武蔵むさし高等こうとう学校がっこう (旧制きゅうせい)

武蔵むさし高等こうとう学校がっこう
創立そうりつ	1921年ねん（設立せつりつ認可にんか）
所在地しょざいち	東京とうきょう府ふ北きた豊島としま郡ぐん中新井なかあらい村むら
初代しょだい校長こうちょう	一木いちき喜徳郎きとくろう
廃止はいし	1950年ねん
後身こうしん校こう	武蔵大学むさしだいがく 武蔵むさし高等こうとう学校がっこう・武蔵むさし中学校ちゅうがっこう
同窓会どうそうかい	武蔵むさし高等こうとう学校がっこう同窓会どうそうかい

旧きゅう：武蔵むさし高等こうとう学校がっこう校舎こうしゃ / 現存げんそんする旧制きゅうせい高校こうこう時代じだいの建造けんぞう物ぶつの一ひとつ。

旧制きゅうせい武蔵むさし高等こうとう学校がっこう（きゅうせいむさしこうとうがっこう）は、1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）12月、東京とうきょう府ふ北きた豊島としま郡ぐん中新井なかあらい村むら（現げん：東京とうきょう都と練馬ねりま区く豊玉上とよたまかみ）に設立せつりつされた私立しりつの旧制きゅうせい7年ねん制せい高等こうとう学校がっこうである。略称りゃくしょうは「武たけ高だか」。

概要がいよう

• 財界ざいかい人じんの根津ねづ嘉一郎かいちろうによって作つくられた根津ねづ育英いくえい会かいを設置せっち者しゃ（経営けいえい母体ぼたい）に、改正かいせい高等こうとう学校がっこう令れいにより設立せつりつされた。私立しりつの旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうとしては日本にっぽんで最初さいしょのものである。
• 旧制きゅうせい中学校ちゅうがっこうに相当そうとうする修業しゅうぎょう年限ねんげん4年ねんの尋常じんじょう科か、大学だいがく予よ科か相当そうとうの文科ぶんか・理科りかからなる3年ねんの高等こうとう科かが設置せっちされた7年ねん制せい旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうである。生徒せいとの出身しゅっしんは東京とうきょうが多おおかった。
• 既存きそんの高等こうとう学校がっこうとの差別さべつ化かを図はかるため、開校かいこう時じは学生がくせい帽ぼうに白線はくせんを付つけなかった。しかし、高等こうとう科かで白線はくせんを付つけたいとの要望ようぼうがあり、1946年ねんに服装ふくそう規程きていが廃止はいしされて2条じょうの白線はくせんが見みられるようになった。
• 寄宿舎きしゅくしゃとして尋常じんじょう科かの慎まき独どく寮りょう、高等こうとう科かの双そう桂かつら寮りょう・愛あい日び寮りょうが設置せっちされた。
• 現在げんざいの新制しんせい武蔵大学むさしだいがく・武蔵むさし高等こうとう学校がっこう・武蔵むさし中学校ちゅうがっこうの構成こうせい母体ぼたいとなった。

沿革えんかく

創立そうりつ者しゃ・根津ねづ嘉一郎かいちろう（初代しょだい）の銅像どうぞう

設立せつりつの背景はいけい

「学校がっこう法人ほうじん根津ねづ育英いくえい会かい武蔵むさし学園がくえん#沿革えんかく」も参照さんしょう

旧制きゅうせい武蔵むさし高等こうとう学校がっこうの設立せつりつに際さいし重要じゅうような背景はいけいとなったのは、大正たいしょう期きの日本にっぽんで進すすめられた高等こうとう教育きょういくの学制がくせい改革かいかくである。1917年ねん、政府せいふの諮問しもん機関きかんとして設置せっちされた臨時りんじ教育きょういく会議かいぎにより、官立かんりつ（国立こくりつ）のみならず公立こうりつ・私立しりつの高等こうとう学校がっこう（旧制きゅうせい）の設立せつりつを認みとめる方針ほうしんが確認かくにんされ、さらに1918年ねんの改正かいせい高等こうとう学校がっこう令れいによって、従来じゅうらい修業しゅうぎょう年限ねんげん3年ねんであった（高等こうとう科か＝大学だいがく予よ科かのみの）高等こうとう学校がっこうに加くわえ、旧制きゅうせい中学校ちゅうがっこうに相当そうとうする尋常じんじょう科か4年ねんを加くわえた修業しゅうぎょう年限ねんげん7年ねんの高等こうとう学校がっこうの設立せつりつが認みとめられた。そして第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん後ご、原内はらうち閣かくの中橋なかはし徳五郎とくごろう文相ぶんしょうの下した、これらの方針ほうしんに基もとづく高等こうとう教育きょういく拡充かくじゅう計画けいかくが進すすめられていた。

こうした状況じょうきょうと並行へいこうし、東武鉄道とうぶてつどう社長しゃちょうで甲州こうしゅう財閥ざいばつ総帥そうすいとして知しられる実業じつぎょう家かの（初代しょだい）根津ねづ嘉一郎かいちろうは、育英いくえい事業じぎょうに私財しざいを投とうじる決意けついを固かため、親交しんこうのあった宮島みやじま清次郎せいじろう（のち第だい4代だい根津ねづ育英いくえい会かい理事りじ長ちょう）・正田しょうだ貞一郎ていいちろう（同おなじく同どう会かい理事りじ）にこの計画けいかくを相談そうだんした。さらに彼かれは、フランスのリセやドイツのギムナジウムのような「社会しゃかいの中核ちゅうかくとなる人材じんざいを育そだてる」ことを眼目がんもくとする学校がっこうの創設そうせつを構想こうそうしていた本ほん間あいだ則そく忠ただし（大分おおいた県けん参事官さんじかん）の助言じょげんを受うけ、また、臨時りんじ教育きょういく会議かいぎ総裁そうさいであった平田東ひらたひがし助すけからは、同どう会議かいぎ内ないの改革かいかく促進そくしん派はと目めされていた一木いちき喜徳郎きとくろう・岡田おかだ良平りょうへい・山川やまかわ健次郎けんじろう・北条ほうじょう時敬ときよしの4名めいを根津ねづの顧問こもん役やくとして推薦すいせんされた。かくして根津ねづ・本間ほんま・平田ひらたおよび4人にんの顧問こもんたちとの間あいだで、事業じぎょうの中核ちゅうかくとして設立せつりつされるべき学校がっこうの構想こうそうについて協議きょうぎが重かさねられ、その結果けっか、1919年ねん末すえには「優秀ゆうしゅうナル小學校しょうがっこう卆そつ業者ぎょうしゃヲ入學にゅうがくセシメ、之これニ理想りそう的てきノ教育きょういくヲ施ほどこせシ完全かんぜんナル育成いくせいヲ期きスルヲ目的もくてきト為ためスガ故こニ、出來できウル限げんリ長期ちょうきニ亙わたリテ在學ざいがくセシムルヲ必要ひつようトスル」（一木いちき）という観点かんてんから「7年ねん制せい高等こうとう学校がっこうの創立そうりつ」が決定けっていされ、1921年ねん5月にこの構想こうそうが公表こうひょうされた。同年どうねん9月がつには学校がっこうの経営けいえい母体ぼたいとして財団ざいだん法人ほうじん根津ねづ育英いくえい会かい（現げん：学校がっこう法人ほうじん根津ねづ育英いくえい会かい武蔵むさし学園がくえん）の設立せつりつが認可にんかされた。

