炕肉飯めし

焢肉飯めしの例れい（台北たいぺい）

炕肉飯めし（コンローハン）、または爌肉飯めし、焢肉飯めしは、台湾たいわん北部ほくぶの郷土きょうど料理りょうり。本ほん項こうでは、以下いか「炕肉飯めし」の字じを使用しようする。

「炕肉」とは、「豚ぶたの三さん枚まい肉にくを軟やわらかく煮にたもの」であり、これを飯めしに乗のせた料理りょうりである。

日本にっぽんでは台湾たいわん風ふう豚ぶた角かく煮に丼どんぶりと説明せつめいされることもある。また、台湾たいわん南部なんぶでは滷肉飯めしと呼よばれる。

発祥はっしょう

『灶辺煮に語ご :台湾たいわん閩客料理りょうり的てき対話たいわ』（陳ちん淑華しゅくか著ちょ）に拠よれば、「炕」は「沸騰ふっとうさせ続つづけたお湯ゆで食材しょくざいを柔やわらかく煮込にこむ」調理ちょうり法ほうを指さし、日本にっぽんの角かく煮にに類るいする豚肉ぶたにくの料理りょうりは「炕肉」と呼よばれている。

国立こくりつ台湾たいわん師範しはん大学だいがくの陳ちん玉たま箴は、炕肉の起源きげんを宴会えんかい料理りょうりの「封ふう肉にく」に求もとめている。豚ぶたバラ肉にくを塊かたまりで長時間ちょうじかん煮込にこんだ料理りょうりは「大だい封ふう」、そこから派生はせいした小ちいさな肉にくの塊かたまりを煮にた料理りょうりは「小しょう封ふう」、より細こまかい肉にくの場合ばあいは「肉にく燥肉（日本にっぽんでいうところのそぼろ）」と呼よばれ、これらは親戚しんせき関係かんけいにある料理りょうりと言いってよい。

台湾たいわんの炕肉は福建ふっけん料理りょうりから来きたものであるが、台湾たいわんの炕肉に類似るいじする東ひがし坡肉や客きゃく家か料理りょうりの梅うめ菜さい扣肉なども台湾たいわんでは、よく食たべられている。フュージョン料理りょうりレストラン『阿おもね正せい厨くりや坊ぼう』のシェフ・黄き守正もりまさは、これらの類似るいじ料理りょうりについて「調理ちょうり方法ほうほうに大おおきな差さはない」「食材しょくざいや調味ちょうみ料りょうなどに細こまかな違ちがいがある程度ていど」と主張しゅちょうする。実際じっさい、東ひがし坡肉は紹興酒しょうこうしゅを用もちい、台湾たいわん料理りょうりと客きゃく家か料理りょうりは米べい酒しゅを用もちいるほか、台湾たいわんではタケノコを入いれることがあり、客きゃく家かの梅うめ菜さい（カラシナの古漬ふるづけ）やメンマを入いれることもある程度ていどの差さである。

台湾たいわんにおいても、油分ゆぶんと塩分えんぶんの摂取せっしゅを控ひかえるよう食生活しょくせいかつが変化へんかしてきており、大おおきな肉にくの塊かたまりである炕肉は宴席えんせきなどでしか食しょくされることはなくなっている。しかしながら、小ちいさめの塊かたまり肉にくにしたものと白米はくまいを合あわせた料理りょうりは日常にちじょう的てきに食しょくされている。

彰あきら化か県けん

特とくに彰あきら化か県けんでは、炕肉飯めしは肉にく圓えん、猫ねこ鼠ねずみ麺めんと合あわせて「彰あきら化か三宝さんぼう」と呼よばれる名物めいぶつ料理りょうりである。

作家さっか・舒國治ちは、炕肉飯めしを彰あきら化かの「市し吃ども」、すなわち「誰だれもが食たべ、いつでも食たべられ、どこでも食たべられる」料理りょうりであると述のべている。実際じっさい、彰あきら化か県けんでは、炕肉飯めしは朝食ちょうしょく、昼食ちゅうしょく、夕食ゆうしょく、夜食やしょくのいずれとしても食たべられており、「週しゅうに一いち度どは食たべる」「外食がいしょくと言いえばまずは炕肉飯めし」という意見いけんもある。

