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トビハゼ

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トビハゼ
分類ぶんるい
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : じょうひれつな Actinopterygii
: スズキ Perciformes
: ハゼ Gobioidei
: ハゼ Gobiidae
: オキスデルシス Oxudercinae
ぞく : トビハゼぞく Periophthalmus
Bloch et Schneider,1801
たね : トビハゼ P. modestus
学名がくめい
Periophthalmus modestus
Cantor, 1842[1]
英名えいめい
Mudskipper
図版ずはん

トビハゼとべはぜ)は、スズキハゼトビハゼぞく Periophthalmus分類ぶんるいされるハゼ総称そうしょうだが、日本にっぽんではとくにそのなか一種いっしゅ P. modestusす。干潟ひかたどろうえまわさかなとして有名ゆうめいである。

特徴とくちょう生態せいたい

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トビハゼの成体せいたい体長たいちょうは10 cmほど。からだはい褐色かっしょくちいさなしろてんおおきな黒点こくてんのまだら模様もようがある。眼球がんきゅう頭頂とうちょう左右さゆうがほぼせっし、平坦へいたん干潟ひがた見渡みわたすのに適応てきおうしている。むねひれのつけには筋肉きんにく発達はったつする。おなじく干潟ひがたうえまわさかなムツゴロウ Boleophthalmus pectinirostris もいるが、トビハゼの体長たいちょうはムツゴロウの半分はんぶんくらいである。またかくひれのおおきさもからだたいしてちいさい。

どろ干潟ひかたゴカイ捕食ほしょくするトビハゼ

水域すいいきどろ干潟ひがた生息せいそくする。はるからあきにかけて干潟ひがたじょう活動かつどうするが、ふゆあなでじっとしている。干潟ひがたじょうではむねひれほか尾鰭おびれ使つかったジャンプでも移動いどうする。ちかづくとカエルのような連続れんぞくジャンプで素早すばやまわるので、とらえるのは意外いがいむずかしい。しょくせい肉食にくしょくせいで、干潟ひがたじょう甲殻こうかくるい多毛たもうるいなどを捕食ほしょくする。しおちてくると、水切みずきのように水上すいじょうをピョンピョンと連続れんぞくジャンプして水際みずぎわ陸地りくちまでげてくる習性しゅうせいがあり、和名わみょうはこれに由来ゆらいする。

通常つうじょう魚類ぎょるいえら(えら)呼吸こきゅうおこない、代謝たいしゃによって発生はっせいするアンモニア水中すいちゅう放出ほうしゅつする。このため空気くうきちゅうでは呼吸こきゅうができないうえにアンモニアが体内たいない蓄積ちくせきされのう障害しょうがいなどをこす。しかし、トビハゼは皮膚ひふ呼吸こきゅう能力のうりょくたかうえにアンモニアをアミノ酸あみのさんえる能力のうりょくがあり、空気くうきちゅうでの活動かつどう可能かのうである。

しょくせい

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ちいさなカニやゴカイなどをエサとする[2]

くちなかみずたくわえて、流体りゅうたい力学りきがくてきした(hydrodynamic tongue)として使つか獲物えものらえる[3]

繁殖はんしょく

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産卵さんらんは6-8がつで、オスはくちからどろいて泥中でいちゅうあな縄張なわばをつくり、メスをんで産卵さんらんさせる[4][5]孵化ふかしたぎょ海中かいちゅうおよ水中すいちゅう浮遊ふゆう生活せいかつをし、全長ぜんちょう15 mmほどに成長せいちょうすると干潟ひがた定着ていちゃくする。寿命じゅみょうは1-3ねん[4][6]生後せいご1ねん全長ぜんちょう5 cmとなるが、オスのだい部分ぶぶんはここで繁殖はんしょく参加さんかし、繁殖はんしょくんでしまう。一方いっぽう、メスは生後せいご2ねん全長ぜんちょう7-9 cmまで成長せいちょう繁殖はんしょく参加さんかする。

