サイドワインダー (ミサイル)

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AIM-9 サイドワインダーから転送てんそう
AIM-9L。だい3世代せだいのサイドワインダー
QF-9J標的ひょうてき直撃ちょくげきするAIM-9L

サイドワインダー英語えいご: Sidewinder)は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく開発かいはつされたそら対空たいくうミサイルアメリカぐんでの制式せいしき符号ふごうAIM-9[1][ちゅう 1]

西側にしがわ諸国しょこく代表だいひょうてき短距離たんきょりそら対空たいくうミサイルとして、ひろ配備はいびされている[1]。なお「サイドワインダー」というニックネームは、発射はっしゃすると独特どくとく蛇行だこうした軌跡きせきえがきながら飛行ひこうする様子ようすと、赤外線せきがいせん探知たんちして攻撃こうげきすることから、ヨコバイガラガラヘビにちなんでづけられた。

概要がいよう[編集へんしゅう]

サイドワインダー (ミサイル)
AIM-9 サイドワインダーを発射はっしゃするF-16C

ほんミサイルはアメリカ海軍かいぐん海軍かいぐん兵器へいき実験じっけんステーション (NOTS開発かいはつされたが、海軍かいぐん開発かいはつ指示しじ要請ようせいしたわけではなく、科学かがくしゃたちがおこなっていた独自どくじ研究けんきゅう開発かいはつ活動かつどう由来ゆらいする[2]。このために使つかえる予算よさんすくなく、またぐん上層じょうそうみとめられるまでには時間じかんがかかったが[3]潤沢じゅんたく資源しげん投入とうにゅうして開発かいはつされた重量じゅうりょうきゅうのミサイルよりもすぐれていることが認知にんちされ、開発かいはつ配備はいび加速かそくされていった[4]

誘導ゆうどう方式ほうしきは、基本きほんてきにはレティクル追尾ついび方式ほうしき赤外線せきがいせん誘導ゆうどうもちいている。AIM-9Lがたまえ高温こうおんエンジン部品ぶひんからはっせられる赤外線せきがいせんとらえて誘導ゆうどうする方式ほうしきであったため、てき後方こうほうからのロックオンしかできなかった。また、単純たんじゅん高温こうおん目標もくひょうたいして誘導ゆうどうされるため、フレアいたり太陽たいようかって飛行ひこうすることによって回避かいひされる可能かのうせいたかかった。しかしLがた以降いこうぜん方位ほういからのロックオンが可能かのうとなり、フレアなどによって回避かいひされる可能かのうせいがった。またその、AIM-9Xでは赤外線せきがいせん画像がぞう誘導ゆうどう移行いこうした。また、そら対空たいくうがたほかにも、対空たいくうかん対空たいくうという派生はせいがたつくられた。

開発かいはつ経緯けいい[編集へんしゅう]

AIM-9Bのローレロン

ねつ誘導ゆうどうロケット計画けいかく[編集へんしゅう]

ほんミサイルは、1945ねんにチャイナ・レイクの海軍かいぐん兵器へいき実験じっけんステーション (NOTSウィリアム・マクリーン博士はかせおこなっていた、そら対空たいくうロケットだん火器かき管制かんせいについての研究けんきゅう端緒たんしょとする。マクリーン博士はかせはかつてカリフォルニア工科こうか大学だいがくBATなど精密せいみつ誘導ゆうどう兵器へいき開発かいはつたずさわっており、その経験けいけんまえて、ロケットを照準しょうじゅんして発射はっしゃするよりも、むしろみずか目標もくひょうけて誘導ゆうどうするミサイルを志向しこうするようになった[2]。1947ねん11月にはすで概念がいねんあん作成さくせいされており、この時点じてんすでに、赤外線せきがいせん誘導ゆうどうジャイロ安定あんていという、のサイドワインダーの特徴とくちょう確立かくりつされていた。しかしマクリーン博士はかせ火器かき管制かんせい装置そうち担当たんとうであって、ミサイルの開発かいはつ本務ほんむとはされていなかったために、使つかえる資源しげんかぎられていた。1948ねん1がつには、NOTSを所管しょかんする武器ぶききょく (BuOrdから1まん3000ドルの予算よさん配分はいぶんされたものの、これはあっという使つかたされ、開発かいはつ作業さぎょうおも科学かがくしゃ技術ぎじゅつしゃのボランティアにたよっていた[3]

1949ねん6がつ、マクリーン博士はかせは「ねつ誘導ゆうどうロケット」(Heat homing rocket)として正式せいしき提案ていあんしょ作成さくせいした。NOTSを所管しょかんする武器ぶききょく (BuOrdのショッフェル局長きょくちょうとパーソンズふく局長きょくちょうはこの計画けいかく支援しえんすることにしたが、誘導ゆうどうミサイルの開発かいはつ部門ぶもん予算よさん手放てばなさなかったために、ミサイルではなく知能ちのう信管しんかんであるという理屈りくつをつけて、信管しんかん開発かいはつ部門ぶもんから予算よさん流用りゅうようして充当じゅうとうした。しかし、当時とうじ信管しんかん機密きみつ保持ほじきわめていかめしかったために、ねつ誘導ゆうどうロケット計画けいかくについてることができるひとってしまうという問題もんだいもあった。当時とうじ、NOTSでは、BuOrdの所管しょかんテリアおよびタロスかん対空たいくうミサイル航空局こうくうきょく (BuAer所管しょかんスパローそら対空たいくうミサイル開発かいはつすすめられており、マクリーン博士はかせは、これらの正式せいしき計画けいかく潤沢じゅんたく資源しげん消費しょうひしているのを横目よこめ開発かいはつすすめていった[3]

サイドワインダー計画けいかく[編集へんしゅう]

1950ねん11月27にちねつ誘導ゆうどうロケットは、サイドワインダー計画けいかくとして正式せいしき発足ほっそくした[5]。1951ねん5がつ、マクリーン博士はかせは、艦隊かんたい配備はいびけてサイドワインダーを開発かいはつ段階だんかい移行いこうさせるよう海軍かいぐんうったえたが、不首尾ふしゅびにおわった。しかし同年どうねん10がつ当初とうしょから計画けいかく後援こうえんしてきたBuOrdふく局長きょくちょうパーソンズ少将しょうしょうは、計画けいかく進捗しんちょくじょうきょうみずか確認かくにんして、開発かいはつ段階だんかいへの移行いこう承認しょうにんするとともに、どう年度ねんどで350まんドルの予算よさん配分はいぶんした[6]。この巨額きょがく予算よさん配分はいぶんで、計画けいかく一気いっき加速かそくされた[7]

