水不足みずぶそく

水不足みずぶそく（みずぶそく、英えい: Water scarcity）とは、水みず資源しげんが物理ぶつり的てきもしくは経済けいざい的てきに十分じゅうぶんでなく、水みず利用りようが十分じゅうぶんに行おこなえなくなること。水不足みずぶそくが起おこることで、食糧しょくりょう危機きき、工場こうじょう停止ていし、安全あんぜんな飲料いんりょう水すいを確保かくほできず水系すいけい感染かんせん症しょうが蔓延まんえんするなどが起おこる。水不足みずぶそくが深刻しんこく化かした場合ばあいを渇水かっすいという。

概要がいよう

地球ちきゅう上じょうの淡水たんすいは、地球ちきゅう上じょうの水みずの2.5%程度ていどに過すぎず、さらに淡水たんすいの70％が氷河ひょうがなどの氷こおりや雪ゆきの形かたちであり、加くわえて地下水ちかすいのように直接ちょくせつ取とり出だせない形かたちともなるため人類じんるいが利用りようできる水みずの量りょうは多おおくない。

人類じんるいが活用かつようしやすい地下水ちかすいや表おもて流水りゅうすいも、水道すいどう法ほう等ひとしに定さだめられたヒ素ひそなどの有害ゆうがい物質ぶっしつ基準きじゅんを超こえたり、病原菌びょうげんきんが存在そんざいする場合ばあいは直接ちょくせつ使用しようできない。水みずにヒ素ひそが多おおいインドやバングラデシュでは水みず監視かんし員いんを配置はいちして水中すいちゅう有害ゆうがい物質ぶっしつについての周知しゅうちと井戸いどのヒ素ひそ除去じょきょ装置そうちの動作どうさ確認かくにんを行おこなっている。

また、地下水ちかすいにも限かぎりがあり、過剰かじょうに取水しゅすいすると地盤じばん沈下ちんかなどが起おきて、やがて尽つきる。降水こうすい量りょうが少すくない地域ちいきでは古代こだいからの降水こうすいや水みずの流入りゅうにゅうで帯おび水すい層そうへ溜たまった化石かせき水すい（英語えいご版ばん）という地下水ちかすいが使つかわれるが、この水みずは一度いちど尽つきてしまうと降水こうすい量りょうも無ないため回復かいふくすることがない^[1]。

ウオーターストレス（水みずストレス）

水みず問題もんだいについて研究けんきゅうしている水みず文学ぶんがく者ものマリン・ファルケンマークは年間ねんかんの給水きゅうすい量りょうが1人ひとりあたり年間ねんかん1,700立方りっぽうメートルを下回したまわるとウオーターストレスが起おきていると提唱ていしょうし、逼迫ひっぱく度どを示しめすファルケンマーク指標しひょう（FI：Falkenmark Index）を導入どうにゅうした^[2]。

こういった考かんがえ方かたは植物しょくぶつにも適用てきようできる。

原因げんいんと対策たいさく

原因げんいん

旱魃かんばつ（かんばつ）
川かわの上流じょうりゅうでの開発かいはつ：灌漑かんがい・ダム
山やまなどで水分すいぶん保持ほじの崩壊ほうかい：森林しんりん破壊はかい・焼畑やきばた農業のうぎょう
水質すいしつ汚染おせんなどの環境かんきょう破壊はかい
水道すいどうが何なにかしらの事情じじょうで使つかえなくなる断水だんすい
気候きこう変動へんどう、砂漠さばく化か
人口じんこう増加ぞうか、農業のうぎょう・工業こうぎょうなどの需要じゅよう増加ぞうか

対策たいさく

輸送ゆそう：水路すいろ、パイプライン、水みず伝馬てんま（水船みずぶね・水取みずとり船せん）^[3]^[4]、給水きゅうすい車しゃ
ダムによる普段ふだんからの貯水ちょすい・取水しゅすい制限せいげん
雨水あまみずの利用りよう（雨水あまみずタンク、ため池いけ）
節水せっすい
- 水分すいぶん消費しょうひの少すくない農作物のうさくもつの奨励しょうれい
- 下水げすいを処理しょりして再さい利用りようする中水道なかすいどう
- 給水きゅうすい制限せいげん（減圧げんあつ給水きゅうすい・時間じかん給水きゅうすい） - 各かく家庭かていに送おくる圧力あつりょく、給水きゅうすいする時間じかんに制限せいげんをかける^[5]。
- 炭鉱たんこうでは、坑内こうない水すいを使用しようして洗濯せんたくしたため白しろい洗あらい物ものが黒くろくなった^[6]。
水源すいげんかん養よう保安ほあん林りん、植林しょくりんと維持いじ
人工じんこう降雨こうう
海水かいすい淡水たんすい化か
浄水じょうすい/浄水じょうすい場じょう/塩素えんそ消毒しょうどく/ろ過か
水質すいしつ保全ほぜん政策せいさく
上流じょうりゅう地域ちいきと下流かりゅう地域ちいきの協定きょうてい
- インダス水すい協定きょうてい（英語えいご版ばん） - インド・パキスタン間あいだ
- ファラッカ堰せき（英語えいご版ばん） - インド・バングラデシュ間あいだで協定きょうていが組くまれている。