設立せつりつと発展はってん

根津ねづ育英いくえい会かいは学校がっこう設立せつりつ当初とうしょ、文部省もんぶしょうに「東京とうきょう高等こうとう学校がっこう」の名称めいしょうで設立せつりつ申請しんせいをした。学校がっこうの設立せつりつ認可にんかは1921年ねん12月に下おりたがその過程かていで、文部省もんぶしょうから同名どうめいの官立かんりつ7年ねん制せい高等こうとう学校がっこうの設立せつりつ（同年どうねん11月がつ）が予定よていされているため「東京とうきょう」の名なを譲ゆずって欲ほしい旨むねの申もうし入いれがあり、検討けんとうの結果けっか所在地しょざいちの旧きゅう国名こくめいを冠かんした「武蔵むさし高等こうとう学校がっこう」とした。この際さい、「武蔵むさし」の校こう名めいには、単たんに旧きゅう国名こくめいのみならず、「古事記こじき」、「日本書紀にほんしょき」等とうのいわれによるものでもあり、当時とうじの記録きろくによれば、新あらたな校こう名めいに「戢武（しゅうぶ・武たけを収おさめる）崇たかし文ぶん」（武ぶをおさめ文ぶんを崇たかしぶ）という平和へいわ主義しゅぎを託たくした創立そうりつ時じの人々ひとびとの思おもいが反映はんえいされている。武蔵むさし高校こうこうは、日本にっぽんにおける私立しりつ・7年ねん制せいの旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうの先駆さきがけであり、武蔵むさし高校こうこうの設立せつりつを皮切かわきりに甲南こうなん（1923年ねん）、成なり蹊・成城せいじょう（1925年ねん）という私立しりつ高等こうとう学校がっこう（いずれも7年ねん制せい）の設立せつりつが続つづき、また1923年ねん以降いこう、富山とやま・浪速なにわ・（東京とうきょう）府立ふりつと、公立こうりつの7年ねん制せい高等こうとう学校がっこうも続々ぞくぞくと設立せつりつされた。翌よく1922年ねん1月がつに制定せいていされた校章こうしょうは、雉が「武たけ高だか」の2文字もじを抱いだくデザインになっており、新制しんせい後身こうしん校こうである武蔵高等学校・中学校むさしこうとうがっこうちゅうがっこうに継承けいしょうされている。

1922年ねん4月がつ17日にち、尋常じんじょう科か79名めいの入学にゅうがくをもって開校かいこうした武蔵むさし高校こうこうは、尋常じんじょう科かからの7年間ねんかん一貫いっかん教育きょういくを標榜ひょうぼうしたため、開校かいこう後ご順次じゅんじ学年がくねんが増ふえ、4年ねん後ごの1926年ねん4月がつに尋常じんじょう科か修了しゅうりょう生せいの進学しんがくをもって文科ぶんか・理科りかよりなる高等こうとう科かが設置せっちされ、高等こうとう科か3年ねんへの進級しんきゅうにより7学年がくねんが揃そろって完成かんせいするという方式ほうしきをとった。その後ごも高等こうとう科かからの入学にゅうがくは若干じゃっかん名めいの補欠ほけつ入学にゅうがく者しゃに限定げんていされていた。また各かく40名めい2クラスの少数しょうすう精鋭せいえい主義しゅぎをとった。教員きょういんについても、特とくに尋常じんじょう科か・高等こうとう科かの教員きょういんを区別くべつしておらず、生徒せいとに対たいし早はやい時期じきから高度こうどな知的ちてき刺激しげきを与あたえるような教育きょういくが志向しこうされた。また、リベラル派はの内務ないむ官僚かんりょうとして知しられていた初代しょだい校長こうちょう・一木いちき喜徳郎きとくろうは語学ごがく教育きょういくを重視じゅうししており、彼かれが第だい一いち回かい入学にゅうがく式しきでの式辞しきじ中ちゅう、建けん学がくの理想りそうとして述のべた「三さん理想りそう」（三さん大だい理想りそう）は、その後ごの修正しゅうせいを経へて「東西とうざい文化ぶんか融合ゆうごうのわが民族みんぞく使命しめいを遂行すいこうし得えべき人物じんぶつを造つくること」「世界せかいに雄飛ゆうひするにたへる人物じんぶつを造つくること」「自みずから調しらべ自みずから考かんがへる力ちからを養やしなえふこと」となり、以降いこう長ながく武ぶ高だかの教育きょういく理念りねんとして引ひき継つがれた。

