(Translated by https://www.hiragana.jp/)
TRPV1 - Wikipedia コンテンツにスキップ

TRPV1

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

一過いっかせい受容じゅようたい電位でんいカチオンチャネルサブファミリーVメンバー1 (Transient receptor potential cation channel subfamily V member 1 TrpV1カプサイシン受容じゅようたいおよびバニロイド受容じゅようたい1としてもられる) はタンパク質たんぱくしつであり、(ヒトでは)TRPV1遺伝子いでんしによってコードされる。これは、一過いっかせい受容じゅようたい電位でんいバニロイド受容じゅようたいタンパク質たんぱくしつ最初さいしょたんはなされたメンバーであり、同様どうよう一過いっかせい受容じゅようたい電位でんいタンパク質たんぱくしつグループのサブファミリーである[1][2]。このタンパク質たんぱくしつは、イオンチャネル一過いっかせい受容じゅようたい電位でんいファミリーのTRPV英語えいごばんグループのメンバーである[3]

TRPV1の機能きのうは、体温たいおん検出けんしゅつ調節ちょうせつである。くわえて、TRPV1はヤケドのようなねついたみの感覚かんかく (痛覚つうかくen:Nociception) を提供ていきょうする。いち求心きゅうしんせい感覚かんかくニューロンは、en:TRPA1[4][5](化学かがく刺激しげき受容じゅようたい)と協力きょうりょく有害ゆうがい環境かんきょう刺激しげき検出けんしゅつ仲介ちゅうかいする[6]

機能きのう

[編集へんしゅう]

TRPV1は哺乳類ほにゅうるいからだせい感覚かんかくけいによって使用しようされるメカニズムまたはその要素ようそである[7]。それはさまざまな外因がいいんせいおよび内因ないいんせい物理ぶつりてきおよび化学かがくてき刺激しげきによって活性かっせいされる可能かのうせいがある選択せんたくてきカチオン(イオン)チャネルである。TRPV1のもっともよくられている活性かっせい因子いんしは: 43 °C (109 °F)以上いじょう温度おんど; 酸性さんせい状態じょうたい; カプサイシン (唐辛子とうがらしふくまれる刺激しげきせい化合かごうぶつ); およびアリル・イソチオシアネート(イソチオシアンさんアリル, からし(マスタード)やワサビにふくまれる辛味からみ成分せいぶん)[8]。TRPV1の活性かっせいいたみをともなう、灼熱しゃくねつかんをもたらす。その内因ないいんせい活性かっせい因子いんしには: ひくpH (酸性さんせい状態じょうたい)、内因ないいんせいカンナビノイドアナンダミド、N-oleyl-dopamine、およびN-アラキドノイルドーパミン英語えいごばん。TRPV1受容じゅようたいおも末梢まっしょう神経しんけいけい侵害しんがい受容じゅようせい(痛覚つうかく)英語えいごばんニューロンられるが、しかしそれらは中枢ちゅうすう神経しんけいけいふくむ、おおくの組織そしきでも報告ほうこくされている。TRPV1はいた (侵害しんがい受容じゅよう英語えいごばん)の伝達でんたつ調節ちょうせつ、およびさまざまないたみをともな刺激しげき統合とうごう関与かんよしている[9][10]

(高温こうおんなどの)有害ゆうがい刺激しげきたいするTRPV1の感受性かんじゅせい静的せいてきではない。組織そしき損傷そんしょうとそれにともな炎症えんしょうこると、多数たすうの(さまざまなプロスタグランジンブラジキニンなどの)炎症えんしょうメディエーターが放出ほうしゅつされる。これらのエージェント(作用さようやく)は侵害しんがい刺激しげきたいする侵害しんがい受容じゅよう感受性かんじゅせいたかめる。これはいたみをともな刺激しげきたいする感受性かんじゅせい増加ぞうか (痛覚つうかく過敏かびん) またはいたみをともなわない刺激しげきたいする反応はんのうにおけるいたみの感覚かんかく (アロディニア) として顕在けんざいする。ほとんどのかんさくせい炎症えんしょう誘発ゆうはつエージェント(えい: sensitizing pro-inflammatory agents)はホスホリパーゼC経路けいろ活性かっせいする。プロテインキナーゼCによるTRPV1のリン酸化さんかはTRPV1のかんさくにおいて役割やくわりたすことがしめされている。PLC-ベータによるPIP2のきれひらきは、TRPV1のだつ抑制よくせいをもたらす可能かのうせいがあり、結果けっかとして、侵害しんがい刺激しげきたいするTRPV1の感受性かんじゅせい寄与きよする。

