ステンレス鋼 こう を使 つか った、カトラリー 、食器 しょっき 、鍋 なべ 、ワイン醸造 じょうぞう タンク、アーチ 、鉄道 てつどう 車両 しゃりょう 、手 て すり 、駅 えき 。
ステンレス鋼 こう (ステンレスこう、英 えい : stainless steel )とは、鉄 てつ に一定 いってい 量 りょう 以上 いじょう のクロム を含 ふく ませた腐食 ふしょく に対 たい する耐 たい 性 せい を持 も つ合金 ごうきん 鋼 こう である。規格 きかく などでは、クロム含有 がんゆう 量 りょう が 10.5 %(質量 しつりょう パーセント濃度 のうど )以上 いじょう 、炭素 たんそ 含有 がんゆう 量 りょう が 1.2 % 以下 いか の鋼 はがね と定義 ていぎ される。単 たん にステンレス とも呼 よ ばれ、かつては不銹鋼 ふしゅうこう (ふしゅうこう)と呼 よ ばれていた。1910年代 ねんだい 前半 ぜんはん ごろに発明 はつめい ・実用 じつよう 化 か された 。
ステンレス鋼 こう の腐食 ふしょく に対 たい する耐 たい 性 せい (耐食性 たいしょくせい )の源 みなもと は含有 がんゆう されているクロムで、このクロムによって不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく と呼 よ ばれる数 かず ナノメートル の極 きわ めて薄 うす い皮膜 ひまく が表面 ひょうめん に形成 けいせい されて、金属 きんぞく 素地 そじ が腐食 ふしょく から保護 ほご されている。不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく は傷 きず ついても一般 いっぱん 的 てき な環境 かんきょう であればすぐに回復 かいふく し、一般 いっぱん 的 てき な普通 ふつう 鋼 こう であれば錆 さ びるような環境 かんきょう でもステンレス鋼 こう が錆 さ びることはない。ただし、万能 ばんのう な耐食性 たいしょくせい を持 も つわけではなく、特 とく に孔 あな 食 しょく 、すきま腐食 ふしょく 、応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ といった局部 きょくぶ 的 てき な腐食 ふしょく は問題 もんだい となり得 え る。特 とく に塩化 えんか 物 ぶつ イオン環境 かんきょう には注意 ちゅうい を要 よう する。また、ステンレス鋼 こう は高温 こうおん 腐食 ふしょく に対 たい しても耐 たい 性 せい が高 たか く、耐 たい 熱 ねつ 鋼 こう としても位置 いち づけられる。
一口 ひとくち にステンレス鋼 こう と言 い っても、実際 じっさい には多様 たよう なステンレス鋼 こう の種類 しゅるい が存在 そんざい しており、耐食性 たいしょくせい がより高 たか い鋼 はがね 種 しゅ 、高 こう 強度 きょうど な鋼 はがね 種 しゅ 、磁性 じせい を持 も つ鋼 はがね 種 しゅ 、非 ひ 磁性 じせい (常 つね 磁性 じせい )の鋼 はがね 種 しゅ 、極 ごく 低温 ていおん でも脆 もろ 化 か しない鋼 はがね 種 しゅ などがある。特 とく に主要 しゅよう 金属 きんぞく 組織 そしき をもとにして「オーステナイト系 けい ステンレス鋼 こう 」「フェライト系 けい ステンレス鋼 こう 」「マルテンサイト系 けい ステンレス鋼 こう 」「オーステナイト・フェライト系 けい ステンレス鋼 こう 」「析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい ステンレス鋼 こう 」の5つで大別 たいべつ されている。クロム以外 いがい にも、ニッケル を筆頭 ひっとう に、特性 とくせい 向上 こうじょう のために様々 さまざま な元素 げんそ が添加 てんか される。
ステンレス鋼 こう の製造 せいぞう 上 じょう は、炭素 たんそ の効率 こうりつ 的 てき な除去 じょきょ が特 とく に重要 じゅうよう なポイントとなる。成形 せいけい 、溶接 ようせつ 、切削 せっさく といった加工 かこう 上 じょう も、普通 ふつう 鋼 こう とはいくらか異 こと なる面 めん がある。日 にち 用品 ようひん から産業 さんぎょう 用 よう に至 いた る幅広 はばひろ い分野 ぶんや でステンレス鋼 こう が使 つか われており、耐食性 たいしょくせい により金属 きんぞく 素地 そじ を露出 ろしゅつ して利用 りよう 可能 かのう なため、意匠 いしょう 的 てき な利用 りよう も多 おお い。
定義 ていぎ と名称 めいしょう [ 編集 へんしゅう ]
ステンレス鋼 こう とは、鉄 てつ にクロム が一定 いってい 量 りょう 以上 いじょう 添加 てんか された錆 さ びにくい合金 ごうきん の一種 いっしゅ といえる[1] 。鉄鋼 てっこう 材料 ざいりょう の中 なか では、高 こう 合金 ごうきん 鋼 こう または特殊 とくしゅ 鋼 こう に位置 いち づけられる。後述 こうじゅつ のように、含 ふく まれるクロムがステンレス鋼 こう の耐食性 たいしょくせい の主 しゅ たる源 みなもと で、現在 げんざい の国際 こくさい 的 てき な定義 ていぎ では、ステンレス鋼 こう は「クロム含有 がんゆう 量 りょう が 10.5 % 以上 いじょう 、炭素 たんそ 含有 がんゆう 量 りょう が 1.2 % 以下 いか の合金 ごうきん 鋼 こう 」と定 さだ められている。
このステンレス鋼 こう の定義 ていぎ は、国際 こくさい 統一 とういつ のために1988年 ねん に世界 せかい 税関 ぜいかん 機構 きこう によって導入 どうにゅう され、現在 げんざい に至 いた っている[5] 。国際 こくさい 標準 ひょうじゅん 規格 きかく (ISO) や 日本 にっぽん 産業 さんぎょう 規格 きかく (JIS) でも、同様 どうよう の定義 ていぎ が現在 げんざい では採用 さいよう されている[6] [7] 。以前 いぜん は、クロム含有 がんゆう 量 りょう が約 やく 12 %以上 いじょう で十分 じゅうぶん な耐食性 たいしょくせい が発揮 はっき されると認識 にんしき されており、ステンレス鋼 こう に必要 ひつよう なクロムの最低 さいてい 含有 がんゆう 量 りょう は約 やく 13 % や約 やく 12 % などとされていた。技術 ぎじゅつ の向上 こうじょう によって炭素 たんそ 、窒素 ちっそ 、硫黄 いおう などの耐食性 たいしょくせい を低下 ていか させる元素 げんそ の含有 がんゆう を減 へ らせるようになったため、定義 ていぎ 上 じょう のクロムの最低 さいてい 含有 がんゆう 量 りょう が 10.5 % で十分 じゅうぶん となった。
「ステンレス鋼 こう 」という名 な は、英語 えいご の名称 めいしょう "stainless steel" の音訳 おんやく に由来 ゆらい する[10] 。stainless steel という名 な は、ステンレス鋼 こう を最初 さいしょ に実用 じつよう 化 か した一人 ひとり であるイギリスのハリー・ブレアリー によって、より正確 せいかく には、ブレアリーの鋼 はがね の耐食性 たいしょくせい を確認 かくにん した刃物 はもの 技師 ぎし のアーネスト・スチュアートによって名付 なづ けられた[12] [13] 。1914年 ねん にスチュアートがブレアリーが開発 かいはつ した鋼 はがね を「より変色 へんしょく しにくい (stains less)」と評 ひょう した記録 きろく が残 のこ っており、それがステンレス鋼 こう に対 たい して「ステンレス」という言葉 ことば が使 つか われた最初 さいしょ だと推定 すいてい される[12] 。
日本語 にほんご では、かつては「不銹鋼 ふしゅうこう (ふしゅうこう)」という名 な でも呼 よ ばれていた[14] 。現在 げんざい では、短 みじか く「ステンレス」と呼 よ ぶことも多 おお い。業界 ぎょうかい 用語 ようご として、さらに省略 しょうりゃく して「ステン」と呼 よ んだり、ステンレス鋼 こう のJISの材料 ざいりょう 記号 きごう がSUSであることから「サス」と呼 よ んだりもする[16] 。
イギリスで発明 はつめい されたステンレス鋼 こう について伝 つた える、1915年 ねん 1月 がつ 31日 にち 付 づけ のニューヨークタイムズ 記事 きじ
ステンレス鋼 こう が発明 はつめい 、実用 じつよう 化 か されたのは、20世紀 せいき 初頭 しょとう の1910年代 ねんだい のことである。18世紀 せいき に元素 げんそ としてのクロムが発見 はっけん され、19世紀 せいき 中 ちゅう にステンレス鋼 こう 発明 はつめい につながる多 おお くの重要 じゅうよう な基礎 きそ 研究 けんきゅう 成果 せいか があり、それらをもとにステンレス鋼 こう の発明 はつめい が達成 たっせい できたといえる。1900年代 ねんだい には、フランスのレオン・ギレ やドイツのフィリップ・モンナルツが鉄 てつ ・クロム合金 ごうきん についての特筆 とくひつ すべき学術 がくじゅつ 的 てき 成果 せいか をまとめ、ステンレス鋼 こう 発明 はつめい の土台 どだい が整 ととの いつつあった。
後述 こうじゅつ のように、ステンレス鋼 こう は金属 きんぞく 組織 そしき 別 べつ に大 おお きく5つに分類 ぶんるい される。1912年 ねん 、オーステナイト系 けい ステンレス鋼 こう がドイツのベンノ・シュトラウス (ドイツ語 ご 版 ばん ) とエドゥアルト・マウラー (ドイツ語 ご 版 ばん ) によって発明 はつめい された。そして1913年 ねん 、マルテンサイト系 けい ステンレス鋼 こう が、上述 じょうじゅつ のイギリスのハリー・ブレアリー によって発明 はつめい された[21] 。フェライト系 けい ステンレス鋼 こう もこの頃 ころ に発明 はつめい されたが、フェライト系 けい ステンレス鋼 こう の場合 ばあい は誰 だれ を発明 はつめい 者 しゃ とするかは決 き め難 がた い。フランスのアルバート・ポートヴァン (ドイツ語 ご 版 ばん ) 、米国 べいこく のクリスチャン・ダンチゼン 、米国 べいこく のエルウッド・ヘインズ (英語 えいご 版 ばん ) などがフェライト系 けい ステンレス鋼 こう の発明 はつめい 者 しゃ として挙 あ げられる[21] 。以上 いじょう のようにステンレス鋼 こう には多 おお くの発見 はっけん 者 しゃ ・発明 はつめい 者 しゃ が居 い たが、ステンレス鋼 こう の発明 はつめい 者 しゃ として一人 ひとり を挙 あ げるときにはハリー・ブレアリーの名 な を挙 あ げることが多 おお い[13] 。
実用 じつよう 化 か 後 ご から、ステンレス鋼 こう は耐食性 たいしょくせい およびその他 た 特性 とくせい を活 い かして、産業 さんぎょう 用 よう から家庭 かてい 用 よう まで様々 さまざま な用途 ようと で需要 じゅよう を伸 の ばしてきた。新 あら たな機能 きのう ・特性 とくせい を持 も った鋼 はがね 種 しゅ の開発 かいはつ が行 おこな われ、ステンレス鋼 こう の種類 しゅるい も豊富 ほうふ に増 ふ えていった。オーステナイト・フェライト系 けい ステンレス鋼 こう は1930年代 ねんだい に、析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい ステンレス鋼 こう は1940年代 ねんだい に実用 じつよう 化 か された。同時 どうじ に、ステンレス鋼 こう の量産 りょうさん 化 か と生産 せいさん 技術 ぎじゅつ の向上 こうじょう も進 すす められてきた。特 とく に、1940年代 ねんだい の酸素 さんそ 脱 だつ 炭 すみ 法 ほう のステンレス鋼 こう 製造 せいぞう への適用 てきよう 、さらに1960年代 ねんだい 後半 こうはん のVOD法 ほう とAOD法 ほう の発明 はつめい は、ステンレス鋼 こう の生産 せいさん 性 せい ・品質 ひんしつ を大 おお きく向上 こうじょう し、製造 せいぞう コストを低下 ていか させた。1950年 ねん から2019年 ねん までの統計 とうけい によれば、ステンレス鋼 こう の全 ぜん 世界 せかい 生産 せいさん 量 りょう は平均 へいきん 5.8 % で増加 ぞうか を続 つづ けてきた。近年 きんねん でも、製造 せいぞう 法 ほう の改良 かいりょう や開発 かいはつ 、耐食性 たいしょくせい ・強度 きょうど ・加工 かこう 性 せい を改良 かいりょう あるいは兼備 けんび した鋼 はがね 種 しゅ の開発 かいはつ 、省 しょう エネや省 しょう 資源 しげん 化 か を目指 めざ した鋼 はがね 種 しゅ の開発 かいはつ などが続 つづ けられている。
基本 きほん 金属 きんぞく 組織 そしき と合金 ごうきん 元素 げんそ の関係 かんけい [ 編集 へんしゅう ]
ステンレス鋼 こう に添加 てんか される合金 ごうきん 元素 げんそ は、定義 ていぎ のようにクロム を必須 ひっす とする。さらに、各種 かくしゅ 特性 とくせい 向上 こうじょう のためにニッケル 、モリブデン 、銅 どう 、ケイ素 けいそ 、窒素 ちっそ 、アルミニウム などの他 ほか の元素 げんそ も添加 てんか される。また、リン や硫黄 いおう は場合 ばあい によっては有効 ゆうこう な含有 がんゆう 物 ぶつ だが、基本 きほん 的 てき に有害 ゆうがい な不純物 ふじゅんぶつ 元素 げんそ であり、普通 ふつう はこれらは製造 せいぞう 上 じょう できるだけ取 と り除 のぞ かれる。炭素 たんそ は、ステンレス鋼 こう の耐食性 たいしょくせい を落 お とす不純物 ふじゅんぶつ であるが、一方 いっぽう で、強度 きょうど 向上 こうじょう に寄与 きよ する有用 ゆうよう な元素 げんそ でもある[34] 。一部 いちぶ の種類 しゅるい を除 のぞ いて、ステンレス鋼 こう は0.01桁 けた %–0.001桁 けた %といった低 ひく い炭素 たんそ 含有 がんゆう 量 りょう となるよう製造 せいぞう されている[35] 。
フェライト(α あるふぁ )とオーステナイト(γ がんま )の結晶 けっしょう 格子 こうし の様子 ようす 。マルテンサイト(α あるふぁ ′)の結晶 けっしょう 格子 こうし は α あるふぁ とほぼ同 おな じで、わずかに立方体 りっぽうたい から直方体 ちょくほうたい となる。
ステンレス鋼 こう の金属 きんぞく 組織 そしき をミクロに観察 かんさつ すると、金属 きんぞく 組織 そしき を主 おも に占 し めている相 そう の種類 しゅるい には、体 からだ 心 こころ 立方 りっぽう 構造 こうぞう のフェライト 、体 からだ 心 こころ 正方 まさかた 構造 こうぞう のマルテンサイト 、面 めん 心 こころ 立方 りっぽう 構造 こうぞう のオーステナイト の3つが存在 そんざい する。こういった合金 ごうきん の金属 きんぞく 組織 そしき は、含有 がんゆう する化学 かがく 成分 せいぶん の種類 しゅるい と濃度 のうど (組成 そせい )、加熱 かねつ ・冷却 れいきゃく ・一定 いってい 温度 おんど 保持 ほじ などの材料 ざいりょう が受 う けた熱 ねつ 履歴 りれき 、および加工 かこう 履歴 りれき などによって決 き まる。フェライト、マルテンサイト、オーステナイトは結晶 けっしょう 構造 こうぞう がそれぞれ異 こと なっており、結晶 けっしょう 構造 こうぞう の違 ちが いがステンレス鋼 こう の材料 ざいりょう 特性 とくせい の違 ちが いとなって現 あらわ れる[40] 。特 とく に物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ と機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ が、金属 きんぞく 組織 そしき の種類 しゅるい によって変化 へんか する。
フェライト、マルテンサイト、オーステナイトという3つの相 そう は鋼 はがね 全般 ぜんぱん で存在 そんざい する相 そう だが、鉄 てつ ・炭素 たんそ の2つから成 な る単純 たんじゅん な鋼 はがね では、オーステナイトは高温 こうおん のみで現 あらわ れる相 そう であり、常温 じょうおん で組織 そしき がオーステナイトになることは普通 ふつう はない[43] 。常温 じょうおん でオーステナイトを主要 しゅよう な相 そう とする鋼 はがね 種 しゅ があることは、ステンレス鋼 こう の特徴 とくちょう の一 ひと つといえる[44] 。
鉄 てつ ・クロム系 けい 2元 げん 状態 じょうたい 図 ず 。縦 たて 軸 じく が温度 おんど 、横 よこ 軸 じく がクロム濃度 のうど で、図 ず 中 ちゅう には静的 せいてき に変化 へんか させたときのその温度 おんど とクロム濃度 のうど における相 そう を示 しめ している。α あるふぁ がフェライト、γ がんま がオーステナイトを意味 いみ しており、左端 ひだりはし の閉 と じた γ がんま の存在 そんざい 領域 りょういき が γ がんま ループ。
ステンレス鋼 こう の基礎 きそ となるのが、鉄 てつ ・クロム 系 けい の状態 じょうたい 図 ず である。2成分 せいぶん 系 けい 合金 ごうきん の状態 じょうたい 図 ず とは、縦 たて 軸 じく に温度 おんど を取 と り、横 よこ 軸 じく に2つの元素 げんそ の質量 しつりょう 比 ひ を取 と り、温度 おんど と質量 しつりょう 比 ひ によって決 き まる熱 ねつ 力学 りきがく 的 てき 平衡 へいこう 状態 じょうたい の金属 きんぞく 組織 そしき を示 しめ す図 ず である。鉄 てつ ・クロム系 けい 2元 げん 状態 じょうたい 図 ず によると、クロム濃度 のうど 0 % のとき約 やく 900–1400 °C の範囲 はんい で組織 そしき はオーステナイトとなる。クロム濃度 のうど を 0 % から増 ふ やすと、オーステナイトが存在 そんざい する温度 おんど 域 いき は狭 せま くなっていき、ついにはオーステナイトは存在 そんざい しなくなり、組織 そしき は融点 ゆうてん までフェライト単 たん 相 しょう となる。このように、濃度 のうど を増 ふ やすとフェライトが生成 せいせい する方 ほう に寄与 きよ する元素 げんそ を「フェライト生成 せいせい 元素 げんそ 」「フェライト形成 けいせい 元素 げんそ 」「フェライト安定 あんてい 化 か 元素 げんそ 」などと呼 よ ぶ。クロムの他 ほか にも、フェライト形成 けいせい 元素 げんそ にはモリブデン 、チタン 、ニオブ 、ケイ素 けいそ などがある。
一方 いっぽう 、鉄 てつ ・クロム系 けい 2元 げん 状態 じょうたい 図上 ずじょう では、高温 こうおん でクロム濃度 のうど が低 ひく い範囲 はんい まではオーステナイトが存在 そんざい する。この高温 こうおん 域 いき にあるオーステナイト(γ がんま )の存在 そんざい 領域 りょういき を「γ がんま ループ」などと呼 よ ぶ。鉄 てつ ・クロム系 けい に炭素 たんそ もわずかに加 くわ わったような場合 ばあい を想定 そうてい すると、γ がんま ループより低 ひく い温度 おんど では、オーステナイトは共 きょう 析反応 おう でフェライトと炭化物 たんかぶつ へと分解 ぶんかい される。しかし、γ がんま ループから組織 そしき を急冷 きゅうれい した場合 ばあい 、組織 そしき はマルテンサイトに変 か わる。すなわち、急冷 きゅうれい によって共 きょう 析変態 へんたい が阻止 そし されてマルテンサイト変態 へんたい が代 か わりに起 お こる。生成 せいせい されたマルテンサイトには炭素 たんそ が過飽和 かほうわ に固 かた 溶されており、組織 そしき 中 ちゅう に転位 てんい が高密度 こうみつど に存在 そんざい した状態 じょうたい となる[53] 。これによって、マルテンサイトは高 たか い強度 きょうど と硬度 こうど を持 も つ組織 そしき となる[53] 。
鉄 てつ ・ニッケルの2元 げん 合金 ごうきん 状態 じょうたい 図 ず 。ニッケル濃度 のうど が上 あ がるにつれて γ がんま の領域 りょういき が広 ひろ がる。
フェライト生成 せいせい 元素 げんそ とは逆 ぎゃく に、濃度 のうど を増 ふ やすとオーステナイトが生成 せいせい する方 ほう に寄与 きよ する元素 げんそ を「オーステナイト生成 せいせい 元素 げんそ 」「オーステナイト形成 けいせい 元素 げんそ 」「オーステナイト安定 あんてい 化 か 元素 げんそ 」などと呼 よ ぶ。ステンレス鋼 こう に加 くわ えられるオーステナイト生成 せいせい 元素 げんそ の代表 だいひょう 例 れい がニッケル である。鉄 てつ ・ニッケル2元 げん 系 けい の状態 じょうたい 図 ず を見 み ると、ニッケル濃度 のうど が高 たか いほどオーステナイトの領域 りょういき が広 ひろ がっていく。鉄 てつ ・クロム・ニッケルの3元 げん 系 けい で考 かんが えると、γ がんま ループの領域 りょういき が大 おお きくなっておく。このようなオーステナイト生成 せいせい 元素 げんそ を利用 りよう し、ステンレス鋼 こう の特定 とくてい の種類 しゅるい では常温 じょうおん でもオーステナイト組織 そしき のままとすることができる。オーステナイトの組織 そしき は、高 たか い延性 えんせい 、非 ひ 磁性 じせい などの特徴 とくちょう を持 も つ[58] 。ニッケルの他 ほか には、炭素 たんそ 、窒素 ちっそ 、コバルト 、マンガン 、銅 どう などがオーステナイト生成 せいせい 元素 げんそ である。
シェフラーの組織 そしき 図 ず (ドイツ語 ご 版 ばん ) の一 いち 例 れい 。A はオーステナイト、F はフェライト、M はマルテンサイトを意味 いみ する。
以上 いじょう のようなフェライト生成 せいせい 元素 げんそ とオーステナイト生成 せいせい 元素 げんそ の量 りょう が、ステンレス鋼 こう の組織 そしき を主 おも に決 き めている。フェライト生成 せいせい 元素 げんそ とオーステナイト生成 せいせい 元素 げんそ の量 りょう から決 き まる主要 しゅよう 相 しょう を図示 ずし したのがシェフラーの組織 そしき 図 ず (ドイツ語 ご 版 ばん ) である。これは、横 よこ 軸 じく をクロム当 とう 量 りょう (フェライト生成 せいせい 元素 げんそ )、縦 たて 軸 じく をニッケル当 とう 量 りょう (オーステナイト生成 せいせい 元素 げんそ )として組成 そせい と組織 そしき の関係 かんけい を示 しめ したもので、クロム当 とう 量 りょう (Creq ) とニッケル当 とう 量 りょう (Nieq ) とは、
Creq = %Cr + %Mo + 1.5 × %Si + 0.5 × %Nb
Nieq = %Ni + 30 × %C + 0.5 × %Mn
のような形 かたち で、クロムのフェライト生成 せいせい 能 のう あるいはニッケルのオーステナイト生成 せいせい 能 のう と同 おな じになるように重 おも み付 づ けし、各々 おのおの の元素 げんそ 含有 がんゆう 量 りょう を足 た し合 あ わせたものである[61] 。ここで、%X で元素 げんそ X の質量 しつりょう パーセント濃度 のうど を意味 いみ する。シェフラーの組織 そしき 図 ず は、元々 もともと は溶接 ようせつ 時 じ の溶着 ようちゃく 金属 きんぞく の組織 そしき に対 たい するものだったが、組成 そせい からステンレス鋼 こう の相 そう を予測 よそく するのに実用 じつよう 上 じょう も有効 ゆうこう である。当 とう 量 りょう からステンレス鋼 こう の組織 そしき を予測 よそく する手法 しゅほう については、シェフラーの組織 そしき 図 ず 以外 いがい にも様々 さまざま な手法 しゅほう が提案 ていあん されている。
ステンレス鋼 こう には、現在 げんざい では多 おお くの種類 しゅるい が存在 そんざい している。用途 ようと ・目的 もくてき に応 おう じて、適当 てきとう な鋼 はがね 種 しゅ を選択 せんたく することが重要 じゅうよう である。大別 たいべつ 分類 ぶんるい としては、主要 しゅよう 成分 せいぶん 別 べつ と金属 きんぞく 組織 そしき 別 べつ がある。さらに細 こま かくは、規格 きかく で分類 ぶんるい ・指定 してい されている。
主要 しゅよう 成分 せいぶん による大別 たいべつ [ 編集 へんしゅう ]
ステンレス鋼 こう に含 ふく まれる合金 ごうきん 元素 げんそ としてはクロム が欠 か かせない。さらに、ニッケル を主要 しゅよう 合金 ごうきん 元素 げんそ として含 ふく むステンレス鋼 こう も主流 しゅりゅう である。主要 しゅよう な合金 ごうきん 元素 げんそ がクロムのみであるステンレス鋼 こう 、主要 しゅよう な合金 ごうきん 元素 げんそ がクロムとニッケルのステンレス鋼 こう 、これら2つを
クロム系 けい ステンレス鋼 こう (Cr系 けい ステンレス鋼 こう )
クロム・ニッケル系 けい ステンレス鋼 こう (Cr-Ni系 けい ステンレス鋼 こう )
という。クロム系 けい ステンレス鋼 こう とクロム・ニッケル系 けい ステンレス鋼 こう の2種類 しゅるい が、主要 しゅよう 成分 せいぶん による大別 たいべつ 分類 ぶんるい として定着 ていちゃく している。
ただし、主要 しゅよう 合金 ごうきん 元素 げんそ の組 く み合 あ わせとしては、クロム系 けい とクロム・ニッケル系 けい 以外 いがい もあり得 え る。かつて日本 にっぽん 産業 さんぎょう 規格 きかく にあった SUS200 番台 ばんだい のステンレス鋼 こう などはニッケルを減 へ らしてマンガン も主要 しゅよう 成分 せいぶん としているので、Cr-Ni-Mn系 けい のステンレス鋼 こう といわれる。ステンレス鋼 こう の主要 しゅよう 成分 せいぶん は金属 きんぞく 組織 そしき の決定 けってい に直結 ちょっけつ し、後述 こうじゅつ の組織 そしき 別 べつ 分類 ぶんるい にも関 かか わってくる。
金属 きんぞく 組織 そしき による大別 たいべつ [ 編集 へんしゅう ]
前記 ぜんき のように、金属 きんぞく 組織 そしき の状態 じょうたい は材料 ざいりょう 特性 とくせい に特 とく に影響 えいきょう する。そのため、金属 きんぞく 組織 そしき 別 べつ にステンレス鋼 こう を大別 たいべつ するのが学問 がくもん 的 てき にも順当 じゅんとう で、材料 ざいりょう 特性 とくせい を理解 りかい しやすい。常温 じょうおん における金属 きんぞく 組織 そしき によって大別 たいべつ すると、ステンレス鋼 こう は以下 いか の5つに分類 ぶんるい される[7] [71] 。
この中 なか で析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい ステンレス鋼 こう は主要 しゅよう な相 そう ではなく組織 そしき の析出 せきしゅつ 硬化 こうか の有無 うむ による分類 ぶんるい なので、その母 はは 相 しょう にもとづき「マルテンサイト系 けい 析出 せきしゅつ 硬化 こうか 型 がた ステンレス鋼 こう 」「オーステナイト系 けい 析出 せきしゅつ 硬化 こうか 型 がた ステンレス鋼 こう 」のようにさらに細分 さいぶん もされる。
以下 いか 、特 とく に断 ことわ りがない限 かぎ り、「マルテンサイト系 けい 」「フェライト系 けい 」「オーステナイト系 けい 」「オーステナイト・フェライト系 けい 」「析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい 」という表記 ひょうき は上記 じょうき の5種類 しゅるい を指 さ す。
マルテンサイト系 けい ステンレス鋼 こう [ 編集 へんしゅう ]
マルテンサイト系 けい ステンレス鋼 こう AISI 420 の金属 きんぞく 組織 そしき 写真 しゃしん
マルテンサイト系 けい ステンレス鋼 こう とは、常温 じょうおん でマルテンサイト を主要 しゅよう な組織 そしき とするステンレス鋼 こう である。高温 こうおん ではオーステナイト単一 たんいつ 組織 そしき 、またはフェライトが少 すこ し混 ま じったオーステナイト組織 そしき で、その状態 じょうたい から急冷 きゅうれい して焼入 やきい れ を行 おこな うことによってマルテンサイト変態 へんたい を起 お こしてマルテンサイト組織 そしき にする。焼入 やきい れ後 ご は、残留 ざんりゅう 応力 おうりょく の除去 じょきょ や靭 うつぼ 性 せい の回復 かいふく を行 おこな うために通常 つうじょう 焼戻 やきもど し を行 おこな う。
マルテンサイト系 けい のクロム含有 がんゆう 量 りょう は一般 いっぱん 的 てき に 11 % から 18 % 程度 ていど で、クロム系 けい ステンレス鋼 こう の一種 いっしゅ に分類 ぶんるい される。また、他 た のステンレス鋼 こう と異 こと なり炭素 たんそ を積極 せっきょく 的 てき に含 ふく むのがマルテンサイト系 けい の特徴 とくちょう で、0.15 % から最大 さいだい 1.2 % の炭素 たんそ がマルテンサイト系 けい に含有 がんゆう される[35] 。ステンレス鋼 こう の中 なか では、クロム含有 がんゆう 量 りょう が比較的 ひかくてき 少 すく なく炭素 たんそ 含有 がんゆう 量 りょう が比較的 ひかくてき 多 おお いという組成 そせい となっている。「13Cr鋼 こう 」や「13クロムステンレス」など呼 よ ばれるクロム量 りょう 約 やく 13 % の鋼 はがね 種 しゅ が、マルテンサイト系 けい の代表 だいひょう 的 てき な鋼 はがね 種 しゅ である[1] 。焼入 やきい れではなく完全 かんぜん 焼 しょう なまし を施 ほどこ した場合 ばあい のマルテンサイト系 けい の組織 そしき は、炭化物 たんかぶつ を多 おお く含 ふく むフェライト組織 そしき となる。
フェライト系 けい ステンレス鋼 こう [ 編集 へんしゅう ]
フェライト系 けい ステンレス鋼 こう AISI 430 の金属 きんぞく 組織 そしき 写真 しゃしん
フェライト系 けい ステンレス鋼 こう とは、常温 じょうおん でフェライト を主要 しゅよう な組織 そしき とするステンレス鋼 こう である。高温 こうおん ではフェライト単一 たんいつ 組織 そしき またはオーステナイトが少 すこ し混 ま じったフェライト組織 そしき で、焼入 やきい れ処理 しょり をしても相 あい 変態 へんたい が起 お きない。
フェライト系 けい のクロム量 りょう にはおよそ 12 % から 30 % 程度 ていど までの種類 しゅるい がある。マルテンサイト系 けい と同 おな じくニッケルを主要 しゅよう 合金 ごうきん 元素 げんそ として含 ふく まず、クロム系 けい ステンレス鋼 こう に分類 ぶんるい される。「18%Cr鋼 こう 」や「18クロムステンレス」など呼 よ ばれるクロム量 りょう 約 やく 18 % の鋼 はがね 種 しゅ が、フェライト系 けい の代表 だいひょう 的 てき な鋼 はがね 種 しゅ である[1] 。特 とく に、炭素 たんそ および窒素 ちっそ の含有 がんゆう 量 りょう を 0.03 % 以下 いか のような極 ごく 低 てい 量 りょう まで低減 ていげん し、さらにチタン やニオブ などの炭化物 たんかぶつ 安定 あんてい 化 か 元素 げんそ を添加 てんか し、性能 せいのう を高 たか めたフェライト系 けい 鋼 こう 種 しゅ は「高 こう 純度 じゅんど フェライト系 けい ステンレス鋼 こう 」と呼 よ ばれる[83] 。
オーステナイト系 けい ステンレス鋼 こう [ 編集 へんしゅう ]
