タブク (小銃しょうじゅう)

タブク
	弾倉だんそうを取とり外はずした状態じょうたいのタブク
タブク
種類しゅるい	軍用ぐんよう小銃しょうじゅう（英語えいご版ばん）
製造せいぞう国こく	イラク共和きょうわ国こく
設計せっけい・製造せいぞう	アル・カーディシーヤ機関きかん（国有こくゆう企業きぎょう）
年代ねんだい	1980年代ねんだい
仕様しよう
種別しゅべつ	アサルトライフル
口径こうけい	7.63 mm
銃身じゅうしん長ちょう	41.5 cm（16.3 in）
使用しよう弾薬だんやく	7.62x39mm弾だん
装弾そうだん数すう	20/30発はつ（箱はこ型がた弾倉だんそう）
作動さどう方式ほうしき	ガス圧あつ作動さどう方式ほうしき
全長ぜんちょう	90 cm（35.43 in）
重量じゅうりょう	3.75 kg
歴史れきし
製造せいぞう期間きかん	1980年ねん - 2003年ねん
配備はいび先さき	運用うんよう地域ちいきを参照さんしょう
関連かんれん戦争せんそう・紛争ふんそう	イラン・イラク戦争せんそう; 湾岸わんがん戦争せんそう; イラク戦争せんそう
バリエーション	製品せいひん各種かくしゅを参照さんしょう
製造せいぞう数すう	不明ふめい
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タブク（アラビア語ご: تبوك‎、英語えいご: Tabuk）はバアス党とう（英語えいご版ばん）体制たいせい下かのイラク共和きょうわ国こくで製造せいぞうされた、ツァスタバ M70に基もとづく自動じどう小銃しょうじゅうの総称そうしょうである^[4]^[5]^{[注釈ちゅうしゃく 1]}。

概がい史し[編集へんしゅう]

イラクでは予かねてよりイラク軍ぐん（英語えいご版ばん）および治安ちあん部隊ぶたいへの支給しきゅう用ようとして多数たすうのAK系けい小銃しょうじゅう（英語えいご版ばん）を保有ほゆうしていた。従来じゅうらいは各かく組織そしきへ配備はいびするAK系けい小銃しょうじゅうをドイツ民主みんしゅ共和きょうわ国こく（東ひがしドイツ）やルーマニア社会しゃかい主義しゅぎ共和きょうわ国こく、ポーランド人民じんみん共和きょうわ国こく、ハンガリー人民じんみん共和きょうわ国こくといった所謂いわゆる東側ひがしがわ諸国しょこくからの輸入ゆにゅうにより確保かくほしていたイラク政府せいふであったが^[2]^[4]、国内こくないでサッダーム・フセインが権力けんりょくを掌握しょうあくする1970年代ねんだい後半こうはんに差さし掛かかると、AK系けい小銃しょうじゅうを始はじめとする歩兵ほへい用よう兵器へいきの国産こくさん化かが計画けいかくされるようになった^[6]。

イラクの当局とうきょくは生産せいさん体制たいせいを確立かくりつする前提ぜんていとして国外こくがいから設備せつび提供ていきょうや技術ぎじゅつ協力きょうりょくを取とり付つける必要ひつように迫せまられたが、AK系けい小銃しょうじゅうの原げん設計せっけい国こくであるソビエト連邦れんぽうはサッダームらに対たいする不信ふしんから積極せっきょく的てきな支援しえんに乗のり出だすことを避さけており、また東ひがしヨーロッパのワルシャワ条約じょうやく機構きこう加盟かめい国こくの多おおくもイラク向むけにAK系けい小銃しょうじゅうを輸出ゆしゅつこそすれど、技術ぎじゅつ移転いてんなど単たんなる売買ばいばい以上いじょうの関与かんよについては消極しょうきょく的てきな姿勢しせいを示しめしていた^[6]。このようなイラクを取とり巻まく政治せいじ事情じじょうもあって支援しえんを期待きたいできる国くには限かぎられていたものの、最終さいしゅう的てきにはユーゴスラビア社会しゃかい主義しゅぎ連邦れんぽう共和きょうわ国こくと東ひがしドイツから技術ぎじゅつ援助えんじょを引ひき出だすことに成功せいこうし、ツァスタバの製品せいひんであるM70の国内こくない製造せいぞうが可能かのうとなった^[2]。イラク版ばんM70はイスラム圏けんにおいて有名ゆうめいな7世紀せいきの戦争せんそうであるタブークの戦たたかい（英語えいご版ばん）から引用いんようしてタブクと命名めいめいされた^[2]^[6]。

