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原生生物 - Wikipedia

原生げんせい生物せいぶつ

生物せいぶつ分類ぶんるいひとつで、きんかいにも植物しょくぶつかいにも動物どうぶつかいにもぞくさないかく生物せいぶつ総称そうしょう

原生げんせい生物せいぶつ(げんせいせいぶつ、Protist)とは、生物せいぶつ分類ぶんるいひとつで、かく生物せいぶつのうち、きんかいにも植物しょくぶつかいにも動物界どうぶつかいにもぞくさない生物せいぶつ総称そうしょうである。もともとは、かく単細胞たんさいぼう生物せいぶつ[3]、および、細胞さいぼうでも組織そしき程度ていどひく生物せいぶつをまとめるグループとしてかんがえられたものである。いくつかの分類ぶんるい体系たいけいなかみとめられているが、その場合ばあいたん系統けいとうとはかんがえておらず、現在げんざいではみとめないことがおおい。

原生げんせい生物せいぶつかい
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 原生げんせい生物せいぶつかい Protista
Haeckel, 1866
下位かい分類ぶんるい[2]

概要がいよう

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単細胞たんさいぼうのもののほかに、細胞さいぼうであっても、ごくちいさくて微生物びせいぶつとしてあつかわれるものがおおいが、褐藻かっそうるい褐藻かっそう植物しょくぶつもんコンブなど)、べに藻類そうるいべに植物しょくぶつもんテングサアマノリなど)のような大型おおがたになるものもある。また、細胞さいぼうせいねばきんのように、単細胞たんさいぼう独立どくりつして食物しょくもつ摂取せっしゅする期間きかんと、細胞さいぼう実体じったい形成けいせいする期間きかん双方そうほう生活せいかつのうちにもつ生物せいぶつぞくしている。

原生げんせい生物せいぶつかいには以下いかよう生物せいぶつふくまれる。

原生げんせい生物せいぶつは、水中すいちゅうみずおおふく土壌どじょうちゅう生息せいそくしている。陸上りくじょうでも、ひなたやいわうえなど、乾燥かんそうつよ場所ばしょでも、地衣ちいるいのように生物せいぶつ共生きょうせいしたり、乾燥かんそうしているときは休眠きゅうみんして、みずがあるときだけに活動かつどうするなどの方法ほうほう生活せいかつしているものがある。生物せいぶつ寄生きせいして生活せいかつするたねもいる。動物どうぶつちょうなどのなかにも、特殊とくしゅなものが生息せいそくしているが、寄生きせい場合ばあい共生きょうせい関係かんけいがある場合ばあい不明ふめい場合ばあいなど、様々さまざまである。ちょうないすなどろそう内部ないぶは、有機物ゆうきぶつ豊富ほうふで、酸素さんそがきわめてすくない。これを、植物しょくぶつ出現しゅつげん以前いぜん地球ちきゅうじょう環境かんきょうちかいとみなして、そのような条件じょうけん生息せいそくしていた生物せいぶつの、現在げんざいにおける生息せいそくであるときもある。

ふるくから、生物せいぶつ動物どうぶつさかいうごいてえさるもの)と植物しょくぶつさかい動物どうぶつではないもの)に2ふんするかいせつ生物せいぶつ分類ぶんるいほう主流しゅりゅうであった。この場合ばあい菌類きんるい当然とうぜんのように植物しょくぶつかんがえられており、このような判断はんだんで、とく問題もんだいしょうじていなかった。

この状況じょうきょうアントニ・ファン・レーウェンフック微生物びせいぶつ発見はっけんしたことでおおきく変化へんかした。かれ発見はっけんのちおおくの研究けんきゅうしゃ様々さまざま微生物びせいぶつ発見はっけんしていった。それらの生物せいぶつのなかには、アオミドロのように、うごかず、光合成こうごうせいしている植物しょくぶつなせるもの、ゾウリムシのように活発かっぱつ運動うんどうし、えさべる動物どうぶつとみなせるたねカビのように胞子ほうし形成けいせいする菌類きんるいとみなせるたねなど、それまでのわくにおさまるものもあった。

ところが、たとえばミドリムシのように、光合成こうごうせい能力のうりょくがありながらもむち運動うんどうをする動物どうぶつとも植物しょくぶつともつかないもの、変形へんけいきんのように胞子ほうしつく菌類きんるいのようでありながら、栄養えいようたいはアメーバ運動うんどうをしてえさべる動物どうぶつのようなもの、珪藻けいそうのように、かたからち、光合成こうごうせいをしながら、移動いどう能力のうりょくがあるもの、といったふうに、これまでの枠組わくぐみにおさまりきれない生物せいぶつ多数たすう発見はっけんされた。

19世紀せいきはいり、エルンスト・ヘッケル動物どうぶつとも植物しょくぶつともとれる原始げんしてき生物せいぶつを3番目ばんめ生物せいぶつかい原生げんせい生物せいぶつかいとして分離ぶんりし、動物界どうぶつかい植物しょくぶつかい原生げんせい生物せいぶつかい三界さんがいとした(三界さんがいせつ)。 当初とうしょヘッケルが原生げんせい生物せいぶつかい分類ぶんるいした生物せいぶつ細菌さいきんるい菌類きんるい単細胞たんさいぼう藻類そうるい原生動物げんせいどうぶつ海綿動物かいめんどうぶつであったが、のち単細胞たんさいぼう生物せいぶつ限定げんていした。