しかし実際じっさいに武ぶ高だかの教育きょういく方針ほうしん策定さくていに関かかわっていたのは、公職こうしょくを兼任けんにんする一木いちき校長こうちょうが校こう務つとむを一任いちにんしていた初代しょだい教頭きょうとうの山本やまもと良吉りょうきちである。山本やまもとは一木いちきに続つづく山川やまかわ健次郎けんじろう校長こうちょう時代じだいにも教頭きょうとうを務つとめ、さらに山川やまかわ退任たいにん後ごの第だい三さん代だい校長こうちょうに昇任しょうにんするに至いたり、その間あいだ、武たけ高だかの実務じつむ全般ぜんぱんを取とり仕切しきってその基礎きそ固がために尽力じんりょくした。彼かれの下したで英語えいごの少しょう人数にんずう教育きょういくをはじめとするスパルタ式すぱるたしき教育きょういくが進すすめられ、この結果けっか、初年度しょねんど入学にゅうがく者しゃ79名めいの多おおくが厳きびしい学課がっかに耐たえられず中途ちゅうとで脱落だつらくすることとなり、7年ねん後ごの1929年ねん3月の第だい一いち回かい卒業生そつぎょうせいは38名めいに過すぎなかった。しかしこのような教育きょういくにより生徒せいとの学力がくりょく水準すいじゅんは高たかく保たもたれ、東京帝大とうきょうていだいへの入学にゅうがく率りつ（進学しんがく率りつ）が一いち高だかを上回うわまわることもあった。また夏期かきの校外こうがい学習がくしゅうとして、1922年ねんより「山上さんじょう学校がっこう」、1924年ねんから「海浜かいひん学校がっこう」がそれぞれ戦せん時期じきの中断ちゅうだんに至いたるまで毎年まいとし行おこなわれた。

新制しんせいへの移行いこう

安倍あべ能成よしなり / 戦後せんご、旧制きゅうせい武蔵むさし高校こうこう顧問こもんとして宮本みやもと和吉かずよし校長こうちょう・天野あまの貞祐ていゆうらと共ともに、武たけ高だかを含ふくむ「東京とうきょう連合れんごう大学だいがく」構想こうそうを提案ていあんした。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごの混乱こんらんの中なか、米べい軍ぐんを中心ちゅうしんとする連合れんごう国軍こくぐんの占領せんりょう下かで学制がくせい改革かいかくの方針ほうしんにおいて旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうの存続そんぞくが危あやうくなっていることが判明はんめいすると、1946年ねん第だい5代だい校長こうちょうに就任しゅうにんした宮本みやもと和吉かずよしは、根津ねづ育英いくえい会かい顧問こもんとなった天野あまの貞祐ていゆう（旧制きゅうせい一いち高だか校長こうちょう）・安倍あべ能成よしなり（学習がくしゅう院いん院長いんちょう）・和かず辻つじ哲郎てつろうらと共ともに、1948年ねん、東京とうきょう連合れんごう大学だいがくを共立きょうりつする構想こうそうを明あきらかにした。これは、同おなじ私立しりつ旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうであった成なり蹊・成城せいじょう・学習がくしゅう院いんと共ともに4校こうで緩ゆるやかなカレッジ連合れんごうを形成けいせいするというものであったが、4校こうの間あいだで調整ちょうせいが進すすまず、結局けっきょく実現じつげんはみなかった。

「連合れんごう大学だいがく」構想こうそうが挫折ざせつした結果けっか、武たけ高だかは単独たんどくで新制しんせい学校がっこうに移行いこうすることを強しいられることとなり、教授きょうじゅ会かいは、成なり蹊・成城せいじょうと同様どうように「新制しんせい中学ちゅうがく・高校こうこう・大学だいがくに移行いこうし、大学だいがくに文理学部ぶんりがくぶを設置せっちする」という案あんを出だしたが、宮島みやじま清次郎せいじろうを中心ちゅうしんとする理事りじ会かいは新制しんせい大学だいがく設立せつりつに反対はんたい、あるいは消極しょうきょく的てき態度たいどをとり、「新制しんせい高校こうこう・中学ちゅうがくへの移行いこう」を主張しゅちょうした。議論ぎろんは二に転てん三さん転てんし、結局けっきょく、父兄ふけい会かいの支持しじもあって「新制しんせい大学だいがく・高校こうこう・中学ちゅうがくへの移行いこう」を追求ついきゅうすることとなったが、この際さい、教授きょうじゅ会かいは理事りじ会かいの意向いこうを考慮こうりょして、大学だいがくについては文理学部ぶんりがくぶではなく経済学部けいざいがくぶの設立せつりつを目指めざすこととなり、1949年ねん4月がつには経済学部けいざいがくぶ経済けいざい学科がっかのみからなる新制しんせい武蔵大学むさしだいがくが発足ほっそくした。そして翌よく1950年ねん3月、22期生きせいの卒業そつぎょう式しきをもって、旧制きゅうせい武蔵むさし高校こうこうは開校かいこう以来いらい28年ねんにわたって2000名めい余あまりの生徒せいとを送おくり出だした歴史れきしに終止符しゅうしふを打うった。

新制しんせい移行いこう後ご、先述せんじゅつのような事情じじょうもあって、旧制きゅうせい武蔵むさし高校こうこうの教員きょういんの多おおくは、他たの旧制きゅうせい高校こうこうのように新制しんせい大学だいがくではなく、新制しんせいの武蔵むさし中学校ちゅうがっこう・高等こうとう学校がっこうで教鞭きょうべんを執とることとなった。また同窓会どうそうかいも新制しんせい武蔵むさし高校こうこうに継承けいしょうされた。その後ごも高校こうこう・中学ちゅうがくに籍せきを置おく教員きょういんと大学だいがくに席せきを置おく教員きょういんが相互そうごに出で講こうするなど両校りょうこうの教学きょうがく面めんでの交流こうりゅうが続つづき、事務じむ・財政ざいせい・施設しせつが渾然一体こんぜんいったいとなるなど、制度せいど上じょうは別べつ組織そしきになっていたものの、大学だいがくと高校こうこう・中学ちゅうがくとの密接みっせつな関係かんけいが続つづいたが、1959年ねん、武蔵大学むさしだいがくに経営けいえい学科がっかが新設しんせつされた前後ぜんごから、大学だいがくは次第しだいに自立じりつ化かの傾向けいこうを見みせるようになった。武蔵大学むさしだいがく60年ねんの歩あゆみ「新制しんせいの大学だいがく・高校こうこう・中学ちゅうがくの関係かんけいはどうだったのでしょうか」参照さんしょう。2023年ねん10月がつ21日にち閲覧えつらん。</ref>。旧制きゅうせい武たけ高だかの理念りねんとして掲かかげられた「三さん理念りねん」は新制しんせいの武蔵大学むさしだいがく・高校こうこう・中学校ちゅうがっこうに継承けいしょうされ、また、戦せん時期じき中断ちゅうだんしていた山上さんじょう学校がっこう・海浜かいひん学校がっこうも戦後せんごは武蔵高等学校・中学校むさしこうとうがっこうちゅうがっこうにおいて再開さいかいされ、現在げんざいも重要じゅうような行事ぎょうじとして続つづけられるなど旧制きゅうせい高校こうこう以来いらいの教育きょういくが引ひき継つがれている（また旧制きゅうせい武たけ高だかが開校かいこうした日付ひづけである4月がつ17日にちは、新制しんせい武蔵むさし高だか・中なかの創立そうりつ記念きねん日びとされている）。さらに、頓挫とんざしたものの戦後せんごの連合れんごう大学だいがく構想こうそうによって連携れんけい関係かんけいが生しょうじた成城せいじょう・成なり蹊・学習がくしゅう院いんの3大学だいがくとの間あいだで、1950年ねん以来いらい、「四よん大学だいがく運動うんどう競技きょうぎ大会たいかい」が開催かいさいされるようになり、現在げんざいに至いたっている。

