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アポロ6ごう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
アポロ6ごう
ミッションめい アポロ6ごう
発射はっしゃ基地きち ケネディ宇宙うちゅうセンターだい39発射はっしゃ施設しせつ
発射はっしゃ日時にちじ 1968ねん4がつ4にち
12:00:01(UTC
帰還きかん日時にちじ 1968ねん4がつ4にち
21:57:21(UTC
飛行ひこう時間じかん 9あいだ57ふん20びょう
地球ちきゅう周回しゅうかい回数かいすう 3しゅう
そう飛行ひこう距離きょり やく144,000km
きん地点ちてん 178km
遠地点えんちてん 367km
地球ちきゅう周回しゅうかい時間じかん 88.2ふん
軌道きどう傾斜けいしゃかく 32.5
宇宙船うちゅうせんそう重量じゅうりょう 36,932kg

アポロ6ごう(アポロ6ごう。英語えいご: Apollo 6)は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくアポロ計画けいかくにおいて、2かいおこなわれたサターンV がたロケット無人むじん発射はっしゃ実験じっけんである。

目的もくてき

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今回こんかい目的もくてきは、きたるべきサターンV の有人ゆうじん飛行ひこうアポロ8ごう)にそなえた最後さいご無人むじん発射はっしゃ実験じっけんであった(そのまえアポロ7ごうには、サターンV よりも一回ひとまわちいさいサターンIB がたロケット使用しようされた)。もうひとつの重要じゅうよう目的もくてきとして、司令しれいせんつきからの帰還きかんにおける最悪さいあく状態じょうたい想定そうていして大気圏たいきけんさい突入とつにゅうさせる実験じっけんがあったが、ロケットエンジン不調ふちょうのため実現じつげんされなかった。

準備じゅんび段階だんかい

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VAB(ロケット組立くみたてとう

1967ねん3月13にち、まずはじめにだいいちだんロケットS-IC と、だいさんだんS-IVB およびロケットの自動じどう操縦そうじゅう装置そうちケープ・カナベラル到着とうちゃくし、S-IC はただちにVAB(Vehicle Assembly Building, ロケット組立くみたてとう)のなか発射はっしゃだいうえ設置せっちされた。5月24にちだいだんS-II到着とうちゃくし、7がつ7にち設置せっちされるまでは、だいだん代用だいようとしてダンベルのようなかたちをしたスペーサーがかれ、電気でんき系統けいとうとう点検てんけん作業さぎょうすすめられた。だがじつはこの時点じてんで、VABのなかではアポロ4ごう準備じゅんび同時どうじすすめられていた。VABはいちに4のサターンV をてることはできるが、点検てんけんするための機器ききいち系統けいとうしか用意よういされていなかったため、6ごう作業さぎょう遅々ちちとしてすすまなかった。

アポロ司令しれい機械きかいせん到着とうちゃくしたのは9月29にちで、ロケットじょう設置せっちされたのは12月10にちだった。この宇宙船うちゅうせんは、CSM-014とCSM-020の混成こんせいひんであった。014の司令しれいせんアポロ1ごう火災かさい焼失しょうしつし、020の機械きかいせんはタンクの爆発ばくはつ事故じこ破壊はかいされたため、それぞれののこった司令しれいせん機械きかいせんわせてつくられたのである。2ヶ月かげつあいだにわたる試験しけんのち、アポロ6ごうが39A発射はっしゃだい設置せっちされたのは1968ねん2がつ6にちのことであった。

飛行ひこう

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発射はっしゃ

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アポロ6ごう発射はっしゃ瞬間しゅんかん
サターンV 自動じどう操縦そうじゅう装置そうち

完璧かんぺきちかかったアポロ4ごうくらべ、6ごう最初さいしょから問題もんだい連続れんぞくであった。発射はっしゃから2ふんに、ロケットには30秒間びょうかんにわたり共振きょうしん現象げんしょう発生はっせいした。この原因げんいんについて、当時とうじNASA長官ちょうかんであったジョージ・ミューラーは、公聴こうちょうかい以下いかのように説明せつめいしている。

共振きょうしん現象げんしょうは、根本こんぽんてきにはロケットエンジンの推力すいりょく均一きんいつであったために発生はっせいいたしました。これは通常つうじょう、ロケットに特有とくゆう現象げんしょうで、燃焼ねんしょう完全かんぜん均一きんいつにはおこなわれないため、一般いっぱん騒音そうおんばれるものを発生はっせいさせるところのものであります。そのためだい一段いちだんでは、すべてのロケットが燃焼ねんしょうするさい共通きょうつうしてられる特性とくせいとして、推力すいりょく均衡きんこうしょうじました。

ところでロケットエンジンは、燃料ねんりょうタンクからパイプをとおして、その内部ないぶ燃料ねんりょう供給きょうきゅうされるものであります。これらのパイプは、ちょうど教会きょうかいのいわゆるパイプオルガンのようなもので、それぞれ固有こゆう振動しんどうすうち、また実際じっさいに、パイプオルガンのように振動しんどう発生はっせいさせるものであります。

