予定よてい通どおり11月がつ11日にちのエリザベス女王じょおう杯はい（GI）に臨のぞむ。秋あき華はな賞しょう3着ちゃくのウオッカは、エリザベス女王じょおう杯はいとジャパンカップの二に択よだったが、馬主ばしゅ谷水たにみず雄三ゆうぞうが前者ぜんしゃを選択せんたくし再戦さいせんが実現じつげんした。角かく居きょも「もう一度いちどダイワ（スカーレット）とやりたい」気持きもちだったという。直線ちょくせんの長ながい京都きょうと外回そとまわり2200メートルという舞台ぶたい、休やすみ明あけ叩はたき2戦せん目めであるウオッカのさらなる上昇じょうしょうが見込みこまれて、ウオッカが有利ゆうりだと考かんがえられていた。また松田まつだは、叩はたき3戦せん目めのダイワスカーレットについて「心身しんしんはマックス……それが私わたしにとって怖こわさにも……2戦せん目めの（ウオッカの）上あがり目めのほうが安心あんしんして受うけ入いれられる……私わたしは『ウオッカの方ほうが有利ゆうりだ』と持もち上あげるつもり……。そうすると、勝負しょうぶの魔物まものが遠とおざかってくれるような気きがするんです。（カッコ内ない補足ほそく加筆かひつ者しゃ）」と述のべていた。

ライバルとの再戦さいせんの舞台ぶたいだったが、古こ馬うまとの初はつ対決たいけつの舞台ぶたいでもあった。前年ぜんねんのワンツースリーフォーファイブ、フサイチパンドラ、スイープトウショウ、ディアデラノビア、アサヒライジング、アドマイヤキッスが再ふたたび集結しゅうけつ。「ライバル」とローブデコルテという牝馬ひんば三さん冠かんとダービー馬ばの3頭とうの3歳さい勢ぜいに、前年ぜんねん優勝ゆうしょう馬ばフサイチパンドラと前々まえまえ年ねん優勝ゆうしょう馬ばスイープトウショウを中心ちゅうしんとする11頭とうの古こ馬うま勢ぜいが迎むかえ撃うつ図式ずしきとなっていた。ただしレース前日ぜんじつのオッズは、ウオッカが2.1倍ばい、ダイワスカーレット3.6倍ばい、スイープトウショウ9.0倍ばいと続つづき、人気にんきの中心ちゅうしんはあくまでも3歳さい牝馬ひんば2頭とうだった。ところが当日とうじつ朝あさにウオッカが跛行はこうのため出走しゅっそう取消とりけし。ライバル同士どうしの対決たいけつは結局けっきょく持もち越こしとなった。ウオッカ絡がらみの勝馬かつま投票とうひょう券けん15億おく円えんが返還へんかん、13頭とうでの競走きょうそうに変更へんこうされた。最終さいしゅうオッズはダイワスカーレットが繰くり上あがって1.9倍ばいの1番ばん人気にんき、スイープトウショウが6.6倍ばい、フサイチパンドラが8.3倍ばいだった。ウオッカが除のぞかれても、GI級きゅう優勝ゆうしょう馬ばは既出きしゅつの4頭とうに加くわえて2006年ねん桜花おうか賞しょう優勝ゆうしょう馬ばのキストゥヘヴンもおり、5頭とうの競演きょうえんはレース史上しじょう最多さいたタイだった。

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2007年ねん エリザベス女王じょおう杯はい（GI） レース映像えいぞう JRA公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが
2007年ねん エリザベス女王じょおう杯はい（GI） レース映像えいぞう 関西かんさいテレビ競馬けいば公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが

5枠わく7番ばんからスタート。逃にげると思おもわれていたアサヒライジングが出遅でおくれ、ダイワスカーレットは楽らくにハナを奪取だっしゅし逃にげに出でた。折おり合あいをつけてスローペースで先導せんどう。第だい3コーナーの坂さかの下くだりでペースを上あげ、先頭せんとうで最終さいしゅうコーナーを通過つうかした。直線ちょくせんでは、内うちからスイープトウショウ、外そとからフサイチパンドラが追おい上あげて来きたが、もう一いち伸のびして寄よせ付つけなかった。フサイチパンドラに4分ぶんの3馬身ばしん差さ、スイープトウショウに約やく2馬身ばしん差さをつけて先頭せんとうで入線にゅうせんする。GI級きゅう競走きょうそう3勝しょう目め。2002年ねんファインモーション、2003年ねんアドマイヤグルーヴ、2006年ねんフサイチパンドラ以来いらい史上しじょう4例れい目めとなる3歳さい馬ばの優勝ゆうしょう。また、1998、1999年ねん連覇れんぱのメジロドーベル（父ちち:メジロライアン）に続つづいて史上しじょう2例れい目めとなる父ちち内ない国産こくさん馬ばの優勝ゆうしょうとなった。安藤あんどうは「ウオッカがいたらわからなかったかな」、松田まつだはウオッカ取消とりけしの第一報だいいっぽうを聞きいた時とき「正直しょうじき、（ダイワスカーレットは）運うんがいいな、と思おもいました。」と述のべている。

有馬ありま記念きねん2着ちゃく

続つづいてファン投票とうひょう4位いとなる7万まん4134票ひょうを集あつめ、12月23日にちの有馬ありま記念きねん（GI）に臨のぞむ。この年としの天皇てんのう賞しょうを独占どくせんしたメイショウサムソン、ジャパンカップ2着ちゃくや前年ぜんねん2着ちゃくのポップロック、GI5勝しょうのダイワメジャーなどの古こ牡馬ぼばと初はつ対決たいけつ。特とくに引退いんたいレースのダイワメジャーとは兄妹きょうだい対決たいけつであり、史上しじょう初はじめてとなる「GI級きゅう優勝ゆうしょう兄弟きょうだい姉妹しまいによるGI対決たいけつ」となった。ダイワメジャーは同おなじく安藤あんどうが主戦しゅせん騎手きしゅを務つとめていたが、安藤あんどうは、将来しょうらい性せいを考かんがえてダイワスカーレットを選択せんたく。空あいたダイワメジャーには、ミルコ・デムーロが舞まい戻もどっていた。またエリザベス女王じょおう杯はいを取とり消けしてジャパンカップ4着ちゃくとなったウオッカも出走しゅっそうし、4度目どめのライバル対決たいけつが実現じつげんしていた。メイショウサムソンが2.4倍ばい、ポップロックが5.0倍ばい、ウオッカが6.9倍ばい。ダイワスカーレットは、8.1倍ばいの5番ばん人気にんきだった。

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2007年ねん 有馬ありま記念きねん（GI） レース映像えいぞう JRA公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが

4枠わく7番ばんからスタート、チョウサンにハナを叩たたかれて、離はなれた2番手ばんてで追つい走そうした。第だい1、第だい2コーナーでは折おり合あいがつかなかった。第だい3、最終さいしゅうコーナーでは最さい内うちを進すすむチョウサンと別わかれて外そとに持もち出だして追おい上あげた。ところが空あけた内側うちがわを3番手ばんて追おい走はしの9番ばん人気にんき、マツリダゴッホに突つかれてしまった。以後いご、マツリダゴッホに突つき放はなされて独走どくそうを許ゆるした。それでも粘ねばり、後方こうほう待機たいきの有力ゆうりょく馬ばが揃そろって下位かいに沈しずんだこともあって、それ以上いじょうかわされることはなかった。優勝ゆうしょうマツリダゴッホに1馬身ばしん半はん差さをつけられ、3着ちゃくダイワメジャーに2馬身ばしん半はん差さをつける2着ちゃくを確保かくほする。3歳さい牝馬ひんばによる有馬ありま記念きねん2着ちゃくは、1994年ねんヒシアマゾン以来いらいだった。

この年としのJRA賞しょう表彰ひょうしょうでは、全ぜん289票ひょう中ちゅう275票ひょうを集あつめて最優秀さいゆうしゅう3歳さい牝馬ひんば、162票ひょうを集あつめて最優秀さいゆうしゅう父ちち内ない国産こくさん馬ばを受賞じゅしょう。また73票ひょうを集あつめて年度ねんど代表だいひょう馬ばの次点じてんとなった。なお、年度ねんど代表だいひょう馬ばを除のぞいて同どう一いち年ねんに2つのJRA賞しょうを受賞じゅしょうした馬うまは、この後のち2023年ねんのソングラインまで16年間ねんかん現あらわれなかった。