しかしそのも、NOTS外部がいぶ後援こうえんしゃとぼしいために、計画けいかく度々たびたび逆風ぎゃくふうさらされた。1952ねん12月には、アメリカのミサイル開発かいはつ統括とうかつ責任せきにんしゃだったケラーによって開発かいはつ中止ちゅうし決定けっていされる一幕ひとまくもあったが、さいわいにも説得せっとくれて、48時間じかん以内いない決定けってい撤回てっかいされた[8]1953ねん9月11にちには最初さいしょ標的ひょうてき撃墜げきつい記録きろくした[8]

1955ねん7がつから12がつにかけておこなわれたBuOrdによる評価ひょうか試験しけん合格ごうかくしたのち、1956ねん1がつより、艦隊かんたい配備はいびけた試験しけん開始かいしされた。そして1956ねん7がつ14にち、F9F-8を運用うんようするだい46飛行ひこうたい (VA-46が、サイドワインダーの運用うんよう能力のうりょくゆうする最初さいしょ部隊ぶたいとなった[9]。また空軍くうぐんも、ファルコンそら対空たいくうミサイルの赤外線せきがいせん誘導ゆうどうばん開発かいはつ難航なんこうしていたことから、サイドワインダーの導入どうにゅう検討けんとうするようになった[ちゅう 2]空軍くうぐん独自どくじ追加ついか試験しけんて、1956ねんまつまでに、空軍くうぐんもサイドワインダーを実戦じっせん配備はいびした[4]

なお製造元せいぞうもととしては、当初とうしょからフィルコしゃ担当たんとうしてきたほか、海軍かいぐん保安ほあんじょう理由りゆうから複数ふくすう製造元せいぞうもとからの調達ちょうたつ要望ようぼうしたため、1956ねんよりゼネラル・エレクトリック参入さんにゅうした[9]。またその、1964ねんからはレイセオンしゃ参入さんにゅうした[4]

だい1世代せだい (AIM-9A/B)[編集へんしゅう]

AIM-9B
AIM-9B
種類しゅるい 短距離たんきょりそら対空たいくうミサイル
性能せいのうしょもと
ミサイル直径ちょっけい 12.7cm(5in)
ミサイル全長ぜんちょう 2.83m(111.5in)
ミサイル全幅ぜんぷく 0.56m(22in)
ミサイル重量じゅうりょう 70kg(155lb)
弾頭だんとう HE破片はへん効果こうか 4.5kg(10lb)
射程しゃてい 900m-4.8km(2.6nm)
推進すいしん方式ほうしき Mk.17固体こたい燃料ねんりょうロケット
誘導ゆうどう方式ほうしき 赤外線せきがいせんホーミング(IRH)
飛翔ひしょう速度そくど マッハ1.7
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試験しけんきょうされていた先行せんこう生産せいさんがたサイドワインダー1しょうされており、やく3,500はつ生産せいさんされた。その1957ねんより改良かいりょうがたサイドワインダー1A生産せいさん開始かいしされた[9]

設計せっけい[編集へんしゅう]

開発かいはつ予算よさんかぎられていたこともあって、サイドワインダー1は、ロケットモーターをふくたまたい基本きほん設計せっけいおおくをHPAGHigh Performance Air-to-Ground Rockets)から導入どうにゅうしている。しかし一方いっぽうで、誘導ゆうどうロケットだんではなく誘導ゆうどうミサイルであることから、誘導ゆうどう装置そうちどうつばさ、トルクバランスしきサーボ機構きこうなど、原型げんけいにはない要素ようそおおまれた[6]。サイドワインダー1の誘導ゆうどう装置そうちでは、硫化りゅうかなまり(PbS)フォトレジスタによる冷却れいきゃくがた赤外線せきがいせんセンサ採用さいようしており、交戦こうせんエンベロープは目標もくひょう後方こうほうかぎられた[4]

なおどうつばさぜんつばさとしてまれたが、これは、サイドワインダーを分解ぶんかいした状態じょうたい空母くうぼ弾薬だんやく収容しゅうようすることを想定そうていした措置そちであった。当時とうじ空母くうぼ弾薬だんやくホイストがながさ76インチ (1.9 m)までの弾薬だんやくしかあつかえず、全長ぜんちょう108インチ (2.7 m)になる予定よていのサイドワインダーはすくなくとも2つに分解ぶんかいする必要ひつようがあった。したがって、もしどうつばさ尾翼びよくとしてんだ場合ばあい、ミサイルを分解ぶんかいさいてするたびにミサイル先端せんたん誘導ゆうどう装置そうちからどうつばさまでの配線はいせんをつなぎなおさねばならず、信頼しんらいせいめん不安ふあんがあった。一方いっぽうぜんつばさとしておけば、誘導ゆうどう装置そうちおなじブロックにめるため、この手間てまはぶくことができた[6]

また後部こうぶ安定あんていつばさには、「ローレロン」(rolleron)とばれるあたらしい工夫くふうまれた。これは、固定こていしき後部こうぶ安定あんていつばさつばさはしもうけられた回転かいてんたいとそのどうつばさ機構きこうであり、気流きりゅうによって回転かいてんたい高速こうそく回転かいてんした状態じょうたいでミサイルがロールするとそのうごきにおうじてどうつばさジャイロ効果こうかによりうごき、ロールを修正しゅうせいしてミサイルの姿勢しせい保持ほじするようにはたら[6]

またサイドワインダー1Aは、ジンバルやローレロンなどをアップグレードするとともに、誘導ゆうどう時間じかん倍増ばいぞうさせ、こう高度こうどでの性能せいのう向上こうじょうさせている[9]ほん搭載とうさいされたチオコールMk.17固体こたい燃料ねんりょうロケットは、2.2秒間びょうかん燃焼ねんしょうして、36,475ニュートンびょう(8,200 lb-sec)のちからせきしょうじることができた[11]こう高度こうどであればマッハ1.6で2.6海里かいり (4.8 km)飛翔ひしょうすることができたが、てい高度こうどでの距離きょりは4,000フィート (1,200 m)まで短縮たんしゅくした[1]

運用うんよう[編集へんしゅう]

サイドワインダー1Aは、アメリカ海軍かいぐんではAAM-N-7、空軍くうぐんではGAR-8として制式せいしきされた。また1963ねん命名めいめい規則きそく改訂かいていされると、サイドワインダー1はAIM-9A、1AはAIM-9Bしょうされるようになった[9]