このようなロケットの構造こうぞうは、あたかも音叉おんさのようなものでありまして、衝撃しょうげきくわえれば容易よういたて方向ほうこう振動しんどういたします。これらのことをかんがわせるに、様々さまざま振動しんどう相互そうご作用さようした結果けっか機体きたい共振きょうしんさせたのではないかとかんがえられるところであります……

この共振きょうしんにより、ロケットと宇宙船うちゅうせん接続せつぞく部分ぶぶん構造こうぞうてき問題もんだい発生はっせいした。航空こうくうカメラが撮影さつえいした映像えいぞうは、発射はっしゃから133びょうにいくつかの部品ぶひん脱落だつらくする場面ばめんをとらえていた。

だい一段いちだんはなだいだんのS-II にも問題もんだい発生はっせいした。5あるうちの2ばんエンジンが、発射はっしゃ206びょうから319びょうにかけて不調ふちょうになり、412びょう完全かんぜん停止ていしし、その2びょうに3ばんエンジンも同様どうよう停止ていししてしまったのである。このため機体きたい搭載とうさいされていた自動じどう操縦そうじゅう装置そうち作動さどうし、通常つうじょうよりもだいだんロケットを58びょうだいさんだんのS-IVB ロケットを29びょうなが噴射ふんしゃさせた。

そのS-IC はフロリダ東方とうほう東経とうけい7419ふん北緯ほくい3012ぶん大西おおにしひろしうえ落下らっかし、S-II は東経とうけい3211ふん北緯ほくい3112ぶん北大西洋きたたいせいよううえアゾレス諸島しょとうポルトガル南部なんぶ落下らっかした。

軌道きどう

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宇宙船うちゅうせん当初とうしょ予定よていされていた高度こうど160kmの円軌道えんきどうからはおおきくはずれて、きん地点ちてん178km、遠地点えんちてん367kmの楕円だえん軌道きどうった。しかも地球ちきゅうしゅうしたのちだいさんだんロケットがさい点火てんかしなかったため、予定よていされていたつき軌道きどうることはできなかった。

それでも当初とうしょ目的もくてき可能かのうかぎ達成たっせいさせるために、機械きかいせんのロケットを442秒間びょうかん噴射ふんしゃして遠地点えんちてん22,200kmの楕円だえん軌道きどう投入とうにゅうすることが決定けっていされたが、このような長時間ちょうじかん噴射ふんしゃは、実際じっさいつき飛行ひこう計画けいかくではありえないことであった。しかしながら、これでも燃料ねんりょう不足ふそくしていたため、大気圏たいきけんさい突入とつにゅう速度そくど予定よていされていた秒速びょうそく11,270mにはおよばない、秒速びょうそく10,000mであった。着水ちゃくすいてん予定よてい海域かいいきより80kmはずれたため、強襲きょうしゅう揚陸ようりくかんオキナワ(USS Okinawa)が司令しれいせん回収かいしゅうしたのは10あいだであった。だいさんだんは1968ねん4がつ25にち大気圏たいきけんさい突入とつにゅうした。

問題もんだい原因げんいん

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液体えきたい燃料ねんりょうロケット 略図りゃくず

だい一段いちだん共振きょうしん原因げんいん判明はんめいしており、ロケットにはさい調整ちょうせい必要ひつようであるとかんがえられた。燃料ねんりょう酸化さんかざいポンプ供給きょうきゅうラインの空洞くうどうは、圧力あつりょく調整ちょうせい装置そうちから供給きょうきゅうされるヘリウムガスたされているが、振動しんどう減衰げんすいさせるために圧力あつりょくげられた。

だんロケットのエンジン不調ふちょう原因げんいんは、燃焼ねんしょうしつ燃料ねんりょう供給きょうきゅうするパイプの破断はだんであることがめられた。J-2 エンジンの燃焼ねんしょうしつとは、本質ほんしつてきには膨張ぼうちょうしつノズル)の隔壁かくへきうえ設置せっちされた繊細せんさい構造こうぞうぶつであり、ほそく、複雑ふくざつんだパイプによって液体えきたい酸素さんそ液体えきたい水素すいそ供給きょうきゅうされている(略図りゃくず参照さんしょう)。今回こんかい飛行ひこうでは3ばんエンジンが燃焼ねんしょうしているとき、その振動しんどうによって液体えきたい水素すいそのパイプが破壊はかいされ、その結果けっか燃焼ねんしょうしつには酸素さんそだけが供給きょうきゅうされることとなった。通常つうじょう、J-2 エンジンは燃焼ねんしょうしつ温度おんどげるために液体えきたい水素すいそ供給きょうきゅう過多かたにしているが、水素すいそ遮断しゃだんされ酸素さんそ充満じゅうまんしたことによって燃焼ねんしょうしつない温度おんど局所きょくしょてき上昇じょうしょうし、ついには破壊はかいにつながったのである。

