テトラフルオロホウ酸さん

テトラフルオロホウ酸さん
IUPAC名めい テトラフルオロホウ酸さん
別称べっしょう フルオロホウ酸さん
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう	16872-11-0
EC番号ばんごう	240-898-3
国連こくれん/北米ほくべい番号ばんごう	1775
RTECS番号ばんごう	ED2685000
特性とくせい
化学かがく式しき	HBF4
モル質量しつりょう	87.81 g/mol
外観がいかん	無色むしょく透明とうめいの液体えきたい
融点ゆうてん	-90 °C
沸点ふってん	130 °C
水みずへの溶解ようかい度ど	混和こんわ性せい
酸さん解離かいり定数ていすう pKa	-0.4
構造こうぞう
結晶けっしょう構造こうぞう	N/A
危険きけん性せい
安全あんぜんデータシート(外部がいぶリンク)	External MSDS
EU分類ぶんるい	腐食ふしょく性せい(C)
EU Index	009-010-00-X
Rフレーズ	R34
Sフレーズ	(S1/2), S26, S27, S45
関連かんれんする物質ぶっしつ
その他たの陰かげイオン	ヘキサフルオロリン酸さん, トリフルオロメタンスルホン酸さん
関連かんれん物質ぶっしつ	テトラフルオロホウ酸さんカリウム
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・常つね圧あつ (100 kPa) におけるものである。

テトラフルオロホウ酸さん（テトラフルオロホウさん、tetrafluoroboric acid） はフルオロホウ酸さん (fluoboric acid、borofluoric acid) とも呼よばれる無機むき酸さん。 硝酸しょうさんに匹敵ひってきする強酸きょうさんで、弱じゃく配はい位い性せいの非ひ酸化さんか性せい共役きょうやく塩基えんきである。

有毒ゆうどくで皮膚ひふを侵おかす。毒物どくぶつ及および劇げき物ぶつ取締とりしまり法ほうにより、塩しおも含ふくめて劇げき物ぶつに指定していされている。法律ほうりつ上じょうの名前なまえは「硼弗化か水素すいそ酸さん」。

合成ごうせい法ほうと性質せいしつ

純じゅん物質ぶっしつは知しられておらず、水みずやジエチルエーテルなどの溶液ようえき（分子ぶんし式しき HBF₄に溶媒ようばい分子ぶんしが配はい位いした形かたち）で市販しはんされている。

水溶液すいようえきの形かたちでは、20 - 25°Cのフッ化か水素すいそ酸さん(HF)水溶液すいようえきにホウ酸さん(H₃BO₃)を溶解ようかいすることによって合成ごうせいできる。

${\ce {B(OH)3\ + 4 HF -> H3O^+ \ + BF4^- \ + 2 H2O}}$

部分ぶぶん的てきに加水かすい分解ぶんかいを受うけ、BF₃OH^- とフッ化か水素すいそを生しょうじる。水溶液すいようえきとして市販しはんされている。 無水むすい酢酸さくさんで処理しょりすることによって無む水溶液すいようえきを得えられる。

分子ぶんし構造こうぞう

テトラフルオロホウ酸さんとトリフェニルホスフィンオキシドの 1:2 錯体さくたいについてX線せん構造こうぞうが報告ほうこくされている。それによると、ホウ素ほうその上うえには歪いがんだ四面しめん体形たいけいに4個このフッ素ふっそが結合けつごうしている。そのうち1個いっこのフッ素ふっそ上じょうに水素すいそが結合けつごうしておりその水素すいそはさらに O=P の酸素さんそとも結合けつごうしている。B-F(H) の結合けつごう長ちょうは他たの3個この B-F 結合けつごうよりも長ながい。

アニオン(tetrafluoroborate, BF₄^-) はフッ素ふっその高たかい電気でんき陰性いんせい度どのために安定あんてい化かされた共役きょうやく塩基えんきで、求もとめ核かく性せい、塩基えんき性せい、および配はい位い性せいの低ひくいアニオンとしての性質せいしつから、通常つうじょうは不安定ふあんていなカチオン種しゅを塩しおとして単たん離はなれするための対たいアニオンとして、また有機ゆうき金属きんぞく反応はんのう試薬しやくとして、用もちいられている。

テトラフルオロホウ酸さん塩しお

ヘキサフルオロリン酸さんアニオン (PF₆^-) と並ならんで特徴とくちょう的てきな利用りよう法ほうが知しられている。

• テトラフルオロホウ酸さんナトリウム　最もっとも一般いっぱん的てきな塩しおとして市販しはんされている。
• テトラフルオロホウ酸さん銀ぎん(I) (silver(I) tetrafluoroborate, AgBF₄) 　有機ゆうきハロゲン化物ばけものを活性かっせい化かさせる添加てんか剤ざいとして、ウィリアムソン合成ごうせいなどで用もちいられる。ハロゲン原子げんしに銀ぎんイオンが配はい位いして脱だつ離はなれを助たすけ、ハロゲン化か銀ぎんの沈殿ちんでんとなる。
• テトラフルオロホウ酸さん銅どう(II)
• テトラフルオロホウ酸さんアンモニウム（テトラフルオロホウ酸さんテトラアルキルアンモニウム (tetraalkylammonium tetrafluoroborate, (R₄N⁺ BF₄^-, R = C₄H₉) など）　電気でんき化学かがく測定そくてい（サイクリックボルタンメトリーなど）において、有機ゆうき溶媒ようばいに加くわえる支持しじ塩しおとして用もちいられる。テトラフルオロホウ酸さんアニオンが、酸化さんかおよび還元かんげんを受うけにくいためである。
• テトラフルオロホウ酸さんニトロニウム (nitronium tetrafluoroborate, NO₂⁺ BF₄^-) 　芳香ほうこう族ぞく化合かごう物ぶつのニトロ化か反応はんのう試薬しやくに用もちいられる。固体こたいとして市販しはんされており、五ご酸化さんか二に窒素ちっそ#テトラフルオロホウ酸さんニトロイル を参照さんしょう。
• テトラフルオロホウ酸さんニトロシル (nitrosyl tetrafluoroborate, nitrosonium tetrafluoroborate, NO⁺ BF₄^-) 　芳香ほうこう族ぞく化合かごう物ぶつのニトロソ化か、あるいは酸化さんか反応はんのう試薬しやくに用もちいられる。同様どうように固体こたいとして市販しはんされている。
• テトラフルオロホウ酸さんトリアルキルオキソニウム（trialkyloxonium tetrafluoroborate, R₃O⁺ BF₄^-, R = CH₃, C₂H₅ など）　非常ひじょうに強力きょうりょくなアルキル化か剤ざいとして知しられ、メーヤワイン試薬しやく (Meerwein reagent) とも呼よばれている。

カリウム塩しおは難なん水溶すいよう性せいで、アルカリ金属きんぞくであるカリウムを特異とくい的てきに沈殿ちんでん分離ぶんりさせることができるため、肥料ひりょうなどの定量ていりょう試薬しやくとして用もちいられる。

芳香ほうこう族ぞくジアゾニウムイオンにテトラフルオロホウ酸さんを加くわえて得えられる塩しお (ArN₂⁺ BF₄^-) は、ジアゾニウム塩しおとしては特異とくい的てきに安定あんていである。これは、シーマン反応はんのう（熱ねつ分解ぶんかいによるフッ素ふっそ化か）の基質きしつとして用もちいる合成ごうせい中ちゅう間あいだ体たいともなる。