また1956ねん台湾たいわん中華民国ちゅうかみんこく)に提供ていきょうされたのを端緒たんしょとして、同盟どうめいこくへの提供ていきょう開始かいしされた[4]台湾たいわん空軍くうぐんやく360はつのサイドワインダーの提供ていきょうけて、100F-86Fにこれを搭載とうさいできるよう改修かいしゅうほどこした[12]きむもん砲戦ほうせんだい2台湾たいわん海峡かいきょう危機きき)のさなかの1958ねん9がつ24にち発生はっせいした、台湾たいわん空軍くうぐんの38のF-86Fと中国ちゅうごく空軍くうぐんの53MiG-17激突げきとつした「9・24温州うんしゅうわん空戦くうせん」においてこれらは実戦じっせん投入とうにゅうされ、6はつ発射はっしゃされたサイドワインダー1Aが4のMiG-17を撃墜げきついした[13]

最終さいしゅうてきに、95,000はつ以上いじょうのAIM-9Bが生産せいさんされた。内訳うちわけやく40,000はつがフィルコしゃやく40,000はつがゼネラル・エレクトリックしゃ、そしてやく15,000はつ西にしドイツのBGTしゃであった[4]

またAIM-9Bはいくつかのくに模倣もほうされた。イスラエルシャフリル 1[4]日本にっぽん69しきそら対空たいくう誘導ゆうどうだん(AAM-1)がいちれいである[14]。このほか、とく有名ゆうめいなのがソビエト連邦れんぽうR-3(AA-2「アトール」)である。一説いっせつには、きむもん砲戦ほうせん最中さいちゅう人民じんみん解放かいほう軍機ぐんき命中めいちゅうしたサイドワインダーの不発ふはつだん人民じんみん解放かいほうぐん回収かいしゅうされ、ソビエト連邦れんぽう提供ていきょうされてリバースエンジニアリングきょうされたともわれる[15]。ただしきゅうソ連それん(リトアニア)の航空こうくう評論ひょうろんであるエフィーム・ゴードン英語えいごばんは、中国ちゅうごく領空りょうくう侵犯しんぱんして撃墜げきついされたアメリカ海軍かいぐん残骸ざんがいからげられたとするせつ採用さいようしている[16]

だい2世代せだい[編集へんしゅう]

AIM-9B(さい上段じょうだん)、AIM-9D(中段ちゅうだん)、AIM-9C(さい下段げだん

サイドワインダー1A(AIM-9B)は、サイドワインダー1(AIM-9A)とくらべて長足ちょうそく進歩しんぽげ、どう時期じきのファルコンやスパローよりあきらかにすぐれているとはいっても、一義的いちぎてきにはたい爆撃ばくげきよう兵器へいきであって、ドッグファイトでの使用しようはあくまで二義的にぎてきなものにすぎなかった[4]。このことから、アメリカ海軍かいぐん空軍くうぐんけに、それぞれ、だい2世代せだいのサイドワインダーの開発かいはつ開始かいしされた。

アメリカ海軍かいぐん (-9C/D/G/H)[編集へんしゅう]

海軍かいぐんけに開発かいはつされたのがサイドワインダー-ICであった。サイドワインダー-ICでは誘導ゆうどう方式ほうしきさい検討けんとうされ、赤外線せきがいせん誘導ゆうどう装置そうち改良かいりょうがたinfrared alternative head, IRAH)とともに、セミアクティブ・レーダー・ホーミング装置そうちsemiactive radar alternative head, SARAH)も開発かいはつされた。IRAHを搭載とうさいしたモデルはAIM-9D、SARAHを搭載とうさいしたモデルはAIM-9Cとして制式せいしきされており、誘導ゆうどう装置そうち以外いがい基本きほんてき同一どういつ設計せっけいであった[4]

AIM-9Dでは、当初とうしょはセレンなまり(PbSe)をもちいた赤外線せきがいせんセンサに移行いこうする予定よていだったが、開発かいはつ失敗しっぱいしたことから、結局けっきょくは、AIM-9Bと同様どうよう硫化りゅうかなまり素子そしもちいつつも、窒素ちっそ冷媒れいばいとしたジュール=トムソン効果こうかによる冷却れいきゃく装置そうち導入どうにゅうした改良かいりょうがたとなった。これによってねつ雑音ざつおん低減ていげんして感度かんど向上こうじょうさせ、さら検知けんち波長はちょうもやや長波ちょうはちょうされた[4]。またレティクルの回転かいてん速度そくどを-9Bの70ヘルツから125ヘルツに向上こうじょうさせているほか、センサーまど素材そざいは、ガラスからフッマグネシウム変更へんこうされた。なお空気くうき抵抗ていこう低減ていげんするために先端せんたんをオジーブじょうまるみをびた円錐えんすいがた)に変更へんこうした[11]

一方いっぽう、AIM-9Cは、サイドワインダーに全天候ぜんてんこうぜん方位ほうい交戦こうせん能力のうりょく付与ふよするこころみであった。当時とうじ艦隊かんたいにはまだエセックスきゅう航空こうくう母艦ぼかんのこっていたが、同級どうきゅう艦上かんじょう戦闘せんとうとして搭載とうさいされていたF-8は、そら対空たいくうミサイルとしてはサイドワインダーしか搭載とうさいできなかったことから、交戦こうせんエンベロープの拡大かくだいもとめられたものであった。その、エセックスきゅう・F-8艦上かんじょう戦闘せんとう退役たいえきとともにAIM-9Cの運用うんよう終了しゅうりょうしたが、耗されずにのこったミサイルは、のちサイドアームたいレーダーミサイル改修かいしゅうされている[4]

またAIM-9C/Dでは、このような誘導ゆうどう装置そうち改良かいりょうくわえて、より強力きょうりょくなMk.36固体こたい燃料ねんりょうロケット採用さいようしてどうつばさ大型おおがたするとともに[4]弾頭だんとう重量じゅうりょう25ポンド、コンティニュアス・ロッドがた危害きがい半径はんけい17フィート (5.2 m)のものに変更へんこうされた。これによって射程しゃていは11.5海里かいり (21.3 km)に延伸えんしんされ、またとく誘導ゆうどう装置そうち改良かいりょうどうつばさ大型おおがたによって交戦こうせんエンベロープが拡大かくだいされたことで、ドッグファイトでの有用ゆうようせい一気いっき向上こうじょうした[1]

AIM-9Dは5,000はつ生産せいさんされる予定よていだったが、実際じっさいには1,850はつ生産せいさんされたところで改良かいりょうがたAIM-9Gえられた。これはSEAM(Sidewinder Expanded Acquisition Mode)を実装じっそうしており、ミサイルのシーカーを、戦闘せんとう火器かき管制かんせいレーダーに追従ついしょうさせてうごかすことができる[4]

