出生しゅっしょう力りょく

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出生しゅっしょう力りょく（しゅっしょうりょく、英えい:Fertility） は、人口じんこうにおいて子孫しそんが生うみ出だされる頻度ひんどや傾向けいこうを数量すうりょう的てきに水準すいじゅんとして表あらわしたもの。以前いぜんは「出産しゅっさん力ちから」とも言いわれていたが、これに死産しざんを含ふくめない「出生しゅっしょう力りょく」という語かたりが現在げんざいは定着ていちゃくしている[1]。

出生しゅっしょう力りょくを測はかる尺度しゃくどや指標しひょうのうち、通常つうじょう1年間ねんかんにおける出生しゅっしょうの頻度ひんどを率りつとして示しめしたものを出生しゅっしょう率りつという[1]。合計ごうけい特殊とくしゅ出生しゅっしょう率りつは一人ひとりの女性じょせいが生涯しょうがいのうちに出産しゅっさんする子供こどもの平均へいきん数すうであり、人口じんこう統計とうけい学がく的てきに定量ていりょう化かされている。出生しゅっしょう力りょくは、少しょう産さんないし多産たさんの解消かいしょうが課題かだいとなる場合ばあいに国家こっかレベルでの対応たいおう策さくが採とられる場合ばあいもある[注釈ちゅうしゃく 1]。子供こどもを授さずかるのが困難こんなんな夫婦ふうふを支援しえんする不ふ妊にん治療ちりょうの専門せんもん家かは世界中せかいじゅうに見みられる。

出生しゅっしょう力りょくは、性せい行動こうどうのほかにも栄養えいよう、文化ぶんか、経済けいざい力りょく、ライフスタイルなど 様々さまざまな要因よういんに左右さゆうされる。

出生しゅっしょう力りょくは、人間にんげんが最大限さいだいげん何人なんにんの子供こどもを産うめるかを意味いみする妊にん孕力 (fecundity)  とは異ことなる概念がいねんで[4]、ある時点じてんにおいて女性じょせいが実際じっさいに子孫しそんを産うんでいる状態じょうたいないし構造こうぞうを示しめす用語ようごである。

人口じんこう統計とうけい学がく[編集へんしゅう]

人口じんこう統計とうけい学がくの文脈ぶんみゃくにおける出生しゅっしょう力りょくとは、子供こどもを身みごもって出産しゅっさんする身体しんたい的てき能力のうりょく（妊にん孕力）ではなく、実際じっさいに子孫しそんを産うんでいる事ことを指さす[5][6]。妊にん孕力は測定そくていできるものの、出生しゅっしょう力りょくについては人口じんこう統計とうけい上じょうこれを直接ちょくせつ知しることはできない[4]。人口じんこう統計とうけい学者がくしゃは様々さまざまな方法ほうほうで出生しゅっしょう率りつを測定そくていしており、大おおきく「期間きかん」測定そくていと「コーホート」測定そくていに分わけられる。「期間きかん」測定そくていは1年ねんで人口じんこうを輪切わぎりにしたものを指さす。片かたや「コーホート」のデータは、数すう十じゅう年ねんにわたって同どうじ人じん達たちを追おうものである。期間きかんとコーホートどちらの測定そくてい法ほうも広ひろく使つかわれている[7]。

期間きかん測定そくてい[編集へんしゅう]

