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アポロ13ごう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
アポロ13ごう
徽章きしょう
ミッションの情報じょうほう[1]
ミッションめい アポロ13ごう
司令しれいせん CM-109
コールサイン Odyssey
質量しつりょう 28,945 kg
機械きかいせん SM-109
つき着陸ちゃくりくせん LM-7
コールサイン Aquarius
質量しつりょう 15,235 kg
乗員じょういんすう 3にん
打上うちあ サターンV SA-508
発射はっしゃだい アメリカ合衆国の旗フロリダしゅうケネディ宇宙うちゅうセンター
LC 39A
打上うちあ日時にちじ 1970ねん4がつ11にち
19:13:00 UTC
月面げつめん着陸ちゃくりく 酸素さんそタンク爆発ばくはつ事故じこにより中止ちゅうし
つき周回しゅうかいすう 1しゅう[2]
着陸ちゃくりくまたは着水ちゃくすい日時にちじ 1970ねん4がつ17にち
18:07:41 UTC
南緯なんい2138ふん24びょう 西経せいけい16521ふん42びょう / 南緯なんい21.64000 西経せいけい165.36167 / -21.64000; -165.36167 (Apollo 13 splashdown)
ミッション期間きかん 5にち22あいだ54ふん41びょう
乗員じょういん写真しゃしん
ひだりからラヴェル、スワイガート、ヘイズ
年表ねんぴょう
前回ぜんかい 次回じかい
アポロ12ごう アポロ14ごう

アポロ13ごうは、1970ねん4がつおこなわれた、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくアポロ計画けいかくの7度目どめ有人ゆうじんがつ飛行ひこうである。途中とちゅうでの事故じこによりミッション中止ちゅうし余儀よぎなくされながらも、その見舞みまわれたすうおおくの深刻しんこく危機ききてき状況じょうきょうだっし、乗組のりくみいん全員ぜんいん無事ぶじ地球ちきゅう帰還きかんした。

概要がいよう

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1970ねん4がつ11にちべい中部ちゅうぶ時間じかん1313ふんジェームズ・A・ラヴェル船長せんちょうジョン・L・スワイガート司令しれいせん操縦そうじゅうフレッド・W・ヘイズつき着陸ちゃくりくせん操縦そうじゅうせたサターンV がたロケットは、3度目どめ有人ゆうじん月面げつめん飛行ひこう目指めざして、ケネディ宇宙うちゅうセンターだい39発射はっしゃ施設しせつから発射はっしゃされた。

2にち電線でんせん短絡たんらく火花ひばなったことにより機械きかいせん酸素さんそタンク爆発ばくはつし、飛行ひこうたちは深刻しんこく電力でんりょくみず不足ふそく見舞みまわれることになった。司令しれいせんには独自どくじバッテリー酸素さんそ搭載とうさいされているが、それらは大気圏たいきけんさい突入とつにゅうさい必要ひつようになるもので、使用しようすることはできない。司令しれいせん電力でんりょく消費しょうひ限界げんかいまでおさえるために、つき着陸ちゃくりくせん救命きゅうめいボートわりにして、生成せいせいりょう激減げきげんした飲料いんりょうすい消費しょうひ極力きょくりょくひかえる負荷ふかえ、無事ぶじ地球ちきゅう生還せいかんした。

この危機きき対応たいおうあざやかさにより、このいちけんは「成功せいこうした失敗しっぱい ("successful failure")」[3]、「栄光えいこうある失敗しっぱい」などととなえられた。

搭乗とうじょういん

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※ ( )ないは、この飛行ひこうふくめた宇宙うちゅう飛行ひこう回数かいすう

しゅ搭乗とうじょういん

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  • ジェームズ・A・ラヴェルJr. (James A. Lovell, Jr.):船長せんちょう (4)
  • ジョン・L・スワイガートJr. (John L. Swigert, Jr.) : 司令しれいせん操縦そうじゅう (1)
  • フレッド・W・ヘイズJr. (Fred W. Haise, Jr.):つき着陸ちゃくりくせん操縦そうじゅう (1)

当初とうしょ司令しれいせん操縦そうじゅうにはケン・マッティングリー予定よていされていたが、予備よび着陸ちゃくりくせん操縦そうじゅうのチャールズ・デューク (Charles Duke) が血液けつえき検査けんさ結果けっか風疹ふうしん感染かんせんしている可能かのうせいがあり、風疹ふうしん免疫めんえきがないマッティングリーに伝染でんせんする可能かのうせいたかかったため、スワイガートと交替こうたいになった。このため、着陸ちゃくりくせんけられていた銘板めいばんはマッティングリーのきざまれており、あと交換こうかんするためにスワイガートのきざまれたもの司令しれいせんまれていた。つき着陸ちゃくりくたせず、交換こうかんできなかった銘板めいばん地球ちきゅうかえられた。

なお、マッティングリーとデュークはのちアポロ16ごうにともに搭乗とうじょうしている。しかし、2020ねん現在げんざいいまだにケン・マッティングリーは風疹ふうしん発症はっしょうしていない。

予備よび搭乗とうじょういん

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  • ジョン・W・ヤング (John W. Young):船長せんちょう
  • ジョン・L・スワイガートJr. (John L. Swigert, Jr.):司令しれいせん操縦そうじゅう、マッティングリーと交替こうたい実際じっさい飛行ひこう
  • チャールズ・M・デュークJr. (Charles M. Duke Jr.):つき着陸ちゃくりくせん操縦そうじゅう

地上ちじょう支援しえん飛行ひこう

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  • ヴァンス・D・ブランド (Vance D. Brand)
  • ジャック・R・ルースマ (Jack R. Lousma)
  • ジョセフ・P・カーウィン (Joseph P. Kerwin)

飛行ひこう主任しゅにん

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  • ジーン・クランツ (Gene Kranz):しろはん
  • ミルト・ウィンドラー (Milt Windler):ちゃはん
  • グリン・ラニー (Glynn Lunney):くろはん
  • ゲリー・グリフィン (Gerry Griffin):きむはん