2008-09年ねん（4-5歳さい）

目めの怪我けが、脚あしの怪我けが

年としをまたいで古こ馬うまとなった2008年ねん、春はるの目標もくひょうを3月がつ下旬げじゅん、アラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽうのナドアルシバ競馬けいば場じょうで行おこなわれるドバイワールドカップミーティングに設定せってい。中なかでも世界せかい最高さいこう賞金しょうきんが用意よういされたドバイワールドカップ（G1、ダート2000メートル）出走しゅっそうを目指めざした。ダート初はつ挑戦ちょうせんを見越みこして、まず2月がつ24日にち、日本にっぽんのフェブラリーステークス（GI）でリハーサル。フェブラリーステークスのスタート地点ちてんから約やく100メートルは実績じっせきの芝しばコースであるため、松田まつだも勝かつ見込みこみがあると捉とらえていた。しかしレース1週間しゅうかん前まえの17日にち、坂路さかじでの調教ちょうきょう中ちゅうに跳とび上あがったウッドチップが右目みぎめを傷きずつけた。その傷きずは眼球がんきゅうに及および、創傷そうしょう性せい角膜かくまく炎えんと診断しんだん。数日すうじつ様子ようすを見みても治おさまらなかったことからフェブラリーステークスの回避かいひが決定けっていした。ドバイへの遠征えんせいもフェブラリーステークスの出走しゅっそうありきで組くみ立たてられており、同時どうじにドバイ遠征えんせい見送みおくりも決定けってい。陣営じんえいは目標もくひょうをヴィクトリアマイル（JpnI）もしくは安田やすだ記念きねん（GI）とし、ひいては宝塚たからづか記念きねん、海外かいがい遠征えんせいに改あらためていた。松田まつだが「一番いちばん強つよい馬うまが集あつまると思おもった」という理由りゆうで産経さんけい大阪おおさか杯はいで始動しどうとなる。

4月がつ6日にちの産経さんけい大阪おおさか杯はい（GII）は、メイショウサムソンやGI上位じょういのインティライミ、ドリームパスポート、それに前年ぜんねんの皐月さつき賞しょう優勝ゆうしょう馬ばヴィクトリー、菊花賞きっかしょう優勝ゆうしょう馬ばアサクサキングスなど10頭とうの牡馬ぼばと対決たいけつした。そんな中なかで2.0倍ばいの1番ばん人気にんきに推おされ、メイショウサムソンを3.0倍ばい、ドリームパスポートを8.3倍ばいに押おしのけていた。スタートからハナを奪取だっしゅして逃にげ、そのまま最終さいしゅうコーナーを通過つうか。直線ちょくせんでは内うちからエイシンデピュティ、外そとからアサクサキングスが迫せまって来きたが、もう一いち伸のびして突つき放はなした。4分ぶんの3馬身ばしん差さをつけて逃にげ切きり。1998年ねんエアグルーヴ以来いらいとなる牝馬ひんばによる産経さんけい大阪おおさか杯はい優勝ゆうしょうとなった。

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2008年ねん 産経さんけい大阪おおさか杯はい（GII） レース映像えいぞう JRA公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが

ただしこの始動しどう戦せん、ダイワスカーレットにとっては単たんなる前哨ぜんしょう戦せんだったにもかかわらず、勝利しょうりのために最大さいだい出力しゅつりょくを発揮はっきしてしまっていた。その影響えいきょうで脚あしが腫はれ、1週間しゅうかん経過けいかしても引ひかなかったという。まもなく調教ちょうきょう不能ふのう状態じょうたいに陥おちいり、その後ごの予定よていが全ぜん撤回てっかいとなった。山元やまもとトレーニングセンターに放牧ほうぼくに出だされて検査けんさしたところ、管かん骨こつ瘤こぶが判明はんめい。春はるは全休ぜんきゅうして復帰ふっきは秋あきから、山元やまもとトレーニングセンターや社台やしろだいファームで夏なつを過すごした。

天皇てんのう賞しょう（秋あき）

参戦さんせんまでの経緯けいい

管かん骨こつ瘤こぶが完治かんじ後ご、7月がつ末まつからハッキングを開始かいし。秋あきは2戦せん、エリザベス女王じょおう杯はいと有馬ありま記念きねん参戦さんせんを目論もくろんでいた。しかし放牧ほうぼく先さきの社台やしろだいファームで、1ハロン平均へいきんを15秒びょうで走はしる調教ちょうきょうの一ひとつの基準きじゅん「15-15」を3本ほんこなすなど順調じゅんちょう。予定よていを2週間しゅうかん前倒まえだおしして天皇てんのう賞しょう（秋あき）での復帰ふっきが検討けんとうされるほどであり、ついには天皇てんのう賞しょう（秋あき）1か月げつ前まえに行おこなわれる毎日まいにち王冠おうかん出走しゅっそうまで検討けんとうされていた。9月5日にちに帰き厩うまやする。放牧ほうぼく中ちゅうは運動うんどうが控ひかえられたために増量ぞうりょう、社台やしろだいファームでの運動うんどう中ちゅうもなかなか絞しぼることができず、帰かえり厩うまや時じ540キログラム台だい、ベスト体重たいじゅうからプラス40キロで停滞ていたいしていた。そこで松田まつだはダイエット目指めざして「異例いれいの調整ちょうせい方法ほうほう」（石田いしだ敏徳としのり）を実行じっこうする。1週間しゅうかんに1度どだけ、調教ちょうきょう助手じょしゅではなく、騎乗きじょう技術ぎじゅつに長たけた騎手きしゅの安藤あんどうに調教ちょうきょうを依頼いらい。安藤あんどうの腕うでで以もって、ダイワスカーレットに減量げんりょうを促うながしていた。併あわせて脚あしに負担ふたんをかけないように慎重しんちょうに「馬うまなり」調教ちょうきょう、強度きょうどではなく回数かいすうを稼かせぐことで体重たいじゅうを絞しぼりにかかった。安藤あんどうが騎乗きじょうするようになって2週間しゅうかん後ご、停滞ていたいを脱だっして516キロまで減量げんりょうすることに成功せいこうする。その姿すがたを見みて松田まつだは、レース3週間しゅうかん前まえに天皇てんのう賞しょう（秋あき）出走しゅっそうを決断けつだんする。

この年としの天皇てんのう賞しょう（秋あき）出走しゅっそうメンバーは14頭とういずれも重おも賞しょう優勝ゆうしょう経験けいけんがあった。そんな中なか、前年ぜんねん有馬ありま記念きねん以来いらい約やく10か月げつぶり5回かい目めとなるウオッカとの対決たいけつとなった。有馬ありま記念きねん後ごのウオッカは、ダイワスカーレットが断念だんねんしたドバイ遠征えんせいを実施じっしし4着ちゃく。帰国きこくしてヴィクトリアマイルでエイジアンウインズに届とどかず2着ちゃく。東京とうきょう優ゆう駿しゅん優勝ゆうしょう以降いこうは丸まる一いち年ねん勝利しょうりから遠とおざかっていたが、安田やすだ記念きねんで復活ふっかつしGI級きゅう競走きょうそう3勝しょう目め。夏休なつやすみを経へて秋あき初戦しょせんの毎日まいにち王冠おうかんにて、スーパーホーネットにアタマ差さ届とどかず2着ちゃくとなっていた。東京とうきょう優ゆう駿しゅんを始はじめ東京とうきょうでの良りょう績が目立めだつウオッカと、東京とうきょう初はつ参戦さんせんとなるダイワスカーレットという組くみ合あわせだった。ウオッカは2.7倍ばいの1番ばん人気にんき、ダイワスカーレットは3.6倍ばいの2番ばん人気にんき。ライバル同士どうし2番ばん人気にんきまでを占しめたが「二に強きょう」とはならず、3番ばん人気にんきが4.1倍ばいで続つづく「三さん強きょう」となっていた。3番ばん人気にんきのディープスカイは、毎日まいにち杯はい、NHKマイルカップ、東京とうきょう優ゆう駿しゅん、神戸こうべ新聞しんぶん杯はいを4連勝れんしょう中ちゅうの3歳さい牡馬ぼばだった。

ディープスカイ

7か月げつぶりの出走しゅっそうとなった当日とうじつ、ダイワスカーレットは先さきの減量げんりょう、調教ちょうきょうのせいで気持きもちが高たかまってしまっていた。最終さいしゅう追おい切きり直後ちょくごは512キログラムだった体重たいじゅうが競走きょうそう前まえの計量けいりょうでは、498キログラムまで減量げんりょう。安藤あんどうは「今いままでは休やすむたびに落おち着つきを増ましていたのにあのときは全然ぜんぜん違ちがっていた。普段ふだんから気負きおいこんでいて、我慢がまんがきかない感かんじだった。頭あたまのいい馬うまだからきっと、自分じぶんで体からだを絞しぼりにかかっていたんじゃないかな。」と述懐じゅっかいしている。本来ほんらいなら返かえし馬ばで走はしる気きを高たかめるところ、装そう鞍くら所しょやパドックの時点じてんで既すでに気持きもちが高たかまってしまっていた。結局けっきょくスタート直前ちょくぜん、ゲート内ないでもその高たかまりが収おさまることはなかったという。

展開てんかい

展開てんかい図ず

4枠わく7番ばんからスタート。安藤あんどうはこの時とき「徐々じょじょに、スーッとかそくしてくいつもとは全然ぜんぜん違ちがって、スタートを切きったら一気いっきにトップスピードに入はいっちゃった」という。トップスピードで以もってハナを奪取だっしゅし、単騎たんきで逃にげてしまった。そのまま向むこう正面しょうめんに入はいり、安藤あんどうは「これじゃあ絶対ぜったいにもたない」と覚悟かくごしていた。これまでレースでは見みせなかった暴走ぼうそうする姿すがたを、阿部あべ珠樹たまきは「素直すなおな優等生ゆうとうせいが、はじめて少すこし短みじかいスカートをはいて、反抗はんこうの気配けはいを見みせた」と表現ひょうげんしている。