  • 普通ふつう出生しゅっしょう率りつ(CBR) - ある年としの半なかばに生いきている1000人にんあたりの出生しゅっしょう数すう。この指標しひょうの欠点けってんの1つは、人口じんこうの年齢ねんれい構造こうぞうによる影響えいきょうを受うける点てんである。
  • 総そう出生しゅっしょう率りつ(GFR) - 1年間ねんかんの出生しゅっしょう数すうを、15-44歳さいの女性じょせい人数にんずうで割わって1000倍ばいした値ね。母親ははおやたりうる（子こを生うむ可能かのう性せいのある）者しゃだけに絞しぼって、その年齢ねんれい分布ぶんぷを考慮こうりょに入いれたもの。
  • 子供こども-婦人ふじんの比率ひりつ(CWR) - 5歳さい未満みまんの子供こども人数にんずうと15-49歳さいの女性じょせい人数にんずうとの比率ひりつを1000倍ばいした値ね。これは出生しゅっしょう数すうを数かぞえる必要ひつようがないため、履歴りれきデータで特とくに有用ゆうようである。この尺度しゃくどは実際じっさいのところ、死亡しぼうと出生しゅっしょうが混在こんざいした値ねである（つまり、乳児にゅうじ死亡しぼう率りつのため出生しゅっしょうの一部いちぶは含ふくまれず、成人せいじん死亡しぼう率りつのため出産しゅっさんした女性じょせいの一部いちぶも数かぞえられない）。
  • コールの出生しゅっしょう力りょく指標しひょう(Coale's Index of Fertility)- 歴史れきし的てき研究けんきゅうで使用しようされる、特別とくべつに考案こうあんされた指標しひょう

コーホート測定そくてい[編集へんしゅう]

国くに別べつの合計ごうけい特殊とくしゅ出生しゅっしょう率りつ（2020年ねん）
  • 合計ごうけい特殊とくしゅ出生しゅっしょう率りつ(TFR) - 女性じょせいが一般いっぱん的てきな年齢ねんれい別べつ出生しゅっしょう率りつを経験けいけんする場合ばあいに、女性じょせいが生涯しょうがいに産うむであろう子供こどもの総数そうすう。年齢ねんれい（または年齢ねんれい5歳さい階級かいきゅう）別べつの女性じょせい人口じんこうで、その年齢ねんれい（または年齢ねんれい5歳さい階級かいきゅう）の女性じょせいによる出生しゅっしょう数すうを割わった値ね(ASFR:age specific fertility rate)を、全ぜん年齢ねんれいについて合計ごうけいしたもの（年齢ねんれい5歳さい階級かいきゅうの場合ばあいは合計ごうけいして5倍ばいしたもの）[8][9]。
  • 総そう再さい生産せいさん率りつ(GRR) - 女児じょじに限定げんていした合計ごうけい特殊とくしゅ出生しゅっしょう率りつ[10]。これは全すべての女児じょじが成長せいちょうして少すくなくとも50歳さいまで生いきることを前提ぜんていとしている。
  • 純じゅん再さい生産せいさん率りつ(NRR) - GRRに基もとづき、一部いちぶの女性じょせいが49歳さい以前いぜんに死亡しぼうするという現実げんじつ的てきな減少げんしょうを考慮こうりょした指標しひょう[10]。というのも、GRRで数かぞえられた潜在せんざい的てきな女児じょじの一部いちぶは（病気びょうきや災害さいがい等とうの理由りゆうで）生いき延のびられないためである。NRRは常つねにGRRより低ひくく、死亡しぼう率りつの高たかい国くにではNRRがGRRの70%程度ていどに下さがる可能かのう性せいもある。NRR = 1.0の場合ばあい、各かく世代せだい1000人にんの女児じょじが成長せいちょうして、ちょうど1000人にんの女児じょじを出産しゅっさんする。NRRが1未満みまんの場合ばあい、各かく世代せだいの女児じょじは前ぜん世代せだいよりも少すくなくなる。NRR が1より大おおきい場合ばあい、各かく世代せだいの女児じょじは前ぜん世代せだいより多おおくなる。NRRは長期ちょうき的てきな将来しょうらいの成長せいちょう可能かのう性せいの尺度しゃくどであるが、一般いっぱん的てきに現時点げんじてんの人口じんこう増加ぞうか率りつとは値ねが異ことなる。

社会しゃかい的てき・経済けいざい的てきな決定けってい要因よういん[編集へんしゅう]