またAIM-9Gは部分ぶぶんてき半導体はんどうたい素子そしされていたが、1972ねんには、さらにその範囲はんい拡大かくだいしたAIM-9H艦隊かんたい配備はいび開始かいしされた[4]。このモデルでは、つばさをダブルデルタするとともに、シーカーの追尾ついび角速度かくそくど増強ぞうきょうした[1]。なおAIM-9Hでは、アンチモンインジウム(InSb)をもちいた赤外線せきがいせんセンサの導入どうにゅう検討けんとうされたものの、これはあまりに冒険ぼうけんてきであると判断はんだんされたために見送みおくられ、AIM-9Lつことになった[15]

アメリカ空軍くうぐん (-9E/J/N)[編集へんしゅう]

アメリカ空軍くうぐんは、海軍かいぐんおなじミサイルを導入どうにゅうすることをしとせず、フィルコ-フォードしゃ独自どくじ改良かいりょうがた発注はっちゅうした。これはたまたい基本きほん設計せっけいやロケットモーター、弾頭だんとうはAIM-9Bのものを踏襲とうしゅうしつつ、あたらしい誘導ゆうどう装置そうちどうつばさんだもので、AIM-9Eとして制式せいしきされた[4]

AIM-9Eは、赤外線せきがいせんセンサの冷却れいきゃく措置そち導入どうにゅうしたというてんではAIM-9Dと同様どうようだが、こちらではペルティエ素子そしによる冷却れいきゃく採用さいようされた。また、シーカーの追尾ついび角速度かくそくども16.5/びょう増強ぞうきょうされている。AIM-9Eは、5,000はつ以上いじょうが-9Bから改修かいしゅうされた[11]

また1972ねんからはしょう改正かいせいがたAIM-9J配備はいび開始かいしされた。これは海軍かいぐんのAIM-9Hと同様どうよう半導体はんどうたい素子そしすすめるとともにどうつばさのアクチュエータを強化きょうかし、ロケットモータの燃焼ねんしょう時間じかん延長えんちょうしたもので、-9B/Eからの改修かいしゅうぶんわせて、やく6,700はつ生産せいさんされた。さらに1973ねんからは、シーカーの動作どうさ改善かいぜんするプリント基板きばん回路かいろ導入どうにゅうしたAIM-9N(AIM-9J-1とも)が開発かいはつされ、やく7,000はつ生産せいさんされた[11]

ただしこれらの空軍くうぐんばんサイドワインダーの成績せいせきは、かならずしも良好りょうこうではなかった。だい7空軍くうぐんでは海軍かいぐんから借用しゃくようしたAIM-9Gの導入どうにゅう検討けんとうしたものの、赤外線せきがいせんセンサの冷却れいきゃく方式ほうしきことなるためにランチャーの互換ごかんせいがなく、実現じつげんしなかった[4]

アメリカ国外こくがい (-9F)[編集へんしゅう]

西にしドイツBGTしゃによって開発かいはつされた改良かいりょうがたが、AIM-9F(AIM-9B FGW.2とも)である。これは、アメリカ海軍かいぐんのAIM-9Dと同様どうようにジュール=トムソン効果こうかによる赤外線せきがいせんセンサの冷却れいきゃく措置そち導入どうにゅうしているが、こちらでは、冷媒れいばいとして二酸化炭素にさんかたんそ採用さいようされている。AIM-9Fは1969ねんより運用うんよう開始かいしし、べ15,000はつ生産せいさんされた。ヨーロッパ運用うんようされていたAIM-9Bの大半たいはんが-9F仕様しよう改装かいそうされたとされている。

しょもとひょう
AIM-9D AIM-9E AIM-9J
画像がぞう AIM-9D AIM-9E AIM-9J
全長ぜんちょう 2.87m(113in) 3.00m(118in) 3.05m(120in)
直径ちょっけい 12.7 cm(5in)
つばさはば 0.63m(24.8in) 0.56m(22in) 0.58m(22.8in)
重量じゅうりょう 88 kg(195 lb) 74 kg(164 lb) 77 kg(170 lb)
射程しゃてい 18 km(9.7 nm) 4.2 km(2.3 nm) 18 km(9.7 nm)
速度そくど マッハ2.5+
弾頭だんとう 11 kg(25 lb)MK 48 4.5 kg(10 lb)

Mk.36 ロケット・モーター[編集へんしゅう]

出典しゅってん:ATKランチ・システムズ公式こうしきサイト[17]

  • 型式けいしき:Mk.36(オール・ブースト・スラスト・プロファイル)
  • 製造せいぞうしゃATKランチ・システムズ・グループきゅうチオコールしゃ
  • 全長ぜんちょう:1.80m(71.0in)
  • 直径ちょっけい:0.127m(5.0in)
  • 重量じゅうりょう:44.91 kg(99 lb)
  • 推進すいしんざいていけむりHTPB
  • ケース材質ざいしつ:4130スチール
  • 絶縁ぜつえん:R-184
  • ノズル:グラス・フェノール
  • 点火てんか装置そうち発熱はつねつばら
  • 運用うんよう温度おんど:−65°F - 160°F
  • 保管ほかん温度おんど:−65°F - 160°F

どう世代せだい[編集へんしゅう]

だい3世代せだい[編集へんしゅう]

だい3世代せだいサイドワインダーの開発かいはつは、ベトナム戦争せんそうでの航空こうくうせん分析ぶんせき土台どだいとして着手ちゃくしゅされた。上記じょうきのように、空軍くうぐんみずからのサイドワインダーに不満足ふまんぞくだったこともあって、追尾ついびかく広角こうかくヘッドマウントディスプレイ推力すいりょく偏向へんこうなどといったあたらしい技術ぎじゅつ導入どうにゅう志向しこうした。サイドワインダー系列けいれつでは、当時とうじ設計せっけいされていたAIM-9Kで追尾ついびかく広角こうかくこころみていた程度ていどだったことから、空軍くうぐんは、これらの技術ぎじゅつ一部いちぶ導入どうにゅうしたきわめて革新かくしんてきそら対空たいくうミサイルであるAIM-82開発かいはつ着手ちゃくしゅした[15]

一方いっぽう海軍かいぐんも、これらのしん技術ぎじゅつのほとんどを導入どうにゅうしたAIM-95開発かいはつこころみる一方いっぽう、より漸進ぜんしんてき施策しさくとして、だい2世代せだいサイドワインダーの最終さいしゅう発達はったつがたにあたるAIM-9Hを発展はってんさせたAIM-9H PIP(Product Improvement Program)の開発かいはつすすめていた。これは、AIM-9Hの開発かいはつ段階だんかい検討けんとうされていたようにアンチモンインジウム(InSb)検知けんち導入どうにゅうすることで、ぜん方位ほうい交戦こうせん能力のうりょく(all-aspect capability, ALASCA)を獲得かくとくすることを主眼しゅがんとしたものであった[15]

