有馬ありま豊ゆたか氏し

凡例はんれい 有馬ありま 豊ゆたか氏し
有馬ありま豊ゆたか氏し像ぞう（篠山しのやま神社じんじゃ蔵くら）
時代じだい	安土あづち桃山ももやま時代じだい - 江戸えど時代じだい前期ぜんき
生誕せいたん	永えい禄ろく12年ねん5月3日にち（1569年ねん5月18日にち）
死没しぼつ	寛永かんえい19年ねん閏うるう9月29日にち（1642年ねん11月21日にち）
改名かいめい	万まん助すけ（幼名ようみょう）、豊ゆたか氏し、如夢道長みちなが（法名ほうみょう）
戒名かいみょう	春はる林りん院いん殿どの如夢道どう長大ちょうだい居士こじ
墓所はかしょ	福岡ふくおか県けん久留米くるめ市し京町きょうまちの江南えな山さん梅林寺ばいりんじ
官位かんい	従したがえ五ご位い下か、玄蕃げんば頭あたま、従したがえ四よん位い下か、侍従じじゅう、贈おく従したがえ三さん位い
幕府ばくふ	江戸えど幕府ばくふ
主君しゅくん	渡瀬わたせ繁しげる詮かい→豊臣とよとみ秀吉ひでよし→徳川とくがわ家康いえやす→秀忠ひでただ→家光いえみつ
藩はん	丹波たんば福知山ふくちやま藩はん主おも→筑後ちくご久留くる米べい藩はん主あるじ
氏族しぞく	摂津せっつ有馬ありま氏し
父母ちちはは	父ちち：有馬ありま則のり頼よりゆき、母はは：振ふ（別所べっしょ忠治ただはるの娘むすめ）
兄弟きょうだい	則のり氏し、豊ゆたか氏し、則のり次じ、豊ゆたか長ちょう、有馬ありま重頼しげより室しつ、渡瀬わたせ繁しげる詮かい正室せいしつ、石野いしの氏満うじみつ正室せいしつ、中山なかやま某ぼう室しつ
妻つま	正室せいしつ：徳川とくがわ家康いえやすの養女ようじょ・蓮はちす姫ひめ（松平まつだいら康かん直ただしの娘むすめ）
子こ	忠頼ただより、信しん堅けん、頼よりゆき次じ、鳥居とりい忠ただし房ぼう正室せいしつ、小出こいで吉よし重しげる正室せいしつ、土田つちた某ぼう室しつ、水野みずの守まもる信しん正室せいしつ 養女ようじょ：建部たけべ光重みつしげ室しつ（有馬ありま則のり氏しの娘むすめ）

有馬ありま 豊ゆたか氏し（ありま とようじ）は、安土あづち桃山ももやま時代じだいから江戸えど時代じだい前期ぜんきにかけての武将ぶしょう・大名だいみょう。丹波たんば国こく福知山ふくちやま藩はん主おも、のち筑後ちくご国こく久留くる米べい藩はんの初代しょだい藩主はんしゅ。久留くる米べい藩はん有馬ありま家か2代だい。

生涯しょうがい

永えい禄ろく12年ねん（1569年ねん）、摂津せっつ有馬ありま氏しの一族いちぞくである有馬ありま則のり頼よりゆきの次男じなんとして播磨はりま国こく三木みきの三さん津田つだ城じょうにて誕生たんじょうした。摂津せっつ有馬ありま氏しは、赤松あかまつ氏しの庶流で有馬ありま赤松あかまつ家かともいい、室町むろまち時代ときよに摂津せっつ国こく有馬ありま郡ぐんを本拠ほんきょとしたことから有馬ありまを苗字みょうじとした一族いちぞくである。豊ゆたか氏しの家いえはこの摂津せっつ有馬ありま氏しの一族いちぞくで、祖父そふである有馬ありま重則しげのりが三木みきに進出しんしゅつした。また、重則しげのりの正室せいしつは室町むろまち幕府ばくふ管領かんりょうの細川ほそかわ京きょう兆ちょう家いえの出身しゅっしんであり、豊ゆたか氏しは細川ほそかわ澄きよし元もとの曾孫そうそんにあたるという名門めいもんの血筋ちすじである。