別名べつめい

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ピョンピョンハゼ(高知こうち)、ネコムツ(九州きゅうしゅう地方ちほう)、カッチャン、カッチャムツ、カッタイムツ(佐賀さが)、カタハゼ、ムツゴロ(熊本くまもと)など。南西諸島なんせいしょとうでは、ほんたねきんえん別種べっしゅミナミトビハゼとを区別くべつせず、どちらもトントンミーと[7]

標準ひょうじゅん和名わみょう「トビハゼ」は東京とうきょうおよび和歌山わかやまでのである。どろうえまわることから、英語えいごでは"mudskipper"(マッドスキッパー)とばれる。日本にっぽんでも観賞かんしょうぎょとして流通りゅうつうするさいはマッドスキッパーとばれることがおおい。

分布ぶんぷ

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藤前ふじまえ干潟ひがたねたり匍匐ほふく前進ぜんしんするトビハゼ

日本にっぽん朝鮮半島ちょうせんはんとう中国ちゅうごく台湾たいわん分布ぶんぷし、日本にっぽんでは東京とうきょうわんから沖縄おきなわ本島ほんとうまで各地かくちどろ干潟ひがたられる。分布ぶんぷ北限ほくげん東京とうきょうわん江戸川えどがわ放水ほうすい河口かこう谷津たにつ干潟ひがたである[8][9]千葉ちばけん生息せいそくいきでは、ふくろいし試験しけん施工しこうによるトビハゼへの影響えいきょう調査ちょうさおこなわれている[10]市川いちかわ人工じんこう干潟ひがた分布ぶんぷ確認かくにんされている[11]多摩川たまがわの汽水域すいいき生息せいそく確認かくにん調査ちょうさされている[12]名古屋なごやこう藤前ふじまえ干潟ひがた生息せいそくする[13]大阪おおさかうちでの生息せいそくじょうきょう不明ふめい[14]。なおムツゴロウ日本にっぽんでは有明海ありあけかい八代海やつしろかいだけに分布ぶんぷするのでこのてんでも区別くべつできる。

葛西かさい臨海りんかいすいぞくえんが、2004ねんにトビハゼの繁殖はんしょくしょう受賞じゅしょうした。姫路ひめじ市立しりつ水族館すいぞくかんのとじま臨海りんかい公園こうえん水族館すいぞくかん長崎ながさきペンギン水族館すいぞくかんいおワールドかごしま水族館すいぞくかんなどで飼育しいく展示てんじされている。

利用りよう

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ひと地域ちいきによっては食用しょくようにされる。かつて諫早いさはやわん南岸なんがん地方ちほうではよるねむっているトビハゼを灯火ともしびおどかし、あみんで漁獲ぎょかくし、煮干にぼしにして素麺そうめん出汁だしなどにしていた。中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくやすしなみ周辺しゅうへんではトビハゼるいはよくべられており、おも豆腐とうふともてスープとされる。広東かんとんしょうではからにして酒肴さけさかなやおかずにされることおおい。台湾たいわんでもスープにされることおおい。

観賞かんしょうぎょとしても流通りゅうつうしている。

たね保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか

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環境省かんきょうしょうレッドリストじゅん絶滅ぜつめつ危惧きぐ指定していされている[15]

じゅん絶滅ぜつめつ危惧きぐ(NT)環境省かんきょうしょうレッドリスト

日本にっぽん以下いか都道府県とどうふけんで、レッドリストの指定していけている[16]

環境かんきょう汚染おせん埋立うめたてなどによるどろ干潟ひがた消失しょうしつで、とく都市とし近郊きんこう生息せいそく減少げんしょうしている。日本にっぽん環境省かんきょうしょう作成さくせいした汽水・淡水魚たんすいぎょるいレッドリストでは、1999ねんはん絶滅ぜつめつおそれのある地域ちいき個体こたいぐん(LP)として「東京とうきょうわんのトビハゼ」「沖縄おきなわ本島ほんとうのトビハゼ」が掲載けいさいされたが、2007ねんはんでは日本にっぽんさん全体ぜんたいじゅん絶滅ぜつめつ危惧きぐ(NT)として指定していされた。

