広浜ひろはま鉄道てつどうの電車でんしゃ

広浜ひろはま鉄道てつどうの電車でんしゃ（こうひんてつどうのでんしゃ）では、広浜ひろはま鉄道てつどうおよびその前身ぜんしんである広島ひろしま電気でんき（現在げんざいの西日本旅客鉄道にしにほんりょかくてつどう可部線かべせんの前身ぜんしん）が1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）の電化でんか後のちに製造せいぞうした電車でんしゃ群ぐんについて記述きじゅつする。

概要がいよう

広浜ひろはま鉄道てつどうは、1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）9月がつ1日にちに鉄道てつどう省しょう（当時とうじ）に買収ばいしゅうされ可部線かべせんとなったが、この時点じてんで3形式けいしき9両りょうが在籍ざいせきしており、モハ90形かたち、モハ91形かたち、モハニ92形かたちとされた。いずれも全長ぜんちょう12 mから13 mのボギぼぎー車しゃで、集しゅう電でん装置そうちはポール式しきであった。使用しよう電源でんげんは、直流ちょくりゅう600 Vである。モハ90形かたちとモハニ92形かたちは1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）製せいで直接ちょくせつ制御せいぎょの同系どうけい車しゃ、モハ91形かたちは1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）製せいの間接かんせつ制御せいぎょ車くるまである。

これらの電車でんしゃは、1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）8月がつ6日にち、広島ひろしま市しに原子げんし爆ばく弾だんが投下とうかされた際さいに、たまたま幡生はたぶ工こう機き部ぶに入場にゅうじょうしていた2両りょうを除のぞく全車ぜんしゃが被災ひさいし、被爆ひばく電車でんしゃとしても知しられている。

形式けいしき

モハ90形かたち・モハニ92形かたち

モハ90005（横川よこがわ駅えき、1938年ねん撮影さつえい）
後ごの熊本くまもと電鉄でんてつモハ71（現存げんそん）。

1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）に日本車輌製造にっぽんしゃりょうせいぞう（日にち車しゃ）および藤永ふじなが田た造船ぞうせん所しょで製造せいぞうされた半はん鋼はがね製せいの小型車こがたしゃ。全ぜん室しつ客室きゃくしつ車しゃは日にち車しゃ製せいで1 - 5、客室きゃくしつ荷物にもつ合ごう造づくり車しゃは藤永ふじなが田た製せいで101、102と称しょうした。1 - 5の最大さいだい長ちょうは11,849 mm、最大さいだい幅はばは2,560 mm、最大さいだい高だかは3,807 mm、自重じちょうは17.78 t、台車だいしゃ形式けいしきは日にち車しゃM-12。101・102の最大さいだい長ちょうは11,789 mm、最大さいだい幅はばは2,531 mm、最大さいだい高だかは3,857 mm、自重じちょうは17.78 tである。

前面ぜんめんは両りょう車くるまとも軽かるい曲面きょくめんを付つけた非ひ貫通かんつう式しきの3枚まい窓まどで、前ぜん照あきら灯とうは腰板こしいた中央ちゅうおう部ぶに設置せっちされている。側面そくめん窓まど配置はいちは1 - 5が1D8D1、101・102がdD（荷に）2d5D1で、101・102の荷物にもつ用よう扉とびらは両開りょうびらき式しきである。屋根やねは単純たんじゅんな丸まる屋根やねで、前部ぜんぶの雨あめ樋といは一直線いっちょくせんである。前述ぜんじゅつのように集しゅう電でん方式ほうしきはポール式しきで、屋根やねの前後ぜんごに1本ほんずつ設置せっちされている。制御せいぎょ方式ほうしきは直接ちょくせつ式しきで、出力しゅつりょく48.5 kWの主しゅ電動でんどう機き（省しょう形式けいしきMT31）2個こを制御せいぎょし、歯車はぐるま比ひは70:21（3.33）である。

1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）、広島ひろしま電気でんきが広浜ひろはま鉄道てつどうに鉄道てつどう事業じぎょうを譲渡じょうとした際さいに、4は忌いみ番ばんとしてこの年としに増ふえ備された6、7（モハ91形かたち）に続つづく8に改あらため番ばんされている。

1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）の国有こくゆう化かに際さいしては、1 - 3、5、8は旧きゅう番号ばんごう順じゅんにモハ90形がた（90001 - 90005）、101、102はモハニ92形がた（92001、92002）に改あらためられた。

モハニ92形がた（92001、92002）は1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）以降いこう、戦時せんじ下したの輸送ゆそう力りょく増強ぞうきょうのため、吹田すいた工場こうじょうにおいて荷物にもつ室しつを客室きゃくしつに改造かいぞうし、モハ90形かたち（90006、90007）に編入へんにゅうされた。両りょう車くるまの改造かいぞう後ごの形態けいたいについては、記録きろくが伝つたわっていない。

モハ91形かたち

モハ91002（横川よこがわ駅えき、1938年ねん撮影さつえい）
同車どうしゃはこの7年ねん後ご、同どう駅えきホームで被爆ひばくすることになる。

1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）に藤永ふじなが田た造船ぞうせん所しょで2両りょうが製造せいぞうされた増ぞう備車で、6、7と称しょうした。車体しゃたいは若干じゃっかん大型おおがた化かされて全長ぜんちょうは13,000 mm、最大さいだい幅はばは2,640 mm、最大さいだい高だかは3,885 mm、自重じちょうは23.50 tである。運転うんてん室しつの直後ちょくごに客きゃく用よう扉とびらを設もうけた基本きほん構造こうぞうは同一どういつで、側面そくめん窓まど配置はいちは1D9D1、前面ぜんめんは貫通かんつう扉とびらが設置せっちされている。前ぜん照あきら灯とうは屋根やね上じょうに設置せっちされている。制御せいぎょ装置そうちは間接かんせつ式しきとなり、出力しゅつりょく60 kWの主しゅ電動でんどう機き（省しょう形式けいしきMT32）2個こを制御せいぎょし、歯車はぐるま比ひは70:21（3.33）である。