豊ゆたか氏しは、少壮しょうそうより父ちちに従したがって各地かくちを転戦てんせんしたが、有馬ありま家かには兄あにで次期じき当主とうしゅ・則のり氏しがいたので、姉あね婿むこにあたる大名だいみょう・渡瀬わたせ繁しげる詮かいに仕つかえ、家老がろうを務つとめた。天正てんしょう20年ねん（1592年ねん）の豊臣とよとみ氏しによる朝鮮ちょうせん出兵しゅっぺいに際さいしては、兵へい200を率ひきいて名護屋なごや城しろに参さん陣じんしている。

文ぶん禄ろく4年ねん（1595年ねん）、渡瀬わたせ繁しげる詮かいが秀次しゅうじ事件じけんに連座れんざして改易かいえきされたうえに切腹せっぷくさせられると、豊臣とよとみ秀吉ひでよしの命いのちによりその所領しょりょうと家臣かしんを全すべて引ひき継つぎ、遠江とおとうみ国こく横須賀よこすか3万まん石せきの大名だいみょうとして秀吉ひでよしに仕つかえることとなった。

関ケ原せきがはらの戦たたかい

秀吉ひでよし死後しごは、父ちちの則のり頼よりゆきと共ともに徳川とくがわ家康いえやすに接近せっきんし、慶長けいちょう4年ねん（1599年ねん）正月しょうがつには家康いえやすの命いのちにより淀よどみ城じょうの守備しゅびに当あたっている。徳川とくがわ家かの御伽おとぎ衆しゅとして遇ぐうされ、慶長けいちょう5年ねん（1600年ねん）6月がつには家康いえやすの養女ようじょ・連れん姫ひめ（蓮はちす姫ひめ）を娶めとった。

同年どうねん9月がつの関ヶ原せきがはらの戦たたかいでは東ひがし軍ぐんに与くみし、美濃みの国こく岐阜ぎふ城じょう攻せめや関ヶ原せきがはら本戦ほんせんで後うしろ備そなえを務つとめた。その功こうにより同年どうねん12月がつ、3万まん石せきを加増かぞうされ、丹波たんば福知山ふくちやま6万まん石せきに転てん封ふうとなり、福知山ふくちやま藩はんを立だて藩はんした。慶長けいちょう7年ねん（1602年ねん）に父ちちが死去しきょすると、その遺のこ領りょう・三田みた2万まん石せきも継承けいしょうし、丹波たんば福知山ふくちやま8万まん石せきの大名だいみょうとなった。豊ゆたか氏しは初代しょだい福知山ふくちやま藩主はんしゅとして福知山ふくちやまの町まちを築きずいたことで知しられる。

大坂おおさかの陣じん

慶長けいちょう19年ねん（1614年ねん）からの大坂おおさかの陣じんにおいても徳川とくがわ方かたとして参戦さんせんして功こうを挙あげた。元和がんわ6年ねん（1620年ねん）12月8日にち、筑後ちくご久留くる米よねに21万まん石せきに加増かぞう転てん封ふうされ、国持くにもち大名だいみょうとなった。元和がんわ7年ねん（1621年ねん）3月がつ18日にち、久留米くるめに入部にゅうぶした。前ぜん藩主はんしゅ・田中たなか氏しの統治とうちの際さいに、支ささえ城じょうの一ひとつであった久留くる米べい城じょうは一国一城いっこくいちじょう令れいにより破やぶ却されており、豊ゆたか氏しは久留くる米べい城じょうの修築しゅうちくや城下町じょうかまちの整備せいびを進すすめながら領国りょうごく経営けいえいを開始かいしする。久留くる米城よねき修築しゅうちくに際さいしては、榎津えのきづ城じょう・福島ふくしま城じょうなど廃はい城じょうの資材しざいが転用てんようされた。また、同年どうねんには、丹波たんば福知山ふくちやまの瑞巌寺ずいがんじを久留米くるめに移うつし、梅林寺ばいりんじを建立こんりゅうしている。

