海洋かいよう惑星わくせい

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エウロパ内部ないぶ図表ずひょう
海洋かいよう惑星わくせいと2つの衛星えいせい想像そうぞう

海洋かいよう惑星わくせい(かいようわくせい、英語えいご: Ocean planet)とは仮説かせつじょう惑星わくせい種類しゅるいである。全体ぜんたいふかすうひゃくkmのあつみずそうおおわれた惑星わくせいで、こおりおおふくんだ惑星わくせい惑星わくせいけい内側うちがわ移動いどうしたとき形成けいせいされる。

この言葉ことばたんに「うみ惑星わくせい」という意味いみでももちいられるが、とう記事きじでは前述ぜんじゅつ特徴とくちょう惑星わくせいについて記述きじゅつする。

概要がいよう[編集へんしゅう]

惑星わくせいけい外側そとがわ形成けいせいされる原始げんし惑星わくせいは、岩石がんせきのほかに大量たいりょうみずこおり状態じょうたいふくんでおり、これがなんらかの事情じじょうでハビタブルゾーンない移動いどうして融解ゆうかいすることで海洋かいよう惑星わくせいとなる。古典こてんてき惑星わくせい形成けいせいろんでは惑星わくせい軌道きどう固定こていされたものとかんがえてきたが、恒星こうせいちかくを周回しゅうかいするけいがい惑星わくせい多数たすう発見はっけんされた現在げんざいでは、一般いっぱんてき現象げんしょうとして惑星わくせい移動いどうきているとめられるようになった。原始げんし惑星わくせい移動いどう海洋かいよう惑星わくせい形成けいせいされるという発想はっそうもこのような認識にんしき変化へんかなか登場とうじょうしたものである。海洋かいよう惑星わくせいについての初期しょき議論ぎろん2003ねんに Marc Kuchner や Alain Légerがおこなったものがある[1]

大気たいき必要ひつようせい[編集へんしゅう]

みずなが期間きかん存在そんざいするためには恒星こうせいのスペクトルが M K Gがた(それ以降いこうは、ハビタブルゾーンの移動いどうはやい)で、惑星わくせいあるいは衛星えいせいがハビタブルゾーンに位置いちし、磁気圏じきけんおよび十分じゅうぶん重力じゅうりょく保有ほゆうしている必要ひつようがある[2][3][4][5]重力じゅうりょくには大気たいき維持いじするはたらきがあり、大気たいきあつがなかった場合ばあいみずすべ宇宙うちゅう蒸発じょうはつしてしまう。また惑星わくせいつよ磁気圏じきけん大気たいき太陽たいようふうからまもることで、地質ちしつがくてき時間じかん単位たんいみず保持ほじする役目やくめになっている[2]

惑星わくせい大気たいき惑星わくせい形成けいせい過程かていきたガス放出ほうしゅつか、原始げんし惑星わくせいけい円盤えんばん惑星わくせいおおっているとき重力じゅうりょくによってらえたこと形成けいせいされている。太陽系たいようけいがい惑星わくせい表面ひょうめん温度おんど大気たいき温室おんしつ効果こうかガスの影響えいきょうによってまり、温室おんしつ効果こうかガスは恒星こうせい放射ほうしゃするエネルギーを吸収きゅうしゅうするため、赤外線せきがいせんによって容易ようい観測かんそく可能かのうである[4]

太陽系たいようけいがい惑星わくせい[編集へんしゅう]

海洋かいよう惑星わくせい想像そうぞう

太陽系たいようけいには海洋かいよう惑星わくせい存在そんざいしないため、海洋かいよう惑星わくせいという言葉ことば太陽系たいようけいがい惑星わくせい議論ぎろんなか使つかわれる。海洋かいよう惑星わくせいうみふかさはすうひゃくkmにたっし、地球ちきゅう海洋かいよう平均へいきんで3.7km)とはスケールがことなる。海底かいていこうあつとなり融点ゆうてん上昇じょうしょうするためにみず常温じょうおん凝固ぎょうこし、地球ちきゅうじょうではられないようなこうあつしょうごおりマントル構成こうせいしているとかんがえられる[6][7]。また、恒星こうせいちか高温こうおん惑星わくせいでは、海洋かいよう温度おんど沸点ふってん上回うわまわってみずちょう臨界りんかい流体りゅうたいとなり、太陽系たいようけいガス惑星わくせいおなじように、惑星わくせい明確めいかくな「表面ひょうめん」が存在そんざいしなくなっている可能かのうせいがある[1]

グリーゼ581d海洋かいよう惑星わくせい候補こうほ天体てんたいの1つである。この惑星わくせいグリーゼ581ハビタブルゾーンうちそとりを公転こうてんしており、液体えきたいみず存在そんざいするに十分じゅうぶんなほど惑星わくせい表面ひょうめん温度おんどたかめられている可能かのうせいがある(ただし実在じつざいしない可能かのうせい指摘してきされている)。

太陽系たいようけいがい惑星わくせい海洋かいよう惑星わくせい候補こうほとしてケプラー11惑星わくせいけい[7]GJ 1214 bケプラー22bケプラー62fケプラー62e[8][9][10]TRAPPIST-1惑星わくせいけい[11][12]げられる。これらの太陽系たいようけいがい惑星わくせいはケプラー衛星えいせいによって観測かんそくされることが期待きたいされている。

宇宙うちゅう生物せいぶつがく[編集へんしゅう]