オーステナイト系 けい ステンレス鋼 こう 304 系 けい の金属 きんぞく 組織 そしき 写真 しゃしん
オーステナイト系 けい ステンレス鋼 こう とは、常温 じょうおん でオーステナイト を主要 しゅよう な組織 そしき とするステンレス鋼 こう である。上記 じょうき で述 の べたとおり、通常 つうじょう は常温 じょうおん ではオーステナイトは残存 ざんそん しないが、オーステナイト生成 せいせい 元素 げんそ を添加 てんか することでオーステナイトが安定 あんてい 化 か して常温 じょうおん で存在 そんざい 可能 かのう になる。通常 つうじょう 、高温 こうおん で材料 ざいりょう 全体 ぜんたい をオーステナイト化 か ・合金 ごうきん 元素 げんそ を十分 じゅうぶん に固 かた 溶させ、急冷 きゅうれい して完全 かんぜん なオーステナイト組織 そしき にする。
オーステナイト系 けい は、主要 しゅよう 合金 ごうきん 元素 げんそ としてクロムとニッケルを含 ふく むクロム・ニッケル系 けい ステンレス鋼 こう の一種 いっしゅ である。「18-8(じゅうはちはち)ステンレス」など呼 よ ばれるクロム約 やく 18 % ・ニッケル約 やく 8 % の鋼 はがね 種 しゅ が、オーステナイト系 けい の代表 だいひょう 的 てき な鋼 はがね 種 しゅ である[1] [88] 。オーステナイト系 けい はステンレス鋼 こう 全体 ぜんたい の中 なか でもっとも広 ひろ く使 つか われている鋼 はがね 種 しゅ で、使用 しよう 量 りょう も種類 しゅるい も多 おお い[89] 。
オーステナイト系 けい は常温 じょうおん でも主要 しゅよう 組織 そしき をオーステナイトとするが、添加 てんか される合金 ごうきん 元素 げんそ 組成 そせい によって存在 そんざい するオーステナイトの安定 あんてい 度 ど が異 こと なる。オーステナイト安定 あんてい 度 ど が低 ひく い場合 ばあい は、塑性 そせい 加工 かこう が施 ほどこ されたり、低温 ていおん 下 か に置 お かれたりすると、一部 いちぶ のオーステナイトがマルテンサイトに変態 へんたい する。このような鋼 はがね 種 しゅ は「準 じゅん 安定 あんてい オーステナイト系 けい ステンレス鋼 こう 」と呼 よ ばれる。一方 いっぽう 、オーステナイト安定 あんてい 度 ど が高 たか い場合 ばあい は加工 かこう などを施 ほどこ しても相 あい 変態 へんたい が起 お きず、このような鋼 はがね 種 しゅ を「安定 あんてい オーステナイト系 けい ステンレス鋼 こう 」と呼 よ ぶ。
オーステナイト・フェライト系 けい ステンレス鋼 こう [ 編集 へんしゅう ]
オーステナイト・フェライト系 けい ステンレス鋼 こう UNS S32205 の金属 きんぞく 組織 そしき 写真 しゃしん
オーステナイト・フェライト系 けい ステンレス鋼 こう とは、常温 じょうおん でオーステナイトとフェライトの両方 りょうほう が並存 へいそん する組織 そしき のステンレス鋼 こう である。2つの相 そう から成 な るので「二 に 相 そう ステンレス鋼 こう 」などとも呼 よ ばれる。実際 じっさい のフェライト・オーステナイトの割合 わりあい は成分 せいぶん と熱 ねつ 履歴 りれき によって変 か わるが、一般 いっぱん 的 てき には、それぞれの存在 そんざい 割合 わりあい がおおよそ同 おな じとなるように製造 せいぞう する。
オーステナイト生成 せいせい 元素 げんそ とフェライト生成 せいせい 元素 げんそ の調整 ちょうせい によって、オーステナイトとフェライトを並存 へいそん させる。例 たと えば、ニッケルを 8 % 含 ふく むものがクロムを 22 % 以上 いじょう 含 ふく むようになると、常温 じょうおん で二 に 相 そう 組織 そしき を得 え ることができるようになる。オーステナイト系 けい と同 おな じくニッケルも主要 しゅよう 合金 ごうきん 元素 げんそ として含 ふく むため、オーステナイト・フェライト系 けい はクロム・ニッケル系 けい ステンレス鋼 こう の一種 いっしゅ に分類 ぶんるい される。オーステナイト・フェライト系 けい の代表 だいひょう 的 てき 鋼 こう 種 しゅ の場合 ばあい で、クロム約 やく 25 %、ニッケル約 やく 4.5 %、モリブデン約 やく 2 % を主要 しゅよう 合金 ごうきん 元素 げんそ とする。
析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい ステンレス鋼 こう [ 編集 へんしゅう ]
析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい ステンレス鋼 こう とは、銅 どう やアルミニウム といった元素 げんそ を添加 てんか して母 はは 相 しょう に析出 せきしゅつ させ、析出 せきしゅつ 硬化 こうか と呼 よ ばれる材質 ざいしつ の硬化 こうか 現象 げんしょう を起 お こして用 もち いるステンレス鋼 こう である。一般 いっぱん 的 てき に使 つか われている析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい の母 はは 相 しょう の種類 しゅるい は、オーステナイトとマルテンサイトの2つである。硬化 こうか を起 お こす微細 びさい な析出 せきしゅつ 物 ぶつ を母 はは 相 しょう 中 ちゅう に分散 ぶんさん ・現出 げんしゅつ させて、析出 せきしゅつ 硬化 こうか を起 お こす[100] 。析出 せきしゅつ 物 ぶつ 自体 じたい は、光学 こうがく 顕微鏡 けんびきょう では視認 しにん できず、電子 でんし 顕微鏡 けんびきょう などを使 つか って確認 かくにん できるレベルの大 おお きさである。
ニッケルも主要 しゅよう 合金 ごうきん 元素 げんそ として含 ふく むため、析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい はクロム・ニッケル系 けい ステンレス鋼 こう の一種 いっしゅ に分類 ぶんるい される。析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい の代表 だいひょう 例 れい が「17-4PH」と呼 よ ばれるマルテンサイトを母 はは 相 しょう とする鋼 はがね 種 しゅ で、クロム約 やく 17 %、ニッケル約 やく 4 % を含 ふく み、析出 せきしゅつ 硬化 こうか 性 せい 元素 げんそ として銅 どう 約 やく 4 % を含 ふく む。析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい は母 はは 相 しょう の種類 しゅるい ・性質 せいしつ に応 おう じて細分 さいぶん され、「マルテンサイト系 けい 析出 せきしゅつ 硬化 こうか 型 がた ステンレス鋼 こう 」「セミオーステナイト系 けい 析出 せきしゅつ 硬化 こうか 型 がた ステンレス鋼 こう 」「オーステナイト系 けい 析出 せきしゅつ 硬化 こうか 型 がた ステンレス鋼 こう 」の3つが一般 いっぱん 的 てき である。
規格 きかく による分類 ぶんるい [ 編集 へんしゅう ]
ステンレス鋼 こう の種類 しゅるい は、世界 せかい 各国 かっこく の国家 こっか 規格 きかく や団体 だんたい 規格 きかく 、および国際 こくさい 規格 きかく で規定 きてい されている。2010年版 ねんばん のISO規格 きかく では全 ぜん 191種 しゅ のステンレス鋼 こう が規定 きてい されており、その内 うち 、オーステナイト系 けい が98種 しゅ 、フェライト系 けい が34種 しゅ 、マルテンサイト系 けい が33種 しゅ 、オーステナイト・フェライト系 けい が15種 しゅ 、析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい が11種 しゅ となっている[105] 。こういった規格 きかく で、化学 かがく 組成 そせい の指定 してい のほか、機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ 、耐食性 たいしょくせい などの品質 ひんしつ 要求 ようきゅう が、各 かく 鋼 はがね 種 しゅ に対 たい して定 さだ められている。
ステンレス鋼 こう の規格 きかく 分類 ぶんるい を最初 さいしょ 期 き に規定 きてい したのはアメリカ鉄鋼 てっこう 協会 きょうかい (英語 えいご 版 ばん ) (AISI)で、3桁 けた の数字 すうじ と末尾 まつび の記号 きごう でステンレス鋼 こう の種類 しゅるい を体系 たいけい 付 づ けした。マルテンサイト系 けい とフェライト系 けい には400台 だい を、オーステナイト系 けい には300台 だい を割 わ り当 あ てている。もっとも使用 しよう されている18-8ステンレスには「304」という記号 きごう が割 わ り当 あ てられている。AISI規格 きかく の命名 めいめい 体系 たいけい はアメリカのみならず世界 せかい 各国 かっこく でも採用 さいよう され、カナダ、メキシコ、日本 にっぽん 、韓国 かんこく 、イギリス、ブラジル、オーストラリアなどがAISI規格 きかく 体系 たいけい を基 もと にした国家 こっか 規格 きかく を制定 せいてい している。一方 いっぽう で、国際 こくさい 規格 きかく であるISO規格 きかく や欧州 おうしゅう 統一 とういつ 規格 きかく であるEN規格 きかく は、ドイツのDIN規格 きかく の命名 めいめい 体系 たいけい を採用 さいよう している。アメリカではAISIは鋼 はがね 種 しゅ の規格 きかく 活動 かつどう を1960年代 ねんだい に終了 しゅうりょう しており、アメリカ国内 こくない では、AISI規格 きかく はアメリカ試験 しけん 材料 ざいりょう 協会 きょうかい やアメリカ自動車 じどうしゃ 技術 ぎじゅつ 者 しゃ 協会 きょうかい の規格 きかく に採用 さいよう された形 かたち で残 のこ っている[112] 。さらに、金属 きんぞく ・合金 ごうきん コードの統一 とういつ を目指 めざ すユニファイド・ナンバリング・システム (英語 えいご 版 ばん ) (UNS)でもステンレス鋼 こう についてはAISI規格 きかく 体系 たいけい をベースにしている[112] 。
18-8ステンレス鋼 こう (JIS SUS304 と同等 どうとう の鋼 はがね 種 しゅ )を例 れい にして、主 おも な規格 きかく の材料 ざいりょう 記号 きごう を下記 かき の表 ひょう に示 しめ す。この内 うち 、イギリス、ドイツ、フランスなどの規格 きかく は、現在 げんざい ではEN規格 きかく に統合 とうごう されている[114] 。
主 おも な規格 きかく における18-8ステンレス鋼 こう [115] [116] [117]
国 くに ・地域 ちいき
規格 きかく
記号 きごう
アメリカ
AISI
304
アメリカ
UNS
S30400
イギリス
BS
304S11 / 304S15 / 304S31
フランス
AFNOR
Z6CN18-09 / Z7CN18-09
ドイツ
DIN
X5CrNi189 (1.4301 / 1.4350)
イタリア
UNI
X5CrNi1810
スペイン
UNE
F.3541 / F.3551 / F.3504
スウェーデン
SS
2332 / 2333
ロシア
GOST
08Ch18N10
インド
IS
04Cr18Ni11
中国 ちゅうごく
GB
S30408 (OCr18Ni9)
日本 にっぽん
JIS
SUS304
韓国 かんこく
KS
STS304
ヨーロッパ
EN
1.4301 / 1.4350
国際 こくさい 規格 きかく
ISO
X5CrNi18-10 (4301-304-00-I)
JISを例 れい にすると、ステンレス鋼 こう の指定 してい は以下 いか のような具合 ぐあい である。まず、頭 あたま に大 おお まかな分類 ぶんるい 記号 きごう が付 つ く。「SUS」がステンレス鋼材 こうざい 全般 ぜんぱん (棒 ぼう 材 ざい 、線 せん 材 ざい 、管 かん 材 ざい 、板材 いたざい 、帯 おび 材 ざい 、形 かたち 鋼 こう など)を意味 いみ しており、他 た には鋳鋼 ちゅうこう 品 しな を意味 いみ する「SCS」や、溶接 ようせつ 用 よう ワイヤを意味 いみ する「SUSY」などがある[121] [122] 。次 つぎ に、鋼 はがね 種 しゅ を指定 してい する記号 きごう が続 つづ く。これはAISI規格 きかく に由来 ゆらい する3桁 けた の数字 すうじ から成 な り、さらに意味 いみ づけされたアルファベットが数字 すうじ の後 のち に続 つづ くこともある。「SUS304L」であれば SUS304 をより低 てい 炭素 たんそ にした鋼 はがね 種 しゅ を意味 いみ する。鋳鋼 ちゅうこう については独自 どくじ の体系 たいけい で整理 せいり されている[121] 。
このような具合 ぐあい に決 き められた一連 いちれん の記号 きごう によって、満 み たすべき化学 かがく 組成 そせい および機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ の範囲 はんい などが指定 してい される[114] 。さらに必要 ひつよう であれば、製品 せいひん 形状 けいじょう を示 しめ す記号 きごう を末尾 まつび に付 つ ける。「SUS304-B」であれば SUS304 の棒 ぼう 材 ざい を意味 いみ し、「SUS304-HS」であれば SUS304 の熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん 帯 たい 材 ざい を意味 いみ する[125] [126] 。
ステンレス鋼 こう の耐食性 たいしょくせい は、化学 かがく 組成 そせい 、組織 そしき の状態 じょうたい 、熱 ねつ 履歴 りれき によって変動 へんどう する。優 すぐ れた耐食性 たいしょくせい を持 も ち、「さびない材料 ざいりょう 」のイメージを一般 いっぱん に持 も たれるステンレス鋼 こう だが、実際 じっさい の耐食性 たいしょくせい は鋼 はがね 種 しゅ によって幅広 はばひろ い。海水 かいすい でも錆 さ びない高 こう 耐 たい 食 しょく なものから、野外 やがい に放置 ほうち すると数日 すうじつ で錆 さ び出 だ すものまで存在 そんざい する。
特 とく に、耐食性 たいしょくせい の度合 どあ いの決定 けってい には化学 かがく 組成 そせい の影響 えいきょう が大 おお きく、各々 おのおの のステンレス鋼 こう の実際 じっさい の耐食性 たいしょくせい は主 おも に化学 かがく 組成 そせい によって決 き まるといえる[130] 。ステンレス鋼 こう の耐食性 たいしょくせい を向上 こうじょう させるには、有効 ゆうこう な合金 ごうきん 元素 げんそ の添加 てんか と不純物 ふじゅんぶつ となる元素 げんそ の減少 げんしょう が有効 ゆうこう である。
主要 しゅよう 組織 そしき 別 べつ の分類 ぶんるい でいえば、オーステナイト系 けい の耐食性 たいしょくせい が優 すぐ れ、マルテンサイト系 けい の耐食性 たいしょくせい は悪 わる いと、大 おお まかに評 ひょう される。ただし、このように主要 しゅよう 組織 そしき 別 べつ 分類 ぶんるい で耐食性 たいしょくせい を大 おお まかに評価 ひょうか できるのは、主要 しゅよう 組織 そしき が化学 かがく 組成 そせい と熱 ねつ 履歴 りれき によって決 き まっているからである。マルテンサイト系 けい の例 れい でいえば、マルテンサイト系 けい はマルテンサイト組織 そしき を得 え るために、耐食性 たいしょくせい に有効 ゆうこう なクロムを増 ふ やすことと耐食性 たいしょくせい 上 じょう は不純物 ふじゅんぶつ となる炭素 たんそ を減 へ らすことが両立 りょうりつ しない。結果 けっか 的 てき に、マルテンサイト系 けい の耐食性 たいしょくせい は他 た のステンレス鋼 こう よりも一般 いっぱん 的 てき に劣 おと る。
ステンレス鋼 こう が関 かか わる腐食 ふしょく には、大 おお きく分 わ けて「湿 しめ 食 しょく 」と「乾 いぬい 食 しょく 」という2つの形態 けいたい がある。湿 しめ 食 しょく は水溶液 すいようえき 腐食 ふしょく とも呼 よ ばれ、水溶液 すいようえき の作用 さよう で起 お こる腐食 ふしょく である。乾 いぬい 食 しょく は気体 きたい 腐食 ふしょく とも呼 よ ばれ、高温 こうおん の気体 きたい の作用 さよう で起 お こる腐食 ふしょく である。湿 しめ 食 しょく は典型 てんけい 的 てき な腐食 ふしょく 現象 げんしょう で、地球 ちきゅう 上 じょう の金属 きんぞく の腐食 ふしょく のほとんどが湿 しめ 食 しょく で起 お きている。
炭素 たんそ 鋼 こう が中性 ちゅうせい の水 みず に浸 ひた されると、すぐに錆 さび が発生 はっせい し、腐食 ふしょく が進 すす む。一般 いっぱん 的 てき に、電気 でんき 化学 かがく 的 てき な見地 けんち から、腐食 ふしょく はアノード 反応 はんのう とカソード 反応 はんのう の組 く み合 あ わせによる化学 かがく 反応 はんのう と理解 りかい される。酸素 さんそ が溶存 ようぞん する中性 ちゅうせい の水 みず に炭素 たんそ 鋼 こう が触 ふ れると、局所 きょくしょ 的 てき に以下 いか のアノード反応 はんのう とカソード反応 はんのう が起 お きる。
アノード反応 はんのう (鉄 てつ の酸化 さんか ): Fe → Fe2+ + 2 e−
カソード反応 はんのう (酸素 さんそ の還元 かんげん ): 1/2 O2 + H2 O + 2 e− → 2 OH−
このように、アノード反応 はんのう 域 いき の鉄 てつ が Fe2+ イオンとして溶 と け出 で ることで、通常 つうじょう は腐食 ふしょく が進 すす む。
一方 いっぽう 、ステンレス鋼 こう を同種 どうしゅ の環境 かんきょう においても一般 いっぱん に腐食 ふしょく することはない。ステンレス鋼 こう の表面 ひょうめん には「不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく 」と呼 よ ばれる特殊 とくしゅ な皮膜 ひまく が形成 けいせい されており、金属 きんぞく がイオンとなって溶 と け出 で て行 い く上記 じょうき の反応 はんのう をこの皮膜 ひまく が防 ふせ いでいる。不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく は化学 かがく 的 てき に安定 あんてい かつ緻密 ちみつ に表面 ひょうめん を覆 おお っており、仮 かり にステンレス鋼 こう 表面 ひょうめん が傷 きず つき皮膜 ひまく が破壊 はかい されたとしても、通常 つうじょう は瞬時 しゅんじ に新 あら たな不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく が破壊 はかい 面 めん で生 しょう じる。このように、熱 ねつ 力学 りきがく 的 てき には腐食 ふしょく した状態 じょうたい の方 ほう が安定 あんてい な化学 かがく 組成 そせい であるにもかかわらず、不 ふ 動態 どうたい 皮膜 ひまく の存在 そんざい によって腐食 ふしょく が著 いちじる しく遅 おそ くなり、実質 じっしつ 的 てき に腐食 ふしょく しなくなることを「不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 」と呼 よ ぶ。また、この状態 じょうたい や構造 こうぞう を「不 ふ 働 はたらけ 態 たい 」と呼 よ ぶ。特殊 とくしゅ な環境 かんきょう であれば、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か は普通 ふつう の鉄 てつ でも起 お きる。例 たと えば、普通 ふつう の鉄 てつ は一定 いってい 以上 いじょう の濃度 のうど の硝酸 しょうさん 水溶液 すいようえき において不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か して、溶解 ようかい 反応 はんのう が停止 ていし する。ステンレス鋼 こう が普通 ふつう の鉄 てつ と異 こと なる点 てん は、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か がより一般 いっぱん 的 てき な環境 かんきょう でも起 お きるということである。これが、ステンレス鋼 こう が高 たか い耐食性 たいしょくせい を示 しめ す理由 りゆう である。
不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か する合金 ごうきん の分極 ぶんきょく 曲線 きょくせん 模 も 式 しき 図 ず [143] 。青色 あおいろ 実線 じっせん がアノード分極 ぶんきょく 曲線 きょくせん 、赤色 あかいろ 点線 てんせん がカソード分極 ぶんきょく 曲線 きょくせん 。交点 こうてん Aが活性 かっせい 帯 たい に留 と まる場合 ばあい で、交点 こうてん Bが不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か する場合 ばあい 。
不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か の様子 ようす は、金属 きんぞく の「アノード分極 ぶんきょく 曲線 きょくせん 」から読 よ み取 と ることができる。アノード分極 ぶんきょく 曲線 きょくせん とは、ある電解 でんかい 質 しつ 溶液 ようえき に対象 たいしょう の金属 きんぞく を電極 でんきょく (アノード; 陽極 ようきょく または負 ふ 極 きょく ) として浸 ひた したときに電極 でんきょく へ流 なが れる電流 でんりゅう 密度 みつど を電極 でんきょく 電圧 でんあつ の関数 かんすう として表 あらわ した曲線 きょくせん であり、この電流 でんりゅう 密度 みつど の大 おお きさは対象 たいしょう 金属 きんぞく の腐食 ふしょく 速度 そくど と等価 とうか である。アノード(対象 たいしょう 金属 きんぞく )の電圧 でんあつ を平衡 へいこう 電位 でんい から上 あ げていくと、電流 でんりゅう 密度 みつど も上昇 じょうしょう していく。アノードが不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か を起 お こす金属 きんぞく である場合 ばあい 、ある電位 でんい に達 たっ した時点 じてん で電流 でんりゅう 密度 みつど が頭打 あたまう ちになり、その電位 でんい 以上 いじょう の電圧 でんあつ をかけると電流 でんりゅう 密度 みつど は逆 ぎゃく に急激 きゅうげき に下 さ がりはじめ、やがて電流 でんりゅう 密度 みつど は低 ひく い一 いち 定値 ていち を示 しめ すようになる。この電流 でんりゅう 密度 みつど の低 ひく い状態 じょうたい が不 ふ 働 はたらけ 態 たい である。不 ふ 働 はたらけ 態 わざ となる直前 ちょくぜん の電流 でんりゅう 密度 みつど の最 さい 高値 たかね を「臨界 りんかい 不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電流 でんりゅう 密度 みつど 」、このときの電位 でんい を「不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電位 でんい 」と呼 よ び、また、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か した後 のち の低 ひく い電流 でんりゅう 密度 みつど 値 ち は「不 ふ 働 はたらけ 態 たい 維持 いじ 電流 でんりゅう 」と呼 よ ばれる。不 ふ 働 はたらけ 態 わざ となった後 のち に、さらに電位 でんい を上昇 じょうしょう させると、ある電位 でんい 以上 いじょう で電流 でんりゅう 密度 みつど が再度 さいど 増 ふ える。これは、高 たか すぎる電位 でんい に不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく が溶解 ようかい してしまい、アノードの表面 ひょうめん が活性 かっせい な状態 じょうたい に戻 もど るためである。
この臨界 りんかい 不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電流 でんりゅう 密度 みつど は、金属 きんぞく の不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か を検討 けんとう するうえで重要 じゅうよう な特性 とくせい 値 ち である。一般 いっぱん に、金属 きんぞく が不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か するには、臨界 りんかい 不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電流 でんりゅう 密度 みつど 以上 いじょう の電流 でんりゅう が、対 たい になるカソード反応 はんのう によって供給 きょうきゅう される必要 ひつよう がある。カソード反応 はんのう に対 たい する「カソード分極 ぶんきょく 曲線 きょくせん 」も、アノード分極 ぶんきょく 曲線 きょくせん とほぼ同様 どうよう に測定 そくてい して得 え ることができ、カソード分極 ぶんきょく 曲線 きょくせん は対象 たいしょう の環境 かんきょう によって定 さだ まる。不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か が起 お こるには、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電位 でんい に至 いた るまでカソード分極 ぶんきょく 曲線 きょくせん がアノード分極 ぶんきょく 曲線 きょくせん を常 つね に上回 うわまわ り続 つづ けて、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 域 いき まで自発 じはつ 的 てき に電位 でんい が上 あ がった平衡 へいこう 状態 じょうたい になる必要 ひつよう がある。よって、臨界 りんかい 不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電流 でんりゅう 密度 みつど が低 ひく い金属 きんぞく ほど、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か しやすい。鉄 てつ にクロムを添加 てんか すると、クロム含有 がんゆう 量 りょう の増加 ぞうか にともなって臨界 りんかい 不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電流 でんりゅう 密度 みつど と不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電位 でんい が低 ひく くなり、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 域 いき も広 ひろ がることが知 し られている。すなわち、クロムの添加 てんか により、あまり酸化 さんか 性 せい が強 つよ くない環境 かんきょう でも不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か しやすくなる。さらに、クロムの添加 てんか により不 ふ 働 はたらけ 態 たい 維持 いじ 電流 でんりゅう も小 ちい さくなり、不 ふ 働 はたらけ 態 たい はより安定 あんてい する。これらのクロムの効果 こうか でステンレス鋼 こう は耐食性 たいしょくせい を発揮 はっき しており、これがステンレス鋼 こう の定義 ていぎ においてクロムの一定 いってい 以上 いじょう の含有 がんゆう を必須 ひっす 事項 じこう としている理由 りゆう である。鉄 てつ に添加 てんか して有効 ゆうこう な不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく を発生 はっせい させることができるクロム以外 いがい の元素 げんそ は、現在 げんざい までのところ見 み つかっていない。
電界 でんかい 放出 ほうしゅつ 型 がた 走査 そうさ 電子 でんし 顕微鏡 けんびきょう で撮影 さつえい された SUS304 の不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく 断面 だんめん 。"Substrate" が素地 そじ で、沈着 ちんちゃく された白金 はっきん ・炭素 たんそ との間 あいだ に 3.8 nm の不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく が確認 かくにん できる[154] 。
ステンレス鋼 こう が作 つく る不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく の詳細 しょうさい は現在 げんざい も様々 さまざま な手段 しゅだん による解析 かいせき が行 おこな われており、まだ正確 せいかく には解明 かいめい できていない面 めん もある[156] 。不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく の厚 あつ さは、組成 そせい や環境 かんきょう にもよるが、1–3 nm ないし 1–5 nm と極 きわ めて薄 うす い[156] 。そのため、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく の有無 うむ は肉眼 にくがん では分 わ からない。
ステンレス鋼 こう の不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく の構造 こうぞう は2層 そう 構造 こうぞう となっており、外層 がいそう 側 がわ が水酸化物 すいさんかぶつ 、内層 ないそう 側 がわ が酸化 さんか 物 ぶつ で構成 こうせい されている[156] 。内層 ないそう 酸化 さんか 物 ぶつ では3価 か のクロムイオン (Cr3+ ) が濃縮 のうしゅく されており、ステンレス鋼 こう の素地 そじ と皮膜 ひまく は、酸化 さんか 物 ぶつ イオン (OH− ) を介 かい して結合 けつごう していると考 かんが えられている。この内層 ないそう 酸化 さんか 物 ぶつ が、不 ふ 動態 どうたい 皮膜 ひまく の耐食性 たいしょくせい を主 おも に生 う み出 だ していると考 かんが えられている[156] 。解析 かいせき 結果 けっか からの一 いち 例 れい だが、水 みず 和 わ オキシ水酸化 すいさんか クロム (Cr-O-OH-H2 O) と呼 よ ばれる錯化合 かごう 物 ぶつ が主体 しゅたい として皮膜 ひまく を構成 こうせい しているというモデルが考 かんが えられている。また、不 ふ 動態 どうたい 皮膜 ひまく は非 ひ 化学 かがく 量 りょう 論 ろん 的 てき 化合 かごう 物 ぶつ であり、明確 めいかく な結晶 けっしょう 構造 こうぞう を持 も たないものとみられている[156] 。クロムの量 りょう が多 おお いほど、非 ひ 晶 あきら 質 しつ 的 てき な性質 せいしつ をより示 しめ す[156] 。