親おやの作つくった子供こどもの数かずは、次世代じせだいの人達ひとたちが最終さいしゅう的てきにもうける子供こどもの数かずと強つよい相関そうかん関係かんけいがある[11]。出生しゅっしょう力りょくの増加ぞうかに関連かんれんする一般いっぱん的てき要因よういんとしては、宗教しゅうきょう性せい[12]、子供こどもをもうけたいとの意向いこう[13]、産前さんぜん産後さんごのサポート[14]などがある。出生しゅっしょう力りょくの減少げんしょうに関連かんれんする一般いっぱん的てき要因よういんとしては、富とみ（収入しゅうにゅう）、教育きょういく[15][16]、 女性じょせいの職場しょくば進出しんしゅつ[17]、都市とし部ぶの居住きょじゅう[18]、住宅じゅうたく費ひ[19][20]、知能ちのう、男女だんじょの長寿ちょうじゅ化かなどがある。

出生しゅっしょう力りょくプロセスの「三さん段階だんかい分析ぶんせき」は1956年ねんにキングスレー・デイビスとジュディス・ブレイクによって導入どうにゅうされ、3つの近接きんせつ要因よういんを活用かつようしたものである[21][22]。出生しゅっしょう力りょくの経済けいざい分析ぶんせきは家庭かてい経済けいざい学がくの一部いちぶである。ベッカー(1960)[23]、ミンサー(1963)[24]、イースターリン(1969)[25]などの経済けいざい分析ぶんせきが影響えいきょう力りょくを持もっており、最後さいごのものはベビーブームを説明せつめいするイースターリン仮説かせつ (Easterlin hypothesis) を生うみ出だした。

ボンガーツによる構成こうせいモデル[編集へんしゅう]

ボンガーツは、4つの近接きんせつ要因よういんと総そう妊にん孕力(TF)から人口じんこうの合計ごうけい特殊とくしゅ出生しゅっしょう率りつ(TFR)を算出さんしゅつしうる次つぎのモデルを提唱ていしょうした。

TFR = TF × Cm × Ci × Ca × Cc

近接きんせつ要因よういん4つは、結婚けっこん(Cm)、産後さんごの不ふ妊にん(Ci)、人工じんこう妊娠にんしん中絶ちゅうぜつ(Ca)、避妊ひにん(Cc)であり、これらの指数しすうは0から1までの数値すうち範囲はんいをとる。指数しすうが高たかいほどTFRも高たかくなる。例たとえば、人工じんこう妊娠にんしん中絶ちゅうぜつをしない地域ちいきではCa=1、誰だれもが完璧かんぺきな避妊ひにんを実行じっこうするならCc=0となる。

この4指標しひょうは、合計ごうけい婚姻こんいん出生しゅっしょう力りょく(TMFR)や合計ごうけい自然しぜん出生しゅっしょう力りょく(TN)を算出さんしゅつする際さいにも使つかわれる。

