清岡きよおか公こう張ちょう

清岡きよおか公こう張ちょう（きよおかともはる、1841年ねん 8月がつ26日にち（天保てんぽう12年ねん7月がつ10日とおか） - 1901年ねん（明治めいじ34年ねん）2月がつ25日にち）は、日本にっぽんの武士ぶし（土佐とさ藩はん士し）、官僚かんりょう。従したがえ二に位い勲一等くんいっとう子爵ししゃく^[1]。通称つうしょうは半四郎はんしろう、号ごうは東あずま望のぞむ。

略歴りゃくれき[編集へんしゅう]

1841年ねん、土佐とさ藩はん郷士ごうしの子弟していとして土佐とさ国こく安芸あき郡ぐん田野浦たのうらに生うまれる。伊勢いせへ遊学ゆうがくし、のちに上洛じょうらくして諸しょ藩はんの勤王きんのうの志士ししと交まじわった。文久ぶんきゅう年間ねんかんに上京じょうきょうし、藩はん命いのちにより三条さんじょう実美みみの衛士えじとなる。八はち月がつ十じゅう八はち日にちの政変せいへんによる七なな卿きょう落おちの際さいには、七なな卿きょうに同行どうこうして長州ちょうしゅう藩はんに亡命ぼうめいする。禁門きんもんの変へんでは長州ちょうしゅう藩はんと共ともに参戦さんせんするが敗北はいぼくし、再ふたたび長州ちょうしゅうへ逃のがれている。

乾いぬい退助たいすけに脱藩だっぱんを提案ていあん[編集へんしゅう]

慶応けいおう3年ねん9月9日にち（1867年ねん 10月6日にち）、土佐とさ藩はんお抱かかえの刀鍛冶かたなかじ・左ひだり行秀ゆきひで（豊永とよなが久左衛門きゅうざえもん）は、乾いぬい退助たいすけが江戸えどの土佐とさ藩邸はんていに勤王きんのう派は浪士ろうしを隠匿いんとくし、薩摩さつま藩はんが京都きょうとで挙兵きょへいした場合ばあい、退助たいすけらの一いち党とうが東国とうごくで挙兵きょへいする計画けいかくを立たてていると、寺村てらむら左ひだり膳ぜんに対たいし密告みっこくを行おこなった。行秀ゆきひでは乾いぬい退助たいすけが水戸みと浪士ろうし（もと天狗てんぐ党とう）・中村なかむら勇吉ゆうきちに宛あてた書簡しょかんの写うつしを証拠しょうことして所有しょゆうしており、退助たいすけの失脚しっきゃくを狙ねらって左ひだり膳ぜんに密告みっこくしたものである^[2]。「この事ことが容堂ようどう公おおやけの耳みみに入はいれば、退助たいすけの命いのちはとても助たすからないであろう」という話はなしを漏もれ聞きいた清岡きよおか公こう張ちょう（半四郎はんしろう）は、退助たいすけの身みを心配しんぱいし土佐とさ勤王きんのう党とうの一員いちいんであった島村しまむら寿太郎じゅたろう（武市たけいち瑞みずほ山さんの妻つま・富子とみこの弟おとうとで、瑞みず山やまの義弟ぎてい）に乾いぬい退助たいすけを脱藩だっぱんさせることを提案ていあん。島村しまむらが退助たいすけに面会めんかいして脱藩だっぱんを勧すすめた。しかし、退助たいすけは容堂ようどうの御側おそば御ご用役ようえき・西野にしの友とも保ほ（彦四郎ひこしろう）に対たいし、水戸みと浪士ろうしを藩邸はんていに隠匿いんとくしていることは、既すでに5月（薩土討幕とうばくの密約みつやく締結ていけつを報告ほうこくの際さい）に自みずから容堂ようどう公こうへ申もうし上あげている事ことであるため、既すでに覚悟かくごは出来できており御沙汰ごさたを俟つのみであると返答へんとうしている。果はたしてこれに対たいして容堂ようどうは、

退助たいすけは暴激の擧きょ（きょ）多おおけれど、毫（すこし）も邪心じゃしんなく私事しじの爲ために動うごかず、群ぐん下か（みな）が假令たとい（たとへ）之の（これ）を争そうふも余よ（容堂ようどう）は彼かれ（退助たいすけ）を殺ころすに忍しのびず^[3]。 — 山内やまうち容堂ようどう

と答こたえたため退助たいすけは命拾いのちびろいをしたという^[4]。

維新いしん以降いこう[編集へんしゅう]

