シノーン

シノーン（古希こき: Σίνων, Sinōn）はギリシア神話しんわの人物じんぶつで、アエシモスの息子むすこ。アエシモスはアウトリュコスの息子むすこなので、系譜けいふ上じょうはオデュッセウスやイアーソーンの従兄弟いとことなる。しかし、オデュッセウスと同おなじく、シーシュポスの息子むすこであるとも言いわれる。彼かれはアカイア勢いきおいとしてトロイア戦争せんそうに参加さんかし、トロイアの木馬もくば作戦さくせんで身体しんたいを張はって活躍かつやくした。

小惑星しょうわくせい (3391) Sinonはシノーンの名前なまえにちなんで命名めいめいされた^[1]。

スミュルナのコイントスによる描写びょうしゃ

トローイア勢ぜいがギリシア軍ぐんの野営やえいを攻撃こうげきしようとした時とき、野営やえいから煙けむりが立たっているのが見みえたので、注意深ちゅういぶかくそれに近ちかづいた。そこにギリシア軍ぐんの姿すがたは無なく、巨大きょだいな木馬もくばとその脇わきに立たつシノーンだけが残のこっていた。野営やえいはすべて放棄ほうきされ、彼かれが一人ひとりで煙けむりを起おこしトローイア勢ぜいを呼よび寄よせていたのが分わかったので、トローイア軍ぐんは彼かれを取とり囲かこんで問といただした。しかし彼かれは答こたえなかったので、拷問ごうもんにかけた。最終さいしゅう的てきに彼かれは、ギリシア人じんは撤退てったいし、木馬もくばはアテーナーに捧ささげたものであることを話はなした。彼かれの話はなしによると、オデュッセウスはシノーンを生贄いけにえにしようとしたが、シノーンは沼地ぬまちに逃にげた。彼かれを見みつけるのを諦あきらめ、軍ぐんは撤退てったいしたので、シノーンは木馬もくばのところに戻もどったという。トローイア人じんはこの話はなしを信しんじたが、ラーオコオーンだけはこれを疑うたがった。トローイア人じんはシノーンを気きの毒どくに思おもい神かみの怒いかりも恐おそれたので、木馬もくばをトローイアに運はこんだ。

神話しんわ

彼かれはギリシア軍ぐんを裏切うらぎったように装よそおいトローイアの捕虜ほりょとなった。そして、ギリシア人じんがトローイアに巨大きょだいな木馬もくばを置おいて去さっていったのは、ギリシアへの帰還きかんの旅たびが上手うまくいくように神かみに捧ささげたものであると説明せつめいした。そして何故なぜこれほど巨大きょだいなのかというと、トローイア市内しないにこの木馬もくばが運はこび込こまれると、この先さきトローイアをアカイア勢ぜいが攻撃こうげきすることがあっても、トローイアは決けっして陥落かんらくしなくなるからであると言いった。トローイア人じんはこれを聞きき納得なっとくし、市内しないに運はこぶのに妨さまたげになった城門じょうもんを破壊はかいし、木馬もくばを町まちの中心ちゅうしん部ぶまで運はこんだ。この時ときカッサンドラとラーオコオーンがそれについて反対はんたいしたが、前者ぜんしゃは予言よげんを人々ひとびとが信しんじない運命うんめいにあったため無視むしされ、後者こうしゃは神かみの放はなった海うみの蛇へびの怪物かいぶつに息子むすこを食くわれた。巨大きょだいな木馬もくばの中なかにはギリシア軍ぐんの兵士へいしたちが潜ひそみ、夜よるになると馬うまから出でて城壁じょうへきの扉とびらをあけ、退却たいきゃくしたように見みせかけていた他ほかのアカイア勢ぜいを引ひき入いれたので、トローイアの運命うんめいは決定けっていした。