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キンモクセイ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
キンモクセイ
Osmanthus fragrans
Osmanthus fragrans
神戸こうべ
分類ぶんるいAPG III
さかい : 植物しょくぶつかい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperms
階級かいきゅうなし : 真正しんしょうそう子葉しようるい Eudicots
階級かいきゅうなし : コア真正しんせいそう子葉しようるい Core eudicots
階級かいきゅうなし : キクるい Asterids
階級かいきゅうなし : 真正しんしょうキクるいI Euasterids I
: シソ Lamiales
: モクセイ Oleaceae
れん : オリーブれん Oleeae
ぞく : モクセイぞく Osmanthus
たね : モクセイ O. fragrans
変種へんしゅ : キンモクセイ O. f. var. aurantiacus
学名がくめい
標準ひょうじゅん: Osmanthus fragrans Lour. var. aurantiacus Makino (1902)[1]

狭義きょうぎ: Osmanthus fragrans Lour. var. aurantiacus Makino f. aurantiacus (Makino) P.S.Green (1958)[2]

シノニム
英名えいめい
fragrant orange-colored olive
品種ひんしゅ[4]

キンモクセイ金木犀きんもくせい[5]いわおかつら学名がくめい: Osmanthus fragrans var. aurantiacus)は、モクセイモクセイぞく常緑じょうりょくしょう高木たかぎで、モクセイ(ギンモクセイ)の変種へんしゅ庭園ていえんじゅ街路がいろじゅとしてうえ栽に使つかわれる。あきだいだい黄色おうしょくはなかせてあまかおりをはなち、ジンチョウゲクチナシわせて、日本にっぽんさんだい芳香ほうこうのひとつにかぞえられている[5]はな薬用やくようにもなる。

名称めいしょう

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和名わみょう由来ゆらいは、樹皮じゅひ動物どうぶつサイさい)のあしていることから中国ちゅうごくで「木犀もくせい」と名付なづけられ、しろはなギンモクセイたいして、キンモクセイはなはオレンジしょく赤色あかいろ見立みたててという[6][7]

キンモクセイの中国ちゅうごくめいは「たんかつら[5]で、ぎんかつらギンモクセイ)の変種へんしゅひとつとみられる[5]中国ちゅうごくではたんかつらぎんかつらも、黄白こうはくしょくきむかつらウスギモクセイ)も「かつらはな」という漢字かんじ表記ひょうきいち総括そうかつすることができ[8]たんかつらぎんかつらきむかつらのことをすべてかつらはなした亜種あしゅ変種へんしゅ品種ひんしゅとみられ、分類ぶんるいがくちゅうの「たね」の階級かいきゅうたる。

また、「きむかつらたんかつら」というせつもある[5][注釈ちゅうしゃく 1]かつらはな全体ぜんたい樨属という分類ぶんるいがくちゅうの「ぞく」の階級かいきゅうたり、和製わせい漢語かんごの「きむ木犀もくせい」の文字もじもここからう。

最後さいご漢字かんじの「かつら」については、日本にっぽんでは「カツラ(カツラ)」だけにすが、中国ちゅうごくでは使用しよう範囲はんいひろ漢字かんじであり、「モクセイの仲間なかま」と「トンキンニッケイ(クスノキ全般ぜんぱん」のことをすこともできる[8][5]

分布ぶんぷ

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中国ちゅうごく原産げんさん[9]日本にっぽんには江戸えど時代じだい(17世紀せいきごろ)にかぶだけが渡来とらい[10][5]むすばないため、北海道ほっかいどう沖縄おきなわ以外いがい日本にっぽんちゅうやされた。日本にっぽんには自然しぜん分布ぶんぷはなく[7]にわなどにえられている[6]日本にっぽんにおける栽培さいばいは、北限ほくげん東北とうほく南部なんぶ太平洋たいへいようがわ岩手いわてけん紫波しわぐん矢巾やはばまち[11]日本海にほんかいがわ秋田あきた)、みなみ九州きゅうしゅうまでの範囲はんいとされる[9]

