マイナス (ギリシア神話しんわ)

豹ひょうに乗のったマイナス
（ウィリアム・アドルフ・ブグロー、1855年ねん）

Bacchanal
（Wolfram Gothe、1994年ねん）

マイナス（古代こだいギリシア語ご: μαινάς、複数ふくすう形がた μαινάδες マイナデス, 英語えいご: maenad /ˈmiːnæd/）はディオニューソス、バックスの女性じょせい信奉しんぽう者しゃである。ギリシア神話しんわ、ローマ神話しんわに登場とうじょうする。

マイナスは「わめきたてる者もの」を語源ごげんとし、狂暴きょうぼうで理性りせいを失うしなった女性じょせいとして知しられる。彼女かのじょらの信奉しんぽうするディオニューソスはギリシア神話しんわのワインと泥酔でいすいの神かみである。ディオニューソスの神秘しんぴによって、恍惚こうこつとした熱狂ねっきょう状態じょうたいに陥おちいった女性じょせいが、暴力ぼうりょく、流血りゅうけつ、性交せいこう、中毒ちゅうどく、身体しんたいの切断せつだんに及およんだ。彼女かのじょらは通常つうじょう、キヅタ（常春とこはる藤ふじ）でできた冠かんむりをかぶり、子鹿こじかの皮かわをまとい、テュルソスを持もち運はこんでいる姿すがたで描えがかれる。そこで未開みかい時代じだいに見合みあった粗野そやで奔放ほんぽうな踊おどりを踊おどる。

ローマ神話しんわでは、ディオニューソスに対応たいおうするバックスに狐きつねの皮かわ（bassaris）を身みにつけさせる傾向けいこうが強つよくなった後のち、マイナスはBassarids（またはBacchae、 Bacchantes）としても知しられることとなった。

説話せつわにおけるマイナスの振舞ふるまいはエタノールの酩酊めいてい作用さようを説明せつめいしようとしたものである。エタノールは時ときとして、素面しらふではとてもできないような破廉恥はれんちな所行しょぎょうの原因げんいんとなる。

エウリーピデースの悲劇ひげき、『バッコスの信女しんにょ』の中なかで、テーバイのマイナデスが自分じぶんを崇拝すうはいしないということで、ペンテウスがディオニューソス崇拝すうはいを禁きんじた所ところ、マイナデスに殺ころされてしまった。ディオニューソスはペンテウスの従兄弟いとこだったのだが、彼かれをマイナデスの待まつ森もりに誘おびき寄よせた。そこでマイナデスはペンテウスを切きり裂さき、バラバラにした。マイナデスの中なかには母親ははおやアガウエーもまじっており、彼女かのじょがわが子この首くびを切きり落おとす場面ばめんがクライマックスである（その首くびはライオンのものと信しんじられていた）。

マイナデスの一いち党とうはオルペウスも殺ころした。

ギリシア芸術げいじゅつにおいて、水みずとワインを混合こんごうする時ときに用もちいる混こん酒しゅ器き（クラテール）にディオニューソスと戯ざれるマイナデスがしばしば描えがかれた。そこでは熱狂ねっきょうしたマイナデスが林はやしを駆かけ、たまたま出会であった動物どうぶつを八やつ裂ざきにし皆殺みなごろしにする場面ばめんが描えがかれている。

ディオニューソスの呪のろいが女性じょせいの正気しょうきを失うしなわせた他ほかの例れいは、イーカリオス（→ディオニューソス#神話しんわ）、en:Butes、en:Dryas (mythology)、及およびミニュアデスを参照さんしょうされたい。

関連かんれん項目こうもく

• ディオニューソス崇拝すうはい
• ディオニューソス秘ひ儀ぎ
• オルギア
• オレイバシア（山野やまの行こう） - 山野さんやを駆かけ回まわる儀式ぎしき。
• スパラグモス - 牛うしを八やつ裂ざきにする儀式ぎしき。ペンテウスやオルペウスの伝承でんしょうでも知しられる。
• オモパギア - 生肉せいにくを食しょくする儀式ぎしき。