だっかんさく

[編集へんしゅう]

カプサイシン長時間ちょうじかん暴露ばくろされると、TRPV1の活性かっせい低下ていかし、だっかんさくばれる現象げんしょうこる。この現象げんしょうには細胞さいぼうがいカルシウムイオンが必要ひつようであり、したがってカルシウムの流入りゅうにゅうとそれにともな細胞さいぼうないカルシウムの増加ぞうかがこの効果こうか媒介ばいかいする[11]。PKAおよびPKCによるリン酸化さんかカルモジュリンとの相互そうご作用さようカルシニューリンによるだつリン酸化さんか[12]、およびPIP2減少げんしょうなどのさまざまなシグナル伝達でんたつ経路けいろが、TRPV1のだっかんさく調節ちょうせつ関与かんよしている。TRPV1のだっかんさくはカプサイシンのパラドキシカル鎮痛ちんつう効果こうか根底こんていにあるとかんがえられている。

臨床りんしょうてき意義いぎ

[編集へんしゅう]

末梢まっしょう神経しんけいけい

[編集へんしゅう]

その侵害しんがい受容じゅよう英語えいごばんへの関与かんよ結果けっかとして、TRPV1は鎮痛ちんつうざい開発かいはつのターゲットとなっている。3つの主要しゅよう戦略せんりゃく使用しようされている:

TRPV1の用途ようと

[編集へんしゅう]

TRPV1受容じゅようたい生命せいめいたい温度おんど変化へんかをどのように感知かんちできるかを測定そくていできるようにするのに役立やくだつ。ラボで受容じゅようたいをマウスから除去じょきょすると、周囲しゅうい温度おんどちがいを検出けんしゅつできなくなるかもしれない。製薬せいやく分野ぶんやでは、これは炎症えんしょうせい疾患しっかんもしくははげしい灼熱しゃくねつつうかかえる患者かんじゃねつ受容じゅようたいをブロックすることで、いたみをともなわずに治癒ちゆする機会きかいあたえることを可能かのうにする。TRPV1受容じゅようたい欠損けっそんは、ねつ大量たいりょう十分じゅうぶん投与とうよりょう大抵たいてい生物せいぶつころすことができるので、発達はったつちゅうのう垣間見かいまみることができ、したがって、この除去じょきょプロセスは研究けんきゅうしゃねつ感知かんちできないことが生命せいめいたい生存せいぞん可能かのうせいにどのように有害ゆうがいになる可能かのうせいがあるかをしめし、その、これを人間にんげん熱中ねっちゅうしょうえる。

免疫めんえき細胞さいぼうにおけるTRPV1

[編集へんしゅう]

TRPV1はニューロンだけでなく免疫めんえき細胞さいぼうでも重要じゅうよう役割やくわりたしている。TRPV1の活性かっせい炎症えんしょうせいサイトカインおよびケモカイン放出ほうしゅつ貪食どんしょくのうなどをふく免疫めんえき応答おうとう調節ちょうせつする。しかしながら、免疫めんえき細胞さいぼうにおけるTRPV1の役割やくわりはは完全かんぜんには理解りかいされておらず現在げんざい熱心ねっしん研究けんきゅうされている。TRPV1は免疫めんえき細胞さいぼう発現はつげんする唯一ゆいいつのTRPチャネルではない。TRPA1英語えいごばんTRPM8英語えいごばん、およびTRPV4英語えいごばんは、免疫めんえき細胞さいぼうでも研究けんきゅうされているもっと関連かんれんせいたかいTRPチャネルである[13]