ステンレス鋼 こう が弾性 だんせい 変形 へんけい しても、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく もそれによく追従 ついしょう して破壊 はかい されることはない。上記 じょうき でも述 の べたとおり、もしステンレス鋼 こう 表面 ひょうめん が傷 きず ついて皮膜 ひまく が機械 きかい 的 てき に破壊 はかい されても、瞬時 しゅんじ に再生 さいせい する性質 せいしつ を持 も つ。また、ステンレス鋼 こう の不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく は半導体 はんどうたい 型 かた のバンド構造 こうぞう を有 ゆう し、クロム 20 % 程度 ていど までではn型 がた 半導体 はんどうたい 、それ以上 いじょう ではp型 がた 半導体 はんどうたい となることも分 わ かっている。
鉄 てつ とクロムの2元 げん 合金 ごうきん に対 たい して、さらにニッケル やモリブデン などの他 ほか の元素 げんそ を加 くわ わえても、耐食性 たいしょくせい 向上 こうじょう の効果 こうか がある。ニッケルは臨界 りんかい 不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電流 でんりゅう 密度 みつど と不 ふ 働 はたらけ 態 たい 維持 いじ 電流 でんりゅう を小 ちい さくし、モリブデンも臨界 りんかい 不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電流 でんりゅう 密度 みつど を小 ちい さくすることが知 し られている。しかし、いずれの元素 げんそ も不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 電位 でんい は高 たか くしてしまう。モリブデンは不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく 中 ちゅう には存在 そんざい しないとされるが、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく の再生 さいせい を助 たす ける働 はたら きをすると考 かんが えられている。
腐食 ふしょく の形態 けいたい を進行 しんこう 範囲 はんい の大 おお きさで分 わ けると「全面 ぜんめん 腐食 ふしょく 」と「局部 きょくぶ 腐食 ふしょく 」の2つに分 わ かれる。全面 ぜんめん 腐食 ふしょく は、表面 ひょうめん 全体 ぜんたい がおおむね均一 きんいつ に腐食 ふしょく して失 うしな われていく形態 けいたい で、局部 きょくぶ 腐食 ふしょく は、材料 ざいりょう の一部分 いちぶぶん で腐食 ふしょく が局部 きょくぶ 的 てき に進行 しんこう する形態 けいたい である。ステンレス鋼 こう は、その不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 能力 のうりょく によって全面 ぜんめん 腐食 ふしょく に対 たい しては比較的 ひかくてき 強 つよ い。ステンレス鋼 こう の腐食 ふしょく による事故 じこ ・事例 じれい の中 なか では、全面 ぜんめん 腐食 ふしょく によるものの割合 わりあい は少 すく ない。全面 ぜんめん 腐食 ふしょく は発生 はっせい の予測 よそく がしやすいため、腐食 ふしょく 現象 げんしょう の中 なか では危険 きけん 性 せい が小 ちい さい方 ほう である。
ステンレス鋼 こう の全面 ぜんめん 腐食 ふしょく は、表面 ひょうめん が不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か できず、全面 ぜんめん が活性 かっせい 状態 じょうたい となる環境 かんきょう で起 お きる。アノード分極 ぶんきょく 曲 きょく 線上 せんじょう でいえば、不 ふ 働 はたらけ 態 たい に移 うつ る前 まえ の電位 でんい に比例 ひれい して電流 でんりゅう が急増 きゅうぞう していく領域 りょういき のことを「活性 かっせい 帯 たい 」といい、この活性 かっせい 帯 たい で全面 ぜんめん 腐食 ふしょく が起 お きる。一度 いちど 不 ふ 働 はたらけ 態 たい になった金属 きんぞく に対 たい して酸化 さんか 剤 ざい の pH が下 さ がっていくと、あるところの pH 以下 いか で不 ふ 働 はたらけ 態 たい を維持 いじ できなくなる。この pH の値 ね を「脱 だつ 不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か pH」といい、SUS304 の場合 ばあい で 2 前後 ぜんこう である。ステンレス鋼 こう の全面 ぜんめん 腐食 ふしょく は、一般 いっぱん 的 てき に pH = 2 以下 いか の酸 さん 環境 かんきょう で起 お きる。脱 だつ 不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か pH をさらに下 さ げるには、クロム、モリブデン、ニッケルの添加 てんか が有効 ゆうこう である。主 おも な酸 さん に対 たい する大 おお まかな全面 ぜんめん 腐食 ふしょく 耐食性 たいしょくせい の傾向 けいこう を以下 いか に示 しめ す。
主 おも な酸 さん に対 たい する全面 ぜんめん 腐食 ふしょく の耐食性 たいしょくせい 目安 めやす
酸 さん の種類 しゅるい
濃度 のうど (%)
温度 おんど (°C)
13Cr鋼 こう
18Cr鋼 こう
18Cr-8Ni鋼 こう
18Cr-12Mo鋼 こう
塩酸 えんさん
1
20
×
×
△
〇
10
20–35
×
×
×
×
硫酸 りゅうさん
0.5
20
×
△
〇
〇
50
20–30
×
×
×
×
98
30
△
△
〇
〇
硝酸 しょうさん
1
20–50
〇
〇
〇
〇
5
85–沸点 ふってん
△
〇
〇
〇
65
沸点 ふってん
×
×
△
△
酢酸 さくさん
1
沸点 ふってん
△
〇
〇
〇
50
20–50
×
△
〇
〇
100
沸点 ふってん
×
×
×
〇
〇:浸食 しんしょく 度 ど 0.1 mm/年 とし 以下 いか 、△:浸食 しんしょく 度 ど 0.1–1.0 mm/年 とし 、×:浸食 しんしょく 度 ど 1.0 mm/年 とし 以上 いじょう
ステンレス鋼 こう の塩酸 えんさん に対 たい する耐 たい 性 せい は、表 ひょう にも示 しめ すように乏 とぼ しい。塩酸 えんさん はステンレス鋼 こう を不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か させるほど十分 じゅうぶん な酸化 さんか 力 りょく がなく、全面 ぜんめん 腐食 ふしょく を引 ひ き起 お こす。ステンレス鋼 こう がもっとも苦手 にがて とする環境 かんきょう が塩酸 えんさん だといえる。希塩酸 きえんさん に対 たい して使 つか われる場合 ばあい もあるが、塩酸 えんさん 濃度 のうど が低 ひく い場合 ばあい でも後述 こうじゅつ の孔 あな 食 しょく や応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ の可能 かのう 性 せい がある。
硫酸 りゅうさん に対 たい しては、中 ちゅう 濃度 のうど では全面 ぜんめん 腐食 ふしょく が起 お きる。十分 じゅうぶん な高 こう 濃度 のうど または低 てい 濃度 のうど の硫酸 りゅうさん に対 たい してのみ、ステンレス鋼 こう の使用 しよう が許容 きょよう される。高温 こうおん 化 か した硫酸 りゅうさん に対 たい しても全面 ぜんめん 腐食 ふしょく が起 お きる可能 かのう 性 せい があり、0.5 % 硫酸 りゅうさん でも温度 おんど が 100 °C で腐食 ふしょく が進 すす む。硝酸 しょうさん については、中 ちゅう 濃度 のうど およびそれ以下 いか であればステンレス鋼 こう は良好 りょうこう な耐食性 たいしょくせい を持 も つ。一方 いっぽう で、高 こう 濃度 のうど や高 こう 温度 おんど の硝酸 しょうさん に対 たい しては大 おお きな腐食 ふしょく が起 お きる。代表 だいひょう 的 てき な有機 ゆうき 酸 さん である酢酸 さくさん に対 たい しては、沸点 ふってん 温度 おんど になると腐食 ふしょく しないために高 こう 耐 たい 食 しょく ステンレス鋼 こう が必要 ひつよう となる。ただし、実際 じっさい の酢酸 さくさん には不純物 ふじゅんぶつ や共存 きょうぞん 成分 せいぶん が混 ま じり、それらが腐食 ふしょく を促進 そくしん する。
アルカリ性 あるかりせい 環境 かんきょう については、希薄 きはく なアルカリ水溶液 すいようえき に対 たい しては不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か して良好 りょうこう な耐食性 たいしょくせい を示 しめ す。ステンレス鋼 こう で実際 じっさい に問題 もんだい となるのは苛性 かせい ソーダ による腐食 ふしょく である。苛性 かせい ソーダに対 たい してはニッケルが有効 ゆうこう で、ニッケル含有 がんゆう 量 りょう が多 おお いほど耐食性 たいしょくせい が向上 こうじょう する。クロム・ニッケル系 けい ステンレス鋼 こう の SUS304 の場合 ばあい で、濃度 のうど 50 % 以下 いか 、温度 おんど 80 °C 以下 いか であれば腐食 ふしょく に耐 た え、それ以上 いじょう の条件 じょうけん になると全面 ぜんめん 腐食 ふしょく が進 すす む。
孔 あな 食 しょく ・すきま腐食 ふしょく [ 編集 へんしゅう ]
ステンレス鋼 こう の場合 ばあい 、全面 ぜんめん 腐食 ふしょく よりも、材料 ざいりょう 中 ちゅう の一部分 いちぶぶん で腐食 ふしょく が進 すす む局部 きょくぶ 腐食 ふしょく の方 ほう が実用 じつよう 上 じょう の問題 もんだい となることが多 おお い。特 とく にステンレス鋼 こう で問題 もんだい となる局部 きょくぶ 腐食 ふしょく は「孔 あな 食 しょく 」「すきま腐食 ふしょく 」「粒 つぶ 界 かい 腐食 ふしょく 」「応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ 」などがある。
孔 あな 食 しょく 試験 しけん 後 ご のオーステナイト・フェライト系 けい に出来 でき た孔 あな 食 しょく の様子 ようす 。写真 しゃしん は高温 こうおん 暴露 ばくろ の影響 えいきょう を調 しら べており、(a)は固 かた 溶化熱処理 ねつしょり 後 ご の試験 しけん 片 へん 、(b)(c)(d)はそれぞれ 350 °C、450 °C、500 °C で5500時 じ 間 あいだ 時効 じこう されたもの[183] 。
孔 あな 食 しょく とは、全体 ぜんたい 的 てき には腐食 ふしょく が進 すす んでいない状況 じょうきょう にもかかわらず材料 ざいりょう 中 ちゅう の一部分 いちぶぶん が穴 あな 状 じょう に浸食 しんしょく する形態 けいたい の腐食 ふしょく である。具体 ぐたい 的 てき な破壊 はかい モデルは種々 しゅじゅ 提案 ていあん されているが、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく が電気 でんき 化学 かがく 的 てき あるいは機械 きかい 的 てき に局所 きょくしょ 的 てき に破壊 はかい されると、そこから孔 あな 食 しょく が発生 はっせい する。ハロゲンイオン を含 ふく む水溶液 すいようえき 環境 かんきょう 中 ちゅう で孔 あな 食 しょく は起 お こりやすく、特 とく にステンレス鋼 こう の場合 ばあい は塩化 えんか 物 ぶつ イオン (Cl− )を含 ふく む水溶液 すいようえき 中 ちゅう で孔 あな 食 しょく が起 お こりやすい。外部 がいぶ との液 えき 交換 こうかん が難 むずか しいピット(孔 あな )中 ちゅう では、ピット中 ちゅう の溶存 ようぞん 酸素 さんそ が消費 しょうひ されて、ピット中 ちゅう は溶解 ようかい 金属 きんぞく イオンが過剰 かじょう な状態 じょうたい となる。電気 でんき 的中 てきちゅう 性 せい を保 たも つために、外部 がいぶ の Cl− が電気 でんき 泳 およげ 動 どう でピット中 ちゅう に引 ひ き寄 よ せられ、ピット内 ない で金属 きんぞく 塩化 えんか 物 ぶつ ができる。金属 きんぞく 塩化 えんか 物 ぶつ はすぐに加水 かすい 分解 ぶんかい して、ピット内部 ないぶ の pH はさらに低下 ていか し、ピット内部 ないぶ で腐食 ふしょく が進 すす む。塩化 えんか 物 ぶつ イオンの場合 ばあい はこのような機構 きこう によって孔 あな 食 しょく が進 すす むと考 かんが えられている。
孔 あな 食 しょく に対 たい する耐食性 たいしょくせい 向上 こうじょう には、クロム 、モリブデン 、窒素 ちっそ 、ケイ素 けいそ 、タングステン 、レニウム など添加 てんか が有効 ゆうこう である。特 とく に、クロムとモリブデンが耐 たい 孔 あな 食 しょく 性 せい 向上 こうじょう の元素 げんそ として挙 あ げられる。合金 ごうきん 元素 げんそ 量 りょう から耐 たい 孔 あな 食 しょく 性 せい の指標 しひょう を計算 けいさん するものとして、耐 たい 孔 あな 食指 しょくし 数 すう (Pitting Resistance Equivalent Number, PREN または Pitting Resistance Equivalent, PRE) が知 し られている。よく使 つか われる PREN の式 しき は
PREN = %Cr + 3.3 × %Mo + n × %N
と表 あらわ される。窒素 ちっそ (N)の影響 えいきょう 力 りょく を意味 いみ する係数 けいすう n の値 ね は研究 けんきゅう 者 しゃ によって異 こと なり、n = 16 がよく使 つか われる。ただし、オーステナイト系 けい には n = 30 の方 ほう がより適当 てきとう ともいわれる。フェライト系 けい の場合 ばあい は n = 0 で計算 けいさん する。PREN が40以上 いじょう の鋼 はがね 種 しゅ を「スーパーステンレス鋼 こう 」と呼 よ ぶ。
304系 けい ステンレス鋼 こう 上 じょう の非金属 ひきんぞく 介在 かいざい 物 ぶつ から形成 けいせい された孔 あな 食 しょく の様子 ようす 。塩酸 えんさん 酸性 さんせい の塩化 えんか 第 だい 二 に 鉄 てつ 溶液 ようえき による浸漬 しんせき 試験 しけん 後 ご のもので、縦列 じゅうれつ が浸漬 しんせき 時間 じかん を示 しめ す。横列 おうれつ (a)(b)(c)は非金属 ひきんぞく 介在 かいざい 物 ぶつ の種類 しゅるい 別 べつ [194] 。
また、ステンレス鋼 こう 中 ちゅう の非金属 ひきんぞく 介在 かいざい 物 ぶつ は、孔 あな 食 しょく 発生 はっせい の核 かく となり、有害 ゆうがい であることが知 し られる。特 とく に硫化 りゅうか マンガン(II) (MnS) の介在 かいざい 物 ぶつ が有害 ゆうがい である。このため、組成 そせい の制御 せいぎょ や表面 ひょうめん 処理 しょり による MnS の除去 じょきょ が耐食性 たいしょくせい 改善 かいぜん に有効 ゆうこう である。使用 しよう 上 じょう の対策 たいさく としては、できるだけ Cl− 濃度 のうど および温度 おんど が低 ひく い環境 かんきょう で使用 しよう することが望 のぞ ましい。日常 にちじょう 生活 せいかつ の例 れい でいえば、台所 だいどころ 周 まわ りでステンレス鋼 こう に付着 ふちゃく した塩 しお や醤油 じょうゆ などを放置 ほうち すると、孔 あな 食 しょく が発生 はっせい ・進行 しんこう する恐 おそ れがある。
すきま腐食 ふしょく とは、だいたい 0.01 mm 程度 ていど の微小 びしょう なすきまで起 お こる腐食 ふしょく で、すきま内部 ないぶ で局所 きょくしょ 的 てき な腐食 ふしょく が進 すす む。ステンレス鋼 こう 表面 ひょうめん に付着 ふちゃく した異物 いぶつ の下 した から、あるいはボルト ・ナット 締結 ていけつ 部 ぶ やフランジ継手 つぎて のような構造 こうぞう 上 じょう のすきま部 ぶ から、すきま腐食 ふしょく が起 お きる。
すきま腐食 ふしょく では閉鎖 へいさ 環境 かんきょう として機能 きのう するすきまが最初 さいしょ から存在 そんざい する点 てん が孔 あな 食 しょく と異 こと なるが、すきま腐食 ふしょく の腐食 ふしょく 進行 しんこう 機構 きこう は孔 あな 食 しょく と本質 ほんしつ 的 てき には同 おな じである。対策 たいさく も同様 どうよう に、クロムやモリブデンの合金 ごうきん 元素 げんそ 添加 てんか 、低 てい Cl− 濃度 のうど 環境 かんきょう での使用 しよう が有効 ゆうこう である。また、構造 こうぞう 上 じょう のすきまができるだけないように配慮 はいりょ することも必要 ひつよう である。
オーステナイト系 けい に発生 はっせい した粒 つぶ 界 かい 腐食 ふしょく の様子 ようす 。
粒 つぶ 界 かい 腐食 ふしょく とは、多 た 結晶 けっしょう 体 たい 中 ちゅう の個々 ここ の結晶 けっしょう の境目 さかいめ である結晶 けっしょう 粒 つぶ 界 かい で局部 きょくぶ 的 てき に腐食 ふしょく が進 すす む現象 げんしょう である。ステンレス鋼 こう の粒 つぶ 界 かい 腐食 ふしょく は、粒 つぶ 界 かい 付近 ふきん にクロムが欠乏 けつぼう した領域 りょういき が存在 そんざい することによって起 お きる。粒 つぶ 界 かい では、結晶 けっしょう 粒 つぶ 内 うち と比較 ひかく して析出 せきしゅつ が進行 しんこう しやすい。また、炭素 たんそ はクロムと結合 けつごう しやすい性質 せいしつ を持 も っている。そのため、ステンレス鋼 こう が高温 こうおん に加熱 かねつ されると、ステンレス鋼 こう 中 ちゅう の炭素 たんそ とクロムが結合 けつごう して粒 つぶ 界 かい でクロム炭化物 たんかぶつ (Cr23 C6 ) ができる。生成 せいせい したクロム炭化物 たんかぶつ の周辺 しゅうへん ではステンレス鋼 こう 中 ちゅう のクロムは欠乏 けつぼう する。クロム欠乏 けつぼう 帯 たい では 10 % を下回 したまわ るような低 てい クロム濃度 のうど になっており、耐食性 たいしょくせい が乏 とぼ しく、そのため粒 つぶ 界 かい 腐食 ふしょく が起 お きる。粒 つぶ 界 かい 腐食 ふしょく がひどく進行 しんこう すると結晶 けっしょう 粒 つぶ の脱落 だつらく が起 お き、強度 きょうど にも悪影響 あくえいきょう を及 およ ぼし得 え る。
著 いちじる しく鋭敏 えいびん 化 か した304系 けい の組織 そしき 写真 しゃしん 。一般 いっぱん 的 てき に、鋭敏 えいびん 化 か したステンレス鋼 こう ではクロム炭化物 たんかぶつ の析出 せきしゅつ によって粒 つぶ 界 かい が太 ふと く見 み える。
クロム欠乏 けつぼう 帯 たい の発生 はっせい のように、粒 つぶ 界 かい 腐食 ふしょく が起 お きやすい材質 ざいしつ になることを「鋭敏 えいびん 化 か 」という。オーステナイト系 けい の場合 ばあい 、およそ 400 °C から 800 °C の温度 おんど 域 いき でクロム欠乏 けつぼう 帯 たい による鋭敏 えいびん 化 か が起 お きる可能 かのう 性 せい がある。この温度 おんど 域 いき で短時間 たんじかん でも保持 ほじ されるとクロム炭化物 たんかぶつ が析出 せきしゅつ するため、この温度 おんど 域 いき を徐 じょ 冷 ひや でゆっくり通過 つうか しても鋭敏 えいびん 化 か の可能 かのう 性 せい がある。一方 いっぽう で、フェライト系 けい では約 やく 900 °C 以上 いじょう からの急冷 きゅうれい で鋭敏 えいびん 化 か が起 お こる。オーステナイト系 けい とフェライト系 けい の温度 おんど 条件 じょうけん の違 ちが いは、組織 そしき 中 ちゅう におけるクロムの拡散 かくさん 速度 そくど 、炭素 たんそ の拡散 かくさん 速度 そくど 、炭素 たんそ の固 かた 溶量が異 こと なることによる。ただし、フェライト系 けい の鋭敏 えいびん 化 か は比較的 ひかくてき 軽微 けいび で、特 とく に問題 もんだい となるのはオーステナイト系 けい の鋭敏 えいびん 化 か といえる。
ステンレス鋼 こう が素材 そざい の状態 じょうたい では、適切 てきせつ な熱処理 ねつしょり を施 ほどこ すことによってクロム炭化物 たんかぶつ は素地 そじ に溶 と けて、クロム欠乏 けつぼう 帯 たい を作 つく らずに済 す む。しかし溶接 ようせつ を行 おこな う場合 ばあい 、高温 こうおん に上昇 じょうしょう する溶接 ようせつ 箇所 かしょ の熱 ねつ 影響 えいきょう 部 ぶ で鋭敏 えいびん 化 か が起 お き得 え る。上記 じょうき の温度 おんど 条件 じょうけん の違 ちが いにより、オーステナイト系 けい では溶接 ようせつ 金属 きんぞく から少 すこ し離 はな れたところで、フェライト系 けい では溶接 ようせつ 金属 きんぞく の直近 ちょっきん で鋭敏 えいびん 化 か の可能 かのう 性 せい が高 たか い。このように溶接 ようせつ 熱 ねつ 影響 えいきょう 部 ぶ で起 お きる粒 つぶ 界 かい 腐食 ふしょく は「ウェルドディケイ (weld decay)」と呼 よ ばれる。
ステンレス鋼 こう の鋭敏 えいびん 化 か に対 たい する材料 ざいりょう 側 がわ の対策 たいさく としては、クロム炭化物 たんかぶつ の元 もと となる炭素 たんそ の低減 ていげん が有効 ゆうこう となる。また、ニオブ やチタン のような、優先 ゆうせん 的 てき に炭素 たんそ と安定 あんてい な化合 かごう 物 ぶつ を作 つく る合金 ごうきん 元素 げんそ の添加 てんか も有効 ゆうこう である。溶接 ようせつ 上 じょう の対策 たいさく は、できるだけ入 いれ 熱 ねつ が小 ちい さい溶接 ようせつ 条件 じょうけん を選定 せんてい することである。変形 へんけい の危険 きけん もあるが、溶接 ようせつ 後 ご に再度 さいど の固 かた 溶化熱処理 ねつしょり を実施 じっし することも対策 たいさく となる。
応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ[ 編集 へんしゅう ]
UNS S31603 の人工 じんこう 海水 かいすい 環境 かんきょう 応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ試験 しけん で起 お きた割 わ れ[217] 。
応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ とは、腐食 ふしょく 環境 かんきょう に引 ひ っ張 ぱ る力 ちから (応力 おうりょく )が重 かさ なったときに割 わ れが起 お きる現象 げんしょう である。引張 ひっぱ り強 つよ さ未 み 満 まん の応力 おうりょく であっても腐食 ふしょく 作用 さよう が加 くわ わることで割 わ れが発生 はっせい し、最終 さいしゅう 的 てき には破断 はだん にまで至 いた る可能 かのう 性 せい もある。広義 こうぎ の応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れは、アノード反応 はんのう 溶解 ようかい が割 わ れを助長 じょちょう する「活性 かっせい 経路 けいろ 腐食 ふしょく 型 がた 応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ」と、材料 ざいりょう 中 ちゅう の水素 すいそ 原子 げんし が原因 げんいん となる「水素 すいそ 脆性 ぜいせい 型 がた 応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ」に分 わ かれる。応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れの事例 じれい 全体 ぜんたい の中 なか でも発生 はっせい 事例 じれい が多 おお いのが、ステンレス鋼 こう の応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ、特 とく に塩化 えんか 物 ぶつ 環境 かんきょう で起 お きるオーステナイト系 けい の活性 かっせい 経路 けいろ 腐食 ふしょく 型 がた 応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れである。オーステナイト系 けい 使用 しよう 上 じょう の大 おお きな問題 もんだい 点 てん の一 ひと つが、応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れといえる。
塩化 えんか 物 ぶつ 環境 かんきょう での応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れの場合 ばあい 、塩化 えんか 物 ぶつ 濃度 のうど 、溶存 ようぞん 酸素 さんそ 、温度 おんど が高 たか いほど割 わ れが発生 はっせい しやすくなる[222] 。高温 こうおん 高 だか 圧 あつ の塩化 えんか 物 ぶつ 水溶液 すいようえき を扱 あつか う熱 ねつ 交換 こうかん 器 き などで起 お きるものが、オーステナイト系 けい の応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れの代表 だいひょう 例 れい である。実際 じっさい の環境 かんきょう で起 お きたステンレス鋼 こう の応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れの事例 じれい によると、多 おお くは 70 °C 以上 いじょう の環境 かんきょう 温度 おんど で起 お きている。塩化 えんか 物 ぶつ 以外 いがい では、苛性 かせい ソーダ などの高温 こうおん アルカリ水溶液 すいようえき でステンレス鋼 こう の応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れは起 お きる。
固 かた 溶化熱処理 ねつしょり されたステンレス鋼 こう であれば、結晶 けっしょう 粒 つぶ 内 うち を割 わ れが進 すす む「粒 つぶ 内 ない 割 わ れ」が塩化 えんか 物 ぶつ 環境 かんきょう の活性 かっせい 経路 けいろ 腐食 ふしょく 型 がた 応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れの形態 けいたい となることが多 おお い。ステンレス鋼 こう で起 お こる応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れの多 おお くは粒 つぶ 内 ない 割 わ れである。一方 いっぽう で、ステンレス鋼 こう が鋭敏 えいびん 化 か していると、結晶 けっしょう 粒 つぶ 界 かい を割 わ れが進 すす む「粒 つぶ 界 かい 割 わ れ」が生 しょう じ得 え る。粒 つぶ 界 かい 割 わ れ型 がた の応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れの場合 ばあい は、200 °C から 300 °C の高 こう 純度 じゅんど 高 だか 温水 おんすい でも発生 はっせい する。粒 つぶ 界 かい 割 わ れ型 がた の応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れを防 ふせ ぐためにも、材料 ざいりょう の鋭敏 えいびん 化 か を防 ふせ ぐことが重要 じゅうよう となる。
フェライト系 けい とオーステナイト・フェライト系 けい は、オーステナイト系 けい と比較 ひかく すると応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れが生 しょう じづらい。ステンレス鋼 こう の中 なか で材料 ざいりょう を選 えら ぶならば、対応 たいおう 策 さく としてはフェライト系 けい やオーステナイト・フェライト系 けい が選択肢 せんたくし となる。オーステナイト系 けい の場合 ばあい は、ニッケル含有 がんゆう 量 りょう を 40 % 近 ちか くまで増 ふ やすと実用 じつよう 的 てき なレベルまで耐 たい 応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ性 せい が高 たか まるが、コストの面 めん からこのような鋼 はがね 種 しゅ の選択 せんたく は難 むずか しい。引張 ひっぱ 応力 おうりょく が大 おお きいほど応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れは起 お きやすくなるので、引張 ひっぱ 応力 おうりょく ができるだけ加 くわ わらない設計 せっけい や施工 しこう が望 のぞ まれる。
水素 すいそ 脆性 ぜいせい 型 がた 応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れは、単 たん に「水素 すいそ 脆 もろ 化 か 」や「水素 すいそ 脆性 ぜいせい 」とも呼 よ ばれる。通常 つうじょう の腐食 ふしょく に起因 きいん した水素 すいそ の侵入 しんにゅう を原因 げんいん とする水素 すいそ 脆性 ぜいせい の場合 ばあい は、その耐食性 たいしょくせい によって炭素 たんそ 鋼 こう などよりもステンレス鋼 こう の水素 すいそ 脆性 ぜいせい は起 お きづらい[236] 。水素 すいそ 燃料 ねんりょう 機器 きき の材料 ざいりょう として、オーステナイト系 けい ステンレス鋼 こう が用 もち いられることが多 おお い[237] 。しかし、ステンレス鋼 こう であって、腐食 ふしょく に起因 きいん した水素 すいそ 侵入 しんにゅう ではないため高圧 こうあつ 水素 すいそ ガス環境 かんきょう 下 か では水素 すいそ 脆性 ぜいせい の可能 かのう 性 せい がある[236] 。高 こう 圧 あつ 水素 すいそ 中 ちゅう の水素 すいそ 脆性 ぜいせい 評価 ひょうか によると、オーステナイト系 けい SUS316L やオーステナイト系 けい 析出 せきしゅつ 硬化 こうか 型 がた ステンレス鋼 こう A-286 などのオーステナイト安定 あんてい 度 ど の高 たか い鋼 はがね 種 しゅ が脆 もろ 化 か しづらく、オーステナイト系 けい SUS304L やマルテンサイト系 けい ステンレス鋼 こう は脆 もろ 化 か を示 しめ す[236] 。ただし、ステンレス鋼 こう の水素 すいそ 脆性 ぜいせい の機構 きこう 自体 じたい がまだ未 み 解明 かいめい で、結論 けつろん は得 え られていない[237] 。
異種 いしゅ 金属 きんぞく 接触 せっしょく 腐食 ふしょく [ 編集 へんしゅう ]