各国かっこくの状況じょうきょうと対策たいさく

日本にっぽん

日本にっぽんでは、旱魃かんばつなどにより発生はっせいし、農業のうぎょう用水ようすいの取水しゅすい制限せいげんや水道すいどう水みずの給水きゅうすい制限せいげんなどが行おこなわれる。河川かせんが少すくない離島りとう（一いち例れいとして、硫黄いおう島とう自衛隊じえいたい基地きちなど^[7]）や降水こうすい量りょうの少すくない瀬戸内海せとないかい沿岸えんがん地域ちいき、人口じんこうが急増きゅうぞうした福岡ふくおか市しなどが慢性まんせい的てきに悩なやまされる問題もんだいである。

ため池いけ - 全国ぜんこく各地かくち
長距離ちょうきょり用水路ようすいろ - 愛知あいち県けん愛知あいち用水ようすい、香川かがわ県けん香川かがわ用水ようすい等ひとし
ダム - 東京とうきょう都と小河内おかうちダム、高知こうち県けん早明浦さめうらダム等ひとし
海水かいすい淡水たんすい化かプラント - 沖縄おきなわ県けん北谷きただに町まち、福岡ふくおか県けん福岡ふくおか市し等ひとし
パイプライン輸送ゆそう(海底かいてい送水そうすい管かん等とう) - 兵庫ひょうご県けん赤穂あこう市し～姫路ひめじ市し家島いえじま町まち、広島ひろしま県けん竹原たけはら市し～大崎上島おおさきかみじま町まち等ひとし、兵庫ひょうご県けん神戸こうべ市し垂水たるみ区く～淡路島あわじしま(明石海峡大橋あかしかいきょうおおはしに併設へいせつ)
節水せっすいコマの無料むりょう配布はいふ - 福岡ふくおか県けん福岡ふくおか市し等とう

著名ちょめいな渇水かっすい

昭和しょうわ39年ねん東京とうきょう渇水かっすい - 1964年ねん（昭和しょうわ39年ねん）に東京とうきょう都とで起おきた渇水かっすい。通称つうしょう「東京とうきょうオリンピック渇水かっすい」「東京とうきょう砂漠さばく」。
昭和しょうわ53-54年ねん福岡ふくおか市し渇水かっすい - 1978年ねん（昭和しょうわ53年ねん）から1979年ねん（昭和しょうわ54年ねん）にかけて、福岡ふくおか県けん福岡ふくおか市しで起おきた渇水かっすい。
昭和しょうわ56-57年ねん沖縄おきなわ渇水かっすい - 1981年ねん（昭和しょうわ56年ねん）から1982年ねん（昭和しょうわ57年ねん）にかけて、沖縄おきなわ県けんで起おきた渇水かっすい。日本にっぽんで最もっとも長ながい期間きかんの給水きゅうすい制限せいげんが実施じっしされた。
平成へいせい6年ねん渇水かっすい - 1994年ねん（平成へいせい6年ねん）に起おきた渇水かっすい。西日本にしにほんを中心ちゅうしんとして各地かくちで給水きゅうすい制限せいげんが実施じっしされた。

アジア

中国ちゅうごく

南みなみ水北すいほく調ちょう

世界せかい最大さいだい規模きぼの水源すいげんチベット高原こうげんを持もち、ディチュ河かわ、メコン河かわ、サルウィン川がわ（怒いか江こう）、インダス川がわ、ガンジス川がわなどに水みずを供給きょうきゅうすることから世界せかいの給水きゅうすい塔とうと呼よばれる。この上流じょうりゅうに中国ちゅうごくがダムを建設けんせつしており、ライフラインともいえる水みずを握にぎられた川かわの下流かりゅうのインドなどの国くにと国際こくさい問題もんだいとなっている^[8]^[9]。

台湾たいわん: 水みずを大量たいりょうに使用しようする半導体はんどうたい工場こうじょうが密集みっしゅうしている地域ちいきで水不足みずぶそくが発生はっせいし、半導体はんどうたい会社かいしゃが自みずから給水きゅうすい車しゃを手配てはいして余裕よゆうのある水源すいげんから輸送ゆそうして乗のり切きった^[10]。

旧きゅうソビエト連邦れんぽう: 灌漑かんがいによってアラル海あらるかいに流入りゅうにゅうする水みずが減少げんしょうし環境かんきょう破壊はかいが引ひき起おこされた。

イラン: 灌漑かんがいなどの開発かいはつによりオルーミーイェ湖こに流ながれ込こむ淡水たんすいの量りょうが減少げんしょうし、かつてはカスピ海かすぴかいに次つぐ巨大きょだいな湖みずうみも消滅しょうめつの危機ききを迎むかえていた。水みずを消費しょうひしない作物さくもつや農法のうほうの奨励しょうれいにより改善かいぜんしている^[11]。