形態けいたい生態せいたい

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常緑じょうりょく広葉樹こうようじゅしょう高木たかぎで、ふつうたかさ4メートル (m) ほどになる[6][5]条件じょうけんければ、たかさ10 mから18 m、みき直径ちょっけいは50センチメートル (cm) から1 mあまりに生長せいちょうする[8]樹皮じゅひあわばい褐色かっしょく[10]菱形ひしがたけたかわ目立めだ[12]老木ろうぼくになると、樹皮じゅひたてけてくる[12]対生たいせい[5]ながめの楕円だえんがたこう披針形ひしんけいである[10][12]えん波打なみうっており[12]、わずかに鋸歯きょしがある[注釈ちゅうしゃく 2]

花期かきあき(9 - 10がつ[6]はなオレンジしょくしょうはなが、葉腋ようえき多数たすうあつまってかせる[10][9]はなかずはギンモクセイよりもおおい。しべが2ほん不完全ふかんぜんしべつ。はな芳香ほうこうはなち、ギンモクセイよりも濃厚のうこうあまかおりで、夕方ゆうがたなどにつよかんじられる[7]芳香ほうこうはギンモクセイよりもつよい。かおりの主成分しゅせいぶんβべーた-イオノンリナロールγがんま-デカラクトン、リナロールオキシド、cis-3-ヘキセノールなど。このうち、γがんま-デカラクトンなどはモンシロチョウなどへの忌避きひ作用さようがあることが判明はんめいしている[13][14][15]

雌雄しゆうかぶ植物しょくぶつで、めすかぶふゆにクコのほどのちいさなけ、じゅくすと紫色むらさきいろになる。日本にっぽんでははなきのゆうかぶしか移入いにゅうされていないためむすばず[10][9]中国ちゅうごくまでかないとることはできない。

冬芽とうがえださきに1 - 4基部きぶ複数個ふくすうこたてなら[12]えださき冬芽とうがで、はるあたらしい[12]

日本にっぽんの「キンモクセイ」は中国ちゅうごくの「たんかつら」に相当そうとうするが、日本にっぽんの「キンモクセイ」と中国ちゅうごくの「たんかつら」が本当ほんとう同一どういつであるか、日本にっぽんのキンモクセイとおな遺伝子いでんしたんかつら本当ほんとう中国ちゅうごく存在そんざいするかどうかは議論ぎろん余地よちがある。そもそもキンモクセイ自体じたいが、日本にっぽんだけで特異とくいてき広範囲こうはんいそだてられているモクセイの変種へんしゅひとつにぎないが、中国ちゅうごくではモクセイとその変種へんしゅかつらはなちゃ原料げんりょうとして重要じゅうよう栽培さいばい植物しょくぶつであり、品種ひんしゅ改良かいりょうによってさまざまな品種ひんしゅされてだい規模きぼ栽培さいばいされている。「たんかつら」に分類ぶんるいされているモクセイの変種へんしゅだけでも、高級こうきゅうかつらはなちゃ原料げんりょうとしてられる大花おおはなたんかつらしゅすなたんかつらはじめとして、大量たいりょう品種ひんしゅがある。日本にっぽんのキンモクセイと完全かんぜんおな遺伝子いでんしつモクセイの変種へんしゅ中国ちゅうごく存在そんざいしない可能かのうせいもあり、その観点かんてんから、「キンモクセイは中国ちゅうごくではなく日本にっぽんされた」というせつもある。

利用りよう

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桂花茶(左)と桂花醤(右) 桂花茶(左)と桂花醤(右)
かつらはなちゃひだり)とかつらはなひしおみぎ

おも常緑じょうりょく庭木にわき街路がいろじゅとしてこのまれ、観賞かんしょうようえられている[7]果実かじつではなくはなでたりべたりする植物しょくぶつで、しかも受粉じゅふんさせてたねらなくても簡単かんたんやせるので、庭木にわき街路がいろじゅとしては、はなすくないめすかぶよりもはな沢山たくさんゆうかぶえられることが中国ちゅうごくでもほとんどである。

中国ちゅうごくではギンモクセイとともに花冠かかん乾燥かんそうさせて白酒しろざけけたり(かつらはなひねしゅとなる)、ちゃぜてかつらはなちゃばれるはなちゃにしたり[5]みつにしてかつらはなひしおばれる香味料こうみりょう仕立したてたりする。また、かつらはなかに芙蓉ふようかに別名べつめい)、かつら花鶏あとりいと蛋、かつらはな豆腐とうふかつら花火はなびももなどのように、鶏卵けいらんいろをキンモクセイのはないろ見立みたててづけられたたまご料理りょうりおおく、正月しょうがつよう菓子かしであるかつらはなねん糕のようにキンモクセイのはな砂糖さとうけをかざるなど実際じっさいにこのはな使つかわれる料理りょうりもある[16]