その、AIM-82・95で検討けんとうされていたような先進せんしんてき技術ぎじゅつはあまりに冒険ぼうけんてきであると判断はんだんされ、また海軍かいぐん空軍くうぐんのミサイルの統合とうごうのぞまれていたこともあって、1975ねん1がつより、AIM-9H PIPから発展はってんしたAIM-9Lについて海軍かいぐん空軍くうぐん合同ごうどうでの評価ひょうか試験しけん開始かいしされた[15]

AIM-9L[編集へんしゅう]

AIM-9L(上段じょうだん)とAIM-9M(下段げだん

InSb素子そしもちいた量子りょうしがた検知けんちは、だい1・2世代せだいサイドワインダーで使つかわれてきたPbS素子そしによる熱型ねっけい検知けんちよりも波長はちょうながなか波長はちょうあかがい(MWIR)帯域たいいき検知けんちすることができた。当初とうしょ計画けいかくでは、断熱だんねつ圧縮あっしゅく加熱かねつされた機首きしゅ検知けんちできるものと期待きたいされていたが、検討けんとう結果けっか、それよりも、むしろエンジンからの排気はいき(プルーム)を検知けんちして、その前方ぜんぽうねらうように誘導ゆうどうするほうが有望ゆうぼうであると判断はんだんされた[15]

このような誘導ゆうどう方式ほうしき開発かいはつには困難こんなんともない、試射ししゃさい標的ひょうてき前方ぜんぽう横切よこぎってしまう事態じたい発生はっせいしたが、やや先行せんこうしてスティンガー開発かいはつしたさいおな問題もんだい直面ちょくめんし、克服こくふくしていたジェネラル・ダイナミクスしゃ技術ぎじゅつじんからの情報じょうほう提供ていきょうけて、解決かいけつされた。またレティクル方式ほうしき変更へんこうされて、周波数しゅうはすう変調へんちょう(FM)信号しんごうせる形式けいしきとなった[15]

熱型ねっけい検知けんち冷却れいきゃくせずとも動作どうさ可能かのうだが、量子りょうしがた検知けんちでは冷却れいきゃく必須ひっすである。冷却れいきゃく方式ほうしきはAIM-9Hと同様どうようにジュール=トムソン効果こうか利用りようしたものだが、冷媒れいばいアルゴン変更へんこうされた[11]。この赤外線せきがいせんセンサを中核ちゅうかくとした誘導ゆうどう制御せいぎょユニットはDSQ-29としょうされている[1]

弾頭だんとうとしては、より強力きょうりょく重量じゅうりょう9.4kgのWDU-17 ABF(環状かんじょう爆風ばくふう破片はへん弾頭だんとう)が採用さいようされたほか、DSU-21によるレーザー近接きんせつ信管しんかんにより、危害きがい半径はんけいはさらに拡大かくだいした[1]推進すいしん装置そうちは、AIM-9HとおなじMk.36 シリーズの固体こたいロケットで、改良かいりょうがたのMod.7または8を採用さいようしている[11]。AIM-9Hで採用さいようされたダブルデルタがたどうつばさ効果こうかあいまって、じつに35Gでの機動きどう可能かのうとなった[15]

上記じょうきのように誘導ゆうどう装置そうち開発かいはつ難渋なんじゅうしたこともあったが、これらの問題もんだい解決かいけつされると、ほんミサイルは「並外なみはずれて殺傷さっしょうりょくつよい」とひょうされるようになり、開発かいはつしゃ一人ひとりであるトーマス・アムリーははしてき殺人さつじん光線こうせんべた[15]海軍かいぐんのシミュレーションでは、単発たんぱつ撃破げきはかくりつ(SSKP)は0.50と見積みつもられた[1][ちゅう 3]

生産せいさん1976ねんから開始かいしされ、アメリカのフィルコ・フォードしゃレイセオンしゃほかに、日本にっぽん三菱重工業みつびしじゅうこうぎょうヨーロッパのBGTしゃ西にしドイツのほか、イギリスとノルウェーも生産せいさん参加さんかした)でもおこなわれて、合計ごうけい5,500はつ以上いじょう生産せいさんされた[11]。アメリカ生産せいさんぶん一部いちぶ1982ねんフォークランド紛争ふんそうイギリスぐん提供ていきょうされ、87%というたか命中めいちゅうりつ記録きろくしている[15]

AIM-9M/S/R[編集へんしゅう]

AIM-9Lはきわめてすぐれたミサイルではあったが、上記じょうき経緯けいいのためにいそいで計画けいかく推進すいしんした部分ぶぶんがあった。このため、まもなくしょう改正かいせいがた(AIM-9L PIP)の計画けいかくがスタートし、のちAIM-9Mとなった[15]。これはクラッター抑制よくせい能力のうりょくとIRCCM能力のうりょく強化きょうかするとともに、冷却れいきゃく装置そうちスターリングしき変更へんこうし、ロケット・モーターもてい排煙はいえんがた変更へんこうしたものであった。生産せいさん1981ねんから開始かいしされており、のちにIRCCM能力のうりょくさら強化きょうかしたAIM-9Lプラス(AIM-9M-8/9)への改修かいしゅうキットも調達ちょうたつされた[1]

AIM-9Mのしょう改正かいせいがた(AIM-9M PIP)として、CCDイメージセンサによる可視かし光画こうがぞう誘導ゆうどう装置そうち導入どうにゅうはかって開発かいはつされたのがAIM-9Rであった。これはきわめて意欲いよくてき設計せっけいであったが、プロジェクト管理かんり失敗しっぱいによるコスト上昇じょうしょう、また可視かしこう使用しようするために夜間やかんには使つかえないことなどが問題もんだいされて、1991ねん12月に計画けいかく中止ちゅうしされた[15]

ぎゃくにAIM-9Mのダウングレードばんとして開発かいはつされたのがAIM-9Sであり、もともとはAIM-9MXとしょうされていた。1990ねん1がつに、トルコに310はつ売却ばいきゃくするむね発表はっぴょうがあった[1]

AIM-9P[編集へんしゅう]

AIM-9J/Nをもとに、AIM-9L/Mの技術ぎじゅつをバックフィットして開発かいはつされたのがAIM-9Pである。-9L/Mよりも安価あんかだい3世代せだいサイドワインダーと位置付いちづけられている。基本きほんてきには輸出ゆしゅつようモデルとして開発かいはつされたが、アメリカ空軍くうぐん採用さいようした[11]

