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ブラスバンド

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ブラスバンド編成へんせいによる演奏えんそう風景ふうけい

ブラスバンド(またはブラス・バンド金管きんかんバンドラッパたいえい: brass band)は、狭義きょうぎにおいて金管楽器きんかんがっき主体しゅたいとして編成へんせいされる楽団がくだん吹奏楽すいそうがくだんとはことなり、ブラスバンドは、一般いっぱん金管楽器きんかんがっきぐん打楽器だがっきぐんによって構成こうせいされ、通常つうじょう木管もっかん楽器がっきぐん弦楽器げんがっきぐんふくまない。ブラス (brass) は、金管楽器きんかんがっきしゅ材料ざいりょうである黄銅こうどう真鍮しんちゅう)のえいしょうである。

日本にっぽんにおいては、世間せけん一般いっぱんてき認識にんしき用法ようほうとしていわゆる吹奏楽すいそうがくだんとく学校がっこう職場しょくばもしくは市民しみん団体だんたいなどのアマチュア吹奏楽すいそうがくだんしてドイツblasは「く」の語幹ごかん沿かた「ブラスバンド」とうことがあり、そのため一方いっぽう純然じゅんぜんたるブラスバンド編成へんせい団体だんたいめい金管きんかんバンドうたうケースも見受みうけられる。ブラスバンドさかんなイギリスでは吹奏楽すいそうがくはウィンド・バンド (wind band) として明確めいかく区別くべつされている。

このほかつぎのような楽団がくだんときもちいられる。

ほんこうでは、おも日本にっぽんにおける「ブラス・バンド」について記述きじゅつし、楽団がくだんについては簡潔かんけつべるが、詳細しょうさい吹奏楽すいそうがくあるいはそれぞれ独立どくりつした項目こうもくゆずる。

日本にっぽんの「ブラスバンド」

欧文おうぶんで「Brass band」の使用しよう明治めいじから、「ブラス・バンド」のかたり使用しよう大正たいしょうからることができる。1924(大正たいしょう13)ねん伊庭いばたかし監修かんしゅう白眉はくび音楽おんがく辞典じてん』(白眉はくび出版しゅっぱんしゃ)では、「brass band」の説明せつめいに「真鍮しんちゅう楽器がっき音楽おんがくたい真鍮しんちゅう楽器がっきそうする楽士がくし集団しゅうだん元来がんらいはreed楽器がっきふくぜん軍楽隊ぐんがくたいとは区別くべつしたものである」と、brass band が金管楽器きんかんがっきのみのバンドをすという指摘してきがなされると同時どうじに、吹奏楽すいそうがく意味いみする一般いっぱんてき用法ようほう定着ていちゃくしつつあることをうかがわせる記述きじゅつがある。

昭和しょうわ初期しょきから救世きゅうせいぐん早慶そうけいせんにおける応援おうえん楽隊がくたいをブラス・バンドとんでいるれい新聞しんぶんられるようになる。満州まんしゅう事変じへんころから職場しょくば学校がっこう青年せいねんだんなどでアマチュア吹奏楽すいそうがくだんはじめ、これらの楽団がくだんして「ブラス・バンド」とぶことがひろまった。とくに、1933(昭和しょうわ8)ねん雑誌ざっし季刊きかんブラスバンド』(かんらく研究けんきゅうかい)の創刊そうかんと、1934(昭和しょうわ9)ねんの「アマチュア・ブラスバンド東海とうかい連盟れんめい」の結成けっせい昭和しょうわ10ねん山口やまぐち常光じょうこう『ブラスバンド教本きょうほん』(かんらく研究けんきゅうかい)の刊行かんこう、および日本にっぽん管楽器かんがっき(1970ねんげんヤマハ吸収きゅうしゅう合併がっぺい)、タナベ楽器がっきなどの広告こうこくに「ブラス・バンド」の表現ひょうげん使つかわれたことが普及ふきゅう後押あとおししたとおもわれる。なお、東京とうきょう府立ふりつだいいち商業しょうぎょう廣岡ひろおかきゅういちは、街頭がいとう行進こうしんなど軍楽隊ぐんがくたい演奏えんそうおもとする場合ばあいをブラス・バンド、芸術げいじゅつせい指向しこうしステージなどでの演奏えんそうおもとする学校がっこう楽団がくだんスクールバンド区別くべつしている。戦争せんそうはげしくなるにつれ、1940(昭和しょうわ15)ねんに『季刊きかんブラスバンド』の後続こうぞく吹奏楽すいそうがく:ブラスバンド・喇叭らっぱつづみたいニュース』が『吹奏楽すいそうがく月報げっぽう』と改題かいだいされるなど、ブラス・バンドのかたりもちいられなくなった。

