第だい10族ぞく元素げんそ

族ぞく	← 10 →
周期しゅうき
4	28 Ni
5	46 Pd
6	78 Pt
7	110 Ds

第だい10族ぞく元素げんそ（だいじゅうぞくげんそ、Group 10 element）はIUPAC形式けいしきでの周期しゅうき表ひょうにおける第だい10族ぞくに属ぞくする元素げんその総称そうしょう。ニッケル・パラジウム・白金はっきん・ダームスタチウムがこれに分類ぶんるいされる。

長ちょう周期しゅうき表ひょうの第だい8族ぞく〜第だい10族ぞく元素げんそは最さい外そと殻からの4s電子でんしを2つ持もち、短たん周期しゅうき表ひょうで VIII族ぞく、あるいは VIIIB族ぞくとしてまとめられたように同どう一周いっしゅう期き元素げんその化学かがく的てき性質せいしつが似通にかよっている。それ故こ、第だい4周期しゅうきの₂₆Fe、₂₇Co、₂₈Niを鉄てつ族ぞく元素げんそと呼よび、第だい5周期しゅうきあるいは第だい6周期しゅうきの₄₄Ru、₄₅Rh、₄₆Pd、₇₆Os、₇₇Ir、₇₈Ptを白金はっきん族ぞく元素げんそと呼よぶ。したがって族ぞくの代表だいひょう元素げんそを属ぞく名めいの別名べつめいとする他ほかの族ぞくとの場合ばあいとの違ちがいを留意りゅういする必要ひつようがある。

閉殻していないd軌道きどうを持もち、遷移せんい元素げんそとして取とり扱あつかわれる。

性質せいしつ

第だい10族ぞく元素げんそでは価あたい電子でんしおよび内うち殻から電子でんしの電子でんし構造こうぞうが周期しゅうきにより異ことなる。

	ニッケル ₂₈Ni	パラジウム ₄₆Pd	白金はっきん ₇₈Pt
電子でんし配置はいち	${\ce {[Ar]{}3d^8{}4s^2}}$	${\ce {[Kr]{}4d^{10}}}$	${\ce {[Xe]{}4f^{14}{}5d^9{}6s^1}}$
第だい1イオン化いおんかエネルギー（kJ mol^-1）	736.7	805	831
第だい2イオン化いおんかエネルギー（kJ mol^-1）	1753.0	1875
第だい3イオン化いおんかエネルギー（kJ mol^-1）	3393	3177
第だい4イオン化いおんかエネルギー（kJ mol^-1）	5300
電子でんし親和力しんわりょく（電子でんしボルト）	1.156	0.557	2.128
電気でんき陰性いんせい度ど（Allred-Rochow）	1.75		1.44
金属きんぞく結合けつごう半径はんけい（pm）	125	138	139
融点ゆうてん（K）	1728	1828.05	2041.4
沸点ふってん（K）	3186	3236	4098

天然てんねんにおけるニッケルは主おもにヒ素ひそ、アンチモン、硫黄いおうなどと結合けつごうした鉱石こうせきとして見出みいだされる。また、単体たんたいのニッケルは隕鉄中なかに鉄てつとの合金ごうきんとして見出みいだされ、地球ちきゅう内部ないぶの核かくも同様どうように、鉄てつとニッケルが主成分しゅせいぶんと考かんがえられている（岩石がんせき圏けんでは0.016%を占しめる）。パラジウムおよび白金はっきんは白金はっきん族ぞく元素げんそと呼よばれるルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウムと共ともに産出さんしゅつし、白金はっきん族ぞく元素げんそは合あわせて岩石がんせき圏けんの2×10^-6%を占しめる。

ニッケルは、酸化さんか数すう-1,0,+1,+2,+3,+4を取とることが知しられているが、化合かごう物ぶつの種類しゅるいとしては+2価か以外いがいの化合かごう物ぶつは少数しょうすうであり、大抵たいていは+2価かの化合かごう物ぶつとして見出みいだされる。パラジウムは0, +2, +4価か、白金はっきんは0, +2, +4, +5, +6を取とることが知しられているが、+2, +4価かの化合かごう物ぶつが多数たすう知しられており、他たは少数しょうすうである。

パラジウムおよび白金はっきんは互たがいに似にた性質せいしつを示しめすが、鉄てつ族ぞく元素げんそと呼よばれるようにニッケルは鉄てつに類似るいじの性質せいしつを示しめす。例たとえば、一酸化いっさんか炭素たんそと反応はんのうして鉄てつの場合ばあいと同様どうようにニッケルカルボニル化合かごう物ぶつを生成せいせいするのに対たいして、パラジウムおよび白金はっきんは二に成分せいぶん金属きんぞくカルボニルを形成けいせいしない点てんが異ことなる。また、単体たんたいのニッケルは強つよ磁性じせいを示しめすのに対たいしてパラジウムおよび白金はっきんはそうではない。

特とくにパラジウムおよび白金はっきんは炭素たんそ化合かごう物ぶつと安定あんていなπぱい錯体さくたいを形成けいせいし、接触せっしょく水素すいそ添加てんか反応はんのうなど触媒しょくばい反応はんのうに利用りようされる。またNi(+2)、Pd(+2)錯体さくたいの平面へいめん配はい位い子この置換ちかん反応はんのうは活性かっせいであり（Niは置換ちかん速度そくどが速はやく、Pdは中ちゅう程度ていど）、Pt(+2)は不ふ活性かっせいであることから、クロスカップリング反応はんのうでは主おもにパラジウム触媒しょくばいが利用りようされる。とはいえニッケルも性質せいしつが似にていることから、接触せっしょく水素すいそ添加てんか反応はんのうもクロスカップリング反応はんのうも工業こうぎょう的てきには安価あんかなニッケル触媒しょくばいが利用りようされることもある。

引用いんよう文献ぶんけん

日本にっぽん化か学会がっかい編へん,『化学かがく便覧びんらん』基礎きそ編へん, 改訂かいてい5版はん, 丸善まるぜん
R.B.ヘスロップ, K. ジョーンズ, 『無機むき化学かがく』, 東京とうきょう化学かがく同人どうじん
F.A.コットン, G.ウイルキンソン, 『無機むき化学かがく』, 培風館ばいふうかん ISBN 4-563-04066-5