年表ねんぴょう

開校かいこう後ご、最寄もより駅えきとして開業かいぎょうされた西武鉄道せいぶてつどう池袋いけぶくろ線せん江古田えごた駅えき（南口みなみぐち）のかつての姿すがた（2008年ねん5月がつ）

旧制きゅうせい武蔵むさし高校こうこうの園遊会えんゆうかい

愛あい日び寮りょうの昼食ちゅうしょく（1935年ねん）

試験しけん風景ふうけい（1935年ねん）

白線はくせん帽ぼう姿すがたの武蔵むさし高だか生せい（1946年ねん秋あきの遠足えんそく）

• 1921年ねん
  • 9月：根津ねづ嘉一郎かいちろうを理事りじ長ちょうとする財団ざいだん法人ほうじん根津ねづ育英いくえい会かいの設立せつりつ。旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうの設立せつりつを文部省もんぶしょうに申請しんせい。
  • 12月：武蔵むさし高等こうとう学校がっこう設立せつりつ認可にんか（学校がっこうとしての設立せつりつ）。
• 1922年ねん
  • 1月がつ：校章こうしょう制定せいてい。
  • 2月がつ：第だい一いち回かい入学にゅうがく試験しけん実施じっし。
  • 4月がつ17日にち：開校かいこうおよび第だい一いち回かい入学にゅうがく式しき。尋常じんじょう科か1年ねん79名めいが入学にゅうがく。初代しょだい校長こうちょうに一木いちき喜徳郎きとくろう、教頭きょうとうに山本やまもと良吉りょうきちが就任しゅうにん。
  • 7月がつ：最初さいしょの校外こうがい学習がくしゅう「夏期かき山上さんじょう学校がっこう」が行おこなわれる。
  • 11月：武蔵野むさしの鉄道てつどうの最寄もより駅えきとして「武蔵むさし高等こうとう学校がっこう用よう仮かり停留所ていりゅうじょ」が開設かいせつされた。
    • 現在げんざいの西武鉄道せいぶてつどう池袋いけぶくろ線せん江古田えごた駅えき。ただし開設かいせつ当初とうしょは現在げんざいの位置いちよりもやや西にしに所在しょざいした（江古田えごた駅えき#歴史れきし参照さんしょう）。
• 1924年ねん
  • 7月がつ：夏期かき海浜かいひん学校がっこうが始はじまる。
  • 10月：生徒せいと外遊がいゆう基金ききん団だん成立せいりつ。
  • 12月：校友こうゆう会かい発足ほっそく。
• 1926年ねん
  • 3月：第だい一いち回かい尋常じんじょう科か修了しゅうりょう式しき。
  • 4月がつ：高等こうとう科か開校かいこう。
• 1927年ねん
  • 7月がつ：生徒せいと外遊がいゆう基金ききんによる第だい一いち回かい外遊がいゆうの出発しゅっぱつ。
  • 生徒せいとによる気象きしょう観測かんそくが始はじまる。
    • 校内こうないの気象きしょう観測かんそく所しょは1940年代ねんだい以降いこう中央ちゅうおう気象台きしょうだいが使用しよう、その後ご気象庁きしょうちょう練馬ねりま観測かんそく所しょとなり現在げんざいに至いたっている。
• 1928年ねん
  • 4月がつ：開校かいこう式しき挙行きょこう。長崎ながさき太郎たろう教授きょうじゅ作詞さくし・田中たなか規矩きく士し教授きょうじゅ作曲さっきょくの校歌こうか「武蔵むさし讃歌さんか（青空あおぞらわたる）」制定せいてい。
  • 『武蔵むさし高等こうとう学校がっこう六ろく年ねん史し』刊行かんこう。
• 1929年ねん
  • 3月：第だい一いち期き予よ餞はなむけ会かい（卒業そつぎょう式しき）。
  • 4月がつ：父兄ふけい会かい発足ほっそく。
• 1931年ねん10月がつ：同窓会どうそうかい発足ほっそく。
• 1932年ねん
  • 4月がつ：開校かいこう十じゅう周年しゅうねん記念きねん式しき挙行きょこう。
  • 『武蔵むさし高等こうとう学校がっこう十じゅう年ねん史し』刊行かんこう。
• 1933年ねん：籠かご球だま部ぶがインターハイで優勝ゆうしょう。
• 1936年ねん6月がつ：根津ねづ化学かがく研究所けんきゅうじょが設置せっち。初代しょだい所長しょちょうは玉蟲たまむし文一ぶんいち教授きょうじゅ。
• 1937年ねん：蹴球しゅうきゅう部ぶがインターハイで優勝ゆうしょう。
• 1940年ねん：剣道けんどう部ぶ・弓道きゅうどう部ぶがインターハイで優勝ゆうしょう。
• 1941年ねん
  • 1月がつ：校友こうゆう会かいを報国ほうこく団だんと改称かいしょう。
  • 4月がつ：開校かいこう二に十じゅう周年しゅうねん記念きねん式しき挙行きょこう。『武蔵むさし高等こうとう学校がっこう二に十じゅう年ねん史し』刊行かんこう。
  • 8月がつ：高等こうとう科か生徒せいとの勤労きんろう動員どういんが始はじまる。
• 1943年ねん
  • 4月がつ：元もと校長こうちょうの山川やまかわ（健次郎けんじろう）・山本やまもとを記念きねんし山川やまかわ賞しょう・山本やまもと賞しょうを制定せいてい。
    • それぞれ生徒せいとの理科りか・文科ぶんかの研究けんきゅうに対たいする賞しょうであった。
• 1944年ねん
  • 4月がつ：校旗こうき制定せいてい。
  • 5月：生徒せいと勤労きんろう動員どういん壮行そうこう会かい。以降いこう学徒がくと農村のうそん動員どういん作業さぎょう、学徒がくと勤労きんろう動員どういんが本格ほんかく化か。
  • 8月がつ：校舎こうしゃ3階かいを防衛ぼうえい司令しれい部ぶに徴発ちょうはつされる。
• 1945年ねん
  • 修業しゅうぎょう年限ねんげんが1年ねん短縮たんしゅく。
  • 2月がつ：校舎こうしゃ2階かいの一部いちぶを東京とうきょう第だい二に兵器廠へいきしょうへ貸与たいよする。
  • 4月がつ：米べい軍ぐんの空襲くうしゅうにより校こう地ち東側ひがしがわの木造もくぞう施設しせつ等とう約やく800坪つぼを焼失しょうしつする（後こう掲）。
  • 7月がつ〜8月がつ：尋常じんじょう科か1年ねんは勤労きんろう動員どういんを兼かねて栃木とちぎ県けん那須なすに集団しゅうだん疎開そかいする。
  • 9月：授業じゅぎょう再開さいかい。
• 1947年ねん2月がつ：学制がくせい改革かいかく実施じっしに伴ともない尋常じんじょう科かの存続そんぞくが不透明ふとうめいとなったため、同どう科かの生徒せいと募集ぼしゅうを中止ちゅうし。
• 1948年ねん
  • 9月：新制しんせい武蔵むさし高等こうとう学校がっこう発足ほっそく。尋常じんじょう科かの3・4年ねん修了しゅうりょう者しゃが新制しんせいに移行いこう。
  • 宮本みやもと和吉かずよし校長こうちょうや安倍あべ能成よしなりら根津ねづ育英いくえい会かい顧問こもんにより、武たけ高だかを含ふくむ4校こうで東京とうきょう連合れんごう大学だいがくを共立きょうりつする構想こうそうが出だされるも、頓挫とんざ。
• 1949年ねん4月がつ：新制しんせい武蔵むさし中学校ちゅうがっこうおよび新制しんせい武蔵大学むさしだいがく（経済学部けいざいがくぶ経済けいざい学科がっか）発足ほっそく。
• 1950年ねん3月がつ：22期生きせい卒業そつぎょう式しき。旧制きゅうせい武蔵むさし高等こうとう学校がっこう廃止はいし。

