スイレン属 ぞく (スイレンぞく、学名 がくめい : Nymphaea ) は、スイレン科 か に属 ぞく する属 ぞく の1つである。多年生 たねんせい の水草 みずくさ であり、地下茎 ちかけい から長 なが い葉柄 ようへい を伸 の ばし、水面 すいめん に浮水葉 は を浮 う かべる。花 はな は大型 おおがた で水面 すいめん 上 じょう または水上 すいじょう に抜 ぬ け出 で て開花 かいか する (図 ず 1)。4枚 まい の萼 がく 片 へん と多数 たすう の花弁 はなびら ・雄 お しべ 、1個 いっこ の雌 め しべ をもち、花弁 はなびら の色 いろ は白色 はくしょく 、黄色 おうしょく 、赤色 あかいろ 、紫色 むらさきいろ など。
スイレン属 ぞく は世界中 せかいじゅう に分布 ぶんぷ し、50種 しゅ ほどが知 し られる。日本 にっぽん にはただ1種 しゅ 、ヒツジグサ (未草 ひつじぐさ )のみが自生 じせい する。さまざまな種 たね が観賞 かんしょう 用 よう に栽培 さいばい され、また多数 たすう の園芸 えんげい 品種 ひんしゅ が作出 さくしゅつ されている。園芸 えんげい 用 よう のスイレンは、温帯 おんたい スイレンと熱帯 ねったい スイレンに大別 たいべつ される[3] 。スイレン (睡蓮 すいれん ) の名 な は本来 ほんらい はヒツジグサの漢 かん 名 めい であるが、日本 にっぽん ではスイレン属 ぞく の水草 みずくさ の総称 そうしょう として用 もち いられる[3] 。英名 えいめい では water lily (water-lily, waterlily) とよばれるが、一部 いちぶ の種 たね は lotus ともよばれる[注 ちゅう 1] 。属 ぞく 名 めい の Nymphaea は、「水 みず の妖精 ようせい 」を意味 いみ するギリシア語 ご の νυμφαία (nymphaia ) に由来 ゆらい する[5] 。
2a . スイレン属 ぞく は地下茎 ちかけい から葉柄 ようへい や花 はな 柄 がら が伸 の びている
2c . 地下茎 ちかけい の断面 だんめん (キバナスイレン)
多年生 たねんせい の浮葉植物 しょくぶつ であり、地下茎 ちかけい から根 ね を張 は り、そこから長 なが い葉柄 ようへい が生 しょう じ、浮水葉 は が水面 すいめん に浮 う かんでいる[2] [3] (上 うえ 図 ず 2a, b)。地下茎 ちかけい の発達 はったつ 程度 ていど は種 たね によって異 こと なり、無 む 分 ぶん 枝 えだ または分 ぶん 枝 えだ 、短 みじか い地下茎 ちかけい が直立 ちょくりつ するものから、長 なが い地下茎 ちかけい が底 そこ 泥中 でいちゅう を横走 よこはしり するものまでいる[3] [5] [6] (上 うえ 図 ず 2c)。ときに匍匐 ほふく 枝 えだ による栄養 えいよう 繁殖 はんしょく が見 み られ、また地下茎 ちかけい の分断 ぶんだん による栄養 えいよう 繁殖 はんしょく を行 おこな う種 たね もいる[7] 。葉 は は水中 すいちゅう に留 と まる沈水葉 ば (下図 したず 3d) または水上 すいじょう に突 つ き出 で る抽水葉 は であることもあるが、多 おお くの葉 は は葉 は 身 み が水面 すいめん に浮 う かぶ浮水葉 は である[2] [5] [6] (上 うえ 図 ず 2b, 下図 したず 3a)。葉 は 身 み の基部 きぶ は深 ふか く切 き れ込 こ んで心 しん 形 がた または矢 や じり形 がた であるが (上 うえ 図 ず 2a, b, 下図 したず 3a, b)、葉柄 ようへい が葉 は 裏 うら について楯 だて 状 じょう になっていることもある[2] [3] [6] 。葉 は 縁 えん は全 ぜん 縁 えん または鋸歯 きょし がある[6] [5] 。葉脈 ようみゃく は放射状 ほうしゃじょう (掌 てのひら 状 じょう ) またはやや羽 はね 状 じょう [5] [6] (下図 したず 3b)。