海洋かいよう惑星わくせい特徴とくちょう海洋かいよう惑星わくせい歴史れきし太陽系たいようけい形成けいせい進化しんかかすがかりとなるかもれず、海洋かいよう惑星わくせい生命せいめい誕生たんじょう居住きょじゅう可能かのうせいげられ注目ちゅうもくあつめている。既知きち生物せいぶつ大半たいはんはその生存せいぞん液体えきたいみず不可欠ふかけつであり、海洋かいよう惑星わくせいにはそれが大量たいりょう存在そんざいしているため、エネルギーとなる栄養えいようぶつ確認かくにんされた場合ばあい生命せいめいたい存在そんざいする可能かのうせいまれる[13][14]。ただし、地球ちきゅうの5ばい以上いじょう水深すいしん海洋かいよう惑星わくせいは、うみ底部ていぶがその水圧すいあつにより形成けいせいされたこおりにおおわれるために岩盤がんばん浸食しんしょくこらず、プランクトンのような酸素さんそ生成せいせいする地球ちきゅうがた生命せいめい進化しんかするために必要ひつようりょうのリンや栄養えいようぶつ溶解ようかいしていないことがシミュレーションによって判明はんめいした[15][16]

一方いっぽうエウロパエンケラドスのようにうみケイ酸けいさんしお地殻ちかくじょう存在そんざいし、ねつ栄養えいようぶつゆうしているために、生命せいめい居住きょじゅうてきした環境かんきょうゆうしているとみなされている天体てんたいもある[17]表面ひょうめん火山かざん活動かつどううみ彗星すいせいからの有機ゆうき化合かごうぶつソリンのような重要じゅうよう物質ぶっしつをもたらす可能かのうせいがある。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b “Ocean Planets on the Brink of Detection”. Physorg.com. (2007ねん2がつ2にち). http://www.physorg.com/news89627725.html 2007ねん2がつ2にち閲覧えつらん 
  2. ^ a b Driscoll, Peter (May 2011). "Optimal dynamos in the cores of terrestrial exoplanets: Magnetic field generation and detectability"Icarus213 (1): 12–23. Bibcode:2011Icar..213...12D. doi:10.1016/j.icarus.2011.02.010. Retrieved 2017-10-05.
  3. ^ Hydrogen green house planets beyond the Habitable Zone. Raymond Pierrehumbert, and Eric Gaidos. The Astrophysical Journal Letters. 19 May 2011.
  4. ^ a b Seager, Sara (2013). "Exoplanet Habitability". Science340 (577): 577. Bibcode:2013Sci...340..577S. doi:10.1126/science.1232226.
  5. ^ "Are there oceans on other planets?"National Oceanic and Atmospheric Administration. 6 July 2017. Retrieved 2017-10-03.
  6. ^ https://news.mynavi.jp/techplus/article/20140612-a332/
  7. ^ a b D'Angelo, G.; Bodenheimer, P. (2016). "In Situ and Ex Situ Formation Models of Kepler 11 Planets". The Astrophysical Journal828: in press. arXiv:1606.08088 . Bibcode:2016ApJ...828...33D. doi:10.3847/0004-637X/828/1/33.
  8. ^ Water Worlds and Ocean Planets. 2012. Sol Company
  9. ^ David Charbonneau; Zachory K. Berta; Jonathan Irwin; Christopher J. Burke; et al. (2009). "A super-Earth transiting a nearby low-mass star"Nature462 (17 December 2009): 891–894. arXiv:0912.3229 . Bibcode:2009Natur.462..891C. doi:10.1038/nature08679. PMID 20016595. Retrieved 2009-12-15.
  10. ^ Kuchner, Seager; Hier-Majumder, M.; Militzer, C. A. (2007). "Mass–radius relationships for solid exoplanets"The Astrophysical Journal669 (2): 1279–1297. arXiv:0707.2895 . Bibcode:2007ApJ...669.1279S. doi:10.1086/521346.
  11. ^ Bourrier, Vincent; de Wit, Julien; Jäger, Mathias (31 August 2017). "Hubble delivers first hints of possible water content of TRAPPIST-1 planets"www.SpaceTelescope.org. Retrieved 4 September2017.
  12. ^ PTI (4 September 2017). "First evidence of water found on TRAPPIST-1 planets – The results suggest that the outer planets of the system might still harbour substantial amounts of water. This includes the three planets within the habitable zone of the star, lending further weight to the possibility that they may indeed be habitable"The Indian Express. Retrieved 4 September 2017.
  13. ^ Nimmo, F.; Pappalardo, R. T. (8 August 2016). "Ocean worlds in the outer solar system" (PDF). Journal of Geophysical Research121 (8): 1378. Bibcode:2016JGRE..121.1378N. doi:10.1002/2016JE005081. Retrieved 2017-10-01.
  14. ^ Hydrothermal Systems in Small Ocean Planets. (PDF) Steve Vance, Jelte Harnmeijer, Jun Kimura, Hauke Hussmann, Brian deMartin, and J. Michael Brown. Astrobiology. December 2007, 7(6): 987–1005. DOI: 10.1089/ast.2007.0075
  15. ^ Franck, S.; Cuntz, M.; von Bloh, W.; Bounama, C. (January 2003). "The habitable zone of Earth-mass planets around 47 UMa: results for land and water worlds"International Journal of Astrobiology2 (1): 35–39. Bibcode:2003IJAsB...2...35F. doi:10.1017/S1473550403001368. Retrieved 2017-10-01.
  16. ^ "Water Worlds and Ocean Planets"Solsation.com. 2013. Retrieved January 7, 2016.
  17. ^ Nimmo, F.; Pappalardo, R. T. (8 August 2016). "Ocean worlds in the outer solar system" (PDF). Journal of Geophysical Research121 (8): 1378. Bibcode:2016JGRE..121.1378N. doi:10.1002/2016JE005081. Retrieved 2017-10-01.

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]