TRPV1の発現はつげん適応てきおう免疫めんえき細胞さいぼう同様どうよう自然しぜん免疫めんえき細胞さいぼうでも確認かくにんされた。TRPV1は、たんたまマクロファージじょう細胞さいぼうTリンパだまナチュラル・キラー(NK)細胞さいぼうこうちゅうだまられる[14]。TRPV1は、免疫めんえき細胞さいぼうのパフォーマンスに影響えいきょうあたえる可能かのうせいがある、よりたか温度おんどとよりひくいpHを感知かんちするため、免疫めんえき細胞さいぼう機能きのうにおいて潜在せんざいてき非常ひじょう重要じゅうようであるとわれている[15]

TRPV1と適応てきおう免疫めんえき

[編集へんしゅう]

TRPV1はT細胞さいぼう重要じゅうようまくチャネルでありカルシウム・カチオンの流入りゅうにゅう調節ちょうせつする。TRPV1の関与かんよおもT細胞さいぼう受容じゅようたいシグナル伝達でんたつ(シグナリング)、T細胞さいぼう活性かっせいおよびTCRかいしたカルシウム・イオンの流入りゅうにゅうだが[14]、T細胞さいぼうサイトカインさんせいにも関与かんよしている[15]実際じっさい、TRPV1ノックアウトをともなうT細胞さいぼうは、TCRかいしたT細胞さいぼう活性かっせいにカルシウムの障害しょうがいしめすため、したがってNF-κかっぱBNFATなどのシグナル伝達でんたつ経路けいろ調節ちょうせつ不全ふぜんしめ[13]

TRPV1と自然しぜん免疫めんえき

[編集へんしゅう]

自然しぜん免疫めんえきかんしては、カプサイシンによるTRPV1の活性かっせいマクロファージによる硝酸しょうさんラジカル、スーパーオキシド・アニオン過酸化水素かさんかすいそ生成せいせい抑制よくせいすることがしめされている。

さらに、カプサイシン投与とうよ、とそれにつづくTRPV1の活性かっせいは、じょう細胞さいぼうにおける貪食どんしょく抑制よくせいする。マウスモデルでは、TRPV1はじょう細胞さいぼう成熟せいじゅく機能きのう影響えいきょうあたえるが、ただし、人間にんげんにおけるこの効果こうかあきらかにするには、さらなる研究けんきゅう必要ひつようである。こうちゅうだまでは、サイトゾルのカルシウムイオンの増加ぞうかプロスタグランジン合成ごうせいをもたらす。カプサイシンによるTRPV1の活性かっせい細胞さいぼうないへのカルシウムイオンのよりたか流入りゅうにゅうによりこうちゅうだま免疫めんえき応答おうとう調節ちょうせつする[14]

TRPV1はおおくの炎症えんしょうせい疾患しっかんにおける新規しんき治療ちりょうやくともかんがえられている。複数ふくすう研究けんきゅうはTRPV1が慢性まんせい喘息ぜんそく食道しょくどうえん関節かんせつリウマチがんなどのいくつかの炎症えんしょうせい疾患しっかん転帰てんき(アウトカム)に影響えいきょうあたえることを証明しょうめいした。TRPV1のアゴニストとアンタゴニストを使用しようした研究けんきゅうは、それらの投与とうよ実際じっさい炎症えんしょう経過けいかえることをしめしている。ただし、現時点げんじてんでは、TRPV1の活性かっせいがどのタイプの炎症えんしょう誘発ゆうはつせいまたはこう炎症えんしょうせい反応はんのう誘発ゆうはつするかについて矛盾むじゅんする証拠しょうこがたくさんある。さらなる研究けんきゅうおこな必要ひつようがある。一方いっぽう炎症えんしょうせい疾患しっかんにおけるTRPV1の影響えいきょうはむしろ免疫めんえき細胞さいぼうニューロン、および細胞さいぼうタイプ (上皮じょうひ細胞さいぼうなど) とのあいだ相互そうご作用さようなのでおそらく免疫めんえき細胞さいぼうだけに限定げんていされないことを強調きょうちょうすることが重要じゅうようである[15]

TRPV1とがん

[編集へんしゅう]