季刊きかんブラスバンド』創刊そうかんごう掲載けいさいされた日本にっぽん管楽器かんがっき広告こうこくにある、当時とうじのブラス・バンドの編成へんせい以下いかとおり(正確せいかくには編成へんせい人数にんずう表記ひょうきかん数字すうじである)。

  • 6にん編成へんせい - クラリネットコルネットバリトンだい太鼓たいこ小太鼓こだいこシンバル
  • 7にん編成へんせい - クラリネット、2コルネット、バリトン、しょうバス、だい太鼓たいこ小太鼓こだいこ、シンバル
  • 10にん編成へんせい - 2クラリネット、2コルネット、バリトン、トロンボーンアルトしょうバス、だい太鼓たいこ小太鼓こだいこ、シンバル
  • 15にん編成へんせい - ピッコロ、3クラリネット、2コルネット、トランペット、バリトン、2トロンボーン、アルト、しょうバス、コントラバスチューバ)、だい太鼓たいこ小太鼓こだいこ、シンバル
  • 20にん編成へんせい - ピッコロ、フルートオーボエ(オーボーともいう)、4クラリネット、3コルネット、トランペット、バリトン、2トロンボーン、アルト、2しょうバス、コントラバス(チューバ)、だい太鼓たいこ小太鼓こだいこ、シンバル

戦後せんご、「ブラスバンド」の呼称こしょう復活ふっかつするが、昭和しょうわ30年代ねんだい吹奏楽すいそうがく関係かんけいしゃアメリカ視察しさつったことをきっかけに、吹奏楽すいそうがく連盟れんめい中心ちゅうしんとしたアマチュア吹奏楽すいそうがく軍楽隊ぐんがくたいてき方向ほうこうから芸術げいじゅつ指向しこうする方向ほうこうへと転換てんかんする。他方たほう英国えいこくしきブラスバンドがられるようになったこともあり、吹奏楽すいそうがく関係かんけいしゃあいだでは、木管もっかん楽器がっきふく編成へんせい吹奏楽すいそうがくだん音楽おんがくを「吹奏楽すいそうがく」とし、「ブラスバンド」は英国えいこくしきブラスバンドをすという認識にんしき一般いっぱんする。ただし、学校がっこうなどで「ブラスバンド」の名称めいしょう残存ざんそんしているところもあり、また一般いっぱんには旧来きゅうらい用法ようほう依然いぜんとしてのこっている。「ブラスバンド」をちぢめた「ブラバン」という略称りゃくしょう吹奏楽すいそうがく編成へんせいした用法ようほうであるが、とく学校がっこう吹奏楽すいそうがくにおいてはこの俗称ぞくしょうひろ認知にんちされている。

なお、日本語にほんごの「ブラスバンド」は、語源ごげんとして一般いっぱん英語えいごの brass band のおとをカナ表記ひょうきしたとかんがえられるが、ドイツ吹奏楽すいそうがくだん意味いみする Blasorchester のかたりがあり、日本にっぽんでは金管きんかんバンドではなく吹奏楽すいそうがくすことから、このかたりがなんらかのかたち影響えいきょうしているのではないかという指摘してきがなされている。

英国えいこくしきブラスバンド(英国えいこくふう金管きんかんバンド、ブリティッシュ・スタイル・ブラス・バンド)