1979年ねんにツァスタバから支援しえんを約束やくそくされた後のち、国営こくえい企業きぎょうのアル・カーディシーヤ機関きかんがタブクの生産せいさんに向むけて新あらたな兵器へいき工場こうじょうをバービル県けんに建設けんせつし始はじめ、翌年よくねんには早はやくも操業そうぎょうを実現じつげんさせた^[6]。製造せいぞうと配備はいびが始はじまったタブクはイラン・イラク戦争せんそうの折おりに初はつの実戦じっせん機会きかいを迎むかえ、続つづく湾岸わんがん戦争せんそうと2003年ねんのイラク戦争せんそうにおいても運用うんようされた。

なお、サッダームの下したで進すすめられた計画けいかくの成果せいか物ぶつであるにもかかわらず、タブクの普及ふきゅうは限定げんてい的てきな範囲はんいで留とどまったとされている。製造せいぞう記録きろくの欠如けつじょからタブクの正確せいかくな製造せいぞう数すうは判明はんめいしていないが、共和きょうわ国こく防衛ぼうえい隊たいなど少数しょうすうの組織そしきに配備はいびされたのみで軍ぐんの主力しゅりょく装備そうびとはなり得えず、1980年ねん以降いこうも大半たいはんの部隊ぶたいで先述せんじゅつの東欧とうおう製せいを含ふくむ外国がいこく製せいAK系けい小銃しょうじゅうを用もちいる状況じょうきょうに変化へんかはなかった^[4]。また、タブクは使用しよう上じょうの大おおきな問題もんだいはないものの競合きょうごう品ひんより優すぐれた性能せいのうを持もつというわけでもなく、多おおくのイラク人じんからはロシア製せいより若干じゃっかん劣おとる程度ていどの小銃しょうじゅうとして見み做されていた^[6]。

タブクの製造せいぞうは2000年代ねんだいに入はいっても継続けいぞくされていたが、有志ゆうし連合れんごうによるイラク攻撃こうげきの際さいにアメリカ陸軍りくぐん第だい101空挺くうてい師団しだんがアル・カーディシーヤ機関きかんの工場こうじょうを占拠せんきょ下かに置おいたことから、2003年ねんを以もって製造せいぞうが停止ていししたと見みられる^[1]^[6]。工場こうじょうは第だい101空挺くうてい師団しだんが他た部隊ぶたいとの交代こうたいのため退去たいきょしていた2003年ねん4月がつ9日にちに略奪りゃくだつと火災かさいの被害ひがいを受うけ、タブクを含ふくむ兵器へいきの殆ほとんどが無む制御せいぎょに持もち出だされた^[1]。この混乱こんらんにより非合法ひごうほうな市場いちばで売却ばいきゃくされたタブクは最終さいしゅう的てきに国境こっきょう外がいへ流出りゅうしゅつし、各地かくちのテロ集団しゅうだんや私兵しへい組織そしきが入手にゅうしゅするに至いたったものと分析ぶんせきされている^[1]。

その他た、中東ちゅうとう地域ちいき以外いがいへの不正ふせい流出りゅうしゅつについても情報じょうほうがあり、例たとえば2014年ねんにはアメリカ海兵かいへい隊たいの軍人ぐんじんがタブクを自国じこくへ密輸入みつゆにゅうした罪つみで連邦れんぽう捜査そうさ局きょくに逮捕たいほされている^[7]。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

タブクはユーゴスラビアのライセンス供与きょうよと技術ぎじゅつ支援しえんのもとで企画きかくされたため、原型げんけいであるM70B1と比較ひかくしても固有こゆうの特徴とくちょうと言いえる部分ぶぶんが少すくない^[2]。

