辛島からしま氏し

辛からし嶋しま氏し
家いえ祖そ	称しょう・素す戔嗚尊みこと 秦はた氏し？
種別しゅべつ	社家しゃけ
出身しゅっしん地ち	豊前ぶぜん国こく宇佐うさ郡ぐん辛島からしま郷さと
主おもな根拠地こんきょち	宇佐うさ八幡宮はちまんぐう付近ふきん
支流しりゅう、分家ぶんけ	称しょう・漆島うるしじま氏し（漆間うるま氏し）（実際じっさいは津島つしま県けん主ぬしの末裔まつえい）
凡例はんれい / Category:日本にっぽんの氏族しぞく

辛からし嶋しま氏し（からしまうじ）は、日本にっぽんの古代こだい氏族しぞくの一ひとつ。宇佐うさ八幡宮はちまんぐうの社家しゃけの氏族しぞくであった。辛島からしま・韓かん嶋しまとも。姓せいは勝かち（すぐり）。

出自しゅつじ

一般いっぱん的てきに、辛からし嶋しま氏しは渡来とらい系けい氏族しぞくであるとされている。辛からし嶋しま氏しの系図けいずでは素す戔嗚尊みことの子こ・五十猛いそたけ神しんの末裔まつえいとなっており、やはり渡来とらい系けいであることが推察すいさつできる。

概要がいよう

辛からし嶋しま氏しは、飛鳥あすか時代ときよから奈良なら時代じだいにかけて、宇佐うさ神宮じんぐうに仕つかえる女おんな禰宜ねぎを輩出はいしゅつした。

元来がんらいは薦こも神社じんじゃ（現在げんざいの中津なかつ市し）で神官しんかん・巫女ふじょとして務つとめていたとされ、後のちに八幡やはた神しんの託宣たくせんを受うけたことで、大神おおがみ比ひ義よしとともに宇佐うさ神宮じんぐうの前身ぜんしんとなる社しゃを建立こんりゅうした。

『日本書紀にほんしょき』巻まき第だい27天智天皇てんぢてんのう10年ねん11月（671年ねん）10日とおか条じょうによれば、韓かん嶋しま勝まさる裟婆ら4人にんが、唐とうよりやって来きて、唐とう・新しん羅らが日本にっぽんを攻せめようと準備じゅんびをしていることを伝つたえている。

養老ようろう4年ねん（720年ねん）の隼人はやとの反乱はんらんの後のちに豊前ぶぜん国こくの住民じゅうみんが大隅おおすみ国こくへと移住いじゅうさせられているが、大隅おおすみ国こくには五十猛いそたけ命いのちを祀まつる韓国かんこく宇豆峰ほう神社じんじゃがあることから、辛からし嶋しま氏しとの関係かんけいがあるとする説せつがある。

神護かんご景けい雲くも3年ねん（769年ねん）の宇佐うさ八幡宮はちまんぐう神託しんたく事件じけんでは、称しょう徳とく天皇てんのうの勅使ちょくしとして和気清麻呂わけのきよまろが宇佐うさ神宮じんぐうに参宮さんぐうし宣命せんみょうの文ぶんを読よもうとした時ときに、八幡やはた神しんが禰宜ねぎの辛からし嶋しま勝しょう与あずか曽そ女おんな（からしまのすぐりよそめ）に託宣たくせんし、宣命せんみょうを訊きくことを2度ど拒こばんでいる。

系図けいず

素す戔嗚尊みこと

五十猛いそたけ神しん

豊ゆたか都と彦

豊津とよつ彦

都万つま津つ彦

曽於そお津つ彦

身み於津彦

照彦てるひこ

志津しつ喜彦よしひこ

児湯こゆ彦

諸しょ豆まめ彦

奈豆彦

辛からし嶋しま勝まさる乙おつ目め（敏さとし達たち天皇てんのう御宇ぎょう任にん祝しゅく職しょく奉仕ほうし）

黒くろ比ひ売うり

古津ふるつ米まい（酒井さかい勝志かつし米べいとも）（大化たいか4年ねん任にん禰宜ねぎ）

志津しつ米まい（白鳳はくほう3年ねん任にん禰宜ねぎ）

茂しげる津つ米まい

意い布ぬの女おんな

波豆はず米まい

久ひさ須売

志奈しな布ぬの女おんな

与あずか曽そ米まい

阿古あこ米まい

豊ゆたか比ひ売うり

赤あか蜂はち将軍しょうぐん

• 辛からし嶋しま勝まさる乙おつ目めから豊ゆたか比ひ売うれまでは女おんな。
• 赤あか蜂はち将軍しょうぐんは漆島うるしじま時じ守もりの別名べつめいであるとされており、時とき守もりは津島つしま縣けん守もりの子こであるとされているが、縣守あがたもりと豊ゆたか比ひ売うりの関係かんけいは不明ふめい。本来ほんらい津島つしま縣けん守もりの末裔まつえいであった漆島うるしじま氏し（漆間うるま氏し）が、自身じしんの系図けいずを辛からし嶋しま氏しと結むすびつけたと考かんがえられている。

