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百鬼夜行ひゃっきやこう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
河鍋かわなべ暁斎きょうさいによる肉筆にくひつ百鬼夜行ひゃっきやこう絵巻えまき登場とうじょうしている妖怪ようかいたちを題材だいざいとしている。

百鬼夜行ひゃっきやこう(ひゃっきやぎょう、ひゃっきやこう)とは、日本にっぽん説話せつわなどに登場とうじょうする深夜しんや徘徊はいかいをするおに妖怪ようかいれ、および、かれらの行進こうしんである。

概要がいよう

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おに妖怪ようかいなどがあるいているとされており、「百鬼夜行ひゃっきやこうった」という表現ひょうげんなどがとられることもある。経文きょうもんとなえることによりなんのがれたはなしや、読経どきょうしているうちに朝日あさひのぼったところでおにたちがげたり、いなくなったりするはなし一般いっぱんてきで、ふつ功徳くどく説話せつわでもある。平安へいあん時代じだいから室町むろまち時代ときよにかけ、おもに説話せつわ登場とうじょうしており、おおくの人数にんずうおとをたてながらをともしてくる様子ようす、さまざまな姿すがたかたちのおにあるいている様子ようすなどが描写びょうしゃされており、これに遭遇そうぐうすることがおそれられていた[1]

くちゆう』(10世紀せいき)や鎌倉かまくら時代ときよから室町むろまち時代ときよにかけてまれた類書るいしょのひとつ『ひろえあくたしょう』には、こよみのうえで百鬼夜行ひゃっきやこう出現しゅつげんする「百鬼夜行ひゃっきやこう」であるとして以下いかげられており、「うまうまいぬいぬたつたつ」と各月かくつきにおける該当がいとう十二支じゅうにししめされている。

1がつ・2がつ - (ね)にち
3月・4がつ - うま(うま)にち
5月・6月 - (み)にち
7がつ・8がつ - いぬ(いぬ)にち
9月・10月 - (ひつじ)にち
11月・12月 - たつ(たつ)にち

百鬼夜行ひゃっきやこううとんでしまうといわれていたため、これらの貴族きぞくなどはよる外出がいしゅつひかえたといわれている。また「カタシハヤ、エカセニクリニ、タ(く)メルサケ、テエヒ、アシエヒ、ワレシコ[えひ]ニケリ」と呪文じゅもんとなえると、百鬼夜行ひゃっきやこうがいけられるという[2]。『くちゆう』や『ふくろ草紙ぞうし』(12世紀せいき)などでもすで同様どうよううたしるされており「かたしはや えかせにくりに くめるさけ てえひあしえひ われえひにけり」などとある。これらは「自分じぶんさけったものである」(あしいわれいにけり)といった内容ないようんでいるうたである。または「むずかしはや、ぎょう庫裏くりめるさけあしい、わがらいにけり」などと解釈かいしゃくされている。また山脇やまわきみちえん増補ぞうほ下学かがくしゅう』など、百鬼夜行ひゃっきやこう節分せつぶん現在げんざい太陽暦たいようれきでいえば大晦日おおみそか)であるとしるしている文献ぶんけん存在そんざいする[3][4]

百鬼夜行ひゃっきやこう登場とうじょうする説話せつわ

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日本にっぽん説話せつわしゅうなどに記述きじゅつがみられる。以下いかはそのうちのおもだったものである。

さだかん年間ねんかん(859~877)、右大臣うだいじん藤原ふじわら良相りょうしょう長男ちょうなん大納言だいなごんひだり大将たいしょう藤原ふじわら常行つねゆき愛人あいじんのもとへ途中とちゅうぶくもん周辺しゅうへん東大宮ひがしおおみや大路おおじほうからあるいてくる100にんほどのおに集団しゅうだん遭遇そうぐう常行つねゆき乳母うば阿闍梨あじゃりいてもらったみことかちふついただき陀羅尼だらにみことしょう陀羅尼だらに)をいこんであったふくていたので、これにがついたおにたちはげていった。
  • 安倍晴明あべのせいめいずい忠行ただゆき習道安倍晴明あべのせいめい忠行ただゆきしたがえひてみちを習ふ)」(まき24の16)
安倍晴明あべのせいめいわかかりしころ夜間やかん賀茂かも忠行ただゆき随伴ずいはんしてあるいていた。そのさい、いちはや複数ふくすうおに発見はっけんしたはれあきらは、寝入ねいっていた忠行ただゆきこして事態じたい報告ほうこくする。きゅうった忠行ただゆきじゅつによりおにどもを退しりぞけた。このことで忠行ただゆき晴明せいめいおにざい陰陽いんようどうおしさづけ、はれあきらもそれをびんみずうつすがごと吸収きゅうしゅうした。
  • こうだんしょう
    • 小野篁おののたかむら并高ふじきょうぐう百鬼夜行ひゃっきやこうごと小野篁おののたかむらならびに高藤たかとうきょう百鬼夜行ひゃっきやこうぐうごと)」(3の38)
小野篁おののたかむら藤原ふじわら高藤たかとう同行どうこうしていたさいたかむらはいちはや百鬼夜行ひゃっきやこう存在そんざいづく。このとき高藤たかとう本人ほんにんらなかったが、その衣服いふくみことしょう陀羅尼だらにまれており、それを見越みこしたたかむらはあえていちぎょう百鬼夜行ひゃっきやこう出会であわせた。百鬼夜行ひゃっきやこうみことしょう陀羅尼だらに御利益ごりやくにより退しりぞけられたのちたかむら高藤たかとうたいして「つつしんでおわせいたしました」と慇懃無礼いんぎんぶれいうそぶ[5]
ある修行しゅぎょうそう摂津せっつ竜泉寺りゅうせんじった100ものおに集団しゅうだん不動明王ふどうみょうおういのっていたことでいのちはとられなかった。
  • 一条いちじょう桟布おにこと
諸行無常しょぎょうむじょう」とえいじながらいちじょう大路おおじとおった馬頭めずおにはなし。「百鬼夜行ひゃっきやこうにてあるやらんとおそろしかりける」と本文ほんぶんしるされてある。
てんれき10ねん(956)に藤原ふじわら遭遇そうぐうしたもの。蘇我入鹿そがのいるか先頭せんとうに、蘇我馬子そがのうまこ蘇我倉山田石川麻呂そがのくらやまだのいしかわのまろやま大兄たいけいおう大津皇子おおつのおうじ山辺やまべ皇女おうじょなど藤原ふじわらうらんでんだものたちの行列ぎょうれつ藤原ふじわら輔がみことかちふついただき陀羅尼だらにんでなんのがれたはなし
比叡山ひえいざん僧侶そうりょ参篭さんろうしているところへくだり疫神集団しゅうだんがやってて「比叡山ひえいざんそうをいただきたい」とはなしかけられるはなし。『訶止かん』をとなえてくだり疫神たちをける。 