TFR = TMFR × Cm
TMFR = TN × Cc × Ca
TN = TF ×Ci
交渉こうしょう
第だい一いち段階だんかいは性せい交渉こうしょう、そして最初さいしょの交渉こうしょうにおける平均へいきん年齢ねんれい、婚こん外がいの平均へいきん頻度ひんど、婚こん内ないの平均へいきん頻度ひんどの調査ちょうさである。
受胎じゅたい
特定とくていの身体しんたい状態じょうたいが女性じょせいを妊娠にんしん不能ふのうにしてしまう場合ばあいがある。これは「意いにそぐわない不ふ妊にん」と呼よばれる。女性じょせいは妊娠にんしん可能かのうな状態じょうたいにあるものの、生理せいり的てきな妊娠にんしん能力のうりょくが正常せいじょう範囲はんいよりもかなり低ひくい状態じょうたいは「低てい妊にん孕力」[26]と呼よばれる。性病せいびょう（特とくに淋病りんびょう、梅毒ばいどく、クラミジア）が普遍ふへん的てきな原因げんいんである。栄養えいようもまた要因よういんである。人口じんこう統計とうけい学者がくしゃのルース・フリシュは「赤あかん坊ぼうを作つくるには5万まんカロリーかかる」と主張しゅちょうしている。体からだ脂肪しぼう20%未満みまんの女性じょせいは低てい妊にん孕力になる場合ばあいがあり、運動うんどう選手せんしゅや拒こばめ食しょく症しょうの影響えいきょうを受うけやすい人々ひとびとにとって懸念けねん要因よういんである。出産しゅっさん後ごの数すう週間しゅうかんもまた低てい妊にん孕力となり、これは授乳じゅにゅうを通とおして1年ねん以上いじょう長引ながびくことがある。男女だんじょの生殖せいしょく補助ほじょ医療いりょうを手掛てがける大型おおがた産業さんぎょうが発達はったつすると同時どうじに、受胎じゅたいを防ふせぐことを意図いとした避妊ひにん具ぐも大型おおがた産業さんぎょう化かした。その使用しようにおける有効ゆうこう性せいは様々さまざまである。平均へいきんして、避妊ひにんをしていない夫婦ふうふの85%は1年ねんで妊娠にんしんする[27][28]。膣ちつ外がい射精しゃせい、ゴム状じょう避妊ひにん具ぐ、殺ころせ精子せいし剤ざいを使用しようすると、その割合わりあいが20%程度ていどに下さがる[27]（これはパートナーが避妊ひにんを絶対ぜったい忘わすれないとの前提ぜんていで）。ピルまたはIUDを使用しようするとその割合わりあいは2-3%に低下ていかし、インプラントでは0%近ちかく、女性じょせいの卵管らんかん結紮けっさつ術じゅつや男性だんせいの精せい管かん結紮けっさつ術じゅつでは0%になる[27]。
妊娠にんしん
身みごもった後のち、胎児たいじは出生しゅっしょうする場合ばあいもそうでない場合ばあいもある。「不慮ふりょの胎児たいじ死亡しぼう率りつ(Involuntary fetal mortality)」には、自然しぜん流産りゅうざんと死産しざんが含ふくまれる。胎児たいじの流産りゅうざんを意図いと的てきに引ひき起おこす人間にんげんの介入かいにゅうは「人工じんこう妊娠にんしん中絶ちゅうぜつ（堕胎だたい）」と呼よばれる。

出生しゅっしょう力りょくの生物せいぶつ学がく[編集へんしゅう]

女性じょせいには妊娠にんしん可能かのうな時期じきを決きめるホルモン周期しゅうきがある。この周期しゅうきは約やく28日間にちかんで、周期しゅうきごとに妊娠にんしんに適てきした期間きかんが5日間にちかんあるが、この規範きはんから大おおきく逸脱いつだつすることもありうる[29]。男性だんせいは継続けいぞく的てきに子こ作づくりが可能かのうだが、精子せいしの質しつは健康けんこう、射精しゃせいの頻度ひんど、環境かんきょう要因よういんの影響えいきょうを受うける。

男女だんじょ共どもに、出生しゅっしょう力りょくは年齢ねんれいと共ともに減へっていく。女性じょせいでは32歳さい頃ごろに低下ていかが始はじまり、37歳さいで急激きゅうげきになる。男性だんせいの場合ばあい、精子せいしの能力のうりょくや質しつは40歳さい頃ごろに衰おとろえ始はじめる。年配ねんぱいの夫婦ふうふがようやく子供こどもを宿やどしたとしても、その妊娠にんしんは母親ははおやにとって大変たいへんなことが多おおくなり、子供こどもにとっては先天せんてん性せい欠損けっそん症しょうや遺伝いでん性せい疾患しっかんのリスクが高たかくなる[30]。

性せい交渉こうしょうによる妊娠にんしん確かく率りつは、1,2日にちおき[31]又または2,3日にちおきにする場合ばあいが最もっとも高たかい[32]。膣ちつ内ない射精しゃせいに至いたるのであれば性交せいこう体位たいいと妊娠にんしん率りつの間あいだに有意ゆういな差さが存在そんざいしないことが研究けんきゅうで示しめされている[33]。

月経げっけい周期しゅうき[編集へんしゅう]