炕肉飯めしを扱あつかう店みせの密度みつどは台湾たいわんでは彰あきら化か県けんが最もっとも高たかい。これらの店みせは食材しょくざいの鮮度せんどや料理りょうりの質しつを保たもつために、互たがいに暗黙あんもくの了解りょうかいとして自主じしゅ的てきに営業えいぎょう時間じかんを二食にしょくの時間じかん帯たいに限かぎっている。一いち例れいとして、朝食ちょうしょくと昼食ちゅうしょくのみ営業えいぎょうする店みせと、午後ごご3時じの「おやつ」の時間じかん帯たいから夕食ゆうしょくまで営業えいぎょうする店みせと、夜よる9時じから日付ひづけが変かわるまでの夜食やしょくの時間じかん帯たいに営業えいぎょうする店みせなど。24時じ間あいだ連続れんぞくして営業えいぎょうしている飲食いんしょく店てんはないが、リレー式しきに営業えいぎょうする飲食いんしょく店てんが存在そんざいするので、24時じ間あいだ、いつでも炕肉飯めしが食たべられることになっている。

発展はってんの理由りゆう

彰あきら化かは清きよしの時代じだいから日本にっぽん統治とうち時代じだいまでの間あいだ、台湾たいわん中部ちゅうぶの行政ぎょうせいの中心ちゅうしん地ちであり、商業しょうぎょうの一大いちだい拠点きょてんでもあったため、宴席えんせきの需要じゅようも多おおく、酒楼しゅろうや食堂しょくどうも多おおければ、宴会えんかい料理りょうりの料理人りょうりにんも大勢おおぜいいた。その後ご、時代じだいの趨勢すうせいで宴席えんせきに伴ともなう飲食いんしょく業ぎょうが衰退すいたいすると、宴会えんかい料理りょうりの料理人りょうりにんたちは屋台やたいなどを営いとなむようになり、豪勢ごうせいな宴席えんせき料理りょうりを簡素かんそ化かして、一般いっぱん大衆たいしゅうに販売はんばいするようになった。

また、彰あきら化か地方ちほうの物産ぶっさんの豊ゆたかさも炕肉飯めしが彰あきら化かで発展はってんした理由りゆうの1つと考かんがえられる。濁水だくすい渓けいから用水路ようすいろの八はち堡圳を通つうじて平野へいやの田畑たはたを潤うるおし、この水みずは醤油じょうゆの醸造じょうぞうにも使つかわれる。この地方ちほうには百ひゃく年ねん以上いじょうの歴史れきしを持もつ醤油じょうゆの醸造じょうぞう所しょも多数たすうある。畜産ちくさん業ぎょうも盛さかんで、養豚ようとんの頭数とうすうは台湾たいわんで3番目ばんめに多おおいほどであり、海うみの幸こうも獲えれる。地域ちいき産さんの食材しょくざいが良よいため、香料こうりょうや漢方薬かんぽうやくを加くわえず醤油じょうゆをメインとしたシンプルな塩味しおあじと香かおりが楽たのしめる彰あきら化かの炕肉飯めしが普及ふきゅうしたのである。

彰あきら化かには、福建ふっけん省しょうから渡わたってきた人々ひとびとが多おおく、歯はごたえがあるものを好このむことから、飯めしも白米はくまいは粘ねばり気けが少すくなくさっぱりしているため、そういった飯めしに醤油じょうゆ味あじの煮汁にじるをかけてもべたべたしない。東ひがし坡肉はしばしば「口くちの中なかでとろける」のを良りょうとするが、彰あきら化かの炕肉の皮かわには弾力だんりょくがあり、肉にくにはしっかりとした噛かみ応ごたえがあるものが好このまれるため、バラ肉にくではなく、豚ぶたもも肉にくが使用しようされる。しかしながら、もも肉にくに味あじをしみ込こませ、しっとりと仕上しあげるのは困難こんなんであるため、各店かくてんで調理ちょうり法ほうに工夫くふうを凝こらすとともに料理人りょうりにんの腕うでの見みせどころである。