昔話むかしばなしとしてもられているこぶとりじいさんはなし登場とうじょうするおにたちも、『宇治うじ拾遺しゅうい物語ものがたり[6]では様々さまざま様相ようそうおにたちひゃくにんばかりがをともしてがやがやと出現しゅつげんする場面ばめん描写びょうしゃされている。

慣用かんよう

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おに妖怪ようかい徘徊はいかいすることをしめすことから、てんじて「おおくの人間にんげんがあやしいおこないをしているさま」を「百鬼夜行ひゃっきやこう」と表現ひょうげんしたりもする。

魔物まものたちがつどうというてんから、 高橋たかはし五郎ごろうわけファウスト』(1904ねん)では「ワルプルギスのよる」の訳語やくごとして「百鬼夜行ひゃっきやこう」が場面ばめんめいえてもちいられたりもしている。

百鬼夜行ひゃっきやこうだいしたおも作品さくひん

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大徳寺だいとくじ真珠しんじゅあん所蔵しょぞう百鬼夜行ひゃっきやこう絵巻えまき作者さくしゃしょう室町むろまち時代じだい
  • 百鬼夜行ひゃっきやこう絵巻えまき室町むろまち時代じだい~)
    • 妖怪ようかいなどがおおえがかれている様子ようす題材だいざいとした絵巻物えまきもの総称そうしょうで、妖怪ようかい絵巻えまきひとつの典型てんけいえがかれている内容ないようかく作品さくひんによって多少たしょう差異さいがある場合ばあいもある。百鬼夜行ひゃっきやこうひゃくおになどとも。行列ぎょうれつのように登場とうじょうすることから「百鬼夜行ひゃっきやこう」のかたりだいとしてかんされている。詳細しょうさいどう項目こうもく参照さんしょう
  • づけ喪神そうしん絵巻えまき室町むろまち時代じだい~)
    • 題名だいめい使用しようはされていないが、えがかれている妖怪ようかいたちの行列ぎょうれつ光景こうけいが「百鬼夜行ひゃっきやこう」をまえたものであるなどとされることがおおい。くわしくはどう項目こうもく参照さんしょう

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 田中たなか貴子たかこ百鬼夜行ひゃっきやこうえる都市とししん曜社、1994ねん、43-53ぺーじISBN 4-7885-0480-4
  2. ^ 村上むらかみ健司けんじ編著へんちょ妖怪ようかい事典じてん毎日新聞社まいにちしんぶんしゃ、2000ねん、288-289ぺーじISBN 4-620-31428-5
  3. ^ 田中たなか貴子たかこ百鬼夜行ひゃっきやこうえる都市とししん曜社、1994ねん、100-104ぺーじISBN 4-7885-0480-4
  4. ^ つづけぐんしょ類従るいじゅうだい32輯上 ざつ つづけぐんしょ類従るいじゅう完成かんせいかい 1926ねん 63ぺーじ夜行やこう途中とちゅううた)75ぺーじ百鬼夜行ひゃっきやこう
  5. ^ こうだんしょう”. 国文学研究資料館こくぶんがくけんきゅうしりょうかん. 2017ねん8がつ5にち閲覧えつらん
  6. ^ 渡辺わたなべつな 校訂こうてい宇治うじ拾遺しゅうい物語ものがたりじょう 岩波いわなみ文庫ぶんこ 1951ねん 21-25ぺーじ 「おにに癭(こぶ)とらるること

関連かんれん項目こうもく

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