数値すうち

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事故じこ発生はっせい地点ちてん

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月面げつめんへのさい接近せっきん

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計画けいかく焦点しょうてん

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アポロ13ごう着陸ちゃくりく地点ちてんは、直径ちょっけい80kmのフラ・マウロクレーターフラ・マウロ高地こうち予定よていされていた。ここは過去かこ巨大きょだい隕石いんせき衝突しょうとつしたとき、地下ちか溶岩ようがん噴出ふんしゅつしたことによって形成けいせいされたとかんがえられるしょうおかで、地質ちしつがくてきてきわめて興味深きょうみぶかいサンプルを採集さいしゅうできると期待きたいされたため、候補こうほとしてえらばれた。フラ・マウロへの着陸ちゃくりくは、つぎアポロ14ごう実現じつげんされた。

当初とうしょ発射はっしゃは1970ねん3がつ予定よていされていたが、(公式こうしきには)12ごうかえったつきいし分析ぶんせき時間じかんける必要ひつようがあるとして、同年どうねん4がつ延期えんきされている[4]

13ごうは、じつはすでに発射はっしゃ直後ちょくごから不具合ふぐあい発生はっせいさせていた。まずだい2だんロケットS-II中央ちゅうおうエンジンが、予定よていより2ふんはや燃焼ねんしょう停止ていししてしまった。しかしながらこのとき周囲しゅういの4のエンジンが自動的じどうてき燃焼ねんしょう時間じかん延長えんちょうし、軌道きどう修正しゅうせいしたため大事だいじにはいたらなかった。分析ぶんせきによると故障こしょう原因げんいん共振きょうしんによるもので、エンジンの振動しんどうは68G、16Hzという危険きけん水準すいじゅんにまでたっしていた。エンジンをささえるフレームは76mmもゆがみ、だい2だん空中くうちゅう分解ぶんかいさせかねないほどの振動しんどうゆがみであったが、この振動しんどうによってセンサーが圧力あつりょく過度かどひく表示ひょうじしたため、コンピューター自動的じどうてきにエンジンを停止ていしした。

これよりちいさな振動しんどうは13ごう以前いぜん飛行ひこうでもこっていたが(またそれは、ジェミニ計画けいかく初期しょき無人むじん飛行ひこう段階だんかいから発生はっせいしており、ロケットに固有こゆう現象げんしょうかんがえられていたが)、13ごうではターボポンプなかキャビテーション発生はっせいしたことにより、振動しんどう拡大かくだいされたのであった。このため飛行ひこうでは、13ごう時点じてんではまだ開発かいはつ途上とじょうであった振動しんどう抑制よくせい装置そうちりつけられることになった。同時どうじに、圧力あつりょく振動しんどう減少げんしょうさせるため液体えきたい酸素さんそ供給きょうきゅうラインのなかヘリウムガスをたしたサージタンク設置せっちし、故障こしょう発生はっせいしたさい中央ちゅうおうエンジンを自動的じどうてき停止ていしする装置そうちもうけ、またすべてのエンジンの燃料ねんりょうバルブ簡素かんそするなどの改善かいぜんはかられた。

事故じこ発生はっせい

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損傷そんしょうした13ごう機械きかいせん大気圏たいきけんさい突入とつにゅう直前ちょくぜんはなした直後ちょくご撮影さつえい

地球ちきゅうから321,860kmはなれたとき(アメリカ東部とうぶ標準時ひょうじゅんじで1970ねん4がつ13にち)、機械きかいせんの2ある酸素さんそタンクのうちのひとつが突然とつぜん爆発ばくはつした。飛行ひこうだい2タンクの攪拌のスイッチをれたとき、タンク内部ないぶの、テフロンせい皮膜ひまく損傷そんしょうしていた電線でんせん短絡たんらく放電ほうでんした。圧力あつりょくはあっという限界げんかいの7MPaえ、瞬間しゅんかんてき燃焼ねんしょうした。もっともこれはずっとのちになってから事故じこ調査ちょうさ委員いいんかい分析ぶんせきによってあきらかになったことで、飛行ひこうたちはこの時点じてんでは微小びしょう天体てんたい衝突しょうとつしたのだとおもっていた。

この爆発ばくはつにより、1ばんタンクも損傷そんしょうした。計器けいきばんざんりょう表示ひょうじはゆっくりとがりつつあり、数時間すうじかんには機械きかいせん酸素さんそ完全かんぜんそらになってしまうとかんがえられた。管制かんせいセンターは飛行ひこうがメーターの表示ひょうじげるのを中断ちゅうだんさせ、内容ないようぶつ維持いじすることをさい優先ゆうせんにさせた。

もし機械きかいせん酸素さんそがなくなってしまったら、司令しれいせん搭載とうさいされているぶん使つかわざるをなくなる。しかしそれは機械きかいせんはなしたあと、大気圏たいきけんさい突入とつにゅうさい必要ひつようになるもので、やく10あいだぶんしか用意よういされていない。そのためジョンソン宇宙うちゅうセンターコールサインヒューストン」)の管制かんせいセンターは、司令しれいせん機能きのう完全かんぜん停止ていしつき着陸ちゃくりくせん避難ひなんするよう飛行ひこうたちに指示しじした。この手順てじゅん地上ちじょうでの訓練くんれんではなんおこなわれていたが、まさかそれを実行じっこうするときるとはだれおもっていなかった。このときアポロ8ごうのように着陸ちゃくりくせん存在そんざいしていなければ、飛行ひこうたちは確実かくじついのちとしていたところであった。

