ソニーグループ(ソニーG)傘下のソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)は、車載LiDAR(レーザーレーダー)のリファレンスデザイン(参照設計)に米AMD(Advanced Micro Devices)のSoC(System on Chip)を採用した。SSSの受光素子とAMDの車載SoCによってLiDARの性能や品質を高め、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転システムの安全性の向上につなげる。
同リファレンスデザインでは、AMDの2種類の車載SoCとSSSのSPAD(Single Photon Avalanche Diode:単一光子アバランシェダイオード)と呼ばれる受光素子などを組み合わせる。両社の技術を持ち寄ることで、複雑な運転シナリオを正確に把握し、潜在的な危険を高い精度で特定できるとする。
SSSが採用したAMDの車載SoC
左が「Zynq UltraScale+ MPSoC」、右が「Artix-7」のイメージ。(画像:AMD)
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AMDの2つのSoCはともに、ユーザーがチップの回路構成を電気的に書き換えられるFPGA(Field Programmable Gate Array)ベースの製品だ。同社の中級グレード品「Zynq UltraScale+ MPSoC」(以下、Zynq)と下位グレード品「Artix-7」である。
Zynqは16nm世代のプロセスで造られる。日立Astemo(アステモ)やスウェーデンVeoneer(ヴィオニア)の前方監視用カメラ、デンソーの次世代LiDARなどにも採用されている。Artix-7は28nmプロセスを使い、ドイツContinental(コンチネンタル)のフラッシュ方式のメカレスLiDARなどにも搭載されている。
SSSが手掛けるSPADは、入射した1つの光子(フォトン)から電子を増幅させる「アバランシェ増倍」を利用する画素構造を持つ。これにより、弱い光でも検出できる。
SSSのLiDAR用受光素子「IMX459」
SPADと測距処理回路を1チップ化した。(写真:SSS)
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今回のLiDARのリファレンスデザインは、測距方式として「直接Time of Flight(dToF)」方式を採用する。光源から光を照射して対象物に反射した反射光を受光素子が検知するまでの時間差から、対象物までの距離を測る方式だ。高感度なSPADを受光素子に用いることで、LiDARの測距を長距離化できる。