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トリオキシダン

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トリオキシダン
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 14699-99-1 チェック
PubChem 166717
ChemSpider 145859 チェック
ChEBI
Gmelin参照さんしょう 200290
特性とくせい
化学かがくしき H2O3
モル質量しつりょう 50.01 g mol−1
精密せいみつ質量しつりょう 50.000393930 g mol-1
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

トリオキシダン (えい: trioxidane) またはさん酸化さんか水素すいそ (えい: hydrogen trioxide)、さん酸化さんか水素すいそ (えい: dihydrogen trioxide) は、化学かがくしきが H2O3 または HOOOH とあらわされる不安定ふあんてい分子ぶんしである。これは水素すいそのポリ酸化さんかぶつの1つである。トリオキシダンは水溶液すいようえきなかみずいちじゅうこう酸素さんそ分解ぶんかいする。

このぎゃく反応はんのうであるみずへのいちじゅうこう酸素さんそ付加ふかは、一般いっぱんいちじゅうこう酸素さんそ不足ふそくのためほとんどこらない。しかし、生体せいたいによっていちじゅうこう酸素さんそからオゾン生成せいせいされることがられており、抗体こうたい触媒しょくばいによるいちじゅうこう酸素さんそからのトリオキシダンの生成せいせい推測すいそくされている[1]

合成ごうせい[編集へんしゅう]

トリオキシダンはオゾンと過酸化水素かさんかすいそ反応はんのうによって、あるいはみず電気でんき分解ぶんかいによって少量しょうりょうだが検出けんしゅつ可能かのうりょうることができる。よりおおきなりょうは、低温ていおんでの様々さまざま有機ゆうき溶媒ようばいなかにおける有機ゆうき還元かんげんざいとオゾンの反応はんのうによってられる。また、有機ゆうきヒドロトリオキシド ROOOH の分解ぶんかいによってもられる[2]

オゾンと過酸化水素かさんかすいそ反応はんのうは“ペルオキソンプロセス”としてられる。この混合こんごうぶつは、有機ゆうき化合かごうぶつ汚染おせんされた地下水ちかすい処理しょりするためにしばらくのあいだ使用しようされた。この反応はんのうでは H2O5生成せいせいする[3]

構造こうぞう[編集へんしゅう]

分光ぶんこう分析ぶんせきによって、トリオキシダンの O-O 結合けつごうちょう過酸化水素かさんかすいそのものよりみじかく、いがんだ直線ちょくせんがた構造こうぞう H-O-O-O-H をっていることがしめされた。多様たようりょうたいさんりょうたい存在そんざいするとされている。トリオキシダンは H+ と OOOH-電離でんりし、過酸化水素かさんかすいそよりわずかに酸性さんせいつよ[4]

反応はんのう[編集へんしゅう]

トリオキシダンは、室温しつおん有機ゆうき溶媒ようばいちゅうでは半減はんげんやく16ふん水溶液すいようえきちゅうでは半減はんげんすうミリびょう容易よういみずいちじゅうこう酸素さんそ分解ぶんかいする。有機ゆうきスルフィド反応はんのうしてスルホキシドあたえるが、反応はんのうについてはほとんどられていない。

最近さいきん研究けんきゅうによって、トリオキシダンはよくられたオゾン/過酸化水素かさんかすいそ混合こんごうぶつ抗菌こうきん特性とくせいかんして、信頼しんらいできる有効ゆうこう成分せいぶんであると確認かくにんされた。これら2つの化合かごうぶつ生体せいたいないにも存在そんざいしているため、人体じんたい免疫めんえきシステムがバクテリア攻撃こうげきするさい強力きょうりょくオキシダントとしてトリオキシダンを生成せいせいすることができるとされている[1][5]生物せいぶつ組織そしきちゅうでのトリオキシダンげんは、免疫めんえき細胞さいぼうによってつくられるいちじゅうこう酸素さんそみずはんおうである[2][6]。この反応はんのうはもちろん濃度のうどによっていずれかの方向ほうこうすすむ。

2005ねん、トリオキシダンはちょう音速おんそくジェットなかにおけるマイクロ分光ぶんこうほうによって検出けんしゅつされた。この分子ぶんし過酸化水素かさんかすいその O-O 結合けつごうちょう146.4 pm比較ひかくしてみじか結合けつごうちょう142.8 pmをもち、トランスはいをとっている。計算けいさん化学かがくによると、さらにおおくのくさりじょう酸素さんそ分子ぶんしあるいは水素すいそポリ酸化さんかぶつ存在そんざいし、低温ていおんのガスちゅうでは無限むげん酸素さんそくさりさえ存在そんざいすると予測よそくされている。この分光ぶんこうがくてき証拠しょうこによって、このようなタイプの分子ぶんしについてのほしあいだ空間くうかんにおける調査ちょうさおこなうことができる[4]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b Paul T. Nyffeler, Nicholas A. Boyle, Laxman Eltepu, Chi-Huey Wong, Albert Eschenmoser, Richard A. Lerner, Paul Wentworth Jr. (2004). “Dihydrogen Trioxide (HOOOH) Is Generated during the Thermal Reaction between Hydrogen Peroxide and Ozone”. Angewandte Chemie International Edition 43 (35): 4656–4659. doi:10.1002/anie.200460457. PMID 15317003. 
  2. ^ a b Božo Plesničar (2005). “Progress in the Chemistry of Dihydrogen Trioxide (HOOOH)”. Acta Chim. Slov 52: 1–12. 
  3. ^ Xin Xu and William A. Goddard III. Peroxonechemistry:Formation of H2O3 and ring-(HO2)(HO3) from O3/H2O2
  4. ^ a b Kohsuke Suma, Yoshihiro Sumiyoshi, and Yasuki Endo (2005). “The Rotational Spectrum and Structure of HOOOH”. J. Am. Chem. Soc. 127 (43): 14998–14999. doi:10.1021/ja0556530. PMID 16248618. http://pubs3.acs.org/acs/journals/doilookup?in_doi=10.1021/ja0556530. 
  5. ^ A Time-Honored Chemical Reaction Generates an Unexpected Product, News & Views, September 13, 2004
  6. ^ Roald Hoffmann (2004). “The Story of O”. American Scientist. http://www.americanscientist.org/issues/pub/the-story-of-o/5. 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]