この事故じこにより月面げつめん着陸ちゃくりく不可能ふかのうになり、3にん宇宙うちゅう飛行ひこうすみやかに地球ちきゅう帰還きかんさせなければならなくなった。選択肢せんたくしとして、宇宙船うちゅうせん全体ぜんたい反転はんてんさせ、機械きかいせんのエンジンを噴射ふんしゃして減速げんそくしさらに帰還きかん方向ほうこう加速かそくしてかえす「直接ちょくせつ中止ちゅうし」、つき裏側うらがわまわって自動的じどうてき地球ちきゅう帰還きかんすることができる自由じゆう帰還きかん軌道きどう英語えいごばん利用りようする「つき周回しゅうかい中止ちゅうし」などがあった。直接ちょくせつ中止ちゅうしには機械きかいせんのエンジンが完全かんぜん状態じょうたい使用しようできることが前提ぜんていであるが、13ごう場合ばあい爆発ばくはつにより機械きかいせんのエンジンが損傷そんしょうけている可能かのうせいおおきく、この方法ほうほうによる帰還きかんけるべきと判断はんだんされた。一方いっぽうつき周回しゅうかい中止ちゅうしについては、13ごう当初とうしょはこの軌道きどうってつき目指めざしていたが、フラ・マウロへかうためげの翌日よくじつ機械きかいせんのエンジンを噴射ふんしゃして自由じゆう帰還きかん軌道きどうから離脱りだつしており、そのまま放置ほうちするとつき裏側うらがわまわって地球ちきゅう方向ほうこうにはもどるが、しかし地球ちきゅうおおきくはずれてしまう長大ちょうだい楕円だえん軌道きどうっていた。そのため、事故じこ発生はっせいからおよそ5あいだはん経過けいかした時点じてんで、宇宙船うちゅうせん自由じゆう帰還きかん軌道きどうもどすためにつき着陸ちゃくりくせん降下こうかようエンジンを噴射ふんしゃして軌道きどう修正しゅうせい実行じっこうされた。その再度さいど軌道きどう修正しゅうせい帰還きかんまでの所要しょよう時間じかん短縮たんしゅくするための両方りょうほう目的もくてきで、月面げつめんさい接近せっきん2あいだ着陸ちゃくりくせん降下こうかようエンジンを噴射ふんしゃして宇宙船うちゅうせん加速かそくするPC+2噴射ふんしゃ実行じっこうされた。

構造こうぞうことなる司令しれいせん空気くうき濾過ろか装置そうち着陸ちゃくりくせんもちいるために、急遽きゅうきょ手作てづくりされた「メールボックス」。着陸ちゃくりくせん予備よびのLiOHはふねがい搭載とうさいされていて、電力でんりょく温存おんぞんすべくふねがい活動かつどう制限せいげんされたため飛行ひこうりにくことは出来できなかった
着陸ちゃくりくせんアクエリアス。地球ちきゅう帰還きかんする直前ちょくぜんまで、救命きゅうめいボートとして使用しようされた
司令しれいせんオデッセイの太平洋たいへいよう着水ちゃくすい成功せいこうほう歓喜かんきく、ジョンソン宇宙うちゅうセンター(ヒューストン)の管制かんせいしつ飛行ひこう主任しゅにん(フライト・ディレクター)たち。ひだりより、(親指おやゆびてている人物じんぶつが)グリフィン、クランツ、ルーネイ

着陸ちゃくりくせん問題もんだいてん

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着陸ちゃくりくせんは、本来ほんらい2人ふたり人間にんげん宇宙うちゅうに2日間にちかん滞在たいざいするように設計せっけいされており、3にん人間にんげんが4日間にちかん生存せいぞんできるようにはつくられてはいなかった。酸素さんそについては、着陸ちゃくりくせん飛行ひこう月面げつめん活動かつどうするさい一旦いったん内部ないぶ真空しんくうにしたり、もどったあとふたた船内せんないあずかあつしたりする行程こうていがあるため、十分じゅうぶんりょう搭載とうさいされていてそれほど心配しんぱいする必要ひつようはなかった。 問題もんだいは、二酸化炭素にさんかたんそ(CO2)の除去じょきょ必要ひつよう水酸化すいさんかリチウム(LiOH)であった。飛行ひこうたちが呼吸こきゅうをするたびに、船内せんない二酸化炭素にさんかたんそ放出ほうしゅつされるが、一定いってい濃度のうど以上いじょう二酸化炭素にさんかたんそ人体じんたい毒性どくせいがあるため、除去じょきょする必要ひつようがある。それを除去じょきょするためのフィルターに使用しようされている水酸化すいさんかリチウムが、着陸ちゃくりく船内せんない搭載とうさいされているりょうでは、帰還きかんまではとてももたない。予備よびのボトルはふねがい格納庫かくのうこいてあり、通常つうじょう月面げつめん活動かつどうをするさい飛行ひこうりにくのだが、今回こんかいふねがい活動かつどうをするだけの電力でんりょく余裕よゆうがない。司令しれい船内せんないには十分じゅうぶん予備よびがあるものの、司令しれいせん濾過ろか装置そうちは、着陸ちゃくりくせんとは規格きかくまったことなっていた。 司令しれいせんのフィルターエレメントは四角形しかっけいであり、そのままでは着陸ちゃくりくせん円形えんけいのフィルター筐体きょうたい装着そうちゃくすることはできない。そのため地上ちじょう管制かんせいかんたちは、船内せんないにあるあまったル紙るがみやビニールぶくろをガムテープでわせてフィルター筐体きょうたい製作せいさくする方法ほうほう考案こうあんし、そのつくかた口頭こうとう飛行ひこうたちにつたえた。こうして完成かんせいさせたわせのフィルター装置そうちを、飛行ひこうたちは形状けいじょう設置せっちじょうきょうることから「メールボックス」とんだ。

