キンカン

キンカン
マルミキンカン
分類ぶんるい
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae 門もん : 被子植物ひししょくぶつ門もん Magnoliophyta 綱つな : 双そう子葉しよう植物しょくぶつ綱つな Magnoliopsida 目め : ムクロジ目め Sapindales 科か : ミカン科か Rutaceae 属ぞく : ミカン属ぞく Citrus
学名がくめい
Citrus japonica Thunb. (1780)
シノニム
Fortunella japonica (Thunb.) Swingle (1915)
和名わみょう
キンカン（金柑きんかん）
英名えいめい
Kumquat、Cumquat

キンカン（金柑きんかん、学名がくめい: Citrus japonica）は、ミカン科かミカン属ぞくの常緑じょうりょく低木ていぼく、あるいはキンカン属ぞく（学名がくめい: Fortunella）の常緑じょうりょく低木ていぼくの総称そうしょうである。別名べつめいキンキツ（金きむ橘たちばな）ともいう。果実かじつは小粒こつぶで甘酸あまずっぱく、ほろ苦にがい後味あとあじが残のこるので知しられる。

概要がいよう

中国ちゅうごくの長江ながえ中ちゅう流域りゅういき原産げんさん。日本にっぽんへは中国ちゅうごくから伝つたわり、暖地だんちで栽培さいばいされている常緑じょうりょく低木ていぼく。果実かじつは直径ちょっけい約やく2 - 3センチメートル (cm) で、甘あまみと酸味さんみがある。生せいで皮かわごと食たべられる品種ひんしゅもある。

名なの由来ゆらいは、黄金おうごん色しょくのミカン（蜜柑みかん）の意味いみから金きむ橘たちばな、金柑きんかんの中国ちゅうごく名めいが生うまれて、日本にっぽんではそれを音読おんよみしてキンカンとなった。俳句はいくでは秋あきの季語きごになっている。 英語えいごなどの「Kumquat」もしくは「Cumquat」は「金きむ橘たちばな」の広東かんとん語ご読よみ「gam¹gwat¹ （カムクヮト）」に由来ゆらいする。

カール・ツンベルクによりミカン属ぞく（Citrus）に分類ぶんるいされ、1784年ねん刊行かんこうの『日本にっぽん植物しょくぶつ誌し』（"Flora Japonica"）においてCitrus japonicaの学名がくめいを与あたえられていたが、1915年ねんにウォルター・テニスン・スウィングルにより新しん属ぞくとして分割ぶんかつされ、ヨーロッパに紹介しょうかいしたロバート・フォーチュンへの献けんじ名めいとして新あらたな学名がくめい（Fortunella）を与あたえられた。 しかし近年きんねんの系統けいとう発生はっせい解析かいせきは、キンカンがミカン属ぞくの系統けいとうに含ふくまれることを示唆しさしている。

日本にっぽんの標準ひょうじゅん和名わみょうキンカン（学名がくめい：Citrus japonica）とよばれる種たねは、別名べつめいでマルミキンカン、マルキンカンともよばれている。同属どうぞくには、ナガキンカン（ナガミキンカン）、ネイハキンカン（ニンポウキンカン、メイワキンカン）、マメキンカン、チョウジュキンカン（フクシュウキンカン）、近きん縁えんのなかまにトウキンカン（別名べつめい：カラマンシー）などがある。一般いっぱんに栽培さいばいされている種たねがナガキンカンとよばれるもので、果実かじつが丸まるいものをマルキンカンという。マルキンカンは樹き高だかが約やく2メートルで枝えだに棘とげがあるものとないものがあり、ナガキンカンは樹き高だか約やく3メートルで枝えだに棘とげがない。

日本にっぽんにおける2010年ねんの収穫しゅうかく量りょうは3,732 トンであり、その内訳うちわけは宮崎みやざき県けん2,604 トン、鹿児島かごしま県けん873 トン、その他た255 トンとなっている。

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  キンカンの果樹かじゅ
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  葉はと未熟みじゅく果はて
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  熟じゅくした果実かじつ

利用りよう

果実かじつは食用しょくように、また薬用やくように用もちいられ、10 - 11月ころによく熟じゅくした果実かじつが収穫しゅうかくされる。

食用しょくよう

果実かじつは果皮かひごとあるいは果皮かひだけ生食なましょくする。皮かわの中なか果皮かひ、つまり柑橘類かんきつるいの皮かわの白しろい綿めん状じょうの部分ぶぶんに相当そうとうする部分ぶぶんに苦味にがみと共ともに甘味あまみがある。果肉かにくは酸味さんみが強つよい。果皮かひのついたまま甘あまく煮にて、砂糖さとう漬づけ、蜂蜜はちみつ漬つけ、甘露煮かんろに、マーマレードにする。甘あまく煮にてから、砂糖さとうに漬つけ、ドライフルーツにすることもある。