3c . 若 わか い葉 は は内 うち 巻 まき (セイヨウスイレン)
花 はな は地下茎 ちかけい から生 しょう じた長 なが い花 はな 柄 がら の先端 せんたん に1個 いっこ ずつつき、水面 すいめん または水上 すいじょう へ抜 ぬ け出 で て開花 かいか する[3] [5] [6] (上 うえ 図 ず 2a, b)。萼 がく 片 へん は4枚 まい 、しばしば果 はて 時 じ まで残 のこ る宿 やど 存 そん 性 せい である[2] [3] [5] [6] (下図 したず 4a, d)。花弁 はなびら は5枚 まい から多数 たすう (まれに欠如 けつじょ )、らせん状 じょう またはやや輪状 りんじょう につく[2] [5] [6] (下図 したず 4a, c)。色 いろ は白色 はくしょく 、黄色 おうしょく 、紅色 こうしょく 、紫色 むらさきいろ 、青色 あおいろ など[5] 。雄 お しべ (雄蕊 おしべ ) は多数 たすう 、子房 しぼう 側面 そくめん につき、外側 そとがわ の雄 お しべはしばしば葉状 ようじょう で花弁 はなびら と連続 れんぞく 的 てき [3] [5] [6] (下図 したず 4a, b, c, e)。葯 は内向 ないこう または側 がわ 向 むこう [3] 。ときに葯隔が突出 とっしゅつ する[5] (下図 したず 4c)。心 しん 皮 がわ は多数 たすう 、輪 わ 生 む し、合着 あいぎ して1個 いっこ の雌 め しべ (雌蕊 めしべ ) を構成 こうせい する[3] (下図 したず 4c)。柱頭 ちゅうとう 盤 ばん を形成 けいせい し、心 こころ 皮 かわ 数 すう の柱頭 ちゅうとう がある[3] [5] 。柱頭 ちゅうとう の外側 そとがわ には偽 にせ 柱頭 ちゅうとう とよばれる突起 とっき があり、雄 ゆう 性 せい 期 き には内 うち 曲 きょく して柱頭 ちゅうとう を覆 おお う[3] [6] (下図 したず 4b)。子房 しぼう は中位 ちゅうい 、心 こころ 皮 かわ 数 すう の部屋 へや に分 わ かれている[3] 。面 めん 生 せい 胎座であり、子房 しぼう 室 しつ の内面 ないめん 全体 ぜんたい に多数 たすう の胚珠 はいしゅ がつく[2] [3] (下図 したず 4d)。果実 かじつ は水中 すいちゅう で熟 じゅく し、液 えき 果状 はたしじょう 、不規則 ふきそく に裂 きれ 開 ひらけ し、種子 しゅし を放出 ほうしゅつ する[3] [2] [6] (下図 したず 4e)。種子 しゅし は球状 きゅうじょう から楕円 だえん 形 がた 、仮 かり 種皮 しゅひ (種 たね 衣 ころも ) で覆 おお われる[2] [3] [5] [6] 。染色 せんしょく 体 たい の基本 きほん 数 すう は x = 14[5] 。
4a . 最 さい 外輪 がいりん に4枚 まい の萼 がく 片 へん がある (ニオイスイレン)
4b . 外側 そとがわ の雄 お しべの花 はな 糸 いと は葉状 ようじょう であり、柱頭 ちゅうとう は偽 にせ 柱頭 ちゅうとう で覆 おお われている (ニオイスイレン)
4e . 果実 かじつ には雄 お しべがついていた跡 あと がある (セイヨウスイレン)
5 . セイヨウスイレン (ドイツ )
世界中 せかいじゅう (南北 なんぼく アメリカ 、アフリカ 、ユーラシア 、オーストラリア ) の熱帯 ねったい から温 ゆたか 帯域 たいいき に分布 ぶんぷ し、湖沼 こしょう や緩 ゆる やかな河川 かせん などに生育 せいいく している[2] (図 ず 5)。特異 とくい な環境 かんきょう として、Nymphaea thermarum はルワンダ の温泉 おんせん (水温 すいおん は約 やく 36℃) から報告 ほうこく されたが、自生 じせい 地 ち では土地 とち 開発 かいはつ によって2009年 ねん に絶滅 ぜつめつ した[2] [8] 。