もうひとつの問題もんだい電力でんりょくであった。司令しれいせん機械きかいせん電力でんりょくげん燃料ねんりょう電池でんちだったのにたいし、着陸ちゃくりくせん酸化さんかぎん電池でんち使用しようしていた。燃料ねんりょう電池でんちは、副産物ふくさんぶつとしてみず生成せいせいされる。このみず飲料いんりょうすいとして利用りようされるだけではなく、機器きき冷却れいきゃくにももちいられる。酸化さんかぎん電池でんちではみずられないため、大気圏たいきけんさい突入とつにゅう直前ちょくぜんまで電池でんち出力しゅつりょく最低さいてい限度げんどにまでおさえられ、飛行ひこうたちもみずむことは極力きょくりょくひかえなければならなくなった。 また電力でんりょく最低さいてい限度げんどにまでとしたために、船内せんない温度おんど極端きょくたんひくくなってしまった。ホットドッグがこおってしまうほどのさむさになったが、飛行ひこう宇宙うちゅうふくることはしなかった。内部ないぶはゴムせい発汗はっかん促進そくしんされてしまうことを懸念けねんしたためである。また、このため空気くうきちゅう水分すいぶん凝結ぎょうけつし、計器けいきばんうえ無数むすう結露けつろ発生はっせいした。この水滴すいてきは、あと司令しれいせんさい起動きどうするさい回路かいろ短絡たんらくさせる原因げんいんとなるのではないかと懸念けねんされたが、司令しれいせんにはアポロ1ごう火災かさい事故じこのち、その原因げんいんとなった短絡たんらく漏電ろうでんへの対策たいさく徹底的てっていてきほどこされていたため問題もんだいとなることはなかった。

地球ちきゅうへの帰還きかん

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帰還きかん直前ちょくぜん分析ぶんせきのために写真しゃしんるべく、まず最初さいしょ機械きかいせんはなした。飛行ひこうたちがおどろいたのは、酸素さんそタンクと水素すいそタンクをおおっているだい3区画くかくのカバーが、機械きかいせん全長ぜんちょうにわたってそっくりなくなっていたことであった。

着陸ちゃくりくせんアクエリアスをはなしたのち司令しれいせんオディッセイは無事ぶじ太平洋たいへいよう着水ちゃくすいした。2人ふたり健康けんこう状態じょうたいには問題もんだいはなかったが、ヘイズ飛行ひこう水分すいぶん補給ほきゅう不足ふそくしていたために尿にょう感染かんせんしょうにかかってしまっていた。管制かんせいセンターは宇宙船うちゅうせん軌道きどう影響えいきょうあたえないために一時いちじてきふねがい尿にょう投棄とうきしないよう指示しじしていたのだが、飛行ひこうたちはそれを誤解ごかいして、地球ちきゅう帰還きかんするまで尿にょう投棄とうきをしないようにしていた。尿にょうはビニールぶくろめて船内せんない保管ほかんしていたがビニールぶくろにはかぎりがあるため、飛行ひこうたちは排尿はいにょうすくなくするためにみずむのをできるだけひかえており、そのためにヘイズは尿にょう感染かんせんしょうかかってしまった。

月面げつめん着陸ちゃくりくという目的もくてき達成たっせいできなかったものの、爆発ばくはつ発生はっせいしたのがつきかう途中とちゅうのことで、着陸ちゃくりくせん物資ぶっしつかずの状態じょうたいだったのは不幸ふこうちゅうさいわいであった。

発射はっしゃからおよそ46あいだ40ふんだい2酸素さんそタンクのざんりょう表示ひょうじ内部ないぶ絶縁ぜつえんからだ損傷そんしょうにより、100%をしめ故障こしょう発生はっせいした。皮肉ひにくなことに、飛行ひこうたちのいのちはこの故障こしょうによってすくわれた。故障こしょう原因げんいんさぐるため、飛行ひこうはこの時点じてん低温ていおんタンク攪拌の操作そうさをしたのだが、この操作そうさ爆発ばくはつがねとなる(くわしくは後述こうじゅつ)。この操作そうさ本来ほんらい予定よていでは月面げつめん着陸ちゃくりくのち、すなわち着陸ちゃくりくせん分離ぶんりおこなわれることとなっていた。かりにこの故障こしょうければばくはつ着陸ちゃくりくせん分離ぶんりこっていたとかんがえられ、この場合ばあい飛行ひこうたちがたすかる見込みこみはまずなかった。

事故じこ原因げんいん

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帰還きかん揚陸ようりくかんイオージマの甲板かんぱんった3めい飛行ひこう

事故じこ原因げんいん分析ぶんせきには予想よそうがい時間じかんがかかったが、製造せいぞう記録きろく詳細しょうさい追跡ついせきにより、タンクの爆発ばくはつはいくつもの要因よういんかさなったことによって発生はっせいしたことがあきらかにされた。

そもそも液体えきたい酸素さんそ液体えきたい水素すいそのようなごく低温ていおん物質ぶっしつ貯蔵ちょぞうするには、気化きかによって発生はっせいする過大かだい圧力あつりょくけるための排気はいき系統けいとうや、ねつてき絶縁ぜつえん方法ほうほう確立かくりつすることが重要じゅうようになってくる。機械きかいせんのタンクの性能せいのうきわめてたかく、ごく低温ていおん液体えきたい酸素さんそ液体えきたい水素すいそなんねんにもわたって保存ほぞんすることができるのだが、タンクない内容ないようぶつがある状態じょうたいのときには、内部ないぶることは構造こうぞうじょう不可能ふかのうであった。