考証こうしょう

唐とうが百済くだらを滅ほろぼした後のち、百済くだら旧きゅう域いきを占領せんりょうするために設置せっちした熊くま津つ都と督とく府内ふないに、百済くだらで活動かつどうしていた日にち羅らなどのような倭人わじんが存在そんざいしたことを暗示あんじする記録きろくがある。熊くま津つ都と督とく府ふは、665年ねん8月がつに唐から勅使ちょくし劉りゅう仁ひとし願ねがいの立会たちあいで熊くま津つ都と督とくの扶余隆たかしと新しん羅ら文武ぶんぶ王おうの間あいだで領土りょうど保全ほぜんなどを約束やくそくした羅ら済わたる会かい盟めいを実現じつげんさせたが、その模様もようを詳述しょうじゅつする『冊さつ府ふ元もと亀かめ』『資し治ち通どおり鑑かん』『旧きゅう唐とう書しょ』には、羅ら済わたる会かい盟めい直後ちょくごに倭人わじんが登場とうじょうする。同どう史料しりょうによると、羅ら済わたる会かい盟めい後ごに百済くだら鎮将劉りゅう仁ひとし軌が新しん羅ら、百済くだら、耽ふけ羅ら、倭国わのくにの四よんカ国かこくの使つかいを率ひきいて泰山たいざんの封ふう禅ぜんの儀ぎに赴おもむいているが、儀礼ぎれいの様子ようす以外いがいにも準備じゅんび段階だんかいからそれら四よんカ国かこくを含ふくむ諸しょ蕃しげる酋長しゅうちょうが扈従こしょうを率ひきいて行列ぎょうれつに従したがえ駕がしたことを記しるしている。熊くま津つ都と督とく府ふのもと倭人わじんを同行どうこうさせるなど当時とうじの熊くま津つ都と督とく府内ふないに倭人わじんがいたことは確たしかであり、池内いけうち宏ひろしは、これらは熊くま津つ都と督とく府ふに抑留よくりゅうまたは残留ざんりゅうした倭人わじんとみた。倭人わじんは白村はくそん江こう以後いごも旧きゅう百済くだら地域ちいきに滞在たいざいしていたが、磐井いわいや日にち羅らが時ときに百済くだら王権おうけんの立場たちばから行動こうどうしたように、倭人わじんが熊くま津つ都と督とく府ふに従事じゅうじし、664年ねんからの白村はくそん江こうの戦後せんご処理しょりの対たい倭やまと交渉こうしょうは、熊くま津つ都と督とく府ふの倭人わじんの既存きそんネットワークによって行おこなわれた部分ぶぶんも多おおかった。671年ねんに熊くま津つ都と督とく府ふは、道久みちひさ、筑紫つくし薩夜麻あさ、韓かん嶋しま勝まさる裟婆、布ぬの師し磐いわの4人にんを、唐人とうじん郭かく務つとむ悰一いち行ぎょうの先発せんぱつ隊たいとして対馬つしまに送おくっているが、『日本書紀にほんしょき』によると、筑紫つくし薩夜麻あさは白村はくそん江こうの戦たたかいで捕虜ほりょとなり、熊くま津つ都と督とく府ふにいた。また道久みちひさ、韓かん嶋しま勝まさる裟婆、布ぬの師し磐いわも同様どうようの立場たちばとみられる。熊くま津つ都と督とく府ふは倭人わじんたちを自身じしんの傘下さんかに組くみ込こみ、熊くま津つ都と督とく府ふの意向いこうのもと、こうした倭人わじんたちを外交がいこう活動かつどうに活発かっぱつに活用かつようした。筑紫つくし薩夜麻あさの先代せんだいは筑紫つくし君くん磐井いわいにつながる豪族ごうぞくとみられる。韓かん嶋しま勝まさる裟婆は、「韓かん嶋しま」という氏しからみて豊前ぶぜん国こく宇佐うさ郡ぐん辛島からしま郷さとの豪族ごうぞくと推定すいていされる。熊くま津つ都と督とく府ふが唐人とうじん郭かく務つとむ悰一いち行ぎょうの先発せんぱつ隊たいとして対馬つしまに派遣はけんした4人にんのうちの2人ふたりもが、歴史れきし的てきに朝鮮半島ちょうせんはんとう西南せいなん（百済くだら地域ちいき）とパイプをもつ北九州きたきゅうしゅうと関係かんけいのある豪族ごうぞくであり、白村はくそん江こう以後いごの熊くま津つ都と督とく府ふにおいても倭人わじんの旧来きゅうらいのネットワークを継承けいしょう・活用かつようしたことを示しめしている。