TRPV1はいくつかのタイプのがん(e.g.、膵臓すいぞうがんおよび結腸けっちょうせんがん)で過剰かじょう発現はつげんしていることが判明はんめいした。これは特定とくていのタイプのがんカプサイシン誘発ゆうはつせい (およびバニロイド誘発ゆうはつせい) 細胞さいぼうによって媒介ばいかいされる細胞さいぼうこしやすい可能かのうせいがあることを示唆しさする。実際じっさい研究けんきゅうはチリ(唐辛子とうがらし)ベース食品しょくひん消費しょうひ(りょう)とがんくわえたぜん死因しいん死亡しぼうりつとのぎゃく相関そうかんしめしている。チリベースの食品しょくひん消費しょうひによるこの有益ゆうえき影響えいきょうはカプサイシノイド含有がんゆうりょう起因きいんしていた[14]

そのアゴニストであるカプサイシンによるTRPV1の活性かっせいはG0-G1細胞さいぼう停止ていしおよび白血病はっけつびょう細胞さいぼうかぶ成人せいじんT細胞さいぼう白血病はっけつびょうおよび多発たはつせい骨髄腫こつづいしゅにおけるアポトーシス誘発ゆうはつすることがしめされた。カプサイシンはこうアポトーシスタンパクしつBcl-2発現はつげん低下ていかさせ、細胞さいぼう主要しゅよう調節ちょうせつ因子いんしとしてられる腫瘍しゅよう抑制よくせいタンパク質たんぱくしつであるp53活性かっせい促進そくしんする。どちらの場合ばあいカプサイシンのこの効果こうかは、その前述ぜんじゅつアポトーシスにつながる[14]

ニューロン免疫めんえき細胞さいぼうあいだ相互そうご作用さようはよくられている現象げんしょうであり、したがって、ニューロンと免疫めんえき細胞さいぼう両方りょうほう発現はつげんするため、TRPV1が神経しんけい炎症えんしょうにおいてその役割やくわりたしていることはおどろくべきことではない。ミクログリアほしじょう細胞さいぼうニューロンのすぐちかくにある細胞さいぼうにおけるTRPV1の発現はつげん確認かくにんにはかなりの重要じゅうようせい支払しはらわれるべきである。神経しんけい免疫めんえきじく(さく)は神経しんけい炎症えんしょう分子ぶんしさんせいと、2つのシステムあいだ相互そうご作用さよう外部がいぶ刺激しげき(または身体しんたい自身じしん病理びょうり)にたいする複雑ふくざつ応答おうとう確実かくじつにする受容じゅようたい存在そんざいする場所ばしょである。TRPV1の神経しんけい炎症えんしょうへの関与かんよ研究けんきゅうすることは今後こんご治療ちりょうおおきな意義いぎ[16]

TRPV1を発現はつげんする皮膚ひふ神経しんけい細胞さいぼうじょう細胞さいぼうたがいに近接きんせつしていることが判明はんめいした。ニューロンにおけるTRPV1チャネルの活性かっせいじょう細胞さいぼうによるインターロイキン23のそのさんせいと、T細胞さいぼうによるIL-17のさらなるさんせい関連かんれんしている。これらのインターロイキンは病原びょうげんせいきんカンジダ・アルビカンスなど)および細菌さいきん黄色おうしょくブドウ球菌きゅうきんなど)にたいする宿主しゅくしゅ防御ぼうぎょにとって重要じゅうようであり、したがって神経しんけい免疫めんえきじくのおかげでTRPV1の活性かっせいはこれらの病原びょうげんたいたいするよりすぐれた防御ぼうぎょにつながる可能かのうせいがある[15]

TRPV1はミトコンドリアが誘導ゆうどうする細胞さいぼうこすそのCa2+シグナル伝達でんたつかいして、ミクログリアオートファジー関与かんよするとわれている。TRPV1チャネルはミクログリアによる炎症えんしょうにも影響えいきょうあたえる。 ミクログリアほしじょう細胞さいぼう移動いどうはしせい細胞さいぼう骨格こっかくとCa2+シグナル伝達でんたつともなうTRPV1の相互そうご作用さよう影響えいきょうしているとおもわれる。TRPV1はしたがってミクログリア機能きのうかいして神経しんけい免疫めんえきじくにも関与かんよしている[16]

TRPV1はハンチントンびょう血管けっかんせい認知にんちしょうパーキンソンびょうなどの神経しんけい疾患しっかん保護ほご効果こうかゆうすることがしめされた。ただし、その正確せいかく機能きのうについてはさらに調査ちょうさする必要ひつようがある[16]