異種 いしゅ 金属 きんぞく 接触 せっしょく 腐食 ふしょく とは、異 こと なる種類 しゅるい の金属 きんぞく が接触 せっしょく するときに電池 でんち が形成 けいせい され、電極 でんきょく 電位 でんい が低 ひく くなる方 かた (卑な方 ほう )の金属 きんぞく で腐食 ふしょく が進 すす む現象 げんしょう である。不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か したステンレス鋼 こう は、海水 かいすい 中 ちゅう の腐食 ふしょく 電位 でんい 列 れつ に代表 だいひょう されるように、鋼 はがね 、鋳鉄 ちゅうてつ 、銅 どう 合金 ごうきん といった他 ほか の実用 じつよう 構造 こうぞう 材料 ざいりょう に対 たい して電極 でんきょく 電位 でんい の高 たか い側 がわ (貴 き な側 がわ )となりやすい。そのため、異種 いしゅ 金属 きんぞく 接触 せっしょく 腐食 ふしょく が起 お こる場合 ばあい も、ステンレス鋼 こう 側 がわ の腐食 ふしょく よりも相手 あいて 材料 ざいりょう 側 がわ の腐食 ふしょく が問題 もんだい となることが実用 じつよう 上 じょう は多 おお い。
異種 いしゅ 金属 きんぞく 接触 せっしょく 腐食 ふしょく への影響 えいきょう 要素 ようそ としては、両 りょう 金属 きんぞく の腐食 ふしょく 電位 でんい 列 れつ 上 じょう の関係 かんけい や面積 めんせき の比率 ひりつ 、電解 でんかい 質 しつ 溶液 ようえき の電気 でんき 伝導 でんどう 率 りつ や流速 りゅうそく が関係 かんけい する。特 とく に重要 じゅうよう なのが面積 めんせき 比率 ひりつ で、接触 せっしょく する両 りょう 金属 きんぞく の内 うち の卑な金属 きんぞく の面積 めんせき が、貴 とうと な金属 きんぞく の面積 めんせき よりも小 ちい さければ小 ちい さいほど腐食 ふしょく が進展 しんてん しやすくなる。よくある例 れい はステンレス鋼板 こうはん を普通 ふつう 鋼 こう のボルト で締結 ていけつ したような事例 じれい で、ステンレス鋼板 こうはん 側 がわ が貴 とうと かつ面積 めんせき 大 だい の状態 じょうたい で、普通 ふつう 鋼 こう ボルト側 がわ が卑かつ面積 めんせき 小 しょう の状態 じょうたい であるため、ボルトの著 いちじる しい腐食 ふしょく が起 お こり得 え る。
高温 こうおん の気体 きたい の作用 さよう で起 お こる腐食 ふしょく 現象 げんしょう の乾 いぬい 食 しょく 、あるいは高温 こうおん で起 お こる腐食 ふしょく 現象 げんしょう 全般 ぜんぱん の高温 こうおん 腐食 ふしょく についても、汎用 はんよう 金属 きんぞく 材料 ざいりょう の中 なか ではステンレス鋼 こう は優秀 ゆうしゅう な耐 たい 性 せい を持 も つ材料 ざいりょう だといえる。乾 いぬい 食 しょく は、発電 はつでん 所 しょ 、石油 せきゆ 化学 かがく プラント、自動車 じどうしゃ 排 はい ガス装置 そうち などの高温 こうおん 装置 そうち で関係 かんけい し、主 おも に「高温 こうおん 酸化 さんか 」と「高温 こうおん ガス腐食 ふしょく 」に分類 ぶんるい される。
高温 こうおん 酸化 さんか したステンレス鋼 こう (S32654)の表面 ひょうめん の様子 ようす 。(a)(d)が1時 じ 間 あいだ 暴露 ばくろ 後 ご 、(b)(e)が3時 じ 間 あいだ 暴露 ばくろ 後 ご 、(c)(f)が5時 じ 間 あいだ 暴露 ばくろ 後 ご の状態 じょうたい を示 しめ す[244] 。
鉄鋼 てっこう 材料 ざいりょう を高温 こうおん 大気 たいき 中 ちゅう に長時間 ちょうじかん さらすと、ぼろぼろの表面 ひょうめん となることがある。このような現象 げんしょう を高温 こうおん 酸化 さんか という。高温 こうおん 大気 たいき 環境 かんきょう 中 ちゅう で生 しょう じる酸化 さんか 現象 げんしょう で、空気 くうき 中 なか や酸素 さんそ 中 なか の他 ほか に水蒸気 すいじょうき 中 なか や二酸化炭素 にさんかたんそ 中 なか でも生 しょう じる。ステンレス鋼 こう は高温 こうおん 酸化 さんか にも優 すぐ れた耐 たい 性 せい を示 しめ す。ステンレス鋼 こう の耐 たい 酸化 さんか 性 せい の源 みなもと は主 おも にクロムによるもので、クロム含有 がんゆう 量 りょう が多 おお いほど高温 こうおん 酸化 さんか への耐 たい 性 せい も向上 こうじょう する。高温 こうおん 酸化 さんか が激 はげ しくなって使用 しよう が困難 こんなん になる温度 おんど が炭素 たんそ 鋼 こう では 500 °C 程度 ていど といわれるのに対 たい して、ステンレス鋼 こう では鋼 はがね 種 しゅ にもよるが 1000 °C 程度 ていど となる[249] 。
高温 こうおん での耐 たい 酸化 さんか 性 せい や耐食性 たいしょくせい の源 みなもと は、表面 ひょうめん に形成 けいせい される保護 ほご 皮膜 ひまく による。この皮膜 ひまく は保護 ほご 性 せい を持 も つ点 てん では不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく と同 おな じだが、組成 そせい も異 こと なり厚 あつ みも大 おお きく、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく とは別物 べつもの である。ステンレス鋼 こう のクロムが 20 % 以上 いじょう の高 こう 含有 がんゆう 量 りょう になると、酸化 さんか クロム(III) (Cr2 O3 )で出来 でき た保護 ほご 性 せい のある酸化 さんか 物 ぶつ 皮膜 ひまく が表面 ひょうめん を緻密 ちみつ に覆 おお う。この酸化 さんか 物 ぶつ 皮膜 ひまく 中 ちゅう では金属 きんぞく イオンや酸素 さんそ イオンの拡散 かくさん が非常 ひじょう に遅 おそ く、ステンレス鋼 こう の高 たか い耐 たい 酸化 さんか 性 せい が得 え られる。ただし、18 % 未満 みまん 程度 ていど のクロム含有 がんゆう 量 りょう が低 ひく い場合 ばあい は、緻密 ちみつ で連続 れんぞく した Cr2 O3 皮膜 ひまく は形成 けいせい されず、FeCr2 O4 や Fe(Fe,Cr)2 O4 の皮膜 ひまく が形成 けいせい されるに留 と まる。しかし実用 じつよう 的 てき には、SUS410 のような11%クロムステンレス鋼 こう や SUS430 のような17%クロムステンレス鋼 こう も 800 °C ないし 850 °C を使用 しよう 限度 げんど 温度 おんど として高温 こうおん 酸化 さんか 環境 かんきょう で使 つか われている。
1時 じ 間 あいだ ・900 °Cの高温 こうおん 酸化 さんか を受 う けたステンレス鋼 こう (S32654)の断面 だんめん 写真 しゃしん 。明 あか るい灰色 はいいろ 部分 ぶぶん が素地 そじ で、暗 くら い灰色 はいいろ 部分 ぶぶん が高温 こうおん 酸化 さんか でできた酸化 さんか 物 ぶつ 皮膜 ひまく [244] 。
保護 ほご 性 せい の Cr2 O3 皮膜 ひまく が欠損 けっそん ・剥離 はくり を起 お こした場合 ばあい でも、クロム含有 がんゆう 量 りょう が高 たか ければ直 ただ ちに Cr2 O3 皮膜 ひまく を再生 さいせい できる。他 た の合金 ごうきん 元素 げんそ としては、ケイ素 けいそ が耐 たい 酸化 さんか 性 せい を著 いちじる しく改善 かいぜん する。添加 てんか されたケイ素 けいそ は皮膜 ひまく 層 そう と母 はは 材 ざい の界面 かいめん に二酸化 にさんか ケイ素 けいそ として塊状 かいじょう または連続 れんぞく 層 そう として存在 そんざい し、Cr2 O3 皮膜 ひまく の形成 けいせい を助力 じょりょく する。アルミニウム にも大 おお きな改善 かいぜん の効果 こうか があるが、クロムとアルミニウムの含有 がんゆう 量 りょう によって効果 こうか が異 こと なり、その挙動 きょどう は複雑 ふくざつ である。例 たと えば クロム 14 % を含 ふく むものに対 たい して 0.8 % から 2.0 % のアルミニウムを添加 てんか すると、酸化 さんか アルミニウム (Al2 O3 )の皮膜 ひまく が Cr2 O3 皮膜 ひまく の下 した に形成 けいせい される。Al2 O3 皮膜 ひまく 自体 じたい は緻密 ちみつ で保護 ほご 性 せい が高 たか いが、この場合 ばあい は皮膜 ひまく の剥離 はくり を誘発 ゆうはつ して酸化 さんか 速度 そくど がむしろ大 おお きくなる。さらにアルミニウム濃度 のうど が高 たか くなれば、最 さい 外層 がいそう に Al2 O3 皮膜 ひまく が形成 けいせい されるようになり、酸化 さんか 速度 そくど が著 いちじる しく小 ちい さくなる。逆 ぎゃく にアルミニウム含有 がんゆう 量 りょう が 0.3 % 程度 ていど の場合 ばあい も、Al2 O3 粒子 りゅうし が Cr2 O3 皮膜 ひまく の下 した に分散 ぶんさん 、内部 ないぶ 酸化 さんか 層 そう となって、酸化 さんか 速度 そくど を減少 げんしょう させる。
上述 じょうじゅつ のように、高温 こうおん 酸化 さんか は水蒸気 すいじょうき 雰囲気 ふんいき 中 ちゅう でも生 しょう じる。水蒸気 すいじょうき 中 ちゅう で起 お こる高温 こうおん 腐食 ふしょく を特 とく に「水蒸気 すいじょうき 酸化 さんか 」と呼 よ ぶ。火力 かりょく 発電 はつでん のボイラーで 500 °C から 650 °C の高温 こうおん 蒸気 じょうき に晒 さら される管内 かんない 面 めん などで問題 もんだい となる。水蒸気 すいじょうき 酸化 さんか の進行 しんこう は、水蒸気 すいじょうき の解離 かいり によって発生 はっせい した酸素 さんそ 分子 ぶんし によって、または水蒸気 すいじょうき と鉄 てつ の直接 ちょくせつ 反応 はんのう によって進行 しんこう するといわれる。水蒸気 すいじょうき 酸化 さんか では、同時 どうじ 発生 はっせい する水素 すいそ が皮膜 ひまく に欠陥 けっかん を作 つく り、さらに、そこまで温度 おんど が高 たか くないため保護 ほご 皮膜 ひまく が一様 いちよう に生成 せいせい されにくいことや酸素 さんそ の供給 きょうきゅう が不十分 ふじゅうぶん なことによって、水蒸気 すいじょうき 酸化 さんか 中 ちゅう での酸化 さんか 皮膜 ひまく は不完全 ふかんぜん で保護 ほご 性 せい が低 ひく くなりやすい。水蒸気 すいじょうき 酸化 さんか 性 せい に大 おお きな影響 えいきょう を持 も つ合金 ごうきん 元素 げんそ はクロムで、多量 たりょう 添加 てんか によって水蒸気 すいじょうき 酸化 さんか への耐 たい 性 せい を向上 こうじょう できる。
高温 こうおん ガス腐食 ふしょく [ 編集 へんしゅう ]
大気 たいき 環境 かんきょう 以外 いがい で生 しょう じる乾 いぬい 食 しょく は高温 こうおん ガス腐食 ふしょく と呼 よ ばれる。ステンレス鋼 こう に関 かか わる代表 だいひょう 的 てき な高温 こうおん ガス腐食 ふしょく が、高温 こうおん 硫化 りゅうか 、浸炭 しんたん 、窒化、ハロゲンガス腐食 ふしょく などである。
高温 こうおん 硫化 りゅうか は、硫化 りゅうか 水素 すいそ ガスや亜硫酸 ありゅうさん ガスなどの雰囲気 ふんいき 中 ちゅう で起 お こる。高温 こうおん 硫化 りゅうか の挙動 きょどう は、高温 こうおん 酸化 さんか と同 おな じように、表面 ひょうめん にできる皮膜 ひまく の生成 せいせい と成長 せいちょう に支配 しはい される。高温 こうおん 硫化 りゅうか における皮膜 ひまく は硫化 りゅうか 物 ぶつ によって形成 けいせい されるが、格子 こうし 欠陥 けっかん が多 おお くてイオンが拡散 かくさん しやすいため、この硫化 りゅうか 物 ぶつ 皮膜 ひまく には高温 こうおん 酸化 さんか における酸化 さんか 物 ぶつ 皮膜 ひまく のような保護 ほご 力 りょく はない。実用 じつよう 合金 ごうきん 全般 ぜんぱん を見渡 みわた しても、硫化 りゅうか 水素 すいそ ガス雰囲気 ふんいき 中 ちゅう での最大 さいだい の耐用 たいよう 温度 おんど は 600 °C が限界 げんかい といわれる。クロムの添加 てんか は硫化 りゅうか を抑制 よくせい する効果 こうか があるため、ステンレス鋼 こう の耐 たい 高温 こうおん 硫化 りゅうか 性 せい は炭素 たんそ 鋼 こう よりは優 すぐ れている。クロムの他 ほか にはアルミニウムやケイ素 けいそ の添加 てんか が有効 ゆうこう で、硫化 りゅうか 速度 そくど 減少 げんしょう の効果 こうか を示 しめ す。
浸炭 しんたん は、一酸化 いっさんか 炭素 たんそ 、二酸化炭素 にさんかたんそ 、炭化 たんか 水素 すいそ などの高温 こうおん ガス雰囲気 ふんいき 中 ちゅう で起 お こる現象 げんしょう で、炭素 たんそ 原子 げんし が内部 ないぶ に拡散 かくさん して炭化物 たんかぶつ を形成 けいせい する[249] 。窒化 は、アンモニア 雰囲気 ふんいき などの窒素 ちっそ を含 ふく む高温 こうおん 雰囲気 ふんいき 中 ちゅう で起 お こる現象 げんしょう で、窒素 ちっそ 原子 げんし が内部 ないぶ に拡散 かくさん して固溶体 こようたい や窒化物 ぶつ を形成 けいせい する。浸炭 しんたん も窒化も材質 ざいしつ を脆 もろ 化 か させたり、クロム欠乏 けつぼう 帯 たい をつくり異常 いじょう 酸化 さんか の原因 げんいん となったりする。浸炭 しんたん に有効 ゆうこう な合金 ごうきん 元素 げんそ には、保護 ほご 性 せい のある酸化 さんか 物 ぶつ を形成 けいせい するクロムとケイ素 けいそ 、炭化物 たんかぶつ を形成 けいせい しないニッケルが挙 あ げられる。窒化の場合 ばあい は、特 とく に有効 ゆうこう な合金 ごうきん 元素 げんそ はニッケルで、ニッケル含有 がんゆう 量 りょう が多 おお いほど耐 たい 窒化性 せい が増 ま す。
ハロゲンガス腐食 ふしょく は塩素 えんそ ガスや塩化 えんか 水素 すいそ ガス中 ちゅう で起 お こる腐食 ふしょく で、激 はげ しい腐食 ふしょく 性 せい を示 しめ す。塩素 えんそ ガスや塩化 えんか 水素 すいそ ガスとの反応 はんのう で生成 せいせい される塩化 えんか 物 ぶつ は低 てい 融点 ゆうてん で容易 ようい に昇華 しょうか するため、ハロゲンガス腐食 ふしょく の腐食 ふしょく 速度 そくど は大 おお きい。SUS304の例 れい で、塩素 えんそ ガス中 ちゅう での耐用 たいよう 温度 おんど が約 やく 310 °C、塩化 えんか 水素 すいそ ガス中 ちゅう での耐用 たいよう 温度 おんど が約 やく 400 °C である。
強度 きょうど ・機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ [ 編集 へんしゅう ]
ステンレス鋼 こう の機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ も、その組織 そしき の状態 じょうたい と組成 そせい によって様々 さまざま に変 か わる。多 おお くの種類 しゅるい のステンレス鋼 こう が存在 そんざい するように、ステンレス鋼 こう の機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ も幅広 はばひろ い。一般 いっぱん に、鉄鋼 てっこう 材料 ざいりょう の強度 きょうど ・硬度 こうど を高 たか める原理 げんり には、次 つぎ の5つがある。
固 かた 溶強化 か
添加 てんか された元素 げんそ の原子 げんし が材料 ざいりょう 中 ちゅう に固 かた 溶 されることにより、母 はは 材 ざい 格子 こうし にゆがみが起 お こり、転位 てんい の運動 うんどう が妨害 ぼうがい されて強度 きょうど が高 たか まる機構 きこう 。
加工 かこう 硬化 こうか
転位 てんい 強化 きょうか ともいい、塑性 そせい 加工 かこう によって組織 そしき 中 ちゅう の転位 てんい を意図 いと 的 てき に増大 ぞうだい させ、転位 てんい 同士 どうし がその運動 うんどう を妨害 ぼうがい することで強度 きょうど が高 たか まる機構 きこう
析出 せきしゅつ 硬化 こうか
分散 ぶんさん 強化 きょうか ともいい、合金 ごうきん 炭化物 たんかぶつ や金属 きんぞく 間 あいだ 化合 かごう 物 ぶつ の第 だい 2相 そう が微細 びさい に分散 ぶんさん して母 はは 相 しょう 中 ちゅう に析出 せきしゅつ することで、転位 てんい の運動 うんどう の障害 しょうがい となって強度 きょうど が高 たか まる機構 きこう 。
粒 つぶ 界 かい 強化 きょうか
細 ほそ 粒 つぶ 化 か 強化 きょうか ともいい、多 た 結晶 けっしょう 体 たい 中 ちゅう の結晶 けっしょう 粒 つぶ サイズを小 ちい さくすることで強度 きょうど が高 たか まる機構 きこう 。降伏 ごうぶく 応力 おうりょく を上昇 じょうしょう させ、延性 えんせい -脆性 ぜいせい 遷移 せんい 温度 おんど を低 ひく くする。
マルテンサイト変態 へんたい による強化 きょうか
基礎 きそ 的 てき な強化 きょうか 機構 きこう というより、上 うえ の4つが重 かさ ね合 あ わさった強化 きょうか 機構 きこう である。マルテンサイト変態 へんたい が起 お きることで、上記 じょうき 4つの強化 きょうか 機構 きこう を同時 どうじ に実現 じつげん し、高 こう 強度 きょうど 化 か される。特 とく に炭素 たんそ を過飽和 かほうわ に含有 がんゆう することによる固 かた 溶強化 か が大 おお きい。
いずれの強化 きょうか 機構 きこう も、塑性 そせい 変形 へんけい の基 もと となる転位 てんい の運動 うんどう を妨 さまた げることで材質 ざいしつ を高 こう 強度 きょうど 化 か させる[53] 。ステンレス鋼 こう の強度 きょうど も、これらの強化 きょうか 機構 きこう を基礎 きそ とする[53] 。一方 いっぽう 、材質 ざいしつ を高 こう 強度 きょうど 化 か すると、一般 いっぱん 的 てき に延性 えんせい ・靭 うつぼ 性 せい が低下 ていか する。延性 えんせい ・靭 うつぼ 性 せい が低下 ていか すると、材料 ざいりょう が破壊 はかい されるときに脆性 ぜいせい 破壊 はかい となる。機械 きかい ・構造 こうぞう 物 ぶつ の安全 あんぜん 使用 しよう の観点 かんてん からは、強度 きょうど が高 たか いことだけでなく、靭 うつぼ 性 せい が大 おお きいことも望 のぞ ましい。
常温 じょうおん における機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ [ 編集 へんしゅう ]
ステンレス鋼 こう の機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ を評価 ひょうか するのに用 もち いられる指標 しひょう は、0.2%耐 たい 力 りょく 、引張 ひっぱ 強 つよ さ 、伸 の び 、絞 しぼ り 、硬 かた さ 、衝撃 しょうげき 強 つよ さ などである。これらの内 うち の0.2%耐 たい 力 りょく 、引張 ひっぱ 強 つよ さ、伸 の びは引張 ひっぱ 試験 しけん で測定 そくてい できる代表 だいひょう 的 てき な材料 ざいりょう 特性 とくせい で、0.2%耐 たい 力 りょく は材料 ざいりょう の降伏 ごうぶく 点 てん を代表 だいひょう する 0.2 % の塑性 そせい ひずみ を起 お こす応力 おうりょく を、引張 ひっぱ 強 つよ さは材料 ざいりょう の強 つよ さを代表 だいひょう する最終 さいしゅう 的 てき な破断 はだん を起 お こす応力 おうりょく を、伸 の びは材料 ざいりょう の延性 えんせい を代表 だいひょう する破断 はだん までに材料 ざいりょう が伸 の びる変形 へんけい の程度 ていど を表 あらわ す。常温 じょうおん におけるステンレス鋼 こう の各 かく 代表 だいひょう 的 てき 鋼 こう 種 しゅ の0.2%耐 たい 力 りょく 、引張 ひっぱ 強 つよ さ、伸 の びの例 れい を下記 かき に示 しめ す。
機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ の例 れい
大別 たいべつ
鋼 はがね 種 しゅ ・状態 じょうたい
0.2%耐 たい 力 りょく (MPa)
引張 ひっぱ 強 つよ さ (MPa)
伸 の び (%)
出典 しゅってん
オーステナイト系 けい
AISI 304固 かた 溶化熱処理 ねつしょり
290
579
55
AISI 304圧延 あつえん 率 りつ 50 % 冷 ひや 間 あいだ 加工 かこう
1000
1102
10
フェライト系 けい
AISI 430焼 やき なまし
345
517
25
マルテンサイト系 けい
AISI 410焼入 やきい れ・648 °C 焼戻 やきもど し
586
759
23
AISI 410焼入 やきい れ・204 °C 焼戻 やきもど し
1000
1310
15
オーステナイト・フェライト系 けい
UNS S32205固 かた 溶化熱処理 ねつしょり
450
655
25
析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい
17-4PH 496 °C・4時 じ 間 あいだ 時効 じこう 処理 しょり
1207
1310
14
ステンレス鋼 こう の中 なか で引張 ひっぱ 強 つよ さ 1000 MPa を超 こ える高 こう 強度 きょうど の鋼 はがね 種 しゅ には、マルテンサイト系 けい 、析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい 、加工 かこう 硬化 こうか させたオーステナイト系 けい の3つがある。マルテンサイト系 けい では、焼入 やきい れ でマルテンサイト組織 そしき となり、強 つよ く硬 かた い組織 そしき となっている。通常 つうじょう は焼入 やきい れ後 ご に焼戻 やきもど し も行 おこな い、マルテンサイト系 けい の最終 さいしゅう 的 てき な機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ は焼戻 やきもど し温度 おんど によって変 か わる。高 こう 炭素 たんそ 鋼 こう 種 しゅ AISI 440C の例 れい では、2000 MPa 近 ちか い引張 ひっぱ 強 つよ さを得 え ることもできる。析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい は、時効 じこう 処理 しょり によって微細 びさい 第 だい 2相 そう を分散 ぶんさん 析出 せきしゅつ させる析出 せきしゅつ 硬化 こうか 機構 きこう によって高 たか い強度 きょうど ・硬度 こうど を得 え ている。マルテンサイト系 けい と比較 ひかく すると、含有 がんゆう 炭素 たんそ 量 りょう を減 へ らせるので、耐食性 たいしょくせい や靭 うつぼ 性 せい をそれほど落 お とさずに済 す む。オーステナイト系 けい は加工 かこう 硬化 こうか 度 ど が大 おお きく、さらに準 じゅん 安定 あんてい オーステナイト系 けい では塑性 そせい 変形 へんけい が加 くわ わると加工 かこう 誘 さそえ 起 おこり マルテンサイト変態 へんたい が起 お こるため、圧延 あつえん 加工 かこう を加 くわ えることで高 こう 強度 きょうど ・高 こう 硬度 こうど の特性 とくせい が得 え られる。加工 かこう 硬化 こうか で高 こう 強度 きょうど 化 か させた後 のち でも十分 じゅうぶん な延性 えんせい ・靭 うつぼ 性 せい を保 たも っているのも、加工 かこう 硬化 こうか させたオーステナイト系 けい の特徴 とくちょう である。
フェライト系 けい 、オーステナイト系 けい 、オーステナイト・フェライト系 けい の3つには、熱処理 ねつしょり による硬化 こうか 性 せい がない。フェイライト系 けい は焼 やき なまし状態 じょうたい で使用 しよう され、オーステナイト・フェライト系 けい と加工 かこう 硬化 こうか させない場合 ばあい のオーステナイト系 けい は固 かた 溶化熱処理 ねつしょり 状態 じょうたい で使用 しよう される。低 てい 炭素 たんそ 鋼 こう と比較 ひかく すると、フェライト系 けい の降伏 ごうぶく 応力 おうりょく と引張 ひっぱ り強 つよ さは少 すこ し高 たか めである。フェライト系 けい と比較 ひかく すると、オーステナイト系 けい は降伏 ごうぶく 応力 おうりょく が低 ひく めで、引張 ひっぱ り強 つよ さが高 たか めである。オーステナイト・フェライト系 けい の引張 ひっぱ 強 つよ さと降伏 ごうぶく 応力 おうりょく は、フェイライト系 けい とオーステナイト系 けい よりも高 たか めである。これは、含有 がんゆう 元素 げんそ の影響 えいきょう と、オーステナイト・フェライト系 けい の結晶 けっしょう 粒 つぶ サイズが微細 びさい なため起 お きる粒 つぶ 界 かい 強化 きょうか によるものである[308] 。ステンレス鋼 こう の中 なか では、焼 や きなまし状態 じょうたい のフェライト系 けい のみが応力 おうりょく -ひずみ曲線 きょくせん 上 うえ で明確 めいかく な降伏 ごうぶく 点 てん を示 しめ し、他 た の鋼 はがね 種 しゅ は明確 めいかく な降伏 ごうぶく 点 てん を示 しめ さない。
ステンレス鋼 こう の延性 えんせい ・靭 うつぼ 性 せい については、オーステナイト系 けい が特 とく に優 すぐ れている。炭素 たんそ 鋼 こう やフェライト系 けい の伸 の びが 20–30 % 程度 ていど であるのに対 たい し、固 かた 溶化熱処理 ねつしょり 状態 じょうたい のオーステナイト系 けい の伸 の びは 45–55 % という値 ね を示 しめ す。靭 うつぼ 性 せい の指標 しひょう である衝撃 しょうげき 強 つよ さにおいても、オーステナイト系 けい が優 すぐ れた値 ね を示 しめ す。
高温 こうおん における機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ [ 編集 へんしゅう ]
金属 きんぞく が高温 こうおん 環境 かんきょう 下 か に置 お かれると、一般 いっぱん 的 てき に変形 へんけい 抵抗 ていこう が低下 ていか する。しかし、ステンレス鋼 こう は高温 こうおん でも比較的 ひかくてき 高 たか い強度 きょうど を保 たも つことができ、上述 じょうじゅつ のように高温 こうおん 環境 かんきょう 下 か での耐 たい 酸化 さんか 性 せい や耐食性 たいしょくせい に優 すぐ れることから、耐 たい 熱 ねつ 用途 ようと に幅広 はばひろ く利用 りよう される。JIS でもいくつかのステンレス鋼 こう の鋼 はがね 種 しゅ をそのまま耐 たい 熱 ねつ 鋼 こう の鋼 はがね 種 しゅ として規定 きてい しており、ステンレス鋼 こう は耐 たい 熱 ねつ 鋼 こう の一種 いっしゅ でもある[315] [316] 。
オーステナイト系 けい とフェライト系 けい の2つが、耐 たい 熱 ねつ 用 よう に供 きょう されるステンレス鋼 こう の主流 しゅりゅう となっている[317] 。代表 だいひょう 的 てき な耐 たい 熱 ねつ ステンレス鋼 こう でいえば、常温 じょうおん での降伏 ごうぶく 応力 おうりょく はオーステナイト系 けい よりもフェライト系 けい の方 ほう が高 たか いが、およそ 600 °C 以上 いじょう の降伏 ごうぶく 応力 おうりょく はフェライト系 けい よりもオーステナイト系 けい の方 ほう が高 たか くなる[317] 。そのため、より高温 こうおん で使用 しよう する場合 ばあい はオーステナイト系 けい が、それ以外 いがい ではフェイライト系 けい が重宝 ちょうほう される[317] 。
オーステナイト・フェライト系 けい は、600 °C 以上 いじょう では、オーステナイト系 けい とフェイライト系 けい の中 なか 間 あいだ 的 てき 強度 きょうど を示 しめ す。高温 こうおん 強度 きょうど を向上 こうじょう させる場合 ばあい 、ニオブ 、窒素 ちっそ 、ケイ素 けいそ 、モリブデン 、銅 どう 、タングステン などの固 かた 溶強化 か 元素 げんそ の添加 てんか が行 おこな われる。マルテンサイト系 けい にもモリブデン、バナジウム、タングステンなどの添加 てんか で高温 こうおん 強度 きょうど を高 たか めた鋼 はがね 種 しゅ があり、限定 げんてい 的 てき ながらも強度 きょうど が必要 ひつよう な個所 かしょ で使用 しよう される。
低温 ていおん における機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ [ 編集 へんしゅう ]
一般 いっぱん の炭素 たんそ 鋼 こう と同様 どうよう に、フェライト系 けい 、マルテンサイト系 けい が低温 ていおん 環境 かんきょう に置 お かれると靭 うつぼ 性 せい が低下 ていか し、脆性 ぜいせい 破壊 はかい を起 お こすようになる。靭 うつぼ 性 せい が著 いちじる しく低下 ていか する温度 おんど を延性 えんせい -脆性 ぜいせい 遷移 せんい 温度 おんど といい、フェライト系 けい 430 の例 れい では、室温 しつおん から約 やく −70 °C までの間 あいだ で衝撃 しょうげき 強 つよ さ が急激 きゅうげき に低下 ていか する。しかし、オーステナイト系 けい はこのような低温 ていおん 時 じ にも高 たか い靭 うつぼ 性 せい を保 たも つ。鋼 はがね 種 しゅ にもよるが、オーステナイト系 けい は −200 °C 以下 いか の極 きょく 低温 ていおん でも使用 しよう できる。オーステナイト・フェライト系 けい は、低温 ていおん 時 じ に脆性 ぜいせい 破壊 はかい を起 お こすが、フェライト系 けい よりは延性 えんせい -脆性 ぜいせい 遷移 せんい が緩 ゆる やかに起 お きる傾向 けいこう にある。
物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ [ 編集 へんしゅう ]
ステンレス鋼 こう の物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ は金属 きんぞく 組織 そしき の種類 しゅるい によってほぼ決 き まり、さらに合金 ごうきん 元素 げんそ 添加 てんか 量 りょう が影響 えいきょう する。フェライト系 けい とマルテンサイト系 けい が類似 るいじ した物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ を持 も っており、オーステナイト系 けい の物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ はそれらとは異 こと なる傾向 けいこう を持 も つ。析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい も、最終 さいしゅう 的 てき に母 はは 相 しょう がマルテンサイト組織 そしき となる鋼 はがね 種 しゅ であれば物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ はフェライト系 けい とマルテンサイト系 けい に類似 るいじ する。オーステナイト・フェライト系 けい の物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ は、オーステナイト系 けい とフェライト系 けい のおおむね中間 ちゅうかん に位置 いち する。ステンレス鋼 こう の物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ の例 れい を、下記 かき の表 ひょう に示 しめ す。