歴代れきだい校長こうちょう・教頭きょうとう

校長こうちょう

• 初代しょだい：一木いちき喜徳郎きとくろう（1922年ねん4月がつ〜1926年ねん3月がつ）
  • 宮内みやうち大臣だいじん就任しゅうにんにより辞任じにん。
• 2代だい：山川やまかわ健次郎けんじろう（1925年ねん4月がつ〜1931年ねん6月がつ）
  • 1931年ねん6月がつ〜1935年ねん11月：山本やまもと良吉りょうきちが事務じむ取扱とりあつかい。
• 3代だい：山本やまもと良吉りょうきち（1935年ねん11月〜1942年ねん7月がつ）
  • 在任ざいにん中ちゅう死去しきょ。
  • 1942年ねん7月がつ〜8月がつ：山川やまかわ黙だまが事務じむ取扱とりあつかい。
• 4代だい：山川やまかわ黙だま（1942年ねん8月がつ〜1946年ねん2月がつ）
• 5代だい：宮本みやもと和吉かずよし（1946年ねん2月がつ〜1950年ねん3月がつ）
  • 新制しんせい武蔵むさし中学校ちゅうがっこう・高等こうとう学校がっこうの初代しょだい校長こうちょうおよび武蔵大学むさしだいがく初代しょだい学長がくちょうを兼任けんにん。

• 
  初代しょだい校長こうちょう・一木いちき喜徳郎きとくろう
• 
  第だい2代だい校長こうちょう・山川やまかわ健次郎けんじろう

教頭きょうとう

• 初代しょだい：山本やまもと良吉りょうきち（1922年ねん4月がつ〜1935年ねん3月がつ）
  • 山本やまもとの校長こうちょう在任ざいにん中ちゅう、教頭きょうとうは空席くうせきであった。
• 2代だい：玉蟲たまむし文一ぶんいち（1942年ねん8月がつ〜）

著名ちょめいな卒業そつぎょう者しゃ・教員きょういん

卒業そつぎょう者しゃ

「武蔵むさし中学校ちゅうがっこう・高等こうとう学校がっこうの人物じんぶつ一覧いちらん#旧制きゅうせい高校こうこう出身しゅっしん」を参照さんしょう

校こう地ちとその継承けいしょう

旧制きゅうせい武蔵むさし高校こうこう講堂こうどう（1928年ねん）

旧制きゅうせい武蔵むさし高校こうこうの開校かいこう以前いぜんから江古田えこだ校こう地ちを横断おうだんして流ながれている「濯川」（すすぎがわ）

設立せつりつ時じの校こう地ちは東京とうきょう府ふ北きた豊島としま郡ぐん中新井なかあらい村むら大字だいじ中新井なかあらい字じ北新井きたあらい（現げん：東京とうきょう都と練馬ねりま区く豊玉上とよたまかみ1-26-1）に所在しょざいし、根津ねづ育英いくえい会かいによって購入こうにゅうされたものである（江古田えごた校こう地ち）。敷地しきち内ないには江戸えど時代じだいから流ながれる千川せんかわ上水じょうすいから分流ぶんりゅうし中新井なかあらい川がわに合流ごうりゅうする中新井なかあらい分水ぶんすいが流ながれていた。この校こう地ちは廃止はいしまで存続そんぞくした。