中南米ちゅうなんべい

水みずを多おおく必要ひつようとするアボカドの価格かかく高騰こうとうにより、農家のうかがこぞって栽培さいばいし水不足みずぶそくが発生はっせいしている^[12]。

ガリンペイロ（ポルトガル語ご：garimpeiro ）と呼よばれる金かねの違法いほう採掘さいくつ者しゃが使用しようする水銀すいぎんによって水質すいしつも悪化あっかしている^[13]^[14]。

アフリカ

ケニアの水不足みずぶそく（英語えいご版ばん）
チャド湖こ、砂漠さばく化かに近ちかい地域ちいきで灌漑かんがいにより縮小しゅくしょうがみられた。農業のうぎょう・放牧ほうぼくなどの効率こうりつ化かなどで改善かいぜん
コンゴ盆地ぼんち、世界せかいで2番目ばんめに大おおきな流域りゅういきとなっている。チャド盆地ぼんちなど水みずが不足ふそくする地域ちいきに水みずをひく計画けいかくなどが提案ていあんされている。

戦略せんりゃくによる水みず断たち

自然しぜん的てきな水不足みずぶそくとは異ことなり、籠城ろうじょうをしている敵てき軍ぐんの水源すいげんを断たち（包囲ほうい戦せん）、人為じんい的てきに水不足みずぶそくにさせ、自軍じぐんの戦力せんりょくを削けずらず、相手方あいてがたの降伏ごうぶくを誘さそうために行おこなわれる（例れいとして、野洲やす河原かわはらの戦たたかいなど）。限定げんてい的てき空間くうかんに閉とじ込こめられている相手あいてに行おこなわれ、海上かいじょう戦せんであっても、船舶せんぱくに搭載とうさいされている水みずが枯渇こかつするような状況じょうきょうを作つくられれば（例れいとして、船ふねを陸ろくに近ちかづけさせず、水みずを補給ほきゅうさせない）、水不足みずぶそくとなる。時間じかん的てきに余裕よゆうがある状況じょうきょうで用もちいられる戦略せんりゃくである。

脚注きゃくちゅう

^ 水不足みずぶそくのサウジ、ナイル川がわ上流じょうりゅうを買収ばいしゅう？ナショナルジオグラフィック更新こうしん日び：2012.12.21 参照さんしょう日び：2021.9.5
^ Falkenmark and Lindh 1976, quoted in UNEP/WMO. “Climate Change 2001: Working Group II: Impacts, Adaptation and Vulnerability”. UNEP. 26 June 2015時じ点てんのオリジナルよりアーカイブ。3 February 2009閲覧えつらん。
^ “1.7 Water conveyance by marine vessels”. www.oas.org. 2022年ねん4月がつ4日にち閲覧えつらん。
^ 日本にっぽんと世界せかいにおける水みず輸送ゆそうの課題かだいと可能かのう性せい著ちょ：植村うえむら哲士てつし、宇都うと正ただし哲あきら、松岡まつおか未季みき
^ “渇水かっすい時じの「取水しゅすい制限せいげん」と「給水きゅうすい制限せいげん」違ちがいは（THE PAGE）”. Yahoo!ニュース. 2022年ねん9月がつ29日にち閲覧えつらん。
^ 図録ずろく番号ばんごう150　タイトル：渇水かっすい期きの水みず汲くみ山本やまもと作兵衛さくべえコレクション　サイト：福岡ふくおか県けん田川たがわ市し
^ 朝日新聞あさひしんぶん2011年ねん8月がつ7日にち付づけ、記事きじ参考さんこう。
^ 中国ちゅうごくとインドの「水利すいり権けん奪取だっしゅ」に向むけたダムが生うむヒマラヤ地方ちほうの生態せいたい系けいの危機ききダライ・ラマ法王ほうおう日本にっぽん代表だいひょう部ぶ事務所じむしょ
^ “チベット自治じち区く最大さいだいの水力すいりょく発電はつでん所しょが稼働かどう開始かいし、中国ちゅうごく”. AFPBB. (2014年ねん11月25日にち) 2019年ねん7月がつ27日にち閲覧えつらん。
^ 台湾たいわん、取水しゅすい制限せいげん強化きょうかを見送みおくり　半導体はんどうたい生産せいさんへの影響えいきょう回避かいひ　出版しゅっぱん者しゃ：日本経済新聞にほんけいざいしんぶん、更新こうしん日び：2021年ねん5月がつ31日にち　参照さんしょう日び：2021年ねん6月がつ22日にち
^ The return of a once-dying lakeBBC
^ Running Dry Is our love of avocados fuelling Chile's drought?（ Running Dry〜） - YouTube 出典しゅってん： Thomson Reuters Foundation（情報じょうほう企業きぎょうトムソン・ロイターの慈善じぜん事業じぎょう部門ぶもん）
^ Garimpo Lexico - acessado em 3 de outubro de 2015
^ The elite soldiers protecting the Amazon rainforest(BBC)