数学 すうがく において集合 しゅうごう 族 ぞく の共通 きょうつう 部分 ぶぶん (きょうつうぶぶん、英 えい : intersection )とは、与 あた えられた集合 しゅうごう の集 あつ まり(族 ぞく )全 すべ てに共通 きょうつう に含 ふく まれる元 もと を全 すべ て含 ふく み、それ以外 いがい の元 もと は含 ふく まない集合 しゅうごう のことである。共通 きょうつう 集合 しゅうごう (きょうつうしゅうごう)、共通 きょうつう 分 ぶん [ 1] (きょうつうぶん)、交叉 こうさ (こうさ、交差 こうさ )、交 まじ わり (まじわり、meet )、積 せき 集合 しゅうごう (せきしゅうごう)、積 せき (せき)[ 2] などとも呼 よ ばれる。ただし、積 せき 集合 しゅうごう は直積 ちょくせき 集合 しゅうごう の意味 いみ で用 もち いられることが多 おお い。
共通 きょうつう 部分 ぶぶん のベン図 べんず による視覚 しかく 化 か
集合 しゅうごう A , B の交 まじ わりは A ∩ B と記 しる される[ 5] 。これは
x ∈ A ∩ B ⇔ x ∈ A かつ x ∈ B
ということであり、記号 きごう では
A ∩ B = { x | x ∈ A ∧ x ∈ B }
と書 か ける。A ∩ B に含 ふく まれるような元 もと が存在 そんざい するとき A と B とは互 たが いに交 まじ わる あるいは交 まじ わりを持 も つ といい、そのような元 もと の存在 そんざい しないとき A と B は互 たが いに素 もと であるまたは交 まじ わりを持 も たない (disjoint ) という。
有限 ゆうげん 個 こ の集合 しゅうごう M 1 , … M k の交 まじ わり
M
1
∩
M
2
∩
⋯
∩
M
k
{\displaystyle M_{1}\cap M_{2}\cap \cdots \cap M_{k}}
は、そのすべてに共通 きょうつう に含 ふく まれる元 もと の全体 ぜんたい である。集合 しゅうごう の交 まじ わりは結合 けつごう 的 てき 、つまり
(A ∩ B ) ∩ C = A ∩ (B ∩ C )
を満 み たすから、(一般 いっぱん 結合 けつごう 法則 ほうそく )により有限 ゆうげん 個 こ の集合 しゅうごう の交 まじ わりは
(
⋯
(
(
M
1
∩
M
2
)
∩
M
3
)
∩
⋯
∩
M
k
)
{\displaystyle (\cdots ((M_{1}\cap M_{2})\cap M_{3})\cap \dotsb \cap M_{k})}
に等 ひと しく、また括弧 かっこ の付 つ け方 かた に依 よ らない。
⋂
n
=
1
k
M
n
=
M
1
∩
M
2
∩
⋯
∩
M
k
{\displaystyle \bigcap _{n=1}^{k}M_{n}=M_{1}\cap M_{2}\cap \dotsb \cap M_{k}}
とも表 あらわ す。
集合 しゅうごう の(空 そら でない)族 ぞく
M
=
{
M
λ らむだ
}
λ らむだ
∈
Λ らむだ
{\displaystyle {\mathfrak {M}}=\{M_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }}
に対 たい して、その交 まじ わりを集合 しゅうごう 族 ぞく に属 ぞく する全 すべ ての集合 しゅうごう に属 ぞく する元 もと 、つまり
すべての λ らむだ ∈ Λ らむだ に対 たい して x ∈ Mλ らむだ
となる x の全体 ぜんたい であると定義 ていぎ して
⋂
M
,
⋂
M
∈
M
M
,
⋂
λ らむだ
∈
Λ らむだ
M
λ らむだ
{\displaystyle \bigcap {\mathfrak {M}},\quad \bigcap _{M\in {\mathfrak {M}}}M,\quad \bigcap _{\lambda \in \Lambda }M_{\lambda }}
などで表 あらわ す。特 とく に集合 しゅうごう 列 れつ {M n }n ∈N の交 まじ わり(可算 かさん 交叉 こうさ )の場合 ばあい には