おまけに向むこう正面しょうめんでは、ウオッカと同おなじ角かく居きょ厩舎きゅうしゃの14番ばん人気にんきトーセンキャプテンが接近せっきんして来きていた。逃にげ馬ばならば、本来ほんらいここでペースを落おとし、終盤しゅうばんで使つかう脚あしを温存おんぞんするのがセオリーだったが、捨すて身みのトーセンキャプテンに後うしろから突つっつかれて、セオリーを破やぶらざるを得えなかった。11秒びょう台だいのラップを連発れんぱつしながら前半ぜんはん1000メートルを58.7秒びょうで通過つうかするハイペース。トーセンキャプテンは最終さいしゅうコーナーで既すでに一いち杯はい、脱落だつらくしていた。スタートからここまで安藤あんどうは「悪わるいリズムで走はしってしまった」という。そうして迎むかえた最後さいごの直線ちょくせんでは、馬場ばばの最もっとも内側うちがわに位置いちして逃にげ切ぎりを狙ねらった。すぐに先行せんこう勢ぜいを失速しっそくさせることには成功せいこうしたが、中団ちゅうだん外がいから並ならんで追おい込こむディープスカイ、ウオッカが迫せまって来くる。安藤あんどうはここまでのレース運はこびから「3着ちゃくが精しらげ一いち杯はいだと思おもった」という。

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2008年ねん 天皇てんのう賞しょう（秋あき）（GI） レース映像えいぞう JRA公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが
2008年ねん 天皇てんのう賞しょう（秋あき）（GI） レース映像えいぞう 関西かんさいテレビ競馬けいば公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが

三さん強きょう横よこ一線いっせん、内うちダイワスカーレット、真まん中なかディープスカイ、外そとウオッカで並ならび立たった。ほどなくしてハイペースが祟たたり、ダイワスカーレットの脚あしが鈍にぶって外そとの2頭とうが優勢ゆうせいとなった。ただし、外そとの2頭とうもまたハイペースの中団ちゅうだん追おい走はしが祟たたって脚あしを温存おんぞんできず、得意とくいの瞬発しゅんぱつ力りょくを使つかうことができなかった。誰だれも完全かんぜんに突つき抜ぬけることができないまま迎むかえた残のこり100メートルからは、劣勢れっせいのダイワスカーレットが盛もり返かえした。再ふたたび横よこ一線いっせん、3頭とう揃そろって脚あしが止とまって藻も掻かいていた。終おわりいには、後方こうほうでしっかり脚あしを温存おんぞんし発揮はっきする追おい込こみ勢ぜいカンパニーやエアシェイディの2頭とうが台頭たいとうし、三さん強きょうを脅おびやかすまでになっていた。ゴール手前てまえ、真まん中なかディープスカイが脱落だつらくして、カンパニーとエアシェイディに飲のみ込こまれる。ところが、内うちダイワスカーレットと外そとウオッカの2頭とうは並ならび立たったまま、先頭せんとうを争あらそい続つづけた。三さん強きょうと追おい込こみ勢ぜいの5頭とうが横よこ一線いっせんになって決勝けっしょう線せん、特とくにダイワスカーレットとウオッカは、盛もり返かえしたダイワスカーレットが「むしろ優勢ゆうせいと映うつる形勢けいせいで」（石田いしだ敏徳としのり）通過つうかした。遅おくれてカンパニーとディープスカイ、さらに遅おくれてエアシェイディが通過つうかする。

1位い2位い入線にゅうせんのダイワスカーレットとウオッカの優劣ゆうれつ、3位い4位い入線にゅうせんのカンパニーとディープスカイの優劣ゆうれつは写真しゃしん判定はんていに委ゆだねられ、大だい外そとエアシェイディの5位い入線にゅうせんだけが目視もくしで判断はんだんされる混戦こんせん。1999年ねんにスペシャルウィークが樹立じゅりつしたレースレコードよりも0.8秒びょう速はやい決着けっちゃくとなった。加くわえて1958年ねんセルローズ、ミスオンワード以来いらい、天皇てんのう賞しょう（秋あき）史上しじょう50年ねんぶりとなる牝馬ひんばワンツーフィニッシュと相成あいなった。入線にゅうせんから13分ふんが経過けいかして、ウオッカのハナ差さ、約やく2センチメートル先着せんちゃくとダイワスカーレットの敗退はいたいが確定かくてい。ダイワスカーレットからクビ差さ遅おくれて3着ちゃくディープスカイ、ディープスカイからハナ差さ遅おくれて4着ちゃくカンパニー、カンパニーからクビ差さ遅おくれて5着ちゃくエアシェイディだった。

評価ひょうかと回顧かいこ

2008年ねん天皇てんのう賞しょう（秋あき）入線にゅうせん直後ちょくご
青あお帽ぼう:ダイワスカーレット
橙だいだい帽ぼう:ウオッカ
白しろ帽ぼう（白しろ袖そで青あお二に本ほん輪わ）:ディープスカイ
桃もも帽ぼう:カンパニー
黒くろ帽ぼう（青あお袖そで）:エアシェイディ

この一いち戦せんを阿部あべ珠樹たまきは、「テンポイント、トウショウボーイ、グリーングラスの3頭とうが上位じょういを占しめた1977年ねんの有馬ありま記念きねん……31年ねん前まえのグランプリに匹敵ひってきするような20年ねん、30年ねんに一いち度どのレース」と表現ひょうげんしている。7か月げつの休やすみ明あけに加くわえて初はつの東京とうきょうコース、気持きもちが高たかぶりながらハイペースの逃にげ、それでいてレコード決着けっちゃくハナ差さの2着ちゃくのパフォーマンスは、ダイワスカーレットの評価ひょうかをさらに高たかめた。とりわけ最後さいごの直線ちょくせんで見みせた盛もり返かえしは「奇跡きせきのような脚あし」（井崎いざき脩五郎しゅうごろう）「驚嘆きょうたんすべき粘ねばり腰こし」（石田いしだ敏徳としのり）「信しんじられないような巻まき返かえし」（阿部あべ珠樹たまき）と表あらわされている。

安藤あんどうは「もし、道中どうちゅうまともに走はしらせることができていたなら、結果けっかは違ちがっていたはずなんです」「あんなチグハグなレースになったら、普通ふつうはウオッカとディープスカイにアッサリやられてしまうはずなんですよね。にもかかわらず、あれだけの接戦せっせんに持もち込こんだわけですから……とにかく尋常じんじょうな馬うまじゃない……強つよさに一番いちばん驚おどろいたのは、もしかすると乗のっていたボク自身じしんかもしれません」と述のべている。また松田まつだは、道中どうちゅうで角かく居きょのトーセンキャプテンに絡からまれた件けんを「あれが（ダイワ）スカーレットを潰つぶすためのチーム戦術せんじゅつだとしたら、やってはいけないこと」としながらも、トーセンキャプテンが来こなければ平均へいきんペースになり、瞬発しゅんぱつ力りょくに秀ひいでたウオッカやディープスカイ有利ゆうりの展開てんかいになっていただろうとして「2センチのハナ差さではなくもっと大おおきな着ちゃく差さで敗やぶれていたのかもしれません」と述のべている。

三さん強きょうが揃そろって止とまりながら、2センチメートル差さのワンツーに収束しゅうそくするまで、ダイワスカーレットの盛もり返かえしとウオッカの差さし返がえしが発生はっせいしていた。これはウオッカが、ディープスカイを下くだして先頭せんとうに躍おどり出でた瞬間しゅんかんに、自身じしんが勝利しょうりしたと考かんがえて「気きを抜ぬいた」ことが原因げんいんだった。その間あいだにダイワスカーレットが盛もり返かえして2頭とう横よこ一線いっせん。それからウオッカが、新あらたな負まかすべき相手あいてを認識にんしきして、2センチメートル突つき出でたところが決勝けっしょう線せんだった。2頭とう横よこ一線いっせんとなって以降いこうは、盛もり返かえしたダイワスカーレットが常つねに前まえ、入線にゅうせん直後ちょくごもダイワスカーレットが前まえだった。それでもウオッカの先着せんちゃくに至いたったのは、決勝けっしょう線せんの瞬間しゅんかんだけウオッカが前まえに出でていたためだった。ウオッカとダイワスカーレットの対決たいけつは結果けっか的てきにこれが最後さいごとなる。3歳さい春はるから5戦せんして2勝しょう2敗はい1分ぶんの五ご分ふんだった。（ウオッカとのライバル関係かんけいについての詳細しょうさいは、ウオッカ (競走きょうそう馬ば)#ダイワスカーレットを、競走きょうそうに関かんする詳細しょうさいは、第だい138回かい天皇てんのう賞しょうを参照さんしょう。）