物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ の例 れい
鋼 はがね 種 しゅ
オーステナイト系 けい JIS SUS304
フェライト系 けい JIS SUS430
マルテンサイト系 けい JIS SUS410
オーステナイト・ フェライト系 けい UNS S32205
析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい JIS SUS630
密度 みつど (kg/m3 )
8.03 × 103
7.75 × 103
7.75 × 103
7.80 × 103
7.75 × 103
比熱 ひねつ (0–100 °C) (kJ/(kg·K)
0.50
0.46
0.46
0.50
0.46
熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ (100 °C) (W/(m·K)
16.3
23.9
24.9
17.0
18.4
線 せん 膨張 ぼうちょう 係数 けいすう (K−1 )
17.2 × 10−6 (0–100 °C)
10.4 × 10−6 (0–100 °C)
9.9 × 10−6 (0–100 °C)
13.0 × 10−6 (20–100 °C)
10.8 × 10−6 (0–100 °C)
比 ひ 電気 でんき 抵抗 ていこう (Ω おめが ·m)
720 × 10−9
600 × 10−9
570 × 10−9
800 × 10−9
800 × 10−9
ヤング率 りつ (GPa )
193
200
200
200
196
磁性 じせい
弱 じゃく 磁性 じせい (非 ひ 磁性 じせい )
強 つよ 磁性 じせい
強 つよ 磁性 じせい
強 つよ 磁性 じせい
強 つよ 磁性 じせい
出典 しゅってん
質量 しつりょう と体積 たいせき の比 ひ である密度 みつど は、ステンレス鋼 こう の種類 しゅるい の中 なか で違 ちが いは小 ちい さく、各々 おのおの の組成 そせい でほとんど決 き まる。軟鋼 なんこう と比較 ひかく すると、ニッケル を多 おお く含 ふく むオーステナイト系 けい の密度 みつど がやや大 おお きい。ニッケルを主 おも 合金 ごうきん 元素 げんそ としないフェライト系 けい とマルテンサイト系 けい は、軟鋼 なんこう よりもやや小 ちい さい。モリブデン のような重 おも い元素 げんそ を合金 ごうきん 元素 げんそ として含 ふく めば含 ふく むほど、密度 みつど は大 おお きくなっていく。
熱 ねつ が伝 つた わったときの温度 おんど 変化 へんか の程度 ていど を示 しめ す比熱 ひねつ も、ステンレス鋼 こう の種類 しゅるい 間 あいだ の違 ちが いは小 ちい さい。クロム系 けい ステンレス鋼 こう の比熱 ひねつ が軟鋼 なんこう とほぼ同等 どうとう で、クロム・ニッケル系 けい が軟鋼 なんこう よりもやや大 おお きい。
熱 ねつ の伝 つた わりやすさを示 しめ す熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ については、金属 きんぞく 材料 ざいりょう 全般 ぜんぱん の中 なか でもステンレス鋼 こう の熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ は小 ちい さいといえる。フェライト系 けい とマルテンサイト系 けい の熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ も炭素 たんそ 鋼 こう より小 ちい さく、オーステナイト系 けい の熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ はさらに小 ちい さい。一般 いっぱん に金属 きんぞく の熱 ねつ 伝達 でんたつ は自由 じゆう 電子 でんし を通 つう じて行 おこな われるため、金属 きんぞく 中 ちゅう に不純物 ふじゅんぶつ が存在 そんざい すると、電子 でんし の運動 うんどう を阻害 そがい して熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ を低下 ていか させる。したがって、添加 てんか 元素 げんそ が多 おお いほど熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ が低下 ていか する。ステンレス鋼 こう の場合 ばあい 、含有 がんゆう するクロムやニッケルによって熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ が小 ちい さくなっている。
温度 おんど 上昇 じょうしょう 時 じ の体積 たいせき 膨張 ぼうちょう の割合 わりあい である線 せん 膨張 ぼうちょう 係数 けいすう は、主 おも に結晶 けっしょう 構造 こうぞう によって決 き まる。フェライト系 けい とマルテンサイト系 けい は軟鋼 なんこう に近 ちか い値 ね を示 しめ すが、面 めん 心 こころ 立方 りっぽう 構造 こうぞう であるオーステナイト系 けい はそれらの約 やく 1.5倍 ばい の線 せん 膨張 ぼうちょう 係数 けいすう を示 しめ す。オーステナイト・フェライト系 けい の線 せん 膨張 ぼうちょう 係数 けいすう は、フェライト系 けい とオーステナイト系 けい の中 なか 間 あいだ 程度 ていど となる。
物質 ぶっしつ の電気 でんき 抵抗 ていこう の大 おお きさを示 しめ す比 ひ 電気 でんき 抵抗 ていこう についても、その原理 げんり は熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ と同 おな じで、含有 がんゆう 元素 げんそ が多 おお くなると抵抗 ていこう が大 おお きなる。金属 きんぞく 材料 ざいりょう 全般 ぜんぱん の中 なか でもステンレス鋼 こう の比 ひ 電気 でんき 抵抗 ていこう は大 おお きいといえる。このため、ステンレス鋼 こう は導 しるべ 電 でん 用材 ようざい 料 りょう には向 む かない。比 ひ 電気 でんき 抵抗 ていこう はおおよそ熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ と反比例 はんぴれい の関係 かんけい にあるが、析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい は析出 せきしゅつ 硬化 こうか 熱処理 ねつしょり によって組織 そしき が複雑 ふくざつ 化 か した影響 えいきょう で比 ひ 電気 でんき 抵抗 ていこう がやや大 おお きくなる。
弾性 だんせい 変形 へんけい に対 たい する抵抗 ていこう の大 おお きさを示 しめ すヤング率 りつ は、ステンレス鋼 こう は全般 ぜんぱん 的 てき に軟鋼 なんこう とおおむね同 おな じである。組成 そせい や組織 そしき の違 ちが いよるヤング率 りつ への影響 えいきょう は小 ちい さく、ステンレス鋼 こう の中 なか での鋼 はがね 種 しゅ 間 あいだ の違 ちが いは小 ちい さい。非鉄 ひてつ 金属 きんぞく 材料 ざいりょう と比較 ひかく すると、ステンレス鋼 こう のヤング率 りつ は高 たか い部類 ぶるい に入 はい る。
一般 いっぱん 的 てき な鉄鋼 てっこう 材料 ざいりょう は強 つよ 磁性 じせい 材料 ざいりょう で、いわゆる磁石 じしゃく にひっつく材料 ざいりょう であるが、面 めん 心 こころ 立方 りっぽう 格子 こうし 構造 こうぞう であるオーステナイトは常 つね 磁性 じせい 材料 ざいりょう で、強 つよ 磁場 じば 中 ちゅう でもごくわずかにしか磁化 じか しない。このため、オーステナイト系 けい は非 ひ 磁性 じせい 材料 ざいりょう である。一方 いっぽう 、フェライト系 けい やマルテンサイト系 けい は、一般 いっぱん 的 てき な鉄鋼 てっこう 材料 ざいりょう と同様 どうよう の強 つよ 磁性 じせい 材料 ざいりょう である。ただし、オーステナイト系 けい も、加工 かこう 誘 さそえ 起 おこり マルテンサイト変態 へんたい が起 お こると磁性 じせい を帯 お びるようになる。オーステナイト・フェライト系 けい は、磁性 じせい の強 つよ さはフェライト量 りょう 比率 ひりつ によって変 か わるものの、基本 きほん 的 てき に強 つよ 磁性 じせい 材料 ざいりょう である。
また、機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ と同様 どうよう に、温度 おんど によって物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ は変化 へんか する。低温 ていおん になるほど、電気 でんき 抵抗 ていこう 、熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 係数 けいすう 、熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ 、比熱 ひねつ は小 ちい さくなる。密度 みつど とヤング率 りつ は、低温 ていおん になるほど大 おお きくなる。
フェロクロム
ステンレス鋼 こう の原料 げんりょう には、鉄 てつ の他 ほか に、合金 ごうきん 元素 げんそ として大量 たいりょう のクロム を必要 ひつよう とし、さらにニッケル 、モリブデン 、マンガン 、チタン なども使 つか う。主 おも な合金 ごうきん 元素 げんそ であるクロムとニッケルは、主 おも にフェロクロム とフェロニッケル として、またはスクラップ として供給 きょうきゅう される。フェロクロムとフェロニッケルは合金 ごうきん 鉄 てつ の一種 いっしゅ で、採掘 さいくつ されたクロム鉱石 こうせき またはニッケル鉱石 こうせき から製造 せいぞう される。合金 ごうきん 鉄 てつ は、不純物 ふじゅんぶつ である炭素 たんそ が取 と り除 のぞ かれている低 てい 炭素 たんそ なものほど価格 かかく が高 たか くなる。しかし、後述 こうじゅつ する精錬 せいれん 技術 ぎじゅつ の発達 はったつ により、廉価 れんか な高 こう 炭素 たんそ フェロクロムと高 こう 炭素 たんそ フェロニッケルも、現在 げんざい ではステンレス鋼 こう の原料 げんりょう として多量 たりょう に利用 りよう 可能 かのう になっている[353] 。クロムもニッケルも資源 しげん が世界 せかい に偏在 へんざい しており、需要 じゅよう 供給 きょうきゅう バランス、産出 さんしゅつ 国 こく の経済 けいざい 情勢 じょうせい 、国際 こくさい 紛争 ふんそう 、為替 かわせ レート変動 へんどう などによって原料 げんりょう 価格 かかく が大 おお きく変動 へんどう するため、これら原料 げんりょう の安定 あんてい 確保 かくほ とコストダウンがステンレス鋼 こう メーカーにとっての課題 かだい である[353] 。
潰 つぶ されたステンレス鋼 こう のスクラップ
ステンレス鋼 こう はリサイクル しやすい材料 ざいりょう であり、ステンレス鋼 こう スクラップの回収 かいしゅう 率 りつ は高 たか い[355] 。2006年 ねん の調査 ちょうさ によると、生産 せいさん された約 やく 2800万 まん トンのステンレス鋼 こう の内 うち 、その原料 げんりょう の約 やく 60 % がステンレス鋼 こう スクラップを利用 りよう できている[355] 。市場 いちば から回収 かいしゅう されたスクラップの他 ほか に、ステンレス鋼 こう 製造 せいぞう 過程 かてい で生 しょう じたスクラップも回収 かいしゅう ・利用 りよう されている[355] 。特 とく にオーステナイト系 けい は、高価 こうか な合金 ごうきん 元素 げんそ を多 おお く含 ふく み、磁性 じせい を持 も つため分別 ふんべつ しやすいため、スクラップ活用 かつよう が進 すす んでいる[357] 。
原料 げんりょう としての鉄 てつ には、ステンレス鋼 こう スクラップの他 ほか に、普通 ふつう 鋼 こう のスクラップも活用 かつよう されている。集 あつ められたスクラップは使用 しよう 前 まえ に成分 せいぶん 検査 けんさ や放射能 ほうしゃのう 探知 たんち 検査 けんさ が行 おこな われる。スクラップは割安 わりやす だが、価格 かかく 変動 へんどう も大 おお きく、供給 きょうきゅう が不安定 ふあんてい といった面 めん もある。
高炉 こうろ を持 も つ銑 ずく 鋼 こう 一貫 いっかん 製鉄 せいてつ 所 しょ がステンレス鋼 こう を製造 せいぞう する場合 ばあい は、高炉 こうろ で銑鉄 せんてつ を製造 せいぞう し、予備 よび 処理 しょり した上 うえ で銑鉄 せんてつ をステンレス鋼 こう の原料 げんりょう として用 もち いる場合 ばあい もある。また、フェロクロムではなく、安価 あんか なクロム鉱石 こうせき を直接 ちょくせつ の原料 げんりょう にして製鋼 せいこう する方法 ほうほう も開発 かいはつ ・実用 じつよう 化 か されている。
溶解 ようかい ・予備 よび 精錬 せいれん [ 編集 へんしゅう ]
アーク炉 ろ の概略 がいりゃく 図 ず
原料 げんりょう はまず炉 ろ で溶解 ようかい される。ステンレス鋼 こう 製造 せいぞう で用 もち いる溶解 ようかい 炉 ろ は、電気 でんき アーク炉 ろ が一般 いっぱん 的 てき である。ステンレス鋼 こう スクラップ、フェロクロム、フェロニッケルなどの主 しゅ 原料 げんりょう が電気 でんき 炉 ろ に装 そう 入 いれ されて溶解 ようかい される[353] 。電気 でんき 炉 ろ 内 ない に強力 きょうりょく なアーク が発生 はっせい し、原料 げんりょう を溶解 ようかい する。アーク熱 ねつ は 3000 °C から最大 さいだい 3500 °C に達 たっ し、原料 げんりょう はおよそ 1550 から最大 さいだい 1800 °C まで昇 のぼり 温 あつし されて溶解 ようかい される。電気 でんき 炉 ろ の大 おお きさは、一回 いっかい のチャージ当 あ たり 30 トン のものから最大 さいだい で 160 トンのものまである[357] 。
高炉 こうろ を持 も つ銑 ずく 鋼 こう 一貫 いっかん 製鉄 せいてつ 所 しょ がステンレス鋼 こう を製造 せいぞう する場合 ばあい は、電気 でんき 炉 ろ ではなく、高炉 こうろ で溶銑 ようせん を造 つく り、ステンレス鋼 こう を製造 せいぞう する。高炉 こうろ による製造 せいぞう は大量 たいりょう 生産 せいさん に向 む いている。しかし、電気 でんき 炉 ろ によるステンレス鋼 こう 製造 せいぞう がクロム系 けい にもクロム・ニッケル系 けい にも利用 りよう されているのに対 たい して、高炉 こうろ によるステンレス鋼 こう 製造 せいぞう はクロム系 けい に限 かぎ られている。高炉 こうろ 法 ほう ではニッケルの溶解 ようかい が難 むずか しく、クロム・ニッケル系 けい では電気 でんき 炉 ろ 法 ほう よりも効率 こうりつ が悪 わる い。高炉 こうろ の溶銑 ようせん は数 かず %のレベルで炭素 たんそ を含有 がんゆう しているような状態 じょうたい であるため、「溶銑 ようせん 予備 よび 処理 しょり 」と呼 よ ばれる工程 こうてい を本格 ほんかく 的 てき な精錬 せいれん 前 まえ に行 おこな う。溶銑 ようせん 予備 よび 処理 しょり では、炭素 たんそ に加 くわ えてリン や硫黄 いおう の除去 じょきょ も行 おこな う。ステンレス鋼 こう では、リンがクロムの活 かつ 量 りょう を低下 ていか させるため、溶銑 ようせん の段階 だんかい で脱 だつ リンしておくことが溶銑 ようせん 予備 よび 処理 しょり の重要 じゅうよう な意義 いぎ の一 ひと つといえる。
AOD法 ほう の概略 がいりゃく 図 ず
VOD法 ほう の概略 がいりゃく 図 ず
溶解 ようかい の後 のち には、化学 かがく 組成 そせい を調整 ちょうせい する精錬 せいれん と呼 よ ばれる工程 こうてい が行 おこな われる。精錬 せいれん 工程 こうてい では不純物 ふじゅんぶつ を除去 じょきょ するが、ステンレス鋼 こう にとっての最大 さいだい の不純物 ふじゅんぶつ が炭素 たんそ である。効率 こうりつ 的 てき に脱 だつ 炭 すみ することがステンレス鋼 こう 製造 せいぞう における重要 じゅうよう なポイントで、このための技術 ぎじゅつ 開発 かいはつ が過去 かこ から行 おこな われてきた。ステンレス鋼 こう の基本 きほん 的 てき な脱 だつ 炭 すみ は、おおまかに以下 いか のような過程 かてい から成 な る。
酸素 さんそ ガスを溶鋼に吹 ふ き込 こ み、鋼 はがね 中 ちゅう のクロム が酸化 さんか 反応 はんのう を起 お こす
生成 せいせい されたクロム酸化 さんか 物 ぶつ が鋼 はがね 中 ちゅう の炭素 たんそ と反応 はんのう を起 お こし、一酸化 いっさんか 炭素 たんそ ガスの生成 せいせい とクロムの再 さい 生成 せいせい が起 お きる
一酸化 いっさんか 炭素 たんそ ガスを除去 じょきょ し、溶鋼中 ちゅう からの炭素 たんそ 除去 じょきょ を達成 たっせい する
しかし、ステンレス鋼 こう 特有 とくゆう の高 こう 濃度 のうど のクロムによって、溶鋼中 ちゅう の炭素 たんそ の活 かつ 量 りょう は下 さ がっており、一般 いっぱん 的 てき な炭素 たんそ 鋼 こう と比 くら べて脱 だつ 炭 すみ が進 すす まない。特 とく に低 てい 炭素 たんそ 域 いき ではクロムは炭素 たんそ と優先 ゆうせん して結合 けつごう し、脱 だつ 炭 すみ 反応 はんのう が阻害 そがい される[357] 。普通 ふつう に脱 だつ 炭 すみ を進 すす めると、クロムが多量 たりょう に酸化 さんか してスラグ 中 なか に入 はい ってしまう。クロムをスラグから回収 かいしゅう するために、高価 こうか なフェロシリコン を要 よう することになる。このような事態 じたい を避 さ け、効率 こうりつ 良 よ く脱 だつ 炭 すみ を進 すす める方法 ほうほう として、脱 だつ 炭 すみ 反応 はんのう 時 じ に生 しょう じる一酸化 いっさんか 炭素 たんそ ガスの圧力 あつりょく (分 ぶん 圧 あつ )を下 さ げることで、クロムの酸化 さんか を抑制 よくせい しながら脱 だつ 炭 すみ 反応 はんのう を進 すす める手法 しゅほう が現在 げんざい では採用 さいよう されている。この原理 げんり にもとづく精錬 せいれん 法 ほう が、AOD法 ほう 、VOD法 ほう 、またはこれらを組 く み合 あ わせた方法 ほうほう である。
AOD法 ほう は、Argon Oxygen Decarburization の略 りゃく で、大気 たいき 中 ちゅう の溶鋼にアルゴン と酸素 さんそ の混合 こんごう ガスを下部 かぶ から吹 ふ き込 こ み、アルゴンガスによる希釈 きしゃく によって脱 だつ 炭 すみ 時 じ の一酸化 いっさんか 炭素 たんそ ガス分 ぶん 圧 あつ を下 さ げて脱 だつ 炭 すみ する方法 ほうほう である。AOD法 ほう の長所 ちょうしょ は、溶鋼の炭素 たんそ 含有 がんゆう 量 りょう が高 たか くても脱 だつ 炭 すみ が可能 かのう な点 てん である。これによって安価 あんか な原料 げんりょう が使用 しよう 可能 かのう で、生産 せいさん 性 せい が高 たか い。VOD法 ほう は、Vacuum Oxygen Decarburization の略 りゃく で、溶鋼を真空 しんくう 減圧 げんあつ 下 か に移 うつ して酸素 さんそ ガスを吹 ふ き込 こ み、脱 だつ 炭 すみ 時 じ の一酸化 いっさんか 炭素 たんそ ガス分 ぶん 圧 あつ を下 さ げて脱 だつ 炭 すみ する方法 ほうほう である。VOD法 ほう の場合 ばあい は、ある程度 ていど 低 ひく いレベルの炭素 たんそ 含有 がんゆう 量 りょう にしてから適用 てきよう する必要 ひつよう があるが、一方 いっぽう で最終 さいしゅう 的 てき な炭素 たんそ 含有 がんゆう 量 りょう をより低 ひく いレベルにすることができる。各 かく 精錬 せいれん 過程 かてい では、脱 だつ 炭 すみ のほかに、窒素 ちっそ 、水素 すいそ 、硫黄 いおう 、酸素 さんそ 、リンなどの不純物 ふじゅんぶつ 除去 じょきょ や介在 かいざい 物 ぶつ 制御 せいぎょ も行 おこな われる。ステンレス鋼 こう にAOD法 ほう またはVOD法 ほう を適用 てきよう したときの、おおよそ精錬 せいれん レベルの目安 めやす を以下 いか の表 ひょう に示 しめ す[377] 。
AOD法 ほう とVOD法 ほう における、おおよその精錬 せいれん レベルの目安 めやす [377]
不純物 ふじゅんぶつ 成分 せいぶん
AOD法 ほう
VOD法 ほう
炭素 たんそ
0.01 % 以下 いか
0.005 % 以下 いか
窒素 ちっそ
0.01 % 以下 いか
0.007 % 以下 いか
酸素 さんそ
0.003 % 以下 いか
0.003 % 以下 いか
硫黄 いおう
0.0005 % 以下 いか
0.001 % 以下 いか
リン
0.01 % 以下 いか
0.01 % 以下 いか
具体 ぐたい 的 てき な工程 こうてい としては、溶解 ようかい された原料 げんりょう は転 てん 炉 ろ で精錬 せいれん され、その後 ご AOD炉 ろ やVOD炉 ろ などで炉 ろ 外 がい 精錬 せいれん が実施 じっし される。ただし、電気 でんき 炉 ろ 法 ほう で溶解 ようかい された場合 ばあい は、ある程度 ていど の精錬 せいれん がすでに完了 かんりょう しているので転 てん 炉 ろ での精錬 せいれん を省略 しょうりゃく することが多 おお い。VOD法 ほう を採用 さいよう するときには、VOD法 ほう 適用 てきよう 前 まえ に溶鋼の炭素 たんそ 含有 がんゆう 量 りょう をある程度 ていど のレベルまで下 さ げる必要 ひつよう があるため、電気 でんき 炉 ろ 法 ほう でも転 てん 炉 ろ での精錬 せいれん を工程 こうてい に加 くわ えることがある。高炉 こうろ 法 ほう で溶解 ようかい した場合 ばあい は、ほぼ必 かなら ず転 てん 炉 ろ での精錬 せいれん を行 おこな う。炉 ろ 外 がい 精錬 せいれん での脱 だつ 炭 すみ 完了 かんりょう 後 ご には、「仕上 しあ げ精錬 せいれん 」と呼 よ ばれる同 おな じ炉 ろ のまま所望 しょもう の組成 そせい へ調整 ちょうせい する作業 さぎょう が行 おこな われる。
連続 れんぞく 鋳造 ちゅうぞう の基本 きほん 的 てき な概略 がいりゃく 図 ず 。溶鋼は取 と 鍋 なべ (1)からタンディッシュ(2)へ一旦 いったん 移 うつ され、モールド(3)に流 なが し込 こ まれ、冷 ひ やし固 かた められながらローラー(7)で引 ひ き抜 ぬ かれる。
精錬 せいれん を終 お えた溶鋼は、鉄鋼 てっこう メーカーから出荷 しゅっか される最終 さいしゅう 製品 せいひん 形状 けいじょう に適 てき した形 かたち へ冷 ひ やし固 かた められる。この段階 だんかい で冷 ひ やし固 かた められたものを半 はん 製品 せいひん と呼 よ び、厚 あつ 板 ばん や圧延 あつえん 材 ざい 生産 せいさん 用 よう のスラブ、形 かたち 鋼 こう 生産 せいさん 用 よう のブルーム、棒 ぼう 材 ざい ・線 せん 材 ざい やパイプ生産 せいさん 用 よう のビレットがある。この工程 こうてい を鋳造 ちゅうぞう といい、大 おお きく分 わ けて造 みやつこ 塊 かたまり 法 ほう と連続 れんぞく 鋳造 ちゅうぞう 法 ほう の2つがある。造 みやつこ 塊 かたまり 法 ほう は、インゴット と呼 よ ばれる型 かた に溶鋼を注入 ちゅうにゅう して固 かた め、再 さい 加熱 かねつ ・圧延 あつえん して半 はん 製品 せいひん を作 つく る方法 ほうほう である。過去 かこ のステンレス鋼 こう は主 おも に造 みやつこ 塊 かたまり 法 ほう で造 つく られていたが、生産 せいさん 効率 こうりつ の高 たか い連続 れんぞく 鋳造 ちゅうぞう 法 ほう が実現 じつげん されてからは、一部 いちぶ の特殊 とくしゅ な鋼 はがね 種 しゅ を除 のぞ いてほとんどのステンレス鋼 こう が連続 れんぞく 鋳造 ちゅうぞう 法 ほう で製造 せいぞう されている。
連続 れんぞく 鋳造 ちゅうぞう の過程 かてい に他 た と異 こと なるステンレス鋼 こう 特有 とくゆう の要素 ようそ はないが、表面 ひょうめん 品質 ひんしつ が特 とく に要求 ようきゅう されるステンレス鋼 こう では品質 ひんしつ 重視 じゅうし の操業 そうぎょう が特徴 とくちょう といえる。連続 れんぞく 鋳造 ちゅうぞう では、取 と 鍋 なべ に入 い れられて精錬 せいれん 炉 ろ から供給 きょうきゅう される溶鋼が、タンディッシュと呼 よ ばれる容器 ようき へ一旦 いったん 移 うつ される。タンディッシュでは、溶鋼中 ちゅう の有害 ゆうがい な非金属 ひきんぞく 介在 かいざい 物 ぶつ を浮 う かび上 あ がらせて除去 じょきょ する。タンディッシュから出 で た溶鋼は、冷却 れいきゃく された鋳型 いがた に通 とお され、さらに冷却 れいきゃく スプレーを浴 あ びせられ凝固 ぎょうこ する。凝固 ぎょうこ したステンレス鋼 こう を、その下 した に配置 はいち されているローラーが連続 れんぞく 的 てき に引 ひ き抜 ぬ き、切断 せつだん 機 き まで送 おく り出 だ す。切断 せつだん 機 き で所定 しょてい の長 なが さに切断 せつだん して、長方 おさかた 体 たい や角材 かくざい の形 かたち の半 はん 製品 せいひん となる。
圧延 あつえん の概念 がいねん 図 ず
ステンレスの鋼板 こうはん とコイル(帯 おび 鋼 こう )
ステンレス鋼 こう の板 いた や帯 おび を生産 せいさん する場合 ばあい 、スラブを圧延 あつえん することによって造 つく られる。ステンレス鋼 こう 生産 せいさん の中 なか でも、鋼板 こうはん および鋼 はがね 帯 たい の生産 せいさん 量 りょう が圧倒的 あっとうてき に多 おお い。圧延 あつえん とは、回転 かいてん する2つの円柱 えんちゅう (ロール)に材料 ざいりょう が挟 はさ み込 こ みながら薄 うす く引 ひ き伸 の ばす工程 こうてい で、材料 ざいりょう を再 さい 結晶 けっしょう 温度 おんど 以上 いじょう に加熱 かねつ する圧延 あつえん する熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん と、再 さい 結晶 けっしょう 温度 おんど 以下 いか (通常 つうじょう は常温 じょうおん )で圧延 あつえん する冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん がある。
スラブは通常 つうじょう 100 mm 以上 いじょう の厚 あつ みがある。冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん は被 ひ 加工 かこう 品 ひん が厚 あつ いと圧延 あつえん できないため、スラブはまず熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん される。ステンレス鋼 こう の場合 ばあい 、スラブ表面 ひょうめん の欠陥 けっかん が熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん 後 ご も残 のこ ってしまうので、熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん 前 まえ にはグラインダー 等 とう でスラブ表面 ひょうめん を研削 けんさく して表面 ひょうめん 欠陥 けっかん を前 まえ もって除去 じょきょ する。傷 きず 取 と りされたスラブは加熱 かねつ され、圧延 あつえん 機 き に通 とお される。熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん 機 き には、タンデムミル やステッケルミル が用 もち いられている。タンデムミルは生産 せいさん 性 せい が高 たか く、普通 ふつう 鋼 こう と兼用 けんよう する場合 ばあい などに使 つか われる。ステッケルミルは初期 しょき コストが小 ちい さい長所 ちょうしょ があり、ステンレス鋼 こう 専用 せんよう で生産 せいさん する場合 ばあい などに使 つか われる。
熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん を終 お えると、鋼 はがね 種 しゅ に応 おう じた適当 てきとう な熱処理 ねつしょり が施 ほどこ され、さらにスケールを除去 じょきょ するために酸 さん 洗 あらい が行 おこな われる。このときの熱処理 ねつしょり は、組織 そしき の再 さい 結晶 けっしょう 化 か と炭化物 たんかぶつ の固 かた 溶化などを目的 もくてき とする。この状態 じょうたい で製造 せいぞう 完了 かんりょう として出荷 しゅっか する場合 ばあい もある(#圧延 あつえん 仕上 しあ げ も参照 さんしょう )。熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん で可能 かのう な最小 さいしょう 板 ばん 厚 あつし は 3 mm 程度 ていど が限度 げんど で、さらに薄 うす くする場合 ばあい や、表面 ひょうめん を美麗 びれい に仕上 しあ げる場合 ばあい は冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん が行 おこな われる。冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん で問題 もんだい となるがステンレス鋼 こう の変形 へんけい 抵抗 ていこう の高 たか さで、特 とく にオーステナイト系 けい が著 いちじる しい加工 かこう 硬化 こうか を起 お こす。このため、20段式 だんしき ゼンジミアミル がステンレス鋼 こう の冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん に用 もち いられる。ゼンジミアミルは、ワークロールを小径 しょうけい にして大 おお きな圧 あつ 力 りょく によって圧延 あつえん を可能 かのう とし、中間 ちゅうかん ロールがワークロールのたわみを抑 おさ え、強固 きょうこ なハウジングで多段 ただん ロールを支 ささ える構造 こうぞう を持 も つ。フェライト系 けい などに対 たい しては普通 ふつう 鋼 こう 用 よう の冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん 設備 せつび を使用 しよう する場合 ばあい もある。
冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん 後 ご は、熱処理 ねつしょり と酸 さん 洗 あらい をまた行 おこな い、必要 ひつよう に応 おう じて表面 ひょうめん 仕上 しあ げ用 よう の冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん を再度 さいど 行 おこな う。冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん 後 ご の熱処理 ねつしょり の主 おも な目的 もくてき は圧延 あつえん 組織 そしき の再 さい 結晶 けっしょう 化 か である。表面 ひょうめん 光沢 こうたく の良 よ い製品 せいひん にするために、光輝 こうき 焼 しょう なまし と呼 よ ばれる無 む 酸 さん 活性 かっせい 雰囲気 ふんいき 中 ちゅう での熱処理 ねつしょり を行 おこな う場合 ばあい もある。この場合 ばあい はスケールの発生 はっせい を防 ふせ げるので、酸 さん 洗 あらい を省略 しょうりゃく して圧延 あつえん ままの光沢 こうたく を維持 いじ できる(#圧延 あつえん 仕上 しあ げ も参照 さんしょう )。これらの工程 こうてい の後 のち 、研磨 けんま 、形状 けいじょう 修正 しゅうせい 、脱脂 だっし 、検査 けんさ 、裁断 さいだん 、梱包 こんぽう などを経 へ て製品 せいひん が出荷 しゅっか される。ステンレス鋼 こう の場合 ばあい は外観 がいかん に対 たい する要求 ようきゅう 水準 すいじゅん が高 たか いため、メーカーと購入 こうにゅう 者 しゃ の間 あいだ で外観 がいかん の限度 げんど 見本 みほん を取 と り交 か わすこともある。
管 かん ・棒 ぼう 線 せん 材 ざい ・形 かたち 鋼 こう ・鋳造 ちゅうぞう ・クラッド[ 編集 へんしゅう ]
ステンレス溶接 ようせつ 鋼管 こうかん
鋼板 こうはん 以外 いがい のステンレス鋼 こう の製品 せいひん 形状 けいじょう には、鋼管 こうかん 、鋼 はがね 棒 ぼう 、線 せん 材 ざい 、形 かたち 鋼 こう などがある。鋼管 こうかん には、継 つ ぎ目 め なしのシームレス鋼管 こうかん と鋼板 こうはん を溶接 ようせつ してつくる溶接 ようせつ 鋼管 こうかん があるが、どちらも基本 きほん 的 てき に普通 ふつう 鋼 こう と同 おな じ製法 せいほう で造 つく られている。シームレス鋼管 こうかん 、鋼 はがね 棒 ぼう 、線 せん 材 ざい は、ブルームまたはビレットから熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん 、冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん ・引抜 ひきぬ きで造 つく られる。形 かたち 鋼 こう もブルームの熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん から造 つく られるが、まとまった需要 じゅよう が少 すく ないため溶接 ようせつ で造 つく ることも多 おお い。
他 た の特殊 とくしゅ なものとしては、鋳造 ちゅうぞう 品 ひん やクラッド鋼 こう がある。鋳造 ちゅうぞう は、溶鋼を鋳型 いがた に流 なが し込 こ んで直接 ちょくせつ その形 かたち に冷 ひ やし固 かた める製法 せいほう で、複雑 ふくざつ な形状 けいじょう の部品 ぶひん などに対 たい して用 もち いられる。ステンレス鋼 こう の鋳造 ちゅうぞう に使 つか われる溶鋼自体 じたい は、板 いた などを造 つく る溶鋼とほとんど同 おな じである。鋳造 ちゅうぞう 法 ほう の基本 きほん 的 てき な考 かんが え方 かた は炭素 たんそ 鋼 こう や低 てい 炭素 たんそ 合金 ごうきん 鋼 こう 鋳鋼 ちゅうこう と同 おな じだが、溶鋼の流動 りゅうどう 性 せい が悪 わる い点 てん や合金 ごうきん 量 りょう の多 おお さによって融点 ゆうてん が異 こと なる点 てん などを考慮 こうりょ する必要 ひつよう がある。クラッド鋼 こう は、ある材料 ざいりょう を別 べつ の材料 ざいりょう で全面 ぜんめん 的 てき に覆 おお って接合 はぎあわ させる複 ふく 合 あい 材料 ざいりょう の一種 いっしゅ で、単体 たんたい 材料 ざいりょう では得 え られない特性 とくせい を与 あた えたり、単体 たんたい 材料 ざいりょう よりも低 てい コスト化 か させるためなどに用 もち いられる。クラッド鋼 こう の母 はは 材 ざい は炭素 たんそ 鋼 こう や低 てい 合金 ごうきん 鋼 こう とすることが多 おお く、それを覆 おお う合 あ わせ材 ざい にはステンレス鋼 こう 、銅 どう 、チタン、ニッケルが使 つか われているが、特 とく にステンレス鋼 こう を合 あ わせ材 ざい とするクラッド鋼 こう が市場 いちば でも主流 しゅりゅう である。
金属 きんぞく 加工 かこう を行 おこな う第一歩 だいいっぽ として、大 おお きな素材 そざい から望 のぞ ましい大 おお きさや形 かたち に切 き り出 だ す切断 せつだん 加工 かこう を通常 つうじょう は最初 さいしょ に行 おこな う[414] 。熱 ねつ エネルギーを利用 りよう して材料 ざいりょう を溶 と かして切断 せつだん する方法 ほうほう を溶断 ようだん といい、ガス切断 せつだん が最 もっと も代表 だいひょう 的 てき な溶断 ようだん 方法 ほうほう である。しかし、一般 いっぱん 的 てき に用 もち いられている酸素 さんそ ・アセチレンによるガス切断 せつだん ではステンレス鋼 こう を溶断 ようだん できず、適用 てきよう 不可 ふか といえる。ステンレス鋼 こう 中 ちゅう に多量 たりょう に含 ふく まれるクロムは燃焼 ねんしょう 温度 おんど が高 たか く、さらに燃焼 ねんしょう 時 じ に生成 せいせい される酸化 さんか クロムも溶融 ようゆう 温度 おんど が高 たか い。これらが酸素 さんそ アセチレン切断 せつだん による燃焼 ねんしょう を妨 さまた げて、ステンレス鋼 こう の酸素 さんそ アセチレン切断 せつだん を不可能 ふかのう にしていると考 かんが えられている。ステンレス鋼 こう 用 よう に発達 はったつ したガス切断 せつだん 法 ほう が、パウダ切断 せつだん と呼 よ ばれる溶断 ようだん 方法 ほうほう である[418] 。パウダ切断 せつだん では、鉄 てつ 粉 こ を切断 せつだん 酸素 さんそ に混入 こんにゅう させて、その鉄 てつ 粉 こ の酸化 さんか 反応 はんのう 熱 ねつ を利用 りよう して切断 せつだん する[418] 。板 いた 厚 あつ 600 mm までならば、そこまでの技術 ぎじゅつ を要 よう せずにパウダ切断 せつだん でステンレス鋼 こう を切断 せつだん 可能 かのう である。
10 mm 板 ばん 厚 あつ ステンレス鋼板 こうはん のプラズマ切断 せつだん の例 れい 。奥 おく 側 がわ が水 みず プラズマ切断 せつだん 、手前 てまえ 側 がわ がドライプラズマ切断 せつだん 。
ステンレス鋼 こう に適用 てきよう される他 ほか の溶断 ようだん 方法 ほうほう には、アーク切断 せつだん 、プラズマ切断 せつだん 、レーザー切断 せつだん がある。アーク切断 せつだん は、アーク を発生 はっせい させてアーク熱 ねつ で材料 ざいりょう を溶融 ようゆう する切断 せつだん 法 ほう である。アーク切断 せつだん はステンレス鋼 こう の切断 せつだん 法 ほう として発達 はったつ したものだが、切断 せつだん 面 めん の品質 ひんしつ がよくなく、イナートガスアーク溶接 ようせつ を応用 おうよう した方式 ほうしき のアーク切断 せつだん を除 のぞ いて利用 りよう は限 かぎ られている。プラズマ切断 せつだん は、プラズマガス気流 きりゅう の機械 きかい 的 てき なエネルギーとアークの熱 ねつ エネルギーを利用 りよう する切断 せつだん 方法 ほうほう で、ステンレス鋼 こう の主要 しゅよう な切断 せつだん 方法 ほうほう の一 ひと つである。使用 しよう ガスにはアルゴン ・水素 すいそ を使用 しよう すると切断 せつだん 面 めん の品質 ひんしつ が最 もっと もよく、ステンレス鋼 こう でもアルゴン・水素 すいそ が主流 しゅりゅう である[423] 。プラズマ切断 せつだん の場合 ばあい 、100 mm を超 こ える板 いた 厚 あつ まで切断 せつだん 可能 かのう である。レーザー を熱源 ねつげん とするのがレーザー切断 せつだん で、適用 てきよう 板 ばん 厚 あつし は小 ちい さいが、高 こう 精度 せいど な切断 せつだん が可能 かのう である[425] 。ステンレス鋼 こう のレーザー切断 せつだん の場合 ばあい はアシストガスに窒素 ちっそ がよく使 つか われ、切断 せつだん 面 めん の酸化 さんか を起 お こさずに金属 きんぞく 光沢 こうたく のある断面 だんめん を得 え られる[426] 。
溶断 ようだん のほかには、一対 いっつい の刃 は で挟 はさ んでせん断 だん メカニズムにもとづいて素材 そざい を切 き り落 お とすせん断 だん 加工 かこう がある[427] 。鉄鋼 てっこう メーカーが生産 せいさん したコイル をさらに幅 はば を小 ちい さなコイルや平板 へいばん にするシャーリング や、プレス機械 きかい で板 いた を打 う ち抜 ぬ く打 う ち抜 ぬ き加工 かこう がせん断 だん 加工 かこう に該当 がいとう する。ステンレス鋼 こう のせん断 だん 加工 かこう の場合 ばあい 、材料 ざいりょう 強度 きょうど が高 たか めのため、普通 ふつう 鋼 こう や軟鋼 なんこう よりも大 おお きな力 ちから を要 よう し、十分 じゅうぶん な能力 のうりょく を持 も った機器 きき の選定 せんてい や刃 は 型 がた の管理 かんり がより重要 じゅうよう となる。せん断 だん 加工 かこう では、良好 りょうこう な切断 せつだん のために、向 む き合 あ う刃先 はさき のクリアランス(すきま)を材質 ざいしつ や板 いた 厚 あつ に応 おう じて適切 てきせつ に設定 せってい する必要 ひつよう がある[427] 。ステンレス鋼 こう でも種類 しゅるい に応 おう じた設定 せってい クリアランスの傾向 けいこう がある。
他 た の機械 きかい 的 てき な切断 せつだん 方法 ほうほう にはウォータージェット切断 せつだん がある。高速 こうそく で噴射 ふんしゃ された超 ちょう 高圧 こうあつ 水 すい で素材 そざい を切断 せつだん する方法 ほうほう で、熱 ねつ 影響 えいきょう や加工 かこう ひずみがないという長所 ちょうしょ があり、精密 せいみつ 切断 せつだん などに用 もち いられている。
プレス 絞 しぼ り加工 かこう で製造 せいぞう されたステンレス製 せい 食材 しょくざい 容器 ようき 。
プレス成形 せいけい は、ステンレス鋼 こう の板材 いたざい を様々 さまざま な形 かたち に変形 へんけい するためによく利用 りよう される[433] 。ステンレス製品 せいひん の利用 りよう 促進 そくしん には、プレス成形 せいけい 技術 ぎじゅつ の発展 はってん の寄与 きよ が大 おお きいといわれる。曲 ま げ加工 かこう 、深 ふか 絞 しぼ り加工 かこう 、張 は り出 だ し加工 かこう 、打 う ち抜 ぬ き加工 かこう 、ロール成形 せいけい 、コイニング加工 かこう 、エンボス加工 かこう など、ほとんど全 すべ ての成形 せいけい 加工 かこう がステンレス鋼 こう で可能 かのう である。特 とく に塑性 そせい 変形 へんけい 能 のう の高 たか いオーステナイト系 けい は、180度 ど 密着 みっちゃく 折 お り曲 ま げのような厳 きび しい成形 せいけい や、複数 ふくすう の種類 しゅるい の成形 せいけい から成 な るような複雑 ふくざつ なプレス成形 せいけい にも対応 たいおう できる利点 りてん がある。
ただし、普通 ふつう 鋼 こう などと比 くら べると、ステンレス鋼 こう は一般 いっぱん 的 てき に強度 きょうど が高 たか いため加工 かこう 負荷 ふか が大 おお きく、金 かね 型 がた の異常 いじょう 摩耗 まもう や焼付 やきつ き も起 お きやすい。そのため、金 かね 型 がた の材料 ざいりょう や表面 ひょうめん 処理 しょり 、潤滑油 じゅんかつゆ の選定 せんてい がよりきびしくなる。ステンレス鋼 こう では、プレスを離 はな した後 のち に弾性 だんせい 変形 へんけい 分 ぶん だけ元 もと に戻 もど ろうとするスプリングバックが大 おお きく、特 とく に曲 ま げ加工 かこう で所定 しょてい の曲 ま げ角度 かくど を狙 ねら うときはこの大 おお きなスプリングバックの考慮 こうりょ が必要 ひつよう である。一般 いっぱん 的 てき に、オーステナイト系 けい が大 おお きな加工 かこう 硬化 こうか を起 お こすためスプリングバックが大 おお きく、オーステナイト・フェライト系 けい も降伏 ごうぶく 応力 おうりょく が高 たか めのためスプリングバックが大 おお きい。
ステンレス鋼 こう で特 とく に問題 もんだい となる成形 せいけい 時 じ の欠陥 けっかん が、オーステナイト系 けい の時期 じき 割 わ れ 、フェライト系 けい の縦 たて 割 わ れやリジング である。成形 せいけい 性 せい を向上 こうじょう させる場合 ばあい 、オーステナイト系 けい の場合 ばあい に重要 じゅうよう なのが加工 かこう 硬化 こうか 特性 とくせい である。オーステナイト安定 あんてい 度 ど を調整 ちょうせい して適切 てきせつ な度合 どあ いの加工 かこう 硬化 こうか が起 お こるようにすると、成形 せいけい 性 せい が向上 こうじょう する。フェライト系 けい の場合 ばあい は、炭素 たんそ 量 りょう ・窒素 ちっそ 量 りょう を減 へ らす高 こう 純度 じゅんど 化 か とチタンなどの合金 ごうきん 元素 げんそ 添加 てんか が成形 せいけい 性 せい 向上 こうじょう に有効 ゆうこう である[442] 。
また、ステンレス鋼 こう の場合 ばあい 、その表面 ひょうめん の美麗 びれい さを商品 しょうひん 価値 かち とすることが多 おお い。そのため、成形 せいけい 加工 かこう 中 ちゅう に表面 ひょうめん が損傷 そんしょう しないように特 とく に注意 ちゅうい を要 よう する。ステンレス鋼 こう の成形 せいけい 加工 かこう では、潤滑油 じゅんかつゆ の塗布 とふ のほか、表面 ひょうめん 保護 ほご のために樹脂 じゅし 系 けい のフィルムを表面 ひょうめん に付 つ けてプレス成形 せいけい することもある。
鍛造 たんぞう は、鋼 はがね 塊 かたまり にハンマやプレスで大 おお きな力 ちから を加 くわ えて形 かたち を作 つく る加工 かこう 法 ほう で、同時 どうじ に材料 ざいりょう 内部 ないぶ の欠陥 けっかん を押 お しつぶし、結晶 けっしょう 粒 つぶ の微細 びさい 化 か なども実現 じつげん する。一般 いっぱん 的 てき には、鍛造 たんぞう 前 まえ に鋼 はがね 塊 かたまり の加熱 かねつ を行 おこな い、熱 ねつ 間 あいだ または温 ゆたか 間 あいだ で鍛造 たんぞう する[446] 。オーステナイト系 けい は、その著 いちじる しい加工 かこう 硬化 こうか のため、一般 いっぱん 的 てき には冷 ひや 間 あいだ 鍛造 たんぞう されない[446] 。線 せん 材 ざい では、炭素 たんそ ・窒素 ちっそ を極 ごく 低 てい 量 りょう 化 か して軟質 なんしつ にし、ニッケルや銅 どう を添加 てんか して加工 かこう 硬化 こうか を抑 おさ えた鋼 はがね 種 しゅ のオーステナイト系 けい を使 つか って冷 ひや 間 あいだ 鍛造 たんぞう することもある。
また、ステンレス鋼 こう は焼 やき 付 つ きを起 お こしやすいので鍛造 たんぞう 時 じ には注意 ちゅうい を要 よう する[446] 。温 ゆたか 間 あいだ 加工 かこう 時 じ も、炭素 たんそ 鋼 こう などでは表面 ひょうめん の酸化 さんか 物 ぶつ が焼 やき 付 つ きを防止 ぼうし する機能 きのう を果 は たすが、ステンレス鋼 こう では高 こう 耐食性 たいしょくせい のため表面 ひょうめん が酸化 さんか しづらい[446] 。そのため、何 なん らかの表面 ひょうめん 皮膜 ひまく 処理 しょり を行 おこな って潤滑 じゅんかつ 性 せい を高 たか めることが望 のぞ ましい[446] 。
不要 ふよう な部分 ぶぶん を切 き りくずとして取 と り除 のぞ きながら、所望 しょもう の形状 けいじょう に作 つく り上 あ げるのが切削 せっさく 加工 かこう である[449] 。切削 せっさく 加工 かこう においては、ステンレス鋼 こう は一般 いっぱん 的 てき に難 なん 切削 せっさく 材料 ざいりょう といわれる。全 すべ ての切削 せっさく 加工 かこう 自体 じたい はステンレス鋼 こう に適用 てきよう 可能 かのう だが、普通 ふつう 鋼 こう 、銅 どう 、アルミニウムなどと比較 ひかく すると切削 せっさく しづらい。フェライト系 けい と焼 やき なまし状態 じょうたい のマルテンサイト系 けい は炭素 たんそ 鋼 こう に似 に た切削 せっさく 特性 とくせい といえるが、加工 かこう 硬化 こうか 性 せい が強 つよ いオーステナイト系 けい の切削 せっさく 性 せい が特 とく に劣 おと る。快 かい 削 そぎ 性 せい の硫黄 いおう 鋼 こう AISI B1112 を100 とする被 ひ 削 そぎ 性 せい 指数 しすう の例 れい を以下 いか に示 しめ す。
被 ひ 削 そぎ 性 せい 指数 しすう の例 れい
種類 しゅるい
鋼 はがね 種 しゅ
被 ひ 削 そぎ 性 せい 指数 しすう
硫黄 いおう 快 かい 削 そぎ 鋼 こう
AISI B1112
100
低 てい ・中 ちゅう 炭素 たんそ 鋼 こう
JIS S25C
70
オーステナイト系 けい 代表 だいひょう 的 てき 鋼 こう 種 しゅ
JIS SUS304
35
オーステナイト系 けい 快 かい 削 そぎ 鋼 こう
JIS SUS340
60
マルテンサイト系 けい 代表 だいひょう 的 てき 鋼 こう 種 しゅ (硬化 こうか 処理 しょり 前 まえ )
JIS SUS410
50
マルテンサイト系 けい 快 かい 削 そぎ 鋼 こう (硬化 こうか 処理 しょり 前 まえ )
JIS SUS416
65
フェライト系 けい 代表 だいひょう 的 てき 鋼 こう 種 しゅ
JIS SUS430
50
フェライト系 けい 快 かい 削 そぎ 鋼 こう
JIS SUS430F
80
直流 ちょくりゅう 被覆 ひふく アーク溶接 ようせつ によるステンレス鋼 こう 溶接 ようせつ ビードの様子 ようす 。
TIG溶接 ようせつ によるステンレス鋼 こう 溶接 ようせつ ビードの様子 ようす 。
材料 ざいりょう を溶 と かして接合 せつごう する溶接 ようせつ には、アーク溶接 ようせつ を筆頭 ひっとう に多 おお く種類 しゅるい の溶接 ようせつ 法 ほう が存在 そんざい する。基本 きほん 的 てき にはステンレス鋼 こう でも同 おな じ溶接 ようせつ 法 ほう が用 もち いられる。鋼 はがね 種 しゅ による差異 さい はあるが、ステンレス鋼 こう を溶接 ようせつ して接合 せつごう すること自体 じたい に特段 とくだん の困難 こんなん はない。ただし、ステンレス鋼 こう は他 た の鋼 はがね と異 こと なる特性 とくせい を持 も っている面 めん もあるため、それらの特性 とくせい に適 てき した溶接 ようせつ 法 ほう を選択 せんたく しないと種々 しゅじゅ の溶接 ようせつ 欠陥 けっかん を生 う むなどの不具合 ふぐあい の原因 げんいん となる。その意味 いみ では、ステンレス鋼 こう の溶接 ようせつ 難 なん 度 ど は高 たか いといえる。
ステンレス鋼 こう と炭素 たんそ 鋼 こう は物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ がかなり異 こと なる面 めん もあるため、溶接 ようせつ 上 じょう もこれらの性質 せいしつ の違 ちが いに配慮 はいりょ が必要 ひつよう である[458] 。電気 でんき 抵抗 ていこう については次 つぎ のような影響 えいきょう がある。被覆 ひふく アーク溶接 ようせつ では、高 たか い電気 でんき 抵抗 ていこう のために溶接 ようせつ 電流 でんりゅう が高 たか いと発熱 はつねつ が著 いちじる しくなり、溶接 ようせつ 棒 ぼう が焼 や ける恐 おそ れがある。そのため、通常 つうじょう は溶接 ようせつ 電流 でんりゅう を普通 ふつう 鋼 こう よりもやや低 ひく くする。一方 いっぽう 、電気 でんき 抵抗 ていこう による発熱 はつねつ を利用 りよう して溶接 ようせつ する抵抗 ていこう 溶接 ようせつ では、この高 たか い電気 でんき 抵抗 ていこう が利点 りてん として働 はたら き、抵抗 ていこう 溶接 ようせつ に必要 ひつよう な電流 でんりゅう が小 ちい さくて済 す む。ステンレス鋼 こう の薄板 うすいた の接合 せつごう には、抵抗 ていこう 溶接 ようせつ を利用 りよう することが多 おお い[462] 。
熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ と線 せん 膨張 ぼうちょう 係数 けいすう については、特 とく にオーステナイト系 けい が炭素 たんそ 鋼 こう と大 おお きく異 こと なるため溶接 ようせつ 上 じょう 注意 ちゅうい を要 よう する[458] 。熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ が小 ちい さいため溶接 ようせつ による熱 ねつ が逃 に げにくく、その上 うえ 、線 せん 膨張 ぼうちょう 係数 けいすう が大 おお きいため熱 ねつ が入 はい った箇所 かしょ が大 おお きく伸 の びようとするため、溶接 ようせつ 対象 たいしょう 物 ぶつ の変形 へんけい が起 お こりやすい。また、このような溶接 ようせつ 変形 へんけい が拘束 こうそく された結果 けっか 、比較的 ひかくてき 大 おお きな残留 ざんりゅう 応力 おうりょく が残 のこ り、後 ご の応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れの原因 げんいん となることも多 おお い。溶接 ようせつ 上 じょう の対策 たいさく としては、固定 こてい 具 ぐ を用 もち いる、溶接 ようせつ 順序 じゅんじょ を工夫 くふう する、他 た の熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ の良 よ い金属 きんぞく を裏 うら 当 あ てして熱 ねつ を逃 に がす等 とう を行 おこな う。
上述 じょうじゅつ のように溶接 ようせつ 熱 ねつ による鋭敏 えいびん 化 か も、ステンレス鋼 こう 特有 とくゆう の溶接 ようせつ 施工 しこう の注意 ちゅうい 点 てん である。その他 た の溶接 ようせつ 上 じょう の問題 もんだい 点 てん としては、オーステナイト系 けい の高温 こうおん 割 わ れ 、フェライト系 けい の475°C脆 もろ 化 か 、マルテンサイト系 けい の低温 ていおん 割 わ れ 、オーステナイト・フェライト系 けい のオーステナイト量 りょう 変化 へんか などが挙 あ げられる。フェライト系 けい やマルテンサイト系 けい では、割 わ れなどを防 ふせ ぐために溶接 ようせつ 前 まえ に溶接 ようせつ 対象 たいしょう 物 ぶつ にある程度 ていど 熱 ねつ を加 くわ える予熱 よねつ 処理 しょり を行 おこな う。一方 いっぽう で、オーステナイト系 けい は延性 えんせい に富 と み、予熱 よねつ 処理 しょり がかえって有害 ゆうがい になることも多 おお いため、通例 つうれい は予熱 よねつ 処理 しょり を行 おこな わない。溶接 ようせつ 後 ご に熱 ねつ を加 くわ える後 のち 熱処理 ねつしょり についても、耐食性 たいしょくせい を確実 かくじつ にしたいなどの事情 じじょう がないかぎりオーステナイト系 けい では通例 つうれい は行 おこな わない。マルテンサイト系 けい とフェライト系 けい では延性 えんせい 回復 かいふく の点 てん から後 こう 熱処理 ねつしょり を行 おこな う。
また、ステンレス鋼 こう と他 た の金属 きんぞく 材料 ざいりょう を溶接 ようせつ する異種 いしゅ 金属 きんぞく 溶接 ようせつ が行 おこな われることもある。実際 じっさい の設計 せっけい では、経済 けいざい 性 せい も考慮 こうりょ してそれぞれの使用 しよう 場所 ばしょ に応 おう じて必要 ひつよう な材料 ざいりょう を選定 せんてい するので、必然 ひつぜん 的 てき に異 こと なる材料 ざいりょう との接合 せつごう も必要 ひつよう となる。母 はは 材 ざい と溶接 ようせつ 材 ざい が異 こと なる場合 ばあい 、溶着 ようちゃく 金属 きんぞく が母 はは 材 ざい 組成 そせい によって希釈 きしゃく され、溶着 ようちゃく 金属 きんぞく の組成 そせい が変 か わってくる。異種 いしゅ 金属 きんぞく 溶接 ようせつ ではこの点 てん を考慮 こうりょ する必要 ひつよう があり、予想 よそう される希釈 きしゃく 後 ご の組成 そせい をもとに上述 じょうじゅつ のシェフラーの組織 そしき 図 ず から溶着 ようちゃく 金属 きんぞく の組織 そしき を予測 よそく し、適切 てきせつ な溶接 ようせつ 材 ざい を選択 せんたく する。ステンレス鋼 こう と異種 いしゅ 材 ざい 溶接 ようせつ 可能 かのう なのは、多 おお くの他 ほか の鋼 はがね 、ニッケルおよびニッケル合金 ごうきん 、銅 どう および銅 どう 合金 ごうきん などである。フェライト系 けい とマルテンサイト系 けい を溶接 ようせつ する場合 ばあい は、フェライト系 けい の溶接 ようせつ 材料 ざいりょう を用 もち いるのが、オーステナイト系 けい とフェライト系 けい あるいはオーステナイト系 けい とマルテンサイト系 けい を溶接 ようせつ する場合 ばあい は、オーステナイト系 けい の溶接 ようせつ 材料 ざいりょう を用 もち いるのが望 のぞ ましいとされる[472] 。
熱処理 ねつしょり は、ステンレス鋼 こう の製造 せいぞう 過程 かてい の最終 さいしゅう 工程 こうてい あるいは中間 ちゅうかん 工程 こうてい として行 おこな われる。特 とく にステンレス鋼 こう の場合 ばあい 、その金属 きんぞく 組織 そしき を最終 さいしゅう 的 てき に決 き めるという点 てん において熱処理 ねつしょり 工程 こうてい は重要 じゅうよう である。熱処理 ねつしょり は耐食性 たいしょくせい 、機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ 、さらには物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ にも影響 えいきょう する点 てん でも重要 じゅうよう 性 せい を持 も つ。
固 かた 溶化熱処理 ねつしょり は、主 おも にオーステナイト系 けい およびオーステナイト・フェライト系 けい に施 ほどこ される熱処理 ねつしょり である。具体 ぐたい 的 てき な温度 おんど は鋼 はがね 種 しゅ によって異 こと なるが、おおよそ 950 °C から 1150 °C まで加熱 かねつ した後 のち に急冷 きゅうれい する。固 かた 溶化熱処理 ねつしょり によってそれぞれの目的 もくてき の金属 きんぞく 組織 そしき にし、さらに耐食性 たいしょくせい や機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ を回復 かいふく させる。特 とく に固 かた 溶化熱処理 ねつしょり には、クロム炭化物 たんかぶつ や窒化物 ぶつ を固 かた 溶させ、鋭敏 えいびん 化 か を防 ふせ いで耐食性 たいしょくせい を確実 かくじつ にする効果 こうか がある[477] 。析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい の前 ぜん 処理 しょり としても行 おこな われる。
焼入 やきい れ と焼戻 やきもど し は、主 おも にマルテンサイト系 けい に施 ほどこ される。焼入 やきい れは、加熱 かねつ して組織 そしき をオーステナイト にした後 のち 、冷却 れいきゃく して組織 そしき をマルテンサイト にする熱処理 ねつしょり で、マルテンサイト系 けい には必須 ひっす の熱処理 ねつしょり といえる。JIS SUS420J2 の例 れい で、おおよそ 920 °C から 950 °C まで加熱 かねつ して油 あぶら 冷 ひや する[477] 。焼戻 やきもど しは、靭 うつぼ 性 せい を回復 かいふく するために焼入 やきい れ後 ご に引 ひ き続 つづ いて行 おこな われる熱処理 ねつしょり で、約 やく 600–750 °C に加熱 かねつ して冷却 れいきゃく する高温 こうおん 焼戻 やきもど しと、約 やく 150–200 °C に加熱 かねつ して冷却 れいきゃく する低温 ていおん 焼戻 やきもど しがある。
焼 やき なまし は、フェライト系 けい やマルテンサイト系 けい などに施 ほどこ される。 おおよそ 780 °C から 900°C に加熱 かねつ し、空冷 くうれい または徐 じょ 冷 ひや する。 フェライト系 けい の場合 ばあい は、焼 やき なまし後 ご そのまま使用 しよう に供 きょう される。焼 やき なましによって、靭 うつぼ 性 せい 向上 こうじょう や加工 かこう ひずみ除去 じょきょ を行 おこな う。一方 いっぽう 、マルテンサイト系 けい の場合 ばあい は、成形 せいけい や切削 せっさく の前 ぜん 段階 だんかい として焼 やき なまし状態 じょうたい にすることが多 おお い。マルテンサイトにした後 のち では硬 かた くて成形 せいけい や切削 せっさく が困難 こんなん になるため、焼 やき なましによってマルテンサイト系 けい の組織 そしき を一旦 いったん フェライト組織 そしき にする。その後 ご に成形 せいけい ・切削 せっさく し、それから焼入 やきい れ・焼戻 やきもど しする。また、有害 ゆうがい な残留 ざんりゅう 応力 おうりょく を除去 じょきょ する応力 おうりょく 除去 じょきょ 焼 しょう なましなどをオーステナイト系 けい に施 ほどこ すこともある。
時効 じこう 硬化 こうか 処理 しょり は析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい 特有 とくゆう の熱処理 ねつしょり で、固 かた 溶化熱処理 ねつしょり 後 ご の材料 ざいりょう を加熱 かねつ ・一定 いってい 時間 じかん 保持 ほじ し、析出 せきしゅつ 硬化 こうか を起 お こさせる。高温 こうおん で時効 じこう 硬化 こうか 処理 しょり を行 おこな えば保持 ほじ 時間 じかん は短 みじか くできるが、達成 たっせい 可能 かのう な強度 きょうど は低 ひく くなる。マルテンサイト系 けい 析出 せきしゅつ 硬化 こうか 型 がた の 630 の例 れい では、470 °C で1時 じ 間 あいだ 保持 ほじ して空冷 くうれい という条件 じょうけん や 630 °C で4時 じ 間 あいだ 保持 ほじ して空冷 くうれい という条件 じょうけん が規定 きてい されている。
ステンレス鋼 こう の熱処理 ねつしょり 上気 じょうき を付 つ けるべき点 てん としては、フェライト系 けい の475°C脆性 ぜいせい やσ しぐま 相 あい 脆 もろ 化 か 、マルテンサイト系 けい の焼戻 やきもど し脆性 ぜいせい などがあり、適切 てきせつ な温度 おんど 制御 せいぎょ が求 もと められる。また、過 か 加熱 かねつ による結晶 けっしょう 粒 つぶ の粗大 そだい 化 か も注意 ちゅうい 点 てん である。