寛永かんえい14年ねん（1637年ねん）11月に島原しまばらの乱らんが勃発ぼっぱつすると、豊ゆたか氏しは当時とうじ江戸えどにあり、老齢ろうれいであったが自みずから島原しまばらまで出陣しゅつじんしている。島原しまばらの乱らんでは久留くる米べい藩はんから6,300余人よにんが出陣しゅつじんしており、戦死せんし173人にん、手負ておい1412人にんを出だしている。

寛永かんえい19年ねん（1642年ねん）閏うるう9月がつ29日にち、74歳さいで死去しきょ。跡あとを長男ちょうなん・忠頼ただよりが継ついだ。豊ゆたか氏しの死後しご、近侍きんじの2名めいが殉死じゅんししており、のちに豊ゆたか氏しの廟びょうの傍かたわらに葬ほうむられている。明治めいじ10年ねんに篠山しのやま神社じんじゃが創建そうけんされると、豊ゆたか氏しも祀まつられた。

年譜ねんぷ

※日付ひづけ＝明治めいじ4年ねんまでは旧暦きゅうれき

• 文ぶん禄ろく3年ねん（1594年ねん）6月がつ、従したがえ五ご位い下か玄蕃げんば頭あたまに叙任じょにん。
• 文ぶん禄ろく4年ねん（1595年ねん）、豊臣とよとみ秀吉ひでよしに仕つかえ、3,000石せき。
  • 8月がつ、遠江とおとうみ国こく横須賀よこすかの地ちに3万まん石せき。
• 慶長けいちょう3年ねん（1598年ねん）8月がつ、豊臣とよとみ秀吉ひでよし薨去こうきょ後ご、徳川とくがわ家康いえやすに与くみし、徳川とくがわ家かの御伽おとぎ衆しゅとなる。
• 慶長けいちょう5年ねん（1600年ねん）
  • 6月がつ、徳川とくがわ家康いえやすの養女ようじょ連れん姫ひめと婚姻こんいん。関ヶ原せきがはらの戦たたかいでは東ひがし軍ぐんに従軍じゅうぐん。
  • 12月13日にち、丹波たんば国こく福知山ふくちやまで6万まん石せき。
• 慶長けいちょう7年ねん（1602年ねん）8月がつ以降いこう、父ちち則そく頼よりゆきの遺のこ領りょうであった摂津せっつ国こく三田みた2万まん石せきを継承けいしょうし、合計ごうけい8万まん石せき。
• 元和がんわ6年ねん（1620年ねん）閏うるう12月がつ8日にち、筑後ちくご国久くにひさ留とめ米まいに転てん封ふうし、21万まん石せきとなる。
• 寛永かんえい3年ねん（1626年ねん）8月がつ19日にち、従したがえ四よん位い下かに昇叙しょうじょし、玄蕃げんば頭あたま如元。
• 寛永かんえい11年ねん（1634年ねん）7月がつ16日にち、侍従じじゅう兼任けんにん。
• 寛永かんえい19年ねん（1642年ねん）閏うるう9月がつ29日にち、卒去そっきょ。享年きょうねん74。法号ほうごう：春はる林りん院いん殿どの如夢道どう長大ちょうだい居士こじ。
• 大正たいしょう5年ねん（1916年ねん）11月15日にち、政府せいふより贈おく従したがえ三さん位い。