花 はな は基本 きほん 的 てき に雌 めす 性 せい 先 さき 熟 じゅく (先 さき に雌 め しべ が成熟 せいじゅく し、その後 ご に雄 お しべ が成熟 せいじゅく することで自家 じか 受粉 じゅふん を避 さ ける) であるが、自家 じか 受粉 じゅふん を行 おこな うものもいる[7] 。開花 かいか 時間 じかん は種 しゅ によって異 こと なり、昼間 ひるま (午前 ごぜん 中 ちゅう 、午後 ごご 、午前 ごぜん から午後 ごご ) に開花 かいか する種 しゅ と夜間 やかん (0時 じ ごろまで、朝 あさ まで) に開花 かいか する種 たね がいる[7] 。花 はな の匂 にお いは、種 たね によって無臭 むしゅう のものから強 つよ い匂 にお いをもつものまである。特 とく に夜間 やかん に開花 かいか する種 たね は強 つよ い匂 にお いを発 はっ し、主 おも に甲虫 かぶとむし によって花粉 かふん 媒介 ばいかい される[7] [9] 。一方 いっぽう 、昼間 ひるま に開花 かいか する種 たね は主 おも にハチ目 め やハエ目 め に花粉 かふん 媒介 ばいかい される[7] 。
人間 にんげん との関 かか わり[ 編集 へんしゅう ]
6 . クロード・モネ 『睡蓮 すいれん 』
フリースラント の旗 はた (英語 えいご 版 ばん ) 。スイレンの紋章 もんしょう (英語 えいご 版 ばん ) が使 つか われている。
スイレンは美 うつく しい花 はな をもつため、広 ひろ く観賞 かんしょう 用 よう に栽培 さいばい されており、またさまざまな栽培 さいばい 品種 ひんしゅ が作出 さくしゅつ されている[5] 。スイレンは古代 こだい エジプトの昔 むかし から人間 にんげん の関心 かんしん を引 ひ き、装飾 そうしょく に用 もち いられたり、信仰 しんこう の対象 たいしょう ともなっていた。クロード・モネ はスイレンの絵 え を数多 かずおお く描 えが いたことが知 し られている (図 ず 6)。
観賞 かんしょう 用 よう スイレン[ 編集 へんしゅう ]
観賞 かんしょう 用 よう のスイレンは、耐寒 たいかん 性 せい の有無 うむ に基 もと づいて温帯 おんたい スイレンと熱帯 ねったい スイレンに大別 たいべつ されることが多 おお い[3] [10] [11] 。
温帯 おんたい スイレン (温帯 おんたい 性 せい スイレン[3] , hardy water lilies) は耐寒 たいかん 性 せい があり、地下茎 ちかけい が直立 ちょくりつ または横走 よこはしり [3] [10] 。葉 は は全 ぜん 縁 えん 、花 はな は水面 すいめん に浮 う かび、昼 ひる 咲 さ きである。主 おも な原種 げんしゅ としてセイヨウスイレン (Nymphaea alba ) やニオイスイレン (Nymphaea odorata ) があり、ヒツジグサ もしばしば交配 こうはい に用 もち いられる[3] 。以下 いか に温帯 おんたい スイレンの園芸 えんげい 品種 ひんしゅ の一部 いちぶ を示 しめ す[10] [12] 。
'アーカンシェル' (Nymphaea 'Arc-En-Ciel') (下図 したず 7a)
花弁 はなびら は細 ほそ く、淡 あわ いピンク色 ぴんくいろ 。開花 かいか 2日 にち 目 め には花色 はないろ がより薄 うす くなる。葉 は に白 しろ やピンク色 ぴんくいろ の斑 まだら が入 はい る。
'ダーウィン' (Nymphaea 'Darwin')
花弁 はなびら はピンク色 ぴんくいろ 、基部 きぶ ほど赤 あか みが強 つよ く、枚数 まいすう が多 おお い。
'エスカボークル' (Nymphaea 'Escarboucle') (下図 したず 7b)
花弁 はなびら は鮮 あざ やかな赤 あか 。