ステンレス鋼 こう は金属 きんぞく 表面 ひょうめん を晒 さら して利用 りよう 可能 かのう なため、様々 さまざま な意匠 いしょう 用途 ようと に使 つか われてきた。このため、ステンレス鋼 こう には多 おお くの表面 ひょうめん 仕上 しあ げ方法 ほうほう が開発 かいはつ されている。新 あたら しい表面 ひょうめん をつくるために、複数 ふくすう の表面 ひょうめん 処理 しょり 方法 ほうほう を組 く み合 あ わすこともある。
仕上 しあ げ後 ご の表面 ひょうめん 状態 じょうたい は、見 み た目 め のみならず耐食性 たいしょくせい にも影響 えいきょう し、この点 てん でも表面 ひょうめん 仕上 しあ げは重要 じゅうよう となる。一般 いっぱん 的 てき には、表面 ひょうめん が滑 なめ らかであるほど腐食 ふしょく が起 お きにくくなるといえる[493] 。例 たと えば、グラインダー されたままの表面 ひょうめん 状態 じょうたい では、同 おな じ環境 かんきょう で比較 ひかく して本来 ほんらい 発揮 はっき できるはずの耐食性 たいしょくせい よりも孔 あな 食 しょく などの局部 きょくぶ 腐食 ふしょく が起 お きやすいといったことがある[494] 。
独立 どくりつ 二 に 百 ひゃく 周年 しゅうねん を記念 きねん して建 た てられたメキシコ・トルーカ にある塔 とう のモニュメント。304Lの2B仕上 しあ げ材 ざい が使 つか われている[495] 。
ステンレス鋼 こう の板材 いたざい は、基本 きほん 的 てき には圧延 あつえん 仕上 しあ げで製造 せいぞう され、市場 いちば へ供給 きょうきゅう される[496] 。ステンレス鋼 こう の場合 ばあい は金属 きんぞく 表面 ひょうめん のまま利用 りよう 可能 かのう なので、追加 ついか の表面 ひょうめん 仕上 しあ げを行 おこな わない圧延 あつえん 仕上 しあ げのままでも意匠 いしょう 用 よう として利用 りよう できる[497] 。仕上 しあ げ内容 ないよう を示 しめ す記号 きごう が規格 きかく で割 わ り当 あ てられている。JIS またはASTM に制定 せいてい されているステンレス鋼 こう の代表 だいひょう 的 てき な圧延 あつえん 仕上 しあ げについて以下 いか に示 しめ す。
No.1
粗 あら めの表面 ひょうめん で、銀 ぎん 白色 はくしょく または白色 はくしょく をした光沢 こうたく の無 な い見 み た目 め の仕上 しあ げ[499] 。熱 ねつ 間 あいだ 圧延 あつえん 完了 かんりょう 後 ご 、熱処理 ねつしょり を行 おこな い、酸 さん 洗 あらい でスケール除去 じょきょ を行 おこな った状態 じょうたい で、この表面 ひょうめん 状態 じょうたい となる[499] 。主 おも に、表面 ひょうめん の光沢 こうたく が求 もと められない用途 ようと に使 つか われる[501] 。
No.2D
鈍 にぶ い灰色 はいいろ または銀 ぎん 白色 はくしょく で、光沢 こうたく は少 すく なく、つや消 け し調 ちょう の見 み た目 め の仕上 しあ げ[501] 。冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん 後 のち に、熱処理 ねつしょり 、酸 さん 洗 あらい を行 おこな った状態 じょうたい 。あるいは、ダルロールで軽 かる く圧延 あつえん しても、この表面 ひょうめん 状態 じょうたい を得 え ることもできる[499] 。幅広 はばひろ い用途 ようと に使 つか われている仕上 しあ げである[501] 。特 とく に、弱 よわ めの光沢 こうたく が求 もと められる用途 ようと に使 つか われ、屋根 やね などの建材 けんざい で多 おお い利用 りよう が多 おお い[493] 。
No.2B
No.2Dよりも滑 なめ らかな表面 ひょうめん で、銀 ぎん 白色 はくしょく のやや光沢 こうたく がある見 み た目 め の仕上 しあ げ[501] 。No.2D材 ざい を鏡面 きょうめん ロールで軽 かる く圧延 あつえん することで得 え られる[501] 。一般 いっぱん 用途 ようと 向 む けの仕上 しあ げで、ステンレス鋼材 こうざい の大 だい 部分 ぶぶん はこの仕上 しあ げで市販 しはん されている[499] [501] [493] 。
BA
No.2Bよりも滑 なめ らかな表面 ひょうめん で、光沢 こうたく ありの見 み た目 め の仕上 しあ げ[499] [501] 。冷 ひや 間 あいだ 圧延 あつえん 後 ご に、熱処理 ねつしょり を光輝 こうき 熱処理 ねつしょり で行 おこな った状態 じょうたい の表面 ひょうめん [499] [501] 。さらに、鏡面 きょうめん ロールによる軽 かる い圧延 あつえん を行 おこな うこともある[501] 。装飾 そうしょく 品 ひん 、家電 かでん 、自動車 じどうしゃ 部品 ぶひん 、台所 だいどころ 用品 ようひん などで使 つか われる[501] 。さらに鏡面 きょうめん 仕上 しあ げを行 おこな う場合 ばあい も、BA仕上 しあ げの素材 そざい が使 つか われる[493] 。
他 た のステンレス鋼 こう 向 む けの圧延 あつえん 仕上 しあ げとしては、ダル仕上 しあ げやエンボス 仕上 しあ げがある[497] 。どちらも表面 ひょうめん に凹凸 おうとつ を持 も つ圧延 あつえん ロールで圧延 あつえん することで、その凹凸 おうとつ を素材 そざい 表面 ひょうめん に転写 てんしゃ する仕上 しあ げ方法 ほうほう で、ダル仕上 しあ げは不規則 ふきそく な凹凸 おうとつ 模様 もよう を与 あた え、エンボス仕上 しあ げは規則 きそく 的 てき な凹凸 おうとつ 模様 もよう を与 あた える。ダル仕上 しあ げの場合 ばあい は、鈍 にぶ く光沢 こうたく を抑 おさ えた落 お ち着 つ いた見 み た目 め になる。エンボス仕上 しあ げは、ファッション的 てき な柄 え 模様 もよう の見 み た目 め にする。
ゴベット・ブリュースター美術館 びじゅつかん (英語 えいご 版 ばん ) のレン・ライ・センターのファサード 外 そと 板 ばん 。316Lの鏡面 きょうめん 仕上 しあ げ材 ざい が使 つか われている。
ステンレス鋼 こう の表面 ひょうめん 仕上 しあ げによく使 つか われているのが、研磨 けんま を施 ほどこ した仕上 しあ げである。研磨 けんま 仕上 しあ げ材 ざい は主 おも に外観 がいかん を装飾 そうしょく する用途 ようと に使 つか われ、普段 ふだん 目 め にするステンレス鋼 こう 製 せい の装飾 そうしょく 金物 かなもの や台所 だいどころ 用品 ようひん の多 おお くは研磨 けんま 仕上 しあ げがされている[506] 。
研磨 けんま 仕上 しあ げの場合 ばあい 、市場 いちば に流通 りゅうつう している研磨 けんま 済 ず み素材 そざい を使用 しよう する場合 ばあい の他 ほか に、プラントのタンクなどのように設備 せつび 施工 しこう 後 ご に研磨 けんま する場合 ばあい もある。研磨 けんま 仕上 しあ げの主 おも な手法 しゅほう は、研磨 けんま 目 め を残 のこ らせるベルト研磨 けんま と鏡面 きょうめん に仕上 しあ げることを目的 もくてき とするバフ研磨 けんま の2種類 しゅるい である。硫黄 いおう 系 けい の研磨 けんま 油 ゆ は、研磨 けんま 後 ご にステンレス鋼 こう 表面 ひょうめん に硫化 りゅうか 物 ぶつ を生成 せいせい し、耐食性 たいしょくせい を劣化 れっか させることがあるので注意 ちゅうい を要 よう する。研磨 けんま 仕上 しあ げも、規格 きかく で仕上 しあ げ内容 ないよう を示 しめ す記号 きごう が割 わ り当 あ てられている。JISまたはASTMで制定 せいてい されている代表 だいひょう 的 てき な研磨 けんま 仕上 しあ げについて以下 いか に示 しめ す。
No.4
光沢 こうたく があり、細 こま かな研磨 けんま 目 め が残 のこ された表面 ひょうめん の仕上 しあ げ。JISでは#150から#180の砥 とぎ 粒 つぶ の研磨 けんま ベルト で研磨 けんま して仕上 しあ げる。ASTMでは#120から#150を用 もち いる[499] 。
HL
連続 れんぞく した線 せん 状 じょう の細 こま かい研磨 けんま 目 め が付 つ いた表面 ひょうめん の仕上 しあ げ。#150から#240程度 ていど の研磨 けんま ベルトで仕上 しあ げられる。建材 けんざい 用途 ようと で一般 いっぱん 的 てき な仕上 しあ げで、建物 たてもの の内装 ないそう ・外装 がいそう に使 つか われる。
No.6
光沢 こうたく の低 ひく い、つや消 け し梨地 なしじ (サテン)の仕上 しあ げ[499] 。仕上 しあ げ方法 ほうほう は、No.4仕上 しあ げ材 ざい をタンピコブラシで研磨 けんま するのが典型 てんけい 的 てき な方法 ほうほう 。
No.8
光沢 こうたく が高 たか く、研磨 けんま 目 め は除去 じょきょ され、高 たか い反射 はんしゃ 率 りつ を持 も つ鏡面 きょうめん 状 じょう の仕上 しあ げ。いわゆる鏡面 きょうめん 仕上 しあ げに相当 そうとう する[501] 。細 こま かい研磨 けんま 剤 ざい で研磨 けんま した後 のち 、鏡面 きょうめん 用 よう バフで最終 さいしゅう 研磨 けんま して仕上 しあ げる[499] 。装飾 そうしょく 用 よう や反射 はんしゃ 鏡 きょう に使 つか われる[501] 。
他 た の研磨 けんま 方法 ほうほう としては、小物 こもの の研磨 けんま に用 もち いるバレル研磨 けんま や電解 でんかい 液 えき に浸 ひた して表面 ひょうめん を電解 でんかい させる電解 でんかい 研磨 けんま (英語 えいご 版 ばん ) がある。ステンレス鋼 こう の電解 でんかい 研磨 けんま には、リン酸 さん 、硫酸 りゅうさん 、硝酸 しょうさん が電解 でんかい 液 えき としてよく使 つか われる。電解 でんかい 研磨 けんま と砥 とぎ 粒 つぶ による機械 きかい 的 てき な研磨 けんま を複 ふく 合 あわ させた手法 しゅほう もあり、より高 たか 平滑 へいかつ な表面 ひょうめん が得 え られる。
化学 かがく 発色 はっしょく 皮膜 ひまく [ 編集 へんしゅう ]
化学 かがく 発色 はっしょく 皮膜 ひまく による発色 はっしょく をさせたステンレス鋼 こう のコースター [515]
化学 かがく 発色 はっしょく させたステンレス鋼 こう を使 つか ったサウスウエストオレゴン地域 ちいき 空港 くうこう の外壁 がいへき [516] 。
ステンレス鋼 こう は金属 きんぞく 素地 そじ を露出 ろしゅつ させて使 つか うのが一般 いっぱん 的 てき だが、ニーズの多様 たよう 化 か に応 こた える形 かたち で近年 きんねん では着色 ちゃくしょく したステンレス鋼 こう も利用 りよう されている。用途 ようと によっては銀色 ぎんいろ の金属 きんぞく 光沢 こうたく が持 も つ冷 つめ たい印象 いんしょう を嫌 きら う場合 ばあい もあり、そういった面 めん からも着色 ちゃくしょく が求 もと められる[518] 。
ステンレス鋼 こう の着色 ちゃくしょく 方法 ほうほう には、後述 こうじゅつ の塗装 とそう のほかに、表面 ひょうめん に酸化 さんか 皮膜 ひまく を作 つく り、光 ひかり の干渉 かんしょう 色 しょく を利用 りよう する方法 ほうほう がある。酸化 さんか 皮膜 ひまく の厚 あつ さを変 か えることで、干渉 かんしょう 色 しょく を変 か えることができる。この方法 ほうほう には様々 さまざま なものが存在 そんざい するが、実用 じつよう 的 てき にはインコ法 ほう が主流 しゅりゅう である[497] 。
インコ法 ほう は、硫酸 りゅうさん と酸化 さんか クロムの浴 よく に浸漬 しんせき して発色 はっしょく させる工程 こうてい と、さらに硫酸 りゅうさん とリン酸 さん の浴 よく で浸漬 しんせき ・電解 でんかい し、酸化 さんか 皮膜 ひまく を強固 きょうこ にする工程 こうてい から成 な る。できあがる酸化 さんか 皮膜 ひまく は「化学 かがく 発色 はっしょく 皮膜 ひまく 」と呼 よ ばれる[520] 。化学 かがく 発色 はっしょく 皮膜 ひまく の組成 そせい はクロムに豊 ゆたか み、厚 あつ みはステンレス鋼 こう 元来 がんらい の不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく よりも著 いちじる しく大 おお きい。ただし、化学 かがく 発色 はっしょく 法 ほう による酸化 さんか 膜 まく は、元来 がんらい の不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく と異 こと なり傷 きず ついたら回復 かいふく しない[521] 。浸漬 しんせき 時間 じかん に応 おう じて化学 かがく 発色 はっしょく 皮膜 ひまく の厚 あつ みが変 か わり、厚 あつ みが増 ま すにしたがって発色 はっしょく が「ブロンズ → 青 あお → 金色 きんいろ → 赤 あか → 緑 みどり 」と変 か わる[497] [521] 。化学 かがく 発色 はっしょく 皮膜 ひまく の厚 あつ さは、ブロンズのときに 0.02 μ みゅー m 程度 ていど 、緑 みどり のときに 0.36 μ みゅー m 程度 ていど である[516] 。現在 げんざい では発色 はっしょく と硬化 こうか を分 わ けずに、同 おな じ工程 こうてい で一 いち 度 ど に行 おこな う技術 ぎじゅつ も実用 じつよう 化 か されている。以前 いぜん の化学 かがく 発色 はっしょく 法 ほう は発色 はっしょく の不 ふ 均一 きんいつ さを克服 こくふく できなかったが、現在 げんざい では前 ぜん 処理 しょり 技術 ぎじゅつ の向上 こうじょう などによって均一 きんいつ な発色 はっしょく も可能 かのう となっている[523] 。
白色 はくしょく 塗装 とそう されたステンレス鋼 こう でつくられた野外 やがい 彫刻 ちょうこく [516] 。ジャウメ・プレンサ の「ノマド」。
かつては、ステンレス鋼 こう を使 つか うときにはその耐食性 たいしょくせい と金属 きんぞく 的 てき 外観 がいかん が好 この まれ、ステンレス鋼 こう を塗装 とそう することはほとんどなかった。しかし、近年 きんねん では塗装 とそう がなされたステンレス鋼 こう も多 おお く利用 りよう されており、「塗装 とそう ステンレス鋼 こう 」と呼 よ ばれる[497] 。
塗装 とそう されたステンレス鋼 こう の見 み た目 め 自体 じたい は、普通 ふつう 鋼 こう を塗装 とそう したものと変 か わらない[497] 。ステンレス鋼 こう に塗装 とそう を行 おこな う理由 りゆう としては、装飾 そうしょく のためにカラフルな見 み た目 め にしたいことの他 ほか に、腐食 ふしょく 保護 ほご の信頼 しんらい 性 せい の高 たか さがある。普通 ふつう 鋼 こう を塗装 とそう したものだと、塗膜 とまく が欠損 けっそん したときにそこから現 あらわ れる地肌 じはだ に錆 さび が生 しょう じるが、ステンレス鋼 こう を塗装 とそう した場合 ばあい 、現 あらわ れる地肌 じはだ の耐食性 たいしょくせい が高 たか いため発 はつ 錆 さび が生 しょう じにくい。他 た の着色 ちゃくしょく 法 ほう よりも、塗装 とそう の加工 かこう コストが廉価 れんか という長所 ちょうしょ もある[501] 。また、金属 きんぞく 的 てき 外観 がいかん を活 い かしつつも、汚 よご れや指紋 しもん を付 つ きにくくするために、クリア塗装 とそう やカラークリア塗装 とそう もステンレス鋼 こう 塗装 とそう に利用 りよう されている。
ステンレス鋼 こう 塗装 とそう に使 つか われている塗料 とりょう は、耐食性 たいしょくせい 向上 こうじょう の観点 かんてん を重視 じゅうし するときは、耐 たい 候 こう 性 せい が高 たか いシリコン変成 へんせい ポリエステル、シリコン変成 へんせい アクリル樹脂 じゅし 、フッ素 ふっそ 樹脂 じゅし の利用 りよう が一般 いっぱん 的 てき である。ステンレス鋼 こう の表面 ひょうめん は不 ふ 活性 かっせい な不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく に覆 おお われているため、一般 いっぱん 的 てき に有機 ゆうき 皮膜 ひまく との密着 みっちゃく 性 せい が良 よ くない。脱脂 だっし して表面 ひょうめん の汚 よご れや油分 ゆぶん を取 と り除 のぞ く、ショットブラストや酸 さん 洗 あらい で方面 ほうめん に適度 てきど に粗 あら くして塗料 とりょう の食 ぐ いつきを良 よ くする、といった適当 てきとう な前 ぜん 処理 しょり を行 おこな えば、一般 いっぱん 的 てき な鋼板 こうはん と同 おな じように塗装 とそう できる。
溶融 ようゆう 亜鉛 あえん めっきステンレスを使 つか った瓦 かわら [531] 。鳴門 なると 市 し のトリーデなると 。
めっき もステンレス鋼 こう に使 つか われている表面 ひょうめん 処理 しょり である。耐食性 たいしょくせい 、装飾 そうしょく 性 せい 、導電性 どうでんせい の向上 こうじょう といった目的 もくてき から、めっきがステンレス鋼 こう にも利用 りよう されている。電気 でんき めっき も溶融 ようゆう めっき もステンレスに施工 しこう 可能 かのう だが、めっきの密着 みっちゃく を確実 かくじつ にする上 じょう でステンレス鋼 こう の不 ふ 働 はたらけ 態 たい 皮膜 ひまく が問題 もんだい となる。そのため、電気 でんき めっきではストライクめっき などの前 ぜん 処理 しょり が必要 ひつよう となる。ガス還元 かんげん 法 ほう による溶融 ようゆう めっきでも、前 ぜん 処理 しょり として別 べつ のめっきを行 おこな う。
耐食性 たいしょくせい を目的 もくてき としたステンレス鋼 こう へのめっきとしては、溶融 ようゆう アルミニウムめっきの例 れい が知 し られる。アルミニウムは自然 しぜん 電位 でんい がステンレス鋼 こう よりも卑であるため、犠牲 ぎせい 陽極 ようきょく として働 はたら き、ステンレス鋼 こう 素地 そじ の孔 あな 食 しょく 防止 ぼうし などの効果 こうか がある。自動車 じどうしゃ 排気 はいき 系 けい 部品 ぶひん で耐 たい 熱 ねつ 用 よう フェライト系 けい ステンレス鋼 こう を溶融 ようゆう アルミニウムめっきすることで、304系 けい 並 な みの耐食性 たいしょくせい を付与 ふよ させた例 れい などがある。
装飾 そうしょく 用 よう には、金 きむ めっきや銀 ぎん めっきが古 ふる くから用 もち いられている。いぶし瓦 かわら の色合 いろあ いを出 だ すことを狙 ねら った、溶融 ようゆう 亜鉛 あえん メッキステンレス製 せい の瓦 かわら の例 れい などがある。導電性 どうでんせい 向上 こうじょう の観点 かんてん からは、ニッケルめっきや金 きむ めっきが施 ほどこ される。電気 でんき ニッケルめっきを施 ほどこ して導電性 どうでんせい と耐食性 たいしょくせい を両立 りょうりつ させたステンレス鋼 こう が、ボタン電池 でんち などで使 つか われている。
その他 た の表面 ひょうめん 処理 しょり [ 編集 へんしゅう ]
他 ほか にも、ブラスト処理 しょり 、エッチング 、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 処理 しょり 、物理 ぶつり 蒸着 じょうちゃく 法 ほう (PVD)など、ステンレス鋼 こう に適用 てきよう される様々 さまざま な表面 ひょうめん 仕上 しあ げが存在 そんざい する。
ブラスト処理 しょり は、適当 てきとう な材質 ざいしつ の小 ちい さな粒 つぶ を表面 ひょうめん に高速 こうそく でたたきつけてスケールの除去 じょきょ や素地 そじ の調整 ちょうせい を行 おこな う処理 しょり 。表面 ひょうめん 仕上 しあ げとしては、ビーズブラストなどで方向 ほうこう 性 せい を持 も たない低 てい 光沢 こうたく の表面 ひょうめん を得 え るのに使 つか われている[496] 。エッチングは、表面 ひょうめん を部分 ぶぶん 的 てき に溶 と かし、文字 もじ や絵 え をステンレス鋼 こう の表面 ひょうめん につくる処理 しょり である。不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か 処理 しょり は、不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か の程度 ていど を意識 いしき 的 てき に向上 こうじょう させたいときに行 おこな う処理 しょり で、硝酸 しょうさん などに浸漬 しんせき して行 おこな われる。PVDは、近年 きんねん 発達 はったつ してきたドライプロセスによる表面 ひょうめん 処理 しょり の一種 いっしゅ で、ステンレス鋼 こう の場合 ばあい は薄 うす いセラミック層 そう を蒸着 じょうちゃく させて色付 いろづ けや耐久 たいきゅう 性 せい 向上 こうじょう のために使 つか われている[516] 。
ステンレス鋼 こう は、その耐食性 たいしょくせい を活 い かして、日 にち 用品 ようひん 、業務 ぎょうむ 用 よう 機器 きき 、建設 けんせつ 、自動車 じどうしゃ 、鉄道 てつどう 、電気 でんき 機器 きき 、産業 さんぎょう 機械 きかい など、様々 さまざま な分野 ぶんや で幅広 はばひろ く使 つか われている。使用 しよう 分野 ぶんや に特 とく に偏 かたよ りはなく、用途 ようと は多種 たしゅ 多様 たよう といえる。2019年 ねん の統計 とうけい によると、金属 きんぞく 製品 せいひん 全般 ぜんぱん が 37.5 %、機械 きかい 類 るい が 29.1 %、建設 けんせつ 関連 かんれん が 12.2 %、自動車 じどうしゃ 関連 かんれん が 8.5 %、電気 でんき 機器 きき が 7.7 %、その他 た 輸送 ゆそう 機器 きき が 4.9 % という使用 しよう 割合 わりあい となっている。
耐食性 たいしょくせい に加 くわ えて、高温 こうおん 環境 かんきょう や低温 ていおん 環境 かんきょう への耐 たい 性 せい があり、鋼 はがね 種 しゅ によって物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ や機械 きかい 的 てき 性質 せいしつ が異 こと なるため、ステンレス鋼 こう は多様 たよう な形 かたち で利用 りよう される。ステンレス鋼 こう と競合 きょうごう する他 た 材料 ざいりょう には、塗装 とそう ・めっき ・ホーロー などの表面 ひょうめん 処理 しょり を施 ほどこ した鋼 はがね 、ポリプロピレン のような樹脂 じゅし 材料 ざいりょう 、アルミニウム やチタン などの他 た 金属 きんぞく 材料 ざいりょう などがあり、要求 ようきゅう 特性 とくせい とコストのバランスの中 なか で材料 ざいりょう が選択 せんたく される。
食卓 しょくたく ・厨房 ちゅうぼう ・食品 しょくひん 産業 さんぎょう [ 編集 へんしゅう ]
ステンレス鋼 こう 製 せい のスプーンと食卓 しょくたく ナイフ
フォーク、スプーン、ナイフなどのカトラリー 類 るい では、ステンレス鋼 こう が多量 たりょう に使 つか われており、ステンレス製 せい カトラリーのシェアは圧倒的 あっとうてき といってもいいほど大 おお きい。古 ふる くはステンレス鋼 こう が実用 じつよう 化 か されたときから、ステンレス鋼 こう の有用 ゆうよう な使 つか い道 みち としてステンレス製 せい カトラリーが使 つか われてきた。一般 いっぱん 的 てき なカトラリーにはオーステナイト系 けい が用 もち いられ、高級 こうきゅう な食卓 しょくたく 用 よう ナイフには高 こう 硬度 こうど なマルテンサイト系 けい も利用 りよう されている。また、ステンレス製 せい の箸 はし も韓国 かんこく では利用 りよう が浸透 しんとう している。
調理 ちょうり 器具 きぐ では、ステンレス製 せい の包丁 ほうちょう も主流 しゅりゅう である[554] 。刃物 はもの 類 るい には、高 こう 炭素 たんそ のマルテンサイト系 けい の焼入 やきい れ焼 や き戻 もど し材 ざい を使用 しよう して、ロックウェル硬 かた さ が 50 から 60 の高 こう 硬度 こうど で実用 じつよう に供 きょう される。刃先 はさき となる芯 しん 材 ざい にはマルテンサイト系 けい を使 つか い、それをフェライト系 けい で挟 はさ み込 こ んだ構造 こうぞう の刃 は の包丁 ほうちょう などもある。他 た には、トレイ、ボウル、お玉 たま などの調理 ちょうり 器具 きぐ もステンレス製 せい が多 おお い。
ステンレス鋼 こう 製 せい の台所 だいどころ 流 なが し台 だい
台所 だいどころ の流 なが し台 だい も、現在 げんざい ではステンレス製 せい が定番 ていばん となっている[557] 。ホーローや人工 じんこう 大理石 だいりせき などの他 ほか の材料 ざいりょう と比較 ひかく すると、ステンレス製 せい 流 なが し台 だい は耐久 たいきゅう 性 せい があり、メンテナンスしやすい[557] 。ステンレス製 せい 流 なが し台 だい 本体 ほんたい は、板材 いたざい からプレス成形 せいけい で造 つく られる。台所 だいどころ の天 てん 板 ばん でも、ステンレス鋼 こう が選択肢 せんたくし の一 ひと つで、エンボス仕上 しあ げや着色 ちゃくしょく 処理 しょり による外観 がいかん を良 よ くしたものも採用 さいよう されている。
ステンレス製 せい 外輪 がいりん 鍋 なべ 。底 そこ がIH調理 ちょうり 対応 たいおう となっている。
鍋 なべ やフライパン などでもステンレス製 せい が使 つか われている。ただし、ステンレス鋼 こう は熱 ねつ 伝導 でんどう があまりよくないので、ステンレス鋼 こう でアルミを挟 はさ み込 こ んだ三 さん 層 そう 構造 こうぞう クラッド鋼 こう などにして対策 たいさく される。IH調理 ちょうり 器 き 用 よう には、磁性 じせい のあるフェライト系 けい や普通 ふつう 鋼 こう と複 ふく 合 あわ させた、ステンレスクラッド鋼 こう が使 つか われる。業務 ぎょうむ 用 よう の厨房 ちゅうぼう は、流 なが し台 だい 、テーブル、ケース類 るい に至 いた るまで、清潔 せいけつ さを保 たも つために清浄 せいじょう しやすいステンレス鋼 こう が全面 ぜんめん 的 てき に使 つか われている。魔法瓶 まほうびん の水筒 すいとう もステンレス鋼 こう を使 つか った製品 せいひん で、ステンレス鋼管 こうかん のプレス成形 せいけい で造 つく られる。魔法瓶 まほうびん 水筒 すいとう の場合 ばあい は、ステンレス鋼 こう の熱 ねつ 伝導 でんどう の悪 わる さを逆 ぎゃく に有効 ゆうこう 活用 かつよう している事例 じれい といえる。
食品 しょくひん 産業 さんぎょう では、食品 しょくひん が接触 せっしょく する部分 ぶぶん の多 おお くがステンレス化 か されている。清潔 せいけつ を第 だい 一 いち とする食品 しょくひん 機器 きき では、昔 むかし からステンレス鋼 こう が多量 たりょう に使 つか われてきた。食品 しょくひん 産業 さんぎょう のステンレス鋼 こう の特徴 とくちょう は、食品 しょくひん が接触 せっしょく する部分 ぶぶん には研磨 けんま 仕上 しあ げを標準 ひょうじゅん としている点 てん である。これによって、もし食品 しょくひん 接触 せっしょく 面 めん にかき傷 きず や微小 びしょう な穴 あな があったときに、そこに食品 しょくひん が入 はい り込 こ み、清掃 せいそう 時 じ にも残 のこ ってしまうような事態 じたい が起 お こらないようにしている。鋼 はがね 種 しゅ は主 おも に304系 けい が使 つか われており、より耐食性 たいしょくせい を要 よう する箇所 かしょ には316系 けい が使 つか われている。
電気 でんき 機器 きき ・電子 でんし 機器 きき [ 編集 へんしゅう ]
ステンレス製 せい の冷蔵庫 れいぞうこ
電気 でんき 製品 せいひん では、製品 せいひん の主部 しゅぶ から小物 こもの 部品 ぶひん まで幅広 はばひろ くステンレス鋼 こう が使 つか われている。消費 しょうひ 者 しゃ の高級 こうきゅう 志向 しこう もあり、電気 でんき 製品 せいひん へのステンレス鋼 こう 適用 てきよう は増加 ぞうか 傾向 けいこう にある。白 しろ 物 ぶつ 家電 かでん では、冷蔵庫 れいぞうこ 、食 しょく 洗 あらい 機 き 、炊飯 すいはん 器 き 、電子 でんし レンジ などでステンレス鋼 こう が使 つか われており、耐 たい 指紋 しもん 性 せい と抗菌 こうきん 性 せい のためにクリア塗装 とそう を施 ほどこ すこともある。洗濯 せんたく 機 き では清潔 せいけつ 感 かん の良 よ さから洗濯 せんたく 槽 そう のステンレス化 か が進 すす んでおり、特 とく にドラム式 しき 洗濯 せんたく 機 き のドラムはステンレス製 せい が標準 ひょうじゅん 的 てき である。電気 でんき ポット の内部 ないぶ 容器 ようき や電気 でんき 給湯 きゅうとう 器 き のタンクでもステンレス鋼 こう を採用 さいよう しており、ステンレス製 せい の給湯 きゅうとう タンクでは孔 あな 食 しょく や応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れへの対策 たいさく として高 こう 耐 たい 食 しょく フェライト系 けい の444系 けい が使 つか われている[570] 。
電子 でんし 機器 きき 類 るい でもステンレス鋼 こう が使 つか わており、多 おお くは小物 こもの 部品 ぶひん で使 つか われている。電子 でんし 機器 きき の使用 しよう 環境 かんきょう はオフィスや家庭 かてい といった腐食 ふしょく の厳 きび しい環境 かんきょう ではないため、耐食性 たいしょくせい が問題 もんだい となることは比較的 ひかくてき 少 すく ない。携帯 けいたい 電話 でんわ 部品 ぶひん やハードディスクドライブ などでは、非 ひ 磁性 じせい の要求 ようきゅう からステンレス鋼 こう を使 つか う場合 ばあい もある。
ステンレス車両 しゃりょう の例 れい 。ハンブルク地下鉄 ちかてつ を走 はし るDT5。加工 かこう 硬化 こうか された AISI 301 LN(EN 1.4318)を使用 しよう [572] 。
現在 げんざい の鉄道 てつどう 車両 しゃりょう は、車体 しゃたい (構体 )がステンレス製 せい であるステンレス車両 しゃりょう 、車体 しゃたい がアルミニウム合金 ごうきん 製 せい であるアルミ車両 しゃりょう 、この2種類 しゅるい が主流 しゅりゅう である[573] 。ステンレス車両 しゃりょう では、以前 いぜん の普通 ふつう 鋼 こう 製 せい 車体 しゃたい の車両 しゃりょう と比 くら べると塗装 とそう を省略 しょうりゃく することができ、保守 ほしゅ の手間 てま が少 すく ない[573] 。さらに、塗装 とそう と腐食 ふしょく 代 だい が省略 しょうりゃく できるため軽量 けいりょう 化 か が可能 かのう となっている[573] 。鉄道 てつどう 車両 しゃりょう の車体 しゃたい 用 よう には、オーステナイト系 けい を低 てい 炭素 たんそ 化 か で耐食性 たいしょくせい を高 たか めた鋼 はがね 種 しゅ が使 つか われており、さらに加工 かこう 硬化 こうか による高 こう 強度 きょうど 化 か が施 ほどこ されて使 つか われている。ステンレス車両 しゃりょう のコストは普通 ふつう 鋼 こう 製 せい よりも高 たか いが、アルミ車両 しゃりょう よりは安 やす く、通勤 つうきん 車両 しゃりょう を中心 ちゅうしん にステンレス車両 しゃりょう が多用 たよう されている[575] 。ステンレス構体の組立 くみたて には抵抗 ていこう スポット溶接 ようせつ が用 もち いられており、近年 きんねん では、ひずみが小 ちい さく溶接 ようせつ 速度 そくど が速 はや いレーザー溶接 ようせつ も用 もち いられている[576] [577] 。