キンカンの砂糖さとう漬づけは、果皮かひに刃物はもので切きれ目めを入いれて、軽かるく茹ゆでてから竹たけ串くしなどで種子しゅしを除のぞいて、果実かじつ量りょう60 - 70%ほどの砂糖さとうと水みずをかぶるほどの鍋なべに入いれてから落おとし蓋ぶたをして、中火ちゅうびからとろ火びで汁しるがなくなるまで煮詰につめたあと、陰干かげぼしにする。

薬用やくよう

マルキンカン、ナガキンカンともに薬用やくようとされる。

果実かじつは民間みんかん薬やくとして咳せきや、のどの痛いたみに効果こうかがあるとされ、金きむ橘たちばな（きんきつ）と称しょうすることがある。果実かじつにはいずれの種たねにも、有機ゆうき酸さん、糖分とうぶん約やく8%、灰分かいぶん約やく0.5%を含ふくみ、果皮かひ中ちゅうには少量しょうりょうのヘスペリジン（ビタミンP）、精油せいゆなどを含ふくんでいる。有機ゆうき酸さんには制せい菌きん作用さよう、ヘスペリジンは毛細血管もうさいけっかんの血液けつえき透過とうか性せいを増大ぞうだいさせたり、抗菌こうきんや利尿りにょうなどにも役立やくだつとされている。また、精油せいゆは延髄えんずい中枢ちゅうすうを刺激しげきして、血液けつえき循環じゅんかんを良よくして、発汗はっかん作用さようの働はたらきがある。

民間みんかん療法りょうほうでは、風邪かぜや咳せき止とめにキンカンの砂糖さとう漬づけを2 - 3個こカップに入いれて熱湯ねっとうを注そそいで飲のむ方法ほうほうや、生せいの果汁かじゅうをおろしショウガ、ハチミツと一緒いっしょにカップに入いれて熱湯ねっとうを注そそいで混まぜて飲のむなどの方法ほうほうが知しられている。疲労ひろう回復かいふくや保健ほけんに、10月ころに変色へんしょくし始はじめた果実かじつを焼酎しょうちゅう1リットルあたり300グラムの割合わりあいでビンに入いれて漬つけ込こみ、冷暗所れいあんしょに3か月げつ保存ほぞんしたものを毎日まいにち盃さかずき1杯はいほど飲のむとよいといわれている。ただし、手足てあしがいつも火照ほてるような人ひとへの連用れんようは避さけるべきとされる。

観賞かんしょう用よう

観賞かんしょう用ようとして庭木にわきとして植うえられることも多おおい。剪定せんていに強つよいので生垣いけがきや鉢植はちうえ、盆栽ぼんさいにもできる。広東かんとん省しょうや香港ほんこんでは、旧きゅう正月しょうがつを迎むかえる際さいに柑橘類かんきつるいの鉢植はちうえを飾かざることが多おおく、キンカンも好このまれる。

種たね

キンカン属ぞくには4から6種しゅが属ぞくする。カンキツの分類ぶんるい学者がくしゃウォルター・テニスン・スウィングルが4種しゅ、田中たなか長三郎ちょうさぶろうが6種しゅと設定せっていしており、前者ぜんしゃはニンポウ・フクシュウキンカンを雑種ざっしゅとして種たねから外はずしている。

• マルミキンカン（丸まる実みのる金柑きんかん）・マルキンカン（丸まる金柑きんかん）・ヒメタチバナ(姫ひめ橘たちばな) Fortunella japonica
• ナガミキンカン（長ちょう実みのる金柑きんかん） Fortunella margarita
• フクシュウキンカン（福ふく州しゅう金柑きんかん）・オオミキンカン（大だい実じつ金柑きんかん）・チョウジュキンカン（長寿ちょうじゅ金柑きんかん） Fortunella obovata
• ネイハキンカン・ニンポウキンカン（寧やすし波なみ金柑きんかん）・メイワキンカン（明和めいわ金柑きんかん） Fortunella crassifolia
• ホンコンキンカン（香港ほんこん金柑きんかん）・マメキンカン（豆まめ金柑きんかん）・キンズ（金きむ豆まめ） Fortunella hindsii - 観賞かんしょう用よう
• ナガハキンカン（長ちょう葉よう金柑きんかん） Fortunella polyandra