事故じこ関係かんけいした部品ぶひんおよび要因よういんは、以下いかのとおりである。

部品ぶひん
  • ざんりょうけい
  • ざんりょう正確せいかく計測けいそくするための、攪拌ようファン
  • 液体えきたい酸素さんそ必要ひつようぶんだけ蒸発じょうはつさせるための加熱かねつヒーター
  • 加熱かねつ制御せいぎょするための温度おんど維持いじ装置そうちサーモスタット
  • 温度おんどけい
  • 充填じゅうてんおよび排出はいしゅつようのバルブとパイプ
要因よういん
  • 元々もともと機械きかいせん酸素さんそタンクのヒーターとサーモスタットの規格きかくは、司令しれいせんの28ボルトわせて設計せっけいされていた。ところが発射はっしゃだいじょうでタンクの充填じゅうてん加圧かあつ作業さぎょうおこなうさいには、65ボルトの電源でんげん使用しようされていた。このため機械きかいせん製作せいさくもとノース・アメリカンしゃ下請したう企業きぎょうビーチクラフトしゃたいし、ヒーターを65ボルトの規格きかくわせるよう指示しじし、ビーチクラフトはそれにしたがってタンクを改造かいぞうしたのだが、このとき原因げんいん不明ふめいだが)サーモスタットだけにはなに変更へんこうくわえられなかった。
  • また酸素さんそタンクの温度おんどけい表示ひょうじ上限じょうげんは100°F(38℃)で、これ以上いじょう表示ひょうじされないようになっていた。しかし通常つうじょうは、27℃にまでたっすればサーモスタットが作動さどうして自動的じどうてきにヒーターが停止ていしされるため、とく問題もんだいになるものではなかった。
  • 今回こんかい13ごう使用しようされた酸素さんそタンクおよびその付属ふぞく機器きき一式いっしき搭載とうさいしたたなは、本来ほんらいさきアポロ10ごう使用しようされるはずのものだったが、電磁波でんじは干渉かんしょうノイズ)の問題もんだい発生はっせいしたために、付属ふぞく機器ききごとはずされ修理しゅうりされることになった。ところがクレーンでつりげるさいたな機体きたいりつけている4ほんのボルトのうちの1ほんはずされていなかった。このため、2インチ(5センチメートル)ほどげたところでワイヤーはずれ、たなもとあった場所ばしょちてしまった。このときの衝撃しょうげきにより、タンクない酸素さんそとき使用しようされるパイプが、本来ほんらいりつけ位置いちからはずれてしまった。
  • この事故じこのち地上ちじょうでの訓練くんれんをするさい、タンクに液体えきたい酸素さんそ充填じゅうてんされた。ところが訓練くんれん終了しゅうりょうさき事故じこ放出ほうしゅつようのパイプがはずれてしまったために、なか酸素さんそれなくなってしまった。いまからタンク一式いっしきえるとなると、計画けいかく大幅おおはばおくれてしまう。そのため担当たんとう技術ぎじゅつしゃは、ヒーターで液体えきたい酸素さんそ加熱かねつし、気化きかさせて放出ほうしゅつすることを提案ていあんし、ラヴェル船長せんちょうもこれを承認しょうにんした。ヒーターのスイッチがれられ、タンクない温度おんど上昇じょうしょうし27℃にたっした瞬間しゅんかん、サーモスタットが作動さどうするはずであった。ところが回路かいろ接続せつぞくされた65ボルト電源でんげんにて発生はっせいした電流でんりゅうが、28ボルトよう設計せっけいされていたサーモスタットをすで溶着ようちゃくさせており、この結果けっかヒーターの温度おんど制御せいぎょ機構きこう故障こしょう機能きのうしなくなっていた。
  • 8あいだ液体えきたい酸素さんそはすべて気化きかしてられたが、温度おんど制御せいぎょ機構きこう故障こしょうによってヒーターは8あいだ常時じょうじ通電つうでんしていた。そのため最終さいしゅうてきにタンクない温度おんどは538℃にもたっしたのだが、38℃までしか表示ひょうじしない温度おんどけいであったため異常いじょうづくものだれもいなかった。
  • これにより攪拌ようファンの電線でんせんおおうテフロンせい被膜ひまくがほぼ焼失しょうしつし、電線でんせんがむきしになった。
  • タンクない液体えきたい酸素さんそさい充填じゅうてんされたとき、それはもはやばくだんのような状態じょうたいになっていた。飛行ひこう低温ていおん攪拌の操作そうさをするためにファンのスイッチをれたとき、むきしになっていた電線でんせんから火花ひばなび、のこっていたテフロンが発火はっかした。100%純粋じゅんすい液体えきたい酸素さんそなか発生はっせいしたほのおは、300ポンド(136kg)の液体えきたい酸素さんそ一瞬いっしゅんのうちに気化きかさせ、膨張ぼうちょうした気体きたい酸素さんそがタンクをばした。
  • この爆発ばくはつにより正常せいじょうだい1タンクも損傷そんしょうい、使つかものにならなくなった。この事故じこ教訓きょうくんとして、飛行ひこうでは2つのタンクの距離きょり十分じゅうぶんはなし、さらに常用じょうよう電源でんげんべつ区画くかく設置せっちする改良かいりょうくわえられた。

特記とっき事項じこう

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アポロ計画けいかくとおして設定せっていされていた飛行ひこうのローテーションでは、13ごう当初とうしょ乗組のりくみいんは、ジェミニ計画けいかくのベテラン飛行ひこうであるゴードン・クーパー船長せんちょうにした、以下いかのメンバーによって構成こうせいされていた。

  • ゴードン・クーパー (L. Gordon Cooper, Jr.):船長せんちょう
  • ドン・F・アイセル (Donn F. Eisele):司令しれいせん操縦そうじゅう
  • エドガー・D・ミッチェル (Edgar D. Mitchell):着陸ちゃくりくせん操縦そうじゅう

しかしながらクーパーとアイセルは様々さまざま理由りゆうNASA上層じょうそうからきらわれていた(クーパーは訓練くんれん態度たいど真面目まじめであり、またアイセルはすでにアポロ7ごう飛行ひこうしていたし、結婚けっこんをめぐって家庭的かていてき問題もんだいかかえていた)ので、担当たんとうかんでありマーキュリー・セブンのメンバーの1人ひとりディーク・スレイトンかれらを予備よび搭乗とうじょういんまわした。スレイトンによると、クーパーはよほどの活躍かつやくせなければ13ごう搭乗とうじょうさせるつもりはなかったのだが、結局けっきょくかれ期待きたいこたえることはできなかったのだという。これらの理由りゆうにより、スレイトンが最初さいしょ提案ていあんした搭乗とうじょういん候補こうほは、

  • アラン・シェパード (Alan B. Shepard, Jr):船長せんちょう (スレイトンとおなじマーキュリー・セブンのメンバー)
  • スチュアート・ルーザ (Stuart A. Roosa):司令しれいせん操縦そうじゅう
  • エドガー・ミッチェル (Edgar D. Mitchell):着陸ちゃくりくせん操縦そうじゅう