トビハゼぞく

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ミナミトビハゼ P. argentilineatus
P. gracilis東南とうなんアジアに分布ぶんぷ

南西諸島なんせいしょとうにはトビハゼとともミナミトビハゼ P. argentilineatus Valenciennes,1837 が分布ぶんぷする。だいいち背鰭せびれぜんはしとがくろせんえんられることなどでトビハゼと区別くべつできる。また、どろ干潟ひがたこのむトビハゼにたいし、ミナミトビハゼはマングローブ地帯ちたいこのみ、のぼって生活せいかつすることもある。環境省かんきょうしょうレッドリストには掲載けいさいされていないが、鹿児島かごしまけんレッドリストで「分布ぶんぷ特性とくせいじょう重要じゅうよう」として掲載けいさいされている。

トビハゼぞく Periophthalmus は、日本にっぽんさん2しゅほかにもインド太平洋たいへいようおよび西にしアフリカ熱帯ねったいゆたか帯域たいいきに15しゅ分布ぶんぷする。

  • P. argentilineatus (Valenciennes,1837 - ミナミトビハゼ[27]。インド太平洋たいへいようねつ帯域たいいき
  • P. barbarus (Linnaeus,1766) - 西にしアフリカ
  • P. chrysospilos Bleeker,1852 - ひがしインド洋いんどよう
  • P. darwini Larson et Takita,2004 - オーストラリア北部ほくぶ
  • P. gracilis Eggert,1935 - 東南とうなんアジア
  • P. kalolo Lesson,1831 - インド太平洋たいへいようねつ帯域たいいき
  • P. magnuspinnatus Lee, Choi et Ryu,1995 - 朝鮮半島ちょうせんはんとう
  • P. malaccensis Eggert,1935 - 東南とうなんアジア
  • P. minutus Eggert,1935 - 東南とうなんアジアからオーストラリア北部ほくぶ
  • P. modestus Cantor,1842 - トビハゼひがしアジア熱帯ねったいゆたか帯域たいいき
  • P. murdyi Larson et Takita,2004 - オーストラリア北部ほくぶ
  • P. novaeguineaensis Eggert,1935 - ニューギニアからオーストラリア北部ほくぶ
  • P. novemradiatus (Hamilton,1822) - 東南とうなんアジア
  • P. spilotus Murdy et Takita,1999 - スマトラ島すまとらとう
  • P. walailakae Darumas et Tantichodok,2002 - ひがしインド洋いんどよう
  • P. waltoni Koumans, 1941 - ペルシャ湾ぺるしゃわんからパキスタン
  • P. weberi Eggert,1935 - ニューギニアからオーストラリア北部ほくぶ