排卵はいらんに関連かんれんした月経げっけい周期しゅうきによる受精じゅせいの可能かのう性せい[34]
詳細しょうさいは「月経げっけい周期しゅうき」を参照さんしょう

女性じょせいの月経げっけい周期しゅうきは月経げっけいを起点きてんとする。次つぎは、卵巣らんそう内ないで卵子らんしが成熟せいじゅくするにつれて（卵胞らんぽう刺激しげきホルモンFSHにより）エストロゲン濃度のうどが上昇じょうしょうする卵胞らんぽう期きである。エストロゲン濃度のうどが頂点ちょうてんに達たっすると、それが卵子らんしの成熟せいじゅくを完了かんりょうさせて卵巣らんそう壁かべを突破とっぱできるようにする黄体おうたい形成けいせいホルモン(LH)の急増きゅうぞうに拍車はくしゃをかける、これが排卵はいらん期きである[35]。排卵はいらん後ごの黄体おうたい期きでは、LHおよびFSHが排卵はいらん後ごの卵巣らんそうを黄体おうたいに発達はったつさせてこれがプロゲステロンを産さん生せいする。プロゲステロンの産さん生せいはLHおよびFSHホルモンを阻害そがいして、(非ひ妊娠にんしん周期しゅうきだと)黄体おうたいの退行たいこうを引ひき起おこし、再ふたたび月経げっけい周期しゅうきが始はじまる。

出生しゅっしょう力りょくのピークは同どう周期しゅうきの数すう日間にちかんだけに起おこり、通常つうじょうは排卵はいらん日び前後ぜんこうの各かく2日間にちかんである[36]。この妊娠にんしん可能かのう期間きかんは女性じょせい一いち人にん一人ひとりに個人こじん差さがあり、同一どういつの女性じょせいでも月経げっけい周期しゅうきごとに排卵はいらん日びは変動へんどうする[37]。卵たまご母はは細胞さいぼうは通常つうじょう、卵巣らんそうから放出ほうしゅつされてから最大さいだい48時じ間あいだ受精じゅせい可能かのうである。精子せいしは平均へいきん48時じ間あいだから72時じ間あいだまで子宮しきゅう内ないで生存せいぞん可能かのうであり、最大さいだいは120時間じかん(5日にち)である。

これらの期間きかんおよび間隔かんかくは、オギノ式しきなどを活用かつようする夫婦ふうふにとって重要じゅうような要因よういんである。

女性じょせいの出生しゅっしょう力りょく[編集へんしゅう]

米国べいこくでは初潮しょちょうの平均へいきん年齢ねんれいが約やく12.5歳さいである[38]。月経げっけい後ごの少女しょうじょでも、初潮しょちょう後ごの最初さいしょの年としは周期しゅうきの約やく 80%が無む排卵はいらん性せい月経げっけい（実際じっさいには排卵はいらんが起おこらない）で、これは3年ねん目めに50%、6年ねん目めには10%となる[39]。

閉経へいけいは、女性じょせいの中年ちゅうねん期き（48歳さいから55歳さい）に起おこる[40][41]。閉経へいけい期きに、卵巣らんそうによるホルモン産さん生せいが減少げんしょうし、最終さいしゅう的てきに卵巣らんそうの主要しゅよう機能きのう、特とくに子宮しきゅう内ない膜まく形成けいせい（期間きかん）が二度にどと起おこらなくなる。これは女性じょせいの人生じんせいにおける妊娠にんしん可能かのう段階だんかいの終おわりと見みなされている。

不ふ妊にん治療ちりょう薬やくや体外たいがい受精じゅせいを使つかわずに妊娠にんしんを試こころみる女性じょせいには、次つぎのような年齢ねんれいと女性じょせいの出生しゅっしょう力りょくとの影響えいきょうが見みられる[42]。

  • 30歳さいで
    • 75%は、1年ねん以内いないに子供こどもを産うむのは終おわりだと想像そうぞうする。
    • 91%は、4年ねん以内いないに子供こどもを産うむのは終おわりだと想像そうぞうする。
  • 35歳さいで
    • 66%は、1年ねん以内いないに子供こどもを産うむのは終おわりだと想像そうぞうする。
    • 84%は、4年ねん以内いないに子供こどもを産うむのは終おわりだと想像そうぞうする。
  • 40歳さいで
    • 44%は、1年ねん以内いないに子供こどもを産うむのは終おわりだと想像そうぞうする。
    • 64%は、4年ねん以内いないに子供こどもを産うむのは終おわりだと想像そうぞうする[42]。