維新いしん後こうは新しん政府せいふに出仕しゅっしし、地方ちほう官かんを皮切かわきりに、1883年ねん（明治めいじ16年ねん）からは元老げんろう院議いんぎ官かんや宮みや内省ないせい図書としょ頭あたま、貴族きぞく院いん子爵ししゃく議員ぎいん（1890年ねん7月がつ10日とおか^[5]-1891年ねん5月がつ28日にち^[6]）などを歴任れきにんした。1887年ねん（明治めいじ20年ねん）には維新いしんの功こうにより子爵ししゃくを授さづけられた。1890年ねん（明治めいじ23年ねん）10月がつ20日はつか、錦鶏きんけい間あいだ祗候しこうとなる^[7]。1891年ねん（明治めいじ24年ねん）、勲一等くんいっとう瑞宝章ずいほうしょう。1897年ねん（明治めいじ30年ねん）ロシア皇帝こうていニコラス戴冠たいかん式しきに参列さんれつ後ご、欧米おうべい巡遊じゅんゆうを行おこなう。1898年ねん（明治めいじ31年ねん）枢密すうみつ顧問こもん官かんに就任しゅうにんする^[8]。

1901年ねん2月がつ、死去しきょ。享年きょうねん60。墓所はかしょは、東京とうきょう都と文京ぶんきょう区くの護国寺ごこくじ。

栄典えいてん[編集へんしゅう]

明治めいじ3年ねん5月がつ8日にち - 従したがえ五ご位い下か^[9]
1882年ねん（明治めいじ15年ねん）2月がつ1日にち - 正せい五ご位い^[9]
1883年ねん（明治めいじ16年ねん）6月がつ5日にち - 従したがえ四よん位い^[9]
1886年ねん（明治めいじ19年ねん）10月がつ20日はつか - 従したがえ三さん位い^[9]^[10]
1894年ねん（明治めいじ27年ねん）6月がつ30日にち - 正せい三さん位い^[9]^[11]
1901年ねん（明治めいじ34年ねん）2月がつ25日にち - 従したがえ二に位い^[9]

勲章くんしょう等とう

1882年ねん（明治めいじ15年ねん）8月がつ9日にち - 勲くん三さん等とう旭日きょくじつ中ちゅう綬章じゅしょう^[9]
1887年ねん（明治めいじ20年ねん）
- 5月9日にち - 子爵ししゃく^[9]^[12]
- 11月25日にち - 勲くん二に等とう旭日重光章きょくじつじゅうこうしょう^[9]^[13]
1889年ねん（明治めいじ22年ねん）11月25日にち - 大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽう発布はっぷ記念きねん章あきら^[9]^[14]
1890年ねん（明治めいじ23年ねん）7月がつ10日とおか - 貴族きぞく院いん議員ぎいん章あきら^[15]
1891年ねん（明治めいじ24年ねん）3月がつ30日にち - 勲一等くんいっとう瑞宝章ずいほうしょう^[9]^[16]

外国がいこく勲章くんしょう佩用はいよう允許いんきょ

1896年ねん（明治めいじ29年ねん）10月がつ8日にち - ロシア帝国ていこく神聖しんせいアンナ第だい一等いっとう勲章くんしょう^[9]

親族しんぞく[編集へんしゅう]

父ちち：清岡きよおか春はる勝しょう - 郷士ごうし
- 兄あに：清岡きよおか成章しげあき（道之みちゆき助すけ） - 長男ちょうなん邦之助くにのすけの岳父がくふに福沢ふくさわ諭吉ゆきち。その長男ちょうなん暎一の妻つまは杉本すぎもと鉞子の娘むすめ。
- 本人ほんにん：清岡きよおか公こう張ちょう
- 妻つま：清岡きよおか覚さとし子こ（歌人かじん）沢さわ簡徳の二女じじょ^[17]。
  - 長男ちょうなん：清岡きよおか弥わたる
  - 二男じなん：清岡きよおか龍りゅう（1875-1942） - 公おおやけ張はり没ぼつ時じに襲爵しゅうしゃく。岳父がくふに帝国ていこく済ずみ民みん会かい設立せつりつ者しゃ・原はら十目じゅうもく吉きち。子こに清岡きよおか繁栄はんえい。^[18]^[19]
  - 三男さんなん：清岡きよおか三さん麿まろ（1876-1950） - 兄あに没ぼつ後ごに襲爵しゅうしゃく。専売せんばい局きょく副ふく参事さんじ^[20]。妻つまの多満たまは元もと弘前ひろさき藩はん士し・飯田いいだ巽たつみの三さん女じょ。
  - 四男よつお：清岡きよおか真彦まさひこ（1879-1952） - 妻つまの勇子ゆうこ（1892年生ねんせい）は出雲いずも国造くにのみやつこ・第だい81代だい千家せんげ尊たかし紀きの娘むすめ^[21]^[22]。
  - 長女ちょうじょ：阪本さかもと新子しんこ（1880年生ねんせい） - 阪本さかもと三郎さぶろうの妻つま^[22]。
  - 三さん女じょ：滋野しげの和香子わかこ（1889-1910） - 男爵だんしゃく・滋野しげの清武きよたけに嫁とつぐ^[22]。長女ちょうじょ・露ろ子こをもうけた後のちに早世そうせい。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