1922年ねんの開校かいこう時じに本ほん校舎こうしゃはまだ建設けんせつされておらず、同年どうねん、尋常じんじょう科か寄宿舎きしゅくしゃ「慎まき独どく寮りょう」が開設かいせつされ、翌よく1923年ねんに本館ほんかん（本校ほんこう舎しゃ / 1925年ねん増築ぞうちく）、1925年ねん4月がつに運動うんどう場じょうが一応いちおうの完成かんせいを見みた。ついで1927年ねん5月には高等こうとう科か寄宿舎きしゅくしゃの双そう桂かつら・愛あい日びの2寮りょう、同年どうねん6月がつから10月がつにかけて剣道けんどう場じょう・化学かがく教育きょういく棟とう・生徒せいと集会しゅうかい所しょ、翌よく1928年ねん4月がつの開校かいこう式しきまでに講堂こうどう（佐藤さとう功一こういちの設計せっけいによる）・屋内おくない運動うんどう場じょうが竣工しゅんこう・落成らくせいするなど、次第しだいに施設しせつが整備せいびされた。その後ごも1928年ねん12月に弓道きゅうどう場じょう、1931年ねん9月に父兄ふけい会かいの寄贈きぞうによるプールが竣工しゅんこう・落成らくせいした。

校外こうがい施設しせつとしては、1928年ねん7月がつ、千葉ちば県けん興津おきつ町まち字じ鵜原うばらに「夏期かき海浜かいひん学校がっこう」のための施設しせつとして「鵜原うはら寮りょう」、1937年ねん7月がつには「山上さんじょう学校がっこう」のための施設しせつとして長野ながの県けん軽井沢かるいざわ町まち矢やヶ崎さきに「青山あおやま寮りょう」が落成らくせいした。1940年ねん4月がつには皇紀こうき2600年ねん記念きねんによる「学校がっこう山林さんりん」が埼玉さいたま県けん毛呂山もろやま町まちに造営ぞうえいされた。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかの戦災せんさい被害ひがいとしては、1945年ねん4月がつ13日にち空襲くうしゅうにより、慎まき独どく寮りょう・錬ね心しん館かん・弓道きゅうどう場じょう・木工もっこう金工きんこう室しつ・不ふ退すさ堂どうなど校こう地ち東側ひがしがわの木造もくぞう施設しせつ等とう約やく800坪つぼを焼失しょうしつしている。現在げんざい、跡地あとちには「慎まき独どく寮りょう・積せき翠みどり園えん記念きねん標しるべ」「錬ね心しん館かん跡あとの碑いしぶみ」がそれぞれ設置せっちされている。

新制しんせい移行いこう後ご、武たけ高校こうこう地ちは武蔵大学むさしだいがく・武蔵高等学校・中学校むさしこうとうがっこうちゅうがっこうの江古田えこだキャンパス・校こう地ちとして継承けいしょうされており、本館ほんかん（本校ほんこう舎しゃ）・講堂こうどうは、現在げんざいもそれぞれ武蔵大学むさしだいがく3号館ごうかんおよび大だい講堂こうどうとして使用しようされている。また石造せきぞうの正門せいもん門柱もんちゅうも旧制きゅうせい武たけ高だか以来いらいのもので1920年代ねんだいの建設けんせつである。戦災せんさいを免まぬかれた高等こうとう科か寄宿舎きしゅくしゃの双そう桂かつら寮りょう・愛あい日び寮りょうは新制しんせい武蔵むさし中学校ちゅうがっこう・高等こうとう学校がっこうの寮りょうとして使用しようされたが、1968年ねん閉鎖へいさされ解体かいたい、1970年ねん、2寮りょうの跡地あとちに同校どうこうの体育館たいいくかん・プールが建設けんせつされた。校外こうがい施設しせつである鵜原うはら寮りょう・青山あおやま寮りょうもまた戦後せんごの中学校ちゅうがっこう・高等こうとう学校がっこうで復活ふっかつした海浜かいひん学校がっこう・山上さんじょう学校がっこうのための施設しせつとして引ひき継つがれ、長期間ちょうきかん使用しようされたが、青山あおやま寮りょうは1980年ねん4月がつ、赤城山あかぎやま大沼おおぬま湖畔こはんの赤城あかぎ青山あおやま寮りょうの落成らくせいをもって廃止はいしされ、鵜原うはら寮りょうは1988年ねん6月がつに改築かいちくされた。

なお、校こう地ちを横断おうだんして流ながれる中新井なかあらい分水ぶんすいは、開校かいこう後ご、運動うんどう場じょうの整備せいびに際さいして拡幅かくふくされ、7つの橋はしが架かけられた。1925年ねん、川かわは屈こごめ原はら「漁夫ぎょふ辞じ」に因ちなんで「濯川」（すすぎがわ）と命名めいめいされ、さらに1932年ねん、創立そうりつ10周年しゅうねんを記念きねんして7橋きょうに命名めいめいがなされ（玉たまの橋はし・欅けやき橋きょう・一いちの橋はし・入いれ橋きょう・出で橋きょう・十じゅう年ねん橋きょう・佐さの橋はし）、各かく橋はしの近ちかくに石碑せきひが建立こんりゅうされた。新制しんせい移行いこう後ごの1970年代ねんだいには千川せんかわ上水じょうすいとの連絡れんらくが絶たたれたことから水みずがよどみ汚染おせんが進すすんだが、1986年ねんに完成かんせいした蘇生そせい工事こうじにより水みずの流ながれが復活ふっかつし、現在げんざいに至いたっている。

校こう史しトピックス

創立そうりつ者しゃ・根津ねづ嘉一郎かいちろうと武蔵むさし高校こうこう

根津ねづ嘉一郎かいちろうは根津ねづ育英いくえい会かいの初代しょだい理事りじ長ちょうとして設立せつりつ後ごも学校がっこう経営けいえいに関かかわり続つづけた。1922年ねんの第だい一いち回かい入学にゅうがく式しきでの式辞しきじで最初さいしょの尋常じんじょう科か生徒せいとに対たいし、将来しょうらいへの期待きたいと勉学べんがくの心構こころがまえについて語かたっている。また、開校かいこう後ごほどない同年どうねん11月がつ、通学つうがく生せいの最寄もより駅えきとして、現在げんざいの西武鉄道せいぶてつどう池袋いけぶくろ線せんの前身ぜんしんである武蔵野むさしの鉄道てつどうの停留ていりゅう場じょう（現げん：江古田えごた駅えき）が早々そうそうと開設かいせつされたのは、根津ねづが武蔵野むさしの鉄道てつどうの株主かぶぬしであったことと関かかわりがあったといわれる。彼かれはその後ごも武たけ高だかに対たいして私財しざいを投とうじて財政ざいせい的てき支援しえんを続つづけ、1937年ねん7月がつ落成らくせいの青山あおやま寮りょうの建設けんせつに際さいしては軽井沢かるいざわの私有地しゆうちを提供ていきょうした。