'ジェイムズ・ブライドン' (Nymphaea 'James Brydon') (下図 したず 7c)
花弁 はなびら の幅 はば が広 ひろ く、濃 こ いピンク色 ぴんくいろ 、枚数 まいすう が多 おお い。暑 あつ さにやや弱 よわ い。
'オドラータ・スルフレア' (Nymphaea 'Odorata Sulphurea') (下図 したず 7d)
花弁 はなびら は細長 ほそなが く、白色 はくしょく 。
'ピーチ・グロウ' (Nymphaea 'Peach Glow') (下図 したず 7e)
花弁 はなびら はピンク色 ぴんくいろ を帯 お びた淡 あわ いクリーム色 しょく 、枚数 まいすう が多 おお い。真夏 まなつ には花弁 はなびら が傷 いた みやすい。
'オールモスト・ブラック' (Nymphaea 'Almost Black')
温帯 おんたい スイレンと熱帯 ねったい スイレンの交配 こうはい 種 しゅ 。黒 くろ いスイレンと呼 よ ばれ、花 はな の中心 ちゅうしん が赤黒 あかぐろ い。
熱帯 ねったい スイレン (熱帯 ねったい 性 せい スイレン[3] , tropical water lilies) は耐寒 たいかん 性 せい がなく、地下茎 ちかけい は塊状 かいじょう で直立 ちょくりつ する[3] [11] 。葉 は は鋸歯 きょし があるものが多 おお く、花 はな は水面 すいめん から抜 ぬ き出 で て咲 さ く。昼 ひる 咲 さ き (day blooming) の種 たね と夜 よる 咲 さ き (night blooming) の種 たね がある。主 おも な原種 げんしゅ としてアカバナスイレン (Nymphaea rubra ) や Nymphaea colorata がある[3] [11] 。生育 せいいく に適 てき した水温 すいおん は25℃以上 いじょう であり、15℃以下 いか になると生育 せいいく できないため、冬 ふゆ には加 か 温 あつし するか休眠 きゅうみん させる必要 ひつよう がある[11] 。以下 いか に熱帯 ねったい スイレンの園芸 えんげい 品種 ひんしゅ の一部 いちぶ を示 しめ す[11] [12]
'アルバート・グリーンバーグ' (Nymphaea 'Albert Greenberg') (下図 したず 8a)
昼 ひる 咲 さ き性 せい 。花弁 はなびら の基部 きぶ がオレンジ色 しょく で、外 そと に向 む かってピンク色 ぴんくいろ が濃 こ くなる。
'ミッドナイト' (Nymphaea 'Midnight') (下図 したず 8b)
昼 ひる 咲 さ き性 せい 。花弁 はなびら は細長 ほそなが く濃紫 こむらさき 色 しょく 。
'ペルシアンライラック' (Nymphaea 'Persian Lilac') (下図 したず 8c)
昼 ひる 咲 さ き性 せい 。中 ちゅう 輪 わ 、花弁 はなびら はピンク色 ぴんくいろ で数 かず が多 おお い。
'ピンク・パール' (Nymphaea 'Pink Pearl')
昼 ひる 咲 さ き性 せい 。中 ちゅう 輪 わ 、花弁 はなびら は淡 あわ いピンク色 ぴんくいろ 。
'サザン・チャーム' (Nymphaea 'Southern Charm') (下図 したず 8d)
昼 ひる 咲 さ き性 せい 。花弁 はなびら は青色 あおいろ で基部 きぶ が淡 あわ 黄色 きいろ 。
'ティナ' (Nymphaea 'Tina')
昼 ひる 咲 さ き性 せい 。花弁 はなびら は明 あか るい青 あお 紫色 むらさきいろ だが、条件 じょうけん によって色 いろ は変化 へんか しやすい。ムカゴができやすい。
'レッド・フレア' (Nymphaea 'Red Flare') (下図 したず 8e)
夜 よる 咲 さ き性 せい 。花弁 はなびら は濃 こ 赤色 あかいろ 。葉 は は濃 こ いブロンズ色 しょく 。
日本 にっぽん での栽培 さいばい 史 し [ 編集 へんしゅう ]
