メラネシア人じん

メラネシア人じん

Melanesian
メラネシア人じんの少年しょうねん
居住きょじゅう地域ちいき
メラネシア
言語げんご
メラネシア諸語しょご、ピジン英語えいご
宗教しゅうきょう
キリスト教きりすときょう

メラネシア人じん（メラネシアじん、Melanesian）は、西南せいなん太平洋たいへいようのメラネシアに住すむ人々ひとびとの総称そうしょう。広義こうぎにはパプア人じんを含ふくめる場合ばあいもある。人種じんしゅ的てきにはモンゴロイドと混血こんけつしたオーストラロイド系けいの民族みんぞくであるが、島嶼とうしょ間あいだの交流こうりゅうの結果けっか、様々さまざまな移住いじゅう者しゃが入はいったことから体格たいかく・風貌ふうぼうも様々さまざまであり、人種じんしゅ的てき特徴とくちょうを一概いちがいに挙あげることは困難こんなんである。彼かれらは約やく5000年ねん前まえにメラネシア水域すいいきの島々しまじまにやってきたと考かんがえられており、ソロモン諸島しょとう、ニューヘブリディーズ諸島しょとう、フィジー諸島しょとう、ニューカレドニア島とうなどに居住きょじゅうする。顔立かおだちはポリネシア人じんに近ちかく、皮膚ひふの色いろにはパプア人じんのような統一とういつ性せいは無なく、濃こい者ものも薄うすい者ものもいる。しばしばアフリカの民族みんぞくと比較ひかくされるが、オーストラロイドとモンゴロイドの混合こんごう人種じんしゅであるメラネシア人じんは、表現ひょうげん型がたが非常ひじょうに多様たような集団しゅうだんである。

言語げんご

メラネシア人じんは方言ほうげんの分化ぶんかが著いちじるしく、同どう一いち言語げんごを話はなす言語げんご集団しゅうだんが小ちいさい。メラネシア諸語しょごはオーストロネシア語族ごぞくに属ぞくし、マレー語ご系けいの影響えいきょうも受うけている。パプアニューギニアにおけるメラネシア諸語しょごの話者わしゃは人口じんこうの約やく15%である。一方いっぽうで19世紀せいき半なかばに奴隷どれい商人しょうにんたちの影響えいきょうによってもたらされたピジン英語えいごはメラネシアの共通きょうつう語ごとなり島嶼とうしょ間あいだのメラネシア人じんの連帯れんたい感かんを高たかめている。

社会しゃかい

宗教しゅうきょう

体系たいけい的てきな宗教しゅうきょうは持もっておらず、宗教しゅうきょうと呪術じゅじゅつの区分くぶんも明確めいかくでない。東部とうぶのメラネシア人じん社会しゃかいでは超ちょう自然しぜん力りょく（マナ）を信仰しんこうしており、すべて形かたちあるものに精霊せいれいが宿やどると信しんじられていた。このため、品物しなものを多おおく持もつ白人はくじんたちの文化ぶんかに触ふれ、その羨望せんぼうから彼かれらが信仰しんこうしていたキリスト教きりすときょうへ改宗かいしゅうしている。こうした動うごきはやがてカーゴ・カルトと呼よばれるメシア運動うんどうへ発展はってんし、メラネシアの社会しゃかい問題もんだいとなった。

神話しんわ伝承でんしょうは存在そんざいしているがそのほとんどは聖書せいしょやカーゴ・カルトの影響えいきょうを強つよく受うけており、後年こうねんに創作そうさくされたものと考かんがえられており、原始げんし美術びじゅつに体系たいけい付つけられるような口承こうしょうは現存げんそんしていない。

生活せいかつ

ベテル・チューイング
キンマの葉は、ビンロウの実み、石灰せっかい

主しゅとして堀ほり棒ぼう耕作こうさくを行おこなう農耕のうこう民みんで、タロイモ、ヤムイモ、キャッサバ、サツマイモなどの根茎こんけい類るいのほか、バナナ、パンノキ、ヤシ、サゴヤシなどを栽培さいばいする。沿岸えんがん部ぶでは漁撈ぎょろうも行おこなわれる。食しょく習慣しゅうかんとしてはコショウ科か植物しょくぶつの根ねを原料げんりょうとした飲料いんりょう物ぶつ（カヴァ）や、キンマの葉はに包つつんだビンロウの実みと石灰せっかいを混まぜたものを噛かむ習慣しゅうかん（ベテル・チューイング）が特徴とくちょうとして挙あげられる。

社会しゃかい組織そしきとしては、地理ちり上じょうの問題もんだいから中央ちゅうおう集権しゅうけん化かが困難こんなんなこともあり、小規模しょうきぼな単位たんいでの政治せいじ制度せいどが採とられていた。文化ぶんか圏けんや言語げんご集団しゅうだんに関かかわらずビッグ・マンと呼よばれるリーダーによって200人にんから300人にんの居住きょじゅう単位たんいによる集団しゅうだんをひとつの組織そしきとしていたのが一般いっぱん的てきである。ビッグ・マンの地位ちいは世襲せしゅうの場合ばあいやそうでない場合ばあいが地域ちいきによって混在こんざいしており一概いちがいには定義ていぎできない。血縁けつえん集団しゅうだんレベルで言いえば、地縁ちえん内ない婚こんが一般いっぱん化かしており、ひとつの集団しゅうだん内ないのほとんどは親族しんぞくないし姻族いんぞくである。