リガンド

[編集へんしゅう]

TRPV1は自然しぜんかい由来ゆらいする多数たすうのアゴニストによって活性かっせいされる[17]カプサイシンレシニフェラトキシンなどのアゴニストはTRPV1を活性かっせいし、(長期間ちょうきかん適用てきようすると)TRPV1活性かっせい低下ていか(だっかんさく)し、侵害しんがい刺激しげきへの曝露ばくろ炎症えんしょうせい分子ぶんしのTRPV1媒介ばいかい放出ほうしゅつにおけるその減少げんしょうかいしていたみの緩和かんわにつながる。アゴニストは一般いっぱんにパッチまたは軟膏なんこうとして、さまざまなかたちいたみのある領域りょういき局所きょくしょてき適用てきようできる。てい濃度のうどのカプサイシン (0.025 - 0.075%) をふくむ、多数たすうのカプサイシン含有がんゆうクリームが医師いし処方しょほう不要ふよう(over-the-counter: OTC)利用りよう可能かのうである。これらの調剤ちょうざいやく実際じっさいにTRPV1だっかんさくにつながるかどうか議論ぎろんされており; それらが反対はんたい刺激しげきかいして作用さようする可能かのうせいがある。よりこう濃度のうど(最大さいだい10%)のカプサイシンをふく新規しんき製剤せいざい治験ちけんなかである[18]

皮膚ひふのTRPV1含有がんゆうニューロンの退行たいこうこすことによって、30分間ふんかん治療ちりょう最大さいだい3かげつ鎮痛ちんつう効果こうかられること証明しょうめいする裏付うらづけとなる証拠しょうこもちいて、8%のカプサイシン・パッチが最近さいきん臨床りんしょう使用しようできるようになった[19]現在げんざい、これらの治療ちりょうはそれらの鎮痛ちんつう効果こうか維持いじするために(まれではあるが)定期ていきてきさい投与とうよする必要ひつようがある。

カンナビノイド・リガンド

[編集へんしゅう]

カンナビノイドリガンドつぎのものがふくまれる[20]:

N-アシル・アミド

[編集へんしゅう]

カンナビミメティック受容じゅようたい活性かっせいするN-アシル・アミドはつぎのものがふくまれる[20]:

脂肪酸しぼうさん代謝たいしゃぶつ

[編集へんしゅう]

脂肪酸しぼうさん抱合ほうごうたい(コンジュゲート)(共役きょうやく脂肪酸しぼうさん英語えいごばん)

[編集へんしゅう]

ビタミンD代謝たいしゃぶつ

[編集へんしゅう]

ビタミンD代謝たいしゃぶつカルシフェジオール (25-ヒドロキシ・ビタミンDまたは25OHD) およびカルシトリオール (1,25-ヒドロキシ・ビタミンDまたは1,25OHD) は、TRPV1の内因ないいんせいリガンドとして機能きのうする[29]

中枢ちゅうすう神経しんけいけい

[編集へんしゅう]

TRPV1は中枢ちゅうすう神経しんけいけいこうレベルでも発現はつげんしており、いたみだけでなく不安ふあんなどのほか状態じょうたい治療ちりょう標的ひょうてきとしても提案ていあんされている[30]。さらに、TRPV1は海馬かいばにおける長期ちょうきシナプス抑制よくせい(LTD)を仲介ちゅうかいするためにも発現はつげんする[31]。LTDは記憶きおく形成けいせいたすける反対はんたい長期ちょうき増強ぞうきょう(LTP)とはことなり、あたらしい記憶きおくつく能力のうりょく低下ていか関連かんれんしている。おおくのシナプスで発生はっせいするLTDとLTPの動的どうてきパターンは記憶きおく形成けいせいのコードを提供ていきょうする。長期ちょうきてき抑圧よくあつとそれにつづ活動かつどう低下ていかによるシナプスの記憶きおく形成けいせい重要じゅうよう側面そくめんである。ラットのうスライスでは、ねつまたはカプサイシンによるTRPV1の活性かっせいはLTDを誘発ゆうはつした一方いっぽうカプサゼピン英語えいごばんはLTDを誘発ゆうはつするカプサイシンの能力のうりょくをブロックした[31]脳幹のうかん (孤立こりつかく) では、TRPV1はずい頭蓋とうがい内臓ないぞう求心きゅうしんせい神経しんけいからのグルタミン酸ぐるたみんさん非同期ひどうきてきかつ自発じはつてき放出ほうしゅつ制御せいぎょし - 放出ほうしゅつプロセスは常温じょうおん活性かっせいであり、ゆえにいたみをともなねつでのTRPV1応答おうとうとはまったくことなる[32]。したがって、もしかするとてんかんの治療ちりょうとして、中枢ちゅうすう神経しんけいけいにおけるTRPV1の調節ちょうせつ治療ちりょう可能かのうせいがあるかもしれない (TRPV1はすでに末梢まっしょう神経しんけいけい鎮痛ちんつう標的ひょうてきになっている)。

