ダークロード

ダークロードとは、フィクションにおける敵役かたきやくの首魁しゅかいに特有とくゆうの類型るいけいを指さすアーキタイプである。このアーキタイプは、特とくにファンタジーというジャンルにおいて典型てんけい的てきである。ダークロードの人物じんぶつ像ぞうは通例つうれい男性だんせいであり、権力けんりょくへの渇望かつぼうや、悪魔あくまや反はんキリストとの関連かんれんで特徴とくちょうづけられる。『エンサイクロペディア・オブ・ファンタジー』はダークロードの人物じんぶつ像ぞうによく見みられるテーマとして、「かつて敗北はいぼくしているが永遠えいえんに殺ころされたままではない」、「大地だいちの破壊はかい」など涜聖の儀式ぎしきに従事じゅうじする、などがあるとする。

ワーグナーの『ニーベルングの指ゆび環たまき』に登場とうじょうするアルベリヒがダークロードの原型げんけいである。 文芸ぶんげいにおけるダークロードの注目ちゅうもくすべき例れいとしてはこの他ほかに、サウロン (『指輪ゆびわ物語ものがたり』) 、モルゴス (『シルマリルの物語ものがたり』) 、嵐あらしの王おうイネルキー (『いばらの秘ひ剣けん』)、ヴォルデモート卿きょう (『ハリー・ポッター』)などが挙あげられる。映画えいがにおいては、『スターウォーズ』シリーズのダースベイダーとパルパティーン皇帝こうていが通常つうじょう「シスの暗黒あんこく卿きょう(ダークロード)」と呼よばれている。

フィリップ・プルマンは、文学ぶんがくにおけるダークロードというアーキタイプというものについて、「悪あくというのは通常つうじょう一いち人にんの人間にんげんの形かたちで化身けしんし、影響えいきょう力りょくを及およぼすために高たかい身分みぶんを求もとめる物ものである」と人々ひとびとが信しんじていることが反映はんえいされたものであるが、これはハンナ・アーレントの「悪あくの陳腐ちんぷさ」（『イエルサレムのアイヒマン』）という概念がいねんとは正せい反対はんたいの物ものであると批判ひはん的てきに述のべている。