⋂
n
=
1
∞
M
n
=
M
1
∩
M
2
∩
M
3
⋯
=
M
1
∩
(
M
2
∩
(
M
3
∩
⋯
)
)
{\displaystyle \bigcap _{n=1}^{\infty }M_{n}=M_{1}\cap M_{2}\cap M_{3}\cdots =M_{1}\cap (M_{2}\cap (M_{3}\cap \cdots ))}
のようにも書 か く[ 6] 。
与 あた えられた集合 しゅうごう 族 ぞく の共通 きょうつう 部分 ぶぶん が空 そら 集合 しゅうごう となるとき、つまり全 すべ ての集合 しゅうごう に共通 きょうつう に含 ふく まれる元 もと が一 ひと つも存在 そんざい しないとき、その集合 しゅうごう 族 ぞく は交 まじ わりを持 も たない (disjoint) という。また、どの二 ふた つの集合 しゅうごう を取 と っても交 まじ わらないとき、その集合 しゅうごう 族 ぞく は対 たい ごとに交 まじ わりを持 も たない (pairwise disjoint) と言 い う。disjoint ではないが pairwise disjoint な集合 しゅうごう 族 ぞく が存在 そんざい する。
P = {1, 3, 5, 7, 9} (10 以下 いか の奇数 きすう の集合 しゅうごう )、Q = {2, 3, 5, 7} (10 以下 いか の素数 そすう の集合 しゅうごう )とすると、P ∩ Q = {3, 5, 7} である。また、R = {2, 4, 6, 8, 10} (10 以下 いか の偶数 ぐうすう の集合 しゅうごう )とすると P と R には共通 きょうつう の要素 ようそ が存在 そんざい しないから P ∩ R は空 そら 集合 しゅうごう である。
実数 じっすう からなる開 ひらき 区間 くかん の族 ぞく M = {(0, 1 + 1/n ) | n は 1 以上 いじょう の自然 しぜん 数 すう } の共通 きょうつう 部分 ぶぶん は半開 はんかい 区間 くかん (0, 1] である:
⋂
M
=
⋂
n
=
1
∞
(
0
,
1
+
1
n
)
=
(
0
,
1
]
.
{\displaystyle \bigcap \mathbf {M} =\bigcap _{n=1}^{\infty }\left(0,\,1+{\frac {1}{n}}\right)=(0,1].}
実際 じっさい 、 (0, 1] はどの区間 くかん にも含 ふく まれるので共通 きょうつう 部分 ぶぶん に含 ふく まれることは直 ただ ちに言 い える。一方 いっぽう 、1 < x とするならば x = 1 + ε となる正 せい の実数 じっすう ε いぷしろん が取 と れるが、1 / ε いぷしろん < n なる自然 しぜん 数 すう は必 かなら ず存在 そんざい して、x はそのような n に対 たい する (0, 1 + 1 / n ) に属 ぞく さない。したがって上記 じょうき の等式 とうしき が成立 せいりつ する。また、同様 どうよう の区間 くかん 族 ぞく L = {(0, 1 − 1/n ) | n は 1 以上 いじょう の自然 しぜん 数 すう } は n = 1 に対応 たいおう する区間 くかん が空 そら 集合 しゅうごう であるので共通 きょうつう 部分 ぶぶん ∩ L も空 そら 集合 しゅうごう 、つまり L は交 まじ わりを持 も たない。
上記 じょうき 、任意 にんい 個数 こすう の集合 しゅうごう の交叉 こうさ の定義 ていぎ において、族 ぞく が空 そら 集合 しゅうごう (∅ ) となる場合 ばあい を排除 はいじょ したことに注意 ちゅうい しなければならない。これは集合 しゅうごう 族 ぞく M の交 まじ わりを
⋂
M
=
{
x
:
∀
A
∈
M
,
x
∈
A
}
{\displaystyle \bigcap \mathbf {M} =\{x:\forall A\in \mathbf {M} ,\ x\in A\}}