であったが、シェパードは以前いぜん内耳ないじ手術しゅじゅつけたことがあり、また1961ねん以来いらい飛行ひこう経験けいけんしていないために、つき飛行ひこうおこなうには訓練くんれん期間きかん不足ふそくしているとして候補こうほからはじかれた。このため本来ほんらいは14ごうせい搭乗とうじょういんであり、11ごう予備よび搭乗とうじょういんでもあったラヴェルたちのグループが13ごう配属はいぞくされたのであった。

発射はっしゃの2にちまえ予備よび搭乗とうじょういん1人ひとりであったチャーリー・デュークが、自分じぶん子供こどもからはしかをうつされた。船長せんちょうのラヴェルと着陸ちゃくりくせん操縦そうじゅうヘイズは免疫めんえきがあったが、司令しれいせん操縦そうじゅうのケン・マッティングリーはっていなかったため、予備よび搭乗とうじょういんのジャック・スワイガートと交替こうたいになった。マッティングリーはのちアポロ16ごうスペースシャトルSTS-4STS-51-C飛行ひこうし、海軍かいぐん少将しょうしょうまで昇進しょうしんしたのち、NASAおよび海軍かいぐんから退役たいえきした。13ごう危機ききおちいっているあいだかれ管制かんせいセンターで司令しれいせんをいかに最小限さいしょうげん電力でんりょく使用しようするかということを、シミュレーター検討けんとうした。

13ごう飛行ひこう記念きねんプレート

また着陸ちゃくりくせんアクエリアスのあしられていた飛行ひこう記念きねんプレートには、マッティングリーの名前なまえきざまれていたため、月面げつめん交換こうかんすべく飛行ひこうたちはスワイガートの名前なまえはいっているものを手渡てわたされていた。ラヴェル船長せんちょう著書ちょしょうしなわれたつき」(のちに『アポロ13』に改題かいだい)によると、かれっている13ごうかんする記念きねんひんは、このプレートのほかには司令しれいせんたいねついたのかけらと、チャールズ・リンドバーグからの手紙てがみであるという。

13ごう自由じゆう帰還きかん軌道きどうをとったため、つき裏側うらがわまわさいつき飛行ひこうよりもおよそ100kmほどたか軌道きどうとおった。このため2024ねん現在げんざい人間にんげん地球ちきゅうからもっととおはなれた記録きろくとなっている。もっとも地球ちきゅうつきあいだ距離きょり変化へんかは100km以上いじょうおよぶため、13ごう本当ほんとうつき飛行ひこうよりも地球ちきゅうからとおざかったとはかぎらないが、ギネス世界せかい記録きろくは、これを有人ゆうじん宇宙うちゅう飛行ひこう最高さいこう高度こうど到達とうたつ記録きろくとして認定にんていしているので、ラヴェルら3にん正式せいしき記録きろく保持ほじしゃとなっている。

司令しれいせん発射はっしゃからおよそ6にち4がつ17にち18:07:41(UTC)、サモアしま南西なんせい西経せいけい16522ふん南緯なんい2138ぶん太平洋たいへいよううえ着水ちゃくすいした。回収かいしゅうのための強襲きょうしゅう揚陸ようりくかんイオー・ジマ(USS Iwo Jima)からは6.5kmはなれていた。

陰謀いんぼうろんしゃは、13という数字すうじ様々さまざま関連かんれんづけようとしている。たとえば発射はっしゃの'70ねん4がつ11にち数字すうじ全部ぜんぶすと13になり、1313ふんに39ばん発射はっしゃだい(13の3ばい)から発射はっしゃされ、事故じこ発生はっせいしたのは4がつ13にちである等々とうとうほかにも爆発ばくはつきたのは1913ふんであるとか、もし地上ちじょう事故じこ発生はっせいしていれば損害そんがいがくは1,300まんドルにたっしただろうなどと牽強付会けんきょうふかいするものもいる。映画えいがアポロ13」が製作せいさくされたとき、ラヴェルはNASAがこの事故じこ以降いこう宇宙船うちゅうせんに13の番号ばんごうをふらなくなったことを指摘してきしたが、一方いっぽうでアメリカがちか将来しょうらい計画けいかくしている有人ゆうじんがつ飛行ひこう計画けいかくは「オリオン13」とばれている。

ラヴェルが月面げつめん着用ちゃくようする予定よていだった宇宙うちゅうふくには、うであしヘルメット生命せいめい維持いじ装置そうち部分ぶぶんあかせんかれていた。11ごう12ごう飛行ひこうのち月面げつめん活動かつどう映像えいぞう関係かんけいしゃたちは、飛行ひこうたちがヘルメットのサンバイザーをろしてしまうと、だれだれなのかまったからなくなってしまうことにづいた。そのため急遽きゅうきょ対策たいさくとして、宇宙うちゅうふくあかせんれて個人こじん区別くべつすることにした。なお、この識別しきべつ方法ほうほうはそののアポロ計画けいかくやスペースシャトル、さらに国際こくさい宇宙うちゅうステーション計画けいかくでも継続けいぞくして採用さいようされている。

13ごう月面げつめん着陸ちゃくりく達成たっせいできなかったものの、関係かんけいしゃ迅速じんそくかつ果敢かかん対応たいおうして危機ききえたことにより、「成功せいこうした失敗しっぱい」とばれている。飛行ひこう地上ちじょう管制かんせいかんたちは、その功績こうせきにより大統領だいとうりょう自由じゆう勲章くんしょう受章じゅしょうした。