^ 彦根ひこね正せい三さん編へん『華族かぞく名鑑めいかん』89頁ぺーじ，明治めいじ25年ねん10月がつ版ばん,博ひろし公おおやけ書院しょいん,明あかり22-25. 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション
^ 『土佐とさ維新いしん史料しりょう』書翰しょかん篇へん(1)
^ 『明治めいじ功臣こうしん録ろく』
^ 『維新いしん前後ぜんこう経歴けいれき談だん』
^ 『議会ぎかい制度せいど百ひゃく年ねん史し - 貴族きぞく院いん・参議院さんぎいん議員ぎいん名鑑めいかん』41頁ぺーじ。
^ 『官報かんぽう』第だい2374号ごう、明治めいじ24年ねん6月がつ1日にち。
^ 『官報かんぽう』第だい2195号ごう、明治めいじ23年ねん10月がつ22日にち。
^ 萩原はぎはら正太郎しょうたろう編へん『勤王きんのう烈士れっし伝でん』567頁ぺーじ,頒功社しゃ,明あかり39.4. 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション (参照さんしょう 2023-10-06)
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l 「清岡きよおか公こう張ちょう」アジア歴史れきし資料しりょうセンター Ref.A06051168500
^ 『官報かんぽう』第だい994号ごう「叙任じょにん及辞令れい」1886年ねん10月がつ21日にち。
^ 『官報かんぽう』第だい3301号ごう「叙任じょにん及辞令れい」1894年ねん7月がつ2日にち。
^ 『官報かんぽう』第だい1156号ごう「叙任じょにん及辞令れい」1887年ねん5月がつ10日とおか。
^ 『官報かんぽう』第だい1324号ごう「叙任じょにん及辞令れい」1887年ねん11月26日にち。
^ 『官報かんぽう』第だい1928号ごう「叙任じょにん及辞令れい」1889年ねん11月30日にち。
^ 清岡きよおか公こう張ちょう - 国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かんデジタルアーカイブ
^ 『官報かんぽう』第だい2322号ごう「叙任じょにん及辞令れい」1891年ねん3月がつ31日にち。
^ 清岡きよおか覚さとし子こ（読よみ）キヨオカカクココトバンク
^ 『現代げんだい華族かぞく譜ふ要よう』維新いしん史料しりょう編纂へんさん会かい編へん、日本にっぽん史籍しせき協会きょうかい、1929, p237
^ 大工だいく町まち角川かどかわ日本にっぽん地名ちめい大だい辞典じてん(旧きゅう地名ちめい編へん)
^ 清岡きよおか三さん麿まろ『人事じんじ興信録こうしんろく』第だい8版はん [昭和しょうわ3(1928)年ねん7月がつ]
^ 千家せんげ尊たかし統みつる『現代げんだい華族かぞく譜ふ要よう』維新いしん史料しりょう編纂へんさん会かい編へん、日本にっぽん史籍しせき協会きょうかい、1929
^ ^a ^b ^c 清岡きよおか龍りゅう『人事じんじ興信録こうしんろく』第だい8版はん [昭和しょうわ3(1928)年ねん7月がつ]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

衆議院しゅうぎいん・参議院さんぎいん編へん『議会ぎかい制度せいど百ひゃく年ねん史し - 貴族きぞく院いん・参議院さんぎいん議員ぎいん名鑑めいかん』大蔵省おおくらしょう印刷いんさつ局きょく、1990年ねん。

公職こうしょく
先代せんだい田中たなか光ひかり顕あきら（→欠員けついん）	図書としょ頭あたま 1898年ねん - 1900年ねん	次代じだい勝間田かつまた稔みのる
先代せんだい真木まき長義ながよし	伏見ふしみ宮みや別当べっとう 1894年ねん - 1898年ねん	次代じだい真木まき長義ながよし
先代せんだい山崎やまざき直ただし胤たね	山階やましな宮みや別当べっとう 1891年ねん - 1894年ねん	次代じだい真木まき長義ながよし
先代せんだい股また野の琢みがく	久邇くに宮みや別当べっとう 1891年ねん	次代じだい（廃止はいし）
先代せんだい小畑おばた美よし稲いね大阪おおさか上等じょうとう裁判所さいばんしょ長ちょう心得こころえ	大阪おおさか控訴こうそ裁判所さいばんしょ長なが 1881年ねん - 1883年ねん	次代じだい児島こじま惟謙いけん
先代せんだい（新設しんせつ）	福島ふくしま県けん権けん知事ちじ 1869年ねん	次代じだい林はやし兼けん善ぜん
先代せんだい（新設しんせつ）	待まち詔みことのり局きょく知事ちじ 1869年ねん	次代じだい（欠員けついん→）阿野あの公こう誠まこと待まち詔みことのり下院かいん長官ちょうかん
日本にっぽんの爵位しゃくい
先代せんだい叙爵じょしゃく	子爵ししゃく清岡きよおか（公おおやけ張ちょう）家か初代しょだい 1887年ねん - 1901年ねん	次代じだい清岡きよおか龍りゅう