有馬ありま記念きねん

天皇てんのう賞しょう（秋あき）の後のちはジャパンカップを見送みおくり、12月28日にちの有馬ありま記念きねんに臨のぞむ。天皇てんのう賞しょう（秋あき）の気持きもちの高こうぶりはなく良よい状態じょうたい、順調じゅんちょうに調整ちょうせいできていたという。ファン投票とうひょうでは、13万まん6千せん票ひょうを集あつめたウオッカが1位い、ダイワスカーレットは13万まん1千せん票ひょうの2位いだった。天皇てんのう賞しょう（秋あき）1着ちゃく3着ちゃくのウオッカ、ディープスカイは、いずれもジャパンカップに進すすんで2着ちゃく、3着ちゃく。距離きょりや中山なかやまの適性てきせいから有馬ありま記念きねんを2頭とうとも回避かいひしていた。キャプテントゥーレは長期ちょうき離脱りだつ中ちゅう、オウケンブルースリは回避かいひ、アドマイヤジュピタは引退いんたいしており、この年としのクラシック優勝ゆうしょう馬ば、天皇てんのう賞しょう春秋しゅんじゅう優勝ゆうしょう馬ばが揃そろってグランプリを欠場けつじょう。特とくにウオッカの不ふ参戦さんせんにより、アカネテンリュウが出走しゅっそうを取とり消けした1971年ねん以来いらい37年ねんぶりとなる「ファン投票とうひょう1位いを欠かいたグランプリ」となった。それでも、ジャパンカップで上述じょうじゅつ2頭とうを下くだしたスクリーンヒーロー、前年ぜんねんの有馬ありま記念きねん優勝ゆうしょう馬ばマツリダゴッホ、これが引退いんたいレースのメイショウサムソン、1歳さい年上としうえの牝馬ひんば二に冠かん馬ばカワカミプリンセスなどが集結しゅうけつ。出走しゅっそうメンバーは「有馬ありま記念きねんというレースのステータスに相応ふさわしいもの」（石田いしだ敏徳としのり）だったという。そんな中なか、ダイワスカーレットは、2.6倍ばいの1番ばん人気にんきの支持しじ。マツリダゴッホ4.4倍ばい、スクリーンヒーロー6.4倍ばい、メイショウサムソン8.4倍ばいで続つづいていた。

映像えいぞう外部がいぶリンク
2008年ねん 有馬ありま記念きねん（GI） レース映像えいぞう JRA公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが
2008年ねん 有馬ありま記念きねん（GI） レース映像えいぞう 関西かんさいテレビ競馬けいば公式こうしきYouTubeチャンネルによる動画どうが

8枠わく13番ばんからスタート、ハナを奪取だっしゅし逃にげに出でた。ラップタイム11秒びょう台だいを連発れんぱつしながら直線ちょくせんコースを走行そうこうし、第だい1、2コーナーで13秒びょう台だいに緩ゆるめたが、ハイペースで先導せんどうした。向むこう正面しょうめん後半こうはんからペースアップして再ふたたび11秒びょう台だいで進行しんこう。第だい3コーナーでは2、3番手ばんてのメイショウサムソン、カワカミプリンセスからマークを受うけてプレッシャーをかけられたが、それらを下くだして先頭せんとうを守まもった。続つづいて後方こうほう待機たいきからまくるスクリーンヒーローとマツリダゴッホが接近せっきんするが直線ちょくせんに入はいって失速しっそく。それを尻目しりめにもう一いち伸のび、先行せんこう馬ばも差さし馬ばも潰つぶして独走どくそう状態じょうたいとなった。最後さいご方かたの大だい外そとから単勝たんしょう90.2倍ばいの14番ばん人気にんきアドマイヤモナークが唯一ゆいいつ追おい上あげを見みせたが、ダイワスカーレットの先頭せんとうを脅おびやかすものではなかった。安藤あんどうが右手みぎてを天てんに掲かかげる余裕よゆうを見みせながら入線にゅうせん。アドマイヤモナークに1馬身ばしん4分ぶんの3差さをつけて優勝ゆうしょうを果はたす。

GI級きゅう4勝しょう目め。1959年ねんガーネット、1960年ねんスターロッチ、1971年ねんトウメイ以来いらい37年ねんぶり、史上しじょう4頭とう目めとなる牝馬ひんばによる有馬ありま記念きねん優勝ゆうしょうと相成あいなった。1959年ねんは、不良ふりょう馬場ばばの中なか、当時とうじとしては画期的かっきてきだった外そとラチ沿ぞいからガーネットの差さし切ぎり勝利しょうり。1960年ねんは、後方こうほうとの差さがある2番手ばんて追おい走はし、展開てんかいに恵めぐまれたスターロッチの押おし切きり勝利しょうり。1971年ねんは、馬うまインフルエンザが流行りゅうこうして有力ゆうりょく馬ばが続々ぞくぞく出走しゅっそうを取消とりけして6頭とう立たて、1番ばん人気にんきメジロムサシも馬うまインフルエンザ感染かんせんが噂うわさされるほどの体調たいちょう不良ふりょう、そんな最中さいちゅうの最さい後方こうほう待機たいきトウメイの追おい込こみ勝利しょうり。石田いしだ敏徳としのりは過去かこの3例れいには、牝馬ひんばを優勝ゆうしょうたらしめる「追おい風かぜ」の存在そんざいがあったが、ダイワスカーレットの逃にげ切きり優勝ゆうしょうは、有馬ありま記念きねんに相応ふさわしい面子めんつを真正面ましょうめんから下くだす「敗者はいしゃにどんな弁解べんかいも許ゆるさないもの……堂々どうどうの横綱よこづな相撲すもう」だったと評価ひょうか。この点てんから、ダイワスカーレットを「そうした先輩せんぱいたち（過去かこ3頭とう）とは一線いっせんを画かくしていた（カッコ内ない補足ほそく加筆かひつ者しゃ）」存在そんざいだと表あらわしている。

その他た、安藤あんどうと松田まつだは有馬ありま記念きねん初はつ優勝ゆうしょう。安藤あんどうは、中山なかやまの芝しば初はつ優勝ゆうしょうであり、中山なかやまの重じゅう賞しょうはマンボツイストで制せいした2002年ねん、ダートのマーチステークス（GIII）以来いらいの優勝ゆうしょうだった（詳細しょうさいは、ダイワスカーレット#安藤あんどう勝己かつみの鬼門きもんを参照さんしょう）。またスカーレットブーケは、産さん駒こまのJRA-GI9勝しょう（ダイワメジャー5勝しょう、ダイワスカーレット4勝しょう）に到達とうたつ。これまで最多さいた記録きろくで並ならび立たっていたパシフィカス、産さん駒こまのJRA-GI8勝しょう（ビワハヤヒデ3勝しょう、ナリタブライアン5勝しょう）を追おい抜ぬいて単独たんどく最多さいた記録きろくを樹立じゅりつした。ダイワスカーレットに1馬身ばしん4分ぶんの3遅おくれて14番ばん人気にんきアドマイヤモナーク、さらに4分ぶんの3馬身ばしん遅おくれて10番ばん人気にんきエアシェイディが入線にゅうせん。2着ちゃく3着ちゃくのワイド2万まん8200円えん、3頭とうの三さん連れん複ふく19万まん2500円えん、三さん連れん単たん98万まん5580円えんは、いずれもその式しき別べつの有馬ありま記念きねん史上しじょう最高さいこう払戻金はらいもどしきん額がくを記録きろくしている。

この年としのJRA賞しょう、ダイワスカーレットはどれにも選出せんしゅつされなかった。年度ねんど代表だいひょう馬ば選考せんこうでは全ぜん300票ひょう中ちゅう79票ひょうを集あつめてウオッカの次点じてん。最優秀さいゆうしゅう4歳さい以上いじょう牝馬ひんば選考せんこうでは、104票ひょうを集あつめてウオッカの次点じてんだった。また天皇てんのう賞しょう（秋あき）での接戦せっせんと有馬ありま記念きねんの優勝ゆうしょうが評価ひょうかされ、特別とくべつ賞しょうを授与じゅよするか否ひかが選考せんこう委員いいん会かいに持もち上あがった。審議しんぎされた結果けっか、全ぜん8票ひょう中ちゅう、賛成さんせいが4人にんに留とどまって選考せんこう委員いいん会かいの推薦すいせんが得えられず、受賞じゅしょうを逃のがしている。

引退いんたい - 幻まぼろしの海外かいがい転戦てんせん計画けいかく

5歳さいとなった2009年ねん、改あらためてドバイワールドカップを目標もくひょうに設定せってい。再ふたたびフェブラリーステークスをステップに遠征えんせいする予定よていだった。しかしその1週間しゅうかん前まえ追おい切ぎり後ご、左前ひだりまえ脚あしの熱ねつが治おさまらず、再ふたたびフェブラリーステークス回避かいひが決定けってい。翌日よくじつにはそれが浅あさ屈こごめ腱けん炎えんだと判明はんめいしてドバイ遠征えんせいも断念だんねんし、遂ついには引退いんたいが決定けっていした。2月18日にち付づけでJRAの競走きょうそう馬ば登録とうろくを抹消まっしょうされる。通算つうさん成績せいせき12戦せん8勝しょう2着ちゃく4回かい、デビューから連れん対たい（2着ちゃく以内いない）し続つづける「生涯しょうがい連れん対たい」を達成たっせい。シンザンの19戦せん15勝しょう2着ちゃく4回かいに次つぐ、史上しじょう第だい2位いの「生涯しょうがい連れん対たい」記録きろくとなった。