イギリスでは、19世紀せいき初頭しょとうから労働ろうどうしゃあいだ金管楽器きんかんがっき打楽器だがっきによる楽団がくだん結成けっせいされ、コンテストがおこなわれるようになったことで編成へんせい画一かくいつした。このたね楽団がくだん英国えいこくではブラス・バンドとしょうする。英国えいこくふう金管きんかんバンドは、ヨーロッパ各地かくち、オーストラリア、日本にっぽん、トンガなどにもひろがった。金管楽器きんかんがっき打楽器だがっきだけからるイギリスの伝統でんとうてき編成へんせいコルネット、テナーホーン(アルトホルン)、バリトンユーフォニアム、チューバとうサクソルンぞく金管楽器きんかんがっきトロンボーン打楽器だがっきくわわる。映画えいがブラス!』のモデルになったグライムソープ・コリアリー・バンドなどが有名ゆうめい

19世紀せいきアメリカのブラス・バンド

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、19世紀せいき全国ぜんこくまれた管楽器かんがっき中心ちゅうしんとした民間みんかん楽団がくだんしてブラス・バンドとぶ。南北戦争なんぼくせんそうころにもっともさかんになり、地域ちいき人種じんしゅ性別せいべつなどをわずコミュニティごとに楽団がくだんつくられた。

ニュー・オリンズのブラス・バンド

これらの楽団がくだんおおくはラジオやレコードの登場とうじょう姿すがたしたが、ルイジアナしゅうニューオーリンズの黒人こくじんあいだでは、葬式そうしきのパレードに楽団がくだん演奏えんそうする習慣しゅうかん定着ていちゃくしていたため、互助ごじょかい組織そしきまれ、現在げんざいもその伝統でんとうのこっている。初期しょきのジャズから現在げんざいいたるまで、録音ろくおんおおく、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドなど楽団がくだん固有名詞こゆうめいしとしてブラス・バンドのかたり使つかわれている。

ドイツのブラスバンド(Blasband)

ドイツでは、「く」を意味いみする動詞どうし blasen の語幹ごかん楽団がくだん意味いみする Band がむすびついて吹奏楽すいそうがくだん意味いみする Blasband という名詞めいしがあり、「ブラスバント」と発音はつおんする。ただし、ブラスカペル、ブラスオルケスターなどの名称めいしょうのほうが一般いっぱんてきである。

植民しょくみんのブラス・バンド

植民しょくみんには軍楽隊ぐんがくたい派遣はけんされたために、世界中せかいじゅういたるところに管楽器かんがっき中心ちゅうしんとした楽団がくだん存在そんざいし、こくごとに変化へんかして定着ていちゃくしている。また、トリニダード・トバゴでカーニバルなどでうたわれるポピュラー音楽おんがくカリプソ伴奏ばんそうする楽団がくだんをブラス・バンドとれいがある。

1980年代ねんだい後半こうはん以降いこうとくにポピュラー音楽おんがく研究けんきゅう視点してんからヨーロッパの軍楽隊ぐんがくたいかく植民しょくみんあたえた影響えいきょう重視じゅうしされるようになった。日本にっぽんでは、学校がっこうなどの「吹奏楽すいそうがく」と区別くべつするために「ブラス・バンド」のかたりもちいることがおおい。また、ブルガリアマケドニア共和国まけどにあきょうわこくのオルケルタルやルーマニアのファンファーレ(いずれもサクソフォンやクラリネットをふくむ)の英訳えいやくとして brass band がもちいられることもおおい。

その金管きんかんバンド

これ以外いがい東南とうなんアジアや東欧とうおうなどにも、その地域ちいき独特どくとく編成へんせいった金管楽器きんかんがっきふく楽隊がくたいがあり、ブラス・バンドと総称そうしょうされる。東欧とうおう諸国しょこくには金管楽器きんかんがっき打楽器だがっきからなる楽団がくだんがありファンファーレ、オルケスタルなどの名称めいしょうばれている(チョチェク参照さんしょう)。ドイツけんプロテスタント教会きょうかい専属せんぞく金管きんかん合奏がっそうだんポザウネンコア(ポザウネンコール、Posaunenchor)とび、おおきなジャンルとなっている。