人物じんぶつ・逸話いつわ

• 茶道さどうも嗜たしなむ文化ぶんか人じんで、利休りきゅう七なな哲あきらの一人ひとりに数かぞえられることもある。
• 若年じゃくねんの頃ころから深ふかく禅ぜんに帰依きえし、かたわら儒学じゅがくを学まなんだとされる。質素しっそな逸話いつわが残のこされているという。
• 本願寺ほんがんじの東西とうざい分裂ぶんれつに対たいして、東西とうざい両派りょうはのどちらにつくかは門徒もんとの自由じゆうとしていたが、晩年ばんねんの寛永かんえい14年ねん（1637年ねん）、東本願寺ひがしほんがんじ派はの排斥はいせきに転てんじた。これは、幕府ばくふ有力ゆうりょく者しゃから藩はん内ない門徒もんとの東本願寺ひがしほんがんじ帰属きぞくが要請ようせいされた際さい、藩政はんせいへの介入かいにゅうとみて強つよく反発はんぱつしたものとされる。なお、2代だい藩主はんしゅ・忠頼ただよりは逆ぎゃくに西本願寺にしほんがんじを排斥はいせきしている。
• 豊ゆたか氏しは築城ちくじょう・土木どぼくに詳くわしかったとされ、慶長けいちょう11年ねんには江戸城えどじょう本丸ほんまるの普請ふしん、慶長けいちょう12年ねん（1607年ねん）には駿府すんぷ城じょうの建築けんちく、慶長けいちょう16年ねん（1611年ねん）には禁裏きんりの造営ぞうえい、元和がんわ4年ねん（1618年ねん）には大だい坂城さかきの修繕しゅうぜん工事こうじにあたっている。一方いっぽうでこれらは藩はん財政ざいせいを圧迫あっぱくした。久留米くるめ入部にゅうぶ後ごも、城しろと城下町じょうかまちの建設けんせつに加くわえて島原しまばらの乱らんの負担ふたんが重かさなり、下記かきのような増徴ぞうちょうを図はかる一方いっぽうで、領民りょうみんの人心じんしん掌握しょうあくに腐心ふしんしている。
• 久留くる米べい藩はんでは増徴ぞうちょうのため、年貢ねんぐ徴収ちょうしゅうの基準きじゅんとして拝領はいりょう高だかの1.5倍ばいにあたる32万まん石せきを「内うち検けん高だか」として設定せっていした。同様どうようの政策せいさくを横須賀よこすかや福知山ふくちやまでも行おこなっており、「玄蕃げんば高だか」と酷評こくひょうされたという。
• 姉あね婿むこの家老がろうから21万まん石せきの大名だいみょうまで躍進やくしんした豊ゆたか氏しであったが、同時どうじに多様たような出自しゅつじを持もつ家臣かしん団だんを持もつこととなった。渡瀬わたせ家かから引ひき継ついだ「横須賀よこすか衆しゅ」、父ちちの三田みた藩はんから引ひき継ついだ「梅林うめばやし公こう御代みよ衆しゅう」、豊ゆたか氏しが福知山ふくちやまで召めし抱かかえた「丹波たんば衆しゅう」、そして久留米くるめで新あらたに召めし抱かかえた家臣かしんなどである。これらの派閥はばつは、後年こうねんに至いたるまで久留米くるめ藩はんの政争せいそうに影響えいきょうを及およぼすことになった。

系譜けいふ

• 父ちち：有馬ありま則のり頼よりゆき（1533-1602）
• 母はは：振ふ - 別所べっしょ忠治ただはるの娘むすめ
• 正室せいしつ：蓮はちす姫ひめ、長寿ちょうじゅ院いん - 松平まつだいら康かん直ただしの娘むすめ、徳川とくがわ家康いえやすの養女ようじょ
  • 長男ちょうなん：有馬ありま忠頼ただより（1603-1655）
  • 次男じなん：有馬ありま信しん堅けん
  • 三男さんなん：有馬ありま頼よりゆき次じ（1611-1649）
• 生母せいぼ不ふ詳しょうの子女しじょ
  • 女子じょし：鳥居とりい忠ただし房ぼう正室せいしつ
  • 女子じょし：小出こいで吉よし重しげる正室せいしつ
  • 女子じょし：土田つちた某ぼう室しつ
  • 女子じょし：水野みずの守まもる信しん正室せいしつ
• 養子ようし
  • 女子じょし：建部たけべ光重みつしげ室しつ - 有馬ありま則のり氏しの娘むすめ

出典しゅってん

• 『寛政かんせい重じゅう修おさむ諸家しょか譜ふ』巻まき第だい四よん百ひゃく六ろく十じゅう九きゅう
• 篠原しのはら正一しょういち『久留くる米べい人物じんぶつ誌し』（久留くる米べい人物じんぶつ誌し刊行かんこう委員いいん会かい、1981年ねん）
• 林はやし洋ひろし海うみ『シリーズ藩はん物語ものがたり　久留くる米べい藩はん』（現代書館げんだいしょかん、2010年ねん）

登場とうじょう作品さくひん

• 葵あおい 徳川とくがわ三さん代だい（2000年ねん、演えんじ：若尾わかお義昭よしあき）