松田まつだは有馬ありま記念きねん直後ちょくご、翌よく2009年ねんの野望やぼうを「海外かいがいで3つ勝かちたい……一番いちばん強つよい馬うまが集あつまるレースにぶつけたい」と述のべていた。ドバイ、イギリス、アメリカ、日本にっぽんの4か国こくを転戦てんせんするつもりだったという。フェブラリーステークスからドバイワールドカップミーティングに参戦さんせんした後のちは、イギリスへ。6月のアスコット競馬けいば場じょう・ロイヤルアスコット開催かいさいのプリンスオブウェールズステークス（G1、芝しば2000メートル）に参戦さんせん。それから秋あきは、前年ぜんねん2着ちゃくの天皇てんのう賞しょう（秋あき）あるいはアメリカ遠征えんせい・サンタアニタ競馬けいば場じょうで行おこなわれるブリーダーズカップ・ワールド・サラブレッド・チャンピオンシップのブリーダーズカップ・クラシック（G1、ダート2000メートル）に参戦さんせん、終おわりいに日本にっぽんの有馬ありま記念きねんで連覇れんぱを狙ねらう。という一いち年間ねんかんの計画けいかくだった。この計画けいかくは、吉田よしだと大城おおしろの意向いこうによるものが大おおきかった。中なかでも、大城おおしろは天皇てんのう賞しょう（秋あき）出走しゅっそうを特とくに望のぞんでいたという。そこで吉田よしだは大城おおしろに対たいし「春はるは私わたしの夢ゆめに挑戦ちょうせんさせて下ください」と提案ていあん。そうして吉田よしだの夢ゆめであるプリンスオブウェールズステークスが予定よていに組くみ入いれられていた。吉田よしだによれば、秋あきのブリーダーズカップ参戦さんせんプランは、プリンスオブウェールズステークス優勝ゆうしょうが条件じょうけんだったという。しかしこれらの計画けいかくは、故障こしょう引退いんたいによりすべて幻まぼろしとなった。

繁殖はんしょく牝馬ひんば時代じだい

引退いんたい後ごは、社台やしろだいファームで繁殖はんしょく牝馬ひんばとなった。初年度しょねんどは、チチカステナンゴと交配こうはい。2010年ねん3月がつ6日にちに初はつ仔この牝馬ひんばを生産せいさんした。それから2020年ねんまでに10番ばん仔こまで生産せいさん、すべて牝馬ひんばだった。この間あいだに、特とくにキングカメハメハやノヴェリスト、ロードカナロアとは複数ふくすう年ねん交配こうはいし、複数ふくすう頭あたまの牝めすの仔こを得えている。2021年ねんの11番ばん仔こでようやく牡馬ぼば（父ちち:ロードカナロア）を生産せいさんした。

産さん駒こまは、大城おおしろ敬三けいぞうが2020年ねんに死去しきょするまで所有しょゆうした。7番ばん仔こまで「ダイワ」の冠かんむり名めいを用もちいた競走きょうそう馬ば名めいである。初はつ仔こダイワレーヌ（父ちち:チチカステナンゴ）は勝利しょうりを挙あげられなかったが、2番ばん仔こダイワレジェンド（父ちち:キングカメハメハ）は2戦せん目めの未み勝利しょうり戦せんで勝かち上あがり。通算つうさん4勝しょうで準じゅんオープンクラスまで出世しゅっせした。3番ばん仔こダイワミランダ（父ちち:ハービンジャー）は産さん駒こまで初はじめて新しん馬うま戦せんで勝かち上あがり。4番ばん仔こダイワウィズミ―（父ちち:キングカメハメハ）は中央ちゅうおう未み勝利しょうりの後のち、南関東みなみかんとう公営こうえい競馬けいばで2勝しょう。5番ばん仔こダイワエトワール（父ちち:エンパイアメーカー）は3勝しょうを挙あげ、1000万まん円えん以下いかまで出世しゅっせ。以上いじょう5頭とうは競走きょうそう馬ば引退いんたい後ご、いずれも繁殖はんしょく牝馬ひんばとして供用きょうようされている。

6番ばん仔こダイワメモリー（父ちち:ノヴェリスト）は新しん馬うま戦せんを含ふくめて3勝しょうして、1600万まん円えん以下いか（途中とちゅうで3勝しょうクラスに改称かいしょう）まで出世しゅっせ。2020年ねん7月がつ11日にちの福島ふくしま競馬けいば場じょう、テレビユてれびゆー福島ふくしま賞しょう（3勝しょうクラス）の競走きょうそう中ちゅうに急性きゅうせい心不全しんふぜんで死亡しぼうした。7番ばん仔こダイワクンナナは、中途ちゅうとで大城おおしろ敬三けいぞうから大城おおしろ正一しょういちへ、さらにダイワスカーレットの共同きょうどうオーナーだった社台やしろだいファーム代表だいひょうの吉田よしだ照あきら哉に継承けいしょうされた。ダイワクンナナは、新しん馬うま戦せんを含ふくめて3勝しょうし中央ちゅうおう競馬けいばを退しりぞいている。8番ばん仔こ以降いこうは、吉田よしだ照あきら哉の妻つま吉田よしだ千津ちづや、社台やしろだい傘下さんかのクラブ法人ほうじん有限ゆうげん会社かいしゃ社台やしろだいレースホースが所有しょゆうしている。産さん駒こまの競走きょうそう馬ば名めいに「ダイワ」が用もちいられなくなった。8番ばん仔こアンブレラデート（父ちち:エイシンフラッシュ）は、2021年ねんのフィリーズレビュー（GII）で入いれ着ぎを果はたした。

2023年ねん12月31日にちに繁殖はんしょく牝馬ひんばを引退いんたい。

競走きょうそう成績せいせき

以下いかの内容ないようは、netkeiba.comおよびJBISサーチの情報じょうほうに基もとづく。

競走きょうそう日び	競馬けいば場じょう	競走きょうそう名めい	格かく	距離きょり （馬場ばば）	頭あたま 数かず	枠わく 番ばん	馬うま 番ばん	オッズ （人気にんき）	着ちゃく順じゅん	タイム （上のぼり3F）	着ちゃく差さ	騎手きしゅ	斤量きんりょう [kg]	1着ちゃく馬ば （2着ちゃく馬ば）	馬うま体重たいじゅう [kg]
2006.11.19	京都きょうと	2歳さい新しん馬うま		芝しば2000m（良りょう）	12	3	3	1.8（1人ひとり）	1着ちゃく	2:04.1 (35.0)	-0.3	安藤あんどう勝己かつみ	54	（コスモグルミット）	496
2006.12.16	中京ちゅうきょう	中京ちゅうきょう2歳さいS	OP	芝しば1800m（良りょう）	8	1	1	2.2（1人ひとり）	1着ちゃく	1:47.8 (33.7)	-0.1	安藤あんどう勝己かつみ	54	（アドマイヤオーラ）	488
2007.01.08	京都きょうと	シンザン記念きねん	JpnIII	芝しば1600m（良りょう）	10	7	8	1.9（1人ひとり）	2着ちゃく	1:35.3 (33.7)	-0.2	安藤あんどう勝己かつみ	56	アドマイヤオーラ	490
2007.03.03	阪神はんしん	チューリップ賞しょう	JpnIII	芝しば1600m（良りょう）	16	4	7	2.8（2人ふたり）	2着ちゃく	1:33.7 (33.9)-	-0.0	安藤あんどう勝己かつみ	54	ウオッカ	488
2007.04.08	阪神はんしん	桜花おうか賞しょう	JpnI	芝しば1600m（良りょう）	18	8	18	5.9（3人にん）	1着ちゃく	1:33.7 (33.9)	-0.2	安藤あんどう勝己かつみ	55	（ウオッカ）	486
2007.09.16	阪神はんしん	ローズS	JpnII	芝しば1800m（良りょう）	14	4	5	1.6（1人ひとり）	1着ちゃく	1:46.1 (33.6)	-0.1	安藤あんどう勝己かつみ	55	（ベッラレイア）	490
2007.10.14	京都きょうと	秋あき華はな賞しょう	JpnI	芝しば2000m（良りょう）	18	7	13	2.8（2人ふたり）	1着ちゃく	1:59.1 (33.9)	-0.2	安藤あんどう勝己かつみ	55	（レインダンス）	484
2007.11.11	京都きょうと	エリザベス女王じょおう杯はい	GI	芝しば2200m（良りょう）	13	5	7	1.9（1人ひとり）	1着ちゃく	2:11.9 (34.1)	-0.1	安藤あんどう勝己かつみ	54	（フサイチパンドラ）	484
2007.12.23	中山なかやま	有馬ありま記念きねん	GI	芝しば2500m（稍やや）	15	4	7	8.1（5人にん）	2着ちゃく	2:33.8 (35.8)	-0.2	安藤あんどう勝己かつみ	53	マツリダゴッホ	486
2008.04.06	阪神はんしん	産経さんけい大阪おおさか杯はい	GII	芝しば2000m（良りょう）	11	7	9	2.0（1人ひとり）	1着ちゃく	1:58.7 (34.8)	-0.1	安藤あんどう勝己かつみ	56	（エイシンデピュティ）	498
2008.11.02	東京とうきょう	天皇てんのう賞しょう（秋あき）	GI	芝しば2000m（良りょう）	17	4	7	3.6（2人ふたり）	2着ちゃく	1:57.2 (35.2)	-0.0	安藤あんどう勝己かつみ	56	ウオッカ	498
2008.12.28	中山なかやま	有馬ありま記念きねん	GI	芝しば2500m（良りょう）	14	8	13	2.6（1人ひとり）	1着ちゃく	2:31.5 (36.4)	-0.3	安藤あんどう勝己かつみ	55	（アドマイヤモナーク）	494

