大内おおうち文化ぶんか

大内おおうち文化ぶんかを代表だいひょうする建築けんちく物ぶつのひとつである瑠璃光寺るりこうじ五重塔ごじゅうのとう（国宝こくほう）

大内おおうち文化ぶんか（おおうちぶんか）とは、室町むろまち時代ときよの山口やまぐちを中心ちゅうしんとする文化ぶんかを指さす用語ようご。大内おおうち氏し第だい9代だい当主とうしゅ大内おおうち弘世ひろよ（1325年ねん - 1380年ねん）が京きょうの都とを模倣もほうし街がいづくりを行おこなったのを発端ほったんとする。第だい14代だい大内おおうち政弘まさひろ（1446年ねん - 1495年ねん）が文化ぶんかを奨励しょうれいし、第だい16代だい大内おおうち義隆よしたか（1507年ねん - 1551年ねん）が大だい寧やすし寺てらの変へんで倒たおれるまで大内おおうち氏しの当主とうしゅにより文化ぶんか人じんの庇護ひごが行おこなわれ、訪問ほうもん者しゃたちが担にない手てとなって北山きたやま文化ぶんか・東山ひがしやま文化ぶんかと大陸たいりく文化ぶんかを融合ゆうごうさせた独自どくじ文化ぶんかが隆盛りゅうせいした。

概要がいよう

南朝なんちょうから北朝ほくちょうへ帰順きじゅんし、周防すおう長門ながと両国りょうこくを統一とういつした大内おおうち弘世ひろよは第だい2代だい将軍しょうぐん足利あしかが義詮よしあきらに謁見えっけんするため、1363年ねんに上洛じょうらくした。この時とき、京きょうと山口やまぐちの地形ちけいが似にていることから山口やまぐちを「西にしの京きょう」とすべく大路おおじ・小路こうじといった京きょう風ふう市街しがい整備せいびを行おこなうとともに文化ぶんか人じんを招まねいた。室町むろまち中期ちゅうき以降いこうの大内おおうち氏しは日本一にっぽんいちの経済けいざい基盤きばんを有ゆうするようになり、その財力ざいりょくを頼たよる文化ぶんか人じんや公家くげが戦乱せんらんで荒廃こうはいした京きょうより多数たすう来訪らいほうしたことで末期まっきは京きょうをしのぐほど繁栄はんえいした。また、大内おおうち氏しは東ひがしアジア（明あきら・朝鮮ちょうせん・琉球りゅうきゅう等ひとし）との交易こうえき・交流こうりゅうを盛さかんに行いっていたため、明あきら・朝鮮ちょうせんの影響えいきょうも加くわわった、独自どくじの大内おおうち文化ぶんかが発展はってんした。このように、外国がいこくの文化ぶんかを受うけ入いれてさらに独自どくじに発展はってんさせていった大内おおうち文化ぶんかの特徴とくちょうについて、地元じもとの山口やまぐち市しは先進せんしん性せい・先見せんけん性せい・寛容かんよう性せい・独自どくじ性せい・国際こくさい性せいが見みられると表現ひょうげんしている。当時とうじの山口やまぐちの繁栄はんえいぶりはルイス・フロイスやフランシスコ・ザビエルの記述きじゅつにもみられるが、多おおくは室町むろまち時代じだい末期まっきの戦乱せんらんの戦火せんかで焼失しょうしつした。現在げんざいでは、瑠璃光寺るりこうじ五重塔ごじゅうのとうや雪舟せっしゅう庭にわは現存げんそんしており大内おおうち文化ぶんかを代表だいひょうする建築けんちく物ぶつとなっている。

なお、大内おおうち氏し時代じだいの山口やまぐちには、1551年ねんに大内おおうち義隆よしたかがフランシスコ・ザビエルの滞在たいざいとキリスト教きりすときょう布教ふきょうを許ゆるしたため、日本にっぽん初はつの南蛮寺なんばんじ（大道寺だいどうじ）でクリスマス行事ぎょうじ（日本にっぽんのクリスマスは山口やまぐちから）が行おこなわれるなど、西洋せいようの文化ぶんかも流入りゅうにゅうしていた。