うえ

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キンモクセイはかおりが樹木じゅもく代表だいひょうしゅでよくられ、大気たいき汚染おせん潮風しおかぜにもつよく、みにえ、日陰ひかげでもそだつのでふるくから栽培さいばいされている[10]だい高木たかぎとはならないため比較的ひかくてきせまいところにもえられている[17]。やや日陰ひかげこの性質せいしつがあり[9]庭木にわきとしては、はん日陰ひかげのようなところにえるとく、日当ひあたりがわるいとはなきがわるくなり、日当ひあたりがすぎるとけをこす。すぐにおおきくなってがたくずれるので、すうねんに1かいおおきくむとい。剪定せんていは、はなわってから新芽しんめよくはるまでにおこなう。害虫がいちゅうは、なつハダニくことがあるので注意ちゅういうえ栽の適期てっきは、2がつ下旬げじゅん - 3がつ上旬じょうじゅん、6がつ下旬げじゅん - 7がつ中旬ちゅうじゅん、9 - 10月とされている[9]

日本にっぽんにはかぶしかないため、やす[7]丈夫じょうふそだてやすく、はなたのしめるので、庭木にわきでも鉢植はちうえでも人気にんきがある。だと、開花かいかまでははやくても5ねんはかかるが、なえってきてえれば、はやければえたとしはなく。すぐにおおきくなるので、鉢植はちうえよりもにわえるほうてきしているが、鉢植はちうえにするならなるべくおおきいはちえる。

キンモクセイのはなあまめでしっかりしたつよかおりであることから、日本にっぽんにおいてしき便所べんじょ主流しゅりゅう悪臭あくしゅうはっするものがおおかった時期じきには、そのちかくにえられることもあった[18]。そのことから1970年代ねんだい初頭しょとうから1990年代ねんだい前半ぜんはんまでキンモクセイをしたかおりが、トイレ芳香ほうこうざいとして主流しゅりゅう利用りようされていたため、一部いちぶ年齢ねんれいそうにおいてはトイレを連想れんそうさせることがある[18]

あき季語きごである。

薬用やくよう

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はな薬用やくようにする。はなには、ろうしつオスマンαあるふぁ-ツヨンなどの精油せいゆグルコースフルクトースマニトールステアリンさんなどふくまれている[6]精油せいゆには、味覚みかく神経しんけい刺激しげきして唾液だえき胃液いえき分泌ぶんぴつ促進そくしんさせる芳香ほうこうせいけん作用さようがあり、血液けつえき循環じゅんかんにも役立やくだつといわれている[6]精油せいゆ以外いがい成分せいぶんには、滋養じよう保健ほけん効果こうかがあるといわれる[6]

滋養じよう保健ほけん食用しょくよう増進ぞうしん乾燥かんそうさせたはなして、フラワーティー(はなちゃ)としてもちいる[6]てい血圧けつあつ不眠症ふみんしょうには、焼酎しょうちゅう1リットルになまはな150グラム乾燥かんそうはな場合ばあいは30グラムの割合わりあいひたし、冷暗所れいあんしょに3かげつ保存ほぞんしてからかすをのぞいて木犀もくせいはなしゅをつくり、就寝しゅうしんまえさかずき1はいむといとされる[6]

文化ぶんか

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中国ちゅうごくでは、つきなかにはキンモクセイのようなかおりのよい巨木きょぼくがあるとしんじられていた[5]日本にっぽんではこのはなしもとにして、和歌わか文学ぶんがくに「つきかつら」がよくてくる[5]

キンモクセイの花言葉はなことばは、「謙遜けんそん」「真実しんじつ」とされる[5]

都道府県とどうふけん市区しく町村ちょうそん指定していしている自治体じちたい

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脚注きゃくちゅう

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ たんかつら」をウスギモクセイの漢字かんじとする文献ぶんけんもある[5]
  2. ^ ギンモクセイはキンモクセイよりわずかに鋸歯きょしつよいので、そこが見分みわけるポイントのひとつだが、どちらもヒイラギモクセイほどはっきりした鋸歯きょしはなく、見分みわけづらいこともある。