1936年ねん、根津ねづの喜寿きじゅ祝賀しゅくが行事ぎょうじが学校がっこうによって計画けいかくされると、根津ねづはこれを固辞こじしたが、父兄ふけい会かい・同窓会どうそうかいが企画きかくした研究所けんきゅうじょの設立せつりつについてはこれを受うけ入いれ、同年どうねん6月がつ、根津ねづの名なを冠かんした研究所けんきゅうじょ（根津ねづ化学かがく研究所けんきゅうじょ）が寄贈きぞうされると、根津ねづは直ただちにこれを武蔵むさし高校こうこうに移管いかんし、さらに運営うんえい費用ひようを供出きょうしゅつした（後こう出で）。その3年ねん余あまりのちの1940年ねん1月がつ、根津ねづが外遊がいゆう中ちゅうに罹患りかんした感冒かんぼうが悪化あっかして肺炎はいえんで急死きゅうしすると、同月どうげつ、築地つきじ本願寺ほんがんじで学校がっこう葬そうが執とり行おこなわれた。

教育きょういく事業じぎょうに対たいする根津ねづの関与かんよは武たけ高だかに止とまらず、1924年ねん設立せつりつの山梨やまなし高等こうとう工業こうぎょう学校がっこう（山梨大学やまなしだいがく工学部こうがくぶの前身ぜんしん校こう）、同おなじく（県立けんりつ）山梨やまなし女子じょし師範しはん学校がっこう（同どう・教育きょういく人間にんげん科学かがく部ぶ）および併設へいせつの県立けんりつ山梨やまなし高等こうとう女学校じょがっこう（山梨やまなし県立けんりつ山梨やまなし高等こうとう学校がっこう）など、山梨やまなし県けんでの学校がっこうに対たいしても敷地しきちあるいは校こう地ち購入こうにゅう資金しきんを寄付きふしている。

根津ねづを記念きねんする校内こうないの施設しせつとしては、1936年ねん、3月の卒業そつぎょう式しきに際さいして除幕じょまくされ、講堂こうどう（現げん：大だい講堂こうどう）玄関げんかんに設置せっちされた大理石だいりせきの「創立そうりつ者しゃ根津ねづ翁おう寿像じゅぞう」や、同年どうねん、濯川の出だし橋きょう・入いれ橋きょう付近ふきんに設もうけられた喜寿きじゅ島とう、さらに死後しご、2012年ねんの武蔵むさし学園がくえん創立そうりつ90年ねん記念きねん事業じぎょうの一環いっかんとして造営ぞうえいされ、大だい講堂こうどう正面しょうめん玄関げんかん左側ひだりがわに設置せっちされた「第だい一いち回かい入学にゅうがく式しきにおける根津ねづ嘉一郎かいちろう理事りじ長ちょう祝辞しゅくじ記念きねん碑ひ」などがある。

初代しょだい教頭きょうとう・山本やまもと良吉りょうきち

詳細しょうさいは「山本やまもと良吉りょうきち」を参照さんしょう

山本やまもと良吉りょうきち（1871年ねん10月がつ10日とおか〜1942年ねん7月がつ12日にち）は金沢かなざわの出身しゅっしんで号ごうは晁あきら水すいである。第だい四よん高等こうとう中学校ちゅうがっこう（のちの旧制きゅうせい四よん高だか）で北条ほうじょう時敬ときよし教授きょうじゅに師事しじし、西田にしだ幾多郎きたろう・鈴木すずき大拙だいせつらと交友こうゆう関係かんけいを結むすんだ。予よ科か卒業そつぎょうののち、東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく文科ぶんか大学だいがく（現げん：東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいん人文じんぶん社会しゃかい系けい研究けんきゅう科か・文学部ぶんがくぶ）哲学てつがく科かの選科せんかを修了しゅうりょうした。京都きょうと府ふ尋常じんじょう中学ちゅうがく・静岡しずおか県けん尋常じんじょう中学ちゅうがくの教諭きょうゆを経へて1900年ねんには京都きょうと府立ふりつ二に中なか教諭きょうゆ、ついで教頭きょうとう。1908年ねんには京都きょうと帝みかど大だい学生がくせい監かん、翌よく1909年ねんからは旧制三高きゅうせいさんこう教授きょうじゅを兼任けんにんした。その後ご1918年ねん恩師おんしである北条ほうじょう時敬ときよしに招聘しょうへいされ学習がくしゅう院いん教授きょうじゅ。

1922年ねん、武蔵むさし高等こうとう学校がっこう開校かいこうに際さいして教授きょうじゅ兼けん教頭きょうとうに任にんじられ、一木いちき喜徳郎きとくろう校長こうちょうから校こう務つとむの全権ぜんけんを委任いにんされた。同年どうねん、一木いちきが第だい1回かい入学にゅうがく式しきの式辞しきじとして述のべた「三さん理想りそう」は山本やまもとの発案はつあんによるものであり、一木いちきとの協議きょうぎのうえ式辞しきじに採用さいようされ、山本やまもとのもとで武たけ高だかの教育きょういく理念りねんとなった。「武蔵むさし高校こうこうは日本にっぽんのイートン、オクスフォード、ケンブリッジたらねばならぬ」という強固きょうこな信念しんねんを持もっていた山本やまもとは、独特どくとくの厳格げんかくなスパルタ的てき教育きょういく理念りねんに基もとづき、第だい2代だいの山川やまかわ健次郎けんじろう校長こうちょうの下したで教頭きょうとうに留任りゅうにん、ついで第だい3代だい校長こうちょうに任にんじられ、開校かいこう以来いらい約やく20年ねんにわたって武たけ高こう教育きょういくの確立かくりつに努つとめた。1942年ねん、校長こうちょう在任ざいにん中ちゅうに死去しきょ。創立そうりつ者しゃである初代しょだい理事りじ長ちょうの根津ねづと並ならび、教育きょういく者しゃとして旧制きゅうせい武蔵むさし高校こうこうを代表だいひょうする人物じんぶつである。著書ちょしょも多おおく『中等ちゅうとう教養きょうよう』『国民こくみんの教養きょうよう』など27点てんに上のぼる。