で定義 ていぎ するために、M が空 そら ならば A ∈ M なる集合 しゅうごう は存在 そんざい しないから「x が満 み たすべき条件 じょうけん は一体 いったい 何 なに であるか」という問題 もんだい を生 しょう じるからである。M が空 そら なるときの上記 じょうき 条件 じょうけん は空虚 くうきょ な真 しん の一 いち 例 れい であるから、答 こた えは「可能 かのう な限 かぎ りの全 すべ ての x 」となるべきである。すなわち、空 そら な集合 しゅうごう 族 ぞく の交 まじ わりは普遍 ふへん 集合 しゅうごう (交叉 こうさ 演算 えんざん の単位 たんい 元 もと )と定義 ていぎ することになる[ 7] 。
困 こま ったことに標準 ひょうじゅん 的 てき な集合 しゅうごう 論 ろん (ZFC ) には普遍 ふへん 集合 しゅうごう が存在 そんざい しないから、これを部分 ぶぶん 的 てき に回避 かいひ するために宇宙 うちゅう と呼 よ ばれる一 ひと つの大 おお きな集合 しゅうごう U を固定 こてい してその部分 ぶぶん 集合 しゅうごう となる集合 しゅうごう のみを考 かんが えることがよく行 おこな われる。このような条件下 じょうけんか での U の部分 ぶぶん 集合 しゅうごう 族 ぞく の交 まじ わりは
⋂
M
=
{
x
∈
U
:
∀
A
∈
M
,
x
∈
A
}
{\displaystyle \bigcap \mathbf {M} =\{x\in U:\forall A\in \mathbf {M} ,\ x\in A\}}
と定義 ていぎ されるべきものであって、ここで M を空 そら にとっても何 なに も問題 もんだい は生 しょう じない。即 すなわ ち、空 そら な交叉 こうさ は定義 ていぎ により well-defined であって宇宙 うちゅう 全体 ぜんたい U に一致 いっち する。そしてそれは U の部分 ぶぶん 集合 しゅうごう 全体 ぜんたい の上 うえ で定義 ていぎ される交叉 こうさ 演算 えんざん の単位 たんい 元 もと である。
^ 髙木貞治 さだはる 『数 かず の概念 がいねん 』岩波書店 いわなみしょてん 、1949年 ねん 8月 がつ 20日 はつか 。
^ 集合 しゅうごう の代数 だいすう 学 がく あるいは集合 しゅうごう 族 ぞく のブール代数 だいすう において、この場合 ばあい 、和 わ に相当 そうとう するのは集合 しゅうごう 論 ろん 的 てき 差 さ または対称 たいしょう 差 さ である(集合 しゅうごう 環 たまき なども参照 さんしょう )。集合 しゅうごう 論 ろん 的 てき 和 わ は結 むす び と呼 よ ばれ、補 ほ 集合 しゅうごう を取 と る操作 そうさ に通 つう じて積 せき と同等 どうとう の役割 やくわり を果 は たす。
^ Cajori, F. (1993). A History of Mathematical Notations . ¶ 688: Dover. ISBN 0-486-67766-4 . https://books.google.co.jp/books?id=_byqAAAAQBAJ
^ Calcolo geometrico, secondo l'Ausdehnungslehre di H. Grassmann - インターネット・アーカイブ
^ 交 まじ わりの記号 きごう ∩ は結 むす び の記号 きごう ∪ と共 とも に1888年 ねん にジュゼッペ・ペアノ によって導入 どうにゅう された[ 3] [ 4] 。
^ 集合 しゅうごう が非 ひ 増大 ぞうだい 列 れつ M 1 ⊃ M 2 ⊃ … をなすとき、それらの共通 きょうつう 部分 ぶぶん は逆 ぎゃく 極限 きょくげん を用 もち いて
lim
←
M
n
{\displaystyle \textstyle \varprojlim M_{n}}
と書 か くこともできる。
^ Megginson, Robert E. (1998), “Chapter 1”, An introduction to Banach space theory , Graduate Texts in Mathematics, 183 , New York: Springer-Verlag, pp. xx+596, ISBN 0-387-98431-3