大内おおうち文化ぶんかを支ささえた経済けいざい基盤きばん

大内おおうち氏しは広大こうだいな領国りょうごくを支配しはいしていたが石高いしたか自体じたいは突出とっしゅつしていたわけではない。しかし商業しょうぎょう地ち博多はかた・港町みなとちょう門司もじの支配しはいや博多はかた商人しょうにんによる貿易ぼうえきや銀山ぎんざん開発かいはつの運上うんじょう益えきは莫大ばくだいであり経済けいざい力りょくは諸しょ大名だいみょうの中なかで突出とっしゅつしていた。大内おおうち氏しは倭やまと寇を取とり締しまることで明あきや朝鮮ちょうせんと私わたし貿易ぼうえきを行おこない利益りえきを得えていたが、後期こうきには「日本にっぽん国王こくおう之の印しるし（毛利もうり博物館はくぶつかん所蔵しょぞう）」の通信つうしん符ふを用もちい対外たいがい貿易ぼうえきを行おこなうようになる。すなわち1468年ねん成なり化かの勘合かんごう、1523年ねん正徳まさのりの勘合かんごうを手てに入いれ勘合かんごう貿易ぼうえきを独占どくせんすべく細川ほそかわ氏しと争あらそい（寧やすし波はの乱らんなど）貿易ぼうえき独占どくせん権けんを手てに入いれた。また、石見いわみ銀山ぎんざんの銀ぎん産出さんしゅつ量りょうを灰吹はいふき法ほうの成功せいこうにより飛躍ひやく的てきに増大ぞうだいさせるとその量りょうは世界せかいの三さん分ぶんの一いちを占しめた。

勘合かんごう貿易ぼうえきにおける主おもな輸入ゆにゅう品ひんと輸出ゆしゅつ品ひん

• 輸出ゆしゅつ品ひん - 硫黄いおう・銀ぎん・銅どうなどの鉱物こうぶつ、漆器しっき、扇子せんす、刀剣とうけん、屏風びょうぶ、硯すずり
• 輸入ゆにゅう品ひん - 明あきら銅銭どうせん（永楽えいらく通宝つうほう）、生糸きいと、絹織物きぬおりもの、典籍てんせき、陶器とうき

大内おおうち氏しは主力しゅりょく輸出ゆしゅつ品ひんを領内りょうないで確保かくほしようと尽力じんりょくしている。鉱物こうぶつは石見いわみ大森おおもり銀山ぎんざん・佐東さとう銀山ぎんざん・長登ながのぼり銅山どうざん等ひとしを有ゆうしていた。寺尾てらお鉱山こうざんなどに精錬せいれんした遺構いこうがあり、精製せいせい技術ぎじゅつを開発かいはつしこれらの産出さんしゅつを増ふやすことに努つとめていた様子ようすが窺うかがえる。また、大内おおうち塗ぬり、赤間あかま硯すずり、長州ちょうしゅう鍔つばの職人しょくにんを保護ほご、奨励しょうれいすることや文化ぶんか人じんを招まねき庇護ひごすることはより質しつの高たかい輸出ゆしゅつ品ひんを産出さんしゅつすることにつながり、より多おおくの輸入ゆにゅう品ひんを手てに入いれることに繋つながった。大内おおうち氏しは文治ぶんじに傾倒けいとうし衰退すいたいしたが、文化ぶんか奨励しょうれいは貿易ぼうえきを通つうじて大内おおうち氏しの利益りえきに還元かんげんされる合理ごうり的てきシステムになっていた。また、大内おおうち氏しは1346年ねん頃ごろから大だい部分ぶぶんを輸入ゆにゅうに依存いぞんしていた絹織物きぬおりものの国内こくない生産せいさんにも尽力じんりょくし、絹きぬ普及ふきゅうと後ごの西陣織にしじんおりや博多織はかたおりに大おおきな影響えいきょうを与あたえた。