根津ねづ化学かがく研究所けんきゅうじょ

根津ねづ化学かがく研究所けんきゅうじょは、1936年ねん6月15日にち、創立そうりつ者しゃである根津ねづ嘉一郎かいちろうの喜寿きじゅの祝賀しゅくが行事ぎょうじの一環いっかんとして父兄ふけい会かい・同窓会どうそうかいから謝恩しゃおんとして寄贈きぞうされ、武蔵むさし高校こうこうの付属ふぞく施設しせつとして校内こうないに設置せっちされたものである。この際さい、根津ねづは運営うんえい費ひとして20,000円えんを寄付きふし、初代しょだい所長しょちょうには玉蟲たまむし文一ぶんいち教授きょうじゅ（化学かがく）が就任しゅうにんした。

戦前せんぜんの学制がくせいで旧制きゅうせい高校こうこうにおいて特定とくてい領域りょういきの附属ふぞく研究所けんきゅうじょを設置せっちした例れいはほとんどなく、この研究所けんきゅうじょは数少かずすくない例外れいがいの一ひとつであり、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうから戦後せんご初期しょきにかけて、玉蟲たまむし所長しょちょうを中心ちゅうしんにコロイド化学かがくを中心ちゅうしんとした物理ぶつり化学かがくの基礎きそ研究けんきゅうが行おこなわれた。戦後せんご、玉蟲たまむしが一いち高だかに転てんじ、学制がくせい改革かいかくにより新制しんせいに移行いこうすると所長しょちょうは武蔵大学むさしだいがく学長がくちょう・武蔵むさし学がく園長えんちょうが兼任けんにんするようになり、同どう大学だいがくや武蔵高等学校・中学校むさしこうとうがっこうちゅうがっこうの化学かがく担当たんとう教員きょういんが所員しょいんを兼けん担し、現在げんざいに至いたっている。また玉蟲たまむしの研究けんきゅう室しつは当時とうじの実験じっけん器具きぐ・蔵書ぞうしょとともに歴史れきし的てき遺産いさんとして保存ほぞんされている。

アーカイブス

旧制きゅうせい武蔵むさし高等こうとう学校がっこうの資料しりょうは、経営けいえい母体ぼたいであった財団ざいだん法人ほうじん根津ねづ育英いくえい会かいを継承けいしょうする学校がっこう法人ほうじん根津ねづ育英いくえい会かい武蔵むさし学園がくえんのアーカイブス「武蔵むさし学園がくえん記念きねん室しつ」によって収集しゅうしゅう・整理せいり・保管ほかんが進すすめられ展示てんじ・公開こうかいが行おこなわれている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 週刊しゅうかん朝日あさひ（編へん）『青春せいしゅん風土記ふどき；旧制きゅうせい高校こうこう物語ものがたり』2 朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、1978年ねん
  • 三国みくに一朗いちろう「武蔵むさし高等こうとう学校がっこう」を収録しゅうろく。
• 上田うえだ久ひさ『山本やまもと良吉りょうきち先生せんせい伝でん：私立しりつ七なな年ねん制せい武蔵むさし高等こうとう学校がっこうの創成そうせい者しゃ』南みなみ窓まど社しゃ、1993年ねん、ISBN 4816501029
• 大坪おおつぼ秀二しゅうじ（編へん）『旧制きゅうせい武蔵むさし高等こうとう学校がっこう記録きろく編年史へんねんし：大正たいしょう11年ねん〜昭和しょうわ24年ねん』武蔵むさし学園がくえん記念きねん室しつ、2003年ねん
• 秦はた郁いく彦『旧制きゅうせい高校こうこう物語ものがたり』文春ぶんしゅん新書しんしょ、2003年ねん、ISBN 4166603558
• 『資料しりょう・根津ねづ嘉一郎かいちろうの育英いくえい事業じぎょう；七なな年ねん制せい武蔵むさし高等こうとう学校がっこうの開設かいせつ』武蔵むさし学園がくえん記念きねん室しつ、2005年ねん

論文ろんぶん

• 関口せきぐち安あん義よし「反骨はんこつの教育きょういく家か : 評伝ひょうでん 長崎ながさき太郎たろう II」『都留文科大学つるぶんかだいがく研究けんきゅう紀要きよう= 都留文科大学つるぶんかだいがく研究けんきゅう紀要きよう』第だい64巻かん、都留文科大学つるぶんかだいがく、2006年ねん、118-101頁ぺーじ、doi:10.34356/00000185、NAID 110007055966。 

関連かんれん項目こうもく

• 旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう・旧制きゅうせい中学校ちゅうがっこう
• 高等こうとう学校がっこう令れい
• 東京とうきょう四よん大学だいがく：東京とうきょうに所在しょざいし、一時いちじは連合れんごう大学だいがく設立せつりつが構想こうそうされた私立しりつ7年ねん制せい旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこうの新制しんせい後身こうしん校こうの総称そうしょう。
• 江古田えごた駅えき
• 関野せきの貞さだ：遺著いちょ『日本にっぽん建築けんちく史し講話こうわ』（1937年ねん）は武蔵むさし高校こうこうでの特別とくべつ講義こうぎをまとめたもの。

外部がいぶリンク

• 武蔵むさし学園がくえん｜学校がっこう法人ほうじん根津ねづ育英いくえい会かい 「武蔵むさし学園がくえん記念きねん室しつ」：「展示てんじ案内あんない」など。
• 武蔵むさし高等こうとう学校がっこう同窓会どうそうかい：「武蔵むさし今昔こんじゃく」など。
• 終戦しゅうせんを軽井沢かるいざわで迎むかえた旧制きゅうせい武蔵むさし高校こうこう生徒せいとと仲間なかまたちの会かい - archive.today（2013年ねん6月がつ25日にちアーカイブ分ぶん）
• 金沢かなざわふるさと偉人いじん館かん「常設じょうせつ展てん 近代きんだい日本にっぽんを支ささえた偉人いじんたち【山本やまもと良吉りょうきち】」

その他たサイト

• 華麗かれいなる旧制きゅうせい高校こうこう巡礼じゅんれい - 旧制きゅうせい武蔵むさし高校こうこう