妊娠にんしんを試こころみる夫婦ふうふの研究けんきゅうでは良好りょうこうな結果けっかが出でている。ヨーロッパ人じん女性じょせい770人にんを対象たいしょうとした2004年ねんの研究けんきゅうでは、35-39歳さいの女性じょせいの82%が1年ねん以内いないに妊娠にんしんし[43]、デンマーク人じん女性じょせい2820人にんを対象たいしょうとした2013年ねんの研究けんきゅうでは、35-40歳さいの78%が1年ねん以内いないに妊娠にんしんに至いたったことが確認かくにんされた[44]。

米国べいこく生殖せいしょく医い学会がっかいに承認しょうにんされた報告ほうこく書しょによると、特定とくていの性交せいこう時期じきや体位たいいおよび性交せいこう後ごの休息きゅうそく姿勢しせいは出生しゅっしょう力りょくに大たいした影響えいきょうを及およぼさない。性交せいこう体位たいいに関係かんけいなく、精子せいしは射精しゃせいの数すう秒びょう後ごに子宮しきゅう頸管で見みつけることができる[45]。

排卵はいらん誘発ゆうはつ剤ざいや体外たいがい受精じゅせいの使用しようは、高齢こうれい妊娠にんしんの機会きかいを高たかめることができる[46]。不ふ妊にん治療ちりょうによる妊娠にんしん成功せいこうの記録きろくは67歳さいの女性じょせいと記しるされている[47]。2004年ねん以降いこうの研究けんきゅうで、哺乳類ほにゅうるいは従来じゅうらい考かんがえられていたような有限ゆうげん数すうで生うまれるのではなく、生涯しょうがいを通つうじて新あたらしい卵子らんしを生産せいさんし続つづける場合ばあいがあることが示しめされた。米国べいこくマサチューセッツ総合そうごう病院びょういんの研究けんきゅう者しゃは、仮かりに人間にんげんでも卵子らんしが毎月まいつき新あらたに作つくられるのなら女性じょせい生殖せいしょく器きの老化ろうかに関かんする現在げんざいのあらゆる学説がくせつを見直みなおさなければならないと述のべているが、2010年ねん時点じてんでこれは憶測おくそくである[48][49]。

NPO団体だんたいマーチ・オブ・ダイムス (March of Dimes) によると「20-24歳さい女性じょせいの認識にんしきされた妊娠にんしんの約やく9%が流産りゅうざんに終おわった。同どうリスクは35-39歳さいで約やく20%、42歳さいまでに50%以上いじょうに上あがる」[50]という。先天せんてん異常いじょう（特とくに染色せんしょく体たいの数かずおよび配置はいちを伴ともなうもの）もまた母親ははおや年齢ねんれいと共ともに増加ぞうかする。先さきのNPOによると「ダウン症だうんしょうの赤あかちゃんを身みごもるリスクは25歳さいで1340人にんに1人ひとり。30歳さいの場合ばあいは940人にんに1人ひとり。35歳さいだと353人にんに1人ひとり。40歳さいでは85人にんに1人ひとり。45歳さいになるとリスクは35人にんに1人ひとりになる」[51]という。

男性だんせいの出生しゅっしょう力りょく[編集へんしゅう]

一部いちぶの研究けんきゅうは、高齢こうれい男性だんせいほど精液せいえきの量りょう・運動うんどう量りょう・形態けいたいが減少げんしょうすることを示唆しさしている[52]。女性じょせい年齢ねんれいを統制とうせいした研究けんきゅうで、30歳さい未満みまんの男性だんせいと50歳さい以上いじょうの男性だんせいの比較ひかくでは妊娠にんしん率りつが23%-38%の間あいだで相対そうたい的てきに減少げんしょうすることが判明はんめいした[52]。精子せいしの数かずは年齢ねんれいとともに減少げんしょうし、50-80歳さいの男性だんせいは20-50歳さいの男性だんせいと比較ひかくして精子せいしの産さん生せいペースは平均へいきん75%で、精巣せいそうの精細せいさい管かんに含ふくまれている成熟せいじゅくした精子せいしの量りょうに大おおきな差さがある[52]。