幻まぼろしの鉄砲てっぽう伝来でんらい

種子島たねがしま銃じゅうの伝来でんらい前まえから明あかりとの交易こうえきにより鳥銃ちょうじゅうと呼よばれる火縄銃ひなわじゅうが伝来でんらいしていた。しかし、大内おおうち氏しは鉄砲てっぽうの量産りょうさんよりも輸出ゆしゅつ品ひんの増産ぞうさんに努つとめており普及ふきゅうしなかった。

遺構いこう

常栄寺じょうえいじ雪舟せっしゅう庭にわ

凌雲りょううん寺跡てらあと

• 瑠璃光寺るりこうじ五重塔ごじゅうのとう（国宝こくほう。日本にっぽん三さん名めい塔とう）
• 古熊ふるくま神社じんじゃ本殿ほんでん（国くにの重要じゅうよう文化財ぶんかざい）
• 八坂神社やさかじんじゃ本殿ほんでん（国くにの重要じゅうよう文化財ぶんかざい）
• 常栄寺じょうえいじ雪舟せっしゅう庭にわ（国くにの史跡しせき及および名勝めいしょう）
• 龍りゅう福ぶく寺てら（大だい寧やすし寺てらの乱らんで焼失しょうしつ。現在げんざいの龍りゅう福ぶく寺てらは別べつの場所ばしょに復興ふっこうされたもの）
• 花岡はなおか八幡宮はちまんぐう閼伽井い坊ぼう多宝塔たほうとう（国くにの重要じゅうよう文化財ぶんかざい）
• 凌雲りょううん寺跡てらあと（国くにの史跡しせき）
• 大内おおうち氏し館かん（大内おおうち弘世ひろよの拠点きょてん。大だい寧やすし寺てらの乱らんで焼失しょうしつ。館かん跡あとの一部いちぶが現在げんざいの龍りゅう福ぶく寺てらとなっている）
• 築山つきやま館かん（大内おおうち義弘よしひろ以降いこうの拠点きょてん。大だい寧やすし寺てらの乱らんで焼失しょうしつ。館かん跡あとの一部いちぶが八坂神社やさかじんじゃ、築山つきやま神社じんじゃとなっている）
• 大道寺だいどうじ（日本にっぽん最初さいしょのキリスト教きりすときょう教会きょうかい。現在げんざいの聖せいサビエル記念きねん公園こうえん）
• 山口やまぐち大神宮だいじんぐう（大内おおうち義興よしおきにより伊勢神宮いせじんぐうより勧請かんじょう。明治めいじ以前いぜんに伊勢神宮いせじんぐうから直接ちょくせつ分霊ぶんれいされた唯一ゆいいつの神宮じんぐう）
• 筥崎宮はこざきぐう本殿ほんでん（山口やまぐちではないが大内おおうち義隆よしたかにより再建さいけんされ建築けんちく様式ようしきに影響えいきょうがみられる。国くにの重要じゅうよう文化財ぶんかざい）
• 宇佐うさ神宮じんぐう（大内おおうち盛見もりみにより造営ぞうえいされたが、大友おおとも宗麟そうりんの焼やき打うちにあい焼失しょうしつ）
• 竪たて小路こうじ（街まちづくりの名残なごりがみられる）
• 不動院ふどういん金堂こんどう（国宝こくほう。山口やまぐちの香積寺こうせきじから移築いちくされたもの）

大内おおうち版ばん

山口やまぐちでは大内おおうち版ばんと呼よばれる出版しゅっぱん事業じぎょうが盛さかんに行おこなわれた。京きょうの戦乱せんらんから逃のがれ歌道かどう・有職ゆうしょく・管かん紘ひろし・郢曲・装束しょうぞく・儒学じゅがくなどを学まなぶために訪おとずれる僧そう、学者がくしゃ、公家くげが多おおかった。しかし、翻訳ほんやく本ほんの出版しゅっぱんや明あきら、朝鮮ちょうせんから漢籍かんせきを取とり寄よせる唐本とうほん屋やなども存在そんざいしていたこと、また遣や明あかり船せんや私わたし貿易ぼうえきが活発かっぱつだった為ために海外かいがいから移住いじゅうして来くる者ものも多おおく国際こくさい色しょくも豊ゆたかであり京きょう風ふう文化ぶんかとは異ことなる面めんもみられる。大内おおうち氏し館かんには山口やまぐち殿中でんちゅう文庫ぶんこ（大内おおうち文庫ぶんこ）と呼よばれる書庫しょこがあり国内外こくないがいの書籍しょせきが集あつめられていた。