M70と他国たこく製せいAK系けい小銃しょうじゅうの決定的けっていてきな相違そうい点てん、即すなわち3つの冷却れいきゃく孔あなを持もつ前ぜん床とこや黒くろい樹脂じゅし製せい銃じゅう把わなどは全すべてタブクにも受うけ継つがれており^[2]^[4]、小銃しょうじゅう擲弾用ようの照準しょうじゅん器きとガス遮断しゃだん装置そうちを兼かねたガスブロック部ぶの部品ぶひんに関かんしてはユーゴスラビアから輸入ゆにゅうしたものが用もちいられていた^[2]。タブクは基本きほん的てきにRPK軽けい機関きかん銃じゅうと同等どうとうの頑丈がんじょうな機関きかん部ぶを採用さいようしていたが^[2]^[6]、標準ひょうじゅん的てきなAKM（英語えいご版ばん）式しきの機関きかん部ぶを備そなえたものもあった^[4]。銃身じゅうしんはM70に倣ならい耐久たいきゅう性せいを高たかめる内側うちがわのクロムメッキ加工かこうを省略しょうりゃくしていた。このため、適切てきせつな教育きょういくを受うけたユーゴスラビア軍ぐんの兵士へいしと違ちがってイラクにおける使用しよう者しゃが整備せいび点検てんけんを十分じゅうぶん実施じっししていなかったことも重かさなり、運用うんよう時じに摩耗まもうし易やすい傾向けいこうが見みられた^[6]。

タブクとM70B1を見分みわける上うえで最もっとも明確めいかくな差異さいは刻印こくいんである。タブクは照あきら門もん基部きぶの排はい莢さいかち口こう側がわに「Tabuk」と「Cal.7.62x39mm」の文字もじ、その反対はんたい側がわにピラミッドとバビロンのライオン（英語えいご版ばん）を組くみ合あわせた意匠いしょう、およびアラビア語ごの「عيار٧,٦٢×۳۹ملم」と「تبوك」の文字もじが刻印こくいんされていた。また、安全あんぜん装置そうちの状態じょうたいを示しめす刻印こくいんもアラビア文字もじに置おき換かえられており、安全あんぜん位置いちが「أ」、全ぜん自動じどう射撃しゃげき位置いちが「ص」、半はん自動じどう射撃しゃげき位置いちが「م」となっていた^[8]。

タブクの生産せいさんに際さいしては対応たいおうする6kh4系けいの銃剣じゅうけんも製造せいぞうされた。こちらもユーゴスラビアから導入どうにゅうした機材きざいにより製造せいぞうされていたが、ユーゴスラビア製せい銃剣じゅうけんの鞘さやと柄えが黒くろい樹脂じゅし製せいだったのに対たいし、イラク製せいのものでは明あかるい色合いろあいのベークライト（英語えいご版ばん）に変更へんこうされていた^[9]。

1980年ねんから1984年ねん頃ころまでに製造せいぞうされた初期しょきのタブクは良好りょうこうな仕上しあげがなされていたが、度重たびかさなる紛争ふんそうでイラクの統治とうち体制たいせいが疲弊ひへいしていくにつれ、品質ひんしつも粗そ悪化あっかの一途いっとを辿たどった^[6]。

製品せいひん各種かくしゅ[編集へんしゅう]

固定こてい銃床じゅうしょう型がた[編集へんしゅう]

M70B1に準じゅんじた仕様しよう。イラン・イラク戦争せんそう終結しゅうけつ後ごの1989年ねんには設計せっけい変更へんこうが実施じっしされ、機関きかん部ぶ上部じょうぶの覆おおいを固定こていする機構きこうや小銃しょうじゅう擲弾用よう照準しょうじゅん器き、夜よる間あいだ用よう照準しょうじゅん器きが廃止はいしされた^[6]。この簡略かんりゃく化かによって製造せいぞう期間きかんの途中とちゅうからはツァスタバ製せいでのM70B3に近ちかい構造こうぞうとなっている。

西側にしがわ諸国しょこくの標準ひょうじゅん的てきな弾薬だんやくである5.56x45mm NATO弾だんに対応たいおうした輸出ゆしゅつ型がたが存在そんざいするとの説せつもあるが、実際じっさいに販売はんばいされたか否ひかは不明ふめいである^[3]。

折おり畳たたみ銃床じゅうしょう型がた[編集へんしゅう]

M70AB2と同等どうとうの下方かほう回転かいてん式しきの折おり畳たたみ銃床じゅうしょうを備そなえた仕様しよう。固定こてい銃床じゅうしょう型がたのそれと同おなじく5.56x45mm NATO弾だん仕様しようの販売はんばい実績じっせきは不明ふめい^[3]。