圧力あつりょく突然とつぜん低下ていか自動じどう操縦そうじゅう装置そうち検知けんちされ、ただちに燃焼ねんしょう停止ていし指令しれいおくられたが、不幸ふこうなことに3ばんエンジンに指令しれいおく配線はいせんは、2ばんエンジンと共通きょうつうのものが使つかわれていた。そのため圧力あつりょくセンサーは2ばんエンジンに停止ていし指令しれいおくると、ただちに3ばんエンジンにもおな信号しんごうおくったのである。

燃焼ねんしょうしつ問題もんだいは、地上ちじょう試験しけんでは発見はっけんすることは困難こんなんであった。なぜなら、地上ちじょうでは燃料ねんりょうパイプのなかながれるきょく低温ていおん液体えきたい水素すいそによって空気くうきちゅう水蒸気すいじょうき凝結ぎょうけつし、パイプを保護ほごするステンレスあみこおりおおわれてしまうからである。振動しんどう問題もんだいは、故障こしょう発生はっせいした箇所かしょのステンレスのパイプを交換こうかんすることで、次回じかい飛行ひこうでは明白めいはく改善かいぜんされた。なお、だいさんだんS-IVB はだいだん同様どうようJ-2エンジンを使用しようしているので、おな原因げんいんさい点火てんかしなかったのであろうと結論けつろんづけられた。

宇宙船うちゅうせんとロケットの接続せつぞく部分ぶぶん問題もんだいは、ハニカム構造こうぞう原因げんいんであった。ロケットが大気圏たいきけんうち加速かそくしているときつき着陸ちゃくりくせん格納かくのうしつ大気たいきあつがることによって膨張ぼうちょうしようとする。これが破壊はかい原因げんいんとなりることが判明はんめいしたため、次回じかい飛行ひこうからは格納かくのうしつには減圧げんあつようしょうまどけることが決定けっていされた。

アポロ6ごう発生はっせいしたしょ問題もんだいは、有人ゆうじん飛行ひこうであれば飛行ひこう緊急きんきゅう脱出だっしゅつさせる事態じたいになりるほどのものであったが、そこからられたデータははかれないほど貴重きちょうなものであった。事実じじつ、こののち発射はっしゃされた11のサターンV は、深刻しんこく事故じここすことはいちもなかったのである。

映像えいぞう

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だい一段いちだんだいだん接続せつぞくリングのはなし(NASA)

ドキュメンタリー番組ばんぐみなどで非常ひじょうにしばしば使つかわれる、ロケットのはなしを撮影さつえいした有名ゆうめいこの映像えいぞうは、アポロ4ごうおよび6ごうのものである。このうち、後半こうはん部分ぶぶんの「S-IV-B Staging」が6ごうのものになる。このなかられる白色はくしょくこうえきさんえきすいロケットの排気はいきガスである高温こうおん水蒸気すいじょうきで、あかほのお切離きりはなよう固体こたい燃料ねんりょうロケット排気はいきガスである。なお、この映像えいぞうは15ばいそく撮影さつえいされている。フィルムを収容しゅうようしたカプセルは宇宙うちゅう空間くうかんはなされ、大気圏たいきけんさい突入とつにゅうしたのちパラシュート着水ちゃくすいしたが、2あったうちの1個いっこ回収かいしゅうできなかった。

またこれとはべつに、発射はっしゃだいからはなれるサターンVの本体ほんたいや、排気はいきガスを噴射ふんしゃするエンジンを様々さまざま角度かくどから近接きんせつ撮影さつえいした映像えいぞうアポロ11ごうなどの発射はっしゃ場面ばめんとしてテレビ番組ばんぐみ紹介しょうかいされることがあるが、それらのほとんどは、実際じっさいはこの6ごうのものである。映像えいぞう見分みわける方法ほうほう簡単かんたんで、機械きかいせんは6ごうだけが唯一ゆいいつ白色はくしょくであり、のすべてのアポロ飛行ひこうでは銀色ぎんいろであった。

社会しゃかいてき影響えいきょう

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6ごう発射はっしゃされたちょうどそのおなに、テネシーしゅうメンフィスキング牧師ぼくし暗殺あんさつされる事件じけんこったため、社会しゃかいてきにはほとんど注目ちゅうもくされることはなかった。またこの5にちには、ジョンソン大統領だいとうりょうさい立候補りっこうほしないことを表明ひょうめいした。



現在げんざい

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アポロ6ごう司令しれいせん

6ごう司令しれいせんは、現在げんざいジョージアしゅうアトランタ博物館はくぶつかん展示てんじされている。すぐちかくには、キング牧師ぼくし墓地ぼちがある。

外部がいぶリンク

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