出典しゅってん

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  1. ^ 米倉よねくら浩司こうじ梶田かじたただし (2003-). “Osmanthus fragrans Lour. var. aurantiacus Makino キンモクセイ(標準ひょうじゅん”. BG Plants 和名わみょう学名がくめいインデックス(YList). 2023ねん3がつ17にち閲覧えつらん
  2. ^ 米倉よねくら浩司こうじ梶田かじたただし (2003-). “Osmanthus fragrans Lour. var. aurantiacus Makino f. aurantiacus (Makino) P.S.Green キンモクセイ(狭義きょうぎ”. BG Plants 和名わみょう学名がくめいインデックス(YList). 2023ねん3がつ17にち閲覧えつらん
  3. ^ 米倉よねくら浩司こうじ梶田かじたただし (2003-). “Osmanthus aurantiacus (Makino) Nakai キンモクセイ(シノニム)”. BG Plants 和名わみょう学名がくめいインデックス(YList). 2023ねん3がつ17にち閲覧えつらん
  4. ^ 米倉よねくら浩司こうじ; 梶田かじたただし (2003-). “BG Plants簡易かんい検索けんさく結果けっか表示ひょうじ”. 「BG Plants 和名わみょう学名がくめいインデックス」(YList). 千葉大学ちばだいがく. 2013ねん10がつ16にち閲覧えつらん
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n 田中たなかきよし 2011, p. 148.
  6. ^ a b c d e f g h i 田中たなか孝治こうじ 1995, p. 135.
  7. ^ a b c d e 辻井つじいたちいち 1995, p. 280.
  8. ^ a b c 辻井つじいたちいち 1995, p. 281.
  9. ^ a b c d e f やま﨑誠 2019, p. 42.
  10. ^ a b c d e f 平野ひらの隆久たかひさ監修かんしゅう 永岡書店ながおかしょてんへん 1997, p. 150.
  11. ^ 盛岡もりおかタイムス掲載けいさい記事きじより”. (2020ねん10がつ9にち) 
  12. ^ a b c d e f 鈴木すずき庸夫みちお高橋たかはしふゆやすのべ尚文なおふみ 2014, p. 52.
  13. ^ 広島大学ひろしまだいがく生物せいぶつけん科学かがく研究けんきゅう化学かがく生態せいたいがく研究けんきゅうしつ. “チョウ成虫せいちゅうえさ行動こうどう”. 研究けんきゅう内容ないよう紹介しょうかい. 広島ひろしま大学だいがく. 2011ねん12月24にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2013ねん10がつ16にち閲覧えつらん
  14. ^ 大村おおむらしょうチョウ成虫せいちゅうえさ行動こうどう嗅覚きゅうかく情報じょうほう物質ぶっしつ」『比較ひかく生理せいり生化学せいかがくだい23かんだい3ごう日本にっぽん比較ひかく生理せいりせい学会がっかい、2006ねん、134-142ぺーじdoi:10.3330/hikakuseiriseika.23.1342018ねん9がつ28にち閲覧えつらん 
  15. ^ Hisashi Ômura; Keiichi Honda, Nanao Hayashi (2000). “Floral Scent of Osmanthus fragrans Discourages Foraging Behavior of Cabbage Butterfly, Pieris rapae”. Journal of Chemical Ecology英語えいごばん 26 (3): 655-666. doi:10.1023/A:1005424121044. ISSN 0098-0331. 
  16. ^ 全国ぜんこく調理ちょうり養成ようせい施設しせつ協会きょうかいへん へん調理ちょうり用語ようご辞典じてん』(改訂かいてい全国ぜんこく調理ちょうり養成ようせい施設しせつ協会きょうかい調理ちょうり栄養えいよう教育きょういく公社こうしゃ発売はつばい)、1998ねんISBN 4-924737-35-6 
  17. ^ やま﨑誠 2019, p. 43.
  18. ^ a b 田幸たこう和歌子わかこ (2006ねん10がつ24にち). “トイレの「キンモクセイのかおり」が衰退すいたいした理由りゆう”. Excite Bit コネタ. エキサイト. 2013ねん10がつ16にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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