広域こういき増強ぞうきょうシステム

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
Wide Area Augmentation System (WAAS)

広域こういき増強ぞうきょうシステム(こういきぞうきょうしすてむ、英語えいご: Wide Area Augmentation System(WAAS))は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)を補強ほきょうするために、精度せいど完全かんぜんせい可用性かようせい向上こうじょうさせることを目的もくてきとした連邦れんぽう航空局こうくうきょく開発かいはつした航空こうくう航法こうほう援助えんじょシステム。

基本きほんてきに、WAASは航空機こうくうきがそのカバーエリアない空港くうこうへの精密せいみつアプローチをふくむ、飛行ひこうのすべての段階だんかいでGPSを依存いぞんできるようにすることを目的もくてきとしている[1]。これは、重要じゅうよう地域ちいきでは、地域ちいき増強ぞうきょうシステム(LAAS)を使用しようし、地上ちじょうがた衛星えいせい航法こうほう補強ほきょうシステム(GBAS)によってさらに強化きょうかすることが可能かのうである。

WAASは、きたアメリカハワイにある地上ちじょう基準局きじゅんきょくのネットワークを使用しようして、西半球にしはんきゅうのGPS衛星えいせい信号しんごうのわずかな変動へんどう測定そくていする。基準局きじゅんきょくからの測定そくていはマスターきょくおくられ、マスターきょく受信じゅしんした偏差へんさ補正ほせい (DC) をキューにれ、修正しゅうせいメッセージを静止せいし WAAS 衛星えいせいにタイムリーに (5びょう以上いじょうごと) 送信そうしん。これらの衛星えいせい補正ほせいメッセージを地球ちきゅうにブロードキャストし、WAAS対応たいおうGPS受信じゅしん補正ほせいメッセージを使用しようして位置いち計算けいさん精度せいど向上こうじょうさせている。

国際こくさい民間みんかん航空こうくう機関きかん (ICAO) は、このタイプのシステムを衛星えいせい航法こうほう補強ほきょうシステム(SBAS)とんでいる。ヨーロッパアジアでは、独自どくじのSBASを開発かいはつしている。欧州おうしゅう静止せいし衛星えいせいナビゲーションオーバーレイサービス (EGNOS)、日本にっぽんMulti-functional Satellite Augmentation System (MSAS)インドGPS支援しえんGEO拡張かくちょうナビゲーション英語えいごばん(GAGAN)、ロシアの差分さぶん補正ほせい監視かんしシステム英語えいごばん(SDCM)である。商用しょうようシステムには、StarFire英語えいごばんOmniSTAR英語えいごばんHemisphere GNSS英語えいごばん(Atlas)がある。


WAASの目的もくてき[編集へんしゅう]

一般いっぱんてきなWAASサービスエリア。あか最適さいてきなWAASカバーエリアをしめす。衛星えいせい形状けいじょう電離層でんりそう状態じょうたいにより、サービスの等高線とうこうせん時間じかんとも変化へんかする。

精度せいど[編集へんしゅう]

WAASシステムのおも目標もくひょうは、空港くうこう機器きき設備せつび設置せっちせずに、航空機こうくうきがカテゴリーIのアプローチをおこなえるようにすることであった。これにより、地上ちじょう設備せつびのない空港くうこうでも、あらゆる空港くうこうけにあたらしいGPSベースの計器けいき着陸ちゃくりくアプローチ英語えいごばん開発かいはつできるようになる。カテゴリIのアプローチでは、よこ方向ほうこうに16メートル (52 ft)、垂直すいちょく方向ほうこうに4.0メートル (13.1 ft)の精度せいど必要ひつようである[2]

この目標もくひょう達成たっせいするために、WAASの仕様しようでは、すくなくとも95%のかくりつで7.6メートル (25 ft)以下いか位置いち精度せいど(よこ方向ほうこう垂直すいちょく方向ほうこう両方りょうほう測定そくてい)を提供ていきょうことがもとめられている[3]特定とくてい場所ばしょでのシステムの実際じっさい性能せいのう測定そくていでは、通常つうじょうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく本土ほんど大半たいはんカナダアラスカだい部分ぶぶんで、よこ方向ほうこうに1.0メートル (3 ft 3 in)、垂直すいちょく方向ほうこうに1.5メートル (4 ft 11 in)以上いじょう精度せいどられることがしめされている[4]

完全かんぜんせい[編集へんしゅう]

ナビゲーションシステムの完全かんぜんせいには、その信号しんごう潜在せんざいてき危険きけんこす可能かのうせいのある誤解ごかいまねくデータを提供ていきょうしているときにタイムリーな警告けいこく提供ていきょうする機能きのうふくまれる。WAAS仕様しようでは、システムがGPSまたはWAASネットワークのエラーを検出けんしゅつし、6.2びょう以内いないにユーザに通知つうちする必要ひつようがある[3]