1959ねんロバート・ホイッタカー生物せいぶつモネラかい原生げんせい生物せいぶつかい植物しょくぶつかいきんかい動物どうぶつかいの5かい分類ぶんるいするかいせつ提唱ていしょうした[4]かれかんがえは、生物せいぶつ進化しんかおおきく3つの方向ほうこうがあるとかんがえたことである。ひとつは、光合成こうごうせいをして、うごかずに生活せいかつする植物しょくぶつ方向ほうこう、2番目ばんめ運動うんどうしてえさべる動物どうぶつ方向ほうこう、3番目ばんめに、からだ表面ひょうめん有機物ゆうきぶつかして吸収きゅうしゅうして生活せいかつする菌類きんるい方向ほうこうである。かれはまず、細胞さいぼう構造こうぞうことなる原核げんかく生物せいぶつ区別くべつし、前述ぜんじゅつの3つの方向ほうこう進化しんかして、よく発達はったつした構造こうぞうった仲間なかまをそれぞれに植物しょくぶつかい動物界どうぶつかいきんかいとしてまとめた。そして、単細胞たんさいぼう生物せいぶつでは、それぞれが3つのどれかの方向ほうこう進化しんかしてきたのだとしても、その程度ていどひくいので区別くべつむずかしい状態じょうたいであるとして、まとめて原生げんせい生物せいぶつかい名付なづけた。つまり、系統的けいとうてきにまとまっているとなしたわけではなく、発達はったつ段階だんかいけたということである。

当初とうしょ原生げんせい生物せいぶつかい単細胞たんさいぼう生物せいぶつのみをふくんでいたが、その、ホイッタカーやリン・マーギュリスらによって、かく細胞さいぼう生物せいぶつふくめたさい定義ていぎがなされた。この定義ていぎによると原生げんせい生物せいぶつは「はいつくらず、組織そしき分化ぶんかまたは形成けいせいおこなわず、波動はどうむち)をもつ場合ばあい微小びしょうかんが9+2構造こうぞう配列はいれつするかく生物せいぶつ」と定義ていぎされる。従来じゅうらい原生げんせい生物せいぶつかい学名がくめいは Protista(プロティスタ)とされてきたが、上記じょうきかく細胞さいぼう生物せいぶつふくめた分類ぶんるいでは学名がくめいを Protoctista(プロトクティスタ)とすることがある。

かいせつ以降いこう展開てんかい

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近年きんねんむち毛根もうこん構造こうぞうなどの細胞さいぼうない微細びさい構造こうぞう遺伝子いでんし解析かいせきつうじて生物せいぶつあいだ系統けいとう解析かいせきする方法ほうほう進歩しんぽにより、原生げんせい生物せいぶつなかでも類縁るいえん関係かんけい検討けんとうすすんでいる。また、細胞さいぼうない共生きょうせいせつ想定そうていしていなかった、かく細胞さいぼうあいだでの細胞さいぼうない共生きょうせい発見はっけんおおきな影響えいきょうりょくっている。

そうしたなかトーマス・キャバリエ=スミスはちかいせつ提出ていしゅつし、原生げんせい生物せいぶつかいをさらにみっつにけた。それによると、褐藻かっそう植物しょくぶつふく黄色おうしょく植物しょくぶつなどの藻類そうるいぐんは、かく細胞さいぼう由来ゆらいみどりたいち、さらにみどりたいたないたまごきんるいラビリンチュラるいとともに、むち前方ぜんぽうかうマスチゴネマをはねがたのものと後方こうほうかうむちがたのものの2ほんがセットになっているてん共通きょうつうし、これらがたんけいぐんをなすということで、さらに体制たいせい共通きょうつうてんがあるハプトるいクリプトるいわせ、これをクロミスタかいとして独立どくりつさせた。また、ほろ胞子ほうしちゅうふくむいくつかの単細胞たんさいぼう生物せいぶつミトコンドリアたず、これをミトコンドリアが共生きょうせいする以前いぜんかく細胞さいぼう生物せいぶつのこりと判断はんだんし、これをアーケゾアさかいとした。のこりの原生げんせい生物せいぶつかいのものは、原生動物げんせいどうぶつさかいというあたえている。ただし、アーケゾアかいには疑問ぎもんこえもあり、ミトコンドリアをたないのは、てき退化たいかしたのだとの指摘してきがある。キャバリエ=スミス自身じしんもその撤回てっかいしている。

現在げんざいもこれらの生物せいぶつ分類ぶんるいについては見直みなおしがつづいている。他方たほうで2011ねん現在げんざい日本にっぽん高等こうとう学校がっこう教科書きょうかしょにおいては、かいせつはひとまず標準ひょうじゅんとしての位置いちたもっており、原生げんせい生物せいぶつについては生物せいぶつ教科書きょうかしょあつかっている。しかし、1990ねんカール・ウーズ生物せいぶつかい細菌さいきん細菌さいきんかく生物せいぶつの3つに大別たいべつする3ドメインせつ発表はっぴょうするとこれが主流しゅりゅうとなり、原生げんせい生物せいぶつかく生物せいぶつドメインのなかふくまれることとなった[3]

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ “Microbial predators form a new supergroup of eukaryotes”. Nature 612 (7941): 714–719. (2022). Bibcode2022Natur.612..714T. doi:10.1038/s41586-022-05511-5. PMID 36477531. 
  2. ^ “Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes”. Journal of Eukaryotic Microbiology 66 (1): 4–119. (2019). doi:10.1111/jeu.12691. PMC 6492006. PMID 30257078. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6492006/. 
  3. ^ a b c d 人間にんげんのための一般いっぱん生物せいぶつがく」p18 武村たけむら政春まさはる はなぼう 2010ねん3がつ10日とおかだい3はんだい1さつ
  4. ^ 人間にんげんのための一般いっぱん生物せいぶつがく」p17 武村たけむら政春まさはる はなぼう 2010ねん3がつ10日とおかだい3はんだい1さつ

外部がいぶリンク

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