  • 20-39歳さい男性だんせいでは、精細せいさい管かんの90%に成熟せいじゅくした精子せいしが含ふくまれる。
  • 40-69歳さい男性だんせいでは、精細せいさい管かんの50%に成熟せいじゅくした精子せいしが含ふくまれる。
  • 80歳さい以上いじょうの男性だんせいでは、精細せいさい管かんの10%に成熟せいじゅくした精子せいしが含ふくまれる[53]。

男性だんせいの出生しゅっしょう率りつ低下ていかは、生活せいかつ習慣しゅうかん・環境かんきょう・心理しんり的てき要因よういんなど様々さまざまな要因よういんの影響えいきょうを受うける[54]。

一部いちぶの研究けんきゅうは、高齢こうれいな父親ちちおやの子供こどもほど健康けんこう上じょうの問題もんだいに関かんするリスクが増ふえることを示唆しさしているが、明確めいかくな関連かんれんは証明しょうめいされていない[55]。イスラエルの大だい規模きぼな研究けんきゅうでは、40歳さい以上いじょう男性だんせいの子供こどもが自閉症じへいしょうスペクトラム障害しょうがいを持もつ可能かのう性せいが30歳さい未満みまん男性だんせいの時ときの5.75倍ばいになることが示唆しさされた（出生しゅっしょう年ねんや社会しゃかい経済けいざい的てき地位ちいや母親ははおや年齢ねんれいは統制とうせい済ずみ）[56]。父親ちちおや年齢ねんれいの増加ぞうかは統合とうごう失調しっちょう症しょうと直接ちょくせつ相関そうかんすることが示唆しさされているものの、証明しょうめいされていない[57][58][59][60][61]。

オーストラリアの研究けんきゅう者しゃは、肥満ひまんが精子せいしに微細びさいな損傷そんしょうを引ひき起おこし、健康けんこうな妊娠にんしんを阻害そがいする可能かのう性せいを示唆しさする証拠しょうこを発見はっけんした。彼かれらは、父親ちちおやが太ふとりすぎの時ときに受精じゅせい成功せいこうの可能かのう性せいが40%低ひくくなったと述のべている[62]。

アメリカ出生しゅっしょう学会がっかい（現げん:アメリカ生殖せいしょく医い学会がっかい）は、精子せいし提供ていきょう者しゃに年齢ねんれい制限せいげん50歳さい以下いかを推奨すいしょうしており[63]、イギリスの不ふ妊にん治療ちりょう院いんの多おおくが40歳さいまたは45歳さい以上いじょうの男性だんせいからの寄付きふを受うけ付つけないとしている[64]。

国くに別べつの人口じんこう動向どうこう[編集へんしゅう]

「歴史れきし人口じんこう学がく」および「人口じんこう転換てんかん」も参照さんしょう

フランス[編集へんしゅう]

1919年ねんから1945年ねんにかけての出産しゅっさん奨励しょうれい  (Pronatalist) 運動うんどうは、フランス人じん夫婦ふうふに自国じこくの出生しゅっしょう率りつ増加ぞうかにつながる愛国あいこく的てきな義務ぎむがあると説得せっとくできなかった。政府せいふでさえこの運動うんどうの支持しじに消極しょうきょく的てきだった。フランス政府せいふが直接的ちょくせつてきかつ恒久こうきゅう的てきに出産しゅっさん奨励しょうれいの取とり組くみに関与かんよしたのは1938年ねんから1939年ねんにかけての事ことだった。出生しゅっしょう率りつは1941年ねん後半こうはんに急増きゅうぞうし始はじめたが、その傾向けいこうは持続じぞくしなかった。1970年代ねんだいに始はじまった再度さいどの出生しゅっしょう率りつ低下ていかが人口じんこう統計とうけい学者がくしゃや政府せいふ関係かんけい者しゃの間あいだで大おおきな懸念けねんとなった[65]。2018年ねん半なかばに、単身たんしん女性じょせいや女性じょせい同性愛どうせいあいの両人りょうにん(lesbian couples)が不ふ妊にん治療ちりょうを受うけられる法案ほうあんが提出ていしゅつされた。2020年ねん初頭しょとうに、上院じょういんは160対たい116票ひょうでこの法案ほうあんを承認しょうにんした。性的せいてき嗜好しこうや婚姻こんいん状じょう況きょうに関係かんけいなく、全ぜん女性じょせいを対象たいしょうとした不ふ妊にん治療ちりょうの合法ごうほう化かに一いち歩ほ近ちかづいたことになる。まもなく、女性じょせい同性愛どうせいあい者しゃや単身たんしん女性じょせいが家庭かてい生活せいかつを始はじめるために他国たこくへ向むかう理由りゆうは無なくなる筈はずである[66]。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの人口じんこう統計とうけい」を参照さんしょう