短縮たんしゅく型がた[編集へんしゅう]

短たん銃身じゅうしん化かによりカービンとした仕様しようで、「ベビー・タブク」の名称めいしょうで紹介しょうかいされる場合ばあいもある^[1]^[10]。銃床じゅうしょうは下方かほう回転かいてん式しきの折おり畳たたみ銃床じゅうしょうが採用さいようされている^[2]^[3]。

ユーゴスラビアにはM70系けいの短縮たんしゅく型がたとしてM92があり、AKS-74U（ロシア語ご版ばん）に似にた形状けいじょうの消炎しょうえん器きや前ぜん床ゆかに設もうけられた3つの冷却れいきゃく孔あな、後方こうほうに移うつされた照あきら門もんを特徴とくちょうとしていたが、タブクの短縮たんしゅく型がたの場合ばあいは小型こがたの消炎しょうえん器き、2つの冷却れいきゃく孔あながある前ぜん床ゆか、通常つうじょう型がたと同どう位置いちの照あきら門もんなど、M92とは異ことなる設計せっけいに基もとづいている。なお、タブクの短縮たんしゅく型がたには金属きんぞく部ぶにメッキ加工かこうを施ほどこした贈呈ぞうてい用途ようとの製品せいひんもあった^[11]。

狙撃そげき型がた[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「タブク狙撃そげき銃じゅう」を参照さんしょう

長ながい銃身じゅうしんや肉にく抜ぬきされた銃床じゅうしょうを採用さいようし、全ぜん自動じどう射撃しゃげき機能きのうを廃はいしたタブク系統けいとうの狙撃そげき銃じゅう。選抜せんばつ射手しゃしゅ専用せんよう小銃しょうじゅう（英語えいご版ばん）として解説かいせつされる例れいもある^[12]。他たのタブク系けい小銃しょうじゅうと同おなじく中間ちゅうかん弾薬だんやくの7.62x39mm弾だんを用もちい、市街しがい戦せんにおける中距離ちゅうきょり間あいだの狙撃そげきで特とくに効果こうかを発揮はっきした^[12]。

アメリカ製せいレプリカ[編集へんしゅう]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくオクラホマ州しゅうを拠点きょてんとするトゥー・リバーズ・アームズ（英語えいご: Two Revers Arms）が取とり扱あつかうタブクのレプリカ品ひん^[6]。民間みんかん市場いちば向むけの小銃しょうじゅうであるため全ぜん自動じどう射撃しゃげき機能きのうを廃はいしているが、イラク製せいのタブクと同一どういつの刻印こくいんを再現さいげんするなど外見がいけん上じょうの特徴とくちょうは厳密げんみつに模倣もほうされている。販売はんばい価格かかくは1200ドル程ほど^[13]。

運用うんよう地域ちいき[編集へんしゅう]

イラク

共和きょうわ国こく防衛ぼうえい隊たいや軍ぐんに加くわえ、後のちには政府せいふ系けい民兵みんぺい組織そしきの人民じんみん動員どういん隊たい（英語えいご版ばん）^[14]、非ひ政府せいふ系けい武装ぶそう勢力せいりょくのマフディー軍ぐんやISISでも使用しよう^[4]^[6]^[15]。

南みなみクルディスタン

自治じち政府せいふ（英語えいご版ばん）下したの軍事ぐんじ組織そしきであるペシュメルガが運用うんよう^[16]。

シリア

反はん体制たいせい派はの間あいだで流通りゅうつう^[17]。イラクの場合ばあいと同様どうようでISISによる運用うんようも確認かくにんされている^[18]。

マリ

イスラム急進きゅうしん派はのマシナ解放かいほう戦線せんせん（英語えいご版ばん）による保有ほゆうが確認かくにんされている。マリで発見はっけんされたタブクは刻印こくいん部ぶが削けずり取とられていたが、同おなじ処理しょりの施ほどこされたタブクは周辺しゅうへん国こくのニジェールとナイジェリアにおいても流通りゅうつうの確認かくにん例れいがあり、同一どういつの経路けいろで当該とうがい地域ちいきに持もち込こまれたものと見みられている^[19]。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

^ 厳密げんみつにはM70のうち、RPK軽けい機関きかん銃じゅうに倣ならった機関きかん部ぶを有ゆうするM70B1やM70AB2が原型げんけい。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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