着陸ちゃくりく実行じっこうできなかったことにより、アポロ月面げつめん実験じっけん装置そうちぐん(Apollo Lunar Surface Experiments Package)に搭載とうさいされていた各種かくしゅ科学かがく実験じっけんもできなくなってしまった。たとえばそのなかひとつに、月面げつめん大気たいきつきには地球ちきゅうの100ちょうぶんの1以下いかというきわめてひく気圧きあつながらも、大気たいき存在そんざいする)を調しらべる、ひや陰極いんきょく計測けいそく実験じっけん(Cold Cathode Gauge Experiment)があった。これは12、14、15、16ごうでもおこなわれたひや陰極いんきょくイオン計測けいそく実験じっけんおなじものであったが、飛行ひこうでは計測けいそく月面げつめんねつイオン検出けんしゅつ接続せつぞくされていたのにたいし、13ごうでは計測けいそく自体じたい独立どくりつしていたのが特徴とくちょうであった。実験じっけん装置そうちぐん搭載とうさいされていたほかおも計測けいそく装置そうちには、つき内部ないぶねつ宇宙うちゅう空間くうかん放出ほうしゅつする割合わりあい調しらべることによってつき年齢ねんれいさぐる「ねつ流量りゅうりょう計測けいそく装置そうち(Heat Flow Experiment)」、つき地震じしんつきふるえ)を計測けいそくする「受動じゅどうしきがつふるえけい(Passive Seismic Experiment)」、月面げつめんそそ宇宙うちゅうせん計測けいそくする「月面げつめん荷電かでん粒子りゅうし計測けいそく装置そうち(Charged Particle Lunar Environment Experiment)」などがあった。

牽引けんいんりょう

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着陸ちゃくりくせん製作せいさくしたグラマンしゃは、司令しれいせん製造せいぞうしたノース・アメリカン・ロックウェルしゃたいし、つきからの帰路きろだい部分ぶぶん着陸ちゃくりくせん牽引けんいんしたことについて総額そうがく31まん2421ドル24セントの請求せいきゅうしょ発行はっこうし、13ごう無事ぶじ帰還きかんしたのち、パイロットのサム・グリーンバーグがいたおくじょうとともに冗談じょうだんとして送付そうふした。おくじょうには20%の官公庁かんこうちょう割引わりびきと、もしノース・アメリカンが現金げんきん一括いっかつして支払しはら場合ばあいには、さらに2%の割引わりびきをするむねかれていた。これにたいしノース・アメリカンは、「当社とうしゃ司令しれいせんが10、11、12ごう飛行ひこう往路おうろ着陸ちゃくりくせん牽引けんいんしたときには、料金りょうきん支払しはらいは一切いっさいもとめなかった」として、グラマンしゃ請求せいきゅう丁重ていちょうことわった。このジョークはアポロ13ごう地球ちきゅうへの帰還きかん目指めざして航行こうこうしている最中さいちゅう考案こうあんされ、極限きょくげん緊張きんちょうつつまれた管制かんせいしつつかわらいをもたらした。

牽引けんいん最初さいしょの1マイル=$4.00 その1マイルごとに=$1.00 合計ごうけい=$400004.00
・バッテリー充電じゅうでんきゃくさき要請ようせいにより出張しゅっちょう充電じゅうでんケーブルはきゃくさきのものを使用しよう合計ごうけい=$4.05
・酸素さんそ:1ポンドたり$10.00 合計ごうけい=$500.00
・宿泊しゅくはく設備せつび2人ふたりぶん、テレビなし、エアコンとラジオき、修正しゅうせいアメリカン・プラン 眺望ちょうぼうよし、料金りょうきん前納ぜんのうみ。
   (宿泊しゅくはくしゃ追加ついか場合ばあいは=1人ひとり1ばんにつき$8.00)
・官公庁かんこうちょう料金りょうきん割引わりびき:20%
・請求せいきゅう総額そうがく=$312421.24
※注記ちゅうき月面げつめん着陸ちゃくりくせんのチェック・アウト・タイム=金曜きんよう正午しょうごまで。その宿泊しゅくはく設備せつび提供ていきょう保障ほしょうなし。

計画けいかく徽章きしょう

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13ごう徽章きしょうには、ローマ数字すうじで「XIII」としるされた計画けいかく番号ばんごうと、3とう天馬てんまがアポロの戦闘せんとう馬車ばしゃとなって宇宙うちゅうける姿すがたえがかれている。またラヴェルが海軍かいぐん軍人ぐんじんであったことから、海軍兵学校かいぐんへいがっこう校訓こうくんEx scientia tridens知識ちしきから、うみちからを)」を借用しゃくようして、「Ex luna, scientiaつきから、知識ちしきを)」という標語ひょうごかれている。アポロ計画けいかく全体ぜんたいなかで、徽章きしょう飛行ひこう名前なまえかれていないのは11ごうとこの13ごうだけであったが、元々もともと搭乗とうじょうする予定よていだったマッティングリー飛行ひこう発射はっしゃの2にちまえ病気びょうき交替こうたいになったため、これはむしろ幸運こううんだった。デザインをしたのは画家がかのルーメン・ウィンターで、自身じしん以前いぜんえがいたニューヨークのホテルの壁画へきがもとにしてこの図案ずあんにした。その壁画へきがは、のちに「アポロ13」でラヴェルのやくえんじた俳優はいゆうトム・ハンクス購入こうにゅうし、ラヴェルの息子むすこ経営けいえいするシカゴのレストランにかざられている。

機体きたい

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アポロ12ごうは、発射はっしゃ前日ぜんじつ機械きかいせん燃料ねんりょうタンクが真空しんくうれをこしたため、13ごうのタンクと交換こうかんする共食ともぐ整備せいびおこなわれた[5]。13ごうおおきまとうケチのひとつとなっている。

カンザス宇宙うちゅうセンターに展示てんじされているアポロ13ごう司令しれいせん

帰還きかん司令しれい船内せんない機械きかいるい事故じこ調査ちょうさのためにすべてはずされた。わりに水中すいちゅう脱出だっしゅつ訓練くんれん使用しようされたBP-1102Aという機体きたい計器けいきるい搭載とうさいされ、パリ航空こうくう宇宙うちゅう博物館はくぶつかん展示てんじされた。そのケンタッキーしゅうルイビル国立こくりつ歴史れきし科学かがく博物館はくぶつかんうつされ、2000ねんにはオリジナルの計器けいきるいがセットしなおされて、2021ねん現在げんざいカンザスしゅうハッチンソンの博物館はくぶつかん展示てんじされている。