相互そうご作用さよう

[編集へんしゅう]

TRPV1は以下いかのものと相互そうご作用さようすることがしめされている:

発見はっけん

[編集へんしゅう]

哺乳類ほにゅうるいこう神経しんけいぶし (DRG) ニューロンは、カプサイシンによって活性かっせいされ感熱かんねつせいイオンチャネルを発現はつげんすることがられていた[37]デヴィッド・ジュリアス研究けんきゅうグループは(そこで)、こう神経しんけいぶしニューロンで発現はつげんする遺伝子いでんしcDNAライブラリー英語えいごばん作成さくせいし、HEK-293細胞さいぼうでクローンを発現はつげんさせ、カプサイシンに反応はんのうして (HEK-293では通常つうじょう反応はんのうない)カルシウムが流入りゅうにゅうする細胞さいぼうさがした。すうかいのスクリーニングとライブラリーの分割ぶんかつのち、1997ねんにTRPV1チャネルをコードする単一たんいつのクローンが最終さいしゅうてき特定とくていされた[38]。これは特定とくていされた最初さいしょのTRPVチャネルであった。ジュリアスは自身じしん発見はっけんにより2021ねんのノーベル生理学せいりがく医学いがくしょう受賞じゅしょうした。

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

リファレンス

[編集へんしゅう]
  1. ^ “The capsaicin receptor: a heat-activated ion channel in the pain pathway”. Nature 389 (6653): 816–824. (October 1997). Bibcode1997Natur.389..816C. doi:10.1038/39807. PMID 9349813. 
  2. ^ “The genomic organization of the gene encoding the vanilloid receptor: evidence for multiple splice variants”. Genomics 76 (1–3): 14–20. (August 2001). doi:10.1006/geno.2001.6582. PMID 11549313. 
  3. ^ “International Union of Pharmacology. XLIX. Nomenclature and structure-function relationships of transient receptor potential channels”. Pharmacological Reviews 57 (4): 427–450. (December 2005). doi:10.1124/pr.57.4.6. PMID 16382100. 
  4. ^ “Structure of the TRPA1 ion channel suggests regulatory mechanisms”. Nature 520 (7548): 511–517. (April 2015). Bibcode2015Natur.520..511P. doi:10.1038/nature14367. PMC 4409540. PMID 25855297. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4409540/. 
  5. ^ “Irritant-evoked activation and calcium modulation of the TRPA1 receptor”. Nature 585 (7823): 141–145. (September 2020). Bibcode2020Natur.585..141Z. doi:10.1038/s41586-020-2480-9. PMC 7483980. PMID 32641835. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7483980/. 
  6. ^ “Cellular and molecular mechanisms of pain”. Cell 139 (2): 267–284. (October 2009). doi:10.1016/j.cell.2009.09.028. PMC 2852643. PMID 19837031. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2852643/. 
  7. ^ “Low-cost functional plasticity of TRPV1 supports heat tolerance in squirrels and camels”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 113 (40): 11342–11347. (October 2016). Bibcode2016PNAS..11311342L. doi:10.1073/pnas.1604269113. PMC 5056056. PMID 27638213. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5056056/. 
  8. ^ “The capsaicin receptor TRPV1 is a crucial mediator of the noxious effects of mustard oil”. Current Biology 21 (4): 316–321. (February 2011). doi:10.1016/j.cub.2011.01.031. PMID 21315593. 
  9. ^ “TRPV1 receptors in the CNS play a key role in broad-spectrum analgesia of TRPV1 antagonists”. The Journal of Neuroscience 26 (37): 9385–9393. (September 2006). doi:10.1523/JNEUROSCI.1246-06.2006. PMC 6674601. PMID 16971522. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6674601/. 
  10. ^ “An endogenous capsaicin-like substance with high potency at recombinant and native vanilloid VR1 receptors”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 99 (12): 8400–8405. (June 2002). Bibcode2002PNAS...99.8400H. doi:10.1073/pnas.122196999. PMC 123079. PMID 12060783. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC123079/. 
  11. ^ “[Let us be familiar with Hungarian medical literature]”. Orvosi Hetilap 130 (43): 2339. (October 1989). doi:10.1016/s1044-7431(03)00054-x. PMID 2812762. 