豚ぶたと小型こがたの貝かいなどの稀少きしょう品ひんに価値かち観かんを見出みいだしており、これらを用もちいた海上かいじょう交易こうえきや作物さくもつの物々交換ぶつぶつこうかんが発達はったつしていたが、近年きんねんは貨幣かへいも用もちいられるようになり、定期ていき的てきな市しが開催かいさいされている。

芸術げいじゅつ

パプアニューギニアの仮面かめん舞踏ぶとうの一ひとつ、バイニンダンス

美術びじゅつ

メラネシアの美術びじゅつは非常ひじょうに多様たよう化かしており、世界せかい的てきな民族みんぞく美術びじゅつと言いわれる。その特徴とくちょうは精力せいりょく的てきな彫刻ちょうこくと彩色さいしきにあり、カヌー、楽器がっき、仮面かめん、土器どき、生活せいかつ用具ようぐなどさまざまなものにその造形ぞうけいを見みることができる。ニューギニア北東ほくとう部ぶのセピック川がわ沿岸えんがんの村むらに建たてられた精霊せいれいの家いえ（イニシエーション用よう、葬儀そうぎ用ようあるいは集会しゅうかい所しょとしての建築けんちく物ぶつ）は屋根やね、破風はふ、柱はしら、梁りょう、天井てんじょう、壁かべなどあらゆる部分ぶぶんに精霊せいれいや動物どうぶつの彫刻ちょうこく・彩色さいしきが施ほどこされた荘厳そうごんなものとして知しられる。

また、仮面かめん美術びじゅつはオセアニアではメラネシア人じんのみが保持ほじする特有とくゆうの文化ぶんかで、ニューギニア島とうパプア湾わんのヘベヘ、ヒュオン湾わんのタゴ、ニューアイルランド島とうのマランガン、ニューブリテン島とうのドゥクドゥク、バンクス諸島しょとうのタマテなどの仮面かめんが知しられている。

その他た、美術びじゅつ的てき価値かちを見出みだせるものとしては、ソロモン諸島しょとうの貝かい貨、サンタクルーズ諸島しょとうの羽毛うもう貨、ニューヘブリディーズ諸島しょとうのパンダヌス布ぬの貨などの各種かくしゅ財貨ざいかや儀礼ぎれい的てき交易こうえき（クラ）に用もちいられた貝かいの装飾そうしょく品ひん、階層かいそう制度せいどの位階いかいを現あらわす彫像ちょうぞうなどがある。

音楽おんがく

メラネシアの音楽おんがくはポリネシアほどの統一とういつ感かんは無ないが、文化ぶんか価値かち表現ひょうげんの手段しゅだんとして古ふるくから社会しゃかい生活せいかつの中なかに有機ゆうき的てきに組くみ込こまれた。ゆるやかな発声はっせいと身体しんたい打だ奏そうを特徴とくちょうとし、楽器がっきには竹たけや木きのほか動物どうぶつ性せいの材料ざいりょうを用もちいる。集団しゅうだん構成こうせい員いんの多おおくがパフォーマンスに参与さんよする参加さんか型がたのものが一般いっぱん的てきである。

メラネシア系けい民族みんぞく

1. カナック

参考さんこう文献ぶんけん

書籍しょせき

和書わしょ:

• 後藤ごとう明あきら『海うみの文化ぶんか史し』未來社みらいしゃ、1996年ねん。ISBN 4624220250。 
• 鈴木すずき継つぎ美び『パプアニューギニアの食生活しょくせいかつ』中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ、1991年ねん。ISBN 4121010442。 
• 橋本はしもと和也かずや『キリスト教きょうと植民しょくみん地ち経験けいけん』人文書院じんぶんしょいん、1996年ねん。ISBN 4409530186。 
• 矢野やの將すすむ『オセアニアを知しる事典じてん - メラネシア人じん』平凡社へいぼんしゃ、1990年ねん。ISBN 4582126278。 
• 吉岡よしおか政徳まさのり『メラネシアの位階いかい階梯かいてい制せい社会しゃかい』風ふう響ひびき社しゃ、1998年ねん。ISBN 4938718340。 

洋書ようしょ:

• Kreps, Christina, F. (2003). Liberating Culture: Cross-cultural perspectives on museums, curation and heritage preservation. Routledge. ISBN 0-415-25025-0 
• Mombi, George (2016). "Jesus as our Wapiken: seeking a model of holiness amongst the Abelam people." In William Kenny Longgar and Tim Meadowcroft (eds.) Living in the Family of Jesus, pp. 79–100. Auckland: Archer Press. ISBN 9780473353223

外部がいぶリンク

• 野瀬のせ昌彦まさひこ (2008年ねん). “クレオールの社会しゃかい言語げんご学がく的てき考察こうさつ”. 2009年ねん11月28日にち閲覧えつらん。