1800年ねんから1940年ねんにかけて、米国べいこくでは出生しゅっしょう力りょくが低下ていかした。1900年代ねんだい初頭しょとうには避妊ひにん薬やくの改善かいぜんおよび性的せいてき関連かんれん情報じょうほうへのアクセス増大ぞうだいに関連かんれんして、1920年代ねんだいには「第だい1次じ」性せいの革命かくめいに関連かんれんして、出生しゅっしょう率りつが著いちじるしく減少げんしょうした。

米国べいこくの粗そ出生しゅっしょう率りつ(人口じんこう1000人にんあたりの出生しゅっしょう数すう)グラフ。赤あかがベビーブーム時期じき[67]

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「ベビーブーム#アメリカ」を参照さんしょう

1940年ねん以降いこう、出生しゅっしょう力りょくは突然とつぜん再ふたたび上あがり始はじめ、1957年ねんに新あらたなピークに達たっした。1960年ねん以降いこう、出生しゅっしょう率りつは急速きゅうそくに低下ていかし始はじめた。ベビーブーム時期じき(1946-1964)に、女性じょせいは早はやく結婚けっこんして早はやく赤あかちゃんを身みごもったが、35歳さい以降いこうの母親ははおやから生うまれた子供こどもの数かずは増ふえなかった[68]。

性せいの革命かくめい[編集へんしゅう]

1960年ねん以降いこう、新あたらしい避妊ひにん方法ほうほうが利用りよう可能かのうになり、理想りそう的てきな家族かぞくの大おおきさが子供こども3人にんから2人にんに減少げんしょうした。夫婦ふうふは結婚けっこんおよび初産しょさんを遅おくらせ、3人にん目めと4人にん目めの出産しゅっさん数すうを急激きゅうげきに減へらした[69]。

不ふ妊にん[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「不ふ妊にん」を参照さんしょう

不ふ妊にんは、主おもに妊娠にんしんに関与かんよする人ひとの生物せいぶつ学がく的てきな不備ふびを指さす。不ふ妊にんはまた、全ぜん期間きかんで妊娠にんしんに至いたることのできない女性じょせいの状態じょうたいを指さす場合ばあいもある[注釈ちゅうしゃく 2]。不ふ妊にんには、医療いりょう介入かいにゅうで治療ちりょう可能かのうなものも含ふくめて、多おおくの生物せいぶつ学がく的てき原因げんいんが存在そんざいする[71]。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 日本にっぽんをはじめ、少しょう産さんを人口じんこう問題もんだいの課題かだいとする西欧せいおう諸国しょこくは「少子化しょうしか対策たいさく」や「児童じどう・家庭かてい政策せいさく」を実施じっししている[2]。一方いっぽう、中国ちゅうごくでは多産たさんを抑制よくせいする目的もくてきで1979年ねんより一人ひとりっ子こ政策せいさくを導入どうにゅうした経緯けいいがあり、人口じんこう構成こうせい上じょうの諸しょ問題もんだいから2014年ねん以降いこうは同どう政策せいさくを緩和かんわしている[3]。
  2. ^ 日本にっぽんでは、子こを産うまない（つまり妊娠にんしんに至いたらない）女性じょせいのことを「石女うまずめ（うまずめ）」と蔑称べっしょうすることもあった[70]。

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