-9P-1
DSU-15/B AOTDを導入どうにゅうしたモデル。
-9P-2
てい排煙はいえんがたのSR.116ロケット・モーターを導入どうにゅうしたモデル。
-9P-3
てい排煙はいえんがたのSR.116ロケット・モーターを導入どうにゅうするとともに、誘導ゆうどう操舵そうだ装置そうち改良かいりょうくわえたモデル。
-9P-4
ぜん方位ほうい交戦こうせん能力のうりょく付与ふよされたモデル。-9Lの技術ぎじゅつ採用さいようした赤外線せきがいせんセンサを搭載とうさいしている。また、新型しんがたのMk.8弾頭だんとうとDSU-21 AOTD信管しんかん導入どうにゅうされた。
-9P-5
-9P-4をもとに、赤外線せきがいせん妨害ぼうがい技術ぎじゅつたいするこうこらえせい(IRCCM)を向上こうじょうさせたモデル。

しょもとひょう[編集へんしゅう]

AIM-9M AIM-9P
画像がぞう AIM-9M AIM-9P
全長ぜんちょう 287 cm 307 cm
直径ちょっけい 12.7 cm(5in)
つばさはば 63.5 cm(25in)(後部こうぶ固定こていつばさ
56.64 cm(22.3in)(前部ぜんぶどうつばさ
56 cm
重量じゅうりょう 86.2 kg(190 lb) 78 kg
射程しゃてい 18 km(9.7 nm) 18 km(9.7 nm)
速度そくど マッハ2.5+
弾頭だんとう 9.4 kg(20.8 lb)WDU-17/B

どう世代せだい[編集へんしゅう]

だい4世代せだい[編集へんしゅう]

AIM-9X[編集へんしゅう]

AIM-9X
種類しゅるい 短距離たんきょりそら対空たいくうミサイル
製造せいぞうこく アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
性能せいのうしょもと
ミサイル直径ちょっけい 12.7cm(5in)
ミサイル全長ぜんちょう 302cm(119in)
ミサイル全幅ぜんぷく つばさはば後部こうぶどうつばさ):44.45cm(17.5in)
つばさはば前部ぜんぶ固定こていつばさ):35.31cm(13.9in)
ミサイル重量じゅうりょう 85.3kg(188lb)
弾頭だんとう 9.4kg(20.8lb)WDU-17/B
射程しゃてい 40+km(22+nm)
推進すいしん方式ほうしき Mk.36固体こたい燃料ねんりょうロケット
誘導ゆうどう方式ほうしき 中途ちゅうとこうほどINS+COLOS
終末しゅうまつこうほど赤外線せきがいせん画像がぞう(IIR)
飛翔ひしょう速度そくど マッハ2.5+
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当初とうしょ、サイドワインダーの開発かいはつだい3世代せだい終了しゅうりょうし、その後継こうけいとしては、北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく機構きこう(NATO)諸国しょこく共同きょうどう開発かいはつしたASRAAM採用さいようされる計画けいかくであった。しかしアメリカは1980年代ねんだいのうちにこの計画けいかくから脱退だったいし、サイドワインダーの最終さいしゅう発達はったつがたをその代役だいやくとすることにした。これがAIM-9Xであり[15]、1986ねんより、秘密裏ひみつり開発かいはつ開始かいしされていたとされている[1]

AIM-9Xは、たまたい設計せっけいから一新いっしんされ、みさおこう性能せいのう向上こうじょうのためにおおきな変更へんこうおこなわれた。操舵そうだつばさぜんつばさからこうつばさ変更へんこうされ、固定こていされたぜんつばさわって小型こがたされた後部こうぶつばさ操舵そうだおこなう。このため、後部こうぶ操舵そうだ装置そうちへの配線はいせんとおすため、たまたい下部かぶにカバーが設置せっちされた。また、XAAM-N-7にもちいて以来いらい、AIM-9Mにいたるまで採用さいようされていたローレロンがはいされている。推力すいりょく偏向へんこう制御せいぎょ方式ほうしき導入どうにゅうされた。また、最大さいだい射程しゃていは40km程度ていどまで延伸えんしんされている。

赤外線せきがいせんセンサの受光じゅこう素子そしだい3世代せだいサイドワインダーとおなじアンチモンインジウム(InSb)だが、AIM-9Xではめん素子そし (focal-plane array, FPAとされており、赤外線せきがいせん画像がぞう(IIR)誘導ゆうどう方式ほうしきとなる。このFPAがた赤外線せきがいせんセンサの解像度かいぞうどは128x128ピクセルであり、感度かんどはAIM-9Mのそれとして400ばい向上こうじょうしているとされる。赤外線せきがいせんセンサの冷却れいきゃく機構きこうには、だい3世代せだいのジュール=トムソン効果こうかから、-9Xではクライオエンジンとばれるスターリング冷凍れいとう変更へんこうされているため、ガスタンクを必要ひつようとせず電力でんりょく供給きょうきゅうのみでシーカー冷却れいきゃくおこなえるようになり、冷却れいきゃく時間じかんによる制約せいやくけることがくなった。なお、この赤外線せきがいせんセンサはヒューズしゃによって開発かいはつされたものであり、基本きほんてきに、同社どうしゃASRAAM提供ていきょうしているものとおな技術ぎじゅつもとづいている。

また、赤外線せきがいせんセンサーの追尾ついび可能かのうかく大幅おおはば拡大かくだいするとともに中間ちゅうかん慣性かんせい誘導ゆうどう(INS)導入どうにゅうし、限定げんていてき発射はっしゃロックオン(LOAL)およびオフボアサイト発射はっしゃ機能きのうそなえている[18]ヘッドマウントディスプレイによってロックオンするシステム(JHMCS:Joint Helmet Mounted Cueing System)を使用しようすることによって真横まよこ飛行ひこうするてきをロックオンすることが可能かのうとなった。

性能せいのう最大限さいだいげんかすには、MIL-STD-1553B デジタルデータバスが必要ひつようとなるが、それをたない旧式きゅうしき機体きたいでもAIM-9Mとして認識にんしきされ使用しよう可能かのうである。

欺瞞ぎまんたいせい[編集へんしゅう]

赤外線せきがいせん画像がぞう誘導ゆうどうによってフレアにつよくなったとされるAIM-9Xであるが、2017ねんのシリアにおいて、F/A-18EがSu-22にけてやく2.4Kmの距離きょりからはなったAIM-9Xがフレアによって回避かいひされるという事例じれい確認かくにんされている。[1]

