防塁ぼうるい

元もと寇防塁ぼうるい。福岡ふくおか市し早良さわら区く西新にしじん七なな丁目ちょうめ。国くにの史跡しせき。

防塁ぼうるい（ぼうるい）は、日本にっぽんの城しろの一いち形態けいたいである。沿岸えんがん、国境こっきょう線せん、尾根おねなどに土ど塁るいや石垣いしがき（石いし塁るい）、空堀からぼりや水堀みずほり、さらに塹壕ざんごうなどを平行へいこう線せん状じょうに築きずいた防御ぼうぎょ構築こうちく物ぶつである。

概要がいよう

長ちょう塁るいと呼よばれることもある。室町むろまち時代じだい以降いこうに構築こうちくされた事例じれいでは、銃砲じゅうほう撃げき戦せんに堪こたえて死角しかくのない十字砲火じゅうじほうかを可能かのうにするために「横矢よこや掛かかり」を設もうけるなどして複雑ふくざつ化かさせた場合ばあいもある。基本きほん的てきに城しろのような居住きょじゅう性せいはなく、守備しゅびする兵士へいしは野営やえいするか近隣きんりんの拠点きょてんから輪番りんばんで派遣はけんされた。日本にっぽん国外こくがいでこれに類るいする代表だいひょう的てきな例れいは中国ちゅうごくの万里ばんりの長城ちょうじょうであり、ロろーマ帝国まていこく時代じだいのイギリスなどでも敵対てきたい的てきな異い民族みんぞくの脅威きょういからの防衛ぼうえいを企図きとして防塁ぼうるいが造つくられている（ハドリアヌスの長城ちょうじょう）。このコンセプトは、銃砲じゅうほうや戦術せんじゅつの発達はったつを伴ともないながら近代きんだい要塞ようさいにまで発展はってんしていった。

日本にっぽんでは広大こうだいな原野げんやや国境こっきょう線せんが存在そんざいしないため、万里ばんりの長城ちょうじょうやハドリアヌスの長城ちょうじょうのような大だい規模きぼな防塁ぼうるいは発達はったつしなかった。しかし、古代こだいにおいては水城みずきが構築こうちくされ、鎌倉かまくら時代ときよには元もと寇防塁ぼうるいが構築こうちくされた。これらは海外かいがいからの脅威きょういに対処たいしょするためのものであり、当時とうじの海岸かいがん線せんに基もとづいて構築こうちくされている。奥州おうしゅう藤原ふじわら氏しは源みなもと頼朝よりともの侵攻しんこうに備そなえて阿津あつ賀が志しむら山さん防塁ぼうるいを築きずいた。室町むろまち時代ときよ末期まっき～安土あづち桃山ももやま時代じだい初期しょきには各地かくちの豪族ごうぞくや戦国せんごく大名だいみょうが交通こうつうの要衝ようしょうや支配しはい地域ちいきの周縁しゅうえん部ぶに小規模しょうきぼな防塁ぼうるいを築きずいている（神奈川かながわ県けん鴨沢かもざわ要害ようがい、同どう県けん根府川ねぶかわ城じょうなど）。また、山梨やまなし県けん韮崎にらさき市し穴山あなやま町まちの能見のうみ城しろは、複雑ふくざつな形状けいじょうの防塁ぼうるいが横よこ幅はばの狭せまい台地だいちを横断おうだんする形かたちで構築こうちくされた。これらの防塁ぼうるいのうち一部いちぶは領地りょうち防衛ぼうえいもさることながら、通行人つうこうにんからの関せき銭ぜにの徴収ちょうしゅうを企図きとした関所せきしょの意味合いみあいもあったと考かんがえられる。

基本きほん的てきに防塁ぼうるいは純粋じゅんすいな軍事ぐんじ施設しせつであるため、江戸えど時代じだいに入はいっては全まったく構築こうちくされなくなった。しかし幕末ばくまつになり、外国がいこく船せんの領海りょうかい侵入しんにゅうが顕著けんちょになると砲台ほうだいの構築こうちくがピークとなり、この一いち形態けいたいとして防塁ぼうるいを築きずくケースも出でてきた。山口やまぐち県けん萩はぎ市しの菊ヶ浜きくがはま台場だいば は海岸かいがん線せんに沿そって、側がわ射しゃが可能かのうな横矢よこや掛かかりを設もうけた土ど塁るいを構築こうちくしたもので、この典型てんけい的てきなケースであった。この場合ばあいは海上かいじょうからの砲撃ほうげきから物理ぶつり的てきに萩はぎ市街しがいを守まもり、敵てき軍ぐんが上陸じょうりくした場合ばあいには同どう台場だいばを第だい一いちの反攻はんこう拠点きょてんとするものであった。また、伊豆諸島いずしょとうの神津島こうづしま・天上山てんじょうさんには「オロシャの石いし塁るい」と呼よばれる、尾根おねに沿そって300メートルにわたる石造いしづくりの防塁ぼうるいが江戸えど幕府ばくふによって築きずかれた。これらは、水城みずきや元もと寇防塁ぼうるい同様どうように上陸じょうりく戦せん（水際みずぎわ作戦さくせん）を想定そうていしたものであった。

戊辰戦争ぼしんせんそうにおいては野戦やせん築城ちくじょうとして双方そうほうが防塁ぼうるいを築きずいた（北海道ほっかいどう台場山だいばやまなど）他た、会津あいづ戦争せんそうでは上杉うえすぎ氏しによって母成峠ぼなりとうげ・馬入峠ばにゅうとうげに築きずかれていた中世ちゅうせいの防塁ぼうるいを塹壕ざんごうを設もうけるなど補強ほきょうして使用しようした。

関連かんれん項目こうもく

• 元もと寇
• 元もと寇防塁ぼうるい
• マジノ線せん
• ジークフリート線せん
• ベルリンの壁かべ - 東ひがしドイツにおいて公的こうてきには「反はんファシズム防壁ぼうへき」と呼よばれたが、実際じっさいには自じ国民こくみんが東ひがしベルリンから西にしベルリンへ脱出だっしゅつするのを阻止そしするという政治せいじ的てき側面そくめんが強つよい。
• 分離ぶんり壁かべ
• 砂すなの壁かべ
• バリケード
• しし垣かき - 防塁ぼうるいと誤認ごにんされる事ことがある。
• 防風ぼうふう石垣いしがきおよび防風ぼうふう土ど塁るい - しし垣かき同様どうよう誤認ごにんされる事ことがある。