スイレン属 ぞく としてはヒツジグサ のみが自生 じせい していた日本 にっぽん に、外国 がいこく 産 さん スイレンの輸入 ゆにゅう が始 はじ まったのは明治 めいじ 時代 じだい である。アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく で園芸 えんげい を学 まな んだ河瀬 かわせ 春太郎 はるたろう が東京 とうきょう に開 ひら いた「妙 みょう 華園 はなぞの 」で30種 しゅ 以上 いじょう を育 そだ てた。大正 たいしょう 時代 じだい には同好 どうこう 会 かい がつくられるほど愛好 あいこう 者 しゃ が増 ふ えた。二子 ふたご 玉川 たまがわ 園 えん (東京 とうきょう )の一部 いちぶ だった「五島 ごしま ローズガーデン」にもスイレン池 ち があり、運営 うんえい 母体 ぼたい である東急 とうきゅう 電鉄 でんてつ の鉄道 てつどう 駅 えき にちなんで命名 めいめい された品種 ひんしゅ (たまプラーザ 、さぎぬま 、青葉台 あおばだい )も育成 いくせい された。日本 にっぽん 独自 どくじ の品種 ひんしゅ は、枯死 こし や太平洋戦争 たいへいようせんそう で絶 た えたものもある[13] 。
スイレン属 ぞく の種 たね は広 ひろ く栽培 さいばい されているため、本来 ほんらい 分布 ぶんぷ していない地域 ちいき に帰化 きか し、繁茂 はんも して環境 かんきょう の悪化 あっか や自生 じせい 種 しゅ の生育 せいいく を阻害 そがい することが世界 せかい 各地 かくち で報告 ほうこく されている[14] [15] [16] 。日本 にっぽん では、スイレンの園芸 えんげい 種 しゅ は生態 せいたい 系 けい 被害 ひがい 防止 ぼうし 外来 がいらい 種 しゅ の重点 じゅうてん 対策 たいさく 外来 がいらい 種 しゅ に指定 してい されている[17] 。また、このような外来 がいらい スイレンの除去 じょきょ が呼 よ びかけられている地域 ちいき もある[18] 。
食用 しょくよう ・薬用 やくよう [ 編集 へんしゅう ]
9 . ルリスイセンの花 はな は鎮静 ちんせい 剤 ざい などに利用 りよう されていた[19]
スイレン属 ぞく のいくつかの種 たね (ヨザキスイレン 、ルリスイレン、Nymphaea gigantea など) の地下茎 ちかけい や葉柄 ようへい 、果実 かじつ 、種子 しゅし は、食用 しょくよう (ときに救荒 きゅうこう 食 しょく ) とされることがある (アフリカ 、インド 、中国 ちゅうごく 、フィリピン 、オーストラリア など)[20] 。ただしスイレン属 ぞく はアルカロイド を含 ふく んでいることがあり、食用 しょくよう とする際 さい には前 ぜん 処理 しょり を必要 ひつよう とする。
古代 こだい エジプトの頃 ころ からスイレンは生薬 きぐすり とされており、現在 げんざい でも利用 りよう されることがある[19] [21] (図 ず 9)。
古代 こだい エジプト文明 ぶんめい はナイル川 がわ 河畔 かはん に花開 はなひら いたが、ナイル川 がわ 流域 りゅういき にはヨザキスイレン (Nymphaea lotus ) やルリスイレン (Nymphaea nouchali var. caerulea ) が生育 せいいく しており、古 ふる くから人間 にんげん に関 かか わってきた。特 とく にルリスイレンは夜明 よあ けに開花 かいか することから、太陽 たいよう 神 しん の誕生 たんじょう 、再生 さいせい 、来世 らいせ 信仰 しんこう と結 むす びつき、さまざまな装飾 そうしょく に用 もち いられた[22] [23] (下図 したず 10a–e)。またマヤ文明 ぶんめい でも、Nymphaea ampla がさまざまな装飾 そうしょく に用 もち いられていた[24] (下図 したず 10f)。
10a .