  12. ^ “Regulation of Ca2+-dependent desensitization in the vanilloid receptor TRPV1 by calcineurin and cAMP-dependent protein kinase”. The Journal of Biological Chemistry 280 (14): 13424–13432. (April 2005). doi:10.1074/jbc.M410917200. PMID 15691846. 
  13. ^ a b “Functional Role of Transient Receptor Potential Channels in Immune Cells and Epithelia”. Frontiers in Immunology 9: 174. (2018). doi:10.3389/fimmu.2018.00174. PMC 5808302. PMID 29467763. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5808302/. 
  14. ^ a b c d e “TRPV1 Channels in Immune Cells and Hematological Malignancies”. Ion Channels Down Under. Ion Channels DownUnder. 79. Academic Press. (2017-01-01). 173–198. doi:10.1016/bs.apha.2017.01.002. ISBN 9780128104132. PMID 28528668 
  15. ^ a b c d “Inflammation, Cancer and Immunity-Implication of TRPV1 Channel”. Frontiers in Oncology 9: 1087. (2019-10-16). doi:10.3389/fonc.2019.01087. PMC 6805766. PMID 31681615. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6805766/. 
  16. ^ a b c “Modulation of neuroinflammation: Role and therapeutic potential of TRPV1 in the neuro-immune axis”. Brain, Behavior, and Immunity 64: 354–366. (August 2017). doi:10.1016/j.bbi.2017.03.007. PMID 28342781. 
  17. ^ Boonen, Brett; Startek, Justyna B.; Talavera, Karel (2016-01-01). Chemical Activation of Sensory TRP Channels. Topics in Medicinal Chemistry. Springer Berlin Heidelberg. pp. 1–41. [1] doi:10.1007/7355_2015_98.
  18. ^ “Capsaicin (TRPV1 Agonist) therapy for pain relief: farewell or revival?”. The Clinical Journal of Pain 24 (2): 142–154. (February 2008). doi:10.1097/AJP.0b013e318158ed9e. PMID 18209521. 
  19. ^ Qutenza prescribing information”. 2011ねん11月23にち閲覧えつらん
  20. ^ a b “Chapter 3 - N-Acyl Amides: Ubiquitous Endogenous Cannabimimetic Lipids That Are in the Right Place at the Right Time” (英語えいご). The Endocannabinoidome. Boston: Academic Press. (2015-01-01). pp. 33–48. doi:10.1016/B978-0-12-420126-2.00003-1. ISBN 978-0-12-420126-2 
  21. ^ “Anandamide: some like it hot”. Trends in Pharmacological Sciences 22 (7): 346–349. (July 2001). doi:10.1016/s0165-6147(00)01712-0. PMID 11431028. 
  22. ^ “Antitumor activity of plant cannabinoids with emphasis on the effect of cannabidiol on human breast carcinoma”. The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 318 (3): 1375–1387. (September 2006). doi:10.1124/jpet.106.105247. PMID 16728591. 
  23. ^ a b “Effects of cannabinoids and cannabinoid-enriched Cannabis extracts on TRP channels and endocannabinoid metabolic enzymes”. British Journal of Pharmacology 163 (7): 1479–1494. (August 2011). doi:10.1111/j.1476-5381.2010.01166.x. PMC 3165957. PMID 21175579. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3165957/. 
  24. ^ “Vanilloid receptors on sensory nerves mediate the vasodilator action of anandamide”. Nature 400 (6743): 452–457. (July 1999). Bibcode1999Natur.400..452Z. doi:10.1038/22761. PMID 10440374. 
  25. ^ “The biosynthesis of N-arachidonoyl dopamine (NADA), a putative endocannabinoid and endovanilloid, via conjugation of arachidonic acid with dopamine”. Prostaglandins, Leukotrienes, and Essential Fatty Acids 81 (4): 291–301. (October 2009). doi:10.1016/j.plefa.2009.05.026. PMC 2757501. PMID 19570666. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2757501/. 