WAAS が計器けいき飛行ひこう方式ほうしき(くもなか飛行ひこうする)にたいして安全あんぜんであることを証明しょうめいするには、精度せいど要件ようけんえるエラーが検出けんしゅつされない可能かのうせい非常ひじょうちいさいことを証明しょうめいする必要ひつようがある。具体ぐたいてきには、かくりつは1×10−7記載きさいされており、年間ねんかん3びょう以下いか不良ふりょうデータに相当そうとうする。これにより、受信じゅしん自律じりつてき完全かんぜんせい監視かんし英語えいごばん(RAIM)と同等どうとう以上いじょう整合せいごうせい情報じょうほう提供ていきょうされる[5]

可用性かようせい[編集へんしゅう]

可用性かようせいとは、ナビゲーション システムが精度せいど整合せいごうせい要件ようけんたしているかくりつす。WAASが登場とうじょうするまえは、GPSの仕様しようにより、システムが使用しようできない状態じょうたい年間ねんかん合計ごうけい4日間にちかん(99%の可用性かようせい)まで許容きょようされていた。WAAS仕様しようでは、サービスエリア全体ぜんたいで 99.999%(five nines)の可用性かようせい義務付ぎむづけられており、これは年間ねんかん5ふんきょうのダウンタイムに相当そうとうする[3][5]

精度せいど比較ひかく[編集へんしゅう]

各種かくしゅ無線むせんナビゲーションシステムの精度せいど比較ひかく
システム 95%の精度せいど
(よこ方向ほうこう/垂直すいちょく方向ほうこう)
詳細しょうさい
LORAN-C 仕様しよう 460 m / 460 m LORAN-Cシステムの指定していされた最低さいてい精度せいど
距離きょり測定そくてい装置そうち (DME) 仕様しよう 185 m (直線ちょくせん) DMEは、無線むせん通信つうしんにより航空機こうくうき地上ちじょうきょくとの直線ちょくせん距離きょり航空機こうくうきから測定そくていする装置そうち
GPS 仕様しよう 100 m / 150 m Selective Availability (SA) オプションがオンになっているGPSシステムの指定してい精度せいど。SAは2000ねん5がつ2にち解除かいじょされた。
LORAN-C 測定そくていされた再現さいげんせい 50 m / 50 m アメリカ沿岸えんがん警備けいびたいは、時差じさモードで50メートルの「位置いちもどる」精度せいど報告ほうこく
ディファレンシャルGPS (DGPS) 10 m / 10 m ディファレンシャルGPS (DGPS) 最低さいてい精度せいどアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく運輸省うんゆしょうアメリカ国防総省こくぼうそうしょう共同きょうどう発表はっぴょうした2001ねん連邦れんぽう無線むせんナビゲーションシステム(FRS)レポートによると、精度せいど施設しせつからの距離きょりによって低下ていかし、1m未満みまん場合ばあいもあるが、通常つうじょうは10m未満みまん精度せいど
eLORAN再現さいげんせい 8 m / 8 m 利用りよう可能かのうなすべての信号しんごうとHフィールドアンテナを同時どうじ使用しよう報告ほうこくされた精度せいど
広域こういき増強ぞうきょうシステム(WAAS)仕様しよう 7.6 m / 7.6 m こう精度せいどアプローチで使用しようするためにWAASが提供ていきょうしなければならない最低さいてい精度せいど
GPS 測定そくてい 2.5 m / 4.7 m FAAのNational Satellite Test Bed(NSTB)の調査ちょうさ結果けっかもとづいて、Selective Availability (SA) をオフにした状態じょうたいでのシステムの実際じっさい測定そくてい精度せいど(受信じゅしんエラーをのぞく)。
広域こういき増強ぞうきょうシステム(WAAS)測定そくてい 0.9 m / 1.3 m NSTBの調査ちょうさ結果けっかもとづく、システムの実際じっさい測定そくていされた精度せいど(受信じゅしんエラーをのぞく)。
地域ちいき増強ぞうきょうシステム (LAAS) 仕様しよう LAASプログラムの目標もくひょうは、カテゴリーIIIC 機能きのう提供ていきょうすることで、航空機こうくうきは「オートランド」システムを利用りようして視界しかいゼロで着陸ちゃくりくすることができ、<1mという非常ひじょうたか精度せいどしめ[6]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Federal Aviation Administration (FAA) FAQ for WAAS
  2. ^ Federal Aviation Administration (FAA), Press Release FAA Announces Major Milestone for Wide Area Augmentation System (WAAS). March 24, 2006.
  3. ^ a b c FAA. Specification for the Wide Area Augmentation System(WAAS) Archived 2008-10-04 at the Wayback Machine.. FAA-E- 2892b. August 13, 2001.
  4. ^ National Satellite Test Bed (NSTB), WAAS PAN Report (July 2006). Retrieved November 22nd, 2006.
  5. ^ a b US House of Representatives Committee on Transportation's Subcommittee on Aviation Hearing on Cost Overruns & Delays in the FAA's Wide Area Augmentation System (WAAS) & Related Radio Spectrum Issues. June 29, 2000
  6. ^ Aircraft Instrumentation and Systems. page 279 chapter "9. Aircraft Navigation Systems" section "2 Ground Based Augmentation Systems"

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]