手 て にスイレンの
花 はな を
持 も つ
男 おとこ (
紀元前 きげんぜん 15
世紀 せいき 、
エジプト )
10b . スイレンの
台座 だいざ 上 じょう の
ツタンカーメン 像 ぞう (
紀元前 きげんぜん 14
世紀 せいき 、エジプト)
10c . スイレンの花 はな 型 がた のカップ (紀元前 きげんぜん 13世紀 せいき 頃 ごろ 、エジプト)
10d . スイレンの花 はな を表 あらわ す装飾 そうしょく 品 ひん (紀元前 きげんぜん 1070年 ねん –664年 ねん 頃 ごろ 、エジプト)
10f . Water Lily Jaguar を
描 えが いた
皿 さら (7–10
世紀 せいき 、
マヤ文明 ぶんめい 古典 こてん 期 き )
系統 けいとう と分類 ぶんるい [ 編集 へんしゅう ]
スイレン属 ぞく は、近 きん 縁 えん のコウホネ属 ぞく やバルクラヤ属 ぞく 、オニバス属 ぞく 、オオオニバス属 ぞく と共 とも にスイレン科 か に分類 ぶんるい される[25] [26] 。スイレン科 か は、現生 げんなま 被子植物 ひししょくぶつ の中 なか では極 きわ めて初期 しょき に他 た と分 わ かれた基部 きぶ 被子植物 ひししょくぶつ の1群 ぐん であることが明 あき らかとなっている[25] [26] 。
スイレン科 か の中 なか では、スイレン属 ぞく はオニバス属 ぞく +オオオニバス属 ぞく に近 きん 縁 えん である。さらに分子 ぶんし 系統 けいとう 学 がく 的 てき 研究 けんきゅう からは、オニバス属 ぞく +オオオニバス属 ぞく が系統的 けいとうてき にスイレン属 ぞく の中 なか に含 ふく まれることが示唆 しさ されている[27] [28] (下図 したず 11)。そのため、分類 ぶんるい 学 がく 的 てき にオニバス属 ぞく とオオオニバス属 ぞく に属 ぞく する種 たね をスイレン属 ぞく に含 ふく めることが提唱 ていしょう されている[26] 。
またオンディネア属 ぞく (Ondinea ) は特異 とくい な花 はな (花弁 はなびら の欠如 けつじょ など) をもつため独立 どくりつ 属 ぞく とされていたが、系統 けいとう 的 てき にスイレン属 ぞく (Anecphya 亜 あ 属 ぞく ) に含 ふく まれることが明 あき らかとなっており、スイレン属 ぞく に組 くみ 換 か えられた[29] [30] 。
スイレン科 か
コウホネ亜 あ 科 か
コウホネ属 ぞく
スイレン亜 あ 科 か
バルクラヤ属 ぞく
スイレン属 ぞく Nymphaea 亜 あ 属 ぞく
スイレン属 ぞく Anecphya 亜 あ 属 ぞく (オンディネア属 ぞく を含 ふく む)
スイレン属 ぞく Brachyceras 亜 あ 属 ぞく
スイレン属 ぞく Hydrocallis 亜 あ 属 ぞく
スイレン属 ぞく Lotos 亜 あ 属 ぞく
11 . スイレン科 か の系統 けいとう 仮説 かせつ の1例 れい [27] [28] [29]
スイレン属 ぞく には50種 しゅ ほどが知 し られ、5亜 あ 属 ぞく に分類 ぶんるい されている[1] [2] [27] (下表 かひょう )。
表 ひょう 1 . スイレン属 ぞく の種 たね までの分類 ぶんるい 体系 たいけい の一 いち 例 れい [1] [2] [27]
セイヨウスイレン
セイヨウスイレン
セイヨウスイレン
ルリスイレン
アカバナスイレン
ヨザキスイレンの沈水葉 は
浮水葉 は
葉柄 ようへい 横断 おうだん 面 めん
スイレンを
描 えが いた
壷 つぼ (
古代 こだい エジプト)
スイレンを
描 えが いたカバの
像 ぞう (
古代 こだい エジプト、
紀元前 きげんぜん 20
世紀 せいき )
トイレとスイレン
模様 もよう の
木製 もくせい 蓋 ぶた (
古代 こだい エジプト、
紀元前 きげんぜん 15
世紀 せいき 頃 ごろ )
スイレンのつぼみをもとにした
紋様 もんよう の
鋺 (
アケメネス朝 あさ 、
紀元前 きげんぜん 6
世紀 せいき )
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