AIM-9X-2(AIM-9XブロックII)[編集へんしゅう]

改良かいりょうがた信管しんかんをDSU-41Bにかわそう固体こたい燃料ねんりょうロケット点火てんかようバッテリーをあらたに装備そうびし、点火てんか安全あんぜん装置そうちあたらしくして自動じどうした。処理しょりプロセッサがあたらしくなり、ブロック1では限定げんていてきだった発射はっしゃロックオン(LOAL)拡張かくちょうされてフルに使つかえるようになった[18]。また、ははからミサイルにたいするデータリンク(AIM-120D装備そうびされたものとおなじもの)が装備そうびされており[19]、レーダーで誘導ゆうどうおこなえる。射程しゃていやく2ばい延伸えんしんされており、ほぼBVR兵器へいきといえる[20]。しかし、ブロックIとくらHMD使つかわないときのオフボアサイト能力のうりょく低下ていかしているとされており、ソフトウェアのクリーンアップが計画けいかくされている[21]2008ねんにテストがおこなわれ、2014ねんにIOCを獲得かくとく、2015ねん8がつ17にち完全かんぜん量産りょうさん移行いこうした[22]。また、レイセオンではブロックIIにブロックIのそら対地たいち能力のうりょく付与ふよソフトウェアの追加ついかおこなうことを検討けんとうしている[23]

左右さゆう180真後まうしろのてきもロックすることができる。

AIM-9X-3(AIM-9XブロックIII)[編集へんしゅう]

研究けんきゅうすすめられていた改良かいりょうがた。PBXN-122弾頭だんとう新型しんがたロケットモーターの装備そうびにより、射程しゃていの60%延伸えんしん破壊はかいりょく向上こうじょうはかる。2016ねんにエンジニアリングと製造せいぞう開発かいはつ(EMD)、2018ねん運用うんようテストをおこない、2022ねん初期しょき作戦さくせん能力のうりょく獲得かくとく目指めざしていたが[24][25]2015ねん2がつ3にちにキャンセルが発表はっぴょうされた。ただし、ブロック3が装備そうびする弾頭だんとう研究けんきゅう継続けいぞくされる[26]

どう世代せだい[編集へんしゅう]

派生はせいがた[編集へんしゅう]

MIM-72/M48 チャパラル
AIM-9Dをベースにした短距離たんきょり防空ぼうくうミサイル・システム
RIM-92 シーチャパラル
MIM-72Cをベースにしたかん防空ぼうくうミサイル・システム
AGM-122 サイドアーム
AIM-9Cの誘導ゆうどう改造かいぞうしたたいレーダー そら対地たいちミサイル
RIM-116 RAM
AIM-9のたまたいをベースに開発かいはつされた近接きんせつ防空ぼうくうミサイル

登場とうじょう作品さくひん[編集へんしゅう]

映画えいが[編集へんしゅう]

インデペンデンス・デイ
F/A-18 ホーネット中心ちゅうしんとする人類じんるいがわ戦闘せんとう搭載とうさいされたものが、エイリアンシティ・デストロイヤーたいして使用しようされる。
ゴジラシリーズ
ゴジラvsキングギドラ
だい2航空こうくうだん所属しょぞくF-15J イーグル搭載とうさいされたものが、襟裳岬えりもみさき上空じょうくう飛行ひこうするキングギドラたいして使用しようされるが、まった効果こうかがなかった。
GODZILLA
アメリカぐんAH-64 アパッチ搭載とうさいされたものが、マンハッタン上陸じょうりくしたゴジラたいして使用しようされるが、ゴジラの体温たいおんまわりのビルよりひくかったため赤外線せきがいせん誘導ゆうどうシステムが上手うまはたらかず、ゴジラの後方こうほうにあったクライスラー・ビル直撃ちょくげきし、破壊はかいしてしまう。
ターミネーター4
A-10搭載とうさいされており、中盤ちゅうばん空中くうちゅうせんにおいてハンターキラー・エリアルにたい発射はっしゃ推進すいしんノズル部分ぶぶん直撃ちょくげきいち撃墜げきついする。
トゥルーライズ
終盤しゅうばんにて、主人公しゅじんこうのハリー・タスカーがアメリカ海兵かいへいたいからりたAV-8B ハリアー II左端ひだりはしハードポイント搭載とうさいされたものに、テログループ真紅しんくのジハード」のリーダーであるサリム・アブ・アジズが機体きたいからころちたことでっかかり、その主人公しゅじんこうはちょうど前方ぜんぽう通過つうかしていた「真紅しんくのジハード」のヘリコプターたいしてこれを発射はっしゃ。ミサイルは命中めいちゅうし、アジズごと爆発ばくはつする。
トップガン
アメリカ海軍かいぐんF-14 トムキャット搭載とうさいされたものが、襲来しゅうらいするMiG-28たいして使用しようされる。
ファイナル・カウントダウン
だい世界せかい大戦たいせんときタイムスリップしたニミッツきゅう航空こうくう母艦ぼかんニミッツ」の艦載かんさいであるF-14に搭載とうさいされたものが、日本にっぽん海軍かいぐんれいせん(にふんしたT-6 テキサン)にたいして使用しようされる。

小説しょうせつ[編集へんしゅう]

ゲート 自衛隊じえいたい かれにて、たたかえり
小説しょうせつ漫画まんが・アニメばんにて、世界せかい派遣はけんされた航空こうくう自衛隊じえいたいF-4EJあらため ファントム搭載とうさいされたものが、2とう新生しんせいりゅう火炎かえん放射ほうしゃ中断ちゅうだんさせる牽制けんせいのために使用しようされる。

ゲーム[編集へんしゅう]