着陸ちゃくりくせんは1970ねん4がつ17にち大気圏たいきけんさい突入とつにゅうして消滅しょうめつした。そのさい月面げつめん実験じっけん装置そうちぐん動力どうりょくである原子力げんしりょく電池でんち太平洋たいへいよう落下らっかするよう軌道きどう制御せいぎょされた。燃料ねんりょうプルトニウム大気圏たいきけんきることなく、ニュージーランド北東ほくとうトンガ海溝かいこうそこしずみ、以降いこう2,000年間ねんかん放射線ほうしゃせんはっつづけるとられている。

映画えいが出版しゅっぱんぶつなど

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映画えいが 「ヒューストン、問題もんだい発生はっせいした」
1974ねん公開こうかいされた「ヒューストン、問題もんだい発生はっせいした (Houston, We've Got a Problem)」という映画えいが完全かんぜんなフィクションで、事故じこ地上ちじょう職員しょくいん原因げんいんこされ、計画けいかくのスケジュールは完全かんぜん崩壊ほうかい飛行ひこうたちの生命せいめいはさらなる危険きけんにさらされ、ただニュースの記事きじとナレーターの重々おもおもしいこえのみが事実じじつつたえている、というものであった。
楽曲がっきょく 「アポロ13ごうのバラード」
1983ねんには「発射はっしゃ10びょうまえ秒読びょうよ続行ぞっこう宇宙うちゅう世代せだいうた」という題名だいめいカセットテープ録音ろくおんされた歌集かしゅうがオフ・セントール・プロダクションから発売はつばいされ、そのなかに「アポロ13ごうバラード」というきょく収録しゅうろくされていた。
映画えいが 「アポロ13」
ジム・ラヴェルとジェフリー・クルーガーの共著きょうちょうしなわれたつき』(Lost Moon日本語にほんごばんタイトル『アポロ13』)は、1994ねん刊行かんこうされ、よく1995ねんに『アポロ13』というタイトルで映画えいがされた。監督かんとくロン・ハワードで、ラヴェル船長せんちょうはトム・ハンクス、ヘイズ飛行ひこうビル・パクストン、スワイガート飛行ひこうケヴィン・ベーコン飛行ひこう主任しゅにんジーン・クランツはエド・ハリス、ラヴェル夫人ふじんキャスリーン・クインラン、マッティングリー飛行ひこうゲイリー・シニーズえんじた。またラヴェル夫妻ふさい本人ほんにんもカメオ出演しゅつえんしている。
ジーン・クランツをはじめとする何人なんにんかの主要しゅよう人物じんぶつたちは、「この映画えいが事実じじつ忠実ちゅうじつ再現さいげんしているが、映画えいがてき演出えんしゅつされた箇所かしょもところどころられる」とコメントしている。技術ぎじゅつてきあやまりも指摘してきされていて、たとえば事故じこ瞬間しゅんかんの「ヒューストン、なに問題もんだい発生はっせいしたようだ (Houston, we've had a problem.)」というラヴェルの報告ほうこくが、「ヒューストン、問題もんだい発生はっせいした (Houston, we have a problem.)」になっているところなどである。
全米ぜんべい映画えいがランキングなどでは当初とうしょ批判ひはんてき意見いけんおおかったが、のちにはアカデミーしょう最優秀さいゆうしゅう作品さくひんしょう助演じょえん男優だんゆうしょう(ハリス)、助演じょえん女優じょゆうしょう(クインラン)にノミネートされ、最優秀さいゆうしゅう編集へんしゅうしょう最優秀さいゆうしゅう録音ろくおんしょう獲得かくとくした。この映画えいがは、アポロ計画けいかくやアメリカの宇宙うちゅう開発かいはつ歴史れきしかんする一般いっぱん興味きょうみ喚起かんきしたとってよい。
テレビドラマ 「フロム・ジ・アース/人類じんるいつきつ」
トム・ハンクスやロン・ハワードなど映画えいがアポロ13』にかかわったスタッフを中心ちゅうしんに、1998ねんにはアポロ計画けいかくえがいたテレビドラマシリーズ『フロム・ジ・アース/人類じんるいつき』(From the Earth to the Moon) が制作せいさくされた。このなかで、アポロ13ごう事故じこにまつわるエピソードは「番組ばんぐみ中断ちゅうだんして (We Interrupt This Program)」というタイトルであつかわれている。内容ないよう計画けいかく細部さいぶにわたって忠実ちゅうじつ再現さいげんしようとしたもので、きわめてドキュメンタリー・タッチのものである。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Richard W. Orloff. “Apollo by the Numbers: A Statistical Reference (SP-4029)”. NASA. 2010ねん4がつ11にち閲覧えつらん
  2. ^ Lunar flyby (pericynthion) executed April 15, 1970
    00:21:00 UTC at 254.3 km above lunar surface.
  3. ^ Apollo 13NASA、July 8 2009 、Mission Highlights、5段落だんらく Apollo 13 was to be the third lunar landing attempt, but the mission was aborted after rupture of service module oxygen tank. Still, it was classified as a "successful failure" because of the experience gained in rescuing the crew. The mission's spent upper stage successfully impacted the moon.
  4. ^ 4がつ延期えんきか アポロ13ごうげ『朝日新聞あさひしんぶん』1970ねん昭和しょうわ45ねん)1がつ7にち夕刊ゆうかん 3はん 8めん
  5. ^ アポロ12ごう 今夜こんやはんげ『朝日新聞あさひしんぶん昭和しょうわ44ねん(1969ねん)11月14にち夕刊ゆうかん、3はん、1めん

関連かんれん項目こうもく

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NASA:Johnson Space Center:Mission Transcript:Apollo 13 (Onbord Voice 44p,PAO Mission 930, Technical Air-to-Ground 765p)

外部がいぶリンク

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  • Apollo Maniacs(アポロ・マニアックス)
  • Apollo 13: Eyewitness to the Explosion 2015ねん4がつ12にち スミソニアンAir & Space Magazine (アポロ13ごう酸素さんそタンクの爆発ばくはつをJSCの屋上おくじょうから望遠鏡ぼうえんきょう撮影さつえいしていたNASA職員しょくいんがいた。そのとき撮影さつえいされた写真しゃしん掲載けいさい