繁殖はんしょく成績せいせき

	馬うま名めい	誕生たんじょう年ねん	性せい	毛色けいろ	父ちち	厩舎きゅうしゃ	馬主ばしゅ	戦績せんせき	主おもな成績せいせき	供用きょうよう	出典しゅってん
初はつ仔こ	ダイワレーヌ	2010年ねん	牝めす	黒くろ鹿毛かげ	チチカステナンゴ	松田まつだ国こく英えい（栗東りっとう）	大城おおしろ敬三けいぞう	4戦せん0勝しょう		繁殖はんしょく
第だい2仔こ	ダイワレジェンド	2011年ねん	牝めす	栗毛くりげ	キングカメハメハ	国枝くにえだ栄さかえ（美浦みほ）		22戦せん4勝しょう	1000万まん下か2勝しょう
第だい3仔こ	ダイワミランダ	2012年ねん	牝めす	栗毛くりげ	ハービンジャー			14戦せん2勝しょう
第だい4仔こ	ダイワウィズミー	2013年ねん	牝めす	栗毛くりげ	キングカメハメハ	松田まつだ国こく英えい（栗東りっとう） →立花たちばな伸しん（大井おおい） →川島かわしま正一しょういち（船橋ふなばし）		21戦せん2勝しょう
第だい5仔こ	ダイワエトワール	2014年ねん	牝めす	黒くろ鹿毛かげ	エンパイアメーカー	鹿戸しかと雄一ゆういち（美浦みほ）		11戦せん3勝しょう	500万まん下か2勝しょう
第だい6仔こ	ダイワメモリー	2015年ねん	牝めす	栗毛くりげ	ノヴェリスト	国枝くにえだ栄さかえ（美浦みほ）		16戦せん3勝しょう	テレ玉杯ぎょくはい（1000万まん下か）	抹消まっしょう
	（不ふ受胎じゅたい）	2016年ねん			キングズベスト
第だい7仔こ	ダイワクンナナ	2017年ねん	牝めす	鹿毛かげ	ノヴェリスト	池上いけがみ昌和まさかず（美浦みほ） →荒山あらやま勝徳かつのり（小林こばやし）	大城おおしろ敬三けいぞう →吉田よしだ照あきら哉	16戦せん3勝しょう		繁殖はんしょく
第だい8仔こ	アンブレラデート	2018年ねん	牝めす	鹿毛かげ	エイシンフラッシュ	角すみ居きょ勝彦かつひこ（栗東りっとう） →藤原ふじわら英昭ひであき（栗東りっとう）	吉田よしだ千津ちづ	11戦せん2勝しょう	フィリーズR4着ちゃく	繁殖はんしょく
第だい9仔こ	スカーレットオーラ	2019年ねん	牝めす	鹿毛かげ	ロードカナロア	中ちゅう内田うちだ充たかし正ただし（栗東りっとう）	（有ゆう）社台やしろだいレースホース	3戦せん0勝しょう		抹消まっしょう
第だい10仔こ	スカーレットアリア	2020年ねん	牝めす	鹿毛かげ		安田やすだ翔しょう伍ご（栗東りっとう）		2戦せん0勝しょう		抹消まっしょう
第だい11仔こ	グランスカーレット	2021年ねん	牡おす	鹿毛かげ		大久保おおくぼ龍りゅう志こころざし（栗東りっとう） →盛本もりもと信春のぶはる（西脇にしわき）		6戦せん0勝しょう		現役げんえき
	（不ふ受胎じゅたい）	2022年ねん			ブリックスアンドモルタル
	（死産しざん）	2023年ねん

• 情報じょうほうは、2024年ねん10月がつ6日にち時点じてん。

エピソード

ゲート克服こくふく

松田まつだは、サンデーサイレンスには「肉食にくしょく獣じゅうのような『きつさ』」という精神せいしん面めんの弱点じゃくてんがあり、それは産さん駒こまにも受うけ継つがれて「気持きもちで走はしるところ」があったという。それでも孫まご世代せだいになれば、その血ちが薄うすまり、全体ぜんたい的てきにその弱点じゃくてんが改善かいぜん方向ほうこうにあると考かんがえていた。しかし松田まつだ厩舎きゅうしゃのサンデーサイレンスの孫まご、アグネスタキオン産さん駒こまには、精神せいしん面めんの弱点じゃくてんが正まさしく受うけ継つがれていて、特とくにゲートに手てを焼やいていた。ある「走はしる馬うま」には「精神せいしん的てきに切きれて、ゲートの中なかでひっくり返かえるんじゃないか」と心配しんぱいしたこともあった。この経験けいけんから松田まつだは、スピードがあり「走はしる馬うま」のアグネスタキオン産さん駒こま、それに神経質しんけいしつで有名ゆうめいだったダイワメジャーの妹いもうと、心配しんぱいな父系ふけい母系ぼけいを受うけ継つぐダイワスカーレットに、時間じかんをかけて入念にゅうねんにゲート練習れんしゅうをさせていた。これは、オーナー大城おおきに了解りょうかいを得えたうえでの松田まつだの決断けつだんだった。

松田まつだ国こく英えい

父系ふけいや兄あにの傾向けいこうに従したがってダイワスカーレットは、ゲートの一部いちぶが身体しんたいに触ふれただけで錯乱さくらんしたり、周囲しゅうい特とくに背後はいごを異常いじょうに気きにする精神せいしんの持もち主ぬしだった。それを矯正きょうせいするために、「相撲すもうのまわしようなもの『ヒラヒラ』」をトモ（後こう躯むくろ）につけてゲート練習れんしゅうを行おこない、何なにかが触ふれても錯乱さくらんしないように慣なれさせていった。通常つうじょう、入にゅう厩うまやから10日にちほどで合格ごうかくするゲート試験しけんを、ダイワスカーレットは2カ月かげつを要ようして合格ごうかく。それから2か月げつ後ご、入にゅう厩うまやから4か月げつ後ごにデビューを迎むかえている。ただし初戦しょせんは、出遅でおくれ気味ぎみの「ジャンプスタート」だった。しかし2戦せん目めに五ご分ぶんのスタートを切きることができ、やがてダイワスカーレットの「武器ぶき」（石田いしだ敏徳としのり）にすり替かわっていった。松田まつだは「スタートを上手じょうずに切きれるようになったのは、アンカツさん（安藤あんどう勝己かつみ）の技術ぎじゅつによるところも大おおきかった」という。安藤あんどうは「……スタートが速はやかったね。デビューのころはあまりスタートがうまくなくて、2、3戦せん目めぐらいからうまくなってきたんです……。ただ、そのうちにスタートが抜群ばつぐんにうまくなって、安心あんしんして乗のれるようになりましたね」と述のべている。

安藤あんどう勝己かつみの鬼門きもん

中山なかやま競馬けいば場じょう直線ちょくせんコースの坂さか。

安藤あんどう勝己かつみにとって、中山なかやま競馬けいば場じょうは鬼門きもんとされていた。安藤あんどうはかつて地方ちほう競馬けいば、笠松かさまつ競馬けいば所属しょぞくの騎手きしゅだった。小回こまわりの競馬けいば場じょう、ダート競走きょうそうが主流しゅりゅうの地方ちほう競馬けいばは、スタートから前方ぜんぽうに位置いちして直線ちょくせんで早はやめに押おし切きるという勝かちパターンとなっていた。しかし中山なかやまは、小回こまわりだが、直線ちょくせんコースに急きゅうな坂さかを備そなえているという安藤あんどうに言いわせれば「トリッキー」な競馬けいば場じょうだった。早はやめに押おし切きりを図はかっても坂さかで失速しっそく、かといって溜ためても直線ちょくせんが短みじかく大だい逆転ぎゃくてんの望のぞみは薄うすく、直線ちょくせんでは、ある程度ていどの適切てきせつな位置いちを確保かくほするのが理想りそうだった。

安藤あんどうは、地方ちほうの勝かちパターンが身みに染しみていて、中央ちゅうおう移籍いせき後ごはそんな中山ちゅうざんに苦手にがて意識いしきを持もち続つづけていたという。中山なかやまの重じゅう賞しょうは、2002年ねんマーチステークスのマンボツイストが最初さいしょで最後さいご、それから5年ねん以上いじょう勝利しょうりから遠とおざかり、芝しば重しげる賞しょうは勝利しょうりできていなかった。そして2008年ねん、中山なかやまの有馬ありま記念きねんに参戦さんせんする。ダイワスカーレットは、そんな不安ふあんを持もつ安藤あんどうを導みちびいていた。トリッキーなコースを先頭せんとうであり続つづけ、中山なかやまの芝しば重しげる賞しょう初はつ勝利しょうりをもたらした。入線にゅうせん時じの安藤あんどうは、普段ふだん見みせないガッツポーズを披露ひろうしている。