1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）の国有こくゆう化かに際さいしては、モハ91形がた（91001、91002）に改あらためられた。

原子げんし爆ばく弾だん投下とうかによる被災ひさい

1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）8月がつ6日にち8時じ15分ふん、広島ひろしま市しに原子げんし爆ばく弾だんが投下とうかされた。可部線かべせんで使用しようされていたモハ90形かたちおよびモハ91形かたちは、幡生はたぶ工こう機き部ぶに入場にゅうじょうしていた90001と90005を除のぞいて、車両しゃりょう基地きちのあった横川よこがわ駅えき構内こうないで被災ひさいした。同どう駅えきホームに停車ていしゃしていた91002+90007は駅舎えきしゃと運命うんめいを共ともにし、90002+90006と91001+90004は車庫しゃこ内ないで焼失しょうしつした。洗浄せんじょう線せん上じょうにあって中ちゅう破やぶした90003は小倉おぐら工こう機き部ぶで復旧ふっきゅうされたものの、モハ90形かたち4両りょう（90002、90004、90006、90007）とモハ91形かたち2両りょう（91001、91002）は1946年ねん（昭和しょうわ21年ねん）に廃車はいしゃとなった。

残のこった3両りょう（90001、90003、90005）は、戦後せんごになって戦時せんじ買収ばいしゅう線区せんく（鶴見線つるみせん、宇部線うべせん、南武線なんぶせん、仙石線せんせきせん）から補充ほじゅう用ように集あつめられた買収ばいしゅう社しゃ形がた、省しょう形がた木造もくぞう車しゃとともに引ひき続つづき可部線かべせんで使用しようされ、日にち中ちゅうは単行たんこうで、ラッシュ時じは同どう形式けいしきの3両りょう編成へんせいで運用うんようされた。1948年ねん（昭和しょうわ23年ねん）10月がつ1日にちの架線かせん電圧でんあつ750 V昇圧しょうあつに際さいしては本ほん形式けいしきにも対応たいおう工事こうじが行おこなわれ、集あつまり電でん装置そうちがパンタグラフ（省しょう形式けいしきPS13）に交換こうかんされた。

1953年ねん（昭和しょうわ28年ねん）6月がつ1日にちに施行しこうされる車両しゃりょう形式けいしき称号しょうごう規程きてい改正かいせいではモハ1000形かたちへの改称かいしょうが予定よていされていたが、その直前ちょくぜんの同年どうねん3月がつ15日にちに運用うんようを離脱りだつし、3月20日にち付づけで廃車はいしゃとなった。廃車はいしゃ前まえには広島電鉄ひろしまでんてつや尾道おのみち鉄道てつどう等ひとしから譲渡じょうと申請しんせいがあったが、許可きょかされなかった。

熊本くまもと電鉄でんてつへの譲渡じょうと

熊本くまもと電鉄でんてつモハ71

廃車はいしゃ後ごは3両りょうとも幡生はたぶ工場こうじょうに保管ほかんされていたが、1954年ねん（昭和しょうわ29年ねん）7月がつに90003、90005が、1957年ねん（昭和しょうわ32年ねん）8月がつに90001がそれぞれ熊本くまもと電気でんき鉄道てつどうに譲渡ゆずりわたされ、同社どうしゃモハ71形かたち(71 - 73)となった。旧きゅう番号ばんごう→新しん番号ばんごうの対応たいおうは90005 → モハ71、90003 → モハ72、90001 → モハ73である。

営業えいぎょう時じの塗装とそうは上うえ半分はんぶんクリーム色しょく、下した半分はんぶんローズピンクのツートンカラーであった。小型車こがたしゃではあったが、出力しゅつりょく48.5 kWの主しゅ電動でんどう機き4基きを搭載とうさいした強力きょうりょくな車両しゃりょうであることから、1979年ねん（昭和しょうわ54年ねん）の貨物かもつ営業えいぎょう廃止はいしまでは貨車かしゃの牽引けんいんにも使用しようされた。その後ご、モハ73が1978年ねん（昭和しょうわ53年ねん）3月がつ6日にち、モハ72が1980年ねん（昭和しょうわ55年ねん）1月がつ17日にち、モハ71が1981年ねん（昭和しょうわ56年ねん）12月15日にち付づけでそれぞれ廃車はいしゃとなった。

モハ71は除籍じょせき後ごも北熊本きたくまもと工場こうじょう内ないの入にゅう換かわ用ようとして残存ざんそんし、2023年ねん（令れい和わ5年ねん）現在げんざいもイベントなどで構内こうないを自じ走はしすることがある（その際さいを含ふくめ大抵たいてい行先ゆくさき標しるべを掲示けいじしている）。1996年ねん（平成へいせい8年ねん）に塗装とそうが茶色ちゃいろ一色いっしょくに変更へんこうされ、2009年ねん（平成へいせい21年ねん）頃ごろには創業そうぎょう100周年しゅうねん記念きねん事業じぎょうとして再さい整備せいびされている。

関連かんれん項目こうもく

熊本くまもと電気でんき鉄道てつどうモハ71形かたち電車でんしゃに関かんするカテゴリ:

• 熊本くまもと電気でんき鉄道てつどうの電車でんしゃ
• 国鉄こくてつから譲渡じょうとされた鉄道てつどう車両しゃりょう