• 蔵ぞう乗法じょうほう数すう（大内おおうち盛見もりみ）
• 拾ひろえ塵ちり和歌集わかしゅう（大内おおうち政弘まさひろ）
• 聚分韻いん略りゃく（大内おおうち政弘まさひろ）
• 大内おおうち問答もんどう（大内おおうち義興よしおき）
• 大内おおうち版ばん三さん重じゅう韻いん（大内おおうち義隆よしたか）
• 法ほう蓮華れんげ経けい板木はんぎ（氷上山ひかみさん興隆寺こうりゅうじ）

訪問ほうもん者しゃ

• 雪舟せっしゅう（水墨すいぼく画が）
• 宗祇そうぎ（連歌れんが師し）
• 策さく彦周良りょう（僧侶そうりょ）
• 趙ちょう秩（明人あきと）
• 金春こんぱる禅竹ぜんちく（能のう作者さくしゃ）
• 猪苗代いなわしろ兼載けんさい（連歌れんが師し）
• 宗そう碩せき（連歌れんが師し）
• 上杉うえすぎ憲実のりざね（関東かんとう管領かんりょう）
• 足利あしかが義稙よしたね（第だい10代征夷大将軍せいいたいしょうぐん）
• 三条さんじょう公こう敦あつし（公家くげ、右大臣うだいじん）
• 飛鳥井あすかい雅俊まさとし（公家くげ、権けん大納言だいなごん）
• フランシスコ・ザビエル（宣教師せんきょうし）

終焉しゅうえん

大内おおうち義隆よしたかは1542年ねん出雲いずも遠征えんせい失敗しっぱい後ご、武断ぶだん派はを遠とおざけ、文治ぶんじ派は相良さがら武たけ任つとむらを重用じゅうようし、公家くげら文化ぶんか人じんへの支出ししゅつが増ますに伴ともない、領国りょうごくへの課税かぜいは増まし家臣かしんや国人くにびとの不満ふまんは高たかまっていった。重臣じゅうしんの陶とう隆房たかふさや内藤ないとう興きょう盛もりら有力ゆうりょく守護しゅご代だいは大内おおうち氏しの凋落ちょうらくを恐おそれ、1551年ねん大だい寧やすし寺てらの変へんを起おこし大内おおうち義隆よしたかを自害じがいさせるだけでなく、山口やまぐちに滞在たいざいしていた公家くげまでも排除はいじょしたため大内おおうち氏し主導しゅどうにより成なり立たっていた大内おおうち文化ぶんかは廃すたれた。その後ご、杉重すぎじゅう輔の反乱はんらんや大内おおうち輝弘てるひろの乱らんなどにより山口やまぐちは炎上えんじょうした。戦火せんかを逃のがれた物ものも、国清寺こくせいじ（現げん・洞ほら春はる寺てら）の文化財ぶんかざいが毛利もうり輝元てるもとにより近江おうみの園城寺おんじょうじに寄進きしんされる等とう、毛利もうり氏しの政治せいじ工作こうさくに利用りようされ四散しさんした。

関連かんれん項目こうもく

• 室町むろまち時代ときよ
• 大内おおうち義隆よしたか
• 北山きたやま文化ぶんか
• 東山ひがしやま文化ぶんか

外部がいぶリンク

• 山口やまぐちの歴史れきしと文化ぶんか - 山口やまぐち市し観光かんこう情報じょうほう＜西にしの京きょうやまぐち＞
• 大内おおうち文化ぶんかまちづくり - 山口やまぐち市し文化ぶんか政策せいさく課か
• 大内おおうち文化ぶんか探訪たんぼう会かい
• 大内おおうち文化ぶんかと山口やまぐち - 湯田温泉ゆだおんせん 松田まつだ屋やホテル