最終さいしゅう的てきに安藤あんどうは、その後ご2013年ねん1月がつ末まつまで騎手きしゅを続つづけ、中央ちゅうおう競馬けいばには10年ねん所属しょぞくしている。騎手きしゅ人生じんせいで中央ちゅうおう競馬けいばの重じゅう賞しょうは移籍いせき前まえも併あわせて、JRA-GI22勝しょうを含ふくめた81勝しょうしているが、中山なかやまの重じゅう賞しょうはこの有馬ありま記念きねんが最後さいご、通算つうさん2勝しょうに留とどまった。

特徴とくちょう

"逃にげ"

ダイワスカーレットは、性格せいかくの問題もんだいから仕方しかたなく逃にげていたわけではなかった。島田しまだ明宏あきひろは「ただ、走はしるのが速はやく、それもスタートしてすぐトップスピードに乗のる能力のうりょくがあり、また、その能力のうりょくを出だしたい、速はやく走はしりたい――という気持きもちを抑おさえきれなかったので、他馬たばより前まえに行いくことになった」と分析ぶんせきしている。また逃にげて強つよい印象いんしょうを与あたえたサイレンススズカと比較ひかくし、島田しまだは「サイレンススズカは、他馬たばがついてくることのできない領域りょういきに『逃にげて』いたように見みえたが、（ダイワ）スカーレットの走はしりは純粋じゅんすいに『ただスピードに乗のっていただけ』」だったと述のべている。ダイワスカーレットは逃にげ切きり勝利しょうりこそ挙あげているが、大敗たいはいするリスクや他たを差さし置おいて逃にげ切きった際さいの興奮こうふんが「逃にげ馬ば」とは違ちがって存在そんざいしなかったという。翻ひるがえって逃にげて連れん対たいし続つづけるという相反あいはんする二ふたつが同居どうきょする「逃にげ馬ば」だった。島田しまだはダイワスカーレットを「『普通ふつう』ではなかった」と評ひょうし、「この馬うまを『逃にげ馬ば』と呼よぶことに少すくなからぬ抵抗ていこうを感かんじる」と述のべている。

適性てきせい

吉田よしだは「2000メートルというのが（ダイワ）スカーレットが一番いちばん強つよい距離きょり……守備しゅび範囲はんいは1600メートルから2400メートル」とし、天皇てんのう賞しょう（春はる）3200メートルについては「ちょっと合あわない」と述のべている。また吉田よしだは「あの馬うまは、牝めすとか牡おすとかいう次元じげんを超こえている」とも述のべている。一方いっぽう安藤あんどうは「走はし法ほうから考かんがえても、2000くらいの距離きょりがベスト……気性きしょう的てきにもマイルから2000くらい」と述のべている。

評価ひょうか

定量ていりょう的てき評価ひょうか

ファン投票とうひょうによる評価ひょうか

年とし	競走きょうそう名めい	順位じゅんい	票数ひょうすう	成績せいせき	出典しゅってん
3歳さい	宝塚たからづか記念きねん	15位い	2万まん1177票ひょう	回避かいひ
	有馬ありま記念きねん	4位い	7万まん4134票ひょう	2着ちゃく
4歳さい	宝塚たからづか記念きねん	4位い	3万まん9234票ひょう	回避かいひ
	有馬ありま記念きねん	2位い	13万まん1460票ひょう	1着ちゃく

レーティングによる評価ひょうか

国際こくさい的てき評価ひょうか

ワールド・サラブレッド・レースホース・ランキング ワールド・サラブレッド・ランキング
年度ねんど	順位じゅんい	レート	部門ぶもん		コラム別べつ					出典しゅってん
			距	場ば	S	M	I	L	E
2007	149位い	115	L	芝しば				115
2008	52位い	119	L	芝しば				119
〔注ちゅう〕距離きょりおよびコラムの「SMILE」は、それぞれ下記かきの距離きょり区分くぶんの略号りゃくごう。 S = Sprint（短距離たんきょり）: 1000 - 1300 m、北米ほくべいは1000 - 1599 m M = Mile（マイル）: 1301 - 1899 m、北米ほくべいは1600 - 1899 m I = Intermediate（中距離ちゅうきょり）: 1900 - 2100 m L = Long（長距離ちょうきょり）: 2101 - 2700 m E = Extended（超ちょう長距離ちょうきょり）: 2701 m -

日本にっぽん国内こくないの評価ひょうか

JPNサラブレッドランキング

年度ねんど

部門ぶもん

順位じゅんい

レート ポンド (lb)

キログラム 換算かんさん (kg)

コラム別べつ

出典しゅってん

備考びこう

齢よわい

場ば

S

M

I

L

E

2007

2歳さい

芝しば

17位い

104

47.0

2008

3歳さい

芝しば

2位い

115

52.0

113

114

115

2009

4歳さい上じょう

芝しば

4位い

119

54.0

119

血統けっとう

ダイワスカーレットの血統けっとう			（血統けっとう表ひょうの出典しゅってん）
父系ふけい	サンデーサイレンス系けい（ヘイロー系けい）
父ちち アグネスタキオン 1998 栗毛くりげ	父ちちの父ちち *サンデーサイレンス 1986 青あお鹿毛かげ	Halo	Hail to Reason
			Cosmah
		Wishing Well	Understanding
			Mountain Flower
	父ちちの母はは アグネスフローラ 1987 鹿毛かげ	*ロイヤルスキー	Raja Baba
			Coz o'Nijinsky
		アグネスレディー	*リマンド
			イコマエイカン
母はは スカーレットブーケ 1988 栗毛くりげ	母ははの父ちち *ノーザンテースト 1971 栗毛くりげ	Northern Dancer	Nearctic
			Natalma
		Lady Victoria	Victoria Park
			Lady Angela
	母ははの母はは *スカーレットインク 1971 栗毛くりげ	Crimson Satan	Spy Song
			Papila
		Consentid	Beau Max
			La Menina
母系ぼけい(F-No.)	スカーレットインク系けい(FN:4-d)
5代だい内ないの近親きんしん交配こうはい	Almahmoud5×5、Lady Angela5･4（母はは内ない）
出典しゅってん

• 半はん姉あね・ダイワルージュ、半はん兄あに・ダイワメジャー（いずれも父ちち:サンデーサイレンス）をはじめ、兄あに姉あねにオープン馬ば多数たすう。ダイワルージュの産さん駒こまにダイワファルコン（福島ふくしま記念きねん）。
• 母はは・スカーレットブーケはGIII4勝しょう。
• 父ちちの母はは・アグネスフローラもダイワスカーレットと同おなじく生涯しょうがい連れん対たいの桜花おうか賞しょう馬うまである
• 近親きんしんに下記かきの活躍かつやく馬ば。
  • スカーレットリボン（母ははの全ぜん姉あね、報知ほうち杯はい4歳さい牝馬ひんば特別とくべつ勝利しょうり）
  • サカラート、ヴァーミリアン、キングスエンブレム、ソリタリーキング兄弟きょうだい（母ははの全ぜん姉あね・スカーレットローズの孫まご）
  • トーセンジョウオー（祖母そぼ・スカーレットインクの曾孫そうそん、エンプレス杯はい等とう交流こうりゅう重じゅう賞しょうを5勝しょう）

参考さんこう文献ぶんけん

• 江面えづら弘ひろ也「トウメイとテンメイ 運命うんめいの母子ぼし」『名馬めいばを読よむ2』三さん賢けん社しゃ、2019年ねん8月がつ30日にち（第だい1刷さつ）、ISBN 4908655146

• 『Sports Graphic Number』（文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう）
  • 2009年ねん10月がつ1日にち号ごう
    • 島田しまだ明宏あきひろ「【ドキュメント・天皇てんのう賞しょう秋あき 2008】ウオッカ vs.ダイワスカーレット 1分ふん57秒びょう2+13分ぶんの伝説でんせつ」
      • 同どう内容ないよう転載てんさい『競馬けいばノンフィクション選集せんしゅう 名馬めいば堂々どうどう。』（『Sports Graphic Number PLUS』2021年ねん11月がつ号ごう）、2021年ねん11月24日にち。
      • 同どう内容ないようWeb版ばんあり『Sports Graphic Number Web』、2009年ねん10月がつ8日にち。