  26. ^ “N-oleoyldopamine, a novel endogenous capsaicin-like lipid that produces hyperalgesia”. The Journal of Biological Chemistry 278 (16): 13633–13639. (April 2003). doi:10.1074/jbc.m211231200. PMID 12569099. 
  27. ^ “A FAAH-regulated class of N-acyl taurines that activates TRP ion channels”. Biochemistry 45 (30): 9007–9015. (August 2006). doi:10.1021/bi0608008. PMID 16866345. 
  28. ^ a b c d e f g “Novel endogenous N-acyl amides activate TRPV1-4 receptors, BV-2 microglia, and are regulated in brain in an acute model of inflammation”. Frontiers in Cellular Neuroscience 8: 195. (2014-08-01). doi:10.3389/fncel.2014.00195. PMC 4118021. PMID 25136293. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4118021/. 
  29. ^ “TRPV1 channels as a newly identified target for vitamin D”. Channels 15 (1): 360–374. (December 2021). doi:10.1080/19336950.2021.1905248. PMC 8032246. PMID 33825665. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8032246/. 
  30. ^ “TRPV1 receptors in the central nervous system: potential for previously unforeseen therapeutic applications”. Current Pharmaceutical Design 14 (1): 42–54. (2008). doi:10.2174/138161208783330790. PMID 18220817. 
  31. ^ a b “TRPV1 channels mediate long-term depression at synapses on hippocampal interneurons”. Neuron 57 (5): 746–759. (March 2008). doi:10.1016/j.neuron.2007.12.027. PMC 2698707. PMID 18341994. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2698707/. 
  32. ^ “Primary afferent activation of thermosensitive TRPV1 triggers asynchronous glutamate release at central neurons”. Neuron 65 (5): 657–669. (March 2010). doi:10.1016/j.neuron.2010.02.017. PMC 2837850. PMID 20223201. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2837850/. 
  33. ^ “Structural determinant of TRPV1 desensitization interacts with calmodulin”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 100 (13): 8002–8006. (June 2003). Bibcode2003PNAS..100.8002N. doi:10.1073/pnas.1337252100. PMC 164702. PMID 12808128. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC164702/. 
  34. ^ a b “Regulated exocytosis contributes to protein kinase C potentiation of vanilloid receptor activity”. The Journal of Biological Chemistry 279 (24): 25665–25672. (June 2004). doi:10.1074/jbc.M311515200. PMID 15066994. 
  35. ^ a b “Cannabinoid-induced cell death in endometrial cancer cells: involvement of TRPV1 receptors in apoptosis”. Journal of Physiology and Biochemistry 74 (2): 261–272. (May 2018). doi:10.1007/s13105-018-0611-7. PMID 29441458. 
  36. ^ a b “"TRPV1 is a component of the atrial natriuretic signaling complex, and using orally delivered antagonists, presents a valid therapeutic target in the longitudinal reversal and treatment of cardiac hypertrophy and heart failure"”. Channels 13 (1): 1–16. (December 2019). doi:10.1080/19336950.2018.1547611. PMC 6298697. PMID 30424709. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6298697/. 
  37. ^ “Depolarizing responses to capsaicin in a subpopulation of rat dorsal root ganglion cells”. Neuroscience Letters 56 (1): 69–75. (May 1985). doi:10.1016/0304-3940(85)90442-2. PMID 4011050. 
  38. ^ “The capsaicin receptor: a heat-activated ion channel in the pain pathway”. Nature 389 (6653): 816–824. (October 1997). Bibcode1997Natur.389..816C. doi:10.1038/39807. PMID 9349813. 

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]