ステンレス製 せい のボディを持 も つデロリアン・DMC-12
自動車 じどうしゃ では、エンジンで発生 はっせい した燃焼 ねんしょう ガスが排気 はいき されるまでの排気 はいき 系 けい で、ステンレス鋼 こう がもっとも利用 りよう されている。エキゾーストマニホールド からマフラー に至 いた る排気 はいき 系 けい 部品 ぶひん のほとんどでステンレス鋼 こう を使用 しよう しており、鋼 はがね 種 しゅ は熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 係数 けいすう が低 ひく くコストが比較的 ひかくてき 安 やす いフェライト系 けい が主 おも に使 つか われている。排気 はいき 系 けい 部品 ぶひん でステンレス鋼 こう 利用 りよう が一般 いっぱん 化 か した背景 はいけい としては、排 はい ガス規制 きせい 強化 きょうか がある。この規制 きせい 強化 きょうか に守 まも るために、エンジン燃焼 ねんしょう 温度 おんど の上昇 じょうしょう が必要 ひつよう となり、排気 はいき 系 けい 部品 ぶひん へのステンレス鋼 こう 適用 てきよう が進 すす んだ。より高温 こうおん のエンジン近 ちか くの部品 ぶひん には、耐 たい 熱性 ねっせい を重視 じゅうし した鋼 はがね 種 しゅ が選択 せんたく され、比較的 ひかくてき 低温 ていおん のマフラー側 がわ の部品 ぶひん には、耐食性 たいしょくせい に優 すぐ れた鋼 はがね 種 しゅ が選択 せんたく される。排気 はいき 系 けい 以外 いがい でステンレス鋼 こう の使用 しよう が一般 いっぱん 化 か しているものとしては、外装 がいそう の装飾 そうしょく モールやエンジンで使用 しよう されているメタルガスケット などがある。反面 はんめん 、ボディにステンレス鋼 こう が用 もち いられた例 れい は極 きわ めて少 すく なく、2021年 ねん 現在 げんざい ではデロリアン・DMC-12 及 およ びテスラ・サイバートラック が採用 さいよう した程度 ていど に留 とど まっている[583] 。
自転車 じてんしゃ 用 よう のステンレス製 せい ディスクブレーキローター
二輪車 にりんしゃ 分野 ぶんや では、オートバイ やマウンテンバイク で使 つか われるディスクブレーキ のローター (ブレーキディスク)に、ステンレス鋼 こう が常用 じょうよう されている。自動車 じどうしゃ ではローター材料 ざいりょう は炭素 たんそ 鋼 こう や鋳鉄 ちゅうてつ が多 おお いのに対 たい して、二輪車 にりんしゃ では外見 がいけん の良 よ さも重要 じゅうよう なことからステンレス鋼 こう が主流 しゅりゅう となっている[585] 。ローターには強 つよ い摩擦 まさつ 力 りょく が働 はたら き、摩耗 まもう が問題 もんだい となるため、ローターの硬度 こうど がある程度 ていど 以上 いじょう 高 たか いことが望 のぞ ましい。一方 いっぽう で、ブレーキ時 じ の摩擦 まさつ 熱 ねつ が発生 はっせい するため耐 たい 熱性 ねっせい が求 もと められる。そのため、高 こう 硬度 こうど ・耐 たい 熱性 ねっせい ・耐食性 たいしょくせい のバランスがいいマルテンサイト系 けい が、ローターの材料 ざいりょう として広 ひろ く実用 じつよう されている。
耐食性 たいしょくせい が高 たか いステンレス鋼 こう だが、船舶 せんぱく 分野 ぶんや では使用 しよう はそれほど多 おお くない(下記 かき の#海洋 かいよう ・海水 かいすい 環境 かんきょう も参照 さんしょう )。船舶 せんぱく におけるステンレス鋼 こう の主 おも な使用 しよう 箇所 かしょ で挙 あ げられるのは、ケミカルタンカー やLNGタンカー におけるタンク用材 ようざい 料 りょう で、ステンレス鋼 こう の耐食性 たいしょくせい や低温 ていおん 特性 とくせい を活 い かして使用 しよう される。ケミカルタンカーでは、国際 こくさい 海事 かいじ 機関 きかん が定 さだ めた国際 こくさい 規則 きそく で一部 いちぶ の化学 かがく 薬品 やくひん 用 よう のタンクにはステンレス鋼 こう の使用 しよう を義務 ぎむ づけている。天然 てんねん ガス を −162 °C に冷却 れいきゃく した液化 えきか 天然 てんねん ガス(LNG)を運 はこ ぶLNGタンクには、ニッケル合金 ごうきん の他 ほか に、304 や 304L などのオーステナイト系 けい ステンレス鋼 こう が用 もち いられる[593] 。高 こう 強度 きょうど と腐食 ふしょく 疲労 ひろう 耐 たい 性 せい を求 もと めて、スクリュープロペラ にステンレス鋳鋼 ちゅうこう が採用 さいよう される場合 ばあい もある。
航空機 こうくうき 分野 ぶんや では、機体 きたい 材料 ざいりょう の全体 ぜんたい 的 てき な傾向 けいこう として、鉄鋼 てっこう 材料 ざいりょう 自体 じたい がチタン合金 ごうきん 、アルミニウム合金 ごうきん 、複 ふく 合 あい 材料 ざいりょう などに取 と って代 か わられつつある。航空機 こうくうき でステンレス鋼 こう が特 とく に使 つか われている箇所 かしょ は、強固 きょうこ な特性 とくせい が求 もと められる機械 きかい 部品 ぶひん 類 るい が多 おお い。脚 あし 部 ぶ や油圧 ゆあつ 機器 きき 、ラッチ、ロッド、ヒンジ類 るい などで、ステンレス鋼 こう が用 もち いられている。
ロケット ・宇宙船 うちゅうせん 用途 ようと では、スペースX のスターシップ・スーパーヘビーロケット で300台 だい (オーステナイト系 けい )のステンレス鋼 こう が用 もち いられている[598] 。高温 こうおん 時 じ でも低温 ていおん 時 じ でも高 たか い強度 きょうど が保 たも てることが理由 りゆう とされてる[598] 。
クライスラー・ビルディング の段 だん 型 がた 尖塔 せんとう の外装 がいそう はステンレス鋼 こう を使用 しよう している。
建築 けんちく 物 ぶつ では、その見 み た目 め の良 よ さを理由 りゆう に外装 がいそう 用 よう ・内装 ないそう 用 よう ともにステンレス鋼 こう が使 つか われている。外装 がいそう 用 よう としては、特 とく に屋根 やね 用 よう やファサード 用 よう にステンレス鋼 こう が古 ふる くから使 つか われてきた。ニューヨーク のクライスラー・ビルディング は、外装 がいそう にステンレス鋼 こう を採用 さいよう した最初 さいしょ の著名 ちょめい な建築 けんちく 物 ぶつ として知 し られる。クライスラー・ビルディングの尖塔 せんとう 外装 がいそう にオーステナイト系 けい が使 つか われており、1930年代 ねんだい に建 た てられて海岸 かいがん 地帯 ちたい に存在 そんざい するにもかかわらず、今日 きょう も輝 かがや きを保 たも っている。一方 いっぽう 、建築 けんちく 物 ぶつ の荷重 かじゅう を支 ささ える構造 こうぞう 材料 ざいりょう では普通 ふつう 鋼 こう が主流 しゅりゅう である。近年 きんねん では鉄筋 てっきん コンクリート に使 つか われるステンレス製 せい の異形 いぎょう 鉄筋 てっきん が実用 じつよう 化 か されており、構造 こうぞう 材 ざい 用途 ようと 向 む けのステンレス鋼 こう 適用 てきよう 拡大 かくだい が検討 けんとう されている。
建物 たてもの 内部 ないぶ では、ドアノブ 、蝶番 ちょうつがい 、換気 かんき 口 こう 、窓 まど 枠 わく 、クレセント、カーテンレール 、手 て すり など、様々 さまざま な建築 けんちく 金物 かなもの にステンレス鋼 こう が使 つか われている。普通 ふつう 鋼 こう や表面 ひょうめん 処理 しょり 鋼 こう が昔 むかし は使 つか われていたが、腐食 ふしょく 対策 たいさく や高級 こうきゅう 志向 しこう から、ドアノブのような目立 めだ つ箇所 かしょ にはステンレス鋼 こう が使 つか われるようになった。ビルの内装 ないそう 材 ざい としてはヘアライン仕上 しあ げのステンレス鋼 こう が主 おも に用 もち いられるが、入 い り口 くち やエレベーター周辺 しゅうへん では鏡面 きょうめん 仕上 しあ げのステンレス鋼 こう もアクセントとして用 もち いられることもある。
ステンレス製 せい の高欄 こうらん
土木 どぼく 分野 ぶんや では、水門 すいもん の扉 とびら 体 たい ・戸 こ 当 あた り、橋梁 きょうりょう の高欄 こうらん (手 て すり)で、美観 びかん 維持 いじ とメンテナンスフリーのためにステンレス鋼 こう が使 つか われている。公共 こうきょう 施設 しせつ や公園 こうえん にある案内 あんない 板 ばん といったものも、保全 ほぜん コストの削減 さくげん のためにステンレス鋼 こう 化 か が進 すす んでいる。
ドーム球場 きゅうじょう やコンベンション・センター のような大型 おおがた 建造 けんぞう 物 ぶつ の屋根 やね も、メンテナンスフリーや美観 びかん の向上 こうじょう のために、ステンレス鋼 こう 使用 しよう が浸透 しんとう している。屋根 やね は日射 にっしゃ や気温 きおん による温度 おんど 変化 へんか が起 お こるため、大型 おおがた の屋根 やね では熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 率 りつ の低 ひく いフェライト系 けい の使用 しよう が望 のぞ ましい[610] 。海浜 かいひん 地区 ちく などの腐食 ふしょく が厳 きび しい場所 ばしょ に建 た てられる場合 ばあい は、高 こう 耐 たい 食 しょく ステンレス鋼 こう や塗装 とそう ステンレス鋼 こう が適用 てきよう される。
硝酸 しょうさん 工業 こうぎょう では、共 きょう 沸 にえ 濃度 のうど の以下 いか の硝酸 しょうさん であれば304系 けい のステンレス鋼 こう で十分 じゅうぶん に耐用 たいよう でき、304L が硝酸 しょうさん を扱 あつか う器具 きぐ ・装置 そうち の材料 ざいりょう として広 ひろ く利用 りよう されている。歴史 れきし 的 てき にも、ステンレス鋼 こう 実用 じつよう 化 か 後 ご の最初 さいしょ の大量 たいりょう 使用 しよう の一 ひと つが硝酸 しょうさん を取 と り扱 あつか う用途 ようと であった。
硫酸 りゅうさん は幅広 はばひろ く用 もち いられている基礎 きそ 化学 かがく 原料 げんりょう の一 ひと つだが、限 かぎ られた硫酸 りゅうさん 濃度 のうど 範囲 はんい でしかステンレス鋼 こう は不 ふ 働 はたらけ 態 たい 化 か しないため、硫酸 りゅうさん を扱 あつか うのにステンレス鋼 こう の使用 しよう 範囲 はんい は限 かぎ られている。窒素肥料 ちっそひりょう となる硫安 りゅうあん の製造 せいぞう では、硫安 りゅうあん が腐食 ふしょく 作用 さよう を緩和 かんわ するため結晶 けっしょう 缶 かん に 316 などを用 もち いている。
石油 せきゆ 精製 せいせい では、高温 こうおん 耐食性 たいしょくせい や高温 こうおん 強度 きょうど といったニーズからステンレス鋼 こう の適用 てきよう が多 おお い。300 °C から500 °C の高温 こうおん 下 か 、3 MPa から 20 MPa の高 こう 圧 あつ 下 か で硫黄 いおう 分 ぶん を除去 じょきょ する水素 すいそ 化 か 脱硫 だつりゅう 装置 そうち では、耐 たい 粒 つぶ 界 かい 腐食 ふしょく 性 せい を高 たか めた安定 あんてい 化 か オーステナイト系 けい の 321 や 347 が使 つか われている[617] 。常 つね 圧 あつ 蒸留 じょうりゅう 装置 そうち では、原油 げんゆ を 300 °C 前後 ぜんご まで加熱 かねつ して原油 げんゆ を分留 ぶんりゅう しており、装置 そうち は厳 きび しい高温 こうおん 腐食 ふしょく 環境 かんきょう に晒 さら される。日本 にっぽん では、劣化 れっか の防止 ぼうし まではできていないものの、応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れの懸念 けねん が少 すく ないフェライト系 けい SUS405 クラッド鋼 こう が常 つね 圧 あつ 蒸留 じょうりゅう 装置 そうち の材料 ざいりょう に用 もち いられている[618] 。
製紙 せいし 業 ぎょう も腐食 ふしょく が常 つね に問題 もんだい となってきた分野 ぶんや で、ステンレス鋼 こう 実用 じつよう 化 か 後 ご の初期 しょき からステンレス鋼 こう が活用 かつよう されてきた。よく使 つか われている鋼 はがね 種 しゅ はオーステナイト系 けい で、パルプ 製造 せいぞう の連続 れんぞく 蒸 ふけ 解 かい 釜 がま では内側 うちがわ を 304L にしたクラッド鋼 こう が使 つか われ、二酸化 にさんか 塩素 えんそ を使 つか うパルプ漂白 ひょうはく のより腐食 ふしょく が厳 きび しい工程 こうてい ではスーパーステンレス鋼 こう が必要 ひつよう になる[620] 。パルプから紙 かみ をつくる抄 しょう 紙 し 工程 こうてい では、圧搾 あっさく 脱水 だっすい を行 おこな うサクションロールに耐食性 たいしょくせい や疲労 ひろう 強度 きょうど を考慮 こうりょ してオーステナイト・フェライト系 けい が主 おも に使 つか われている[620] 。
海洋 かいよう ・海水 かいすい 環境 かんきょう [ 編集 へんしゅう ]
塩化 えんか 物 ぶつ イオン を多量 たりょう に含 ふく む海水 かいすい 環境 かんきょう は、ステンレス鋼 こう にとって好 この ましくない環境 かんきょう といえる。海水 かいすい 環境 かんきょう で問題 もんだい となるのは全面 ぜんめん 腐食 ふしょく よりも局部 きょくぶ 腐食 ふしょく で、鋼 はがね 種 しゅ によって程度 ていど の大小 だいしょう はあるが、海水 かいすい 環境 かんきょう ではほとんどのステンレス鋼 こう にすきま腐食 ふしょく や孔 あな 食 しょく の可能 かのう 性 せい がある。海洋 かいよう 中 ちゅう の付着 ふちゃく 生物 せいぶつ の存在 そんざい もすきま腐食 ふしょく の原因 げんいん となる。316系 けい はステンレス鋼 こう の中 なか で耐食性 たいしょくせい の高 たか い方 ほう であるが、316系 けい であっても海水 かいすい 環境 かんきょう への耐食性 たいしょくせい を持 も つと言 い えず、利用 りよう 範囲 はんい は限定 げんてい される[624] 。
羽田空港 はねだくうこう のD滑走 かっそう 路 ろ 桟橋 さんばし 支持 しじ 部 ぶ 。滑走 かっそう 路 ろ を支 ささ える円柱 えんちゅう 杭 くい は、飛沫 しぶき 部 ぶ から干満 かんまん 部 ぶ にかけて高 こう 耐食性 たいしょくせい ステンレス鋼 こう で覆 おお われ、防食 ぼうしょく 対策 たいさく されている[625] 。
港湾 こうわん や海洋 かいよう 構造 こうぞう 物 ぶつ では、経済 けいざい 的 てき 理由 りゆう もあり、海水 かいすい に晒 さら される箇所 かしょ の構造 こうぞう 材料 ざいりょう は塗装 とそう と電気 でんき 防食 ぼうしょく で対策 たいさく した炭素 たんそ 鋼 こう や低 てい 合金 ごうきん 鋼 こう を主体 しゅたい としている。ただし、海水 かいすい 中 ちゅう から大気 たいき 中 ちゅう にかけての海水 かいすい 飛沫 しぶき を受 う ける箇所 かしょ や潮 しお の干満 かんまん によって海水 かいすい に浸 ひた されたり外気 がいき に晒 さら されたりする箇所 かしょ では電気 でんき 防食 ぼうしょく ができず、また、塗装 とそう には経年 けいねん 劣化 れっか や損傷 そんしょう の問題 もんだい がある[625] 。そのため、日本 にっぽん では、鋼管 こうかん 構造 こうぞう を採用 さいよう した海洋 かいよう 構造 こうぞう 物 ぶつ に対 たい して、SUS312L のようなスーパーステンレス鋼 こう の薄板 うすいた で海水 かいすい 飛沫 しぶき 部 ぶ と干満 かんまん 部 ぶ を覆 おお って防食 ぼうしょく する手法 しゅほう が開発 かいはつ され、1997年 ねん 頃 ごろ から実用 じつよう 化 か されている[625] 。
海水 かいすい 淡水 たんすい 化 か 設備 せつび では、コストを下 さ げる観点 かんてん からも、ステンレス鋼 こう が活用 かつよう されている。海水 かいすい 淡水 たんすい 化 か 装置 そうち には主 おも に蒸発 じょうはつ 式 しき と逆 ぎゃく 浸透 しんとう 式 しき があるが、いずれの方式 ほうしき でも各 かく 構成 こうせい 機器 きき にステンレス鋼 こう が利用 りよう されている[627] 。主 おも に使 つか われているのはオーステナイト系 けい の316系 けい や317系 けい で、蒸発 じょうはつ 器 き には高 こう 強度 きょうど かつ応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れへの耐 たい 性 せい が高 たか いオーステナイト・フェライト系 けい の S2205 も使 つか われている[627] 。
現代 げんだい の火力 かりょく 発電 はつでん 所 しょ は超 ちょう 臨界 りんかい 圧 あつ または超 ちょう 々臨界 りんかい 圧 あつ の蒸気 じょうき 条件 じょうけん で運転 うんてん されており、このような高 こう 圧 あつ 化 か ・高温 こうおん 化 か にともなってボイラー の材料 ざいりょう としてステンレス鋼 こう 利用 りよう が増 ふ えている。ボイラーの過熱 かねつ 器 き 、再 さい 熱 ねつ 器 き 、熱 ねつ 交換 こうかん 器 き 配管 はいかん などにステンレス鋼 こう が使 つか われており、一般 いっぱん 的 てき には、金属 きんぞく 温度 おんど が 600 °C を超 こ えると、高温 こうおん 強度 きょうど や耐 たい 酸化 さんか 性 せい のためにステンレス鋼 こう が経済 けいざい 的 てき にも有利 ゆうり といわれる。
蒸気 じょうき のエネルギーを回転 かいてん 運動 うんどう エネルギーに変換 へんかん する蒸気 じょうき タービン では、強度 きょうど と耐食性 たいしょくせい が必要 ひつよう な動 どう 翼 つばさ と静 しず 翼 つばさ にマルテンサイト系 けい や析出 せきしゅつ 硬化 こうか 系 けい が使 つか われている。ローターやケーシングでは、より高温 こうおん の厳 きび しい運転 うんてん 条件 じょうけん になると、ステンレス鋼 こう が必要 ひつよう とされる。ガスタービン では、金属 きんぞく の融点 ゆうてん レベルの高温 こうおん の燃焼 ねんしょう ガスを扱 あつか うため、タービン本体 ほんたい や燃焼 ねんしょう 器 き には超 ちょう 耐 たい 熱 ねつ 合金 ごうきん が主 おも に使 つか われるが、圧縮 あっしゅく 機 き やタービンディスクなどでステンレス鋼 こう が使 つか われることもある。
原子力 げんしりょく 発電 はつでん 所 しょ における軽水炉 けいすいろ では、多 おお くのステンレス鋼管 こうかん やステンレス鋼 こう 厚 あつ 板 ばん が用 もち いられている。炉心 ろしん で発生 はっせい した蒸気 じょうき をそのままタービンに送 おく る沸騰水 ふっとうすい 型 がた 軽水炉 けいすいろ では原子 げんし 炉 ろ 圧力 あつりょく 容器 ようき や配管 はいかん 系 けい でステンレス鋼 こう が使 つか われており、応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れ への対策 たいさく のために非 ひ 鋭敏 えいびん 化 か 鋼 こう 種 しゅ へと置 お き換 か えられてきた歴史 れきし がある[635] 。加圧水 かあつすい 型 がた 軽水炉 けいすいろ の1次 じ 冷却 れいきゃく 系 けい でもステンレス鋼 こう を利用 りよう しているが、沸騰水 ふっとうすい 型 がた とは条件 じょうけん が異 こと なることもあって応力 おうりょく 腐食 ふしょく 割 わ れが問題 もんだい となったケースは少 すく ない。使用 しよう 済 ず み核 かく 燃料 ねんりょう の再 さい 処理 しょり 施設 しせつ では、再 さい 処理 しょり に多量 たりょう の硝酸 しょうさん を用 もち いるため、ステンレス鋼 こう が多量 たりょう に使 つか われる。
ステンレス鋼 こう 製 せい の外科 げか 手術 しゅじゅつ 器具 きぐ
医療 いりょう 分野 ぶんや でも、手術 しゅじゅつ 器具 きぐ から検査 けんさ 機器 きき に至 いた るまで、ステンレス鋼 こう は多 おお く使 つか われている。薬品 やくひん 、消毒 しょうどく 液 えき 、血液 けつえき 、体液 たいえき などに対 たい して耐食性 たいしょくせい が必要 ひつよう なため、ステンレス鋼 こう が適 てき しており、衛生 えいせい 面 めん からも好 この まれる。種々 しゅじゅ の検査 けんさ 機器 きき に対 たい しては、非 ひ 磁性 じせい であることも利点 りてん となる。メス や鉗子 などの手術 しゅじゅつ 器具 きぐ にはマルテンサイト系 けい ステンレス鋼 こう が使 つか われている。
人工 じんこう 関節 かんせつ 用 よう など、人体 じんたい 内 ない で使用 しよう するインプラント 用材 ようざい 料 りょう としても使 つか われる。体液 たいえき は海水 かいすい と同等 どうとう の組成 そせい であるため、これらの用途 ようと には高 こう 耐食性 たいしょくせい の鋼 はがね 種 しゅ が利用 りよう されている。血管 けっかん 、胆 きも 管 かん 、食道 しょくどう などを広 ひろ げるステント では、コバルト合金 ごうきん などの他 た 使用 しよう 材料 ざいりょう も存在 そんざい するが、加工 かこう 性 せい や溶接 ようせつ 性 せい が良好 りょうこう であることや廉価 れんか であることからステンレス鋼 こう の高 こう 耐食性 たいしょくせい 鋼 こう 種 しゅ も使 つか われている[643] 。ただし、ステンレス鋼 こう 中 ちゅう に含 ふく まれるクロムとニッケルには金属 きんぞく アレルギー の問題 もんだい もあり、優 すぐ れた生体 せいたい 適合 てきごう 性 せい を持 も ち、さらに軽量 けいりょう であるチタン などの他 ほか の生体 せいたい 材料 ざいりょう への置 お き換 か えも進 すす んでいる[644] 。特 とく に近年 きんねん では毒性 どくせい や金属 きんぞく アレルギーが懸念 けねん されるニッケル を生体 せいたい 材料 ざいりょう から排除 はいじょ する動 うご きが強 つよ まっており、ステンレス鋼 こう でもニッケルを含 ふく まない、窒素 ちっそ などの他 ほか のオーステナイト生成 せいせい 元素 げんそ を代 か わりに用 もち いた生体 せいたい 材料 ざいりょう 用 よう オーステナイト系 けい ステンレス鋼 こう の開発 かいはつ ・実用 じつよう 化 か が進 すす められている[646] 。
ステンレス製 せい の野外 やがい 彫刻 ちょうこく の例 れい 。スコットランドの「ザ・ケルピーズ (英語 えいご 版 ばん ) 」。厚 あつ さ 6 mm の 316L 圧 あつ 延板 のべいた No.8 研磨 けんま 材 ざい を約 やく 150 トン使用 しよう 。
実 じつ 用品 ようひん 以外 いがい の分野 ぶんや では、モニュメント やオブジェ といった美術 びじゅつ 作品 さくひん の素材 そざい として利用 りよう されている[649] 。ステンレス鋼 こう を彫刻 ちょうこく 素材 そざい に使用 しよう する利点 りてん には、他 た の金属 きんぞく 同様 どうよう に可塑 かそ 性 せい があり加工 かこう しやすく且 か つ丈夫 じょうぶ であること、耐食性 たいしょくせい が高 たか くメンテナンス性 せい に優 すぐ れていること、光輝 こうき を持 も ち現代 げんだい 的 てき な材質 ざいしつ 感 かん が得 え られることが挙 あ げられる[651] 。
ステンレス材 ざい に各種 かくしゅ の研磨 けんま 仕上 しあ げや表面 ひょうめん 処理 しょり を施 ほどこ すことで、多様 たよう な肌合 はだあ いを表現 ひょうげん することもできる。細 こま かい孔 あな を開 あ けて透明 とうめい を表現 ひょうげん する、インコ法 ほう でグラデーションを作 つく って虹 にじ を表現 ひょうげん する、モアレを利用 りよう して三 さん 次元 じげん 的 てき な奥行 おくゆ きを表現 ひょうげん する、といったステンレス鋼 こう による表現 ひょうげん の幅 はば を広 ひろ げる試 こころ みもなされている[653] 。石材 せきざい 、木材 もくざい 、鉄 てつ 、プラスチックなど他 た の素材 そざい と組 く み合 あ わせる例 れい もある。鋼 はがね 種 しゅ としては、オーステナイト系 けい の 304 がよく使 つか われるが、沿岸 えんがん 部 ぶ のような場所 ばしょ では高 こう 耐 たい 食 しょく な 316 も使 つか われる[654] 。
ステンレス鋼 こう はリサイクル 可能 かのう な材料 ざいりょう であり、再 さい 融解 ゆうかい してステンレス鋼 こう 製品 せいひん の原料 げんりょう にできる。ステンレス鋼 こう に含 ふく まれるクロム 、ニッケル 、モリブデン などの合金 ごうきん 元素 げんそ は枯渇 こかつ 性 せい 資源 しげん であり、ステンレス鋼 こう リサイクルの重要 じゅうよう 性 せい は大 おお きい。現状 げんじょう では、使 つか い終 お わったステンレス鋼 こう 製品 せいひん のおよそ 80 % がスクラップ として回収 かいしゅう され、リサイクルされていると推定 すいてい される[355] [657] 。国 くに からの補助 ほじょ など無 む しで、経済 けいざい 的 てき にリサイクルが成立 せいりつ できている[657] 。
特 とく に、オーステナイト系 けい (クロム・ニッケル系 けい ステンレス鋼 こう )は非 ひ 磁性 じせい であるため、他 た の鉄 てつ スクラップと分別 ふんべつ しやすい長所 ちょうしょ がある。一方 いっぽう で、フェライト系 けい やマルテンサイト系 けい (クロム系 けい ステンレス鋼 こう )は磁性 じせい があり、分別 ふんべつ しづらいという短所 たんしょ がある。また、クロム系 けい の場合 ばあい 、ステンレス鋼 こう スクラップとフェロクロム の価格 かかく 差 さ が小 ちい さいため、回収 かいしゅう 費用 ひよう に対 たい して割 わり に合 あ わないといった課題 かだい もある[658] 。
これらの理由 りゆう から、クロム系 けい の大半 たいはん は分別 ふんべつ されずに、普通 ふつう 鋼 こう スクラップとして回収 かいしゅう されたり、クロム・ニッケル系 けい とまとめて回収 かいしゅう されたりしている[658] 。2003年 ねん から2005年 ねん までの日本 にっぽん のステンレス鋼 こう 市場 いちば を対象 たいしょう に行 おこな われたマテリアルフロー解析 かいせき の結果 けっか によると、クロム・ニッケル系 けい ステンレス鋼 こう として回収 かいしゅう できたスクラップ回収 かいしゅう 率 りつ は 75 % から 98 % であったが、クロム系 けい ステンレス鋼 こう として回収 かいしゅう できたスクラップ回収 かいしゅう 率 りつ は 12 % から 34 % に留 とど まっていた[660] 。
クロム系 けい の中 なか でもフェライト系 けい の利用 りよう 量 りょう は、オーステナイト系 けい に次 つ いでおり、利用 りよう のさらなる拡大 かくだい が予測 よそく されている。そのため、フェライト系 けい の分別 ふんべつ 回収 かいしゅう を確立 かくりつ し、含有 がんゆう されているクロムをさらに有効 ゆうこう 活用 かつよう することが期待 きたい されている。クロム系 けい スクラップの回収 かいしゅう 率 りつ 向上 こうじょう が、ステンレス鋼 こう リサイクルにおける今後 こんご の課題 かだい の一 ひと つとなっている。
生産 せいさん 量 りょう 統計 とうけい [ 編集 へんしゅう ]
1950年 ねん 頃 ごろ のステンレス鋼 こう の粗鋼 そこう 生産 せいさん 量 りょう は、世界 せかい でおよそ 1,000,000 トンであった。それから年 とし 平均 へいきん 成長 せいちょう 率 りつ 5.8 % で生産 せいさん 量 りょう は伸 の び続 つづ け、2019年 ねん の世界 せかい のステンレス鋼 こう 粗鋼 そこう 生産 せいさん 量 りょう は 52,218,000 トンとなっている。鉄鋼 てっこう 材料 ざいりょう 全般 ぜんぱん における2019年 ねん の世界 せかい の粗鋼 そこう 生産 せいさん 量 りょう は、1,869,000,000 トンで[665] 、ステンレス鋼 こう 生産 せいさん の割合 わりあい は 2.8 % である。
国 くに 別 べつ ・地域 ちいき 別 べつ のステンレス鋼 こう 生産 せいさん 量 りょう については、2019年 ねん の実績 じっせき では、1位 い が中国 ちゅうごく で生産 せいさん 量 りょう の 56.3% を占 し めている。次 つ いで、2位 い がインド 、3位 い が日本 にっぽん という順 じゅん になっている。以下 いか に、2001年 ねん から2019年 ねん まで世界 せかい のステンレス鋼 こう 生産 せいさん 量 りょう のグラフと、2018年 ねん 時 じ の国 くに ・地域 ちいき 別 べつ の生産 せいさん 量 りょう 順位 じゅんい のグラフを示 しめ す。
現在 げんざい 、技術 ぎじゅつ 上 じょう の問題 もんだい で一時 いちじ 的 てき にグラフが表示 ひょうじ されなくなっています。
2001
年 ねん –2019
年間 ねんかん のステンレス
鋼 こう 全 ぜん 世界 せかい 生産 せいさん 量 りょう 変移 へんい [668]
2018年 ねん の国 くに ・地域 ちいき 別 べつ ステンレス鋼 こう 年間 ねんかん 生産 せいさん 量 りょう
国 くに ・地域 ちいき
生産 せいさん 量 りょう (1,000トン )
中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく
インド
日本 にっぽん
アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく
韓国 かんこく
フィンランド/スウェーデン/イギリス
ベルギー/オーストリア
イタリア
台湾 たいわん
スペイン
南 みなみ アフリカ
ドイツ
ブラジル
フランス
その他 た ヨーロッパ
ロシア
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参照 さんしょう 文献 ぶんけん [ 編集 へんしゅう ]
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