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Periophthalmus modestus Cantor, 1842” (英語えいご). FishBase. 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  2. ^ 日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかい. “初夏しょか干潟ひがたにトビハゼ 山口やまぐちきららはま自然しぜん観察かんさつ公園こうえん|NHK 山口やまぐちけんのニュース”. NHK NEWS WEB. 2024ねん2がつ11にち閲覧えつらん
  3. ^ Cressey, Daniel (2015-06). “「みずした」で獲物えものらえるトビハゼ”. Nature Digest 12 (6): 7–7. doi:10.1038/ndigest.2015.150607. ISSN 1880-0556. https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v12/n6/%E3%80%8C%E6%B0%B4%E3%81%AE%E8%88%8C%E3%80%8D%E3%81%A7%E7%8D%B2%E7%89%A9%E3%82%92%E6%8D%95%E3%82%89%E3%81%88%E3%82%8B%E3%83%88%E3%83%93%E3%83%8F%E3%82%BC/63792. 
  4. ^ a b トビハゼ” (PDF). 有明海ありあけかいとう環境かんきょう情報じょうほう研究けんきゅうネットワーク. 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  5. ^ 山口やまぐち 千鳥浜ちどりはま”. さわやか自然しぜんひゃくけいNHK (2011ねん11月6にち). 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  6. ^ トビハゼ”. 須磨すま水族館すいぞくかん. 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  7. ^ 名護なご自然しぜん トントンミー 名護なご
  8. ^ トビハゼ”. 市川いちかわ. 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  9. ^ スズキハゼ 絶滅ぜつめつのおそれのある地域ちいき個体こたいぐん(LP)”. 環境省かんきょうしょう. 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  10. ^ トビハゼへの分布ぶんぷじょうきょう” (PDF). 千葉ちばけん. 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  11. ^ ふくろいし試験しけん施工しこうによるトビハゼへの影響えいきょう調査ちょうさ” (PDF). 千葉ちばけん環境かんきょう生活せいかつ自然しぜん保護ほご建設けんせつ技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ (2009ねん3がつ26にち). 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  12. ^ 五明ごみょう美智男みちお (2006ねん3がつ31にち). “多摩川たまがわ河口かこう干潟ひがたにおけるトビハゼの生息せいそく環境かんきょうかんする調査ちょうさ研究けんきゅう” (PDF). とうきゅう環境かんきょう浄化じょうか財団ざいだん. 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  13. ^ 藤前ふじまえ干潟ひがたもの図鑑ずかん”. 環境省かんきょうしょう中部ちゅうぶ地方ちほう環境かんきょう事務所じむしょ. 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  14. ^ トビハゼ”. 大阪おおさか水生すいせい生物せいぶつセンター. 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  15. ^ 動物どうぶつ絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅ情報じょうほう検索けんさく(トビハゼ)”. 生物せいぶつ多様たようせい情報じょうほうシステム (2007ねん8がつ3にち). 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  16. ^ 日本にっぽんのレッドデータ検索けんさくシステム(トビハゼ)”. エンビジョン環境かんきょう保全ほぜん事務じむきょく. 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん - 「都道府県とどうふけん指定していじょうきょう一覧いちらんひょう表示ひょうじ」をクリックすると、出典しゅってんかく都道府県とどうふけんのレッドデータブックのカテゴリーめい一覧いちらん表示ひょうじされる。
  17. ^ 三重みえけんレッドデータブック2005(トビハゼ)”. 三重みえけん (2005ねん). 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  18. ^ 魚類ぎょるい図鑑ずかん・トビハゼ”. 神奈川かながわけん水産すいさん技術ぎじゅつセンター 内水うすいめん試験場しけんじょう. 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  19. ^ 福岡ふくおかけん希少きしょう野生やせい生物せいぶつ(トビハゼ)”. 福岡ふくおかけん (2011ねん). 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  20. ^ レッドデータおきなわ(動物どうぶつへん)・トビハゼ” (PDF). 沖縄おきなわけん. pp. 168 (2006ねん). 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  21. ^ 大阪おおさかレッドリスト2000・トビハゼ”. 大阪おおさか (2000ねん). 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  22. ^ 千葉ちばけんレッドデータブック動物どうぶつへん(2011ねん改訂かいていばん)・トビハゼ” (PDF). 千葉ちばけん. pp. 156 (2011ねん). 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  23. ^ 徳島とくしまけんばんレッドデータブック・トビハゼ” (PDF). 徳島とくしまけん. pp. 125 (2001ねん). 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  24. ^ トビハゼ”. 愛媛えひめけん. 2011ねん11月11にち閲覧えつらん
  25. ^ レッドデータブックおおいた・トビハゼ” (PDF). 大分おおいたけん. pp. 166 (2001ねん). 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  26. ^ 岡山おかやまけんばんレッドデータブック2009・トビハゼ” (PDF). 岡山おかやまけん. pp. 138 (2009ねん). 2012ねん9がつ23にち閲覧えつらん
  27. ^ 干潟ひがたねるミナミトビハゼ(156びょう”. NHK. 2022ねん6がつ17にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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