主おもな品種ひんしゅ

• ぷちまる - 種たね無なし金柑きんかん（正確せいかくには数すう粒つぶのしいな種子しゅしが入はいることがある）
  • ナガミキンカン×四よん倍ばい体たいニンポウキンカンの交配こうはいから生うまれた三さん倍ばい体からだ種しゅ間あいだ雑種ざっしゅ。
• スウィートシュガー - 極ごく甘あま品種ひんしゅの金柑きんかん

交雑こうざつ種しゅ

• ライムクアット - マルミキンカンとメキシカンライムの交雑こうざつ種しゅ
• サンクアット - マイヤーレモンとの交雑こうざつ種しゅ
• オレンジクアット - ウンシュウミカンとネイハキンカンの交雑こうざつ種しゅ
• シトレンジクアット - ナガミキンカンとシトレンジ（オレンジとカラタチの交雑こうざつ種しゅ）の交雑こうざつ種しゅ

マルミキンカン

特徴とくちょう

樹高きだかは2mほどになる。枝えだは分岐ぶんきが多おおく、若わかい枝えだには短みじかい刺とげがあることがある。

葉はは互生ごせいする。長ながさは5-7cm、長ちょう楕円だえん形がたで厚あつみがあり周囲しゅういには浅あさい鋸のこ状じょう歯はがある。葉はが上側うわがわに反そっていることが多おおい。葉柄ようへいには小ちいさな翼つばさがあるがないものもある。

夏なつから秋あきにかけて3-4回かい、2-3cmほどの白しろい五ご弁べんの花はなをつける。雌めしべは1本ほん、雄おしべは20本ほん。花はなの後のちには直径ちょっけい2cmほどの緑色みどりいろの実みをつける（初夏しょかにつけた花はなは実みがならないことが多おおい）。晩秋ばんしゅうから冬ふゆにかけて実じつは黄色きいろく熟じゅくする。

ニンポウキンカン

歴史れきし

日本にっぽんへの渡来とらいは江戸えど時代じだいの文政ぶんせい9年ねん（1826年ねん）のこと。現在げんざいの中国ちゅうごく浙江せっこう省しょう寧やすし波なみ（ニンポウ、当時とうじ・清きよし）の商船しょうせんが遠州灘えんしゅうなだ沖おきで遭難そうなんし清水港しみずこうに寄港きこうした。その際さいに船員せんいんが礼れいとして清水しみずの人ひとに砂糖さとう漬づけのキンカンの実みを贈おくった。その中なかに入はいっていた種たねを植うえたところ、やがて実みがなり、その実みからとった種たねが日本にっぽん全国ぜんこくへ広ひろまった。

主おもなブランド

• たまたま - 宮崎みやざき県けん産さん。JAブランド。開花かいか結実けつじつから約やく210日とおか以上いじょうを経過けいかし、糖度とうどが16度ど、直径ちょっけい2.8 センチメートル以上いじょうのニンポウキンカンにつけられる。
• たまたまエクセレント - 宮崎みやざき県けん産さん。JAブランド。上記じょうきの「たまたま」の中なかでもさらに糖度とうど18度ど、直径ちょっけい3.3 センチメートル以上いじょうのニンポウキンカンにつけられる。
• 春はる姫ひめ - 鹿児島かごしま県けん南みなみ西部せいぶ産さん。JAブランド。開花かいか結実けつじつから約やく210日とおか以上いじょうを経過けいかし、糖度とうどが16度ど、直径ちょっけい2.8 センチメートル以上いじょうのニンポウキンカンにつけられる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 猪股いのまた慶子けいこ監修かんしゅう 成美せいび堂どう出版しゅっぱん編集へんしゅう部ぶ編へん『かしこく選えらぶ・おいしく食たべる 野菜やさいまるごと事典じてん』成美せいび堂どう出版しゅっぱん、2012年ねん7月がつ10日とおか、192頁ぺーじ。ISBN 978-4-415-30997-2。 
• 貝津かいづ好孝よしたか『日本にっぽんの薬草やくそう』小学館しょうがくかん〈小学館しょうがくかんのフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年ねん7月がつ20日はつか、92頁ぺーじ。ISBN 4-09-208016-6。 
• 田中たなか孝治こうじ『効ききめと使つかい方かたがひと目めでわかる 薬草やくそう健康けんこう法ほう』講談社こうだんしゃ〈ベストライフ〉、1995年ねん2月がつ15日にち、133 - 134頁ぺーじ。ISBN 4-06-195372-9。 

外部がいぶリンク

• 国立こくりつ大学だいがく法人ほうじん 佐賀さが大学だいがく農学部のうがくぶ 果樹かじゅ園芸えんげい学がく研究けんきゅう室しつ 「キンカン属ぞく (Fortunella)」