War Thunder
べいどくにちふつ空軍くうぐんツリーやべいヘリコプターツリーの武装ぶそうとして空軍くうぐんツリーにはAIM-9B・AIM-9B FGW.2・Rb24(スウェーデンによるAIM-9Bのライセンス生産せいさんバージョン)・AIM-9C・AIM-9D・AIM-9G・AIM-9E・AIM-9J・AIM-9P(‐3)・Rb24J(スウェーデンによるAIM-9P-3のライセンス生産せいさんバージョン)・AIM-9L・AIM-9Mが登場とうじょうする。
Operation Flashpoint: Dragon Rising
AH-1Z ヴァイパー搭載とうさいされて登場とうじょうする。
Wargame Red Dragon
NATO陣営じんえい各種かくしゅヘリコプター航空機こうくうき武装ぶそうとしてAIM-9F・AIM-9J・AIM-9L・AIM-9Mが登場とうじょうする。
エースコンバットシリーズ
おおくの米国べいこくせい戦闘せんとう搭載とうさいされる標準ひょうじゅんミサイルのモデルになっているほか特殊とくしゅへいそうひとつであるQAAM(こう機動きどうそら対空たいくうミサイル)はAIM-9Xをモデルのひとつにしている。
バトルフィールドシリーズ
BFV
F-4 ファントムII搭載とうさいされている。
BF2
F-15E ストライクイーグルF-18 ホーネットF-35B ライトニングIIユーロファイター タイフーン搭載とうさいされている。
BF3
「ヒートシーカー」の名称めいしょう登場とうじょうし、AH-1ZやF/A-18E スーパーホーネットなどに搭載とうさいできる。
BF4
「ヒートシーカー」の名称めいしょう登場とうじょうし、AH-1ZやF-35Bなどに搭載とうさいできる。
BF2042
「ヒートシーカー」の名称めいしょう登場とうじょうし、F/A-18EやAH-64Dなどをはじめとした、バトルフィールドポータルに登場とうじょうする各種かくしゅ航空機こうくうき搭載とうさいできる。
フィクショナル・トルーパーズ
メカール共和きょうわ国軍こくぐんそら対空たいくうミサイルとして運用うんようされている。ただし、1980年代ねんだい時代じだい背景はいけいだいさん世界せかい空軍くうぐんであるため、だい世代せだいがたのみで最新さいしん兵器へいきであるぜん角度かくどがたのLがた以降いこう導入どうにゅうされていない模様もよう
マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス
連合れんごうぐん使用しようするAH-1W スーパーコブラ武装ぶそうとして搭載とうさいされている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 当初とうしょ海軍かいぐんではAAM-N-7、空軍くうぐんではGAR-8としょうされていたが、1963ねん三軍さんぐん共通きょうつう命名めいめい規則きそく導入どうにゅうによって現在げんざい名称めいしょうとなった。
  2. ^ また、1956ねん2がつ発生はっせいした事故じこへの対応たいおう不備ふびも、サイドワインダーの導入どうにゅう後押あとおししたとわれている。このとき、海軍かいぐんのA3D-1が事故じここして乗員じょういん脱出だっしゅつしたのち機体きたい飛行ひこうつづけていたことから、空軍くうぐんのF-100が緊急きんきゅう発進はっしんして撃墜げきついしようとしたものの、20ミリ機銃きじゅうのみではほぼダメージをあたえられなかったことから、より強力きょうりょく武装ぶそう既存きそん戦闘せんとう搭載とうさいする必要ひつようせいがクローズアップされた[10]
  3. ^ ただし空軍くうぐんはより悲観ひかんてきで、0.285と見積みつもった。なおベトナム戦争せんそうの452はつのサイドワインダーの発射はっしゃ記録きろくから算出さんしゅつされたSSKPは0.18であった[1]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l Friedman 1997, pp. 427–430.
  2. ^ a b Westrum 2013, ch.3 The Problem Takes Shape.
  3. ^ a b c Westrum 2013, ch.4 The Wrong Laboratory.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Westrum 2013, ch.14 Early Generations.
  5. ^ Westrum 2013, ch.5 Struggles with Infrared.
  6. ^ a b c d Westrum 2013, ch.7 Systems Engineering.
  7. ^ Westrum 2013, ch.8 The Painted Bird.
  8. ^ a b Westrum 2013, ch.9 Crunch Time.
  9. ^ a b c d e Westrum 2013, ch.10 To the Fleet.
  10. ^ Westrum 2013, ch.11 Selling the Air Force.
  11. ^ a b c d e f g h Kopp 1994.
  12. ^ Westrum 2013, ch.16 In Combat.
  13. ^ せき賢太郎けんたろう (2018ねん9がつ24にち). そら対空たいくうミサイル60ねん台湾たいわんはじまるその歴史れきしとは ガラリとわった「戦闘せんとうのありかた」”. りものニュース. https://trafficnews.jp/post/81423 
  14. ^ 技術ぎじゅつ研究けんきゅう本部ほんぶ 1978, pp. 145–146.
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m Westrum 2013, ch.15 Later Generations.
  16. ^ Gordon 2005, p. 24.
  17. ^ ATK Launch Systems - Sidewinder Propulsion System
  18. ^ a b AIM-9X Air-to-Air Missile Upgrade
  19. ^ 航空こうくうファン2011ねん5がつごう
  20. ^ Upgrades Keep Navy Air-to-Air Weapons on the Cutting Edge
  21. ^ AIM-9X Block II performing better than expected
  22. ^ 発射はっしゃロックオン可能かのうなAIM-9X Block II 、完全かんぜん量産りょうさん移行いこう
  23. ^ Raytheon plans to add more capability to AIM-9X Block II as USN boosts missile buy
  24. ^ 世界せかいシリーズ F-35 ライトニングII P.41
  25. ^ US Navy hopes to increase AIM-9X range by 60%
  26. ^ F-35Cs Cut Back As U.S. Navy Invests In Standoff Weapons

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Friedman, Norman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. ISBN 978-1557502681 
  • Gordon, Yefim (2005). Soviet/Russian Aircraft Weapons Since World War Two. Midland Publishing. ISBN 978-1857801880 
  • Kopp, Carlo (1994). “The Sidewinder Story - The Evolution of the AIM-9 Missile”. Australian Aviation. http://www.ausairpower.net/TE-Sidewinder-94.html. 
  • Lenfle, Sylvain (8 2014). “Toward a genealogy of project management: Sidewinder and the management of exploratory projects”. International Journal of Project Management (Elsevier) 32 (6). doi:10.1016/j.ijproman.2013.10.017. http://www.sylvainlenfle.com/images/Publications/Sidewinder_2014.pdf. 
  • Rogalski, Antoni (2012). “History of infrared detectors”. Opto-Electronics Review (Elsevier) 20 (3): 279-308. doi:10.2478/s11772-012-0037-7. 
  • Westrum, Ron (2013). Sidewinder: Creative Missile Development at China Lake. Naval Institute Press. ISBN 978-1591149811 
  • 技術ぎじゅつ研究けんきゅう本部ほんぶ へん防衛庁ぼうえいちょう技術ぎじゅつ研究けんきゅう本部ほんぶじゅうねん』1978ねんNCID BN01573744 
  • 久野くの, 治義はるよし『ミサイル工学こうがく事典じてんはら書房しょぼう、1990ねんISBN 978-4562021383 
  • Andreas Parsch (2008ねん7がつ9にち). “Directory of U.S. Military Rockets and Missiles - AIM-9” (英語えいご). 2011ねん6がつ17にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]