• 『優ゆう駿しゅん』（日本中央競馬会にっぽんちゅうおうけいばかい）
  • 2007年ねん3月がつ号ごう
    • 優ゆう駿しゅん編集へんしゅう部ぶ「【杉本すぎもと清きよしの競馬けいば談義だんぎ 262】ゲスト松田まつだ国こく英えい調教ちょうきょう師し」
  • 2007年ねん4月がつ号ごう
    • 阿部あべ珠樹たまき「【YUSHUN Point of View】アドマイヤオーラが弥生やよい賞しょうを、ウオッカがチューリップ賞しょうを制せいす!」
    • 吉沢よしざわ譲治じょうじ「【2007年ねん皐月さつき賞しょう&桜花おうか賞しょうプレビュー】アグネスタキオン ダイワスカーレット」
    • 平松ひらまつさとし「【優ゆう駿しゅんダブルインタビュー】安藤あんどう光ひかり影かげ×安藤あんどう勝己かつみ」
  • 2007年ねん5月がつ号ごう
    • 奥おく岡おか幹みき浩ひろし「【YUSHUN Point of View】ダイワスカーレットが桜花おうか賞しょう制覇せいは。」
  • 2007年ねん6月がつ号ごう
    • 吉沢よしざわ譲治じょうじ「【クローズアップ】ダイワスカーレット "緋色ひいろ"の血ちを継つぎし者しゃ」
  • 2007年ねん10月がつ号ごう
    • 津田つだ照之てるゆき「【秋あきのGIシリーズ開幕かいまく!】桜花おうか賞しょう馬ば ダイワスカーレット」
    • 島田しまだ明宏あきひろ「【優ゆう駿しゅんロングインタビュー】松田まつだ国こく英えい 広ひろがる未来みらいを夢見ゆめみて」
  • 2007年ねん11月がつ号ごう
    • 平松ひらまつさとし「【ヘッドライン】"強つよい3歳さい牝馬ひんば"同士どうしの秋あきの大だい一番いちばんは、ダイワスカーレットが圧巻あっかんの走はしりで完勝かんしょう」
    • 島田しまだ明宏あきひろ「今年ことしの3歳さい牝馬ひんばはどれだけ強つよいのか」
  • 2007年ねん12月がつ号ごう
    • 島田しまだ明宏あきひろ「【ドキュメント 第だい12回かい秋あき華はな賞しょう】ダイワスカーレット "タイプの違ちがう最強さいきょう馬ば"2頭とうによるライバル物語ものがたり 牝馬ひんば三さん冠かん戦せんはスカーレットの2戦せん2勝しょうで幕まくを閉とじた」
    • 島田しまだ明宏あきひろ「【ドキュメント 第だい32回かいエリザベス女王じょおう杯はい】ダイワスカーレット ウオッカ出走しゅっそう取消とりけしの衝撃しょうげきと歴代れきだい女王じょおうを完封かんぷうした逃にげ切きり劇げき」
  • 2008年ねん1月がつ号ごう
    • 平松ひらまつさとし「【第だい52回かい有馬ありま記念きねん 対決たいけつの瞬間しゅんかん】選えらばれ師し注目ちゅうもく馬ば6頭とう ダイワメジャー」
    • 島田しまだ明宏あきひろ「【第だい52回かい有馬ありま記念きねん 対決たいけつの瞬間しゅんかん】選えらばれし注目ちゅうもく馬ば6頭とう ダイワスカーレット」
    • 江面えづら弘ひろ也「【第だい52回かい有馬ありま記念きねん 対決たいけつの瞬間しゅんかん】選えらばれし注目ちゅうもく馬ば6頭とう ウオッカ」
  • 2008年ねん2月がつ号ごう
    • 「【2007年ねんJRA賞しょう決定けってい】年度ねんど代表だいひょう馬ばにアドマイヤムーン」
    • 島田しまだ明宏あきひろ「【クローズアップ】第だい52回かい有馬ありま記念きねん 波乱はらんの結果けっかとなったグランプリは 待まち受うける『世界せかい戦せん』のプロローグ」
  • 2008年ねん3月がつ号ごう
    • 村本むらもと浩平こうへい「【優ゆう駿しゅんノンフィクション】スカーレットブーケ 一族いちぞくをさらなる繁栄はんえいに導みちびいた 名めい牝めすの知しられざる20年ねん」
  • 2008年ねん5月がつ号ごう
    • 島田しまだ明宏あきひろ「【YUSHUN Point of View】ダイワスカーレットvsウオッカ」
  • 2008年ねん9月がつ号ごう
    • 石田いしだ敏徳としのり「【有力ゆうりょく馬ばたちのいま、そして決戦けっせんへ…】ダイワスカーレット そのポテンシャルに託たくされた使命しめい」
  • 2008年ねん11月がつ号ごう
    • 石田いしだ敏徳としのり「【第だい138回かい天皇てんのう賞しょう（秋あき）プレビュー】ダイワスカーレット&安藤あんどう勝己かつみ騎手きしゅ ジョッキーが果はたした」
  • 2008年ねん12月がつ号ごう
    • 阿部あべ珠樹たまき「【第だい138回かい天皇てんのう賞しょう（秋あき）詳報しょうほう】最後さいごの100メートルで示しめされた 3頭とうのフィジカルな能力のうりょくと精神せいしん力りょく」
    • 江面えづら弘ひろ也「【第だい138回かい天皇てんのう賞しょう（秋あき）詳報しょうほう】ウオッカ 2000メートル先さきに待まっていた2cm差さの栄冠えいかん」
    • 石田いしだ敏徳としのり「【第だい138回かい天皇てんのう賞しょう（秋あき）詳報しょうほう】ダイワスカーレット あり得えないはずの二にの脚あし」
    • 井崎いざき脩五郎しゅうごろう「【第だい138回かい天皇てんのう賞しょう（秋あき）クロスレビュー】世紀せいきの一いち戦せんに思おもうところ 奇跡きせきのような脚あし」
  • 2009年ねん2月がつ号ごう
    • 石田いしだ敏徳としのり「【クローズアップ】ダイワスカーレット レースを完全かんぜん掌握しょうあくする圧巻あっかんの走はしりで37年ねんぶりの『重おもい歴史れきしの扉とびら』を開ひらいた」
    • 「【2008年ねんJPNサラブレッド・ランキング発表はっぴょう!】4歳さい以上いじょう芝しば ウオッカ、ダイワスカーレットなど各かくコラムで牝馬ひんばが活躍かつやく」
    • 橋はし浜はま保子やすこ（JRDB）「【アグネスタキオン徹底てってい分析ぶんせき】アグネスタキオン産さん駒こま『ここが凄すごい』"走はしる産さん駒こま"の馬うま体たいに迫せまる」
  • 2009年ねん3月がつ号ごう
    • 阿部あべ珠樹たまき「【至高しこうのライバル対決たいけつ】ウオッカ vs ダイワスカーレット 古こ馬うまになって初はじめての、待まちに待まった最強さいきょう牝馬ひんば対決たいけつ」
    • 街まち風かぜ隆雄たかお「【優ゆう駿しゅんロングインタビュー】吉田よしだ照あきら哉『血ちはまたよみがえる』」
  • 2009年ねん4月がつ号ごう
    • 石田いしだ敏徳としのり「【引退いんたい特別とくべつ企画きかく】ダイワスカーレット 名手めいしゅが語かたる、名めい牝めすの実像じつぞう」
  • 2011年ねん1月がつ号ごう
    • 石田いしだ敏徳としのり「【第だい55回かい有馬ありま記念きねん直前ちょくぜん大だい特集とくしゅう】キーワードで振ふり返かえる有馬ありま記念きねん『牝馬ひんばの優勝ゆうしょう』」
  • 2015年ねん11月がつ号ごう
    • 島田しまだ明宏あきひろ「【未来みらいに語かたり継つぎたい名馬めいば物語ものがたり（9）】ウオッカと激闘げきとうを演えんじたターフの大だい女優じょゆう ダイワスカーレットの美学びがく」
    • 河村かわむら清明きよあき「【優ゆう駿しゅんたちのルーツを辿たどる（9）】社台やしろだいファーム 時じを経へて大輪たいりんを咲さかせた一粒ひとつぶの種たね」
  • 2019年ねん11月がつ号ごう
    • 金きむ宮みや肴さかな「【優ゆう駿しゅん列伝れつでん 秋あきに輝かがやいた名めい牝めすたち】2008年ねん有馬ありま記念きねん ダイワスカーレット 37年ねんぶり4頭とう目めの快挙かいきょを達成たっせい」
  • 2020年ねん3月がつ号ごう
    • 横手よこて礼一れいいち「【決定けってい!このレースがすごい!!】1984-2019桜花おうか賞しょう 第だい1位い 2007年ねんダイワスカーレット 初はじめてウオッカを破やぶった日ひ」
  • 各号かくごう「【重じゅう賞しょうプレイバック】出走しゅっそう重じゅう賞しょう10競走きょうそう」
    • 2007年ねん3月がつ号ごう（シンザン記念きねん）
    • 2007年ねん5月がつ号ごう（チューリップ賞しょう）
    • 2007年ねん6月がつ号ごう（桜花おうか賞しょう）
    • 2007年ねん11月がつ号ごう（ローズステークス）
    • 2007年ねん12月がつ号ごう（秋あき華はな賞しょう）
    • 2008年ねん1月がつ号ごう（エリザベス女王じょおう杯はい）
    • 2008年ねん2月がつ号ごう（有馬ありま記念きねん）
    • 2008年ねん6月がつ号ごう（産経さんけい大阪おおさか杯はい）
    • 2009年ねん2月がつ号ごう（有馬ありま記念きねん）

関連かんれん項目こうもく

• 連れん対たい率りつ100%の競走きょうそう馬ば一覧いちらん

外部がいぶリンク

• 競走きょうそう馬ば成績せいせきと情報じょうほう netkeiba、スポーツナビ、JBISサーチ、Racing Post
• ダイワスカーレット - 競走きょうそう馬ばのふるさと案内あんない所しょ